結論
レオクランは、病院が建て替えや移転をする時に医療機器をまとめて納める会社だ。2025 年 10 月に名古屋のファスキアグループを買い、東海の大学病院に心臓ペースメーカーやカテーテルを売る卸を手に入れた。売上はこれで 200 億円台から 450 億円前後に倍増する。筆者の結論は、今の値段はおおむね妥当で、やや割安寄りというものだ。
良い点は 2 つある。心臓の治療は高齢化で件数が確実に増え、景気にほとんど左右されない。そして買収の後も手元の現金が借入を 40 億円ほど上回り、時価総額の 7 割に近い。
弱い点は利益の薄さだ。病院への一括納入は大型案件の有無で利益が年ごとに大きく振れ、心臓の機器の卸は値段を国とメーカーに決められる。営業利益率は 1〜2% 台にとどまる。買収で稼ぐ力の土台は広がったが、1 件の利幅は細いままだ。その薄い利益を、数量の伸びと現金の厚さで支える会社だと筆者は見ている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、レオクランは「地味だが需要の確かな流通の会社」だ。心臓の治療は景気が悪くても止まらず、手技の件数は高齢化で増える。その流れの真ん中で、医師と病院とメーカーをつなぐ役目は 10 年後も残る。
弱点は値決めの力の無さだ。売値は保険で、仕入れ値はメーカーで決まり、卸の取り分は数% しかない。株主のものになる利益は、数量の伸びと経費の抑え方で決まる。
経営の資本の使い方には好感が持てる。寝かせていた現金を、利益の安定した事業に換えた。今の値段は、買収後の利益と手元の現金をおおむね映している。安全域は大きくないが、薄くもない。筆者は、買収した事業の利益が 2〜3 年で定着するかを見たい。それが確かめられれば、オーナーとして長く持つ理由になる。逆に、利幅の薄さに甘えて次の買収を高値で重ねるなら、評価を改める。
何で稼ぐ会社か
事業は 4 つに分かれる。いちばん大きいのが買収で加わった低侵襲医療機器の販売で、年 230 億円規模になる。子会社のフォームが、東海の国立・公立・私立の大学病院に、不整脈の治療に使うカテーテル、心臓ペースメーカー、冠動脈のステントを納める。医師の手技に立ち会い、在庫を病院の近くに置き、急な手術にも機器を届けるのが仕事だ。
2 つ目が祖業のメディカルトータルソリューションで、年 200 億円前後の売上がある。病院の新築・移転・統合のたびに、CT や MRI、手術室の機器、電子カルテまでを一括で選んで納める。メーカーを選ばない中立の立場と、全国の病院の建て替えの情報網が強みだ。ただ大型案件が来るかどうかで、売上も利益も年ごとに大きく変わる。
3 つ目は遠隔画像診断で、病院から送られた CT や MRI の画像を、契約する放射線科の専門医が読む。年 8 億円ほどの小さな事業だが、利益率は 1 割近い。4 つ目は病院や介護施設に置くテレビや床頭台、洗濯機のレンタルで、年 6 億円ほど。このほか給食と補聴器の販売がある。
稼ぎの形は卸そのもので、仕入れ値と売値の差は数% しかない。そのかわり在庫を長く抱えず、病院からの入金とメーカーへの支払いの差で現金が手元に残る。
優良さと弱いところ
優良さは、事業ごとに性格が違う。心臓の機器の卸は、医師との長い付き合いと手技への立ち会いで成り立つ。東海の大学病院で築いた関係は、新しい卸が簡単に入れるものではない。ただ値段は国が保険で決め、改定のたびに下がる。メーカーが販売の網を組み替えれば、取扱いが一気に動く危うさもある。
病院への一括納入は、メーカーに偏らない中立の提案が強みだが、案件は建て替えの波しだいだ。好採算の大型案件が減った 2026 年 9 月期は、この事業の営業利益が半分以下に落ちた。
資本の効率は、買収前で ROE 2〜8% と低かった。手元に厚い現金を寝かせていたことが大きい。その現金を使って利益の安定した卸を買ったのは、資本の使い方として筋が通っている。のれんと顧客関連資産は合わせて 24 億円で、買った会社の利益が想定を下回れば減損の種になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
心臓の治療の件数は、高齢化とともに増え続ける。とくに心房細動のカテーテル治療は、機器の進歩で対象の患者が広がり、国内で年 12 万件を超えた。冠動脈のステントは横ばいでも、不整脈の治療とペースメーカーが数量を引っ張る。筆者は東海の手技の件数が 10 年で 4 割ほど増えると見る。
値段の側は厳しい。保険で決まる機器の値段は 2 年ごとに下がる。そのかわり、新しく高い機器への置き換えが進むので、1 件あたりの売上は物価ほどではないが少しずつ上がる。同業のウイン・パートナーズ(首都圏)と同じ構図だ。
病院の設備投資は分かれ目にある。昭和に建った病院の建て替え時期が来ている一方、人件費とエネルギー代の上昇で病院の経営は苦しく、投資を先送りする病院も多い。医療の DX や省力化の投資は堅いが、大型の新築は数が読めない。
卸の業界は再編が進む。メーカーは取引する卸を絞り、規模と専門性のある卸に寄せている。地域の中堅の卸どうしが合わさる動きは続き、レオクラン自身もその担い手になった。規模の小さい卸ほど、メーカーに選ばれ続けるための専門性が問われる。
資本政策と M&A
今回の買収は全株の取得で、費用込みの概算は 71 億円と、当時の時価総額を上回る大きな賭けだった。資金は手元の現金と 47 億円の長期借入で賄い、それでも現金は借入を上回る。2026 年 10 月には買った持株会社を吸収合併し、組織を一本にした。
配当は 1 株あたりの額を据え置き、総額は年 1 億円ほどだ。2026 年 9 月期の会社予想の純利益に対して 4 割強になる。自社株買いの実績はほとんど無い。株主優待は見当たらない。
大株主には光通信が 2 割ほどの株を持つと伝えられる。光通信は配当を重んじる投資家で、還元を厚くする圧力になりうる。逆に、レオクランが同じような地域の医療機器の卸をさらに買う余地も残る。買う値段を誤らなければ、厚い現金はそのための弾になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方はこうだ。買収で会社の性格が変わった。景気に振れる病院の一括納入だけの会社から、高齢化で件数が増え続ける心臓の治療の機器を売る会社になった。不整脈のカテーテル治療は機器の進歩で対象が広がり、東海の手技の件数は 10 年で 5〜6 割増えてもおかしくない。
買った会社は想定より好調で、2026 年 9 月期の経常利益の予想は上方修正された。のれんの償却をこなしても利益は買収前の 2 倍近くになる。病院の建て替えの波が 2030 年代に来れば、祖業の一括納入も大型案件が戻る。
しかも手元の現金は借入を 40 億円上回り、時価総額の 7 割に近い。今の値段で買えば、事業の価値はほとんど払わずに手に入る。光通信が大株主にいることも、還元の強化を後押しする。厚い現金と確かな需要の組み合わせは、小さな会社には珍しい。地域の卸の再編で次の買い手になれば、規模の利益も取れる。今の値段は、その可能性にほとんど何も払っていない。
慎重な見方
慎重な見方はこう突く。利益率が薄すぎる。心臓の機器の卸の利幅は 2% 前後で、保険の値段の改定のたびに削られる。メーカーが販売網を組み替えて取引を別の卸に移せば、売上の半分が一度に揺らぐ。地域の大学病院に頼る商売は、担当の医師が変わるだけで取扱いが動く。
祖業の一括納入はさらに読めない。2026 年 9 月期は好採算の大型案件が減り、営業利益が前年の半分以下になった。病院は人件費の高騰で赤字のところが多く、建て替えを先送りしている。
手元の現金も見かけほど自由ではない。卸はメーカーへの支払いを病院からの入金より後にして現金を手元に置く。その浮きは事業が縮めば消える。借入は 49 億円に増え、金利が 3.5% に上がれば利息は年 1.7 億円になる。のれんと顧客関連資産の 24 億円は、買った事業がつまずけば減損で消える。買収の 1 年目の数字だけで、事業の実力を判断するのは早い。好調の理由が一時的な大型の納入なら、2 年目には剥げる。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分にも事実の裏づけがある。心臓の治療の件数が増えることは確かで、利幅が薄いことも確かだ。決め手は、買った事業の利益がまだ 1 年分しか見えていないことにある。確率は同業のウイン・パートナーズとそろえ、中立を 4 割弱、楽観側と悲観側をおおむね同じ厚さにした。買った事業の 2 年目、3 年目の利益が見えれば、どちらかに寄せられる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した株価時価総額 1,851 円110 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 334 円20 億円)。 今の値に割り戻すと 1,041 円62 億円、今との差 +7.9%、 期待の年率 +8.5%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,575 円212 億円 | 534 円32 億円 | +325.8% | +15.6% | 411 円24 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,634 円156 億円 | 424 円25 億円 | +216.9% | +12.2% | 673 円40 億円 |
| 中立 | 38% | 1,939 円115 億円 | 341 円20 億円 | +136.2% | +9.0% | 866 円51 億円 |
| やや悲観 | 20% | 752 円45 億円 | 238 円14 億円 | +2.7% | +0.3% | 198 円12 億円 |
| 悲観 | 10% | 270 円16 億円 | 101 円6 億円 | −61.5% | −9.1% | 37 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,851 円110 億円 | 334 円20 億円 | +126.4% | +8.5% | 2,185 円129 億円 |
今の株価時価総額 965 円57 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 心臓の治療の伸びと建て替えの波が重なる 利益 13 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 3,575 円212 億円
不整脈のカテーテル治療が機器の進歩で広がり、東海の手技の件数は 10 年で 6 割増える。高い新型の機器への置き換えで、1 件あたりの売上も保険の値下げを上回って伸びる。フォームは東海でのシェアを広げ、利益率は 2.8% まで上がる。2030 年代に入ると昭和の病院の建て替えが本格化し、一括納入の大型案件も戻る。遠隔画像診断は放射線科医の不足を追い風に件数がほぼ倍になる。のれんの償却をこなしても利益は今の 5 倍近くになり、ROE は資本コストを大きく上回る。光通信の後押しもあって配当は増え、株主の取り分も厚くなる。
- 低侵襲医療機器販売(心臓カテーテル・ペースメーカー):数量 5.4(納入する手技の件数(万件・年、推定))× 価格 83(手技 1 件あたりの納入額(万円・名目))→ 売上 444 億円・営業利益 12 億円。手技 1.6 倍 × 1 件 1.18 倍、利益率 2.8%
- メディカルトータルソリューション(病院への一括納入):数量 77.0(大型の納入案件の数(件・年、推定))× 価格 4.04(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 311 億円・営業利益 6 億円。案件 1.1 倍 × 1 件 1.38 倍、利益率 2%
- 遠隔画像診断サービス:数量 51.9(読影の件数(万件・年、推定))× 価格 3.45(1 件あたりの料金(千円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。件数 1.9 倍 × 料金 1.15 倍、利益率 11%
- レンタル(病院・施設のテレビ・床頭台・洗濯機):数量 3.7(貸し出している台数(万台、推定))× 価格 2.60(1 台あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。台数 1.2 倍 × 1 台 1.3 倍、利益率 15%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.8% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 14.9 倍、時価総額 212 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:手技の件数の伸びと、病院の建て替えの大型案件の戻りが同時に要る。買収した事業の実績が 1 年しかなく、1 割。
やや楽観 22% 買収した卸が定着し、件数の伸びを取る 利益 10 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 2,634 円156 億円
買収した心臓の機器の卸が定着し、東海の手技の件数は 10 年で 5 割増える。保険の値下げは新型の機器への置き換えで補い、1 件の売上は少し上がる。利益率は経費の抑えで 2.4% に上がる。一括納入は建て替えの波が緩やかに来て、案件の数は今と同じ、利益率は 1.6% に戻る。遠隔画像診断とレンタルも堅く伸びる。借入は利益で返していき、現金は手元に残る。配当は利益の 4 割を目安に増やす。買った事業の利益が定着し、会社は心臓の機器の卸を軸にした安定した流通の会社に生まれ変わる。ROE は資本コストを上回り、株主の取り分は利益とともに増える。
- 低侵襲医療機器販売(心臓カテーテル・ペースメーカー):数量 5.0(納入する手技の件数(万件・年、推定))× 価格 81(手技 1 件あたりの納入額(万円・名目))→ 売上 405 億円・営業利益 10 億円。手技 1.5 倍 × 1 件 1.15 倍、利益率 2.4%
- メディカルトータルソリューション(病院への一括納入):数量 70.0(大型の納入案件の数(件・年、推定))× 価格 3.98(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 279 億円・営業利益 4 億円。案件横ばい × 1 件 1.36 倍、利益率 1.6%
- 遠隔画像診断サービス:数量 43.7(読影の件数(万件・年、推定))× 価格 3.36(1 件あたりの料金(千円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。件数 1.6 倍 × 料金 1.12 倍、利益率 10%
- レンタル(病院・施設のテレビ・床頭台・洗濯機):数量 3.4(貸し出している台数(万台、推定))× 価格 2.56(1 台あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。台数 1.1 倍 × 1 台 1.28 倍、利益率 14%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.5% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 14.14 倍、時価総額 156 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収 1 年目の好調と、手技の件数が増える確かな流れに支えられる。同業の手本と同じ 2 割強。
中立 38% 件数の伸びを保険の値下げが削り、利益は 2 倍弱 利益 8 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,939 円115 億円
東海の心臓の手技の件数は 10 年で 4 割増える。保険の値下げと新型の機器への置き換えが打ち消し合い、1 件の売上は 1.12 倍にとどまる。卸の利益率は 2% のまま。一括納入は病院の投資の先送りで案件が少し減り、利益率は 1.3% にとどまる。遠隔画像診断は件数が 4 割増える。営業利益は 12 億円台になり、のれんの償却を含めても今の 2 倍弱。現金の利息と借入の利息はほぼ打ち消し合う。配当は利益の 4 割を目安に増える。会社の形は今と変わらず、件数の伸びの分だけ利益が積み上がる地味な 10 年になる。ROE は資本コストをわずかに上回る。
- 低侵襲医療機器販売(心臓カテーテル・ペースメーカー):数量 4.7(納入する手技の件数(万件・年、推定))× 価格 78(手技 1 件あたりの納入額(万円・名目))→ 売上 368 億円・営業利益 7 億円。手技 1.4 倍 × 1 件 1.12 倍(保険の値下げを新型への置き換えが補う。同業の手本と同じ)、利益率 2%
- メディカルトータルソリューション(病院への一括納入):数量 66.5(大型の納入案件の数(件・年、推定))× 価格 3.93(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 261 億円・営業利益 3 億円。案件 0.95 倍 × 1 件 1.34 倍、利益率 1.3%
- 遠隔画像診断サービス:数量 38.2(読影の件数(万件・年、推定))× 価格 3.30(1 件あたりの料金(千円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。件数 1.4 倍 × 料金 1.1 倍(保険の点数に縛られる)、利益率 9.5%
- レンタル(病院・施設のテレビ・床頭台・洗濯機):数量 3.1(貸し出している台数(万台、推定))× 価格 2.50(1 台あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。台数横ばい × 1 台 1.25 倍、利益率 13%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 13.25 倍、時価総額 115 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:件数の伸びと値段の下げ、一括納入の振れを今の傾向のまま延ばした中心の筋。同業の手本と同じ 4 割弱。
やや悲観 20% 値下げと建て替えの先送りで利益が伸びない 利益 4 億円 · PER 7.9 倍 · 株価時価総額 752 円45 億円
保険の値下げが新型の機器への置き換えを上回り、1 件の売上は 10 年で横ばい。手技の件数は 2 割増えるが、人件費の上昇で卸の利益率は 1.3% に削られる。病院の経営難で建て替えの先送りが続き、一括納入の案件は 15% 減って利益率は 0.8%。のれんの一部を減損し、利益は今とほぼ同じ水準で足踏みする。配当は据え置き、手元の現金は谷の穴埋めに少しずつ使われる。買収は値段に見合わなかったことになり、資本の使い方への評価も下がる。株価は、手元の現金と細い利益の分しか支えを持たなくなる。ROE は資本コストに届かない。
- 低侵襲医療機器販売(心臓カテーテル・ペースメーカー):数量 4.0(納入する手技の件数(万件・年、推定))× 価格 70(手技 1 件あたりの納入額(万円・名目))→ 売上 282 億円・営業利益 4 億円。手技 1.2 倍 × 1 件横ばい、利益率 1.3%
- メディカルトータルソリューション(病院への一括納入):数量 59.5(大型の納入案件の数(件・年、推定))× 価格 3.66(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 218 億円・営業利益 2 億円。案件 0.85 倍 × 1 件 1.25 倍、利益率 0.8%
- 遠隔画像診断サービス:数量 32.8(読影の件数(万件・年、推定))× 価格 3.00(1 件あたりの料金(千円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。件数 1.2 倍 × 料金横ばい、利益率 8%
- レンタル(病院・施設のテレビ・床頭台・洗濯機):数量 2.8(貸し出している台数(万台、推定))× 価格 2.30(1 台あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。台数 0.9 倍 × 1 台 1.15 倍、利益率 10%
倍率:事業の ROE 6.4%(事業の純利益÷現金を除いた自己資本)が k 8.5% に届かないので、ためた利益は額面未満の価値しか持たず PER の上限は 1÷k=12.1 倍。やや悲観は利益の伸びが無く質も落ちるので、上限の 65% の 7.9 倍。余った現金 15.0 億円は利息分(1.4%)を純利益から外し、戻り方 0.75 を掛けて足す
確率:2026 年 9 月期に一括納入の利益が半減した実績と、保険の値下げの続く構造から 2 割。
悲観 10% メーカーが販売網を組み替え、心臓の機器の取扱いを失う 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 270 円16 億円
主要なメーカーが東海の販売網を組み替え、フォームの取扱いの一部を大手の卸や直販に移す。手技の件数は増えても、扱える件数は 3 割減る。保険の値下げも続き、利益はほとんど残らない。一括納入は病院の投資の冷え込みで案件が 3 割減り、赤字に落ちる。のれんと顧客関連資産の大半を減損する。配当は細り、手元の現金は谷の穴埋めと借入の返済に消えていく。株主に残るのは、細った卸の事業と現金の一部だけになる。卸の支払いの浮きも事業の縮みとともに消えていく。借入の返済が先に立ち、還元はほぼ止まる。10 年前に寝かせていた現金の方が、よほど価値があったことになる。
- 低侵襲医療機器販売(心臓カテーテル・ペースメーカー):数量 2.4(納入する手技の件数(万件・年、推定))× 価格 67(手技 1 件あたりの納入額(万円・名目))→ 売上 156 億円・営業利益 0 億円。手技 0.7 倍 × 1 件 0.95 倍、利益率 0.3%
- メディカルトータルソリューション(病院への一括納入):数量 49.0(大型の納入案件の数(件・年、推定))× 価格 3.37(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 165 億円・営業利益 −1 億円。案件 0.7 倍 × 1 件 1.15 倍、利益率 −0.5%
- 遠隔画像診断サービス:数量 27.3(読影の件数(万件・年、推定))× 価格 2.85(1 件あたりの料金(千円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。件数横ばい × 料金 0.95 倍、利益率 5%
- レンタル(病院・施設のテレビ・床頭台・洗濯機):数量 2.5(貸し出している台数(万台、推定))× 価格 2.20(1 台あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。台数 0.8 倍 × 1 台 1.1 倍、利益率 8%
倍率:事業の ROE が k を大きく下回り、稼ぐ力は小さい。価値は床の資産 16 億円で決まり、今の自己資本 56 億円に対して 0.28 倍。
確率:メーカーによる卸の選別は業界で現に進んでいる。地域の大学病院に頼る商売の危うさから、同業の手本と同じ 1 割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
低侵襲医療機器販売(心臓カテーテル・ペースメーカー)
子会社フォームが東海の大学病院に不整脈カテーテル・ペースメーカー・冠動脈ステントを納める。2025 年 10 月に買収。
| 数量納入する手技の件数(万件・年、推定) | 価格手技 1 件あたりの納入額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 3.4 | 70 | 235 | 4 |
| 10 年後 中立 | 4.7 | 78 | 368 | 7 |
取り方:2026 年 9 月期 3Q 累計の売上 176.3 億円を年に直して 235 億円とし、同業の手本と同じく手技 1 件の機器代を 70 万と置いて 3.36 万件を逆算した(件数は開示なし・推定)。営業利益は 3Q 累計 3.50 億円を年に直し、決算期末の季節性を引いて 3.9 億円。
メディカルトータルソリューション(病院への一括納入)
病院の新築・移転・統合の際に、医療機器と電子カルテをメーカーを問わず一括で選定・納入する祖業。
| 数量大型の納入案件の数(件・年、推定) | 価格1 件あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 70.0 | 2.93 | 205 | 1 |
| 10 年後 中立 | 66.5 | 3.93 | 261 | 3 |
取り方:3Q 累計の売上 161.2 億円と前期の水準から年 205 億円とし、1 件あたり約 2.9 億円の大型案件が年 70 件あるとみて割った(件数は開示なし・推定)。営業利益は 3Q 累計 1.77 億円から、案件の少ない第 4 四半期を見込んで 1.4 億円。
遠隔画像診断サービス
病院から送られた CT・MRI の画像を、契約する放射線科の専門医が読影する。
| 数量読影の件数(万件・年、推定) | 価格1 件あたりの料金(千円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 27.3 | 3.00 | 8 | 1 |
| 10 年後 中立 | 38.2 | 3.30 | 13 | 1 |
取り方:3Q 累計 6.16 億円を年に直して 8.2 億円。1 件の料金を 3 千と置いて約 27 万件とした(件数は開示なし・推定)。営業利益は 3Q 累計 0.59 億円を年に直した。
レンタル(病院・施設のテレビ・床頭台・洗濯機)
子会社中京三洋が病院・介護施設・寮にテレビ・床頭台・洗濯機を貸し、保守する。
| 数量貸し出している台数(万台、推定) | 価格1 台あたりの年間売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 3.1 | 2.00 | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 3.1 | 2.50 | 8 | 1 |
取り方:3Q 累計 4.67 億円を年に直して 6.2 億円。1 台あたり年 2 万の売上と置いて 3.1 万台とした(台数は開示なし・推定)。営業利益は 3Q 累計 0.62 億円を年に直した。
リスクと懸念
メーカーの販売網の組み替え
心臓の機器のメーカーは、取引する卸を絞ったり、自ら病院に売ったりする動きを強めている。主要なメーカーが東海の取引をほかの卸に移せば、売上の半分を占める事業が一度に揺らぐ。地域の大学病院との関係が頼りの商売で、担当の医師の異動も取扱いを動かす。
保険の値段の改定
心臓の機器の値段は保険で決まり、2 年ごとの改定で下がる。卸の利幅は 2% 前後しかなく、改定の下げをメーカーと病院の間で押し付けられると、利益が簡単に消える。新しい高い機器への置き換えが下げを補えるかが分かれ目だ。
病院の建て替えの先送り
祖業の一括納入は大型案件しだいで、2026 年 9 月期は好採算の案件が減って利益が半分以下になった。病院は人件費とエネルギー代の上昇で苦しく、建て替えの先送りが続けば、この事業は赤字に近づく。
買収ののれんの減損
のれんと顧客関連資産は合わせて約 24 億円あり、自己資本の 4 割にあたる。買った事業の利益が想定を下回れば減損が出て、自己資本が大きく減る。買収の 1 年目は好調だったが、その持続はまだ確かめられていない。
借入と金利
買収で借入は 49 億円に増えた。金利が 3.5% に上がれば利息は年 1.7 億円で、今の営業利益の 4 分の 1 にあたる。手元の現金が借入を上回るうちは大きな問題にならないが、次の買収を借入で賄うと重くなる。
今後の分かれ目
- 買収した低侵襲の事業が 2 年続けて営業利益率 2% を保ったら
- 買収の利益が定着したと見て、やや楽観に重みを移す。
- 病院の建て替えの大型案件が戻り、一括納入の営業利益が 3 億円を超えたら
- 祖業の谷が終わった合図で、楽観側の確率を上げる。
- 主要なメーカーが東海の販売網を組み替え、取扱いが減ったら
- 売上の半分が揺らぐ。悲観の確率を上げる。
- のれんの減損が出たら
- 買収の値段が高すぎたことになる。資本の使い方の評価を下げ、やや悲観に寄せる。
- 光通信の要求などで配当や自社株買いが大きく増えたら
- 手元の現金の戻り方を 1.0 に上げてよい。
見ておくもの
- 低侵襲医療機器販売の売上と営業利益率
- 一括納入の大型案件の受注と粗利率
- 保険の値段の改定(心臓の機器)
- のれんと顧客関連資産の残高・減損の有無
- 借入の残高と配当の額
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の ROE と k 8.5% から正当化 PER の式で出し、上限の 6.5〜8.5 割に置いた。悲観は ROE が k を下回るので床の資産で測った。今の PBR 1 倍前後や同業の倍率は使っていない。起点は買収後の 2026 年 9 月期の会社予想の純利益 2.3 億円に置き、現金は買収後の 3Q 末の純現金 38.8 億円から、卸の支払いの浮き 17 億円などを引いた 20 億円だけを余りとして戻り方 0.75 で足した。今の株価が倍でも半分でも価値の数字は動かない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.91→14.9 倍・やや楽観 PER 13.68→14.14 倍・中立 PER 12.51→13.25 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。