結論
東邦レマックは、しまむらやチヨダなどの量販店に靴を卸す専門商社だ。売上は10年で3分の1まで縮み、本業の営業利益は10年以上ほぼ赤字が続いている。筆者の結論は「割高」である。10年後の稼ぐ力と資産から出した価値は、今の時価総額を大きく下回る。
会社は2025年に、不動産事業を新しい柱に掲げた。借入を約7億円増やして賃貸用の物件を買い、暗号資産にも1億円を投じた。靴の卸が稼げなくなった穴を、資産運用で埋める形だ。
帳簿は厚い。純資産は45億円で、株価はその6割にも届かない。ただ、現金の多くは借入に支えられ、資産を売って株主に返す道は見えない。経営は大株主が握り、方針は変わりうる。
筆者は、割安に見える帳簿より、稼ぐ力の弱さを重く見る。靴の卸が黒字に戻らない限り、資産の価値も時間とともにすり減る。
決算期は12月で、直近の本決算は2025年12月期である。会社の予想では2026年12月期に経常の黒字化を見込むが、筆者は10年の中立で靴の薄い黒字と不動産の小さな上積みにとどまると見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべきは3つだ。第一に、本業の持続性。靴の卸は10年以上赤字が続き、客も2社に偏っている。10年後に今より強いと言える材料がない。
第二に、経営の資本配分。本業が弱った会社が、借入で不動産を買い、暗号資産にも手を出した。売れる資産は確かにあるが、増やす方向に使われている。株主に返す方向ではない。
第三に、安全域。純資産は時価総額の2倍近くあり、一見すると厚い。しかし、現金は借入で支えられ、不動産は借金で買っている。資産を売って株主に返す決定は、少数株主にはできない。
筆者は、帳簿の厚さに安全域を認めない。稼ぐ力が戻る証拠が出るまで、この会社には手を出さない。
要するに、堀のない卸に、借入で買った不動産と暗号資産が乗った会社だ。資産の厚さは安心材料に見えるが、使い方を決めるのは大株主であり、少数株主の取り分は不確かである。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は靴の卸だ。婦人靴、紳士靴、ゴム靴・スニーカーを、アジアで作って量販店に納める。自社のブランドと、取引先が決める仕様に合わせて作るODM商品の両方がある。売上のうち、チヨダとしまむらの2社で5割近くを占める。
2025年12月期は、婦人靴が苦戦した。販売単価は下がり、足数も減った。ブランドシューズの一部から撤退し、在庫の評価損も出た。その結果、シューズ事業は営業赤字になった。
もうひとつの柱が、2025年から本格化した不動産事業だ。賃貸用の事務所や住宅を持ち、再販売も手がける。賃貸等不動産の帳簿価額は13億円で、時価は18億円と開示されている。売上はまだ1億円に満たず、靴事業の穴を埋める規模ではない。
会社は、靴の卸で培った量販店との取引を土台に、不動産で収益を補う二本足を目指している。
シューズ事業の売上は44.5億円で全体の98%を占め、不動産は1億円弱にすぎない。取引先の上位はチヨダが約11億円、しまむらが約11億円で、どちらも量販店である。アジアの工場に生産を委託し、在庫と為替の変動を卸が抱える構造だ。
優良さと弱いところ
優良とは言えない。靴の卸に堀はない。量販店は自分で海外から仕入れる力を持ち、商社を通さなくても作れる。ブランドは小さく、値段を決める力も弱い。販売単価は下がり、足数も減り続けた。
客も偏っている。上位2社で売上の5割近くで、どちらかが取引を絞れば、売上は一気に落ちる。10年で売上が160億円から46億円まで縮んだのは、その弱さの結果だ。
資本効率はほぼゼロで、財務は一見強い。自己資本比率は67%あるが、現金は新しい借入で増えた分が大きい。営業のキャッシュフローは約5億円の流出だった。暗号資産を持つなど、本業から離れた投資も増えた。経営の資本の使い方は、筆者の目には落ち着かない。
本業のキャッシュ創出が弱い点も見逃せない。売上総利益から販売費を引くと赤字になり、配当や投資は過去の蓄えと資産の売却で賄ってきた。この構図が続く限り、強い会社とは評価できない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の靴の市場は、数量が安定した成熟市場だ。ただ、国内で売られる靴の大半は輸入で、量販店とスポーツ・カジュアルのブランドが主役になっている。スニーカーとハンズフリーシューズが好調で、それ以外の商品は厳しい。
卸の立場は弱い。量販店は大量に仕入れて価格を決め、卸は値引きと在庫を引き受ける。ブランドやライセンスの商品は、競争が激しく、流行で当たり外れが大きい。ODMで堅調でも、PBやライセンスが苦戦すれば、全体の利益は残らない。
不動産事業は別の業界だ。賃貸不動産は金利が上がる世界で、借入で買うほど利払いが重くなる。物価の上昇で賃料は上がるが、買う値段も建築費も同じく上がる。この会社が不動産に参入するのは、本業が弱ったからで、強みを活かすためではない。
今後の分かれ目は、靴の卸が黒字に戻るかと、不動産を借入でどこまで広げるかである。
靴の輸入は円安で仕入れ原価が上がりやすく、卸は価格転嫁が遅れる。量販店は価格を据え置く圧力が強く、為替が戻らない限り粗利は薄いままだ。不動産は、地方の小規模物件に偏れば流動性が低く、売りたい時に売れない恐れもある。
資本政策と M&A
配当は小さいが続いている。直近の配当総額は約0.6億円だ。ただ、2025年の純利益は特別利益の売却益で支えられており、本業の利益では賄えていない。配当方針は「安定かつ充実した配当」と「内部留保の充実」を並べている。
大株主は、フロンティアグループ(18.6%)、個人の笠井庄治氏(13.5%)、金子将幸氏(11.6%)の順だ。筆頭株主の代表者と幹部は社外取締役を務める。会社は、これらの株主と協力して不動産事業を新たに展開する方針を示している。
資本の使い方は、不動産と暗号資産の取得で借入が約7億円増えた点が目立つ。固定資産と投資有価証券の売却益は出したが、本業の赤字を埋める手段としては、続けにくい。外部の試算では、10年以内のTOB・買収の確率は2割ほどだ。
株主優待の記載は確認できなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
会社の帳簿は厚い。純資産は45億円で、時価総額の2倍近い。賃貸不動産は時価で簿価を5億円上回り、投資有価証券も持つ。借入はあるが、現金が17億円ある。靴の卸は、ブランドシューズの不採算から撤退し、足数が増えた紳士靴や好調なODMに絞れば、黒字に戻れる。
不動産への参入は、靴で稼げなかった時代を終わらせる。賃貸は物価で賃料が上がり、安定した収益が積み上がる。筆頭株主のフロンティアグループは不動産に強く、役員にも経験者がいる。協力すれば、物件の取得と運営は速い。
株価は純資産の6割に届かず、会社の中長期目標(営業利益率2.0%)が達成されれば、見直される余地は大きい。固定資産と投資有価証券の売却益を出す実績もあり、必要なら資産を現金化して株主に返せる。2026年12月期は経常の黒字化を見込んでいる。
加えて、足元の営業赤字はブランド撤退の費用と在庫評価損を含み、一時的な部分もある。費用が一巡すれば、赤字は縮み、不動産の賃料が通年で入る分、利益は上向く余地がある。
慎重な見方
靴の卸は構造的に衰退している。売上は10年で160億円から46億円まで縮み、営業利益は赤字か、ほぼゼロが続いた。販売単価は下がり、足数も減り、上位2社に売上の5割近くを依存する。ブランドからの撤退は、衰退を認めた証拠でもある。
不動産への転身は、借入頼みだ。2025年に借入が約7億円増え、物件と販売用不動産に回った。金利が3%台に上がる世界では、利払いが重く、物件の利回りで賄えるとは限らない。暗号資産への投資は、本業とも不動産とも関係がなく、資本配分の規律が緩んでいる証拠だ。
資産は厚いが、株主のものになる保証がない。大株主の持分は4割を超え、資産を売って返す決定は少数株主にはできない。純資産が時価総額の2倍あっても、使われ方次第で価値は減る。「割安」ではなく、稼ぐ力が低い会社の適正な評価の可能性が高い。
加えて、会社は10年以上、中期目標を掲げながら黒字を定着させられなかった。目標の営業利益率2%は、過去12年の山4.6%を除けば一度も届いていない水準で、達成の実績がない。
どちらに重みを置いたか
資産の厚さは事実だが、稼ぐ力は弱く、資本の使い方も不安だ。確率は、中立とやや悲観に重く置き、悲観も1割残した。
筆者は、帳簿の厚さを床として評価するが、戻り方は半分に割った。不動産への転身が成果を出す証拠が開示で出るまで、楽観側の確率は上げない。
結論として、筆者は資産の床を認めつつ、稼ぐ力に乏しい点を重く見て、今の値段は割高と判断した。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 302 円15 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 43 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 155 円8 億円、今との差 −69.0%、 期待の年率 −3.7%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 544 円28 億円 | 79 円4 億円 | +24.6% | +2.2% | 44 円2 億円 |
| やや楽観 | 18% | 403 円20 億円 | 59 円3 億円 | −7.6% | −0.8% | 83 円4 億円 |
| 中立 | 38% | 338 円17 億円 | 49 円3 億円 | −22.5% | −2.5% | 147 円7 億円 |
| やや悲観 | 27% | 177 円9 億円 | 29 円2 億円 | −58.7% | −8.5% | 56 円3 億円 |
| 悲観 | 10% | 147 円8 億円 | 0 円0 億円 | −70.5% | −11.5% | 15 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 302 円15 億円 | 43 円2 億円 | −31.1% | −3.7% | 344 円18 億円 |
今の株価時価総額 500 円25 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 靴が黒字に戻り、不動産の賃料が積み上がる 利益 2 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 544 円28 億円
ブランドシューズからの撤退と不良在庫の圧縮が効き、靴の卸は足数の減少が止まり、営業利益率3%で黒字に戻る。ODMと紳士靴の定番が伸び、量販店との取引も安定する。不動産は賃貸用の物件を借入で増やし、賃料が物価に連れて上がる。運用資産は今の2倍近くになり、安定した賃料収入が靴の弱さを補う。会社は目標の営業利益率2%を超え、配当も少しずつ増やす。
この筋書きでは、会社の掲げる不動産との二本足が機能し、靴の弱さを賃料が補う形で、株主への還元も少しずつ増える。量販店との取引が安定し、ODMの採算も保たれる。ただ、それでも売上の規模は今の水準を超えられず、利益の伸びは主に不動産の拡大に頼る。
- シューズ事業:数量 282(年間の販売足数(万足・推定))× 価格 0.19(1足あたり平均売上(億円/万足・名目))→ 売上 53 億円・営業利益 2 億円。足数0.95倍、1足あたり1.25倍、利益率3%(ブランド撤退と在庫圧縮が効く)
- 不動産事業:数量 40.0(運用する不動産の帳簿価額(億円・実質))× 価格 0.07(帳簿価額1億円あたりの年間売上(億円/億円・名目、賃料と再販売益))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。運用資産40億円(借入と利益で拡大)、賃料等1.40倍、利益率45%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.1% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)7 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 28 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:靴の卸が黒字に戻り、不動産の運用も成功する必要がある。10年以上赤字が続いた事業が戻る確度は高くない。
やや楽観 18% 会社の目標に近い、薄い黒字に落ち着く 利益 1 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 403 円20 億円
靴の卸は足数の減少が緩やかになり、不採算の整理で営業利益率が2%台に乗る。量販店2社への依存は続くが、ODMで取引は保たれる。不動産は借入を抑えながら物件を増やし、賃料が物価並みに上がる。会社の中長期目標である営業利益率2.0%を達成する形になり、配当は今の水準を保つ。ただ、売上は今より小さいまま、規模の縮みは止まらない。
この筋書きでは、靴の縮みが止まり、不動産の小さな黒字が全体の利益を支える。大きな成長はないが、赤字には戻らない。量販店2社への依存は残り、卸値を決める力も弱いまま。会社の目標に近づく程度で、大きな再評価に値するほどの成長ではない。
- シューズ事業:数量 261(年間の販売足数(万足・推定))× 価格 0.18(1足あたり平均売上(億円/万足・名目))→ 売上 47 億円・営業利益 1 億円。足数0.88倍、1足あたり1.20倍、利益率2.2%
- 不動産事業:数量 30.0(運用する不動産の帳簿価額(億円・実質))× 価格 0.07(帳簿価額1億円あたりの年間売上(億円/億円・名目、賃料と再販売益))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。運用資産30億円、賃料等1.34倍(物価並み)、利益率40%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.7% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)7 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 20 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が掲げる営業利益率2.0%に近い黒字が10年続く姿。靴の縮みが止まれば成り立つ。
中立 38% 靴の縮みは続き、不動産が薄い黒字を足す 利益 1 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 338 円17 億円
靴の卸は足数が今の8割ほどまで減り、卸値は物価に届かない伸びにとどまる。ブランドからの撤退で不採算は減り、営業利益率は1.5%と、会社の目標2.0%に届かない薄い黒字になる。不動産は運用資産が3割ほど増え、賃料は物価並みに上がるが、借入の利払いが利益を削る。減価償却は取得時の値段のままで、物価で増やさない。会社の全体の営業利益は1億円台にとどまり、配当は今の水準を保つのがやっとだ。
この筋書きでは、靴の縮みが続く中で不動産が薄い黒字を足し、会社全体は低収益のまま存続する。資産の厚さは残るが、株主への還元は限られる。
- シューズ事業:数量 243(年間の販売足数(万足・推定))× 価格 0.17(1足あたり平均売上(億円/万足・名目))→ 売上 42 億円・営業利益 1 億円。足数0.82倍(縮みは緩やかに)、1足あたり1.15倍(卸値は量販店に抑えられ物価に届かない)、利益率1.5%
- 不動産事業:数量 25.0(運用する不動産の帳簿価額(億円・実質))× 価格 0.07(帳簿価額1億円あたりの年間売上(億円/億円・名目、賃料と再販売益))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。運用資産25億円、賃料等1.34倍、利益率40%(減価償却は物価で増やさず取得時の値段のまま)
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 1.9% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)7 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 16 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10年続いた縮みが緩やかに続き、量販店が価格を決める構図が変わらない。不動産が小さな黒字を足して、全体は薄い黒字にとどまる、最も起こりやすい形。
やや悲観 27% 靴の赤字が続き、借入の利払いが重くなる 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 177 円9 億円
靴の卸は足数が今の7割まで減り、量販店2社のどちらかが取引を絞る。卸値は物価に追いつかず、営業赤字が続く。不動産は借入で買った物件の利払いが重く、賃料の増加が追いつかない。会社は存続し、配当も続けるが、利益ではなく資産の売却益で賄う形になる。資産は厚いため倒れはしないが、稼ぐ力は低いままで、大株主の判断で資産の使われ方が決まる。
この筋書きでは、靴の赤字が続き、借入の利払いが重なる。資産を売って補う形が続き、資産の厚さは少しずつ減っていく。取引先の絞り込みと円安による仕入れ原価の上昇が重なり、粗利が削られる。配当は資産の売却益に頼る形で、持続性は低い。
- シューズ事業:数量 214(年間の販売足数(万足・推定))× 価格 0.16(1足あたり平均売上(億円/万足・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 0 億円。足数0.72倍、1足あたり1.08倍、赤字1%
- 不動産事業:数量 22.0(運用する不動産の帳簿価額(億円・実質))× 価格 0.06(帳簿価額1億円あたりの年間売上(億円/億円・名目、賃料と再販売益))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。運用資産22億円(拡大が止まる)、賃料等1.20倍、利益率30%
倍率:稼ぐ力から出る価値は小さく、売れる資産(floor_assets_oku)が床になる。今の自己資本45.2億円×PBR0.20が床の額に当たる。
確率:過去10年、営業利益がほぼ赤字だった実績がそのまま続く筋書き。借入が増えた今、利払いが加わる分だけ重い。
悲観 10% 靴の主要顧客を失い、不動産も縮んで赤字が膨らむ 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 147 円8 億円
チヨダかしまむらのどちらかが取引を大きく絞り、靴の売上は半分近くまで縮む。卸値は物価に追いつかず、赤字が膨らむ。不動産は借入の返済のために一部を売却し、運用資産が縮む。暗号資産や投資有価証券の評価損も出る。配当は止まり、会社は事業の縮小と資産の売却を迫られる。ただ、大株主が方針を決めるため、売却代金が少数株主に回るかどうかは決まっていない。
この筋書きでは、主要顧客の喪失と不動産の縮小が重なり、資産の売却で延命する形になる。少数株主への還元は期待しにくい。在庫の評価損と不動産の売却損が重なり、純資産は4割ほど減る。経営は縮小均衡を選ぶが、立て直しには時間がかかり、少数株主の取り分は小さい。
- シューズ事業:数量 163(年間の販売足数(万足・推定))× 価格 0.15(1足あたり平均売上(億円/万足・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 −1 億円。足数0.55倍、1足あたり1.00倍、赤字5%
- 不動産事業:数量 15.0(運用する不動産の帳簿価額(億円・実質))× 価格 0.06(帳簿価額1億円あたりの年間売上(億円/億円・名目、賃料と再販売益))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。運用資産15億円(売却で縮小)、賃料等1.10倍、利益率20%
倍率:赤字なので稼ぐ力は使えず、売れる資産(floor_assets_oku)の床で見る。今の自己資本45.2億円×PBR0.17が床の額に当たる。
確率:上位2社のどちらかとの取引を失い、靴の売上が半分近くまで縮む複合の負け筋。借入が増えた今、赤字は資産を食う。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
シューズ事業
婦人靴・紳士靴・ゴム靴の卸。ODMと自社ブランド、ライセンスブランド。量販店向けが中心。
| 数量年間の販売足数(万足・推定) | 価格1足あたり平均売上(億円/万足・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 297 | 0.15 | 45 | −1 |
| 10 年後 中立 | 243 | 0.17 | 42 | 1 |
取り方:売上44.52億円・営業損失1.33億円は開示(2025年12月期)。足数は開示されないので、1足あたり平均売上を約0.15万円(卸値)と置いて約297万足と推定した。販売単価は前期比で下がっており、物価並みに上がる前提は置いていない。
不動産事業
賃貸用の事務所・住宅の保有と、販売用不動産の再販売。2025年から本格化。
| 数量運用する不動産の帳簿価額(億円・実質) | 価格帳簿価額1億円あたりの年間売上(億円/億円・名目、賃料と再販売益) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 18.7 | 0.05 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 25.0 | 0.07 | 2 | 1 |
取り方:売上0.94億円・営業利益0.12億円は開示。運用資産は、賃貸等不動産の帳簿価額13.46億円と、販売用不動産の増加分約5.2億円を足した約18.7億円と推定した。2025年は新規取得が期末に近く、通年の賃料は反映されていない。
リスクと懸念
靴の卸の構造的な縮み
売上は10年で160億円から46億円まで縮み、営業利益は10年以上ほぼ赤字だ。販売単価は下がり、足数も減った。量販店は自分で海外から仕入れる力を持ち、卸を通す理由が薄れている。縮みが止まる証拠は、まだ開示にない。
上位2社への依存
チヨダとしまむらの2社で売上の5割近くを占める。どちらかが取引を絞れば、売上と利益は一気に落ちる。価格も量販店が決めるため、値上げを通す力は弱い。
借入による不動産事業
2025年に借入が約7億円増え、物件の取得に回った。金利が上がる世界では、利払いが重く、賃料で賄えるとは限らない。新規事業は経験が浅く、賃貸は実績が小さい。物件の価格が下がれば、資産の厚さも薄れる。
暗号資産と資本配分の規律
本業が弱った会社が、暗号資産に1億円を投じ、評価損も出した。株主に返す方向ではなく、増やす方向への資金の使い方が目立つ。経営の資本配分の規律が緩んでいる恐れがある。
大株主の意向
上位3株主の持分は4割を超え、筆頭株主の代表者が社外取締役を務める。資産を売って株主に返すか、不動産に使い続けるかは、少数株主には決められない。純資産が厚くても、戻る保証はない。
継続企業の前提(重要事象等)
有価証券報告書には、継続企業の前提に関する重要事象等の記載がある。会社は対応策により重要な不確実性は認められないと判断しているが、本業の赤字が続けば、記載が重くなる可能性がある。
今後の分かれ目
- 靴事業の営業利益が黒字で定着し、営業利益率が2%を超えたら
- やや楽観・楽観の確率を上げ、中立の利益率を引き上げる。10年の最大の分かれ目になる。
- チヨダまたはしまむらの取引が大きく減ったと開示されたら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。靴の売上の前提を下げる。
- 不動産事業が借入を抑えたまま黒字を積み上げたら
- 不動産の運用資産と利益率を上方修正し、やや楽観の確率を上げる。
- 資産の売却代金を配当や自社株買いで株主に返す方針が出たら
- 現金の戻り方を0.5から上げ、価値を引き上げる。
- 暗号資産や不動産の追加取得で借入がさらに増えたら
- 悲観の確率を上げ、現金の戻り方を下げる。
見ておくもの
- 四半期ごとのシューズ事業と不動産事業の営業損益
- 主要顧客(チヨダ・しまむら)への売上の推移
- 借入残高と、不動産・暗号資産の取得
- 配当方針と、資産売却の方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の純利益÷自己資本が資本コストを大きく下回るため、1÷k(約11倍)を上限とする式から置いた。今の株価や過去のPER・PBRには寄せていない。今の時価総額は26億円で純資産の6割だが、PBR1倍割れを割安の根拠にしなかった。営業利益率は過去12年の山(4.6%)を大きく下回る1.5%に置き、靴の黒字化が続いた実績がないことを織った。数量は実質で縮め、価格は靴の卸値が量販店に抑えられるため物価に届かない1.15倍とし、物価の二重がけはしていない。不動産の賃料は物価並みの1.34倍、減価償却は取得時の値段のままとした。決算期は12月(20日締め)。新リース会計基準(2027年12月期から)の影響は小さく、10年後は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→11.11 倍・やや楽観 PER 9.5→11.11 倍・中立 PER 9→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。