結論
鳥羽洋行は、空気圧機器や制御機器、ロボットを工場に売る技術商社だ。1906 年の創業で、全国 23 の営業拠点を持つ。2026/03 期の売上は 291 億円、営業利益は 15 億円だった。
筆者の結論は「やや割安」である。10 年後の価値は、今の時価総額を 1 割から 2 割ほど上回る。割安の理由は、事業ではなく現金にある。現金が 124 億円あり、時価総額 143 億円の 9 割近くに当たる。
事業そのものは、利幅の薄い商売だ。売上総利益率は 15% で、営業利益率は 5% 台しかない。メーカーの代理で売るため、値段を自分で決める力は弱い。堀、つまり他社がまねできない強みも、顧客との長い付き合い以外は乏しい。
気になるのは、現金の使い方だ。配当性向 35% 以上と自社株買いを掲げるが、現金はなお積み上がる。会社は株価純資産倍率 1 倍を目標にしている。現金が株主に戻る度合いを、筆者は 0.75 と割り引いて数えた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「事業」と「現金」に分けて見るのがよい。
事業は、利幅が薄く、値段を決める力が弱い。それでも 100 年以上続き、景気の波を越えてきた。売上は物価と自動化需要で伸び、営業利益率は 5% 台で安定する。10 年後に今の 1.6 倍の売上を想定したが、倍率は 10 倍台にとどめた。
現金は 124 億円ある。時価総額の 9 割近くだ。事業に使わない余りは 100 億円と数えた。これが戻ってくれば、株主にとっては大きい。ただ、これまでの還元は利益の 5 割程度で、現金はたまる一方だった。戻り方は 0.75 とした。
経営は堅実だ。借入をせず、記念配当や自社株買いも出す。一方、PBR 1 倍割れの状態が続いても、現金を大胆に使う動きは見えない。M&A は小さな案件にとどまる。
安全域は、現金そのものにある。悲観の筋書きでも、現金の価値が今の時価総額に近い。この点で、損をしにくい株だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、メーカーから仕入れた機器を工場に売る直販だ。取扱いは制御機器、FA 機器、産業機器の 3 つに分かれる。2026/03 期の売上は、FA 機器が 135 億円、制御機器が 81 億円、産業機器が 74 億円だった。
FA 機器は、工場の自動化に使うロボットや搬送機器、センサーなどを指す。制御機器は、機械の動きを制御する部品だ。産業機器は、空気圧機器やろ過フィルターなど、工場の設備に組み込まれる部品が中心になる。
顧客は半導体・液晶・電子部品の工場が 42%、自動車・車載部品が 16%、伝導・FA・精密が 22% を占める。医療・食品は 7% と小さいが、2024 年に理化学系商社の和泉テックを子会社にして、広げている。
仕入先のメーカーは約 1,500 社、顧客は約 1,100 社に及ぶ。全国 23 の営業拠点から、提案営業で直接売る。海外は中国、ベトナム、タイに拠点があり、売上の 11% を占める。
最近は、協働ロボットや自律走行搬送ロボットなど、人手不足を補う装置の販売に力を入れている。商社が部品を売るだけでなく、装置の提案から組み立てまで手がける形だ。
優良さと弱いところ
この会社の良さは、財務の厚みと顧客との距離にある。自己資本比率は 75% で、現金は 124 億円ある。借入はほぼない。景気が悪くなっても、まず倒れない会社だ。
顧客に近い点も強みだ。営業 236 人が顧客の工場に入り、機械の種類を提案する。メーカーが全国の小さな工場まで営業するのは難しく、商社が間に入る価値がある。
ただ、堀は強くない。売上総利益率は 15% で、2010 年のように赤字になる年もあった。値段はメーカーとほかの商社との競争で決まる。ミスミやモノタロウのような通販が、小口の部品を取りに来ている。メーカーが直接売る動きもある。
資本効率は低い。自己資本利益率は 5% で、現金が多いぶん利益に対して資本が大きい。会社は 8% を目標にするが、2015 年以降一度も届いていない。
売上は景気と半導体投資の波で上下する。2026/03 期は、自動車向けと FA 機器が落ち、売上が 8% 減った。半導体向けは伸びている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
FA 部品の商社は、製造業の設備投資の波に乗る。半導体、自動車、電子部品の工場が設備を増やすと売上が伸び、止めると落ちる。2026/03 期は半導体向けが伸びる一方、自動車向けと FA 機器が落ちた。
中長期の追い風は、人手不足による自動化だ。工場は人を集められず、ロボットや搬送機器に置き換える。協働ロボットや自律走行搬送ロボットは、この流れの先端にある。生成 AI 向けの半導体投資も、制御機器と空気圧機器の需要を押し上げる。
競合は、山善、トラスコ中山、ミスミ、椿本興業、ダイトロンなどだ。通販型のミスミは、小口の部品を短い納期で売り、商社の売上を奪っている。工場の購買担当が AI を使って発注を自動化すれば、商社を通さず、最安の通販に流れる懸念もある。一方、装置の提案や設置が必要な案件は、商社に残る。
物価と賃金が上がる中、商社の粗利率は 15% 前後で動きにくい。売上が物価で増える分、利益も増えるが、人件費も同じ速度で増える。営業利益率は 5% 台で安定している。
国内の製造業は人口減で縮み、海外移転も進む。商社は、中国やベトナム、タイの拠点で追いかける。海外比率は 11% で、伸びしろはあるが、中国は景気の減速で苦戦している。
資本政策と M&A
還元の方針は、連結配当性向 35% 以上、1 株配当に下限を設けること、自社株買いは機動的に実施する、というものだ。2026/03 期は創業 120 周年の記念配当を含めて配当性向が 53% だった。2027/03 期は 38% の予想だ。
自社株買いは、2021 年から 2025 年までに累計 14 億円、発行済株式の 10% を取得した。ただし配当と自社株買いの合計は、利益の 5 割前後で、現金は積み上がり続けている。
現金は 124 億円ある。受取債権 77 億円と棚卸資産 6 億円を、買掛金 62 億円でまかなうと、運転資金は 21 億円に収まる。事業に使う分と、支払いの時期のずれ、新しい M&A の資金として 25 億円を残し、余りを 100 億円とした。
政策保有株も持つ。ダイフク、SMC、日伝、千代田インテグレなどだ。配当は利益に入っているため、価値としては別に足していない。M&A は和泉テックの 1 件で、今後も続ける方針だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社の価値の半分以上は、すでに現金にある。124 億円の現金に対し、時価総額は 143 億円だ。事業を、年間 11 億円の純利益を生むのに、わずか 19 億円ほどの値段で買えることになる。
会社は、PBR 1 倍と ROE 8% を中期経営計画の目標に掲げている。達成するには、現金を配当や自社株買いに回すか、成長に投資するしかない。株主の声が強まれば、配当性向を 50% 以上に引き上げることもできる。
事業も悪くない。人手不足でロボットと自動化装置の需要が伸び、半導体の設備投資も戻りつつある。2027/03 期は売上 320 億円、営業利益 17 億円の計画で、2029/03 期には 380 億円、24 億円を見込む。M&A で医療・食品などの新しい顧客を取り込み、営業利益率が 6% を超えれば、利益は今の 1.7 倍に届く。工場の購買は、人手不足で自動化の提案を求めており、提案営業を持つ商社の出番は増える。
慎重な見方
現金が多いのは、使い道がないからだ。事業の ROE は 5% と資本コストを大きく下回り、成長に回しても稼げない。会社は 10 年以上、現金を抱えたまま自社株買いも小さい。PBR 1 倍を目標にしても、実際には動いていない。
事業の先行きも楽ではない。メーカーが直接売る動きと、ミスミやモノタロウのような通販が、小口の部品を奪っている。工場の発注を AI が自動化すれば、商社を通す理由はさらに薄れる。粗利率 15% の薄い商売は、一度ずれると赤字に近づく。
2026/03 期は、FA 機器が前の期より 14% 減った。自動車向けと中国向けが落ちた。半導体の投資が戻っても、自動車の電動化は不透明だ。会社の計画は、2027/03 期に売上 10% 増を見込むが、過去 3 年の売上は 284 億円から 291 億円と横ばいだ。計画どおりに行く保証はない。
現金は戻ってこない可能性もある。資本の使い方を決めるのは経営陣で、少数株主は決められない。
どちらに重みを置いたか
強気の主張は、現金の厚さと還元強化の余地をついている。慎重な主張は、事業の低収益と、現金が戻らない可能性をついている。筆者は後者の指摘を重くみて、現金の戻り方を 0.75 とし、事業は成長しても 5% 台の営業利益率にとどめた。確率は中立に 36% を置き、やや悲観と悲観の合計を 36% とした。現金が下支えするため、悲観でも今の時価総額の 7 割ほどの価値が残る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 8,425 円327 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,064 円80 億円)。 今の値に割り戻すと 5,638 円219 億円、今との差 +53.6%、 期待の年率 +11.1%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 16,804 円651 億円 | 2,838 円110 億円 | +435.2% | +18.3% | 1,571 円61 億円 |
| やや楽観 | 20% | 12,318 円478 億円 | 2,451 円95 億円 | +302.4% | +14.9% | 2,954 円115 億円 |
| 中立 | 36% | 9,452 円366 億円 | 2,193 円85 億円 | +217.3% | +12.2% | 4,192 円163 億円 |
| やや悲観 | 24% | 4,206 円163 億円 | 1,806 円70 億円 | +63.8% | +5.1% | 1,443 円56 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,708 円66 億円 | 1,032 円40 億円 | −25.3% | −2.9% | 329 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 8,425 円327 億円 | 2,064 円80 億円 | +185.8% | +11.1% | 10,489 円407 億円 |
今の株価時価総額 3,670 円142 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 自動化の波に乗り、営業利益率が 7% に届く 利益 35 億円 · PER 17.3 倍 · 株価時価総額 16,804 円651 億円
工場の人手不足が続き、協働ロボットや搬送ロボット、自動化装置の販売が伸びる。装置の提案から設置まで担う案件が増え、1 人あたりの売上が物価以上に上がる。半導体の設備投資も 10 年にわたって底堅く、空気圧機器とフィルターが伸びる。
販売人員は 300 人を超え、売上は 640 億円に届く。装置の比率が上がり、営業利益率は 7% 近くになる。
現金は積み上がるが、配当性向は 50% 台に上がり、自社株買いも続く。M&A で医療・食品などの顧客を広げる。この筋書きは、通販や AI による発注の自動化が、提案型の装置販売までは及ばない前提だ。
- FA 機器(ロボット・搬送・センサー・装置):数量 148(販売人員(人・推定配分))× 価格 2.16(1 人あたり売上(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 319 億円・営業利益 24 億円。数量 1.35 倍・価格 1.75 倍・営業利益率 7.5%
- 制御機器:数量 79.2(販売人員(人・推定配分))× 価格 1.97(1 人あたり売上(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 156 億円・営業利益 10 億円。数量 1.20 倍・価格 1.60 倍・営業利益率 6.5%
- 産業機器(空気圧・フィルター・工場設備部品):数量 78.5(販売人員(人・推定配分))× 価格 2.09(1 人あたり売上(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 164 億円・営業利益 12 億円。数量 1.30 倍・価格 1.70 倍・営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 17.31 倍、時価総額 651 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人手不足による自動化と半導体投資が 10 年続き、通販に奪われない展開。商社の利益率が 7% に届くのは過去 20 年でも少なく、8% にとどめた。
やや楽観 20% 自動化需要で伸び、営業利益率は 6% 台 利益 26 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 12,318 円478 億円
自動化需要が続き、FA 機器の売上が増える。半導体向けの空気圧機器とフィルターも伸び、販売人員は 280 人まで増える。1 人あたりの売上は、物価と装置の比率の上昇で 1.55 倍になる。
売上は 540 億円、営業利益率は 6.3% で、営業利益は 34 億円になる。会社の計画(2029/03 期の営業利益率 6.2%)が 10 年続く形だ。半導体の工場投資が途切れず、医療・食品など新しい分野の顧客も育つ。海外は中国で苦戦する一方、ベトナムとタイが伸びる。
配当性向は 50% 前後に上がり、自社株買いも続く。通販の脅威は、小口の部品の一部にとどまる。
- FA 機器(ロボット・搬送・センサー・装置):数量 133(販売人員(人・推定配分))× 価格 2.00(1 人あたり売上(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 267 億円・営業利益 18 億円。数量 1.22 倍・価格 1.62 倍・営業利益率 6.6%
- 制御機器:数量 73.9(販売人員(人・推定配分))× 価格 1.79(1 人あたり売上(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 132 億円・営業利益 8 億円。数量 1.12 倍・価格 1.45 倍・営業利益率 5.8%
- 産業機器(空気圧・フィルター・工場設備部品):数量 72.5(販売人員(人・推定配分))× 価格 1.95(1 人あたり売上(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 141 億円・営業利益 9 億円。数量 1.20 倍・価格 1.58 倍・営業利益率 6.3%
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 16.36 倍、時価総額 478 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画の 2029/03 期(売上 380 億円、営業利益率 6.2%)に近い展開が 10 年続く。会社の計画は過去に未達が続いたため、20% とした。
中立 36% 売上は物価並みに増えるが、営業利益率は 5% 台 利益 20 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 9,452 円366 億円
販売人員は 260 人に増える。人手不足で自動化の需要は続くが、通販とメーカー直販が小口の部品を取り、商社の取り分は増えない。1 人あたりの売上は、物価(1.34 倍)と装置の比率の上昇で 1.46 倍になる。
売上は 470 億円になり、営業利益率は 5.6% で 26 億円になる。人件費も物価で増えるので、利益率は上がらない。
現金は積み上がるが、配当性向は 45〜55% に上がり、自社株買いも続く。会社の目標である ROE 8% と PBR 1 倍は、現金が戻らない限り届かない。営業人員の確保が課題になり、賃金の上昇が利益率の上振れを抑える。海外の売上比率は 1 割台半ばまで上がるが、全体を動かすほどではない。
- FA 機器(ロボット・搬送・センサー・装置):数量 126(販売人員(人・推定配分))× 価格 1.85(1 人あたり売上(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 233 億円・営業利益 14 億円。数量 1.15 倍・価格 1.50 倍・営業利益率 5.8%
- 制御機器:数量 69.3(販売人員(人・推定配分))× 価格 1.73(1 人あたり売上(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 120 億円・営業利益 7 億円。数量 1.05 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 5.4%
- 産業機器(空気圧・フィルター・工場設備部品):数量 66.4(販売人員(人・推定配分))× 価格 1.80(1 人あたり売上(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 120 億円・営業利益 7 億円。数量 1.10 倍・価格 1.46 倍・営業利益率 5.6%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 15.42 倍、時価総額 366 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 10 年の営業利益率は 5〜6% で安定している。自動化需要の追い風と通販の逆風が相殺する落としどころとして、最大の確率を置いた。
やや悲観 24% 通販に取られ、利益率が 4% に下がる 利益 13 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 4,206 円163 億円
ミスミやモノタロウの通販が、小口の部品を取り込む。メーカーも大口の顧客に直接売る。商社の値段は譲られ、1 人あたりの売上は物価より低い伸びにとどまる。
販売人員は今と同じ 236 人を保つが、売上は 380 億円にとどまる。粗利率が 14% 台に下がり、営業利益率は 4% 台になる。人件費は物価で増える。
営業利益は 16 億円、純利益は約 13 億円。配当は維持するが、成長への投資は小さく、現金はたまり続ける。顧客の工場は設備の更新を先延ばしし、商社への発注は小口に分かれる。営業人員の採用は難しく、若手の育成コストだけが増える。
- FA 機器(ロボット・搬送・センサー・装置):数量 109(販売人員(人・推定配分))× 価格 1.58(1 人あたり売上(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 173 億円・営業利益 7 億円。数量 1.00 倍・価格 1.28 倍・営業利益率 4.2%
- 制御機器:数量 66.0(販売人員(人・推定配分))× 価格 1.60(1 人あたり売上(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 106 億円・営業利益 5 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 4.3%
- 産業機器(空気圧・フィルター・工場設備部品):数量 60.4(販売人員(人・推定配分))× 価格 1.63(1 人あたり売上(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 98 億円・営業利益 4 億円。数量 1.00 倍・価格 1.32 倍・営業利益率 4.4%
倍率:現金を除く事業の自己資本利益率は 6〜7% で資本コスト 7.25% を下回る。PER の上限は 1÷k の約 11.8 倍。利益が薄いと見て、約 72% の 8.5 倍に置いた。
確率:通販やメーカー直販が小口の部品に広がる展開は、すでに進みつつある。24% を置いた。
悲観 12% 調達が通販と AI に移り、商社の取り分が消える 利益 5 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 1,708 円66 億円
工場の購買が AI で自動化され、最安の通販に流れる。メーカーも直販を広げ、商社を通す理由が薄れる。装置の案件は残るが、部品の売上が大きく減る。
販売人員は 200 人に減り、1 人あたりの売上は物価に追いつかない。売上は 290 億円と今と同じ水準で、営業利益率は 2% にまで落ち、営業利益は 6 億円になる。
赤字にはならないが、事業の稼ぐ力は小さくなる。現金は残り、配当は下限に近づく。経営は縮小均衡を選び、現金は株主に戻りにくい。大口の顧客だけが残り、小さな工場は通販に流れる。会社の存続に問題はないが、成長の物語は消える。
- FA 機器(ロボット・搬送・センサー・装置):数量 93.0(販売人員(人・推定配分))× 価格 1.42(1 人あたり売上(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 132 億円・営業利益 3 億円。数量 0.85 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 2.0%
- 制御機器:数量 56.1(販売人員(人・推定配分))× 価格 1.42(1 人あたり売上(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 80 億円・営業利益 2 億円。数量 0.85 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 2.0%
- 産業機器(空気圧・フィルター・工場設備部品):数量 51.3(販売人員(人・推定配分))× 価格 1.48(1 人あたり売上(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 76 億円・営業利益 2 億円。数量 0.85 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 2.0%
倍率:利益が薄く、資本コストを下回る。PER の上限は 1÷k の約 11.8 倍。構造的に縮む事業として、約 59% の 7.0 倍に置いた。
確率:AI による発注の自動化と通販が、中小の工場の調達を取り込む展開は、10 年の間にありうる。12% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
FA 機器(ロボット・搬送・センサー・装置)
工場の自動化に使うロボット、搬送機器、センサー、装置の提案販売。
| 数量販売人員(人・推定配分) | 価格1 人あたり売上(億円)。rev_factor は 1 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 109 | 1.23 | 135 | 7 |
| 10 年後 中立 | 126 | 1.85 | 233 | 14 |
取り方:FA 機器の売上 134.9 億円(前期比 −14.4%)。販売人員は連結 265 名のうち販売 236 人(2025/03 時点)を売上比で配分した推定(FA 109 人)。商社は取扱量が開示されないため、人員×1 人あたり売上(物価と商品の単価上昇を含む)で置いた。利益は部門別が非開示のため全社の営業利益率 5.14% を各部門にそろえた推定。
制御機器
機械の動きを制御する部品(プログラマブル・コントローラ、リレー、スイッチなど)の販売。
| 数量販売人員(人・推定配分) | 価格1 人あたり売上(億円)。rev_factor は 1 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 66.0 | 1.23 | 81 | 4 |
| 10 年後 中立 | 69.3 | 1.73 | 120 | 7 |
取り方:制御機器の売上 81.3 億円(前期比 −6.0%)。販売人員 236 人を売上比で配分した推定(制御 66 人)。利益は全社の営業利益率 5.14% をそろえた推定。
産業機器(空気圧・フィルター・工場設備部品)
空気圧機器やろ過フィルターなど、工場の設備に組み込まれる部品の販売。半導体向けが厚い。
| 数量販売人員(人・推定配分) | 価格1 人あたり売上(億円)。rev_factor は 1 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.4 | 1.23 | 74 | 4 |
| 10 年後 中立 | 66.4 | 1.80 | 120 | 7 |
取り方:産業機器の売上 74.4 億円(前期比 +4.0%)。販売人員 236 人を売上比で配分した推定(産業 60 人)。利益は全社の営業利益率 5.14% をそろえた推定。
リスクと懸念
設備投資の波
半導体・自動車・電子部品の工場の投資が止まると、売上は 1 割以上落ちる。2010/03 期は赤字だった。2026/03 期は FA 機器が 14% 減った。
通販とメーカー直販
ミスミやモノタロウの通販が小口の部品を取り込む。大手メーカーが直接売る動きもある。粗利率 15% の商社は、少し値段を譲るだけで利益が消える。
AI エージェント代替
工場の購買担当が AI で発注を自動化すれば、商社の営業提案は不要になりうる。部品の調達は最安の通販に流れやすい。提案と設置が必要な装置の案件は、残りやすい。
現金が戻らない
現金 124 億円は、配当と自社株買いで利益の 5 割程度しか戻っていない。経営陣が資本を抱え続けると、PBR 1 倍割れが続く。M&A で使うと、買収が失敗するおそれもある。
中国など海外の不調
中国の景気減速で、ロボット販売が落ちた時期がある。海外は売上の 11% だが、拠点を増やす投資は先行して負担になる。
政策保有株
ダイフクや SMC などの株を持つ。株価が下がれば自己資本が減る。配当は利益に入るが、売却の方針は示されていない。
今後の分かれ目
- 配当性向を 60% 以上に引き上げ、または大型の自社株買いを実施する
- 余った現金の戻り方が上がり、10 年後の価値は 1 割以上増える。
- 半導体向けの設備投資が戻り、FA 機器の売上が前年を上回る
- 2027/03 期の計画(売上 320 億円)に近づき、営業利益率が 5.5% を超える。
- 通販や AI の発注自動化が広がり、粗利率が 14% を割る
- 営業利益が 1 割以上減る。やや悲観の筋書きに近づく。
- 大型の M&A(売上 50 億円規模)で現金を使う
- 現金の一部が事業に変わる。買収後の利益率が 6% を超えるかが分かれ目になる。
- 自動車向けの設備投資が戻り、ロボットの販売が伸びる
- FA 機器の売上が回復し、営業利益は計画を超える。
見ておくもの
- 売上総利益率と販管費(人件費)
- FA 機器・制御機器・産業機器の部門別売上
- 現金残高と配当性向・自社株買い
- 半導体・自動車向けの設備投資の動き
- M&A の発表
- ROE と PBR の目標(8%・1 倍)の進み
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の自己資本利益率(現金を除いて 10% 弱)と資本コスト 7.25%、成長 4% から式で出し、堀を弱い(1/3)として上限の約 85% の 10.5 倍に置いた。今の株価や同業の倍率は使っていない。現金は、事業の運転資金と余裕を除いた 100 億円を余りとし、戻り方を 0.75 とした。中立の営業利益率 5.6% は過去 12 年の山(8%)を下回り、2029/03 期の会社計画(6.2%)より低い。政策保有株の配当は利益に入っているので、価値として別に足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→17.31 倍・やや楽観 PER 10.5→16.36 倍・中立 PER 10.5→15.42 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。