結論
シークスは、電機・自動車メーカーに代わって電子機器を組み立てる会社だ。EMS(電子機器の受託製造)と部品調達が本業で、東南アジアと米州に工場を持つ。売上は約2,900億円、うち6割超が車載関連である。東証では卸売業に分類されるが、実態は商社ではなく製造業に近い。
筆者の結論は「やや割高」だ。理由は一つ。稼ぐ力が資本コストに届いていない。過去10年の自己資本利益率(ROE)の中央値は6.7%で、投資家が求める9%を下回る。利益の質が資本コストを超えない会社に、帳簿価額以上の値段をつけるのは難しい。
ただし、悪い会社ではない。欧州のハンガリー工場を閉じ、スロバキアへ集約する構造改革は一巡した。2026年上期は営業利益が前年から17%伸び、通期の純利益予想は82億円に引き上げられた。2025年12月期の純利益25億円が谷だったことは間違いない。
10年で見ると、車載電子部品の搭載量は増え、産業機器の受託も伸びる。筆者は中立の筋書きで、売上が4,600億円、営業利益率が3.8%まで戻ると見る。それでも事業の ROE は7%台で、倍率は1桁にとどまる。
楽観の筋書きなら、ROE は11%に届き、今の値段を大きく上回る価値が出る。だが顧客を車載に絞った会社が、大手の EMS や中国勢との値下げ競争に勝ち続ける保証はない。上振れの余地と下振れの深さが釣り合わず、安全域は薄い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社の本質は「顧客の工場」だ。顧客の代わりに設備と人を持ち、薄い加工賃を稼ぐ。事業の堀は浅く、資本はよく食う。堀が深く、少ない資本で稼げる会社を好む投資家は、まず手を出さない。
筆者が最も気にするのは、稼いだ利益が再び同じ高さで稼ぎ続けられるかという点だ。過去10年の ROE の中央値は6.7%で、資本コストを下回る。この状態では、利益を会社に残すほど価値が薄まる。配当や自社株買いで株主に返す方が価値は高い。2026年の配当予想は純利益予想の約3割で、返し方が物足りない。
一方で、安全域はある。自己資本比率は53%で、借金で潰れる心配は薄い。構造改革が終わり、営業利益率は3%台後半へ戻る道が見える。帳簿の自己資本は1,000億円を超え、今の時価総額を上回る。
ただし、帳簿は床にならない。ROE が資本コストに届かない会社では、ためた資本は、額面どおりの価値を持たない。工場や在庫が顧客の需要に合わなくなれば、減損で消える。
結論は、悪くはないが払う値段に余裕がない会社、である。10年の中立の筋書きでも、稼ぐ力は資本コストを下回る。安く買えるのは、利益が谷にあって ROE が10%を超える局面だけだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、顧客の工場の代わりを務めることだ。電機・自動車メーカーが設計した電子機器を、シークスが部品の調達から基板の実装、組み立て、物流まで引き受ける。完成品は顧客の名前で売られ、シークスには加工賃と部品の取扱手数料が残る。部品代を含む売上に対して営業利益率が3%前後と低いのは、この構造のためである。
売上の約63%は車載関連機器だ。残りは産業機器、家電、情報機器で、産業機器の構成比は上期に22%まで上がった。電動工具や蓄電池、米州の航空関連が伸びている。
拠点は世界に散らばる。2025年12月期の売上は、東南アジア約930億円、米州約600億円、中華圏約580億円、日本約570億円、欧州約210億円の順だ。利益の大半は東南アジアと米州が稼ぎ、2025年は欧州が13億円の赤字、中華圏と日本は10億円足らずだった。
工場は顧客の近くに置く。タイ、インドネシア、ベトナムなどアジアの生産拠点で作り、メキシコなど米州の拠点で北米の顧客に応える。顧客に一度採用されれば、車の1モデルは5年から7年続くため、売上は安定しやすい。ただし採用を得るまでの競争は厳しく、価格の主導権は顧客が握る。
もう一つの顔が部品商社の機能だ。自社で使う部品の調達力を、他の顧客にも売る。電子部品の価格は市況で動くので、仕入れと販売のずれで利益が揺れることもある。
親会社的な存在が大株主のサカタインクスで、1992年にサカタインクスから分社して生まれた。今も株式の2割強を握る。
優良さと弱いところ
筆者がこの会社を「普通の会社」と見る理由は、値段を自分で決められないことにある。EMS の価格は部品代と加工賃の積み上げで、顧客と毎年交渉する。部品が値上がりすれば転嫁を求められ、値下げの要請も強い。営業利益率は過去10年で2.2%から4.3%の間にとどまった。
強みは、顧客の工場の延長として働く現場力だ。アジアと米州の複数拠点で同じ品質を出し、顧客が生産を移したい時に受け皿になれる。調達力もある。車載は安全に関わるため、一度採用された供給元は簡単には替えにくい。この切り替えの難しさが、小さな堀になっている。
弱みは三つある。一つは規模だ。台湾の鴻海やジェイビル、フレクスは売上が数兆円から20兆円超に及び、部品の購買力で太刀打ちできない。二つ目は車載への偏りだ。6割超が車載で、電動化の進み方や車の生産台数に利益が左右される。三つ目は資本効率だ。ROE は過去10年の中央値が6.7%で、2023年の9.2%が最高だった。
経営の実績には課題が残る。2024年に公表した中期計画は、2026年に売上3,700億円・営業利益155億円を掲げた。現在の会社予想は売上3,100億円・営業利益105億円で、大きく届かない。
財務は健全だ。自己資本比率は53%、有利子負債は在庫の圧縮で減っている。借金で潰れる心配はなく、資本コストへの借金の上乗せも要らない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
EMS の市場は、調査会社によって数字が分かれるが、世界で約3,500億ドルから6,500億ドルとされ、年6〜7%の成長が見込まれる。今回は中位の約4,500億ドルを置き、うち車載向けを約1,000億ドルと推定した。シークスの取扱高は車載で市場の約1.2%、それ以外で約0.2%にすぎない。
車載エレクトロニクスは、数量が実質で伸びる数少ない成熟市場だ。車の販売台数は横ばいでも、1台に載る電子部品は増える。安全支援、電動化、車内の通信が主な理由である。筆者はこの需要が10年で年3〜4%実質で伸びると見る。
2025年は車載に逆風が吹いた。中国と欧州で市場環境が悪化し、日本と米州も車載関連の出荷が落ちた。2026年上期は日本・米州を含むほぼ全地域で前年を上回り、回復が見えている。
競争の軸は二つある。一つは世界大手との購買力の差、もう一つは中国系の EMS との価格だ。EMS は顧客の工場に近い所で生産するため、大手に取られにくい領域が残る。それでも、顧客が調達先を絞る動きは止まらない。
米州には関税の問題がある。メキシコは2026年1月から、貿易協定のない国からの輸入品に10〜50%の関税をかけた。タイやインドネシアで作った部品をメキシコに運ぶと、コストが上がりうる。逆に北米向けの完成品は、域内で作れば関税を避けやすい。立地の組み方が利益を分ける。
日本の EMS 会社の中で、シークスはアジアと米州に広く生産拠点を持つ方に入る。ただし規模では世界の大手に遠く及ばない。
資本政策と M&A
資本政策は控えめだ。配当は継続的で安定的な還元を基本とし、2025年12月期の期末配当は増配だった。2026年12月期も増配を予定するが、純利益予想に対する配当の割合は約3割にとどまる。自社株買いの計画は確認できなかった。自己株式は6%余りを持ち、2026年には一部を譲渡制限付株式報酬に充てた。
大株主はサカタインクスで、株式の約21%を持つ。投資信託などの信託口が9%超で続く。親会社的な大株主がいるため、他社からの敵対的な買収は起こりにくい。kabufu の推定では、10年以内の TOB の確率は18.8%だが、具体的な動きは確認できていない。
買収の実績は少ない。成長の中心は顧客と一緒に拠点を増やす自前の投資で、大型の M&A で資本を使う会社ではない。この点は、筆者には堅実に映る。
欧州の事業再編は、資本の使い方の失敗を認めた形だった。2024年にハンガリー工場の閉鎖を発表し、スロバキアに集約した。2025年は欧州が13億円の赤字だったが、2026年上期は2.8億円の黒字に変わった。余った資産の売却益も出ている。
EMS は在庫に資本を食われる事業だ。その棚卸資産の回転日数は、上期に68.8日まで8日短縮した。この改善が続けば、同じ売上でも必要な資本は減り、ROE の底上げにつながる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026年は、構造改革の効果が数字に出始めた年だ。上期の営業利益は56億円で前年から17%伸び、営業利益率は3.7%に上がった。欧州は黒字に転じ、有利子負債は70億円近く減った。会社は、増収がそのまま利益に結びつく体質になったと説明している。工場を整理し、在庫を絞ったあとで売上が戻れば、利益は大きく伸びる。
需要も追い風だ。車載電子部品の搭載量は、安全支援や電動化で増え続ける。米州では北米向けの電動工具や蓄電池、航空関連が伸び、産業機器の構成比は22%まで上がった。車載一本足から、複数の柱を持つ会社へ変わりつつある。
顧客の工場移転の動きも味方する。関税を避けて生産地を動かしたい顧客に、アジアとメキシコに拠点を持つシークスは受け皿として選ばれやすい。EMS は一度採用されれば数年続くので、取れた案件は積み上がる。
利益率の改善余地は大きい。営業利益率が過去最高の4.3%を超えて4.5%まで届けば、純利益は200億円近くになる。現在の2,900億円の売上は、同業の大手と比べて小さく、成長の余地がある。会社の中期計画が掲げた3,700億円も、数年の遅れで達成できる水準だ。
利益が伸びて ROE が10%を超えれば、倍率も資本コスト以上に評価される。今の ROE は谷の数字にすぎず、構造改革後の収益力はもっと高い。
慎重な見方
稼ぐ力は何度も期待を裏切ってきた。2023年に営業利益122億円まで伸びた後、2024年に86億円、2025年は純利益25億円へ戻った。中期計画の3,700億円は、会社自身の予想が3,100億円で、もう届かない。構造改革で利益が戻るのは、悪い年を基準にすれば当たり前だ。
EMS は価格の主導権が顧客にある。車載の顧客は毎年コスト削減を求め、部品の値上がりは転嫁できても、加工賃の値上げは通りにくい。台湾の鴻海やジェイビルは桁違いの購買力で、中国系の EMS は価格で攻めてくる。シークスの売上は世界の車載 EMS 市場の約1%にすぎず、顧客が調達先を絞れば真っ先に切られる側にいる。
車載への偏りも危うい。6割超が車載で、電動化の進み方が読みにくい。新モデルの採用を逃せば、数年分の売上が消える。関税もある。メキシコは貿易協定のない国からの輸入品に関税をかけており、アジアで作った部品を米州へ運ぶコストが上がる。
資本効率が資本コストを下回る点も重い。10年間の ROE は中央値で6.7%、最高でも13.6%だった。利益を再投資しても、価値が増えない。上期は経常利益の伸び(35%)が営業利益の伸び(17%)の倍あり、資産の売却益と利払いの減少が混じる。
2026年の予想純利益82億円には売却益も混じる。常態の利益は、それより小さい。
どちらに重みを置いたか
構造改革の効果と車載需要の底堅さは本物で、2026年の利益回復は確からしい。一方、10年の価値を決めるのは稼ぐ力が資本コストを超えるかどうかだ。過去の実績も、価格の主導権を持てない事業の構造も、それを否定している。
確率は慎重な側に寄せた。楽観は7%、悲観は15%に置く。悲観を厚くした理由は、車載への偏りと大手との購買力の差で、一度シェアを失うと取り戻しにくいためだ。中立の筋書きでも ROE は7%台で、倍率は1桁にとどまる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 2,507 円1,182 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 728 円343 億円)。 今の値に割り戻すと 1,657 円781 億円、今との差 +1.0%、 期待の年率 +7.0%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 5,700 円2,688 億円 | 1,145 円540 億円 | +317.4% | +15.4% | 479 円226 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,059 円1,914 億円 | 933 円440 億円 | +204.4% | +11.8% | 998 円471 億円 |
| 中立 | 34% | 2,943 円1,388 億円 | 721 円340 億円 | +123.4% | +8.4% | 1,246 円587 億円 |
| やや悲観 | 24% | 995 円469 億円 | 636 円300 億円 | −0.5% | −0.1% | 391 円185 億円 |
| 悲観 | 15% | 382 円180 億円 | 424 円200 億円 | −50.9% | −6.9% | 121 円57 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,507 円1,182 億円 | 728 円343 億円 | +97.3% | +7.0% | 3,236 円1,526 億円 |
今の株価時価総額 1,640 円773 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 車載と産業機器の両輪で伸び、利益率が過去最高を超える 利益 186 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 5,700 円2,688 億円
車載電子部品の搭載量が増え続け、世界の車載 EMS 市場は10年で実質1.5倍に広がる。シークスは車載の取扱シェアをほぼ保ち、さらに北米の生産移転の受け皿として新規案件を取る。産業機器では電動工具や蓄電池、航空関連が育ち、取扱高は10年で1.7倍を超える。
米州とアジアの複数拠点が顧客に選ばれ続け、価格交渉でも部材の値上げを加工賃に転嫁できる。営業利益率は4.5%と、過去最高の4.3%を超える。欧州はスロバキアへの集約で黒字が定着し、赤字の拠点はなくなる。
資本の使い方も改まる。在庫の回転が速くなり、配当も増える。売上は6,300億円、営業利益は280億円まで伸びる。ROE は11%に届き、資本コストを超える会社として評価される。
- 車載関連機器の EMS:数量 18.9(世界の車載電子機器 EMS 市場(約1,000億ドル・実質)× シークスの取扱シェア=取扱高(億ドル))× 価格 134.0%(値段の指数(今を 1。物価 3% で 10 年 1.34 倍)。rev_factor は円/ドルの 150)→ 売上 3,801 億円・営業利益 167 億円。車載市場が実質1.5倍・取扱シェアほぼ維持(取扱高1.55倍)、営業利益率4.4%
- 産業機器・家電・情報機器などの EMS:数量 12.4(世界の産業機器・家電・情報機器 EMS 市場(約3,500億ドル・実質)× シークスの取扱シェア=取扱高(億ドル))× 価格 134.0%(値段の指数(今を 1。物価 3% で 10 年 1.34 倍)。rev_factor は円/ドルの 150)→ 売上 2,497 億円・営業利益 125 億円。産業機器など市場が1.5倍・シェア拡大(取扱高1.75倍)、営業利益率5.0%
倍率:事業の純利益 186 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍。全体の PER 14.45 倍、時価総額 2,688 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:車載の搭載量の増加、産業機器の拡大、北米の生産移転がすべて重なり、利益率が過去最高を超える必要がある。実現すれば大きいが、条件が多いので低く置いた。
やや楽観 20% 車載が堅調に伸び、産業機器が稼ぎを厚くする 利益 144 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 4,059 円1,914 億円
世界の車載 EMS 市場は実質で年3%伸び、取扱シェアは小さく上がる。産業機器は電動工具と蓄電池が伸び、構成比が3割近くまで上がる。顧客の工場の延長として働く現場力が評価され、北米向けの案件も取れる。
営業利益率は4.0%まで戻る。欧州の赤字は解消し、東南アジアと米州が利益を支える。中国と欧州の車載の落ち込みは、2026年上期の回復から一巡したと見る。ただし価格交渉の主導権は顧客にあり、利益率は過去の最高水準に届かない。
売上は5,450億円、営業利益は220億円になる。ROE は9%と資本コストにほぼ並び、在庫の圧縮と配当の引き上げで株主への還元が増える。会社は、車載一本足の弱さを少しずつ薄めていく。
- 車載関連機器の EMS:数量 16.5(世界の車載電子機器 EMS 市場(約1,000億ドル・実質)× シークスの取扱シェア=取扱高(億ドル))× 価格 134.0%(値段の指数(今を 1。物価 3% で 10 年 1.34 倍)。rev_factor は円/ドルの 150)→ 売上 3,310 億円・営業利益 132 億円。車載市場が実質1.35倍・取扱シェア維持、営業利益率4.0%
- 産業機器・家電・情報機器などの EMS:数量 10.7(世界の産業機器・家電・情報機器 EMS 市場(約3,500億ドル・実質)× シークスの取扱シェア=取扱高(億ドル))× 価格 134.0%(値段の指数(今を 1。物価 3% で 10 年 1.34 倍)。rev_factor は円/ドルの 150)→ 売上 2,141 億円・営業利益 98 億円。産業機器など市場が1.5倍・シェア小幅拡大、営業利益率4.6%
倍率:事業の純利益 144 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.29 倍、時価総額 1,914 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年の回復が一巡後も続き、車載・産業機器とも市場並みに伸びる筋書き。構造改革の効果が出ている足元の動きを素直に延ばした上位の想定。
中立 34% 中立:売上は物価並みに伸びるが、利益率の戻りは3.8%まで 利益 111 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,943 円1,388 億円
世界の車載 EMS 市場は実質で10年に1.4倍へ広がるが、大手と中国勢に押され、シークスの取扱高は1.15倍にとどまる。取扱シェアは1.2%から1.0%へ下がる。産業機器は1.25倍に伸び、構成比が少し上がる。
営業利益率は3.8%と、構造改革後の水準が定着する。過去10年の最高4.3%には届かず、2023年の4.0%も下回る。欧州は黒字で安定するが、顧客の価格交渉と部材の値上げ転嫁の遅れで、利益率の上積みは小さい。
売上は4,600億円、営業利益は170億円になる。利益は今の2倍近いが、増えた利益の多くは物価による名目の伸びだ。ROE は7%台で、資本コストの9%に届かない。会社はこの10年も、堅実だが特別でもない EMS として続く。
- 車載関連機器の EMS:数量 14.0(世界の車載電子機器 EMS 市場(約1,000億ドル・実質)× シークスの取扱シェア=取扱高(億ドル))× 価格 134.0%(値段の指数(今を 1。物価 3% で 10 年 1.34 倍)。rev_factor は円/ドルの 150)→ 売上 2,820 億円・営業利益 104 億円。車載市場が実質1.4倍・取扱シェア1.2%→1.0%(取扱高1.15倍)、営業利益率3.7%
- 産業機器・家電・情報機器などの EMS:数量 8.9(世界の産業機器・家電・情報機器 EMS 市場(約3,500億ドル・実質)× シークスの取扱シェア=取扱高(億ドル))× 価格 134.0%(値段の指数(今を 1。物価 3% で 10 年 1.34 倍)。rev_factor は円/ドルの 150)→ 売上 1,784 億円・営業利益 77 億円。産業機器など市場が実質1.4倍・シェア微減(取扱高1.25倍)、営業利益率4.3%
倍率:事業の純利益 111 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 1,388 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:車載の搭載量の伸びと、世界大手・中国勢との競争による取扱シェアの低下が相殺する中心の筋書き。過去10年の実績と構造改革後の足元の動きから置いた。
やや悲観 24% 取扱シェアがじわり下がり、利益率が3%を割る 利益 67 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 995 円469 億円
世界の車載 EMS 市場は伸びるが、顧客が調達先を大手に絞り、シークスの取扱高は市場の伸びを大きく下回る。取扱シェアは1.2%から0.9%へ落ち、車載の取扱高は10年で横ばいに近い。
価格交渉では部材の値上げを加工賃に転嫁できず、営業利益率は2.8%まで下がる。2019年から2021年と同じ水準だ。関税を避ける生産地の移転にも後れを取り、米州の稼ぎが細る。
売上は3,950億円と、物価の分だけ増える。営業利益は110億円で、今の1.2倍にとどまる。ROE は5%に下がり、配当を保つのがやっとの会社になる。会社は存続するが、資本を食う事業として評価される。
- 車載関連機器の EMS:数量 12.2(世界の車載電子機器 EMS 市場(約1,000億ドル・実質)× シークスの取扱シェア=取扱高(億ドル))× 価格 134.0%(値段の指数(今を 1。物価 3% で 10 年 1.34 倍)。rev_factor は円/ドルの 150)→ 売上 2,452 億円・営業利益 69 億円。車載市場が実質1.3倍でも取扱シェア1.2%→0.9%(取扱高は横ばい)、営業利益率2.8%
- 産業機器・家電・情報機器などの EMS:数量 7.5(世界の産業機器・家電・情報機器 EMS 市場(約3,500億ドル・実質)× シークスの取扱シェア=取扱高(億ドル))× 価格 134.0%(値段の指数(今を 1。物価 3% で 10 年 1.34 倍)。rev_factor は円/ドルの 150)→ 売上 1,498 億円・営業利益 49 億円。産業機器など取扱高1.05倍、営業利益率3.3%
倍率:事業の純利益67億円・事業 ROE 5.0% は k 8% 以下なので、上限は 1÷k=11.1倍。稼ぐ力が資本コストを大きく割る筋書きで、上限の約63%の7.0倍に置いた。
確率:世界大手と中国系 EMS の購買力と価格に押され、顧客が調達先を絞って取扱シェアが下がる。過去にも2019年から2021年に営業利益率が2%台へ落ちた実績があり、現実的な下位の想定。
悲観 15% 大手と中国勢に取扱高を奪われ、構造的に稼げなくなる 利益 30 億円 · PER 6.0 倍 · 株価時価総額 382 円180 億円
世界の車載 EMS 市場は伸びても、顧客が調達先を絞り、シークスは主要案件をいくつも失う。取扱シェアは1.2%から0.7%へ下がり、車載の取扱高は4分の3に縮む。産業機器でも中国系との値下げ競争で単価が下がる。
固定費の重い工場が稼働率を落とし、営業利益率は2%まで沈む。売上は2,800億円と今を割り込み、営業利益は55億円だ。米州とアジアで拠点を整理し、工場の減損が400億円出て、自己資本は今より小さくなる。
ROE は3%台で、利益は資本コストを大きく下回る。稼ぐ力は変わらないのに資本ばかり重い状態が続く。配当は減り、株主は利益でなく会社の資産が売れる値段を気にするようになる。
- 車載関連機器の EMS:数量 9.2(世界の車載電子機器 EMS 市場(約1,000億ドル・実質)× シークスの取扱シェア=取扱高(億ドル))× 価格 125.0%(値段の指数(今を 1。物価 3% で 10 年 1.34 倍)。rev_factor は円/ドルの 150)→ 売上 1,716 億円・営業利益 34 億円。車載の取扱高0.75倍・価格は顧客の値下げ要請で指数1.25(物価転嫁が進まない)、営業利益率2.0%
- 産業機器・家電・情報機器などの EMS:数量 5.7(世界の産業機器・家電・情報機器 EMS 市場(約3,500億ドル・実質)× シークスの取扱シェア=取扱高(億ドル))× 価格 125.0%(値段の指数(今を 1。物価 3% で 10 年 1.34 倍)。rev_factor は円/ドルの 150)→ 売上 1,065 億円・営業利益 27 億円。産業機器など取扱高0.8倍・同価格1.25、営業利益率2.5%
倍率:事業の純利益30億円・事業 ROE 3.5% は k 8% 以下なので、上限は 1÷k=11.1倍。稼ぐ力が資本コストを大きく割り、上限の約54%の6.0倍に置いた。減損で自己資本が縮み PBR は低く出るが、純現金のない会社で売れる資産の床は立てず、稼ぐ力で置いた。
確率:車載が6割超の会社で、数年分の案件を失うと取り戻しにくい。大手との購買力の差、中国系との値下げ競争、関税による生産地の見直しが重なる筋書きで、悲観を厚く置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
車載関連機器の EMS
車載ランプ・電装品などの電子機器を、部品の調達から基板実装・組み立てまで受託する事業。売上の6割超を占める。
| 数量世界の車載電子機器 EMS 市場(約1,000億ドル・実質)× シークスの取扱シェア=取扱高(億ドル) | 価格値段の指数(今を 1。物価 3% で 10 年 1.34 倍)。rev_factor は円/ドルの 150 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 12.2 | 100.0% | 1,830 | 55 |
| 10 年後 中立 | 14.0 | 134.0% | 2,820 | 104 |
取り方:世界の EMS 市場は調査会社により2025年で約3,560億〜6,500億ドルと開きがあり、中位の約4,500億ドルを置いた。車載向けを約2割と推定して約1,000億ドル。会社は売上の6割超が車載関連と開示しており、2025年12月期の売上2,895億円のうち約63%の1,830億円を車載とした。150円で割った12.2億ドルが取扱高で、市場の約1.2%に当たる。事業別の営業利益は開示が無く、地域別の利益と上期の動きから約3%と推定した。
産業機器・家電・情報機器などの EMS
産業機器(電動工具・蓄電池・航空関連)、家電、情報機器などの電子機器の受託製造。構成比は上期に産業機器が22%まで上がった。
| 数量世界の産業機器・家電・情報機器 EMS 市場(約3,500億ドル・実質)× シークスの取扱シェア=取扱高(億ドル) | 価格値段の指数(今を 1。物価 3% で 10 年 1.34 倍)。rev_factor は円/ドルの 150 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 7.1 | 100.0% | 1,065 | 38 |
| 10 年後 中立 | 8.9 | 134.0% | 1,784 | 77 |
取り方:世界の EMS 市場の中位約4,500億ドルから車載向けを除いた約3,500億ドルを対象とした。売上のうち車載以外の約37%、1,065億円を充て、150円で割った7.1億ドルが取扱高で、市場の約0.2%。事業別の営業利益は開示が無く、産業機器の伸びや欧州の赤字が車載側に多いことを踏まえ、利益率は車載よりやや高い3.6%、全社調整を-4.5億円と推定した。
リスクと懸念
車載への集中
売上の6割超が車載関連機器で、車の生産計画や電動化の進み方に利益が左右される。2025年は中国と欧州の車載が落ち込み、日本と米州も出荷が減った。車の1モデルは数年続くため、新しいモデルの採用を逃せば、数年分の売上が失われる。電動化の進み方が読みにくいことも、先行きの不確実さを増している。
世界大手・中国勢との購買力の差
台湾の鴻海、ジェイビル、フレクスなど世界の大手は売上が桁違いで、部品の購買力で優位に立つ。中国系の EMS は価格で攻める。顧客が調達先を絞る動きが進めば、売上の小さいシークスは切られる側に回りかねない。一度失った案件は、次のモデルまで取り戻せない。
価格の主導権が顧客にある
EMS の加工賃は顧客との毎年の交渉で決まる。部材の値上がりを転嫁できても、加工賃の上積みは難しい。営業利益率は過去10年で2.2〜4.3%の範囲で、中期計画が掲げる4.2%には届いていない。値決めの力が弱い限り、数量が伸びても利益の伸びは限られる。
関税と生産地の見直し
メキシコは2026年1月から、貿易協定のない国からの輸入品に10〜50%の関税をかけた。タイやインドネシアで作った部品を米州へ運ぶ流れでは、コストが上がりうる。米国の通商政策の変更でも、米州の利益が動く。米州は2025年に営業利益43億円を稼ぐ、利益の柱の一つだ。
資本効率が資本コストを下回る
過去10年の ROE の中央値は6.7%で、投資家が求める水準を下回る。利益を会社に残すほど価値が薄まる。配当は純利益予想の約3割にとどまり、自社株買いの計画も確認できない。事業が資本コストを稼げないなら、利益を株主へ返す方が価値は高い。
構造改革後の一過性の利益
2026年の予想純利益82億円には、資産の売却益が混じる。上期は経常利益の伸びが営業利益の伸びの倍あり、本業の力は営業利益の伸び(17%)の方に近い。2025年は第4四半期だけで18億円の純損失が出ており、利益の振れが大きいことを示す。
欧州の事業再編の後始末
ハンガリー工場の閉鎖とスロバキアへの集約は、2026年上期に欧州を黒字へ戻した。ただし工場の集約後も、欧州の車載市場が弱ければ稼働率が下がり、赤字が再燃する。2025年の欧州は13億円の赤字で、全社の営業利益の約15%に当たる穴だった。
今後の分かれ目
- 営業利益率が4%を超えて定着したら
- 中立から上の筋書きに確率を移す。過去最高の4.3%を超えるかどうかが、構造改革の成否を測る目安になる。
- 車載の主要顧客から新モデルの大型案件を取れたら
- 取扱シェアの維持を確認し、車載の取扱高の前提を上げる。逆に案件の失注が続けば、悲観の確率を厚くする。
- メキシコや米国の関税が拡大し、米州の利益が落ちたら
- 米州の稼ぎが細る筋書き(やや悲観)に重みを移す。アジアで作って米州へ運ぶ流れの組み替えが間に合うかを見る。
- 会社が自社株買いや配当性向の引き上げを明確に打ち出したら
- 資本が積み上がって価値が薄まる状態が改善する。ROE が上がらなくても、株主への還元が増えた分は価値に効く。
- 世界大手や中国系 EMS が日本の顧客を取り込む動きが目立ったら
- 購買力の差が価格に出てきたと見て、悲観の確率を上げる。特に車載の価格改定の動向を確認する。
- サカタインクスが保有比率を動かしたら
- 親会社的な大株主の売却や買い増しは、TOB や再編の入口になりうる。実際の公表までは筋書きに入れない。
見ておくもの
- 営業利益率(3.4%の2026年予想から4%超へ進むか)
- 車載関連機器の売上高と構成比(現在6割超)
- 産業機器の売上と構成比(上期22%)
- 米州の営業利益(2025年43億円)と関税の影響
- 棚卸資産の回転日数(上期68.8日)と有利子負債の動き
- 配当性向と自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
EMS の市場規模は調査会社で約3,560〜6,500億ドルと開くため中位の4,500億ドルを置き、車載比率とシェアは推定と明記した。物価3%は価格の指数に入れ、取扱高は実質で置いた。倍率は資本コスト8%(基本7.5%+quality 1.5%)、g 4.0%、堀は普通から正当化 PER を出し、楽観〜中立は上限の約8割に置いた。今の PER や PBR、過去の倍率、同業の倍率は使っていない。中立の ROE は7%台で k を下回るため、PER の上限は1÷kとし、帳簿の自己資本を価値の床にしていない。事業別の営業利益は推定のため、全社の合計で整合を取った。新リース会計基準で営業利益が少し増え、純有利子負債が増える形に変わるが、10年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→14.45 倍・やや楽観 PER 8.8→13.29 倍・中立 PER 8.3→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5% を足した(決まり v2)。顧客との価格交渉や中国勢の台頭など個別の事業リスクは、筋書きと確率で表している。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.00%。