結論
東京エレクトロンデバイスは、海外の半導体や電子部品を国内メーカーに売る技術商社だ。もう一つの柱に、ネットワークやセキュリティ製品を扱うIT事業がある。半導体は産業機器・車載・通信の汎用品に強く、AIサーバー向けの花形品目とは距離がある。
筆者の結論は、10年で見れば今の値段は本質価値を4割近く上回る、というものだ。いま株価を押し上げているのは、2026年度の急回復と受注残の厚さである。しかし薄利の商社が稼ぐ利益は、半導体メーカーの値決めと在庫の波に左右される。回復が続く筋書きでも、その利益に払える倍率には限りがある。
救いは、利益率が15%前後と高いIT事業だ。ここが今は全社の利益の3分の2近くを稼ぎ、半導体の谷を和らげる。ただ売上の2割に満たず、全体の評価を変えるほどの重さはまだない。
在庫が1,600億円を超え、自己資本の3倍に達している点も見逃せない。需要が冷えた時の評価損が、薄い利益を一気に消す。
株価は2026年3月期の利益に対して約18倍、会社予想の2027年3月期でも約15倍と、薄利の商社としては高い。回復の速さがすでに織り込まれている、というのが筆者の見立てだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、最初に問うのは『この利益は10年後も同じ水準で稼げるか』だ。答えは、半分は稼げて半分はわからない、である。
稼げる部分は、IT事業と、顧客の設計に入り込んだ産業機器向けの半導体だ。切り替えの手間があり、すぐには離れにくい。わからない部分は、仕入先の政策と半導体の価格の波だ。商社は値段を決める側ではない。
資本の使い方は、堅実だが驚きはない。配当性向40%で株主に返し、小さな買収を重ねる。ただ在庫が自己資本の3倍もあり、貸借の形は危うい。バリュー投資家は、こういう会社に払う値段へ厚い安全域を求める。
いまの市場は、2026年度の急回復と受注残の厚さを前提に値付けしている。筆者は、薄利の商社に長期でその水準を払うのは難しいと見る。10年の利益は今の1.5倍ほどにはなるが、その先は伸びが鈍る。
最後に、資本を預ける相手としての評価を述べる。経営は堅実で、無理な買収はしていない。ただ、事業の性格上、一株あたりの利益は景気の波で大きく揺れる。バリュー投資家は、波の底で買う覚悟のある人のものだ。今は波の上のほうにいる。
何で稼ぐ会社か
売上の約8割は、半導体と電子部品を売るEC事業だ。海外メーカーの製品を仕入れ、通信・産業機器・車載の顧客およそ2,000社に供給する。ただ右から左へ流すのではない。顧客の設計に入り込み、部品選びから基板まで面倒を見る。その中に、自社ブランドで作る検査装置や受託開発・量産のPB事業も含まれる。
2026年3月期は、顧客の在庫調整が長引いてEC事業の利益が半分近くに減った。ところが2026年4〜6月期には、産業機器向けの回復と製品価格の上昇で売上が4割近く伸びた。受注残も1,200億円近くまで積み上がっている。
残りの約2割がCN事業だ。ネットワーク機器、ストレージ、セキュリティ製品を欧米やイスラエルの新興ベンダーから仕入れ、システム会社やデータセンター事業者に売る。導入後の保守・監視サービスも手がけ、利益率は15%前後と半導体の数倍ある。顧客はシステム会社が約5割で、IT投資の波には乗るが、半導体の波とは別の動きをする。
筆者は、この二本柱の組み合わせこそ会社の個性だと見る。半導体の谷でもIT側が利益を稼ぐ設計になっている。
なお、半導体の仕入先は海外の大手メーカーで、かつての会社資料にはテキサス・インスツルメンツやNXP、ブロードコムなどの名前が並ぶ。現在の取扱先の細かい一覧は確かめられなかったため、ここでは具体名を絞った。筆者が注目するのは、取扱権が仕入先メーカーとの契約に乗っている点だ。契約が切られれば売上が一気に減る。
優良さと弱いところ
堀はあるが浅い。技術提案力と2,000社の顧客基盤は強みだが、仕入れ値と取扱権は半導体メーカーが握る。売上に対する営業利益は、好況期でも6%台止まりだ。
国内では、マクニカ・加賀電子・レスター・トーメンデバイスなどと同じ土俵で戦う。売上の規模ではマクニカに大きく劣る。そのぶん、産業機器・車載・通信という顧客の分野で、技術者が現場に入る提案型の商売に絞っている。ここが他社と差をつける所だ。
もう一つの強みは、33.8%を持つ筆頭株主の東京エレクトロンとの関係だ。同社の半導体装置の顧客網や技術情報に近いことは、検査装置などのPB事業で効く。一方で、親会社のような後ろ盾が経営の締まりを緩めるおそれは、常に頭に置いておきたい。
資本効率は景気の波に正直だ。自己資本利益率は3%台から20%台まで振れ、直近は15%程度だった。財務は借入が増えやすい形で、棚卸資産が自己資本の3倍ある。景気が崩れた時の評価損が最大の弱点だ。
IT事業の利益率は15%と高く、全社の質を引き上げている。ただ規模はまだ小さい。
なお、利益の質には注意がいる。2026年3月期の純利益には、持分法適用会社の株式の譲渡益が含まれていた。本業の稼ぎだけで見ると、足元の利益はやや小さくなる。10年の筋書きでは、この一過性の分を除いた水準から積み上げている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
半導体商社は、AIで沸く世界の半導体市場の外側に立っている。世界の半導体市場はAI向けのロジックとメモリに引っ張られて急拡大中だ。ところが東京エレクトロンデバイスが主に扱うのは、産業機器・車載・通信向けのマイコンやアナログICなどだ。この分野は2023年以降、在庫の積み過ぎで2年近く調整が続いた。
その調整が終わり、2026年は受注と価格の両方が戻っている。納期が延びて部品が値上がりし、商社の在庫に評価益が出る局面だ。ただこの手の好況は、顧客が先取りで発注を増やした反動で、次の谷を深くしやすい。
競合は再編で大きくなっている。レスターはUKCとバイテックを統合し、マクニカや加賀電子も規模を広げた。メーカーが取扱商社を絞る流れの中で、中堅は『絞られる側』に回るおそれがある。
CNの世界では、国内のセキュリティ市場が年7%ほどで伸びている。ランサムウェア対策など、守りのIT投資は景気が悪くても削りにくい。ただパロアルトやクラウドストライクのようなベンダーが直販を強めれば、商社の取り分は縮む。
筆者は、業界全体の需要は伸びるが、中堅の取り分は広がりにくいと見る。
国内のIT基盤市場は、守りの投資が中心で景気に強い。ただ海外ベンダーの国内向け直販が増えれば、商社の取り分は削られる。取り分を守れるかは、保守・監視という運用の収入を厚くできるかで決まる。
資本政策と M&A
株主への約束は、配当性向40%を目安とする配当だ。自社株買いは、成長投資を優先したうえで、資金繰りを見て決める。直近の決算でも、通期の配当予想を大きく引き上げた。
中期計画『VISION2030』は、2030年3月期に売上3,000〜3,500億円、自己資本利益率20%以上を掲げる。筆者は、これを達成可能な目標というより、好況時の上振れを含む上限の姿と見る。前の中計で掲げた15%超の自己資本利益率は、景気の波もあって安定して届かなかった。
買収は、海外の小さな会社を買う程度で、大型案件はない。親会社の東京エレクトロンが33.8%を持つ。これは2014年の売出しで持分法適用の関連会社になった結果で、完全子会社化の公表は確認できない。ただし支配株主に近い存在がいるため、少数株主の意向だけでは動かない構造だ。
財務の面では、2026年4〜6月期に売上増で運転資金が膨らみ、営業キャッシュフローがマイナスになった。借入で賄う局面が続くと、配当性向40%の約束と成長の両立は窮屈になる。筆者は、自社株買いが大きく出てくる余地は小さいと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
半導体は、産業機器と車載で本格的な回復期に入った。顧客の在庫調整は終わり、受注は前年同期の2倍超、受注残は1,200億円近い。製品の納期が延び、価格も上がっている。商社にとっては、利益率が上がりやすい局面だ。
中期計画は売上3,000億円超・自己資本利益率20%を掲げる。2027年3月期は、会社自身が経常利益を4割増やす予想に上げた。工作機械やロボットなどの国内の産業機器は、人手不足への対応で設備投資が続く。車載も電動化で半導体の搭載数が増え続ける。東京エレクトロンデバイスは、この現場にある。
IT事業は、国内の守りのIT投資が景気に左右されにくい。新しい海外ベンダーの発掘に強く、保守・監視というストック収入が積み上がる。利益率はすでに15%あり、この部分だけで、今は全社の利益の3分の2近くを稼ぐ。
PB事業のウェーハ検査装置は、SiCなどの次世代パワー半導体で海外メーカーへの出荷が始まった。数は小さくても、利益率の高い自社製品が増えれば、全社の水準が上がる。
慎重な見方
今の好況は、顧客の先取り発注と価格上昇が作った面がある。2023年にも同じ形の好況があり、その後の在庫調整でEC事業の利益は半分近くに沈んだ。受注残が厚いほど、反動も深くなる。
本質的に、この会社は値段を決められない。仕入れ値は半導体メーカーが決め、取扱権もメーカーの都合で変わる。営業利益率は10年を通して見ると3%前後に収まりやすい。中計の経常利益率8%は、好況の数字だ。
棚卸資産は1,600億円を超え、自己資本の3倍にのぼる。価格が下がれば評価損が出て、年間の利益が丸ごと消えかねない。借入も増えている。
産業機器・車載・通信は、AIのように世界の半導体市場を伸ばす分野ではない。市場の伸びを取り切れず、取扱シェアはじわりと下がってきた。メーカーが商社を絞ったり、直接取引を強めたりすれば、中堅の取り分はさらに削られる。
今の時価総額は、予想純利益の約15倍と、薄利の商社にとっては高い評価だ。
親会社の東京エレクトロンが持つ33.8%も、安心材料ばかりではない。同社の事情で持株の売却や方針転換があれば、需給が崩れる。経営の独立性が高いぶん、親会社の後ろ盾を過信できない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、足元の回復の強さでは確かに正しい。ただ、10年の価値を決めるのは、回復の高さではなく、利益がどの水準で定着するかだ。慎重な見方は、その水準を3%前後の利益率に置く。これは過去の10年の平均に近い。
筆者は、慎重な見方のほうが論拠が強いと見た。IT事業の稼ぎは本物だが、売上の2割に満たず、全体の評価を変えるほどではない。確率は、楽観を1割、悲観を1割強に置き、中立と、やや悲観にやや厚く寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,274 円1,850 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,671 円493 億円)。 今の値に割り戻すと 3,964 円1,169 億円、今との差 −11.1%、 期待の年率 +5.9%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 14,134 円4,167 億円 | 2,561 円755 億円 | +274.3% | +14.1% | 1,669 円492 億円 |
| やや楽観 | 22% | 9,232 円2,722 億円 | 1,974 円582 億円 | +151.3% | +9.7% | 2,465 円727 億円 |
| 中立 | 34% | 6,592 円1,944 億円 | 1,496 円441 億円 | +81.3% | +6.1% | 2,750 円811 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,337 円689 億円 | 1,438 円424 億円 | −15.3% | −1.7% | 831 円245 億円 |
| 悲観 | 12% | 617 円182 億円 | 1,299 円383 億円 | −57.0% | −8.1% | 230 円68 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,274 円1,850 億円 | 1,671 円493 億円 | +78.1% | +5.9% | 7,945 円2,343 億円 |
今の株価時価総額 4,460 円1,315 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 産業機器の回復が長引き、IT事業も二桁で伸びる 利益 259 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 14,134 円4,167 億円
世界の半導体市場は年率9%で伸び、産業機器・車載の需要が長く強い。東京エレクトロンデバイスの取扱シェアは今の水準を保ち、利益率は5%まで上がる。自社ブランドの検査装置とODMが厚みを加える。
IT事業は、国内のセキュリティとネットワークの投資に乗って、シェアを今の1.25倍に広げる。保守・監視の収入が積み上がり、利益率は16%に達する。
中期計画の経常利益率8%には届かないが、営業利益は今の3.6倍の380億円になる。親会社の東京エレクトロンとの関係は安定し、買収を受ける話も出ない。評価は『普通の商社』から『技術力のある商社』に上がる。
仕入先との関係は、技術提案で選ばれ続けて深まる。取扱商社の絞り込みでも、顧客の設計に入り込む東京エレクトロンデバイスは外れない。物価の上昇も味方して、利益の絶対額が大きく増える。
- 半導体・電子部品事業(EC事業とPB事業):数量 1,402(世界半導体市場(WSTS統計、10億ドル・実質))× 価格 2.74(取扱シェア×150円×物価の倍率(市場10億ドルあたりの売上・億円))→ 売上 3,838 億円・営業利益 192 億円。WSTS市場の年率9%成長、取扱シェア比1.00倍、利益率5.0%(数量は名目の市場を物価1.34倍で割った実質)
- CN事業(ネットワーク・ストレージ・セキュリティ):数量 39,287(国内のIT基盤(セキュリティ・ネットワーク・ストレージ)の市場規模(億円・実質))× 価格 3.0%(取扱シェア×物価の倍率(市場1億円あたりの売上・億円))→ 売上 1,179 億円・営業利益 189 億円。国内IT基盤市場の年率5.5%成長、シェア比1.25倍、利益率16%
倍率:事業の純利益 259 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍。全体の PER 16.09 倍、時価総額 4,167 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:産業機器・車載の半導体が10年のうち複数の波で伸び続け、しかも利益率も上がる、という重なりが要る。実現すれば大きいが、重なる確度は高くない。
やや楽観 22% 回復が定着し、IT事業が着実に育つ 利益 181 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 9,232 円2,722 億円
世界の半導体市場は年率8%で伸び、産業機器・車載の需要が戻る。取扱シェアは今の0.92倍と、AI向け品目を持たないぶん市場に少し負けるが、利益率は4%まで上がる。
IT事業は、国内の市場を上回る年率で伸び、シェアは1.1倍になる。利益率は15%を保ち、全社の営業利益の4割強を占める。
メーカーによる取扱商社の絞り込みは進むが、技術提案力で顧客を守り、東京エレクトロンデバイスは生き残る側に残る。営業利益は270億円に増える。
中国の景況は揺れるが、国内と北米・アジアの産業機器が補う。会社は、中期計画の売上3,000億円台に近づく。自己資本利益率は15%台で安定し、配当を増やしながら借入も抑えられる。
- 半導体・電子部品事業(EC事業とPB事業):数量 1,278(世界半導体市場(WSTS統計、10億ドル・実質))× 価格 2.52(取扱シェア×150円×物価の倍率(市場10億ドルあたりの売上・億円))→ 売上 3,220 億円・営業利益 129 億円。WSTS市場の年率8%成長、取扱シェア比0.92倍、利益率4.0%(数量は名目の市場を物価1.34倍で割った実質)
- CN事業(ネットワーク・ストレージ・セキュリティ):数量 35,718(国内のIT基盤(セキュリティ・ネットワーク・ストレージ)の市場規模(億円・実質))× 価格 2.6%(取扱シェア×物価の倍率(市場1億円あたりの売上・億円))→ 売上 943 億円・営業利益 141 億円。国内IT基盤市場の年率4.5%成長、シェア比1.10倍、利益率15%
倍率:事業の純利益 181 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 15.04 倍、時価総額 2,722 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:産業機器の回復が続き、中期計画に近い成長を取る見方。中心より上のレンジで、実現しても不思議ではない。
中立 34% 回復は続くが、取り分は平常化する 利益 132 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 6,592 円1,944 億円
世界の半導体市場は名目で年率7%、物価分を除く実質で年4%ほど伸びる。ただ東京エレクトロンデバイスが扱うのは産業機器・車載・通信の汎用品で、AI向けの伸びは取れない。取扱シェアは今の0.82倍に下がる。製品の値段は物価並みに上がるが、シェアが下がる分、価格の指数は1.10倍にとどまる。利益率は3.3%で、今より少し上に落ち着く。
IT事業は国内市場の年率4%成長に沿って伸び、シェアは今のままだ。利益率は14%で、全社の営業利益の半分近くを占める。
営業利益は今の1.9倍の200億円になる。そのうち物価の上昇分が4割強を占める。会社は『技術力のある普通の商社』として評価が定着する10年になる。
10年の途中には、一度は半導体の谷が来る。利益は一時的に落ち込むが、IT事業が下支えして赤字にはならない。谷のあとに利益は戻るが、取扱品が広がらない分、高い成長は続かない。配当は利益の4割台で積み上がる。
- 半導体・電子部品事業(EC事業とPB事業):数量 1,165(世界半導体市場(WSTS統計、10億ドル・実質))× 価格 2.25(取扱シェア×150円×物価の倍率(市場10億ドルあたりの売上・億円))→ 売上 2,615 億円・営業利益 86 億円。WSTS市場の年率7%成長、取扱シェア比0.82倍(価格欄は0.82×物価1.34倍=1.10倍)、利益率3.3%(数量は名目の市場を物価1.34倍で割った実質)
- CN事業(ネットワーク・ストレージ・セキュリティ):数量 34,046(国内のIT基盤(セキュリティ・ネットワーク・ストレージ)の市場規模(億円・実質))× 価格 2.4%(取扱シェア×物価の倍率(市場1億円あたりの売上・億円))→ 売上 817 億円・営業利益 114 億円。国内IT基盤市場の年率4%成長、シェア比1.00倍、利益率14%
倍率:事業の純利益 132 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.0% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.25 倍、時価総額 1,881 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体市場の年率6〜8%という業種の見通しの中心に、産業機器に偏る品ぞろえと薄利の構造を組み合わせた中心の筋書き。
やや悲観 22% 取扱商社の絞り込みで、取り分が痩せる 利益 73 億円 · PER 7.6 倍 · 株価時価総額 2,337 円689 億円
世界の半導体市場は年率4%と鈍い。メーカーが取扱商社を絞り、東京エレクトロンデバイスの取扱シェアは今の0.65倍に下がる。利益率は2.3%で、価格競争で薄くなる。
IT事業も、海外ベンダーの直販が増えて伸びが鈍る。シェアは今の0.85倍、利益率は12%にとどまる。
営業利益は今の1.1倍の112億円。物価の上昇を除けば減った形で、自己資本利益率は9%を割る。配当は続くが、成長には回らない。
10年のうちに在庫調整の谷を二度経験し、そのたびに評価損が出て利益が削られる。借入が膨らんで金利負担が増え、自己株買いにも回せない。それでも営業赤字には陥らず、小さな事業として生き残る。
- 半導体・電子部品事業(EC事業とPB事業):数量 876(世界半導体市場(WSTS統計、10億ドル・実質))× 価格 1.78(取扱シェア×150円×物価の倍率(市場10億ドルあたりの売上・億円))→ 売上 1,560 億円・営業利益 36 億円。WSTS市場の年率4%成長、取扱シェア比0.65倍、利益率2.3%(数量は名目の市場を物価1.34倍で割った実質)
- CN事業(ネットワーク・ストレージ・セキュリティ):数量 30,910(国内のIT基盤(セキュリティ・ネットワーク・ストレージ)の市場規模(億円・実質))× 価格 2.0%(取扱シェア×物価の倍率(市場1億円あたりの売上・億円))→ 売上 631 億円・営業利益 76 億円。国内IT基盤市場の年率3%成長、シェア比0.85倍、利益率12%
倍率:事業の純利益73億円・ROE 7.9% は k 8.25% 以下なので、PERの上限は1÷k=10.8倍。構造的に負けが進む筋書きなので、上限の約70%の7.6倍に置いた。
確率:メーカーが取扱商社を絞る動きは実際に進んでおり、中堅が絞られる側に回る確度は低くない。業種のノートの弱めのレンジに当たる。
悲観 12% 仕入先に外され、取扱権を失う 利益 28 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 617 円182 億円
半導体メーカーが大口顧客との直接取引を広げ、取扱商社を数社に絞る。東京エレクトロンデバイスは主力の仕入先の取扱権を失い、取扱シェアは今の0.45倍まで落ちる。利益率は1.2%と、危うい水準になる。
IT事業も、海外ベンダーが直販に切り替えて縮む。シェアは今の0.7倍、利益率は8%まで下がる。
売上は今の水準を割り込む。営業利益は47億円と、今の半分弱にとどまる。在庫の評価損も重なり、評価は『縮む商社』に落ちる。
配当は利益の水準に合わせて削られ、自己資本は評価損で痩せる。経営は事業の縮小と一部の売却を迫られ、親会社の東京エレクトロンとの関係の見直しも話題になる。IT事業が何とか残る形になる。
- 半導体・電子部品事業(EC事業とPB事業):数量 964(世界半導体市場(WSTS統計、10億ドル・実質))× 価格 123.2%(取扱シェア×150円×物価の倍率(市場10億ドルあたりの売上・億円))→ 売上 1,188 億円・営業利益 14 億円。WSTS市場の年率5%成長、取扱シェア比0.45倍、利益率1.2%(数量は名目の市場を物価1.34倍で割った実質)
- CN事業(ネットワーク・ストレージ・セキュリティ):数量 28,037(国内のIT基盤(セキュリティ・ネットワーク・ストレージ)の市場規模(億円・実質))× 価格 1.7%(取扱シェア×物価の倍率(市場1億円あたりの売上・億円))→ 売上 471 億円・営業利益 38 億円。国内IT基盤市場の年率2%成長、シェア比0.70倍、利益率8%
倍率:事業の純利益28億円・ROE 3.8% は k 8.25% 以下なので、PERの上限は1÷k=10.8倍。優位を失う筋書きなので、上限の約60%の6.5倍に置いた。純有利子負債は今は小さく、現金による床の上乗せはしていない。
確率:メーカーの直接取引化と取扱商社の絞り込みが重なり、中堅が外される筋書き。起こるなら一度に進むため、低くはない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
半導体・電子部品事業(EC事業とPB事業)
海外メーカーの半導体・電子部品を産業機器・車載・通信の顧客に売る。自社ブランドの検査装置と受託開発・量産のPB事業も含む。
| 数量世界半導体市場(WSTS統計、10億ドル・実質) | 価格取扱シェア×150円×物価の倍率(市場10億ドルあたりの売上・億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 796 | 2.04 | 1,626 | 35 |
| 10 年後 中立 | 1,165 | 2.25 | 2,615 | 86 |
取り方:2026年3月期の半導体及び電子デバイス事業の売上1,625億円・セグメント利益32億円から置いた。数量は業種ノートと同じWSTSの2025年実績(約7,956億ドル)、価格は『取扱シェア約1.4%×150円』。東京エレクトロンデバイスは産業機器・車載・通信の汎用品に偏り、AI向けのロジック・メモリは主力でないため、10年の変化は『市場の伸び×シェア比の変化(0.8倍前後)』で置く。
CN事業(ネットワーク・ストレージ・セキュリティ)
欧米・イスラエルの新興ITベンダーの製品を、システム会社・データセンター事業者に販売し、保守・監視サービスも手がける。
| 数量国内のIT基盤(セキュリティ・ネットワーク・ストレージ)の市場規模(億円・実質) | 価格取扱シェア×物価の倍率(市場1億円あたりの売上・億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 23,000 | 1.8% | 412 | 65 |
| 10 年後 中立 | 34,046 | 2.4% | 817 | 114 |
取り方:2026年3月期のCN事業の売上は全社2,037億円から半導体及び電子デバイス事業1,625億円を引いた約412億円、セグメント利益65億円。国内のセキュリティ市場は約1.1兆円(IDC Japan、2024年)で、ネットワークとストレージを足した約2.3兆円は筆者の推定。取扱シェアは約1.8%。 市場の伸び年 4% は実質で置いた(名目に直すと年 5.4% 前後)。
リスクと懸念
仕入先の絞り込みで取扱権を失う
半導体メーカーは取扱商社の数を減らしている。東京エレクトロンデバイスは国内上位ではなく、絞られる側に回りかねない。主力の仕入先を一つ失えば、売上の1割単位で消える。
好況の反動と在庫評価損
棚卸資産は1,600億円を超え、自己資本の3倍にのぼる。2023年の好況後の在庫調整で、EC事業の利益は半分近くに減った。受注が厚い今ほど、先取り発注の反動は深くなる。
産業機器・車載の景気依存
顧客は通信・産業機器・車載に偏る。中国の景況感や設備投資の鈍化に左右され、AI向けのような構造的な追い風は少ない。工作機械の受注が崩れれば、EC事業の利益が一気に縮む。
借入の増加と金利上昇
売上が増えると、運転資金を借入で賄う。2026年4〜6月期は営業キャッシュフローがマイナスで、借入が増えた。金利が上がる世界では、薄い利益が利払いで削られる。
IT事業のベンダー直販化
パロアルトやクラウドストライクなどが直販を強めれば、商社の導入支援の取り分は縮む。IT事業の高い利益率が全社の下支えになっているだけに、ここが崩れると傷は大きい。
親会社との距離
東京エレクトロンが33.8%を持つ。持分法の関連会社なので経営は独立しているが、同社の方針変更や持株の動きは、需給と経営の両面で影響しうる。完全子会社化などの公表は確認できない。
今後の分かれ目
- 産業機器向けの受注残が減りはじめ、受注が売上を下回る状態が続いたら
- 好況の反動が近いとみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。在庫の評価損の規模もあわせて確認する。
- EC事業の利益率が5%を超えて数期続いたら
- 取扱品の構成が変わった可能性が高く、楽観・やや楽観の確率を上げて見直す。
- 主力の半導体メーカーが取扱商社の絞り込みを発表したら
- 取扱権の維持が最大の論点になる。外れるなら悲観に近づき、残るなら中立のままにする。
- IT事業の利益率が12%を割り込んだら
- ベンダー直販化の影響が出ているとみて、IT事業の前提と全社の価値を下げて見直す。
- 棚卸資産の自己資本に対する倍率が3倍を超えて増え続けたら
- 財務の余裕が薄れているサイン。借入の増え方と利益の伸びを比べて、悲観側の確率を上げる。
- 東京エレクトロンが持株の売却や買い増しを発表したら
- 支配関係の変化は、需給と経営の両面で効く。内容を確かめてから、資本政策の見方を見直す。
見ておくもの
- EC事業の受注高・受注残と、売上との差
- EC事業の営業利益率(4%台が続くか)
- IT事業の売上成長率と利益率(15%前後を保つか)
- 棚卸資産と借入の増え方
- 仕入先メーカーの取扱商社の絞り込みの動き
- 世界の半導体市場の見通し(産業機器・車載向けの出荷)
倍率と資本コストの決め方
世界半導体市場は、業種ノートの名目の年率を物価の倍率1.34で割った実質を数量に置き、物価は価格の側にだけ入れた(二重に数えない)。世界の半導体市場(WSTSの2025年実績)と国内のIT基盤市場に、東京エレクトロンデバイスの取扱シェアを掛けて売上を積み、物価3%は価格の側に入れた。倍率は資本コスト8.25%(基本7.5%に品質1.75%)、長期成長4%、堀は普通から、利益ベースの正当化PERを出し、楽観〜中立は上限の約9割に置いた。今のPER約18倍(2026年3月期)にも、2027年3月期予想の約15倍にも寄せていない。悲観側は構造的な負けから出し、谷のPBRは使っていない。賃借は事務所中心で、新リース会計基準で数字の形が変わる点は、10年後も今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.1→16.09 倍・やや楽観 PER 11.2→15.04 倍・中立 PER 10.9→14.25 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質を足した(決まりv2)。個別の事情は筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.25%。