結論
築地魚市場は、豊洲市場で魚を集めて売る大卸、いわゆる荷受の会社だ。筆者の結論ははっきりしている。本業の卸が稼げない構造のままで、今の値段は利益から見て割高だ。
売上は 674 億円あるが、卸の利益はこの 15 年、ほぼゼロの前後を動いてきた。会社の利益を支えるのは、売上 15 億円の冷蔵倉庫だ。営業利益の大半をこの 1 事業が稼ぐ。
財務も余裕がない。借入は 46 億円で、現金を引いた純負債は 28 億円ある。金利が上がれば、薄い利益はさらに削られる。
中期経営計画は「旧来型の荷受会社から販売会社への転換」を掲げる。方向は正しいが、前の計画も届かなかった。筆者は、10 年後も冷蔵倉庫が会社を支える形は変わらないと見る。ROE は 4〜5% にとどまり、資本コストの半分ほどにしか届かない。
冷蔵倉庫の稼ぎは本物だが、それだけで会社全体の資本に見合う利益は出ない。借入の金利が上がる 10 年では、その差はむしろ広がる。再編が起きれば話は別だが、それは今の価値には数えられない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この会社は長く持ちたい事業とは言いにくい。本業の卸は、規模のわりに株主の取り分がほとんど残らない商売だ。10 年後に今より強くなる理由も見えない。
価値の中心は冷蔵倉庫だ。年 4〜5 億円を稼ぐが、その設備は借入で建てられ、更新には建築費の上昇がのしかかる。会計の利益は物価で膨らんで見えても、手元に残る現金は細りやすい。
安全域も乏しい。自己資本は時価総額に近いが、ROE が資本コストを大きく下回る会社では、帳簿の価値は床にならない。筆者は、利益の見通しから見て今の値段に安全域は無いと見る。
強いて言えば、豊洲の大卸という立場には、ある種の希少性がある。市場の再編のなかで、商社や水産大手がこの立場を欲しがる可能性はある。だがそれは事業の力でなく、買い手の都合に頼った話だ。オーナーとして持つなら、自分の手で利益を生む事業であってほしい。
何で稼ぐ会社か
事業は 3 つある。水産物の卸、冷蔵倉庫、不動産の賃貸だ。売上の 98% は卸だが、利益の構図はまったく逆になる。
水産物卸売業は、豊洲市場で全国の産地や海外から魚を集め、仲卸や量販店、外食に売る。生鮮、冷凍、加工品をそろえる。2026 年 3 月期は売上 658 億円で、セグメントは 3.7 億円の赤字だった。子会社の取引先から売掛金を回収できなくなり、4 億円強の引当を積んだのが響いた。それを除けば、ほぼ損益ゼロだ。
冷蔵倉庫業は、首都圏の倉庫で水産物を預かる。外部への売上は 15 億円だが、利益は 4.7 億円ある。全社の利益の柱だ。
不動産賃貸業は、建物の一部をテナントに貸し、年 0.7 億円を稼ぐ。
大株主には、建材商社のヨンキュウが 15%、丸紅シーフーズが 12% ほどいる。丸紅シーフーズは取引を深めるための保有だ。
卸の売上は数量と単価の両方で動く。前期は生鮮の数量が減ったが、物価高で単価が上がり、取扱金額は増えた。冷凍魚も輸入の減少で単価が高止まりした。一方で加工品は原料の値上がりで数量も金額も減った。
稼ぐ構図を一言で言えば、売上の 2% の倉庫が利益のほぼ全部を生み、98% の卸がそれを食わないように踏ん張る形だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは薄い。荷受は、卸売市場法の下で産地から魚を受け、せりや相対で売る。かつては許認可で守られた商売だったが、2020 年の法改正で市場の取引の決まりは大きく緩んだ。
値段を決める力も弱い。魚の値段は漁獲と市況で決まり、荷受が受け取るのは手数料に近い取り分だけだ。卸の利益率は過去 15 年、ほとんどの年で 0% 前後にとどまる。
冷蔵倉庫は確かに稼ぐ。だが首都圏では大手の物流会社が大型の冷凍倉庫を次々に建てており、保管料の上げ幅は限られる。
経営の資本の使い方にも課題が残る。借入を抱えたまま、投資有価証券を 25 億円持つ。前期は一部を売って 5 億円の売却益を出したが、利益の質としては一回限りだ。
強みを挙げるなら、豊洲の大卸という場所と、長年の産地との付き合いだ。ただ、それは値段を決める力にはなっていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
豊洲を含む中央卸売市場を通る水産物は、長く減り続けている。漁獲量は温暖化で減り、輸入魚は円安と世界の需要増で高い。量販店の大手は、産地や輸入業者と直接取引を広げてきた。市場を経由する割合は、かつての 7 割から 5 割を下回る水準まで落ちた。
一方で、外食と訪日客の需要は伸びている。豊洲のブランドで高級魚を求める外食は多い。物価高で魚の単価も上がり、取扱金額は数量の減少ほどには落ちていない。
業界では、荷受どうしの統合や、商社・水産大手の傘下に入る動きが続く。中央魚類やOUGホールディングス、横浜丸魚も、冷蔵倉庫や不動産で卸の薄利を補う形は同じだ。築地魚市場はそのなかでも規模が小さく、借入が重い。
10 年の見通しとして、筆者は市場を通る数量を 15% 減、値上げは物価並みと置く。荷受の取り分を広げる材料は乏しい。
冷蔵倉庫の業界も変わりつつある。首都圏の湾岸では、ニチレイロジやヨコレイなどの大手が大型の冷凍倉庫を増やしている。電気代と人件費の上昇は保管料に転嫁しやすいが、古い小さな倉庫は競争力を落としやすい。築地魚市場の倉庫も、いずれ更新か縮小かを迫られる。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。配当は年 0.8 億円ほどで、配当性向は 2 割前後にとどまる。自社株買いの実績はほとんどない。
借入は 46 億円ある。冷蔵倉庫の設備を借入で賄ってきたためだ。金利が 3.5% に上がれば、利払いは今の年 0.5 億円から 1.5 億円ほどに増える。
大株主のヨンキュウは純投資として 15% を持つ。丸紅シーフーズとの関係が深まれば、商社の傘下に入る再編もありうる。ただ、今の時点で具体的な話は出ていない。
株主から見れば、借入を返すか還元を厚くするか、どちらかの手が見えない限り、資本の使い方は評価しにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今期は会社予想で営業利益が 6 億円台に戻る。前期の赤字は子会社の貸倒れという一度きりの出来事で、本業はすでに黒字に戻っている。中計の目標 ROE 7% も、手の届く所にある。
冷蔵倉庫は宝だ。首都圏の水産の冷凍保管は不足しており、保管料の値上げは今後も通る。償却は建てた時の値段のままなので、値上げはそのまま利益に乗る。
外食と訪日客の需要は強い。豊洲の高級魚は値上げしても売れる。販売会社への転換で、市場外の販売や加工品が伸びれば、卸の利益率も上がる。
さらに、丸紅シーフーズやヨンキュウが大株主にいる。再編の受け皿は身近にあり、いずれ買収の話が出てもおかしくない。
冷蔵倉庫と不動産の資産も時価では帳簿を上回るはずだ。借入を返し終える頃には、利払いが減って純利益は一段増える。荷受の再編が進めば、残った大卸の取り分はむしろ厚くなる。小さな会社ほど、少しの改善が利益を大きく動かす。前期の赤字で値段が沈んだ今は、回復の入り口に立っている。
慎重な見方
卸の利益は 15 年間ほぼゼロだ。一度きりと言う貸倒れも、薄利の卸では数年おきに起きてきた。中計の目標は前回も届かなかった。
市場を通る魚は減り続ける。量販店も外食の大手も、産地と直接取引する方が安い。荷受の取り分は、規模が縮むほど固定費に食われる。
冷蔵倉庫も永遠ではない。大手物流の大型倉庫が増え、古い倉庫の更新には建築費の上昇がのしかかる。借入 46 億円は、金利 3.5% の世界では重い荷物だ。
再編の話は、少数株主の得になる値段で出るとは限らない。大株主が持つ株は、むしろ買い手の交渉力を強めるだけかもしれない。
資本コストに届かない ROE が続く限り、自己資本は株主の価値を目減りさせながら積み上がるだけだ。配当の性向 2 割では、その目減りを止められない。しかも利益の柱は倉庫 1 つに偏り、その倉庫も年を追って古くなる。分散の効かない小さな会社には、悪い年を吸収する余力が乏しい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。今期の回復は会社予想にすぎず、卸の利益率を上げる裏づけは過去に無い。冷蔵倉庫の稼ぎは本物だが、それだけで資本コストを超える ROE は出ない。確率は中立の 4 割を軸に、悲観の側へ 3 割強を置いた。
強気の言い分の芯は「倉庫と再編」だが、倉庫は更新で現金を食い、再編は少数株主の得になるとは限らない。今期の会社予想が届くかは、来年の決算で見直す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,791 円62 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 480 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 1,522 円34 億円、今との差 −57.9%、 期待の年率 −1.0%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 6,239 円139 億円 | 808 円18 億円 | +94.9% | +6.9% | 423 円9 億円 |
| やや楽観 | 18% | 4,017 円90 億円 | 673 円15 億円 | +29.7% | +2.6% | 844 円19 億円 |
| 中立 | 40% | 3,049 円68 億円 | 494 円11 億円 | −2.0% | −0.2% | 1,417 円32 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,577 円35 億円 | 359 円8 億円 | −46.4% | −6.1% | 465 円10 億円 |
| 悲観 | 12% | 794 円18 億円 | 224 円5 億円 | −71.8% | −11.9% | 122 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,791 円62 億円 | 480 円11 億円 | −9.5% | −1.0% | 3,271 円73 億円 |
今の株価時価総額 3,615 円81 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 販売会社への転換が実り、卸の利益率が上がる 利益 11 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 6,239 円139 億円
外食と訪日客向けの需要が伸び、豊洲を通らない市場外の販売や加工品で、自分で値段を付けられる商売が増える。卸の利益率は 0.7% まで上がる。
冷蔵倉庫は保管料の値上げが通り、満庫に近い状態が続く。償却は建てた時の値段のままなので、値上げの分がそのまま利益に乗る。
大株主の丸紅シーフーズやヨンキュウとの取引も広がる。借入は少しずつ返し、利払いは今と変わらない。
それでも ROE は 10% に届かない。荷受の商売は、値決めの力を市場に握られているからだ。
加工品や市場外の販売が伸びると、取引の手数料でなく自分の売値で稼げる。それが利益率を上げる唯一の道だ。
- 水産物卸売:数量 6.3(取扱数量(万トン・推定))× 価格 151(1 万トンあたり取扱額(億円・名目))→ 売上 954 億円・営業利益 7 億円。数量 1.05 倍、利益率 0.7%
- 冷蔵倉庫:数量 6.6(保管能力(万トン・推定))× 価格 3.37(1 万トンあたり年間売上(億円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 8 億円。能力 1.1 倍、値上げ、利益率 35%
- 不動産賃貸:数量 0.5(賃貸面積(万㎡・推定))× 価格 4.08(1 ㎡あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃料 1.35 倍
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.03 倍、時価総額 126 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の「販売会社への転換」が実り、本業の卸で利益率 0.7% を出す筋書き。過去 15 年の卸は損益ゼロ前後で、裏づけになる実績が無いので低く置いた。
やや楽観 18% 卸は小さな黒字、冷蔵倉庫が稼ぎ続ける 利益 7 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 4,017 円90 億円
卸の取扱数量は少しずつ減るが、値上げと経費の見直しで小さな黒字が定着する。利益率は 0.25% だ。
冷蔵倉庫は今の利益率を保ち、全社の利益の 7 割をここが稼ぐ。保管料の値上げは物価並みに通る。
大きな貸倒れは繰り返さない。借入の金利は上がるが、営業の現金で少しずつ返していく。
純利益は 6 億円台になり、ROE は 6% 台に乗る。それでも資本コストには届かず、配当は 2 割の性向のまま少しずつ増えるにとどまる。
冷蔵倉庫は満庫に近く、保管料の値上げが通るたびに利益が少しずつ積み上がる。卸の黒字は小さいが、赤字の年が消えるだけで会社の見え方は変わる。
- 水産物卸売:数量 5.7(取扱数量(万トン・推定))× 価格 149(1 万トンあたり取扱額(億円・名目))→ 売上 850 億円・営業利益 3 億円。数量 0.95 倍、利益率 0.3%
- 冷蔵倉庫:数量 6.0(保管能力(万トン・推定))× 価格 3.32(1 万トンあたり年間売上(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 7 億円。利益率 34%
- 不動産賃貸:数量 0.5(賃貸面積(万㎡・推定))× 価格 3.93(1 ㎡あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃料 1.3 倍
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 79 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の営業利益 6 億円は今期の会社予想と同じ水準で、届く可能性はある。そこから卸の利益率が少し上がる筋書きで 2 割弱。
中立 40% 卸はほぼ損益ゼロ、冷蔵倉庫が会社を支える 利益 5 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 3,049 円68 億円
豊洲を経由する魚は細り続ける。漁獲は温暖化で減り、量販店は産地と直接取引を広げる。卸の数量は 10 年で 15% 減り、利益率は 0.1% と今の水準のままだ。値上げは物価並みに通るが、手数料の取り分は増えない。
冷蔵倉庫は能力を保ち、保管料を物価並みに上げる。償却は今の倉庫の値段のままだが、古い設備の更新は建築費の上昇で高くつき、利益率は 30% に少し下がる。
借入は 3.5% で借り換わり、利払いは今より年 1 億円ほど増える。純利益は 4 億円台で、ROE は 4% 前後に戻る。
冷蔵倉庫は利益の柱であり続けるが、更新の投資が重く、現金は思ったほど残らない。株主から見れば、薄い配当を受け取りながら帳簿の資本だけが積み上がる 10 年になる。
- 水産物卸売:数量 5.1(取扱数量(万トン・推定))× 価格 147(1 万トンあたり取扱額(億円・名目))→ 売上 750 億円・営業利益 1 億円。数量 0.85 倍、利益率 0.1%(前期の貸倒れを除いた今の水準)
- 冷蔵倉庫:数量 6.0(保管能力(万トン・推定))× 価格 3.27(1 万トンあたり年間売上(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 6 億円。更新の償却が足され利益率 30%
- 不動産賃貸:数量 0.5(賃貸面積(万㎡・推定))× 価格 3.78(1 ㎡あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃料 1.25 倍
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 55 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:卸の利益率ゼロは過去 15 年の実績どおりで、冷蔵倉庫の利益は今も続いている。中計の利益水準と同じなので中心に 4 割を置いた。
やや悲観 24% 卸の数量が 4 分の 1 減り、倉庫の利益も細る 利益 3 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 1,577 円35 億円
量販店と外食の大手が産地や輸入業者と直接つながり、市場を通る魚が 25% 減る。卸は数量の減少を値上げで補えず、利益はゼロのままで規模だけが縮む。
冷蔵倉庫は首都圏で新しい大型倉庫が増え、保管料の値上げが物価に届かない。利益率は 28% に下がる。
借入の金利負担は重くなり、純利益は 3 億円台にとどまる。ROE は 3% 台で、資本コストの半分にも届かない。配当は据え置かれる。
更新の投資は借入で賄うので、金利の負担はさらに重くなる。倉庫の利益は建物の古さに比例して細り、会社の利益の柱そのものが少しずつ傾いていく。卸の数量の減少と倉庫の競争が同時に進むのが、この筋書きの怖さだ。
- 水産物卸売:数量 4.5(取扱数量(万トン・推定))× 価格 137(1 万トンあたり取扱額(億円・名目))→ 売上 617 億円・営業利益 0 億円。数量 0.75 倍、損益ゼロ
- 冷蔵倉庫:数量 5.7(保管能力(万トン・推定))× 価格 3.05(1 万トンあたり年間売上(億円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 5 億円。値上げが物価に届かず利益率 28%
- 不動産賃貸:数量 0.5(賃貸面積(万㎡・推定))× 価格 3.62(1 ㎡あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃料 1.2 倍
倍率:ROE 3% 台で k を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)は 11.4 倍分だが、借入が重く利益の大半が倉庫 1 事業に偏るので 6.5 倍。
確率:市場経由の取引は長く減ってきた。数量の減りが速まる筋書きは中立と大差なく起こりうるので 2 割強。
悲観 12% 荷受の役割が細り、卸が赤字に沈む 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 794 円18 億円
市場を通る魚は 35% 減り、卸は固定費をまかなえず赤字が続く。大口の取引先の倒産で、今回のような貸倒れも繰り返す。
冷蔵倉庫は古い設備の更新が重く、借入を増やして建て替えるか、規模を縮めるかの選択を迫られる。利益率は 20% に落ちる。
純利益はほぼゼロになり、配当は減らされる。持っている投資有価証券と倉庫の土地建物が、価値の下支えになる。だが清算は起きず、その価値は少数株主に半分も届かない。
倉庫の土地建物と有価証券は、帳簿の上では時価総額に近い価値を持つ。だがそれは借入を返すと大きく減る。
- 水産物卸売:数量 3.9(取扱数量(万トン・推定))× 価格 126(1 万トンあたり取扱額(億円・名目))→ 売上 492 億円・営業利益 −2 億円。数量 0.65 倍、利益率 −0.4%
- 冷蔵倉庫:数量 5.4(保管能力(万トン・推定))× 価格 2.81(1 万トンあたり年間売上(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 3 億円。利益率 20%
- 不動産賃貸:数量 0.5(賃貸面積(万㎡・推定))× 価格 3.32(1 ㎡あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃料 1.1 倍
倍率:稼ぐ力はほぼゼロなので、売れる資産の床(floor_assets_why)から、今の自己資本に 0.25 倍。EV(時価総額+純負債 28 億円)÷営業利益は 27 倍と高いが、利益がほぼ消えた谷の年の値で、価値は利益でなく資産の床で決まる。
確率:市場外の流通が主流になり、荷受の仲介が成り立たなくなる構造の負け。冷蔵倉庫が残るので倒れはしないが、可能性は 1 割を超える。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
水産物卸売
豊洲市場の大卸(荷受)として全国と海外から魚を集め、仲卸・量販店・外食へ売る。市場外の販売と加工品も含む。
| 数量取扱数量(万トン・推定) | 価格1 万トンあたり取扱額(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.0 | 110 | 658 | −4 |
| 10 年後 中立 | 5.1 | 147 | 750 | 1 |
取り方:売上 658.3 億円・セグメント損失 3.72 億円(子会社の貸倒引当 4.15 億円を含む。除けば +0.43 億円)。数量は開示が無く、1 万トンあたり 110 億円前後と見て 6 万トンと推定した。
冷蔵倉庫
首都圏の冷蔵倉庫で水産物を預かり、保管料と荷役料を受け取る。
| 数量保管能力(万トン・推定) | 価格1 万トンあたり年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.0 | 2.44 | 15 | 5 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 3.27 | 20 | 6 |
取り方:外部売上 14.66 億円・セグメント利益 4.66 億円(グループ内の売上 3.09 億円は除く)。減価償却は年 2.37 億円。能力は 6 万トンと推定した。
不動産賃貸
保有する建物の一部をテナントに貸す。
| 数量賃貸面積(万㎡・推定) | 価格1 ㎡あたり年間賃料(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.5 | 3.02 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.5 | 3.78 | 2 | 1 |
取り方:売上 1.51 億円・セグメント利益 0.72 億円。面積は推定で、結論への影響は小さい。
リスクと懸念
市場経由の流通の縮小
量販店や外食の大手が産地と直接取引を広げると、荷受が扱う数量は減る。卸の固定費は簡単には削れず、数量の減少がそのまま利益を削る。
取引先の貸倒れ
前期は連結子会社の取引先から売掛金を回収できず、4 億円強の引当を積んだ。卸の利益率が 0% 前後なので、一件の貸倒れで 1 年分の利益が消える。
金利の上昇
借入は 46 億円ある。金利が 3.5% に上がれば利払いは年 1 億円ほど増え、純利益の 2〜3 割に当たる。
冷蔵倉庫の更新
利益の柱の冷蔵倉庫は、更新に多額の投資が要る。建築費が上がるなか、更新の投資は今の償却を大きく超え、借入か還元の削減で賄うことになる。
漁獲の減少と魚価
温暖化でサンマやイカなどの漁獲は減っている。単価が上がっても数量が減れば、荷受の手数料に近い取り分は増えにくい。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期に営業利益 6 億円、ROE 7% を達成する
- 卸の黒字が定着した証拠になり、やや楽観の側へ確率を寄せる。
- 再び大きな貸倒れが出る
- 卸の利益率ゼロどころか赤字が続く悲観の側へ寄る。
- 冷蔵倉庫の大型の更新や新設を借入で決める
- 利払いと償却が増え、倉庫の利益率は中立より下がる。
- 丸紅グループなど大株主との資本提携や再編が出る
- 単独で続く前提が変わるので、提示の条件で考え直す。
- 投資有価証券の売却を続け、借入を返す
- 利払いが減り、純利益は中立より上に出る。
見ておくもの
- 水産物卸のセグメント損益
- 冷蔵倉庫の売上と利益率
- 借入の残高と金利
- 中計の営業利益 6 億円・ROE 7% の達成
- 豊洲の水産物取扱数量
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE と k だけから決めた。楽観以外は ROE が k 8.75% を下回るので、PER の上限は 1÷k ≒ 11.4 倍で、その 6〜8 割に置いた。今の PBR 1.1 倍前後や同業の倍率は見ていない。投資有価証券は配当を利益に残すので余り資産に足さず、悲観の床だけで数えた。冷蔵倉庫の償却は今の設備の値段のままとし、更新の分だけ新しい値段で足した。純利益には借入の金利 3.5% への借り換えを入れた。10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→12.03 倍・やや楽観 PER 9.5→11.43 倍・中立 PER 8.5→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に +1.25%。中央魚類(+1.0%)より借入が重く、利益の柱の冷蔵倉庫も小さいので 0.25% 高い。