結論
泉州電業は、電線・ケーブルを電線メーカーから仕入れ、機械や電子機器のメーカーに売る専門商社である。独立系では国内最大手で、仕入先は約250社、在庫は約5万点にのぼる。強みは「必要なものを必要な分だけ、すぐ届ける」在庫と物流、そして端末加工などの手間を請け負う力だ。
筆者の結論は、今の値段は事業の稼ぐ力より先を行っているというものだ。直近の利益は銅価格の急騰で膨らんでいる。銅が落ち着けば、営業利益率は6%台に戻る。
財務は強い。純現金は時価総額の2割を超え、親会社もいない。ただし現金は積み上がる一方で、株主への戻し方は途上にある。電線の数量は、国内の製造業の設備投資に縛られ、伸びは物価の範囲にとどまるだろう。
10年後の中立では、営業利益は130億円ほど、純利益は100億円弱になる。ROEは10%前後で、ここから導く倍率は12倍台が上限に近い。余った現金を足しても、今の時価総額には届かない。
堀は厚くない。独立系で最大手という規模は価値があるが、他社がまねできない強みとまでは言えない。メーカーの直販や海外移転という構造的な負け筋もある。この会社を持ち続けたいと思うには、倍率にもう少し安全域が欲しい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社はそこそこ良い商売を、そこそこの堀で営んでいる会社である。
オーナー利益の源は、約250社から仕入れ、約5万点をすぐ届ける機能にある。これは真似に時間がかかるが、不可能ではない。値段を自分で決められないので、利益率は景気と銅の相場に左右される。長く持ち続けて複利で増える商売というより、良い時にたくさん稼ぎ、悪い時に耐える商売だ。
経営は堅実だ。借金はなく、現金が厚く、危機でも潰れない。ただし、現金をためるだけでは価値は増えない。稼ぎの割に株主へ戻す量が少なかったのは弱点で、最近になって目標を掲げた段階である。
安全域の観点では、今の利益は銅のかさ上げを含むので、そのまま続くとは見ない。平らにならした利益に、事業の経済性から出る妥当な倍率を掛け、余った現金を足すと、今の時価総額には届かない。
わからない部分は、銅の相場と、設備投資サイクルの先行きだ。ここは確信を下げて、確率を悲観側へ少しだけ寄せた。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、電線を仕入れて加工し、届けることである。全社の売上のおよそ86%が電線・ケーブルで、残りが非電線商品とされる。電線は機器用・通信用が中心で、工作機械、半導体製造装置、産業用ロボット、電子機器などの製造業が主な買い手になる。
泉州電業は、取引する電線メーカーの数が国内の過半に及ぶ。この広さが、多品種を少量でも早く届ける力の土台になっている。端末の圧着やケーブルの組み立てといった加工も手がけ、買い手の手間を省く。自社ブランドのオリジナル商品もあり、メーカーと組んで開発する。
事業の単位は1つ(電線・ケーブル)と開示されているが、収益の性格は2つに分かれる。1つは銅の価格に連動する電線の流通で、売上は銅の相場で上下する。もう1つは非電線商品で、コネクタや産業機械向けの部材、自社開発品などからなる。後者は売上の14%ほどだが、利益率は高いと筆者は見る。会社は非電線を17%まで上げる計画だ。
国内の拠点は大阪・名古屋・福岡・関東などで、直需(メーカーへの直接販売)が約26%を占める。海外はタイ、フィリピン、ベトナム、米国、中国、台湾に子会社があり、連結売上の海外比率を30%へ上げることを長期の目標に置く。インド進出も検討中だ。
従業員は連結で838人。これだけの人数で1,300億円以上を売る薄利多売の事業である。
優良さと弱いところ
優良さの核は、在庫と物流の速さにある。約5万点を持ち、注文を受けた分をすぐ出す。メーカーは電線を大ロットで作るため、少量・多品種を求める買い手には、間に入る商社の機能が要る。独立系で最大手という規模が、仕入れの交渉力と品ぞろえの広さを支えている。
一方で、堀と呼べるほどの強さはない。電線の値段は銅の相場と電線メーカーの価格表で決まり、商社が自分で決められる部分は小さい。買い手が仕入先を替える費用も高くない。営業利益率が長く3〜5%にとどまっていたのは、その表れだ。
2022年以降は、利益率が6.6〜7.6%まで上がった。銅の値上がりでの価格改定、端末加工と非電線品の比率上昇、直需の拡大が効いている。ただ、銅高の追い風は繰り返さない。筆者は利益率の水準を、構造の改善と相場のかさ上げが半分ずつと見る。
資本効率は直近でROE11〜14%と悪くない。純現金が厚いのに、この数字を出せているのは評価できる。経営は、中期経営計画で配当性向35%以上、総還元率50%以上と、ROE15%の目標を掲げた。目標の置き方は妥当だが、実績はこれからだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
電線商社の市場は、国内の製造業の設備投資と、銅の相場の2つで動く。数量の側では、人手不足を背景にした省人化投資、半導体製造装置やデータセンター向けの需要が追い風だ。ただ、国内で使われる電線の量は人口とともに緩やかに減る方向にあり、泉州電業の電線の取扱量は、シェアの伸びでようやく横ばいを保つ程度と見る。
価格の側では、銅の値上がりを売値に転嫁するため、売上は銅価格に比例して膨らむ。直近の平均銅価格は1トン約200万円と、前年から4割上がった。売上が増えても、粗利益率は少し下がる。利益の額が増えるのは、在庫の値上がり益と数量の効果だ。
競争は分散している。メーカー系の商社や、地域に根ざした中小の電線卸が多く、単純な仕入販売の会社は値段で競う。差がつくのは、加工や自社商品など、手間をかける部分だ。一方でメーカーが大口の顧客に直接売る動きは、じわじわと商社の取り分を削る。
業界の前提は、設備・工機・産業機械・FA部品商社の領域ノートに合わせた。10年の中立は省人化投資の慢性的な継続、悲観は製造業の海外移転と中抜きである。泉州電業は領域の中では、トラスコ中山のような在庫型の商社に近いが、取扱品目が電線に偏っており、景気への感応度が高い。
資本政策と M&A
資本政策は、現金の多さが特徴で、戻し方は途上である。純現金は309億円と時価総額の2割を超える。2014年には122億円だったものが、10年あまりで2.5倍に積み上がった。
中期経営計画(SS2027)は、2027年10月期までの3年で、設備に100億円、M&Aに30億円、配当に90億円、自社株買いに30億円を充てる計画だ。大阪本店の新築、草津のFAセンターの増改築、沖縄の拠点が設備の中身である。今期の自社株買いは上限6億円で、規模は小さい。
政策保有株は上場株で約172銘柄、約25億円。電線メーカーのSWCCやオーナンバなど、取引先が中心だ。金額は時価総額の2%ほどで、持ち合いの重さは大きくない。
親会社はなく、経営者は独立している。M&Aは30億円の枠にとどまり、大型の買収を狙う会社ではない。買われる側としては、独立系最大手で純現金が厚く、TOBの対象になりうる。ただ、会社が売りに出る気配はない。
筆者が見たいのは、設備投資が一巡した後に、余った現金をどこまで株主に戻すかだ。目標のPBR2倍は、戻し方と資本効率を高める意思の表れだが、意思が実績になるまでは、帳簿の現金を全額の価値と見ない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電線はあらゆる産業の血管であり、省人化、半導体、データセンター、電動化という需要は10年を超えて続く。国内の製造業は人手不足のために自動化投資を急いでおり、機械メーカーは配線を含めた部材の調達を、泉州電業のような即納できる商社に頼る。
泉州電業は、この変化に乗る準備ができている。FAケーブルの比率を上げ、端末加工と自社ブランドの非電線商品で利益率を高めている。中期経営計画では、直需を26%から30%に、非電線を14%から17%に上げる。利益率が6〜7%台で定着すれば、営業利益は10年で2倍近くになりうる。
純現金309億円は、買収や自社株買いの原資になる。PBR2倍を目標に掲げた会社は、現金を戻す方向に動く。独立系最大手の規模は、メーカー系商社には出せない中立さを武器にし、海外では東南アジアの日系工場とともにシェアを広げる。インド進出が当たれば、新しい柱が加わる。
銅の値上がりも、売上と在庫の価値を押し上げる。銅は電動化とデータセンターの配線で長く需要が強く、電線の売値は物価を上回って上がる可能性がある。人手不足でメーカーの調達担当が減るほど、品ぞろえが広く即納できる商社への一括発注が増える。
慎重な見方
利益の水準は銅の相場のかさ上げを含んでいる。銅が1トン200万円という高値は、売上と在庫の値上がり益を押し上げているが、相場が反落すれば在庫の評価損が出て、利益率は3〜5%という本来の水準に戻る。過去10年のROEの中央値は7.6%で、直近の11〜14%は例外である。
電線は汎用品で、値段は銅とメーカーの価格表で決まる。商社が付加価値を出せるのは端末加工などの一部にとどまり、堀は厚くない。メーカーは大口の顧客に直接売る動きを強めており、中抜きの圧力はいつか効く。国内の製造業が海外へ移れば、電線の取扱量は減る。
純現金が厚いのは確かだが、ためるだけで戻さない会社の現金は、帳簿の額面では評価されない。自社株買いは今期の上限6億円と小さく、大阪本店の新築など設備に100億円を使う。市場が高い倍率で評価するほど、会社の資本効率は高くない。
M&Aの枠は30億円と小さいので、成長は数量と価格に頼る。国内の電線需要は人口とともに細る。シェアを取って横ばいを保つのが精いっぱいで、利益の伸びは物価の範囲にとどまる。
どちらに重みを置いたか
強気の議論が当たれば、利益率は構造的に上がり、倍率も上限近くまで届く。慎重な議論は、今の利益の水準と堀の浅さを突いており、こちらの方が筋が通ると見る。確率は、楽観を8%、やや楽観を22%、中立を37%、やや悲観を24%、悲観を9%とし、悲観側へ少し寄せた。純現金の厚さは悲観の床を支えるが、戻し方が途上なので、現金は額面の半分だけ価値に入れた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/10 期)
確率で加重した株価時価総額 11,171 円1,903 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,523 円430 億円)。 今の値に割り戻すと 7,148 円1,218 億円、今との差 −8.2%、 期待の年率 +5.8%(資本コスト 7.6%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 19,511 円3,324 億円 | 3,633 円619 億円 | +197.1% | +11.5% | 1,852 円315 億円 |
| やや楽観 | 22% | 14,856 円2,531 億円 | 3,029 円516 億円 | +129.6% | +8.7% | 3,935 円670 億円 |
| 中立 | 37% | 12,107 円2,063 億円 | 2,653 円452 億円 | +89.5% | +6.6% | 5,461 円930 億円 |
| やや悲観 | 24% | 7,039 円1,199 億円 | 1,949 円332 億円 | +15.4% | +1.4% | 2,157 円367 億円 |
| 悲観 | 9% | 1,922 円327 億円 | 1,297 円221 億円 | −58.7% | −8.5% | 290 円49 億円 |
| 加重平均 | 100% | 11,171 円1,903 億円 | 2,523 円430 億円 | +75.8% | +5.8% | 13,694 円2,333 億円 |
今の株価時価総額 7,790 円1,327 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.6% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:省人化と非電線で利益率が構造的に上がる 利益 158 億円 · PER 19.7 倍 · 株価時価総額 19,511 円3,324 億円
省人化投資と半導体・データセンター向けの設備投資が長く続き、電線の取扱量が2割増える。泉州電業は直需を3割に高め、FAケーブルと端末加工で、メーカーの調達の窓口になる。非電線の商品は自社ブランドとアグリ事業が育ち、顧客数が倍になる。
海外は東南アジアの日系工場に加え、インドが加わる。電線の1トン当たりの売値は、銅高と加工の上乗せで物価の上昇を上回る。営業利益は200億円を超え、ROEは14%台に上がる。
純現金は設備投資と自社株買いに回り、還元は総還元率55%で続く。メーカー系商社にない中立さと即納の力が、評価される10年になる。
中国・東南アジアの日系工場への納入も増え、海外比率は3割に近づく。資本の使い方も規律が保たれ、買収は小さな案件にとどまる。
- 電線・ケーブル:数量 63.6(取扱量(千トン・電線の重さ))× 価格 312(1トン当たり売値(万円))→ 売上 1,987 億円・営業利益 129 億円。取扱量1.2倍・利益率6.5%
- 非電線・オリジナル商品:数量 6,000(取引顧客数(社))× 価格 886(1社当たり年間売上(万円))→ 売上 532 億円・営業利益 85 億円。顧客数2倍・利益率16%
倍率:事業の純利益 156 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.1% が k 7.55% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 19.71 倍、時価総額 3,227 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気の議論が当たる筋書き。直需・非電線の比率拡大、海外の伸びが重なる必要があり、条件が多いので低めに置いた。
やや楽観 22% やや楽観:緩やかな省人化と非電線の拡大 利益 121 億円 · PER 19.0 倍 · 株価時価総額 14,856 円2,531 億円
省人化投資が続き、電線の取扱量は少し増える。直需と非電線の比率は計画に近い水準に上がり、利益率は6%前後で定着する。非電線の顧客は5割ほど増える。
海外は緩やかに伸びるが、国内の減少を埋める程度にとどまる。銅の値段は物価並みに上がり、価格は1.36倍になる。純現金は設備投資の後で少しずつ戻り、自社株買いも続く。ROEは12%台に乗る。
配当は性向35%以上の目標があり、利益が伸びれば還元も増える。取引先との関係を保ちながら、保有株を整理して還元に回す余地もあり、資本効率は少しずつ上がっていく。
半導体製造装置や工作機械の需要は循環しながら伸び、電線の取扱量はその波に乗る。大阪本店の新築も終わり、物流の効率が利益率を支える。
- 電線・ケーブル:数量 57.2(取扱量(千トン・電線の重さ))× 価格 299(1トン当たり売値(万円))→ 売上 1,713 億円・営業利益 103 億円。取扱量1.08倍・利益率6.0%
- 非電線・オリジナル商品:数量 4,800(取引顧客数(社))× 価格 848(1社当たり年間売上(万円))→ 売上 407 億円・営業利益 59 億円。顧客数1.6倍・利益率14.5%
倍率:事業の純利益 118 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.1% が k 7.55% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 19.01 倍、時価総額 2,401 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期経営計画の方向(直需・非電線の拡大)が、おおむね実現する筋書き。実績が出ている部分もあるので、ある程度の確率を置いた。
中立 37% 中立:数量は横ばい、利益率は5%台半ばへ 利益 97 億円 · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 12,107 円2,063 億円
国内の電線需要は人口とともに緩やかに減るが、省人化投資とシェアの拡大でほぼ打ち消す。電線の取扱量は5%ほど減り、売値は物価並みに上がる。銅の相場は今の高値圏で落ち着く。
営業利益率は5%台半ばまで下がる。直近の7%台は銅のかさ上げを含むためだ。非電線は4割増え、利益率は13%ほどになる。
純現金は設備に使い、残りは配当と自社株買いで戻る。ROEは10%前後。特別に伸びない代わりに、崩れもしない。独立系で最大手の位置は保たれる。
銅の相場が落ち着けば、在庫の評価損のおそれも小さくなる。景気が悪い年でも純現金が厚いので、減配は避けられ、仕入先との関係も保てる。堅実だが、驚きの少ない10年である。
半導体製造装置や工作機械の需要は循環するので、利益の振れは残る。大阪本店の新築や草津の増改築は、費用が先に出て効果は遅れて出る。
- 電線・ケーブル:数量 50.3(取扱量(千トン・電線の重さ))× 価格 295(1トン当たり売値(万円))→ 売上 1,484 億円・営業利益 83 億円。取扱量0.95倍・利益率5.6%
- 非電線・オリジナル商品:数量 4,200(取引顧客数(社))× 価格 848(1社当たり年間売上(万円))→ 売上 356 億円・営業利益 46 億円。顧客数1.4倍・利益率13%
倍率:事業の純利益 95 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.6% が k 7.55% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 18.44 倍、時価総額 1,904 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の電線の量は人口とともに細り、シェアの伸びで横ばいに近い。銅のかさ上げが薄れ、利益率は直近の7%台から下がる。中心シナリオ。
やや悲観 24% やや悲観:銅の反落と設備投資の減速 利益 66 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 7,039 円1,199 億円
銅が反落し、在庫の評価損が出る。製造業の設備投資が減速し、電線の取扱量は2割近く減る。一部の大口顧客はメーカーからの直接購入に切り替える。
営業利益率は4%台に下がる。非電線は伸びるが、規模が小さいので全体を支えるに足りない。海外は伸びても国内の減少を埋められない。
純現金は設備投資と現金の確保に使われ、自社株買いは小さいままだ。ROEは7%台に下がり、資本コストを下回る。
景気の悪い年に純現金が厚いことは支えになるが、利益を守るには足りない。利益率が下がり、配当性向は上がる。売上は銅の値上がりで見かけ上は増えるが、中身は薄い。
設備投資の抑制で、大阪本店の新築などの計画も縮む。一方、非電線の自社ブランド品は伸び、悪い中でも利益の下支えになる。
- 電線・ケーブル:数量 43.5(取扱量(千トン・電線の重さ))× 価格 286(1トン当たり売値(万円))→ 売上 1,243 億円・営業利益 56 億円。取扱量0.82倍・利益率4.5%
- 非電線・オリジナル商品:数量 3,300(取引顧客数(社))× 価格 823(1社当たり年間売上(万円))→ 売上 272 億円・営業利益 30 億円。顧客数1.1倍・利益率11%
倍率:事業ROEが資本コスト7.55%を下回る水準なので、上限は1÷k≒12倍。利益率が下がり、堀も浅いため、上限の約9割にとどまらず14.29倍に置いた。
確率:慎重な議論が当たる筋書き。銅のかさ上げの剥落と、製造業の設備投資の減速が重なる。利益率が過去の3〜5%に戻る可能性を重く見た。
悲観 9% 悲観:中抜きと海外移転で商社機能が縮む 利益 31 億円 · PER 8.4 倍 · 株価時価総額 1,922 円327 億円
国内の製造業が海外へ移り、電線の取扱量は4割減る。電線メーカーは大口の顧客に直接売り、調達のデジタル化で商社の取り分が削られる。独立系最大手という規模の価値は小さくなる。
営業利益率は3%まで下がり、非電線も価格競争に巻き込まれる。人件費と物流費は物価で上がるので、固定費の負担が重い。
純現金は買収の失敗や赤字の穴埋めで目減りし、自社株買いは止まる。ROEは3%台に沈む。配当は維持されるが、成長の物語は終わる。
大口顧客を失うと、固定費の重さが利益率をさらに押し下げる。倒産のおそれはないが、成長株としての評価は戻らない。
東南アジアの子会社は日系工場の撤退で売上を落とし、海外で穴を埋める道も細る。事業の規模を縮めながら、現金の使い道を探す10年になる。
- 電線・ケーブル:数量 31.8(取扱量(千トン・電線の重さ))× 価格 275(1トン当たり売値(万円))→ 売上 875 億円・営業利益 26 億円。取扱量0.6倍・利益率3.0%
- 非電線・オリジナル商品:数量 2,400(取引顧客数(社))× 価格 791(1社当たり年間売上(万円))→ 売上 190 億円・営業利益 11 億円。顧客数0.8倍・利益率6%
倍率:事業ROEが資本コストを大きく下回るので、上限は1÷k≒12倍の約7割(8.4倍)。純現金は余った現金を半分に減らして足した。
確率:国内の製造業の海外移転と、メーカーの直販・調達のデジタル化が同時に進む構造的な負け。10年という期間で無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電線・ケーブル
機器用・通信用電線を中心に、電線メーカーから仕入れて端末加工も含めて製造業へ届ける。売上は銅価格に連動する。
| 数量取扱量(千トン・電線の重さ) | 価格1トン当たり売値(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 53.0 | 220 | 1,166 | 63 |
| 10 年後 中立 | 50.3 | 295 | 1,484 | 83 |
取り方:全社売上1,356億円の約86%を電線とみて1,166億円。1トン当たり売値を約220万円(銅建値に加工・マージンを足した水準)と推定し、取扱量を約53千トンと逆算した。開示はなく推定。営業利益は全社90億円を電線63億円(5.4%)・非電線27億円と分けた推定。
非電線・オリジナル商品
コネクタ、産業機械向けの部材、自社ブランド品、ソイルヒーターなどのアグリ事業。電線より利益率が高いとみる。
| 数量取引顧客数(社) | 価格1社当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 3,000 | 633 | 190 | 27 |
| 10 年後 中立 | 4,200 | 848 | 356 | 46 |
取り方:全社売上の約14%(会社の開示する非電線の比率)が約190億円。この商品を買う顧客を3,000社と推定し、1社当たり約633万円を逆算した。開示はなく推定。営業利益率は電線より高い約14%と推定。
リスクと懸念
銅価格の反落と在庫の評価
直近の利益は、銅が1トン200万円前後という高値に支えられている。相場が大きく反落すれば、売上は縮み、在庫の値上がり益は評価損に変わる。営業利益率が3〜5%の本来の水準に戻る可能性は、中立でも織り込んでいる。
製造業の設備投資の循環
主な買い手は工作機械、半導体製造装置、電子機器の製造業だ。設備投資が急に冷えると、電線の取扱量が数割減る。2009年のリーマン後や2019年の中国の不況は実例である。純現金は耐える力になるが、利益は大きく落ちる。
メーカーの直販・中抜き
電線メーカーが大口の顧客に直接売る動き、機械メーカーの調達のデジタル化が進めば、商社の取り分は削られる。独立系で最大手の規模は守りになるが、構造的な圧力として長く効く。
国内製造業の海外移転
国内の工場が海外へ移れば、電線の取扱量は減る。泉州電業は東南アジアや中国に子会社を持つが、海外は連結売上の1〜2割で、国内の減少を埋めるには時間がかかる。
現金の戻し方が進まない
純現金309億円は時価総額の2割を超える。設備投資は100億円規模で続き、自社株買いは上限6億円と小さい。戻す意思が実績にならなければ、現金は評価されない。一方で割高な値段での買収は価値を壊しうる。
新築・拠点投資の遅れと費用
大阪本店の新築は工期の延長で計画が見直されている。建築費の上昇や、移転に伴う一時の費用が利益を圧迫する可能性がある。
今後の分かれ目
- 銅価格が1トン200万円を割り込み、粗利益率が元に戻らなかったら
- 10年の利益率の前提を下げ、やや悲観側へ確率を寄せる。
- 直需と非電線の比率が計画どおり30%と17%に届いたら
- 利益率の構造が上がったとみて、やや楽観側へ確率を寄せる。
- 自社株買いが大型化し、総還元率が50%を超え続けたら
- 余った現金の戻り方を1.0に近づけ、現金の評価を上げる。
- インドなど海外の売上が拡大し、海外比率が30%に近づいたら
- 電線の数量の前提を上げ、楽観側へ寄せる。
- メーカーの直販が大口の顧客で広がり、仕入先が離れたら
- 悲観の筋書きに近づくとみて、数量と利益率を下げる。
見ておくもの
- 平均銅価格と粗利益率
- 直需・非電線の売上比率
- 工作機械・半導体製造装置の設備投資と電線の取扱量
- 自社株買い・配当性向と純現金の推移
- 海外子会社の売上と利益
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の純利益・ROE・資本コストから出す正当化PER(残る割合1/2の普通の堀)で置き、中立は上限の約9割に置いた。今の株価と、過去・同業の倍率は使っていない。余った現金は別に足し、戻り方は0.5とした。悲観は稼ぐ力から出し、谷のPBRは使っていない。新リース会計基準で営業利益や負債の形が変わるが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.5→19.71 倍・やや楽観 PER 13.5→19.01 倍・中立 PER 12.5→18.44 倍・やや悲観 PER 10.5→14.29 倍)。
資本コスト 7.6% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.8% を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.30% → 7.55%。