結論
ジーデップ・アドバンスは、NVIDIAなどのGPUを積んだAI用サーバーを、大学・研究機関や企業に設計から運用まで提供する小さな専門商社だ。売上は70億円、営業利益は11億円。営業利益率は16%と、卸売としては際立って高い。筆者の結論は割高である。事業の質は良いが、10年の稼ぎにならすと、今の株価が先に走りすぎている。
成長は本物だ。国内のAI計算基盤は年11%で伸びる見通しで、今期予想の売上は27%増、第1四半期の経常利益は2倍になった。
一方、商売の骨格は弱い。仕入れの大半はNVIDIAに頼り、割り当てや販売網の方針は相手が決める。大型案件は粗利が薄く、規模が増えるほど利益率は圧迫される。
さらに筆頭株主の法人が56%を持つ。少数株主が資本の使い道に口を出しにくい構造だ。財務は、純現金が18億円と薄く、運転資金で消える。強みも弱みも、仕入先と顧客の少なさに由来する。今の株価は、この両方の良い面だけを織り込んでいる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10年後も、この事業は今より強いか」を問う。AI用のサーバーは今は需要が旺盛だが、仕入先の方針と、AI投資の波に左右される商売だ。堀は、技術力とストック収益にあるが、仕入先に握られた弱さを消せない。事業の見通しは、確信度が低い。
オーナー利益、つまり株主に残る利益は、設備投資が小さいので純利益に近い。ただし在庫と売掛金に資金が取られ、実際に手元に残る現金は少ない。
経営の資本配分は、配当性向を上げる姿勢が評価できる。一方で、筆頭株主が56%を持つ構造は、少数株主には不利に働くこともある。
安全域は、薄い。純現金は18億円で、時価総額の1割に満たない。事業の稼ぐ力は資本コストを超えるが、10年後の姿は読みにくい。払う値段に、成長の持続を織り込みすぎてはいけない。小さな商社が、仕入先に握られた状態で、10年後も今と同じ利益率を保てるかは、確かめようがない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは、AI向けのサーバーとワークステーションの販売、そのあとの保守・運用支援、サブスクリプション(月額で使うクラウド型のサービス)の3つだ。AIの研究者や開発者が、計算機の構成を決めて動かすまでを一括して引き受ける。会社は「システムインキュベーション事業」の単一事業と説明している。
顧客は大学・研究機関、製造業・医療などの企業、AIの新興企業、クラウド事業者だ。2026年5月期は大学向けの比率が30%から41%に上がり、クラウド事業者向けは大きく下がった。
NVIDIAの認定パートナーの立場で、代理店ではない。過去の説明では、NVIDIA、インテル、AMD、ザイリンクスの4社の認定を持つと述べていた。
売上の波が大きい。大型案件は受注まで時間がかかり、四半期のずれ込みが起きやすい。保守とサブスクのストック収益を積み上げ、波を平らにするのが課題だ。会社も、売上の平準化を経営課題に挙げている。上場は2023年6月で、まだ若い会社である。AI向けの需要は、研究から実業へ移る途中にあり、顧客の層が広がっている。
優良さと弱いところ
堀は、GPUが足りない時代に培った調達力と、導入から運用までの技術力にある。認定の数が多く、顧客は安心して任せられる。保守・サブスクのストック収益は、離れにくい顧客基盤になる。
弱みも多い。第一に、仕入先への依存だ。GPUの割り当て、製品サイクル、販売網の方針をNVIDIAが決める。第二に、顧客の偏りだ。大学向けは予算の波に左右され、大型案件は粗利が薄い。2024年5月期は大型案件の増加で粗利率が3.5ポイント下がった。
利益率は上場後の4期で12.7%から16.1%と高めだが、まだ長い景気の波を経験していない。
財務は、自己資本比率が61%で、純現金は18億円。営業の運転資金が膨らみやすく、2025年から2026年に純現金は33億円から18億円へ減った。
筆頭株主が56%を持ち、経営の自由度は高い反面、少数株主の意見は通りにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のAIインフラ(AI用のサーバーとストレージ)の市場は、2025年に約6,700億円、2030年に約1兆1,500億円と、年11%で伸びる見通しだ。ただし支出の約9割はクラウドなどのサービス事業者で、同社の顧客である企業・大学・研究機関の市場は、約630億円と推定される。
需要の背景は、生成AIの実用化と、企業のAI導入の広がりだ。製造業の画像認識、医療画像の診断、小売・金融の生成AI活用が、新しい顧客を連れてくる。国の支援による大学・研究機関の計算基盤の整備も追い風だ。
競争は厳しい。NVIDIAの製品を扱う商社やメーカーが多く、大手の商社が組織を拡大している。クラウド事業者やメーカーの直販も増える。製品サイクルが速く、AMDの台頭もあり、仕入れた在庫の評価損のリスクもある。
足元は強い。2027年5月期の第1四半期は、経常利益が前年の2倍に達した。AI投資の勢いが続く間は、売上は伸びる。ただし投資は一巡する日が来る。過去の半導体やIT機器の投資の波と同じように、数年で需要の山と谷が入れ替わるのが普通だ。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当性向20%を目安に、徐々に引き上げるというものだった。2026年5月期は、期初の予想から大きく増やし、性向30%になった。2027年5月期の予想は前期より増えている。自社株買いの実績は、確認できていない。
財務は、純現金が18億円と時価総額の1割に満たない。AI案件の拡大で在庫と売掛金が増え、運転資金が必要になる。余った現金と呼べる額は無く、事業の運転に使われているとみている。
筆頭株主は法人のIAMで、約56%を持つ。上位10名で約7割を占め、市場に出る株は少ない。この構造のもとで、少数株主への還元は、支配株主の判断に左右される。
M&Aの実績は確認できていない。kabufuの推計では、10年以内に買収される確率は21%と、高めに出る。時価総額が小さく、事業が注目されるためだ。ただし本分析は、買収の上乗せを価値に入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
需要は確かだ。国内のAIインフラ市場は年11%で伸び、同社の2027年5月期の予想は売上27%増。第1四半期だけで、営業利益の通期予想の3割を稼いだ。会社の予想は、保守的な可能性が高い。
企業のAI導入は、製造業の画像認識、医療画像、小売・金融の生成AIへ広がり、新しい顧客が増えている。NVIDIAの認定パートナーとして、導入から運用まで一括して提供できる会社は少ない。保守とサブスクの積み上げで、売上の波も平らになる。大学・研究機関との関係も長い。
2026年5月期は、大型案件の停滞の中でも、粗利率を20%から25%へ上げた。採算の高い案件を選ぶ力がある証拠だ。配当も大きく引き上げ、株主への還元姿勢が強まった。
営業利益率16%は、卸売では群を抜く。この水準を保ちながら、市場とともに数倍の規模になれば、10年後の利益は今の数倍だ。小さな会社が、大きな市場の中でシェアを取る典型的な構図である。加えて、保守・サブスクの積み上げと、新しい顧客層の広がりが、売上の波を和らげる。
慎重な見方
成長の源は、仕入先であるNVIDIAの製品と、AI投資の勢いにある。どちらも会社の力ではどうにもならない。GPUの割り当て、製品サイクル、販売網の方針が変われば、小さな認定パートナーの扱いは一晩で悪くなる。
大型案件は粗利が薄く、規模が増えるほど利益率は下がる。2024年5月期にその傾向が現れ、会社自身もリスクとして挙げている。大学向けの比率が41%に上がったことも、予算の波に左右される危うさを強める。
上場後の4期しか実績が無く、AI投資の一巡や在庫の評価損を、まだ経験していない。営業利益率16%は、追い風の中での値だ。
筆頭株主が56%を持つため、少数株主は、会社の意思決定に口を出しにくい。市場に出回る株が少なく、株価は需給で大きく動く。成長の物語に値段がつきやすく、期待が外れた時の下げも大きい。今の時価総額は、AI投資が10年続くことを前提にしている。上場後に積んだ実績は、追い風の下で得た数字であって、逆風の下での強さを示してはいない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、足元の売上と利益の勢いに説得力があるが、仕入先への依存とAI投資の波という、10年を通した不確実さは慎重な見方の指摘が重い。確率は中立を最も厚く置き、やや悲観と悲観を合わせて4割弱とした。上場後の実績が短く、波を経験していない点を、悲観を厚く置く理由とした。強気の見方の成長は事実として認めるが、10年の平均で見れば、利益率の上振れは長く続かないと判断した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 3,773 円207 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 720 円40 億円)。 今の値に割り戻すと 2,192 円121 億円、今との差 −31.7%、 期待の年率 +3.4%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 8,785 円483 億円 | 1,382 円76 億円 | +216.7% | +12.2% | 1,017 円56 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,679 円312 億円 | 1,055 円58 億円 | +109.8% | +7.7% | 1,482 円81 億円 |
| 中立 | 32% | 4,481 円246 億円 | 800 円44 億円 | +64.5% | +5.1% | 1,690 円93 億円 |
| やや悲観 | 24% | 688 円38 億円 | 364 円20 億円 | −67.2% | −10.6% | 252 円14 億円 |
| 悲観 | 12% | 382 円21 億円 | 55 円3 億円 | −86.4% | −18.1% | 52 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,773 円207 億円 | 720 円40 億円 | +40.0% | +3.4% | 4,493 円247 億円 |
今の株価時価総額 3,210 円176 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% AI基盤の投資が続き、国内の企業・大学向けで首位級になる 利益 28 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 8,785 円483 億円
企業と大学・研究機関のAI導入が10年続き、同社が扱うGPUサーバーとAIクラスタの需要が途切れない。保守とサブスクのストック収益が積み上がり、売上の波は小さくなる。販売からサービスまで一括で提供できる強みで、顧客あたりの単価も上がり、シェアは13%まで広がる。大型案件の粗利率は低めだが、ミドル層の高付加価値ソリューションで補い、営業利益率は過去最高の16%を保つ。配当は性向を引き上げながら、利益の4割を返す。仕入先との関係も強まり、新しい製品が出るたびに最初に扱える立場を保つ。国内の需要だけでなく、海外の研究機関向けの提案にも広がる。
- システムインキュベーション(AI用サーバー・保守・サブスク):数量 1,450(国内のAIインフラ市場のうち、サービスプロバイダー以外(企業・大学・研究機関)の規模(億円・今の値段で測った実質))× 価格 17.4%(実質の市場の大きさあたりの同社の売上(割合)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 253 億円・営業利益 40 億円。国内AIインフラ(サービスプロバイダー以外)1,450 億円(実質) × シェア 13% × 物価 1.34 倍、営業利益率 16%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.2% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍。全体の PER 16.92 倍、時価総額 477 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内のAI計算基盤は年11%台で伸びる見通しで、シェアを取り続ければこの水準もありうる。ただし単一の仕入先に頼る小さな商社が、10 年にわたって営業利益率 16% を保つ必要があり、確率は 1 割にとどめる。
やや楽観 22% AI導入が広がり、シェアは今の水準を保つ 利益 19 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 5,679 円312 億円
国内の企業・大学・研究機関のAI導入が続き、市場は実質で2倍近くに広がる。同社はNVIDIAの認定パートナーとしての実績で、シェアを11%前後に保つ。大学向けの案件は予算の波があるが、企業向けとストック収益が補う。営業利益率は14.5%で、足元の水準をやや下回る。大型案件の増加で粗利率が下がる影響を、保守・サブスクが緩和する。配当は性向を引き上げ、利益の4割を返す。主要な仕入先との関係は保たれるが、特別な優遇までは受けられない。AI用途も画像認識や生成AIなど、複数の分野へ広がり、特定の用途に偏らない。
- システムインキュベーション(AI用サーバー・保守・サブスク):数量 1,250(国内のAIインフラ市場のうち、サービスプロバイダー以外(企業・大学・研究機関)の規模(億円・今の値段で測った実質))× 価格 14.7%(実質の市場の大きさあたりの同社の売上(割合)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 184 億円・営業利益 27 億円。国内AIインフラ(サービスプロバイダー以外)1,250 億円(実質) × シェア 11% × 物価 1.34 倍、営業利益率 14.5%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍。全体の PER 16.23 倍、時価総額 304 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今期予想の売上 88 億円と営業利益 12.7 億円は、第 1 四半期で営業利益の 32% を稼いでおり、需要は確かだ。この水準の成長が数年続く筋書きは、中立の次に厚く置く。会社の予想は期初の計画を超えて上振れする癖がある。
中立 32% 市場は伸びるが、競争でシェアを少し失い、利益率は 13.5% 利益 14 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 4,481 円246 億円
国内のAI計算基盤は年9%ほどで広がり、物価の分を除いても10年で1.8倍になる。ただしシェアは、売上が大きくなるにつれてNVIDIAの扱いが他の商社や直販に広がり、11%から10%へ下がる。大学向けの案件は予算次第で振れる。営業利益率は大型案件の増加で粗利が薄くなる一方、保守とサブスクの積み上げで、13.5%に収まる。売上は150億円前後、営業利益は20億円前後で、今の2倍強になる。配当は性向を徐々に引き上げ、利益の35〜40%を返す。仕入先の方針は変わらないが、競争は確実に厳しくなり、大きな超過利益は残らない。
- システムインキュベーション(AI用サーバー・保守・サブスク):数量 1,115(国内のAIインフラ市場のうち、サービスプロバイダー以外(企業・大学・研究機関)の規模(億円・今の値段で測った実質))× 価格 13.4%(実質の市場の大きさあたりの同社の売上(割合)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 149 億円・営業利益 20 億円。国内AIインフラ(サービスプロバイダー以外)1,115 億円(実質) × シェア 10% × 物価 1.34 倍、営業利益率 13.5%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.2% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍。全体の PER 16.43 倍、時価総額 233 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率は上場後の 4 期で 12.7〜16.1% の間にあり、中立はその中位に置いた。市場は年 9% ほどで伸びるが、NVIDIA の製品サイクルが速く、供給元の方針で扱いの条件が変わる商社の宿命がある。
やや悲観 24% AI投資が一巡し、競合と直販に押されて薄利になる 利益 4 億円 · PER 6.2 倍 · 株価時価総額 688 円38 億円
AIサーバーの需要は、先行した導入が一巡して伸びが鈍る。クラウド事業者やメーカーの直販が増え、同社が扱う大学・企業向けの案件でも値引き競争が起きる。シェアは8%に下がり、大型案件の粗利率も下がる。営業利益率は8%に落ち、販管費の増加が重くなる。売上は物価の分だけの増加にとどまり、今の水準とあまり変わらない。配当は利益に合わせて小さくなる。ストック収益は残るが、販売の落ち込みを補うには足りず、人員の増強も重荷になる。仕入先の扱いは変わらないが、顧客は値段で他社へ流れる。成長を前提に増やした固定費が、利益を圧迫し続ける。
- システムインキュベーション(AI用サーバー・保守・サブスク):数量 756(国内のAIインフラ市場のうち、サービスプロバイダー以外(企業・大学・研究機関)の規模(億円・今の値段で測った実質))× 価格 9.6%(実質の市場の大きさあたりの同社の売上(割合)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 73 億円・営業利益 6 億円。国内AIインフラ(サービスプロバイダー以外)756 億円(実質) × シェア 8% × 物価 1.34 倍 × 値引き 0.9、営業利益率 8%
倍率:ROE 7.2% が k 8.25% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k=10.3 倍。最大の仕入先の方針と大型案件の有無で利益が振れ、筆頭株主の支配も強い単一商材の商社なので、上限の 6.0 割の 6.15 倍に置いた。
確率:2025 年 5 月期の営業利益率は 12.7% に下がっており、大型案件が増えると粗利が薄くなると会社も認めている。AI の投資が数年で一巡し、競合や直販が増える筋書きは十分ありうる。確率は中立に近く置く。
悲観 12% 仕入先の方針転換と需要の反動で、事業が縮む 利益 −2 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 382 円21 億円
仕入先が販売網を大手の商社と直販に集約し、同社の扱い量と条件が悪くなる。AI投資の反動で、仕入れた在庫の評価損も出る。大学向けの大型案件は予算の縮小で止まる。シェアは5%まで落ち、値引きで価格も下がる。売上は30億円台に縮み、営業赤字に転じる。筆頭株主の支配が強く、少数株主は事業の整理を求めにくい。価値は、手元の現金と在庫・売掛金の整理額が決める。配当は赤字の間は出せなくなる。保守とサブスクの顧客は一部残るが、事業を支えるには小さい。大型案件はほとんど取れなくなり、在庫の処分も続く。会社は事業の縮小を迫られるが、新しい用途の開拓も間に合わない。
- システムインキュベーション(AI用サーバー・保守・サブスク):数量 600(国内のAIインフラ市場のうち、サービスプロバイダー以外(企業・大学・研究機関)の規模(億円・今の値段で測った実質))× 価格 5.7%(実質の市場の大きさあたりの同社の売上(割合)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 34 億円・営業利益 −2 億円。国内AIインフラ(サービスプロバイダー以外)600 億円(実質) × シェア 5% × 物価 1.34 倍 × 値引き 0.85、営業利益率 -5%
倍率:営業赤字で稼ぐ力では測れない構造的な負けの10年。純現金18億円に戻り方0.5(筆頭株主が56%を持ち、少数株主は使い道を決めにくい)を掛けた約9億円と、売掛金・在庫(GPUは評価損が出やすい)を3〜4割で整理した約12億円を足した約21億円を床とし、今の自己資本35億円に0.6倍を掛けた。ためた利益には掛けていない。やや悲観より低い。
確率:GPUの割り当てや販売網の方針は、仕入先のNVIDIAが決める。大手商社への集約や直販が進めば、小さな認定パートナーは商権を失う。AI投資が反動で冷え込むことも重なる複合の筋書きで、構造的な負けとして置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
システムインキュベーション(AI用サーバー・保守・サブスク)
GPUを積んだAI用サーバー・ワークステーションの販売と、導入・保守・運用支援、サブスクリプション。
| 数量国内のAIインフラ市場のうち、サービスプロバイダー以外(企業・大学・研究機関)の規模(億円・今の値段で測った実質) | 価格実質の市場の大きさあたりの同社の売上(割合)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 630 | 11.0% | 70 | 11 |
| 10 年後 中立 | 1,115 | 13.4% | 149 | 20 |
取り方:IDC Japanによる国内AIインフラ市場は2025年に約6,700億円で、うちサービスプロバイダーが90.6%を占めるため、同社の顧客である企業・大学・研究機関の市場は約630億円(推定)。売上69.5億円を割ると、シェアは約11%。営業利益は11.2億円(16.1%)で、全社の営業利益と同じ。数量は実質で置き、物価は価格に入れた。
リスクと懸念
仕入先NVIDIAへの依存
GPUの割り当て、製品サイクル、販売網の方針をNVIDIAが決める。大手の商社や直販へ集約されれば、小さな認定パートナーの扱い量と条件は悪くなる。AMDなど他社製品の台頭も影響する。
AI投資の波と在庫の評価損
AIの設備投資が一巡すると、売上が急に落ち、仕入れた在庫の評価損が出る。同社は上場後の4期しか実績が無く、この局面をまだ経験していない。
大型案件の粗利の低下
大型案件は粗利が薄く、規模が増えるほど利益率が圧迫される。2024年5月期に粗利率が3.5ポイント下がった例がある。為替の変動も十分に転嫁できない。
大学・研究機関の予算への偏り
2026年5月期は大学向けの比率が41%に上がった。予算の執行時期や補助金の有無で、売上が四半期ごとに大きく振れる。
筆頭株主の支配
筆頭株主の法人が約56%を持ち、上位10名で約7割を占める。少数株主が資本の使い道に口を出しにくく、株価は需給で動きやすい。
運転資金の膨張
案件の拡大で在庫と売掛金が増え、純現金は33億円から18億円へ減った。必要な運転資金が増えれば、配当を引き上げる余裕は小さくなる。
今後の分かれ目
- 保守・サブスクのストック収益の比率が上がり、売上の波が小さくなったら
- 中立の利益率を引き上げ、確率を楽観側へ寄せる。
- NVIDIAの販売網の方針が変わり、同社の扱いが縮小・集約されたら
- やや悲観・悲観の確率を上げ、シェアの前提を下げる。
- 大型案件の粗利率がさらに下がり、営業利益率が12%を割ったら
- 中立の利益率を引き下げる。
- AI投資が一巡し、受注が前年を大きく下回ったら
- 悲観側の筋書きに重みを移し、在庫の評価損を確かめる。
- 自社株買いや配当性向の大幅な引き上げが発表されたら
- 還元の前提を引き上げ、価値に反映する。
- 他社が買収に動き、TOBが発表されたら
- 買収価格で価値が決まる局面になる。本分析の値は事業の本質価値なので、乖離を確かめる。
見ておくもの
- 受注高と大型案件の粗利率(四半期)
- ストック収益(保守・サブスク)の比率
- 大学・研究機関向けの比率と企業向けの伸び
- 純現金と運転資金(在庫・売掛金)の推移
- NVIDIAの販売網・認定制度の変更
倍率と資本コストの決め方
市場の規模とシェアを積み上げ、ROEと資本コストから倍率を決めた。中立はROE約14%がk 8.25%を上回り、PERは正当化の水準の1÷k(10.3倍)を下回らせずに置いた。今のPER(約24倍)や、簿価に対するPBR(約5倍)には寄せていない。足元の予想の伸び(売上27%増)は10年の置き方に使わず、国内AIインフラ市場の年9%を中心に、シェアを11%から10%に下げて置いた。悲観の床は、純現金と在庫・売掛金の整理額の推定で、過去のPBRの底には依らない。純現金は時価総額の1割に満たず、余った現金は別に立てていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.27→16.92 倍・やや楽観 PER 10.66→16.23 倍・中立 PER 10.26→16.43 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。