結論
ミツウロコは、LPガスと石油製品を売る燃料商社だ。ただ今の稼ぎ手は電力小売である。筆者の結論は、今の値段はかなり割高だ。計算上の本質価値は、今の時価総額の半分に届かない。
理由は、直近の好調が電力の追い風に乗っているからだ。2026年3月期のセグメント利益は、電力が115億円で全体の8割を超える。燃料の本業は19億円にすぎない。電力の利益は、仕入れ値と容量拠出金で簡単に振れる。2022年3月期は営業利益が8億円まで落ちた。
会社自身も、2027年3月期の営業利益を85億円と、3割減で見ている。純利益は60億円だ。この水準で割れば、今の時価総額は安くない。
LPガスの国内需要は年1.6%ほど縮む。灯油やガソリンはもっと速い。この縮みを、電力と買い集めた小さな事業で埋められるかが勝負になる。筆者は、埋められても資本コストを上回る稼ぎにはなりにくいと見る。
株主への姿勢は悪くない。総還元性向50%以上を掲げ、2026年3月期は自社株買いも約40億円実施した。それでも、稼ぎの水準が値段を支えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべき点は三つある。持ち続けたい事業か、資本を上手に使うか、払う値段に安全域があるかだ。
事業は、持ち続けたいと言い切れない。燃料は縮み、電力は上下が激しい。10年後も会社は残るが、今より強くなっている根拠が乏しい。
資本の使い方は、前向きに見える部分もある。株主への還元は厚く、自社株買いもしている。ただ、500億円の投資枠で小さな事業を集める姿勢は、利益に結びつくか見えない。
安全域は、薄い。2026年3月期の利益は、電力の追い風で膨らんだ。会社は翌期の純利益を60億円と見る。この水準で見れば、今のPERは20倍を超える。
確かに財務は堅い。純現金があり、倒産の心配は小さい。だが堅さは、安く買える理由にならない。
オーナー利益、つまり設備の更新を引いたあとに株主が自由にできる稼ぎは、見かけの利益より小さい。配送網や発電所の維持に、毎年の投資が要るからだ。筆者は、この値段では見送る。
何で稼ぐ会社か
ミツウロコは東京・京橋に本社を置く持株会社だ。創業は1886年の運送店で、練炭から石油、LPガスへと主力を替えてきた。事業は六つに分かれるが、稼ぎは二つに偏る。
一つ目はエネルギー事業で、売上は1,438億円。LPガスと灯油・ガソリンの卸売と小売、給湯器などの住宅設備、ガソリンスタンドを持つ。関東が最大の地盤だ。利益は19億円にとどまる。人件費と配送費が重く、利益率は1%台だ。
二つ目が電力事業で、売上は1,686億円、利益は115億円だ。風力発電の電気を電力会社に売る卸売と、法人・家庭向けの小売が柱になる。山口県の岩国には木質チップを燃やす発電所もある。2026年3月に、INPEXと組んで電力小売の新会社も立ち上げた。
残りは小粒だ。フーズ事業は飲料水の製造や売店、カフェを営み、売上は200億円。リビング&ウェルネスは、ビルの賃貸、横浜の温浴施設、ボウリング場を持つ。海外はシンガポールと香港のレンタル収納で、利益率が高い。
燃料は縮む本業で、電力は伸びているが値動きの荒い事業だ。この二つの重さの違いが、会社の値打ちを決める。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、燃料では小さい。LPガスは、ボンベと配管を家に残す契約が粘る。だが全国に販売店が多く、ミツウロコは首位ではない。値段の主導権は、輸入を担う元売り側にある。
電力はさらに堀が薄い。小売は、仕入れ値が上がれば利益が消える商売だ。2022年3月期は、仕入れ価格の高騰で営業利益が8億円まで落ちた。足元の好調は、容量拠出金の負担が減ったことと販売量の増加による。構造的な強さと見るのは早い。
風力にはFITという固定価格の買取制度がある。神栖の発電所は2025年2月から市場連動のFIPに移った。契約は2028年2月までだ。制度の追い風は、年とともに細る。
強みは財務の厚さだ。純現金が約94億円あり、自己資本比率は51%に達する。営業利益で利息の31倍を払える。倒れる心配は小さい。
弱みは稼ぐ力だ。自己資本に対する稼ぎは、過去10年の中央値で4%台と低い。直近でようやく8%台になった。資本を寝かせたまま利益を増やせない会社と、筆者は見ている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
燃料の市場は縮んでいる。国内のLPガス需要は年1.6%ずつ減り、約1,200万トンを割った。人口の減少、オール電化、機器の省エネが重なる。家庭用が弱く、工業用だけがわずかに増える。灯油とガソリンは、もっと速く縮む。
競合は岩谷産業、伊藤忠エネクス、ENEOSグローブなどだ。LPガスは小さな販売店が多く、大手が買って集める流れが続く。ミツウロコも買う側にいるが、規模では岩谷に及ばない。
電力小売は、全面自由化から10年が過ぎた。新電力の数は減り、残ったのは調達力のある会社だ。市場価格が上がる年は、仕入れ値が先に上がって利益が消える。下がる年は、利益が戻る。この上下は10年続くと見る。
INPEXとの合弁は、天然ガスを買っている企業向けに電気を売る形だ。顧客を持つ会社の力を借りる分、営業費用は軽い。ただ、この合弁の持ち分は49%で、利益は連結に半分ほどしか入らない。
もう一つ、系統用の蓄電池も動き始めた。電気を安い時に貯めて高い時に売る事業だ。ミツウロコは運用を請け負う形で参入している。今は小さく、10年の利益に大きくは効かない。
資本政策と M&A
還元は、同じ領域の中では厚い。総還元性向50%以上と累進配当を方針に掲げる。2026年3月期は約40億円の自社株買いをし、総還元性向は83%に上った。2027年3月期の配当は、前期と同じ水準の予定で、利益が落ちても減らさない姿勢だ。
一方で、投資の枠も大きい。2023年度から500億円を設け、3年で257億円を使った。使い道は、タイのLPガス会社への出資、シンガポールの収納事業、女性専用サウナ、アクセサリーブランドの買収など、事業が広がっている。
筆者が気になるのは、この広がりだ。フーズやリビング&ウェルネスは、売上が小さく利益も薄い。稼ぐ力が資本コストを超えるかは、まだ確かめられない。
政策保有株は約150億円、22銘柄ある。2025年3月期に約50億円の売却益を出した。縮減は続けているが、まだ重い。
株主構成では、明治安田生命が9%、創業家の資産管理会社の田島が8%を持つ。創業家の関与が続く会社なので、TOBの形での買収は想定しにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電力が、本業の柱に育った。風力、バイオマス、太陽光を電源に持ち、販売量は伸びている。INPEXの顧客網を使える合弁も加わった。調達力のある会社だけが残る市場で、ミツウロコは居場所を確保した。
燃料は縮んでも、集約が進む。小さな販売店を買い、配送区域を重ねれば、1件あたりの費用は下がる。LPガスの販売量は前期より1%増えた。数量の減りは買収で埋められる。
財務は強い。純現金があり、利息の31倍の営業利益を稼ぐ。この体力で、サウナ、収納など新しい事業を育てる余裕がある。投資枠500億円のうち、まだ半分近くが残る。
還元も強気だ。自社株買いを続け、累進配当を守る。利益が戻れば、還元はさらに厚くなる。
電力の利益が今の水準を保ち、物価並みに伸びれば、10年後の営業利益は190億円に届く。その時は自己資本に対する稼ぎが9%を超え、今の時価総額を上回る値打ちがつく。
財務の厚さも、強気を支える。倒れる心配が小さいから、市場が荒れた年にも小さな販売店や発電設備を安く買える。堅い会社が、他社の苦しい時に買い手に回る形だ。
慎重な見方
利益の8割が電力という会社を、安定した燃料商社と見るのは危うい。電力小売は、市場価格が跳ねれば利益が消える。2022年3月期は営業利益が8億円まで落ちた。この上下は、またいつか来る。
会社の予想がそれを物語る。2027年3月期の営業利益は85億円と、3割減だ。容量拠出金の負担が減った効果は、一巡する。
燃料は縮む一方だ。LPガスは毎年1〜2%減り、灯油は、もっと速い。人件費は物価で上がるので、利益率は1%台のまま伸びない。
資本の使い方も不安だ。500億円の投資枠で、飲料、売店、サウナ、アクセサリーと手を広げている。どれも稼ぎは小さく、本業の縮みを埋める力はない。
過去10年の自己資本利益率は、中央値で4%台だ。直近の8%台は、追い風の結果にすぎない。長い目では、資本コストを下回る稼ぎが続く。今のPBR1.3倍は、その実力に釣り合わない。
創業家と生命保険会社が安定株主にいることも、経営の緊張感を弱める。資本を寝かせても、すぐには責められない。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分の中身は「電力が稼ぎ続ける」で、慎重な言い分の中身は「電力は元の水準に戻る」だ。筆者は後者がやや強いと見る。
電力の利益は、会社の予想がすでに下がると示している。調達力の強化や合弁は、利益の上下をなくすものではない。
このため10年の確率は、楽観を6%と薄くし、やや悲観と悲観を合わせて37%に厚くした。中立は、電力が会社予想の水準を物価並みに伸ばす形で、4割とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,313 円1,275 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 788 円434 億円)。 今の値に割り戻すと 1,547 円853 億円、今との差 −37.9%、 期待の年率 +2.2%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,977 円2,193 億円 | 1,269 円700 億円 | +110.7% | +7.7% | 315 円174 億円 |
| やや楽観 | 17% | 3,200 円1,765 億円 | 1,088 円600 億円 | +72.2% | +5.6% | 729 円402 億円 |
| 中立 | 40% | 2,667 円1,471 億円 | 852 円470 億円 | +41.3% | +3.5% | 1,408 円776 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,621 円894 億円 | 598 円330 億円 | −10.9% | −1.1% | 577 円318 億円 |
| 悲観 | 11% | 382 円210 億円 | 272 円150 億円 | −73.8% | −12.5% | 72 円40 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,313 円1,275 億円 | 788 円434 億円 | +24.5% | +2.2% | 3,101 円1,710 億円 |
今の株価時価総額 2,490 円1,373 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 電力が稼ぎ続け、燃料の縮みを集約で抑える 利益 142 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 3,977 円2,193 億円
電力が稼ぎ頭であり続ける。販売量は4割強増え、INPEXとの合弁も軌道に乗る。調達力で市場の上下をしのぎ、利益率は5%を保つ。
LPガスは小さな販売店を買い集め、数量の減りを8%にとどめる。収納やサウナなどの小さな事業も黒字に乗る。海外の収納は拠点が増え、利益率を保つ。
営業利益は約190億円、純利益は140億円台まで伸びる。自己資本に対する稼ぎは9%を超え、資本コストをわずかに上回る。
投資が稼ぎに変わったと市場が見て、倍率は12.37倍まで上がる。それでも、長く続く稼ぎは競争で薄れる分を差し引くと、資本コストをわずかに超える程度だ。
- エネルギー(LPガス・石油製品・住宅設備):数量 92.0(LPガス換算の販売量(万トン。LPガス約50万トン+石油製品の同量換算・推定))× 価格 19(1トンあたり売上(万円/トン、名目))→ 売上 1,773 億円・営業利益 28 億円
- 電力(風力・バイオマスの電源、電力卸売・小売):数量 97.1(販売電力量(億kWh・推定))× 価格 34(1kWhあたり売上(円/kWh、名目))→ 売上 3,273 億円・営業利益 164 億円
- フーズ・不動産・海外ほか:数量 0.4(取扱規模(実質・千億円))× 価格 1.34(値段の指数(2026/03期=1、名目))→ 売上 496 億円・営業利益 20 億円
倍率:事業の純利益 141 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)53 億円。全体の PER 12.37 倍、時価総額 1,800 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電力の追い風が10年保たれ、買収も当たる好調の筋書き。電力は会社予想を上回る前提が要るため、6%と薄くした。
やや楽観 17% 電力の利益が会社予想より厚く残る 利益 110 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,200 円1,765 億円
電力は予想より厚い利益を残す。販売量は3割増え、利益率は4.4%を保つ。燃料は数量が12%減にとどまり、買収が一定の下支えになる。LPガスの値上げも、人件費の分は転嫁できる。
小さな事業は少しずつ黒字になるが、合計の利益は10億円強にすぎない。INPEXとの合弁は、立ち上がりに時間がかかる。
営業利益は約150億円、純利益は110億円。ただ自己資本が1,450億円まで積み上がり、自己資本に対する稼ぎは8%を割る。
市場は、増えた利益よりも寝かせた資本に目を向ける。倍率は11.76倍にとどまり、強気の見方が当たっても、今の時価総額には届かない。
- エネルギー(LPガス・石油製品・住宅設備):数量 88.0(LPガス換算の販売量(万トン。LPガス約50万トン+石油製品の同量換算・推定))× 価格 19(1トンあたり売上(万円/トン、名目))→ 売上 1,696 億円・営業利益 24 億円
- 電力(風力・バイオマスの電源、電力卸売・小売):数量 88.4(販売電力量(億kWh・推定))× 価格 34(1kWhあたり売上(円/kWh、名目))→ 売上 2,980 億円・営業利益 131 億円
- フーズ・不動産・海外ほか:数量 0.3(取扱規模(実質・千億円))× 価格 1.34(値段の指数(2026/03期=1、名目))→ 売上 442 億円・営業利益 13 億円
倍率:事業の純利益 109 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)53 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 1,338 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電力が予想より良い形で続く筋書き。ただ事業の上下は残るので、2割弱とした。
中立 40% 電力は会社予想の水準を物価並みに伸ばす 利益 85 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,667 円1,471 億円
電力は会社予想の水準に落ち着き、そこから物価並みに伸びる。販売量は2割増え、利益率は3.8%だ。2027年3月期の予想85億円を、10年かけて物価の分だけ積む形になる。
燃料は需要が縮む。LPガスは買収で数量の減りを15%に抑えるが、石油は更に細る。値段は物価に沿って上がるが、人件費も同じだけ上がり、利益率は1%台のままだ。
INPEXとの合弁は持ち分利益が少しずつ育つ。収納やサウナなどの小さな事業は、全体で10億円に届く。
営業利益は約110億円、純利益は85億円。今の92億円より少ない。自己資本は1,360億円まで積み上がり、自己資本に対する稼ぎは6%台で、資本コストに届かない。
- エネルギー(LPガス・石油製品・住宅設備):数量 85.0(LPガス換算の販売量(万トン。LPガス約50万トン+石油製品の同量換算・推定))× 価格 19(1トンあたり売上(万円/トン、名目))→ 売上 1,638 億円・営業利益 21 億円
- 電力(風力・バイオマスの電源、電力卸売・小売):数量 80.4(販売電力量(億kWh・推定))× 価格 34(1kWhあたり売上(円/kWh、名目))→ 売上 2,710 億円・営業利益 103 億円
- フーズ・不動産・海外ほか:数量 0.3(取扱規模(実質・千億円))× 価格 1.34(値段の指数(2026/03期=1、名目))→ 売上 415 億円・営業利益 10 億円
倍率:事業の純利益 84 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)53 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 1,044 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電力が会社予想の水準を保ち、燃料が縮む標準の筋書き。電力の上下を考え、中心は慎重な位置に置いた。
やや悲観 26% 市場の上下に利益が削られ、燃料の縮みが重い 利益 38 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,621 円894 億円
電力の利益が、市場の上下に削られる。仕入れ値が上がる年が増え、利益率は2.5%まで下がる。販売量は伸びるが、値決めは市場に任される。
燃料は数量が2割減り、人件費の上昇を転嫁できず、利益率は1%を割る。FITの終わった風力の収入も細る。INPEXとの合弁は、顧客を思うように増やせない。
営業利益は約50億円、純利益は40億円弱。今の水準から半分以下になる。
小さな事業への投資の一部は、減損に回る。資本が稼ぎに変わらない会社と見られ、倍率は9倍にとどまる。電力が荒れる年は、純利益が10億円台まで落ち込む年も出る。配当は守れても、自社株買いは止まる。
- エネルギー(LPガス・石油製品・住宅設備):数量 80.0(LPガス換算の販売量(万トン。LPガス約50万トン+石油製品の同量換算・推定))× 価格 19(1トンあたり売上(万円/トン、名目))→ 売上 1,496 億円・営業利益 13 億円
- 電力(風力・バイオマスの電源、電力卸売・小売):数量 70.4(販売電力量(億kWh・推定))× 価格 33(1kWhあたり売上(円/kWh、名目))→ 売上 2,303 億円・営業利益 58 億円
- フーズ・不動産・海外ほか:数量 0.3(取扱規模(実質・千億円))× 価格 1.30(値段の指数(2026/03期=1、名目))→ 売上 364 億円・営業利益 2 億円
倍率:事業の純利益38億円・ROE 3.4% は k 8.5% 以下なので、上限は 1÷k=11.8倍。自己資本の積み上がりに稼ぎが追いつかず、電力の利益も上下する。上限の約7.7割の9.0倍に置いた。 政策保有株の評価差額金(税後53億円)は余った現金として、戻り方0.5で別に足した。
確率:電力の仕入れ値の悪化と燃料の縮みが10年続く筋書き。電力の上下の大きさから、中立に次ぐ26%とした。
悲観 11% 電力の収益が構造的に崩れ、燃料は縮み切る 利益 11 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 382 円210 億円
構造的に負ける。電力は、市場価格が荒れる年に利益が消える体質を直せず、利益率は1%台まで落ちる。INPEXとの合弁も、広がらない。
燃料は数量が3割近く減る。オール電化と脱炭素で、LPガスも灯油も売れなくなる。人件費は下がらず、利益率はほぼゼロだ。
フーズや不動産の事業は伸びず、整理のための減損が出る。ミツウロコは投資枠を使い切らず、新しい事業への投資も止める。営業利益は10億円強にとどまる。
配当は減り、自己資本は減損で1,000億円を割る。値打ちは、純現金と、売れる政策保有株の分が土台になる。
- エネルギー(LPガス・石油製品・住宅設備):数量 72.0(LPガス換算の販売量(万トン。LPガス約50万トン+石油製品の同量換算・推定))× 価格 18(1トンあたり売上(万円/トン、名目))→ 売上 1,294 億円・営業利益 4 億円
- 電力(風力・バイオマスの電源、電力卸売・小売):数量 60.3(販売電力量(億kWh・推定))× 価格 31(1kWhあたり売上(円/kWh、名目))→ 売上 1,896 億円・営業利益 28 億円
- フーズ・不動産・海外ほか:数量 0.3(取扱規模(実質・千億円))× 価格 1.25(値段の指数(2026/03期=1、名目))→ 売上 312 億円・営業利益 0 億円
倍率:稼ぐ力は事業の純利益約11億円÷k=約130億円にとどまり、売れる資産の税後214億円のほうが大きい。今の自己資本1,052億円に0.2を掛けた。市場の倍率からは置いていない。
確率:電力の構造的な収益悪化と燃料の急な縮みが重なる筋書き。財務は堅いので1割台前半とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
エネルギー(LPガス・石油製品・住宅設備)
LPガスと灯油・ガソリンの卸売・小売、住宅設備の販売施工、ガソリンスタンド、LPガスの物流。
| 数量LPガス換算の販売量(万トン。LPガス約50万トン+石油製品の同量換算・推定) | 価格1トンあたり売上(万円/トン、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 14 | 1,438 | 19 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 19 | 1,638 | 21 |
取り方:LPガスと石油製品の販売量は開示がない。国内LPガス需要1,226万トンの約4%(約50万トン)と、石油製品の同程度の量を合わせ約100万トンと推定し、売上1,438億円を割って1トン14.4万円とした。数量は人口減とオール電化で縮み、石油は更に速い。物価の分は価格に入れた。
電力(風力・バイオマスの電源、電力卸売・小売)
風力発電の電気の卸売と、法人・家庭向けの電力小売。バイオマスと太陽光も電源。INPEXとの合弁は持ち分49%。
| 数量販売電力量(億kWh・推定) | 価格1kWhあたり売上(円/kWh、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 67.0 | 25 | 1,686 | 115 |
| 10 年後 中立 | 80.4 | 34 | 2,710 | 103 |
取り方:販売電力量は開示がなく、売上1,686億円を卸・小売の平均単価(1kWhあたり約25)で割り、約67億kWhと推定した。数量は新規顧客と合弁の営業で伸びる余地がある。単価は市場価格と燃料費調整に連動し、物価の分を価格に入れた。
フーズ・不動産・海外ほか
飲料水・売店・カフェ、ビル賃貸・温浴施設・ボウリング場、シンガポールと香港のレンタル収納、リース・保険代理・ICTなど。
| 数量取扱規模(実質・千億円) | 価格値段の指数(2026/03期=1、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.3 | 1.00 | 282 | 6 |
| 10 年後 中立 | 0.3 | 1.34 | 415 | 10 |
取り方:フーズ200億円、リビング&ウェルネス20億円、海外31億円、その他31億円の合計282億円を、実質の取扱規模0.282千億円とした。個別の数量開示は乏しい。利益はフーズ3.3億円、リビング-1.2億円、海外2.5億円、その他1.5億円の合計約6億円。
リスクと懸念
電力の利益が元の水準に戻る
電力は利益の8割を占めるが、仕入れ値と市場価格で大きく振れる。2022年3月期は営業利益が8億円まで落ちた。会社は2027年3月期の営業利益を85億円と、3割減で見ている。追い風が一巡すれば、今の利益は実力ではなかったことになる。
燃料の数量が想定より速く縮む
国内のLPガス需要は年1.6%ずつ減り、灯油やガソリンはもっと速い。オール電化の補助や脱炭素の政策が加速すれば、縮みは速まる。人件費は物価で上がるため、数量が減るほど1%台の利益率は削られる。
風力の制度の追い風が細る
風力発電は、固定価格の買取制度のもとで安定した収入を得てきた。神栖の発電所は市場連動のFIPに移り、契約は2028年2月までだ。制度が終われば、電力の卸売の利益は市場価格にさらされる。
小さな事業への投資が稼ぎにならない
500億円の投資枠で、収納、サウナ、アクセサリーなど小さな事業を増やしている。売上が小さく利益も薄いため、資本コストを超えるまでには時間がかかる。減損が出れば、自己資本が目減りする。
政策保有株と売却益に頼った利益
政策保有株は約150億円、22銘柄ある。2025年3月期は約50億円の売却益が出た。売却益は毎年は続かず、見かけの利益を押し上げる。縮減が進めば、見かけの利益はさらに下がる。
INPEXとの合弁の実行
2026年3月に設立した合弁は、INPEXが51%、ミツウロコが49%だ。顧客はINPEX側の天然ガス需要家に頼る。営業が計画どおり進まない場合や、仕入れが高騰した場合は、立ち上がりの費用だけが先に出る。
今後の分かれ目
- 電力の営業利益が会社予想の85億円を2年続けて超えたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただ、その利益が仕入れ価格の下げによるものか、顧客の増加によるものかを確かめる。
- 市場価格が跳ねて、電力の利益が1年で半分以下に落ちたら
- やや悲観・悲観の確率を厚くする。電力の利益率を2%台に置く筋書きに重みを移す。
- LPガスの販売量の減りが年2%を超える年が続いたら
- 燃料の利益率が1%を割る筋書きに重みを移す。買収で数量を補えているかも見る。
- 総還元性向50%以上の方針が変わり、自社株買いが止まったら
- 還元の厚さという強みが弱まる。10年の還元額を減らして見直す。
- INPEXとの合弁が黒字化し、持ち分利益が年10億円に届いたら
- 電力の成長の根拠が増える。中立の電力の販売量と利益率を上げる余地が出る。
- 大型の買収が発表されたら
- 買収の値段と見返りが資本コストを超えるかを見る。高値づかみなら悲観側の確率を上げる。
見ておくもの
- 電力事業の営業利益と、容量拠出金の負担
- LPガス・石油製品の販売量と、1件あたりの利益
- 神栖など風力のFIP移行後の収入
- 500億円の投資枠の使い道と、小さな事業の損益
- 総還元性向と自社株買いの実施状況
- INPEXミツウロコ電力の立ち上がり
倍率と資本コストの決め方
筋書きは今の株価を見る前に、セグメントごとの数量と価格の積み上げで置いた。数量は実質、価格は物価3%の10年で1.34倍を基本にした。純利益は、過去の純利益÷営業利益の中央値0.74に金利の増分(現金が純額で厚いため約2億円)を足した。ROEが資本コスト8.5%を下回る筋書きでは、倍率を1÷kより低く置いた。今のPER14倍台・PBR1.3倍には寄せていない。リースの形は今と同じ(家賃を営業費用に入れた形)でそろえ、新リース会計基準(2028年3月期から)で数字の形が変わることには触れた。 政策保有株の評価差額金(税後53億円)は、事業の倍率に混ぜず、余った現金の欄で戻り方0.5を掛けて別に足した(取得原価の分は足さない)。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。