結論
トーホーは、飲食店に食材を届ける業務用食品卸の国内首位だ。神戸に本社を置き、居酒屋、ホテル、給食まで幅広く納める。飲食店が現金で仕入れる店「A-プライス」も96店持つ。
筆者の結論は「適正」だ。割安に近い適正とみる。利益率は3%と薄いが、商品の回転が速く、ROEは13%台に乗る。この資本効率の高さを、今の値段は十分に評価していない。
2026年1月期は売上2,597億円、営業利益78億円で、どちらも過去最高だった。訪日客と大阪・関西万博が追い風になった。2024年に食品スーパー事業から撤退し、赤字の源を断ったことも効いた。
10年先の中立は、売上3,700億円、営業利益117億円とみる。外食の量は人口減で細るが、値段は物価並みに上がり、関東のシェアが伸びる。利益率は3%台にとどまる。薄利ゆえ、人件費と物流費の上昇に弱く、ROEは10%前後に下がる。
懸念は、外食需要の波と、薄利構造の脆さだ。外食店の数が減る年は、売上がすぐに落ちる。2021年1月期には、創業以来初の営業赤字も経験した。
株主への還元は、配当性向を35%から40%へ引き上げる途上にある。大株主の国分グループとの距離は、将来の再編の含みを残す。強気の見方も慎重な見方も、この二つの点で大きく割れる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、トーホーは「地味だが、仕組みが分かりやすい会社」だ。飲食店がある限り、食材の配送は要る。10年先も事業はなくならない。
堀は深くない。商品は他社も扱える。ただ、取引先の困りごとを一括で引き受ける力と、物流網の厚みが、じわじわ効く。薄利の卸にしては、ROEが13%台と高いことは評価できる。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、物流への投資に半分ほどが回る。設備投資が年50億円規模あるためだ。利益のすべてが現金で残るわけではない。
資本の使い方は、守りに転じた点が良い。食品スーパーの赤字事業を整理した。配当性向を35%から40%へ引き上げる方針も、オーナーの目には好ましい。M&Aは今のところ小粒だが、再開の方針だけに、買収の値段と統合の出来が最大の見どころになる。
安全域は厚くない。今の値段は、利益が少し落ちても耐えられる水準にあるが、外食の波にさらされる事業だ。筆者は、確信度を中くらいに置く。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は、食材を仕入れて飲食店に届け、その間の利ざやを取ることだ。扱う品は約16万点に及ぶ。
柱は三つある。売上の約77%を占めるのが、ディストリビューター事業だ。外食チェーンや飲食店、ホテル、給食施設に、冷凍食品、調味料、飲料などを配送する。国内の81事業所に加え、シンガポール、マレーシア、香港、ベトナムにも拠点がある。営業担当が毎日のように店を回り、注文と提案をまとめて受ける。
次が、売上の約17%のキャッシュ&キャリー事業だ。飲食店が自分で買い付けに来る店で、「A-プライス」の名で関東以西に96店ある。一般客も買える。繁華街に近い立地が増えている。三つ目が、売上の約5%のフードソリューション事業だ。業務支援システム、衛生管理、厨房機器の販売、店舗の施工を手がける。卸より利益率が高い。
2024年11月には、食品スーパー事業から完全に撤退した。長く赤字だった事業で、年7億円ほどの赤字がなくなった。
自社ブランド品と、自社焙煎のコーヒーにも力を入れる。業務用の自社ブランド品の比率は、直近で9%台と低い。ここを上げられれば、利益率の底上げにつながる。2025年9月には国産鶏肉の加工会社を取り込み、食材を自前で調達する一歩も踏み出した。
優良さと弱いところ
優良さの核は、飲食店の「困りごと」をまるごと引き受けられる点だ。食材の配送だけでなく、人手不足に効く加工品の提案、厨房機器、衛生管理、店舗の施工までそろう。取引先は、一つの窓口で済ませたくなる。
規模でも首位に立つ。国内の業務用食品卸は約4兆円の市場で、トーホーのシェアは5.8%だ。数字は小さく見えるが、市場が細かく割れているため、トップの位置づけになる。物流網の厚みも、新規の参入を難しくしている。
資本効率は良い。営業利益率は3%と薄いが、ROEは13%台に乗る。薄利でも回転が速く、負債の力も借りているためだ。2024年1月期にROE10%以上、PBR1倍以上という中期計画の目標を前倒しで達成した。自己資本比率は35.7%で、純有利子負債は74億円と軽い。
弱みは、利益率の薄さそのものだ。1ポイント下がれば、利益は3割以上減る。人件費と物流費の上昇を、価格に転嫁できるかが問われる。業務用の自社ブランド品の比率も9%台と低く、利益率を押し上げる手段はまだ細い。
筆者は、食品スーパー撤退の判断を評価する。長年の赤字を切り、本業に資本を集めた。ただ、外食の波に左右される性質は変わらない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の業務用食品卸は約4兆円の市場だ。外食の需要は、人口と外食の頻度、それに訪日客の消費で決まる。人口は減るので、長い目では細る。会社自身も、外食は中長期で縮むとみている。
一方で、足元は追い風が強い。訪日客が増え、2026年1月期は大阪・関西万博の特需もあった。外食業界の人手不足は深刻で、厨房の手間を減らす加工品や、人手に頼らない仕組みの需要が高まっている。卸にとっては、提案の余地が広がる局面だ。
ただし、万博の特需は2027年1月期に剥落する。会社の予想も、その前提で組まれている。
競争の構図は、二層に分かれる。業務用の専業では、尾家産業、久世、サトー商会などが競う。総合卸の国分、三菱食品、日本アクセスは、業務用にも手を伸ばす。トーホーの大株主でもある国分グループとは、酒類で協業している。
首都圏は市場の4割超を占めるが、トーホーのシェアは3.7%と低い。ここが最大の伸びしろだ。横浜の物流拠点への集約と、街中の小型拠点「フロントステーション」で、営業と配送の効率を上げる。
食品卸は規模が大きいほど物流と調達で有利で、再編が繰り返されてきた。業務用は細かく割れており、同業を買う余地が残る。物流費と人件費は業界全体で上がっていて、値上げを通せる卸と通せない卸で、利益率の差が開くだろう。
資本政策と M&A
還元は着実に厚くなっている。2026年1月期の配当性向は35%で、中期計画の目標は40%だ。2027年1月期は40.5%の見込みで、目標に届く。2026年2月には株式を1株から3株に分けた。会社は新しい中期計画を作成中で、その後の配当方針はまだ出ていない。自社株買いの実績は目立たない。
株主優待もある。300株以上の株主に、A-プライスで使える割引券などを贈る。費用の開示はなく、原価で年0.3億円ほどと筆者は推計する。
お金の使い道は、物流拠点と出店、それにM&Aだ。設備投資は年50億円規模。M&Aは再開の方針で、2025年9月に国産鶏肉加工の三協食鳥、2026年2月にベトナムのKOME88への40%出資があった。TSUTAYAを運営する会社とのフランチャイズ提携の合意もある。今後は国内の同業や外食支援の会社も対象にする。
大株主は国分ホールディングスで、約9%を持つ。国分グループ本社も約5%持つ。当サイトの参考値では、10年以内のTOBの確率は2割弱ある。
純有利子負債は74億円で、自己資本比率は35.7%だ。財務に余力はあるが、現金が余っている会社ではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
首都圏のシェアはまだ3.7%だ。市場は全国の4割超もあり、ここで1ポイント伸ばすだけで、全社の売上は大きく動く。横浜の物流拠点に四つの支店を集め、街中の小型拠点と組み合わせる新しい配送の形が、営業の効率を上げ始めている。
外食の人手不足は、卸にとって追い風だ。加工品、厨房機器、衛生管理、システムをまとめて売れるのは、トーホーの強みだ。フードソリューション事業は利益率が高く、売上が伸びるほど全社の利益率を押し上げる。国産鶏肉の加工会社を取り込んだことで、自前の加工品も増やせる。
財務も改善した。食品スーパーの赤字を断ち、ROEは13%台、PBRは1倍を超えた。配当性向は40%に達し、還元の姿勢も明確だ。M&Aを再開しており、国内の同業を買い取れば、規模の力はさらに増す。
海外にも芽がある。ベトナムの会社に出資し、シンガポールにA-プライスを初めて出す。国分グループとの協業が深まれば、酒類の取り扱いも増える。訪日客の増加は続き、外食の需要を下支えする。10年のうちに営業利益率が3.5%に達しても、不思議ではない。
慎重な見方
利益率3%の事業は、わずかなコスト増で揺らぐ。人件費と物流費は毎年上がっており、価格に転嫁しきれない年は、利益が一気に目減りする。2021年1月期には、コロナで創業以来初の営業赤字に陥った。外食は景気と訪日客に左右される。
足元の好調には、一過性の要素がある。万博の特需は2027年1月期には剥落する。訪日客の増加も、為替や国際関係で変わる。会社の予想は増益だが、売上の伸びは1桁の半ばで、そのうちの何割かは新しい子会社の寄与だ。
首都圏のシェア3.7%を引き上げるのは、簡単ではない。関東では国分、三菱食品、日本アクセスなどの大手が待ち構える。業務用スーパーや通販サイトに仕入れ先を切り替える飲食店も増えている。
外食店の数は、人手不足と後継者難で減っていく。1店あたりの仕入れが物価で増えても、店数の減少を埋められるとは限らない。
M&Aの再開にも不安が残る。過去の関東での買収は、のれんと投資の負担になり、PBRが1倍を割る要因になった。同じ失敗を繰り返す恐れがある。賃借の店舗と物流拠点の家賃も、売上が落ちた年には重い固定費として残る。
どちらに重みを置いたか
事業の質と、資本効率の高さでは、強気の言い分に分がある。ROE13%台は、食品卸の中でも高い。一方で、利益率の薄さと外食の波は、慎重な言い分のとおりだ。
そこで、中立に最も厚く置き、楽観は8%と低く抑えた。悲観は11%とし、外食店の減少と大手の攻勢による構造的な負けを見た。結果として、本質価値は今の時価総額とほぼ同じか、わずかに上になった。
ただし、利益率が薄い事業は、前提が少し違うだけで結論が動く。中立の利益率が0.2ポイント違えば、価値は1割動く。この結論は、幅を持って読むべきだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/01 期)
確率で加重した株価時価総額 3,189 円1,017 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 721 円230 億円)。 今の値に割り戻すと 2,050 円654 億円、今との差 +45.2%、 期待の年率 +10.7%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,103 円1,627 億円 | 959 円306 億円 | +329.3% | +15.7% | 485 円155 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,401 円1,403 億円 | 837 円267 億円 | +271.0% | +14.0% | 1,048 円334 億円 |
| 中立 | 38% | 3,848 円1,227 億円 | 757 円241 億円 | +226.1% | +12.5% | 1,750 円558 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,723 円549 億円 | 622 円198 億円 | +66.1% | +5.2% | 539 円172 億円 |
| 悲観 | 11% | 387 円124 億円 | 421 円134 億円 | −42.8% | −5.4% | 89 円28 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,189 円1,017 億円 | 721 円230 億円 | +176.9% | +10.7% | 3,910 円1,247 億円 |
今の株価時価総額 1,412 円450 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 首都圏で伸び、利益率が3.5%に乗る 利益 89 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 5,103 円1,627 億円
首都圏のシェアが3.7%から6%近くに上がる。横浜の物流拠点とフロントステーションの組み合わせが定着し、営業の効率が大きく上がる。M&Aで国内の同業を取り込み、規模の力も増す。
キャッシュ&キャリーは繁華街寄りの出店を重ねて130店に増え、1店あたりの売上も実質で5%伸びる。フードソリューションは厨房機器、衛生管理、システムの需要を取り込み、売上が年々伸びる。
営業利益は154億円、利益率は3.5%に達する。2024年1月期の山の3.2%を超えるが、自社ブランド品の比率が上がり、物流費の上昇を転嫁できた結果だ。還元は配当性向45%に上がり、自社株買いも加わる。
外食の量は人口減で細るが、訪日客の増加が下支えする。国分グループとの協業は酒類で広がる。
- ディストリビューター(外食向け業務用食品卸):数量 38,500(国内の業務用食品卸市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 8.4%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 3,250 億円・営業利益 104 億円。首都圏でシェア拡大(市場3.85兆円×シェア6.3%)
- キャッシュ&キャリー(A-プライス):数量 130(店舗数(年平均・店))× 価格 6.55(1 店あたり売上(億円・名目)。1 店あたりの実質の販売量の変化と物価を含む)→ 売上 851 億円・営業利益 39 億円。繁華街寄りの出店(130店×1店あたり実質+5%)
- フードソリューション:数量 3,300(外食店向けの設備・衛生・システムの推定市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 7.8%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 257 億円・営業利益 18 億円。設備・衛生需要を取り込む(市場3,300億円×5.8%)
倍率:事業の純利益 89 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍。全体の PER 17.9 倍、時価総額 1,586 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:首都圏のシェア拡大、加工品・自社ブランド品の伸び、利益率の過去の山超えが同時にそろう必要がある。条件が多いので8%と低めに置いた。
やや楽観 20% 首都圏のシェアが緩やかに上がる 利益 77 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 4,401 円1,403 億円
首都圏のシェアが5%台半ばまで上がる。物流の集約で配送の効率が改善し、営業担当は新規開拓に時間を使えるようになる。キャッシュ&キャリーは122店まで増え、1店あたりの売上も実質で2%伸びる。
営業利益は134億円、利益率は3.3%だ。過去の山の3.2%をわずかに超えるが、物流の効率化と自社ブランド品の効果が、人件費の上昇を上回る。配当性向は43%で、自社株買いは小さい。
M&Aは国内の同業を数件買う程度で、大型の買収はしない。外食の量は人口減で細るが、訪日客の増加が下支えする。
海外は、ベトナムの出資先とシンガポールの店が育ち始めるが、全社の利益にはまだ小さい。国分グループとの協業は酒類で広がり、飲食店の取引先を増やす。配当は毎年少しずつ増え、株主優待も続く。
- ディストリビューター(外食向け業務用食品卸):数量 38,000(国内の業務用食品卸市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 7.9%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 3,004 億円・営業利益 92 億円。首都圏のシェア緩やかに上昇(市場3.8兆円×5.9%)
- キャッシュ&キャリー(A-プライス):数量 122(店舗数(年平均・店))× 価格 6.36(1 店あたり売上(億円・名目)。1 店あたりの実質の販売量の変化と物価を含む)→ 売上 776 億円・営業利益 34 億円。出店が続く(122店×1店あたり実質+2%)
- フードソリューション:数量 3,150(外食店向けの設備・衛生・システムの推定市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 7.2%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 228 億円・営業利益 15 億円。需要を取り込む(市場3,150億円×5.4%)
倍率:事業の純利益 77 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍。全体の PER 17.49 倍、時価総額 1,343 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:首都圏の拡大は進むが、人件費・物流費の上昇を転嫁しきれず、利益率は過去の山の手前で止まる。蓋然性のある強気の姿として20%を置いた。
中立 38% 首都圏が少し伸び、利益率は過去の山の手前に落ち着く 利益 68 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 3,848 円1,227 億円
外食の量は人口減で細るが、訪日客と人手不足の追い風で、市場全体は実質で4%ほどの縮みにとどまる。値段は物価並みに上がる。トーホーは首都圏のシェアを3.7%から5%近くに伸ばし、全国のシェアは5.6%に上がる。
キャッシュ&キャリーは繁華街寄りの出店を重ね、115店になる。利益率は4%台を保つ。フードソリューションは厨房機器や衛生管理の需要を取り込み、売上が年々伸びる。
営業利益は117億円、利益率は3.1%だ。過去の山の3.2%の手前で止まる。人件費と物流費の上昇を、物流拠点の集約と自社ブランド品の拡大がほぼ吸収する。
配当性向40%の方針は守られるが、自社株買いは小さい。M&Aは国内同業や外食支援の会社を買う程度にとどまる。国分グループとの協業は、酒類を中心に続く。
- ディストリビューター(外食向け業務用食品卸):数量 37,500(国内の業務用食品卸市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 7.5%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 2,814 億円・営業利益 82 億円。首都圏がやや伸びる(市場3.75兆円×5.6%)
- キャッシュ&キャリー(A-プライス):数量 115(店舗数(年平均・店))× 価格 6.23(1 店あたり売上(億円・名目)。1 店あたりの実質の販売量の変化と物価を含む)→ 売上 717 億円・営業利益 30 億円。出店が続く(115店×1店あたり実質横ばい)
- フードソリューション:数量 3,000(外食店向けの設備・衛生・システムの推定市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 6.7%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 201 億円・営業利益 13 億円。緩やかに伸びる(市場3,000億円×5.0%)
倍率:事業の純利益 68 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍。全体の PER 17.1 倍、時価総額 1,154 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:外食の量は横ばいから微減、値段は物価並み。首都圏のシェアは少し伸び、利益率は直近並みから山の手前で止まる。いちばん確からしい筋書きとして38%を置いた。
やや悲観 23% 外食店の減少と大手の攻勢で、薄利が一段と薄くなる 利益 47 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,723 円549 億円
外食店の数が人手不足と後継者難で減り、市場は実質で6%ほど縮む。首都圏のシェア拡大も計画どおりに進まず、全国のシェアは5%に落ちる。大手総合卸や業務用スーパーに仕入れ先を切り替える飲食店が増える。
キャッシュ&キャリーの出店は止まり、105店にとどまる。1店あたりの売上も実質で3%落ち、固定の家賃が重くなる。
営業利益は82億円、利益率は2.5%に下がる。人件費と物流費の上昇を価格に転嫁しきれない。配当の方針は守るが、増配の余力はない。
M&Aは買収額に見合う成果を出せず、ROEが資本コストの手前まで下がる。
国分グループとの協業は酒類にとどまり、広がらない。会社は新しい中期計画で成長の絵を描き直すが、利益率の改善は小幅にとどまる。自己資本の積み上がりに利益が追いつかず、資本効率は低下していく。
- ディストリビューター(外食向け業務用食品卸):数量 36,500(国内の業務用食品卸市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 6.7%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 2,446 億円・営業利益 59 億円。外食店の減少、シェア低下(市場3.65兆円×5.0%)
- キャッシュ&キャリー(A-プライス):数量 105(店舗数(年平均・店))× 価格 6.05(1 店あたり売上(億円・名目)。1 店あたりの実質の販売量の変化と物価を含む)→ 売上 635 億円・営業利益 22 億円。出店が止まる(105店×1店あたり実質-3%)
- フードソリューション:数量 2,900(外食店向けの設備・衛生・システムの推定市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 5.4%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 155 億円・営業利益 9 億円。伸び悩む(市場2,900億円×4.0%)
倍率:事業のROEは7%台で、資本コスト7.5%に届かない。この場合のPERの上限は1÷k=12.5倍で、その約8割を置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 10 倍・時価総額 474 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:外食店の減少、大手総合卸の業務用への進出、人件費・物流費の上昇が重なる姿。利益率が薄い事業なので、中立に近い厚みで置いた。
悲観 11% 構造的に負ける:中抜きと外食店の減少で薄利が赤字に近づく 利益 13 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 387 円124 億円
飲食チェーンの本部がメーカーと直接取引する流れが強まり、卸の取り分が削られる。外食店の数も大きく減り、市場は実質で13%縮む。トーホーのシェアも4.5%に落ちる。
キャッシュ&キャリーは90店に縮小し、1店あたりの売上も実質で8%落ちる。家賃は売上が落ちても減らず、利益率は1.5%に沈む。
営業利益は27億円、利益率は1%だ。人件費と物流費の上昇を吸収できず、設備投資の回収も遅れる。配当は維持を優先し、利益の4割強を払う。
それでも売掛金や在庫など、現金に近い資産が事業の中にあり、すぐに傷むことはない。ただ株主にとっては、長い低迷になる。
M&Aで取り込んだ会社の収益も思うように伸びず、のれんの減損が出る。国分グループは協業を縮め、持分も動かす。経営は縮小均衡を選び、出店と投資を絞る。
- ディストリビューター(外食向け業務用食品卸):数量 34,000(国内の業務用食品卸市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 6.0%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 2,050 億円・営業利益 25 億円。中抜きと外食店の減少(市場3.4兆円×4.5%)
- キャッシュ&キャリー(A-プライス):数量 90.0(店舗数(年平均・店))× 価格 5.74(1 店あたり売上(億円・名目)。1 店あたりの実質の販売量の変化と物価を含む)→ 売上 516 億円・営業利益 8 億円。縮小、家賃が重い(90店×1店あたり実質-8%)
- フードソリューション:数量 2,500(外食店向けの設備・衛生・システムの推定市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 4.3%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 107 億円・営業利益 2 億円。需要が細る(市場2,500億円×3.2%)
倍率:事業のROEは2%台で、資本コスト7.5%を大きく下回る。上限は1÷k=12.5倍で、その約75%を稼ぐ力として置いた。市場の値付けは根拠にしない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9.5 倍・時価総額 124 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:飲食チェーンの本部とメーカーの直接取引が進み、外食店の数も大きく減る構造的な負けの姿。大手の攻勢と固定の家賃も重なる。コロナ期に赤字を経験した事業なので、11%と置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ディストリビューター(外食向け業務用食品卸)
外食チェーン・飲食店・ホテルなどに食材を届ける業務用食品卸。国内81事業所と海外拠点、食品加工の子会社を含む。
| 数量国内の業務用食品卸市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 39,000 | 5.2% | 2,025 | 57 |
| 10 年後 中立 | 37,500 | 7.5% | 2,814 | 82 |
取り方:2026年1月期の売上構成比(約77%)などから、外部売上を約2,025億円とした。会社の言う業務用食品卸の市場(約4兆円)に対するシェアに直すと約5.2%(会社の言う5.8%はキャッシュ&キャリーも含む数字)。海外拠点と食品加工の子会社の売上も含むため、国内市場のシェアとしては少し高く出る。営業利益57億円は、2024年1月期の利益比(DTB:C&C:FS=58.6:18.3:8.2)からの推定で、開示ではない。数量は実質の市場、物価3%は価格に入れた。
キャッシュ&キャリー(A-プライス)
飲食店が現金で仕入れる業務用食材店「A-プライス」。関東以西に96店、一般の客も使える。
| 数量店舗数(年平均・店) | 価格1 店あたり売上(億円・名目)。1 店あたりの実質の販売量の変化と物価を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 95.0 | 4.65 | 442 | 18 |
| 10 年後 中立 | 115 | 6.23 | 717 | 30 |
取り方:売上構成比(約17%)から約442億円とし、年平均店数95店で割って1店あたり4.65億円とした。2026年の店数は96店。営業利益18億円は、2024年1月期の利益(18.3億円)と売上の伸びからの推定。数量は店数(実物)、物価3%と1店あたりの販売量の変化は価格の側に入れた。
フードソリューション
外食店向けの業務支援システム、衛生管理、厨房機器の販売、店舗の施工。卸より利益率が高い。
| 数量外食店向けの設備・衛生・システムの推定市場(今の値段で測った実質・億円)× シェア | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 3,000 | 4.3% | 130 | 9 |
| 10 年後 中立 | 3,000 | 6.7% | 201 | 13 |
取り方:売上構成比(約5%)から約130億円とし、外食店向けの設備・衛生・システム・施工の市場を約3,000億円と仮置きして、シェア4.3%と逆算した(市場の開示はない)。営業利益8.5億円は、2024年1月期の利益(8.2億円)からの推定。数量は実質の市場、物価3%は価格に入れた。
リスクと懸念
外食需要の波と、万博・訪日客の反動
売上の大半は外食向け。2027年1月期は万博の特需が剥落し、訪日客の増加も為替や国際関係で変わる。2021年1月期にはコロナで創業以来初の営業赤字になった。外食が冷え込むと、薄利の卸は赤字に近づきやすい。景気の下り局面では、店の閉鎖も重なる。
薄利構造と、人件費・物流費の上昇
営業利益率は3%で、1ポイント落ちると利益は3割以上減る。ドライバーと倉庫人員の不足で物流費は上がり続けている。価格に転嫁できるかは取引先との交渉次第で、転嫁できない年は利益が目減りする。賃上げの圧力も重なる。
首都圏のシェア拡大が進まない
成長の柱は首都圏のシェア3.7%を上げることだ。横浜の物流拠点への集約と小型拠点の整備で費用をかけるが、大手の総合卸や業務用スーパーとの競争は強い。投資が売上に結びつかなければ、利益率はむしろ下がる。
中抜きと競合の攻勢
飲食チェーンの本部が調達を一本化し、メーカーと直接取引する流れが強まれば、卸の取り分は削られる。通販サイトや業務用スーパーへ仕入れ先を切り替える飲食店も増えている。付加価値を出せない卸は残りにくい。
M&Aの再開と資本配分
三協食鳥の買収やKOME88への出資に続き、国内の同業や外食支援会社も対象に入れる方針だ。過去の関東での買収は負担になった。高値づかみや統合の失敗があれば、高いROEが崩れ、PBRも1倍を割りうる。
大株主の動きと協業の行方
国分ホールディングスと国分グループ本社で約14%を持つ。協業が深まる場合も、持分が変わる場合も、会社の方針に影響しうる。TOBや資本再編の可能性は、当サイトの参考値で2割弱ある。再編の形次第で、少数株主の取り分も変わる。
賃借の固定費とリース会計の変更
A-プライスの店舗と物流拠点は賃借が中心で、家賃は売上が落ちても減らない固定費だ。新リース会計基準は2029年1月期から適用され、純有利子負債と自己資本比率の見え方が変わる。額の開示は確認できていない。
今後の分かれ目
- 首都圏の売上が全社の伸びを上回って増え、シェアが4%台に乗る
- 成長の柱が動いた証拠になる。楽観・やや楽観の確率を上げてよい。
- 営業利益率が3.2%を超えて定着する
- 物流の集約と自社ブランド品が効いた証拠。中立の利益率を引き上げ、倍率の評価を上げる。
- 万博と訪日客の反動で、営業利益が会社の予想(82億円)を下回る
- 足元の好調が一時的だった証拠になる。中立からやや悲観に重みを移す。
- 新しい中期計画で、配当性向や自社株買いの目標が大きく引き上げられる
- 還元の上振れで、10年の還元が増える。楽観側の確率を少し上げる。
- 大型のM&Aが発表され、のれんが自己資本の1割を超える
- 買収額と収益性を確かめるまで、倍率を低く見る。失敗の確率を上げる。
- 国分グループが持分を大きく変える、または経営統合を提案する
- 再編の可能性が高まり、TOBの確率が上がる。価値の見直しが必要になる。
見ておくもの
- 首都圏の売上の伸びと、シェアの推移
- 営業利益率と、物流費・人件費の上昇への転嫁
- 業務用の自社ブランド品の比率
- キャッシュ&キャリーの出店・退店の数と、1店あたり売上
- 新しい中期計画の公表時期と、還元の目標
- M&Aの進捗と、のれんの大きさ
- 訪日客数と、外食の売上の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPERを見ず、各筋書きのROEと資本コスト7.5%(基本7.5%に循環+0.5%)から正当化PERを計算し、その約9割(楽観は9割強、ROEが資本コストを下回る悲観側は上限1÷kの7〜8割)に置いた。余った現金は無いので、現金の足し算はしていない。今のPER約10倍が、先の倍率より低いことは認識しているが、それに合わせて下げてはいない。賃借の家賃は営業費用に入っているので、新リース会計基準で数字の形が変わっても価値は動かない。10年後の数字は今と同じ形(家賃を費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→17.9 倍・やや楽観 PER 13→17.49 倍・中立 PER 12→17.1 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5%(循環)を足して k 7.5%。純負債は小さく借金の上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。