結論
たけびしは、1926年に京都で生まれた三菱電機系の技術商社だ。工場の自動化機器、半導体と電子デバイス、病院や建物の設備を、メーカーに代わって顧客へ売り、据え付けと保守までこなす。三菱電機は筆頭株主で、持株比率は約15%である。
筆者の結論は、10年で測った本質価値は今の値段を下回る、というものだ。理由は単純で、稼ぐ力が薄い割に、値段はすでに事業の価値を織り込み始めているからである。営業利益率は3〜4%台、自己資本利益率は7%弱にとどまる。資本コストには届かない。
追い風はある。2027年3月期は、AI・半導体関連の設備投資が効いて、会社は営業利益を48.5億円へ引き上げた。純現金は70億円を超え、財務は強い。配当も増やす姿勢だ。
気になるのは三つだ。仕入先の三菱電機が値段と取扱先を決めること、半導体と産業機器が景気の山谷を受けること、中期経営計画の目標に届いていないことである。福井三菱電機機器販売の取得は、系列の再編で取る側に回れる証拠だ。ただし、その逆の再編も起こりうる。
中立の筋書きでは、利益は10年で1.7倍になる。それでも伸びの大半は物価と数量で、稼ぐ力は変わらない。倍率は11倍が上限に近く、今の値段を支える根拠にはならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「悪くないが、安くはない」事業である。良い点は、潰れないことだ。純現金があり、赤字の年は過去にほとんどなく、三菱電機との関係は長い。
悪い点は、稼ぐ力が資本コストに届かないことである。貯めた利益は、額面どおりの価値を生まない。ROEが7%弱なら、自己資本の価値は帳簿を下回る。純資産に対する倍率が1倍を超える現在の値段は、稼ぐ力に対して高い。
筆者が重く見るのは、経営の資本の使い方だ。配当を増やし、ためるだけの現金を戻す姿勢は良い。一方、大きな取得を避けているので、ROEを押し上げる打ち手が少ない。中期経営計画のROE9%は達成できなかった。
安全域は薄い。楽観の筋書きでも、今の値段を超える価値は限られる。悲観では商権を失い、価値は大きく下がる。この会社を持つなら、割安な時に買って配当を受け取る姿勢が合う。今の値段は、その条件を満たさない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは三つの事業に分かれる。2026年3月期の売上は約1,100億円で、構成比はほぼ三等分である。
最大は産業機器システムで、売上の約36%を占める。三菱電機のFA機器、つまり工場の機械を動かす制御装置を、機械メーカーや工場に売る。半導体や蓄電池の製造装置、AI向けのレーザー加工機、産業用パソコンも扱う。営業利益率は約5%で、三事業の中では高い。国内の設備投資と人手不足の省人化が需要を決める。
次が半導体・デバイスで、売上の約35%である。パワコンや蓄電池向けの半導体、車載とデータセンター向けの電子部品、基板に部品を載せる実装機を売る。インドの現地会社を傘下に持ち、海外売上は連結の約2割を占める。営業利益率は2%台で、最も薄い。世界の半導体の波をそのまま受けるが、取り分は小さい。
三つ目は社会・情報通信で、約29%を占める。放射線がん治療装置などの医療、空調やLED照明の更新、携帯端末、上下水道のDXを手がける。アスベスト分析の会社も買収した。営業利益率は4%前後で、景気に左右されにくい。
2026年10月、三菱電機が全株を持つ福井三菱電機機器販売を子会社にし、福井たけびしとした。三菱電機の地域販売網の再編を取り込む動きだ。
優良さと弱いところ
強みは、三菱電機との関係にある。1926年の創業から、京都を地盤に三菱電機の機器を売ってきた。三菱電機の持株比率は約15%で、取引の信用になる。機器を売って終わりにせず、設計の相談、据え付け、保守まで担うため、顧客は簡単には他の商社へ乗り換えない。離職率も低く、現場の知識が人に蓄積される。
弱みは、稼ぐ力の薄さである。営業利益率は過去12年、2.7〜4.6%の幅にある。ROEは4.5〜9.4%で、過去10年の中央値は6.6%だ。資本コストを超えた年はほとんどない。売上が伸びても、利益の伸びは売上より遅い。
堀は、他社が簡単にまねできない強みという意味で、狭い。商品を決めるのは三菱電機で、商社は値段を決められない。立花エレテック、RYODEN、カナデンなど、同じ三菱電機系の特約店が近隣にいる。同じ商品を売る競合が、系列の中にいる構造だ。
財務は強い。自己資本比率は約68%、純現金は74億円ある。ただし、商社の現金は売掛金と買掛金の波を受け止める運転資金で、全部が株主のものではない。
経営は堅実である。中期経営計画の目標は、売上1,300億円、経常利益60億円、ROE9%だった。最終年度の売上は1,187億円の見込みで、届かない。ただ、足元の勢いは良く、計画をたびたび上方に直している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
たけびしが立つ市場は二つある。国内の工場とビルの設備、世界の半導体と電子部品である。
国内は、人手不足を埋める省人化と、古くなった設備の更新が、実質で年2%ほどの需要を生む。AIデータセンターと半導体工場の建設も、制御機器と装置の注文を増やしている。2027年3月期の第1四半期は、売上が15%、営業利益が49%増えた。ただし、2024年から2025年はFA機器の在庫調整で、利益が伸び悩んだ。山と谷の差は大きい。
半導体は、世界の市場が名目で年6〜8%伸びると見られる。しかしたけびしの取り分は国内の産業機器と車載が中心で、AI向けの上澄みは大手商社が取っている。マクニカや加賀電子のような規模はない。
業界の大きな動きは、メーカーによる販売網の整理だ。三菱電機は地域の販売会社を特約店に譲り、特約店の数を絞る方向にある。取る側に回れば取り分は増え、取られる側に回れば商権を失う。
競合は同じ系列の立花エレテックやRYODENのほか、山善、ミスミ、トラスコ中山のような、通販や在庫を武器にする商社だ。メーカーが直接顧客に売る動きも、長期では商社の取り分を圧迫する。
資本政策と M&A
還元は増やす方針だ。累進配当、つまり減らさない配当と、配当性向40%以上を掲げる。2027年3月期の配当は、創立100周年の記念配当を足して、総額で約15億円の予定である。前期は約12億円だった。
自社株買いの実績は、今回の調べでは確かめられなかった。自己株式は0.01%しかない。
政策保有株の残高と縮減の方針も、確かめられなかった。評価には足していない。三菱電機のほかに、立花エレテックが約7%、サンセイテクノスが約7%を持つ。同業どうしの持ち合いである。
M&Aは、中期経営計画の達成に必要と会社が認めている。これまでにアスベスト分析やインドの商社を買った。2026年10月に福井三菱電機機器販売を取得したが、規模は小さく、会社は業績への影響を軽微としている。大きな取得は、これまで無い。
株主優待は、QUOカードを年2回出す。費用は年1億円に満たず、評価への影響は1ポイントに届かないので、数えていない。
kabufuの試算では、10年以内にTOB、つまり株式の公開買い付けを受ける確率は約2割ある。三菱電機の持株比率は約15%で、具体的な動きは確認できない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AIと半導体の設備投資は、まだ序盤だ。データセンターの建設、半導体工場の増設、電力設備の更新が続き、制御機器と装置の注文が長く積み上がる。2027年3月期の第1四半期は、営業利益が49%増えた。会社は通期の予想を上げ、今期の営業利益は48.5億円になる。利益が伸びる局面にある。
三菱電機は地域の販売会社を特約店へ譲る動きを始めた。福井三菱電機機器販売は、その最初の例だ。たけびしは京都を中心とする地盤が強く、同じ型の取得を重ねて、取り分を広げられる。
医療機器の更新、ビル設備の入れ替え、上下水道のDXなど、景気に左右されにくい事業も育っている。半導体事業ではのれんの償却が終わり、利益率が上がる。純現金は70億円を超え、配当は累進だ。ROEが資本コストを上回れば、倍率は一段上がる。今の値段は、その入り口にすぎない。
三菱電機が持株比率を保ち、取得の相手を渡す姿勢を見せていることも、系列の中でたけびしが選ばれる立場にあることを示す。
慎重な見方
利益の伸びの大半は、設備投資の山によるものだ。2024年から2025年は、FA機器の在庫調整で利益が落ちた。今期の好調は、同じ波の逆側にすぎない。山の利益を10年に伸ばして見るのは危険だ。
たけびしは値段を決められない。商品を決めるのも三菱電機で、近隣に同じ商品を売る特約店が複数いる。メーカーが特約店を絞れば、取り分を失う側に回る可能性は同じだけある。福井の取得は小さく、規模の拡大には遠い。
中期経営計画の目標は、売上も経常利益もROEも届かない。M&Aは計画に必要としながら、大きな案件は実行できていない。AI向けの上澄みは大手商社が取り、たけびしは国内の産業機器と車載に偏る。
ROEは過去10年の中央値で6.6%だ。資本コストに届かない会社に、1倍を超える純資産倍率は高すぎる。純現金も、運転資金の緩衝が多く、株主に自由に戻せる額は見かけより小さい。
福井の取得は小さく、業績への影響は軽微と会社自身が言う。成長のために必要とする取得が、まだ形になっていない。AI向けの追い風は、数年で一巡する可能性がある。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。強気の言い分は、足元の勢いと系列再編の追い風である。ただし、どちらも10年の稼ぐ力を変える証拠にはならない。利益率の最高は4.6%で、10年の中立もその内に置いた。
確率は、慎重な側へ寄せた。楽観を7%、やや楽観を20%、中立を36%、やや悲観を24%、悲観を13%とした。悲観は、三菱電機の再編で商権を失う筋書きで、起これば価値は大きく下がる。
10年で見ると、利益は1.7倍になる。それでも倍率は11倍が限度で、今の値段を超えるのは楽観に近い筋書きだけだ。期待の価値は、今の値段を下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,337 円536 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,103 円177 億円)。 今の値に割り戻すと 2,297 円369 億円、今との差 −19.6%、 期待の年率 +4.5%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,424 円1,031 億円 | 1,502 円241 億円 | +177.4% | +10.7% | 555 円89 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,670 円749 億円 | 1,309 円210 億円 | +109.3% | +7.7% | 1,196 円192 億円 |
| 中立 | 36% | 3,895 円625 億円 | 1,196 円192 億円 | +78.2% | +5.9% | 1,833 円294 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,920 円308 億円 | 935 円150 億円 | −0.1% | 0.0% | 685 円110 億円 |
| 悲観 | 13% | 698 円112 億円 | 623 円100 億円 | −53.8% | −7.4% | 172 円28 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,337 円536 億円 | 1,103 円177 億円 | +55.4% | +4.5% | 4,440 円713 億円 |
今の株価時価総額 2,857 円458 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% AIと自動化の投資が続き、系列再編の受け皿になる 利益 73 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 6,424 円1,031 億円
AI・半導体向けの設備投資が長く続き、国内の工場の省人化投資も途切れない。FA機器と装置、産業用PCの取扱額が実質で大きく伸びる。
三菱電機は、地域の販売会社を特約店に譲る動きを続ける。2026年10月の福井の取得は、その一例だ。筆者の見立てでは、たけびしは同じ型の取得を何件か成功させ、関西・北陸の商流を厚くする。取得で積み上がった顧客に、装置や保守を重ねて売る。
半導体・デバイスは、インドや東南アジアのデータセンター向けと、再生可能エネルギーのパワコン向けが伸びる。のれんの償却は終わり、利益率は3%台後半へ上がる。社会・情報通信では、医療機器の更新とビル設備の入れ替えが続く。
営業利益は100億円近くまで増え、利益率は過去の最高に並ぶ。ただし商社の薄利は変わらない。利益の伸びの大半は数量と物価によるもので、利益率の上振れは小さい。
- 産業機器システム:数量 543(国内のFA・設備向け機器の流通市場(実質・億円)× 取扱シェア)× 価格 1.34(取扱品の値段の指数(2026/03 を1.00、物価込みの名目))→ 売上 823 億円・営業利益 45 億円。市場1.35倍×取り分1.15倍、営業利益率5.5%
- 半導体・デバイス:数量 3.9(世界の半導体市場(億ドル、実質)× 取扱シェア)× 価格 1.34(取扱品の値段の指数(2026/03 を1.00、物価込みの名目))→ 売上 790 億円・営業利益 28 億円。市場1.55倍×取り分1.00倍、営業利益率3.6%
- 社会・情報通信:数量 360(国内の医療・ビル設備・通信端末の更新市場(実質・億円、推定)× 取扱シェア)× 価格 1.34(取扱品の値段の指数(2026/03 を1.00、物価込みの名目))→ 売上 536 億円・営業利益 25 億円。市場1.08倍×取り分1.15倍、営業利益率4.6%
倍率:事業の純利益 73 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.12 倍、時価総額 1,031 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内のAI・半導体関連の設備投資が10年とも切れず、三菱電機が地域販売会社を次々と譲り、買収も成功する。重なる条件が多く、最も低く置いた。
やや楽観 20% 省人化とインフラ更新で、名目の伸びを取り込む 利益 58 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 4,670 円749 億円
国内は人手不足が慢性化し、工場の自動化とビル・インフラの更新が続く。FA機器の取扱額は実質で3割近く増える。
半導体・デバイスは、AI向けと再エネ向けが伸びる一方、国内の自動車・民生向けの回復は遅い。取り扱いの伸びは世界の半導体市場の伸びを少し下回り、取り分は小さく下がる。のれんの償却が終わるため、利益率は3%台前半へ戻る。
社会・情報通信は、放射線がん治療装置の更新と空調・LED照明の入れ替えが底を支える。通信端末の販売は横ばいだ。福井のような地域販売会社の取得が1〜2件続き、取り分が1割ほど上がる。
営業利益は80億円台で、利益率は4%強になる。会社の中期経営計画が掲げた規模には届くが、ROEは10%には届かない。薄利の構造は変わらない。
- 産業機器システム:数量 479(国内のFA・設備向け機器の流通市場(実質・億円)× 取扱シェア)× 価格 1.34(取扱品の値段の指数(2026/03 を1.00、物価込みの名目))→ 売上 726 億円・営業利益 38 億円。市場1.28倍×取り分1.07倍、営業利益率5.2%
- 半導体・デバイス:数量 3.5(世界の半導体市場(億ドル、実質)× 取扱シェア)× 価格 1.34(取扱品の値段の指数(2026/03 を1.00、物価込みの名目))→ 売上 702 億円・営業利益 23 億円。市場1.42倍×取り分0.97倍、営業利益率3.2%
- 社会・情報通信:数量 332(国内の医療・ビル設備・通信端末の更新市場(実質・億円、推定)× 取扱シェア)× 価格 1.34(取扱品の値段の指数(2026/03 を1.00、物価込みの名目))→ 売上 494 億円・営業利益 21 億円。市場1.04倍×取り分1.10倍、営業利益率4.2%
倍率:事業の純利益 58 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.92 倍、時価総額 749 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の省人化投資と設備更新は構造的に続く。半導体・デバイスの利益率が改善し、小さな取得も進む。実現しやすい上振れとして2番目に厚く置いた。
中立 36% 数量は緩やかに伸び、利益は名目の分だけ増える 利益 50 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,895 円625 億円
国内のFA・設備向け需要は、人手不足の省人化と更新で実質年2%弱伸びる。FA機器と装置の取扱額は、取り分をわずかに上げて1.26倍になる。
半導体・デバイスは、世界の半導体市場が実質1.3倍になる中で、取り分は1割弱下がる。国内の産業機器と車載向けが中心で、AI向けの上澄みを大手商社ほどは取れない。利益率はのれんの償却が終わる分だけ戻り、2.8%で止まる。
社会・情報通信は、人口減で更新市場はほぼ横ばいだが、取得と医療の更新で取り分が少し上がる。
営業利益は70億円弱、利益率は4%弱になる。会社が今期見込む4.1%より低い。純利益は50億円で、利払いは純現金の利息で1億円ほど増える。利益は10年で1.7倍になるが、そのほとんどは物価と数量の合計であり、稼ぐ力そのものは大きく変わらない。
- 産業機器システム:数量 441(国内のFA・設備向け機器の流通市場(実質・億円)× 取扱シェア)× 価格 1.34(取扱品の値段の指数(2026/03 を1.00、物価込みの名目))→ 売上 668 億円・営業利益 33 億円。市場1.20倍×取り分1.05倍、営業利益率5.0%
- 半導体・デバイス:数量 3.0(世界の半導体市場(億ドル、実質)× 取扱シェア)× 価格 1.34(取扱品の値段の指数(2026/03 を1.00、物価込みの名目))→ 売上 610 億円・営業利益 17 億円。市場1.30倍×取り分0.92倍、営業利益率2.8%
- 社会・情報通信:数量 311(国内の医療・ビル設備・通信端末の更新市場(実質・億円、推定)× 取扱シェア)× 価格 1.34(取扱品の値段の指数(2026/03 を1.00、物価込みの名目))→ 売上 463 億円・営業利益 19 億円。市場1.02倍×取り分1.05倍、営業利益率4.0%
倍率:事業の純利益 50 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 625 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の設備更新は底堅いが、系列メーカーの値決めと特約店の絞り込みで商社の取り分は増えない。強気と慎重の言い分がほぼ拮抗するので、最も厚く置いた。
やや悲観 24% 系列の絞り込みで取り分が削られ、設備投資も鈍る 利益 36 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,920 円308 億円
国内の製造業が海外へ設備を移し、FA機器の国内需要は伸びない。三菱電機が特約店の数を減らし、大口の顧客は直販へ移る。たけびしは取り分を5%落とす。
半導体・デバイスは、国内の汎用品の取扱いを減らし、取り分が15%縮む。インド事業は伸びるが、全体を支えるほど大きくはない。AI向けの好況は短く、在庫調整の山と谷だけが残る。
社会・情報通信は、医療機器の更新が一巡し、通信端末の競争も強い。
営業利益は50億円ほどで、今期の見込みを少し上回る程度にとどまる。人件費と物流費は物価で増えるため、利益率は3%台前半に下がる。配当は維持するが、増配はできない。
- 産業機器システム:数量 366(国内のFA・設備向け機器の流通市場(実質・億円)× 取扱シェア)× 価格 1.34(取扱品の値段の指数(2026/03 を1.00、物価込みの名目))→ 売上 554 億円・営業利益 24 億円。市場1.10倍×取り分0.95倍、営業利益率4.3%
- 半導体・デバイス:数量 2.5(世界の半導体市場(億ドル、実質)× 取扱シェア)× 価格 1.34(取扱品の値段の指数(2026/03 を1.00、物価込みの名目))→ 売上 511 億円・営業利益 12 億円。市場1.18倍×取り分0.85倍、営業利益率2.3%
- 社会・情報通信:数量 281(国内の医療・ビル設備・通信端末の更新市場(実質・億円、推定)× 取扱シェア)× 価格 1.34(取扱品の値段の指数(2026/03 を1.00、物価込みの名目))→ 売上 419 億円・営業利益 15 億円。市場0.97倍×取り分1.00倍、営業利益率3.6%
倍率:事業の純利益36億円・ROE 約5.7% は k 8% より低く、上限は 1÷k=12.1倍。取り分が削られ資本効率も落ちる筋書きのため、上限の約7割の8.5倍に置いた。
確率:三菱電機の特約店絞り込みや直販の拡大で取り分が一部削られ、国内の設備投資も伸びない。同領域の他社と同じ厚さの確率を置いた。
悲観 13% 商権を失い、稼ぐ力が細る 利益 14 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 698 円112 億円
三菱電機が全国の販売会社を直販と数社の特約店に集約する。地域の販売会社を特約店へ譲る動きの逆が起き、たけびしは京都・関西の商流の一部を失う。
産業機器システムは取り分を3割落とし、値段も物価に届かない。半導体・デバイスは、取扱い品の約半分を失う。社会・情報通信は医療と空調を残すが、規模は小さくなる。
営業利益は20億円ほどで、今期の半分になる。人件費は物価で増えるため、売上が減っても固定費は落ちにくい。純利益は14億円で、稼ぐ力は170億円ほどにとどまる。
純現金は残るが、仕入れと売掛金の運転資金に使われる分が多く、余りは小さい。配当は減らされ、株主の取り分も細る。
- 産業機器システム:数量 245(国内のFA・設備向け機器の流通市場(実質・億円)× 取扱シェア)× 価格 1.25(取扱品の値段の指数(2026/03 を1.00、物価込みの名目))→ 売上 346 億円・営業利益 7 億円。市場1.00倍×取り分0.70倍、値段は物価に届かず1.25倍、営業利益率2.0%
- 半導体・デバイス:数量 1.5(世界の半導体市場(億ドル、実質)× 取扱シェア)× 価格 1.25(取扱品の値段の指数(2026/03 を1.00、物価込みの名目))→ 売上 288 億円・営業利益 4 億円。市場1.10倍×取り分0.55倍、営業利益率1.3%
- 社会・情報通信:数量 240(国内の医療・ビル設備・通信端末の更新市場(実質・億円、推定)× 取扱シェア)× 価格 1.25(取扱品の値段の指数(2026/03 を1.00、物価込みの名目))→ 売上 334 億円・営業利益 9 億円。市場0.92倍×取り分0.90倍、営業利益率2.8%
倍率:事業の純利益14億円・ROE 約2.6% は k 8% よりかなり低く、売上も縮んでいる。上限 1÷k=12.1倍の約7割を下回る8.0倍に置いた。稼ぐ力(純利益÷k)は約170億円で、それより低い。純現金は運転資金の緩衝に使われるため、床には足していない。
確率:三菱電機が系列の販売網を再編して直販へ寄せ、たけびしの商権が他の特約店へ移る。事業の構造が崩れる筋書きとして、同領域の他社と同程度に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
産業機器システム
三菱電機のFA機器、半導体・蓄電池向けの装置、AI向けのレーザー加工機、産業用PCを、機械メーカーと工場に売る。売上の約36%。
| 数量国内のFA・設備向け機器の流通市場(実質・億円)× 取扱シェア | 価格取扱品の値段の指数(2026/03 を1.00、物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 350 | 1.00 | 396 | 19 |
| 10 年後 中立 | 441 | 1.34 | 668 | 33 |
取り方:売上396億円・営業利益19.2億円は、2027/03 期の会社計画の前期比(+7.5%・+8.3%)から逆算した。開示は金額のみで数量は無い。国内のFA制御機器と設備向け機器の流通市場を約1.5兆円(同領域の物差し)と推定し、取扱シェアを約2.3%(機器の取扱額350億円)とし、据え付け・保守・システム設計の上乗せを1.13倍とした。10年は「市場の伸び × シェアの変化」で置く。
半導体・デバイス
パワコン・蓄電池向けの半導体、車載・データセンター向けの電子部品、実装機を売る。インド事業を含む。売上の約35%。
| 数量世界の半導体市場(億ドル、実質)× 取扱シェア | 価格取扱品の値段の指数(2026/03 を1.00、物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.5 | 1.00 | 380 | 9 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 1.34 | 610 | 17 |
取り方:売上380億円・営業利益8.5億円は、2027/03 期計画の前期比(+2.0%・+29.4%)から逆算した。取扱額を150円で割ると2.5億ドル。世界の半導体市場を約8,000億ドルとすると、取扱シェアは約0.03%。取扱品には実装機など半導体以外も含むため、シェアは参考の比率にすぎない。
社会・情報通信
放射線がん治療装置などの医療、空調・LED照明の更新、携帯端末、上下水道のDX、アスベスト分析。売上の約29%。
| 数量国内の医療・ビル設備・通信端末の更新市場(実質・億円、推定)× 取扱シェア | 価格取扱品の値段の指数(2026/03 を1.00、物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 290 | 1.00 | 322 | 13 |
| 10 年後 中立 | 311 | 1.34 | 463 | 19 |
取り方:売上322億円・営業利益13.1億円は、2027/03 期計画の前期比(−1.8%・−14.0%)から逆算した。開示は金額のみ。対象の更新市場を約4兆円(医療機器・空調・照明・通信端末の流通を合わせた推定)、取扱シェアを約0.7%(機器の取扱額290億円)とし、保守・工事の上乗せを1.11倍とした。市場の規模は粗い推定である。
リスクと懸念
三菱電機が販売網を組み替える
商品と値段を決めるのは三菱電機である。特約店の絞り込みや直販の拡大が進めば、たけびしの取り分は削られる。福井の取得は取る側の動きだが、逆の再編が起これば商権を失う。この構造は10年を通して残る。
設備投資と在庫の山谷
FA機器と半導体は、顧客の在庫調整で数量が急に落ちる。2024年から2025年は、在庫調整で利益が伸び悩んだ。今期の好調を10年に延ばすと、山の利益を過大に見る。AI向けの設備投資が止まれば、反動は大きい。
中期経営計画に届かない
売上1,300億円、経常利益60億円、ROE9%の目標は届かない見込みだ。M&Aが必要と認めながら、大きな案件は無い。成長の道筋を、次の計画で示せるかが問われる。示せなければ、ROEは7%弱のまま動かない。
半導体の取り分が小さい
世界の半導体市場は伸びるが、AI向けの利益は大手商社が取る。たけびしの取扱いは国内の産業機器と車載に偏り、利益率は2%台と薄い。汎用品の取扱いを失えば、数量が減る。インド事業は伸びるが、全体を支える規模ではない。
人件費と販管費の増加
商社の費用の大半は人件費である。賃金は物価で上がり、基幹システムの刷新や創立100周年の行事も費用を増やす。売上の伸びで吸収できなければ、利益率が下がる。会社は2025年3月期にも、販管費の増加で営業利益を減らした。
運転資金が現金に見える
純現金は74億円だが、売掛金と在庫を抱える商社では、運転資金の波で数十億円動く。2023年3月期の純現金は13億円だった。現金の厚みを全部株主のものと見ると、安全域を過大に見る。
今後の分かれ目
- 三菱電機が、他の地域販売会社も、たけびしに譲る
- 取る側に回れると見て、取り分の上振れ筋書きの確率を上げる。取得で積み上がる顧客に、装置と保守を重ねて売れるかが次の見どころになる。
- 三菱電機が、たけびしの地盤で直販か他の特約店を増やす
- 商権を失う筋書きを重く見て、やや悲観と悲観の確率を上げる。大口の顧客が直販へ移るかを、売上の動きで確かめる。
- 半導体・デバイスの営業利益率が3%を超えて定着する
- のれんの償却が終わった効果に加え、体質が変わったと見て、中立の利益率を上げる。2%台なら今の置き方を保つ。
- 次の中期経営計画で、数十億円以上の取得か、明確な還元の目標が出る
- 資本の使い方が変わると見て、中立の見方を見直す。ROEの目標が資本コストを超えるかが分かれ目になる。
- AI・半導体向けの設備投資が減速し、FA機器の在庫調整が再び起こる
- 今期の利益を山と見て、中立の利益率を据え置き、やや悲観を重く見る。第1四半期の勢いは、2年続くかで確かめる。
見ておくもの
- 三菱電機の特約店・地域販売会社の再編の動き
- FA機器とデバイスの四半期の売上と利益率
- 次の中期経営計画の目標とM&Aの規模
- 配当性向と累進配当の維持
- 純現金と運転資金の推移
- 福井たけびしの売上と、取得後の統合の進み具合
倍率と資本コストの決め方
倍率は、式(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g))から決めた。k は基本7.5%に quality +0.75% を足した8.25%、g は4%、RONIC はROEとkの差の半分を残して置いた。今のPERやPBR、同業の倍率は見ていない。利益は3つの事業の取扱額の伸びと値段(物価込みで1.34倍)の積み上げから出した。純現金74億円は運転資金の緩衝とみて、別立てにしていない。悲観の床は、過去のPBRの底ではなく、稼ぐ力(純利益÷k)と今の自己資本から置いた。新リース会計基準(2028/03期から)で数字の形が変わるが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。同領域の他社と置き方をそろえ、kは立花エレテック・カナデン・RYODENより低くした(医療・空調の更新が三分の一あり循環が小さいため)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.3→14.12 倍・やや楽観 PER 11.3→12.92 倍・中立 PER 11→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +0.75% を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 8.00%。