結論
太平洋興発は、釧路の太平洋炭礦を源流とする小さな複合企業だ。輸入炭を中心とする燃料の商社、賃貸ビル、老人ホームや清掃などのサービス、地元の建設、炭カル肥料を営む。筆者の結論は割高である。持っている資産は厚いが、株主のものになる利益が細く、その利益も借金の利払いに削られていくからだ。
稼ぎの柱は不動産で、賃貸の営業利益がセグメントの利益のほぼ半分を占める。売上の 3 分の 2 を占める商事は利益率が 2% に届かない。本社の費用がセグメントの利益の半分を食い、ROE は 10 年近く 2〜4% にとどまる。
10 年先を考えると、国内の石炭火力の縮小が商事の量を削り、釧路の人口減が賃料を抑える。純負債は 120 億円台で、借り換えのたびに利払いが増える。賃貸ビルの含み益は 70 億円台あるが、賃料の稼ぎはすでに利益に入っており、清算されない限り株主の手には渡らない。資本コストを超える稼ぎが見込めない以上、今の時価総額は安全域を欠く。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「資産は安く見えるが、事業としては持ちたくない」部類に入る。帳簿の自己資本は時価総額の 2.5 倍以上あり、賃貸ビルの含み益も厚い。数字だけ見れば安い。
しかしオーナーとして受け取れるのは、毎年の利益と配当だけだ。純利益は 3〜7 億円で、そのほとんどが配当に回り、事業を広げる余力は無い。資本 160 億円を寝かせて年 2〜3% しか稼がない事業は、時間が経つほど持ち主の値打ちを目減りさせる。
借金の利払いが増える時代には、この弱さがさらに表に出る。資産を売って借金を返し、株主に戻す決断があれば話は変わる。だが過去 10 年、経営はその方向に動いていない。安全域は資産の側には見えるが、株主が受け取れる値打ちの側には見えない。
筆者は、安く見える資産株ほど「誰がその値打ちを株主に渡すのか」を先に問うべきだと考える。この会社には、その答えがまだ無い。
何で稼ぐ会社か
事業は 5 つに分かれる。売上の柱は商事で、オーストラリアなどから輸入した一般炭を製紙会社のボイラーや発電所に売る。木質ペレットなどのバイオマス燃料、石油、建材も扱い、釧路コールマインが掘る国内炭の販売も受託する。主な販売先は釧路コールマインと王子グループで、両社で売上の 3 割近い。ただ商社の仕事は右から左に流す部分が大きく、利益率は 1.6% にとどまる。
利益の柱は不動産だ。釧路・札幌・首都圏にビルとマンションを持ち、賃貸と管理で稼ぐ。分譲マンションや宅地の販売も手がける。賃貸等不動産の時価は約 246 億円で、帳簿より 77 億円ほど高い。営業利益率は 27% と、5 つの中で抜けて高い。
サービスは有料老人ホームを中心に、計算の受託、給食、清掃、造園、車検、タクシー、産業廃棄物処理まで並ぶ。炭鉱の町で働く人の暮らしを支えた仕事が、そのまま事業として残った形だ。建設工事は地元の土木と機械の修理、肥料は北海道の農地に撒く炭カルを作る。肥料は原料と燃料の値上がりで 2 期続けて赤字だ。
優良さと弱いところ
優良さの面では見るべき堀が乏しい。商事は輸入炭の値段を市場に決められ、扱う量も顧客の設備の方針しだいだ。王子グループ向けの販売が 1 年で半分以下に減ったことが、取引の弱さをよく示している。
不動産は唯一の安定した稼ぎ手で、賃料は景気が悪くても大きくは崩れない。ただ物件の多くは釧路にあり、人口が年 1% 以上減る町で賃料を物価並みに上げ続けるのは難しい。建物の償却は取得した時の値段のまま増えないため、会計の利益は物価で少し膨らんで見える。一方で、古いビルの建て替えには今の高い建築費がかかる。
資本の効率は低い。自己資本 160 億円に対して純利益は 3〜7 億円で、ROE は資本コストに遠く届かない。純負債は自己資本の 8 割近くあり、営業利益は利払いの 2 倍しかない。財務は守りにも攻めにも余裕が無い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
本業のうち最も大きな商事は、国内の石炭需要という縮む市場の中にいる。政府は効率の悪い石炭火力を 2030 年度に向けて減らす方針で、製紙会社のボイラーも木質燃料やガスへの切り替えが進む。輸入一般炭の値段は世界の需給で大きく振れ、2022 年の高騰と翌年の急落のように、商社の利益も在庫の評価で揺さぶられる。
バイオマス燃料は伸びる分野だが、木質ペレットは大手商社や専門の輸入会社との競争が激しく、利ざやは薄い。釧路コールマインの国内炭は、国の技術移転の事業と地元の火力に支えられており、10 年先の量は政策しだいだ。
不動産は地域で明暗が分かれる。首都圏と札幌の賃料は物価並みに上がりうるが、釧路は人口減と空き家の増加で上げにくい。建設と肥料は北海道東部の公共工事と農家の数に縛られ、どちらも量は細る。物価の上昇は人件費と資材にも効くので、値上げが通らなければ利益率はむしろ下がる。
地方の複合企業は再編の対象になりやすい。ただこの会社は大株主の持ち分が 5% 前後に散らばり、支配株主がいない。資産の値打ちに目を付けた買い手が現れる可能性は残るが、それを値打ちの前提には置けない。
資本政策と M&A
配当は純利益の 60% 以上を目安とし、2026/03 期は総額 3 億円強を払った。利益のほとんどを配当に回す形だ。自社株買いの実績は乏しく、内部に残した利益は設備の更新に充てる方針である。
政策保有株は上場 9 銘柄で約 14 億円。オーストラリアの炭鉱会社ニューホープ、三井不動産、北洋銀行などを持つ。配当は利益に入っているので、別には足さない。
見落とせないのは関係会社の太平洋炭礦への債務保証だ。不動産の売却や賃料で借入を返しきれなければ、保証の履行で損失が出る。大株主は 5% 前後の法人と個人が並び、買収で株主に値打ちが戻る道は確かめられない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
資産の厚さを素直に見るべきだ。賃貸等不動産の時価は約 246 億円あり、帳簿を 77 億円上回る。政策保有株も 14 億円ある。純負債を引いても、資産の値打ちは今の時価総額を大きく超える。
稼ぎも底を打ちつつある。会社は 2027/03 期に営業利益 12 億円を見込み、肥料の赤字は値上げで縮む。首都圏と札幌のビルは物価並みに賃料を上げられ、建物の償却は増えないので、賃料の上げはそのまま利益に残る。
バイオマス燃料の需要は、石炭の減りを一部埋める。支配株主のいない資産株は、物言う株主や事業会社の買収の的にもなりやすい。賃貸ビルを売って借金を返し、配当を厚くする道が開ければ、評価は一気に変わる。
配当の方針も悪くない。純利益の 6 割以上を払うと決めており、利益が伸びれば配当もそのまま増える。物価の上昇は、帳簿の古い土地と建物の値打ちを名目で押し上げる。10 年持てば、資産の厚さが株主の味方になる場面は必ず来る。
慎重な見方
資産がいくら厚くても、株主が受け取れなければ値打ちは無い。経営は資産を売って還元する方針を一度も示しておらず、ROE は 10 年近く 2〜4% のままだ。
利益の質も悪い。商事は値段も量も顧客と市場に握られ、王子向けの販売は 1 年で半分以下になった。国の石炭火力の縮小が進めば、売上の 3 分の 2 を占める事業が細っていく。
何より借金が重い。純負債 120 億円台は営業利益の 14 倍で、借り換えのたびに利払いが増える。営業利益が 2 割落ちるだけで純利益は消える。釧路の人口は減り続け、賃料の上げも難しい。太平洋炭礦の債務保証という見えにくい負担も抱える。
本社の費用も重い。セグメントの利益の半分を本社が食う形は 10 年以上変わっておらず、物価とともにこの費用も膨らむ。人手に頼るサービスは賃上げに追われる。資産株の値打ちが実を結ぶのを待つ間に、細い利益と借金が持ち主の値打ちを少しずつ削っていく。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。資産の値打ちは本物だが、それを株主に渡す仕組みも実績も無い。稼ぐ力は資本コストに遠く及ばず、利払いの増加がその細い利益をさらに削る。確率は中立とやや悲観に厚く置き、悲観側を合わせて 35% とした。資産の売却と還元が始まれば、楽観側に寄せ直す。強気の見方が挙げる買収の可能性は、支配株主がいない点で否定はできないが、条件が見えるまでは確率に入れない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 586 円46 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 307 円24 億円)。 今の値に割り戻すと 447 円35 億円、今との差 −42.0%、 期待の年率 +1.5%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,411 円110 億円 | 643 円50 億円 | +166.8% | +10.3% | 164 円13 億円 |
| やや楽観 | 20% | 873 円68 億円 | 460 円36 億円 | +73.1% | +5.6% | 267 円21 億円 |
| 中立 | 37% | 542 円42 億円 | 348 円27 億円 | +15.7% | +1.5% | 330 円26 億円 |
| やや悲観 | 23% | 326 円25 億円 | 129 円10 億円 | −41.0% | −5.1% | 105 円8 億円 |
| 悲観 | 12% | 186 円15 億円 | 39 円3 億円 | −70.8% | −11.6% | 27 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 586 円46 億円 | 307 円24 億円 | +15.9% | +1.5% | 892 円69 億円 |
今の株価時価総額 770 円60 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 釧路の資産を入れ替え、借金が軽くなる 利益 10 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,411 円110 億円
首都圏と札幌の賃貸ビルが物価並みに賃料を上げ、釧路の古い物件は売って借金を返す。浮いた利払いがそのまま利益に残る。
商事は石炭の減りをバイオマス燃料が埋め、量はほぼ保つ。王子グループ向けの燃料の取引も戻る。肥料は値上げが通って黒字に戻り、サービスも老人ホームの稼働が上がる。
営業利益は 20 億円近くまで伸びるが、ROE はなお 5% 台にとどまる。資本コストを超えない以上、この会社の値打ちは利益の倍率で上限が決まる。配当は純利益の 7 割強を続け、10 年で 50 億円ほどを株主に戻す。
資産の値打ちに目を付けた事業会社が買収に動く可能性も、この筋書きでは残る。ただ値打ちの前提には入れていない。
- 不動産:数量 258(賃貸等不動産の時価(億円・今の値段で固定した量))× 価格 0.18(時価 1 億円あたりの年間売上(億円。賃料と分譲を含む利回り))→ 売上 47 億円・営業利益 14 億円。時価 1.05 倍の量 × 賃料 1.40 倍、利益率 30%
- 商事(輸入炭・燃料・建材):数量 108(燃料・建材の取扱量(万トン換算・推定))× 価格 3.50(1 万トンあたりの販売額(億円。1 トン約 2.5 万円))→ 売上 378 億円・営業利益 7 億円。量 0.95 倍(バイオマス燃料が石炭の減りを埋める)× 1.40 倍、1.8%
- サービス:数量 600(サービスに従事する人数(人・推定))× 価格 0.13(1 人あたりの年間売上(億円))→ 売上 80 億円・営業利益 7 億円。人数 1.0 倍 × 1.40 倍、8.5%
- 建設工事:数量 120(年間の工事件数(件・推定))× 価格 0.36(1 件あたりの完成工事高(億円))→ 売上 43 億円・営業利益 2 億円。件数 1.0 倍 × 1.40 倍、4%
- 肥料:数量 8.2(販売量(万トン・推定))× 価格 4.19(1 万トンあたりの販売額(億円。1 トン約 3 万円))→ 売上 34 億円・営業利益 1 億円。量 1.0 倍 × 1.40 倍、値上げが通り 4%
倍率:事業の ROE 5.6% が k 9% を下回るので、ためた利益は額面ほどの値打ちが無い。PER の上限は 1÷k の 11.11 倍で、借金が減り賃料が安定するこの筋書きは上限いっぱいの 11.11 倍とした。
確率:賃貸の資産の入れ替えと肥料の立て直しが同時に進み、借金も減る筋書き。過去 12 年で営業利益率が 3% を超えた年は無く、ここまでの改善は起こりにくいので 8% にとどめた。
やや楽観 20% 賃料が物価に追いつき、利払いを吸収 利益 6 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 873 円68 億円
賃貸ビルの賃料は物価並みに上がり、不動産は 12 億円台の営業利益を稼ぐ。建物の償却は取得した時の値段のまま増えないので、賃料の上げ分は利益に残りやすい。
商事は石炭火力の縮小で量が 15% ほど減るが、バイオマス燃料と建材で値段を保つ。サービスと建設は人手不足で量が少し細るものの、単価を上げてしのぐ。
借り換えで利払いは年に 2 億円ほど増えるが、営業利益の伸びで吸収できる。ROE は 3% 台で、資本の効率は低いままだ。
肥料は値上げが通って小さな黒字に戻る。配当は方針どおり利益の 7 割強を払い、10 年で 36 億円ほどを株主に戻す。それでも、資本 170 億円を抱えて年 6 億円を稼ぐ事業という姿は変わらない。
- 不動産:数量 246(賃貸等不動産の時価(億円・今の値段で固定した量))× 価格 0.17(時価 1 億円あたりの年間売上(億円。賃料と分譲を含む利回り))→ 売上 43 億円・営業利益 12 億円。量 1.0 倍 × 1.34 倍、29%
- 商事(輸入炭・燃料・建材):数量 96.6(燃料・建材の取扱量(万トン換算・推定))× 価格 3.42(1 万トンあたりの販売額(億円。1 トン約 2.5 万円))→ 売上 331 億円・営業利益 6 億円。量 0.85 倍 × 1.37 倍、1.7%
- サービス:数量 582(サービスに従事する人数(人・推定))× 価格 0.13(1 人あたりの年間売上(億円))→ 売上 76 億円・営業利益 6 億円。0.97 倍 × 1.37 倍、8%
- 建設工事:数量 108(年間の工事件数(件・推定))× 価格 0.35(1 件あたりの完成工事高(億円))→ 売上 38 億円・営業利益 1 億円。0.90 倍 × 1.37 倍、3.5%
- 肥料:数量 7.8(販売量(万トン・推定))× 価格 4.10(1 万トンあたりの販売額(億円。1 トン約 3 万円))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。0.95 倍 × 1.37 倍、3%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.5% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 68 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の 2027/03 期の予想(営業利益 12 億円)が続き、賃料が物価並みに上がる筋書き。予想どおりに進む年もある実績から 20% とした。
中立 37% 低い稼ぎのまま、利払いが重くなる 利益 4 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 542 円42 億円
事業の形はほとんど変わらない。不動産が利益の柱で、商事・サービス・建設が薄い利益を足し、本社の費用がその半分を食う。
釧路の賃料は物価ほど上がらず、不動産の売上は 10 年で 1.3 倍にとどまる。石炭火力の縮小で商事の量は 2 割減るが、値段の上げで売上はほぼ横ばいを保つ。
重いのは借金だ。純負債 120 億円台の借り換えが進み、利払いは今より年 3 億円ほど増える。営業利益が 12 億円に伸びても、純利益は 4 億円弱にとどまり、ROE は 2% 台のままだ。配当は方針どおり利益の 6〜8 割を払い続ける。PBR は 0.2 倍を割るが、資本コストに遠く届かない利益しか生まない資本は、帳簿の額ほどの値打ちを持たない。
- 不動産:数量 246(賃貸等不動産の時価(億円・今の値段で固定した量))× 価格 0.17(時価 1 億円あたりの年間売上(億円。賃料と分譲を含む利回り))→ 売上 41 億円・営業利益 12 億円。量 1.0 倍 × 賃料 1.30 倍(釧路は物価に届かない)、28%
- 商事(輸入炭・燃料・建材):数量 91.0(燃料・建材の取扱量(万トン換算・推定))× 価格 3.35(1 万トンあたりの販売額(億円。1 トン約 2.5 万円))→ 売上 305 億円・営業利益 5 億円。量 0.80 倍(石炭火力の縮小)× 1.34 倍、1.6%
- サービス:数量 570(サービスに従事する人数(人・推定))× 価格 0.13(1 人あたりの年間売上(億円))→ 売上 72 億円・営業利益 5 億円。人手不足で 0.95 倍 × 1.34 倍、7.5%
- 建設工事:数量 102(年間の工事件数(件・推定))× 価格 0.34(1 件あたりの完成工事高(億円))→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。地元の工事が細り 0.85 倍 × 1.34 倍、3%
- 肥料:数量 7.4(販売量(万トン・推定))× 価格 4.01(1 万トンあたりの販売額(億円。1 トン約 3 万円))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。0.90 倍 × 1.34 倍、値上げで 2%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.2% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 42 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 12 年の営業利益率は 2〜3% で動いておらず、その延長に借り換えの利払いの増加を重ねた筋書きが最もありうる。中立に 37% を置いた。
やや悲観 23% 石炭が細り、利払いで赤字に沈む 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 326 円25 億円
石炭火力の休止が前倒しで進み、商事の量は 3 分の 2 に減る。釧路の人口減で不動産は空室が増え、賃料もほとんど上がらない。
営業利益は 5 億円を割り、借り換えで膨らんだ利払いを払うと純利益は赤字になる。配当は大きく減り、10 年で 10 億円ほどしか戻らない。
賃貸ビルを売れば借金は返せるが、清算されない限り少数株主はその値打ちを受け取れない。株価は稼ぐ力ではなく、資産の値打ちのごく一部でしか支えられない。
肥料は原料高を価格に移せず赤字が続き、サービスも人手不足で稼働を落とす。古いビルの建て替えは今の高い建築費で見送られ、物件の競争力も少しずつ落ちていく。
- 不動産:数量 234(賃貸等不動産の時価(億円・今の値段で固定した量))× 価格 0.16(時価 1 億円あたりの年間売上(億円。賃料と分譲を含む利回り))→ 売上 36 億円・営業利益 9 億円。量 0.95 倍 × 1.20 倍、空室で 25%
- 商事(輸入炭・燃料・建材):数量 73.9(燃料・建材の取扱量(万トン換算・推定))× 価格 3.25(1 万トンあたりの販売額(億円。1 トン約 2.5 万円))→ 売上 240 億円・営業利益 3 億円。量 0.65 倍 × 1.30 倍、1.2%
- サービス:数量 540(サービスに従事する人数(人・推定))× 価格 0.12(1 人あたりの年間売上(億円))→ 売上 67 億円・営業利益 4 億円。0.90 倍 × 1.30 倍、6%
- 建設工事:数量 90.0(年間の工事件数(件・推定))× 価格 0.33(1 件あたりの完成工事高(億円))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。0.75 倍 × 1.30 倍、2%
- 肥料:数量 6.6(販売量(万トン・推定))× 価格 3.89(1 万トンあたりの販売額(億円。1 トン約 3 万円))→ 売上 26 億円・営業利益 −1 億円。0.80 倍 × 1.30 倍、−2%
倍率:純利益が赤字なので PER は使えない。稼ぐ力では値が付かず、床の資産(19.5 億円)と中立の値の間で、今の自己資本 161 億円に PBR 0.15 倍を掛けた。EV(時価総額+純負債)÷ 営業利益は約 31 倍と高く、借金を含めた値打ちでは資産の売却が前提の値段になる。
確率:国の石炭火力の縮小が前倒しになり、釧路の地盤沈下も進む筋書き。利払いの増加だけで純利益が消える薄い財務なので、やや悲観を 23% と厚めにした。
悲観 12% 釧路の地盤ごと沈み、保証も重なる 利益 −6 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 186 円15 億円
石炭の取引は半分以下に縮み、釧路コールマイン向けの販売も途絶える。釧路の空室と地価の下げで、不動産の利益は 2 割落ちる。
太平洋炭礦の借入の保証を履行し、土地の減損も重なって自己資本は 30 億円ほど削られる。営業利益は赤字になり、配当はほぼ止まる。
借金は賃貸ビルの売却で返すしかない。資産は残っても、その値打ちの多くは借金の返済に消え、株主に残る分は小さい。
肥料と建設は撤退を迫られ、残るのは釧路と札幌の賃貸ビルと、細った燃料の取引だけになる。銀行は追加の融資に慎重になり、借り換えの金利も上乗せされる。事業の縮小が利払いの重さに追いつかない、炭鉱の町の会社によくある姿だ。
- 不動産:数量 209(賃貸等不動産の時価(億円・今の値段で固定した量))× 価格 0.14(時価 1 億円あたりの年間売上(億円。賃料と分譲を含む利回り))→ 売上 30 億円・営業利益 6 億円。量 0.85 倍 × 1.10 倍、釧路の空室で 20%
- 商事(輸入炭・燃料・建材):数量 51.2(燃料・建材の取扱量(万トン換算・推定))× 価格 3.12(1 万トンあたりの販売額(億円。1 トン約 2.5 万円))→ 売上 160 億円・営業利益 1 億円。量 0.45 倍 × 1.25 倍、0.5%
- サービス:数量 480(サービスに従事する人数(人・推定))× 価格 0.12(1 人あたりの年間売上(億円))→ 売上 57 億円・営業利益 2 億円。0.80 倍 × 1.25 倍、4%
- 建設工事:数量 72.0(年間の工事件数(件・推定))× 価格 0.32(1 件あたりの完成工事高(億円))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。0.60 倍 × 1.25 倍、0%
- 肥料:数量 4.9(販売量(万トン・推定))× 価格 3.74(1 万トンあたりの販売額(億円。1 トン約 3 万円))→ 売上 18 億円・営業利益 −1 億円。0.60 倍 × 1.25 倍、−6%
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。純負債と保証を引いた資産の床(12 億円)を少し上回る水準として、今の自己資本 161 億円に PBR 0.09 倍を掛けた。
確率:石炭の取引がほぼ消え、釧路の不動産も値を下げ、関係会社の太平洋炭礦の債務保証を履行する筋書き。保証の存在が有報のリスクに明記されており 12% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
不動産
釧路・札幌・首都圏のビルとマンションの賃貸・管理、分譲マンションと宅地の販売。
| 数量賃貸等不動産の時価(億円・今の値段で固定した量) | 価格時価 1 億円あたりの年間売上(億円。賃料と分譲を含む利回り) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 246 | 0.13 | 32 | 8 |
| 10 年後 中立 | 246 | 0.17 | 41 | 12 |
取り方:有報の賃貸等不動産の時価 245.8 億円を量とし、不動産の売上 31.8 億円を割って時価 1 億円あたり 0.129 億円とした。分譲の売上も含む推定。
商事(輸入炭・燃料・建材)
輸入炭・バイオマス燃料・石油・建材の仕入れ販売と、国内炭の販売受託・石炭灰の海上輸送。
| 数量燃料・建材の取扱量(万トン換算・推定) | 価格1 万トンあたりの販売額(億円。1 トン約 2.5 万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 114 | 2.50 | 284 | 5 |
| 10 年後 中立 | 91.0 | 3.35 | 305 | 5 |
取り方:取扱量の開示が無いため、輸入一般炭の着値を 1 トン約 2.5 万円とみて商事の売上 284 億円から約 114 万トン相当と推定した。
サービス
有料老人ホーム、事務・計算の受託、給食・清掃・造園、車検整備、タクシー、産業廃棄物処理など。
| 数量サービスに従事する人数(人・推定) | 価格1 人あたりの年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 0.09 | 57 | 4 |
| 10 年後 中立 | 570 | 0.13 | 72 | 5 |
取り方:連結の従業員 668 人と臨時 462 人のうち、人の手で回すサービスに約 600 人が就くと推定し、売上 56.8 億円を割った。
建設工事
土木・建築工事と機械の製造・修理。釧路を中心とする地元の公共・民間工事。
| 数量年間の工事件数(件・推定) | 価格1 件あたりの完成工事高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 0.26 | 31 | 1 |
| 10 年後 中立 | 102 | 0.34 | 35 | 1 |
取り方:件数の開示が無いため、地方の中小工事の平均を 1 件約 2,500 万円とみて売上 30.6 億円から約 120 件と推定した。
肥料
炭酸カルシウム肥料(炭カル)・消石灰・石粉の製造販売。北海道の農地向け。
| 数量販売量(万トン・推定) | 価格1 万トンあたりの販売額(億円。1 トン約 3 万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.2 | 2.99 | 25 | −1 |
| 10 年後 中立 | 7.4 | 4.01 | 30 | 1 |
取り方:炭カル肥料の出荷価格を 1 トン約 3 万円とみて、売上 24.6 億円から約 8.2 万トンと推定した。原料と燃料の値上がりで 2 期続けて赤字。
リスクと懸念
借り換えで膨らむ利払い
有利子負債は約 179 億円で、営業利益は利払いの 2 倍しかない。借り換えのたびに金利が 3.5% 前後に上がれば、利払いは今より年 3 億円ほど増える。今の純利益 3 億円台がほぼ消える大きさだ。
国内の石炭需要の縮小
国は効率の悪い石炭火力を減らす方針で、製紙会社のボイラーも燃料の切り替えが進む。売上の 3 分の 2 を占める商事の量が細れば、薄い利益率の事業がさらに縮む。王子グループ向けの販売はすでに 1 年で半分以下になった。
太平洋炭礦への債務保証
関係会社の太平洋炭礦の借入を保証している。不動産の売却や賃料で返済しきれなければ、保証の履行で損失が出る。債務超過が広がれば引当金を積み増す必要があると、会社自身が有報に書いている。
釧路の人口減と地価
賃貸の物件の多くは釧路にある。人口が年 1% 以上減る町では、空室が増え賃料も上げにくい。地価が下がれば減損の恐れもあり、唯一の安定した稼ぎ手である不動産の利益が削られる。
石炭の値段と在庫の評価損
輸入炭の値段が急に下がると、手元の在庫に評価損が出て営業損失につながる。2022 年の高騰と翌年の急落のような振れが再び起きれば、薄い利益は一年で吹き飛ぶ。
人手の足りないサービス
老人ホーム・清掃・タクシーなど人の手で回す事業は、人手不足と賃上げの圧力を真正面から受ける。提出会社の平均年齢は 60 歳を超え、担い手の確保が年々難しくなる。
今後の分かれ目
- 賃貸ビルを売って借金を返し、還元を厚くする方針が出たら
- 資産の値打ちが株主に渡る道が開く。楽観側の確率を上げ、PER の上限も借金が軽くなった分だけ見直す。
- 肥料の赤字が解消し、営業利益 12 億円の予想が達成されたら
- やや楽観の筋書きに近づく。ただ ROE が資本コストに届かない限り、値打ちの上限は大きく変わらない。
- 石炭火力の休止が前倒しで決まったら
- 商事の量の見通しを下げ、やや悲観の確率を上げる。バイオマス燃料で埋められるかを次の決算で確かめる。
- 太平洋炭礦の保証に引当金を積み増したら
- 悲観の筋書きが近づいた印とみる。自己資本の減り方と、保証の残高を見直す。
- 事業会社や投資ファンドが株を買い集めたら
- 資産の値打ちに目を付けた再編の可能性が高まる。ただし買付けの条件が出るまでは値打ちの前提には入れない。
見ておくもの
- 商事の販売先の構成(王子グループ・釧路コールマイン向け)の変化
- 有利子負債の残高と借入の平均金利
- 賃貸等不動産の時価と空室率
- 太平洋炭礦の債務保証の残高と引当金
- 肥料セグメントの損益
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PBR から置かず、事業の ROE が k 9% を大きく下回ることから PER の上限 1÷k の 10 倍を出し、利益の質で 85〜100% を掛けた。賃貸不動産の含み益は賃料が利益に入っているので価値に足さず、悲観の床だけに使った。PBR が 0.4 倍を割る今の値段は割安の根拠にしていない。結果として中立でも今の時価総額の半分強に届くだけで、割高と出る。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.11 倍・やや楽観 PER 9.5→11.11 倍・中立 PER 8.5→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 2.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 10.00% → 9.00%。