結論
東北化学薬品は青森県弘前市に本社を置き、東北の工場に化学薬品を、病院や検査センターに臨床検査の試薬を届ける専門商社だ。売上は350億円を超えるが、営業利益は売上の1〜2%しか残らない。筆者の結論は「やや割高」だ。
強みは地域の網だ。東北の六県に営業所と倉庫を持ち、少量の薬品や試薬を毎日のように届ける。メーカーが自分でやれば割に合わない手間を引き受け、その分の手数料で食べている。半導体や電子部品の工場の新設が続き、2026年9月期は営業利益が4割近く増える見込みだ。
ただ、この会社の利益は薄く、景気と取引先の都合で揺れる。仕入れ値はメーカーが決め、売り値は大手の工場と病院が強く押さえる。東北の人口が減る中で、検査の数量も大きくは伸びない。10年の中立で積むと、利益率は2%に届かず、ROEも資本コストを下回る。今の時価総額は今期の純利益の8倍弱で安く見えるが、その利益が10年続くかには疑いが残る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、悪くはないが、長く持ちたいほど良い事業でもない。東北の工場と病院に毎日薬品と試薬を届ける仕事は、景気が悪くても止まらない。地元の網は他社がすぐにまねできない。
だが、その強さは値段の上に出てこない。粗利は9%余りで、物流と人の費用を払うと営業利益は1〜2%しか残らない。稼いだ利益の8割は売掛金と在庫と持ち合い株に回り、ROEは資本コストに届かない。オーナーとして見れば、帳簿は毎年太るが、その太った分が稼ぐ力を増やしていない。
今の値段は今期の利益の8倍弱で、一見すると安い。ただ今期の利益は半導体の工場の新設という追い風に乗った山の面がある。過去10年の平均の利益で見れば、PERは10倍を超える。
筆者が見方を変えるのは、配当性向を上げるか自社株買いを始め、余った資本を株主に戻す方針が数字で示される時だ。
何で稼ぐ会社か
事業は三つに分かれる。2025年9月期の売上344億円のうち、インダストリーが179億円、メディカルが141億円、アカデミア・ライフサイエンスが24億円だった。会社はセグメントの利益を売上総利益、つまり粗利で示しており、粗利はそれぞれ17億円、13億円、3億円だ。ここから販売と管理の費用28億円を引くと、営業利益は5億円が残る。
インダストリーは、東北の製造業に化学薬品や工業用の材料を売る。客は半導体や電子部品、食品、紙、金属の工場だ。新しい工場ができれば、洗浄や分析に使う薬品の注文が増える。粗利は売上の9%余りだ。
メディカルは、病院や検査センターに臨床検査の試薬と消耗品、機器を売る。血液や尿の検査に使う試薬は毎日減っていくので、注文は景気に左右されにくい。ただ、診療報酬の改定で検査の値段は抑えられ、試薬の値上げは通りにくい。
アカデミア・ライフサイエンスは、東北大学などの研究機関に試薬と研究用の機器を売り、機器の据え付けや保守も請け負う。大型の機器の案件があるかどうかで、年ごとの売上が大きく動く。
倉庫と営業所の多くは借りており、物流の費用と人件費が販管費の中心だ。
優良さと弱いところ
優良さは地域の網にある。東北の広い地域で、少量の薬品や試薬をすぐに届けられる会社は多くない。客の工場や病院は、毒物や劇物の扱いに慣れた地元の商社を頼る。創業から長く続く取引が、客を他社に移りにくくしている。
ただ、その網は値段を決める力にはなっていない。仕入れ値はメーカーが決め、大手の工場や病院の購買は厳しい。粗利は売上の9%余りで、そこから物流と人の費用を払うと、営業利益は1〜2%しか残らない。過去12年の営業利益率の最高は2.5%だった。
資本の効率は資本コストに届かない。過去10年のROEの中央値は5.6%で、資本コストを超えたのは2022年9月期の1度だけだ。売掛金と在庫に多くのお金が寝ており、持ち合い株も20億円ある。財務は借金が少なく堅い。
経営は地道で、無理な拡大をしない。その分、資本を増やす使い道も乏しい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
化学薬品の商社の市場は、全体では大きく伸びない。国内の化学品の流通は約4兆円で、今後もほぼ横ばいと見られる。その中で伸びるのは、半導体や電子材料に使う高純度の薬品だ。東北では岩手と宮城に半導体の工場が集まり、設備の増強が続いている。この流れが、インダストリーの数量を下支えする。
臨床検査の試薬は、人口の高齢化で検査の数が増える一方、東北では人口そのものが減る。差し引きで数量はほぼ横ばいだ。値段は診療報酬の改定で抑えられ、物価ほどは上がらない。大手の医薬品卸のアルフレッサやスズケンも試薬を扱い、大きな病院の取引では競り合う。
商社の中抜きも進む。メーカーはネットでの直販を広げ、大手の客は全国の大手商社に一括で注文をまとめたがる。地域の商社が生き残る道は、小口の配送と、毒物や劇物の管理、分析機器の保守といった手間のかかる仕事だ。人手不足で物流と人件費は上がり続け、その値上げを客に転嫁できるかが利益を分ける。10年の中立では、数量は1割弱伸び、値段は物価よりやや低く上がると置く。東北の地元の商社どうしの再編も、いずれ起きうる。
資本政策と M&A
配当は2026年9月期の予想で総額約0.95億円、配当性向は2割前後だ。会社は継続的な安定配当を基本とし、2025年9月期には上場30周年の記念配当を足した。株主優待として自社の取扱商品を贈るが、費用は小さい。自社株買いはしていない。
株主は地元の銀行と取引先が中心だ。青森みちのく銀行が約10%、取引先の持株会が約10%、東京中小企業投資育成が約6%、従業員の持株会が約5%を持つ。2025年には個人の投資家が8%を取得したと報告した。親会社は無い。
資本の多くは売掛金と在庫に回り、残りは持ち合い株20億円と土地に寝ている。利益の8割を社内に残す方針で、自己資本は毎年積み上がる。M&Aの大きな実績は無く、資本の使い方は保守的だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
東北は半導体の工場の集積地になりつつある。岩手のキオクシアの北上工場、宮城の東京エレクトロンの拠点、電子部品の工場の新設が続き、洗浄や分析の薬品の需要は増える。2026年9月期の第3四半期は営業利益が57%増え、会社は通期の予想を引き上げた。インダストリーの粗利は12%伸びた。
メディカルも底堅い。高齢化で検査の数は増え、試薬は毎日使って減る消耗品だ。新しい試薬の採用と大型の機器の案件で、売上は6%伸びた。景気が落ちても、病院の検査は止まらない。
財務は堅く、借金はほとんど無い。持ち合い株20億円と土地も持つ。今の時価総額は今期の予想純利益の8倍弱で、自己資本の半分ほどだ。物流の網と人手不足で、小さな商社が新しく参入するのは難しく、地元の客を抱える会社の価値は増す。利益率が2%を保てば、10年で利益は今の倍近くになる。
人手不足も、見方を変えれば追い風だ。毒物や劇物を扱える人と車を持つ商社は限られ、新しく入る会社はいない。
慎重な見方
今期の利益の伸びは、半導体の工場の新設という一時の追い風だ。工場ができあがれば、薬品の注文は定常の量に戻る。過去12年の営業利益率は1%前後が普通で、2%を超えたのは2年だけだ。今期の利益を10年の起点に置くのは楽観にすぎる。
値段を決める力は無い。仕入れはメーカーが決め、大手の工場と病院は購買をまとめて値下げを迫る。医薬品卸の大手も試薬を扱い、大きな病院を奪いに来る。メーカーの直販も広がる。東北の人口は減り続け、検査の数も工場の数も長い目では縮む。
人手不足で物流と人件費は上がる。小口の配送という強みは、そのまま費用の重さでもある。資本の使い方も保守的で、利益の8割を売掛金と持ち合い株に回し、ROEは資本コストに届かない。安い倍率は、薄い利益と寝た資本を正しく映している。
今の安い倍率は罠になりうる。山の利益で倍率を測れば、どの商社も安く見える。過去10年の平均の利益で測れば、倍率は10倍を超える。
どちらに重みを置いたか
両者の言い分はほぼ拮抗するが、慎重な見方がわずかに強い。半導体の工場の追い風と検査の底堅さは本物だが、10年の利益率を決めるのは値段を決められない商社の構造と、人と物流の費用の上昇だ。確率は中立を4割に、楽観側に4分の1、悲観側に3分の1強を置いた。財務が堅く需要も消えないので、深い悲観は厚くしない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 7,196 円65 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,269 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 4,196 円38 億円、今との差 −4.6%、 期待の年率 +6.8%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 19,856 円179 億円 | 2,442 円22 億円 | +406.8% | +17.6% | 1,338 円12 億円 |
| やや楽観 | 19% | 11,822 円107 億円 | 1,776 円16 億円 | +209.0% | +11.9% | 2,584 円23 億円 |
| 中立 | 40% | 7,246 円65 億円 | 1,221 円11 億円 | +92.4% | +6.8% | 3,387 円31 億円 |
| やや悲観 | 23% | 3,106 円28 億円 | 999 円9 億円 | −6.7% | −0.7% | 944 円9 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,210 円11 億円 | 555 円5 億円 | −59.9% | −8.7% | 212 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,196 円65 億円 | 1,269 円11 億円 | +92.4% | +6.8% | 8,464 円76 億円 |
今の株価時価総額 4,400 円40 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 東北の半導体の集積で大きく伸びる 利益 13 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 19,856 円179 億円
岩手と宮城の半導体の工場が次々に増強され、関連の電子部品や材料の工場も集まる。東北化学薬品は高純度の薬品と分析の仕事で取引を広げ、インダストリーの取扱量は10年で4割半増える。値段は物価並みに上がり、粗利の率も少し改善する。
メディカルは検査センターとの取引を広げ、研究機関向けも大学の設備の更新で伸びる。売上は600億円に近づき、販管費の伸びを売上の伸びが上回る。営業利益率は3%を超え、過去の最高を初めてはっきり上回る。ROEは9%台に乗り、資本コストを超える。会社は配当を増やし、地域の網に目を付けた大手の商社が提携を持ちかける。
- インダストリー:数量 173(取扱量(千トン・年、推定))× 価格 2.05(千トンあたりの売上(億円))→ 売上 354 億円・営業利益 35 億円。取扱量1.45倍×単価1.37倍、粗利率9.8%
- メディカル:数量 78.0(検査の回数に換算した出荷(百万回・年、推定))× 価格 2.50(百万回あたりの売上(億円))→ 売上 195 億円・営業利益 19 億円。1.1倍×単価1.25倍、粗利率9.7%
- アカデミア・ライフサイエンス:数量 6.0(取引の件数(千件・年、推定))× 価格 6.70(千件あたりの売上(億円))→ 売上 40 億円・営業利益 5 億円。1.23倍×単価1.34倍
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.4 倍、時価総額 178 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:東北の半導体の工場の増強が10年続き、利益率も過去の最高を大きく超える必要がある。12年の実績から見て起きにくいので1割未満。
やや楽観 19% 利益率2%台が定着する 利益 8 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 11,822 円107 億円
東北の工場の新設と増強は波を打ちながら続き、インダストリーの取扱量は10年で2割半増える。値段は物価並みに上がる。メディカルは検査の数がわずかに増え、新しい試薬の採用で売上を伸ばす。研究機関向けも大学の機器の更新で底堅い。
人件費と物流の費用は物価で上がるが、売上の伸びがそれを吸収し、営業利益率は2.3%前後で落ち着く。2026年9月期の水準がそのまま定着する姿だ。営業利益は12億円近くになる。配当は増えるが性向は2割台にとどまり、自己資本は積み上がる。ROEは6%台で、資本コストにはわずかに届かない。
- インダストリー:数量 149(取扱量(千トン・年、推定))× 価格 2.00(千トンあたりの売上(億円))→ 売上 298 億円・営業利益 29 億円。取扱量1.25倍×単価1.33倍、粗利率9.6%
- メディカル:数量 75.0(検査の回数に換算した出荷(百万回・年、推定))× 価格 2.40(百万回あたりの売上(億円))→ 売上 180 億円・営業利益 17 億円。1.06倍×単価1.2倍
- アカデミア・ライフサイエンス:数量 5.5(取引の件数(千件・年、推定))× 価格 6.60(千件あたりの売上(億円))→ 売上 36 億円・営業利益 5 億円。1.13倍×単価1.32倍
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 105 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年9月期の上方修正と、東北の工場の投資の続きを素直に見る筋書き。過去に2%台を出した年もあるので中立の次に置いた。
中立 40% 数量は少し伸び、人件費が利益を食う 利益 5 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 7,246 円65 億円
東北の工場の投資は今期の山を越え、インダストリーの取扱量は10年で1割増にとどまる。値段は物価よりやや低く上がる。メディカルは高齢化で検査が増える分と人口減が打ち消し合い、数量は横ばいだ。試薬の値段は診療報酬に抑えられ、物価ほどは上がらない。
販管費の中心の人件費と物流の費用は物価で上がる。倉庫やシステムの償却は取得した時の値段のまま残るが、全体を押し下げるほどではない。営業利益は6.5億円前後で、売上の1.4%だ。今期の見込みより少し低い。
配当性向は2割前後のままで、利益の多くは売掛金と在庫に回る。自己資本は110億円台に太るが、ROEは4%台で資本コストに届かない。
- インダストリー:数量 131(取扱量(千トン・年、推定))× 価格 1.95(千トンあたりの売上(億円))→ 売上 255 億円・営業利益 24 億円。取扱量1.1倍×単価1.3倍(大手の工場の購買で物価をやや下回る)、粗利率9.4%
- メディカル:数量 70.7(検査の回数に換算した出荷(百万回・年、推定))× 価格 2.30(百万回あたりの売上(億円))→ 売上 163 億円・営業利益 15 億円。検査は横ばい×単価1.15倍。検査の値段は国の診療報酬で抑えられ、試薬の値上げは物価ほど通らない
- アカデミア・ライフサイエンス:数量 4.9(取引の件数(千件・年、推定))× 価格 6.50(千件あたりの売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 4 億円。件数横ばい×単価1.3倍
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 61 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今期の山を割り引き、数量の小さな伸びと販管費の物価の上昇が釣り合う姿を中心に置いた。過去12年の利益率の中央値も1%台だ。
やや悲観 23% 利益率が1%を割る昔の姿に戻る 利益 2 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 3,106 円28 億円
東北の工場の新設は止まり、一部の工場は撤退する。インダストリーの取扱量は1割減り、大手の工場の購買は値下げを迫る。メディカルは病院の統廃合で検査の数が減り、大手の医薬品卸が大きな病院を奪う。粗利の率は8%台に下がる。
会社は営業所を統合して販管費を抑えるが、人件費の上昇で削れる幅は小さい。営業利益は2億円で、売上の0.6%だ。2010年代の後半と同じ姿だ。配当は据え置かれ、自己資本はゆっくり増えるが、ROEは2%台に沈む。持ち合い株と売掛金に寝た資本は、株主の稼ぎに変わらない。大きな損は出ないが、株主の取り分は細る。
- インダストリー:数量 107(取扱量(千トン・年、推定))× 価格 1.75(千トンあたりの売上(億円))→ 売上 187 億円・営業利益 16 億円。取扱量0.9倍×単価1.17倍、粗利率8.8%
- メディカル:数量 66.0(検査の回数に換算した出荷(百万回・年、推定))× 価格 2.15(百万回あたりの売上(億円))→ 売上 142 億円・営業利益 12 億円。0.93倍×単価1.08倍
- アカデミア・ライフサイエンス:数量 4.5(取引の件数(千件・年、推定))× 価格 6.00(千件あたりの売上(億円))→ 売上 27 億円・営業利益 3 億円。0.92倍×単価1.2倍
倍率:ROE約1.8%がk8%を大きく下回る。悲観側の上限は稼ぐ力(純利益÷k)で、1÷kの12.5倍より低い11倍。今の自己資本に対するPBRは中立より低い。
確率:2014〜2019年は営業利益率が1%未満だった。工場の投資が一巡し、人件費の上昇を転嫁できなければその姿に戻るので2割強。
悲観 12% 大手と直販に挟まれ赤字に沈む 利益 −3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 1,210 円11 億円
メーカーはネットでの直販を広げ、大手の工場は全国の大手商社に注文をまとめる。東北化学薬品のインダストリーの取扱量は4分の1減る。メディカルでは大手の医薬品卸が東北の検査センターと病院の取引を奪い、数量は2割減る。粗利の率は8%まで下がる。
小口の配送の網は残るが、売上が落ちても倉庫と人の費用はすぐには減らない。営業赤字が続き、配当は減らされる。会社は持ち合い株の売却で赤字と配当を埋め、土地の一部も売る。少数株主に残るのは、手元の現金と持ち合い株のうち戻る分だけだ。地域の網は残っても、それを稼ぎに変える力が失われる。
- インダストリー:数量 89.0(取扱量(千トン・年、推定))× 価格 1.60(千トンあたりの売上(億円))→ 売上 142 億円・営業利益 11 億円。取扱量0.75倍×単価1.07倍、粗利率8%
- メディカル:数量 55.0(検査の回数に換算した出荷(百万回・年、推定))× 価格 2.00(百万回あたりの売上(億円))→ 売上 110 億円・営業利益 9 億円。0.78倍×単価据え置き
- アカデミア・ライフサイエンス:数量 4.0(取引の件数(千件・年、推定))× 価格 5.50(千件あたりの売上(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 2 億円。0.82倍×単価1.1倍
倍率:赤字なのでPBRで置く。稼ぐ力は無く、床は純現金と持ち合い株の税後に戻り方0.5を掛けた額。今の自己資本79.3億円に0.1375倍を掛けた。
確率:商社の中抜きと東北の人口減が重なる構造的な負けの筋書き。財務は堅く需要も消えないので1割余りにとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
インダストリー
東北の製造業向けの化学薬品・工業材料。
| 数量取扱量(千トン・年、推定) | 価格千トンあたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 119 | 1.50 | 179 | 17 |
| 10 年後 中立 | 131 | 1.95 | 255 | 24 |
取り方:数量の開示は無い。売上178.6億円を、工業薬品の平均単価を1トン0.015億円前後と置いて約11.9万トンと推定。会社はセグメントの利益を粗利で示すので、ここの利益は粗利で、販管費は調整に置いた。
メディカル
病院・検査センター向けの臨床検査の試薬・消耗品・機器。
| 数量検査の回数に換算した出荷(百万回・年、推定) | 価格百万回あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 70.7 | 2.00 | 141 | 13 |
| 10 年後 中立 | 70.7 | 2.30 | 163 | 15 |
取り方:数量の開示は無い。売上141.4億円を、試薬と消耗品の売上を検査1回あたり0.0002億円前後と置いて約7,070万回と推定。利益は粗利。
アカデミア・ライフサイエンス
大学・研究機関向けの試薬・研究用機器と据え付け・保守。
| 数量取引の件数(千件・年、推定) | 価格千件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 4.9 | 5.00 | 24 | 3 |
| 10 年後 中立 | 4.9 | 6.50 | 32 | 4 |
取り方:件数の開示は無い。売上24.4億円を、1件あたりの平均を0.005億円と置いて約4,900件と推定。大型の機器の案件で年ごとに大きく振れる。利益は粗利。
リスクと懸念
半導体の追い風の一巡
2026年9月期の増益は、東北の半導体や電子部品の工場の新設に支えられた面が大きい。工場ができあがれば薬品の注文は定常の量に戻り、利益率は過去の1%前後に戻りうる。
値決めの力の弱さ
仕入れ値はメーカーが、売り値は大手の工場と病院が握る。粗利は9%余りで、物流と人件費の上昇を転嫁できなければ営業利益はすぐに消える。
大手卸と直販の攻勢
アルフレッサやスズケンなど医薬品卸の大手も検査試薬を扱い、大きな病院の取引を争う。メーカーのネット直販も広がり、小口の配送という強みが削られる恐れがある。
東北の人口減
東北の人口は全国より速く減る。病院の統廃合や工場の撤退が進めば、検査と薬品の数量は長い目で細る。
診療報酬と試薬の値段
検査の値段は国の診療報酬で決まり、改定のたびに抑えられる。試薬の値上げは物価ほどは通らず、メディカルの粗利は薄くなりやすい。
寝た資本
持ち合い株20億円と売掛金が資本の多くを占め、配当性向は2割前後だ。ROEは資本コストに届かず、帳簿の積み上がりが株主の稼ぎにつながりにくい。
今後の分かれ目
- 営業利益率2%以上が3年続く
- やや楽観の筋書きに近づく。営業利益は10億円を超える。
- 配当性向を4割以上に上げるか、自社株買いを始める
- 溜まる現金が株主に戻る道が見え、価値は上がる。
- 東北の半導体の工場の投資が止まる
- インダストリーの数量が落ち、中立から悲観側に寄る。
- 大手の医薬品卸が東北の病院の試薬を取りに来る
- メディカルの粗利が削られ、やや悲観の筋書きに寄る。
- 大手の化学品商社が買収や資本提携を持ちかける
- 地域の網に値段が付く。ただ安定株主の判断しだいで当ては無い。
見ておくもの
- 営業利益率と販管費の伸び
- インダストリーの粗利と東北の工場の投資
- メディカルの粗利率
- 配当性向と自社株買い
- 持ち合い株の扱い
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や今のPERから置いていない。中立の10年ROEは4%台で資本コスト8%に届かないので、PERの上限は1÷kの12.5倍で、薄い粗利と人件費の上昇への弱さを見て8割の10倍。同じ領域の昭栄薬品(中立9.4倍・ROE4.9%)と同じ水準だ。楽観だけROEがkを上回り、下限の1÷kにした。悲観側はROEがkを下回るので、稼ぐ力(純利益÷k)か、純現金と持ち合い株の税後に戻り方0.5を掛けた床で置いた。借りている倉庫と営業所の家賃は営業費用に入っており、新しいリース会計で形が変わっても今の形で揃えている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→13.4 倍・やや楽観 PER 11→12.5 倍・中立 PER 10→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に質の上乗せ0.5%。