結論
ウイン・パートナーズは、心臓や血管のカテーテル治療に使う機器を病院へ届ける独立系の医療機器商社だ。ペースメーカー、不整脈のアブレーション機器、ステントなど、手術室で使う道具を、メーカーから仕入れて納める。
筆者の結論は、今の値段はやや割安というものだ。営業利益率は 3% 台と薄いが、設備も在庫も軽い。少ない自己資本で利益を回せる。手元の現金は時価総額の 4 割強もある。
追い風は、不整脈の治療の広がりだ。アブレーションは国内で年 12 万件を超え、2024 年に新方式の保険適用も始まった。前期はペースメーカーとアブレーション関連が 22% 伸びた。
逆風は、国が決める償還価格だ。改定のたびに販売価格が削られ、前期は売上総利益率が 0.4 ポイント下がった。仕入れ先のメーカーが販売網を組み替えるリスクも常にある。
10 年で見る中立は、売上が 1,400 億円台、営業利益が 50 億円ほどになる姿だ。利益の伸びは売上より少し遅いが、配当と自社株買いで株主へ多く返す。会社の ROE 目標 15% に近い水準が続く、と筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「地味だが資本が軽い事業」の部類に入る。
条件の一つめは、少ない元手で利益が出ることだ。設備投資は年 4 億円ほど、在庫は軽い。営業利益率は薄くても、自己資本あたりの利益は 10% 近くある。余った現金を除けば、事業の資本利益率はずっと高い。
二つめは、利益が将来も続くことだ。心臓の治療は、高齢化で息の長い需要がある。ただし、価格は国に決められ、仕入れ先の方針ひとつで取扱高が動く。その二つが、確信を下げる。
三つめは、経営が資本を賢く使うことだ。借金を持たず、余った現金は株主に返している。買収は小さく、のれんも軽い。この点は評価できる。
本質価値は、10 年後の営業利益 50 億円前後と、現金の厚さで測る。売上が伸びても利益率は上がらない前提だ。筆者は、そこに多少の安全域が残ると見る。今の値段は、中立の価値を下回る。悲観で資産の半分が失われても、現金と流動資産が下を支える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、手術室で使う機器を、必要な時に必要な場所へ届ける仕事にある。メーカーから仕入れて病院へ売り、差額が粗利になる。
売上は 904 億円(2026 年 3 月期)。内訳は、ペースメーカーとアブレーションの不整脈関連が 28%、狭心症や心筋梗塞のカテーテルが 22%、心臓外科が 17%、末梢血管と脳外科が 10%。残りは糖尿病機器などの医療機器関連と汎用品だ。
営業は、手術に立ち会って機器の使い方を支える。医師が選ぶ機器を、すぐ使える状態で用意するのが付加価値になる。取引先は、メーカー 87 社と病院 465 施設にのぼる。
利益率は薄い。売上総利益率は 11.8% で、そこから販管費を引いた営業利益率は 3.3% だ。販管費の中心は人件費。人手不足で給与が上がり、費用は売上より速く増えている。
新しい収益源も育てている。機器の所在を一元管理するクラウドサービスと、主要材料の管理システムだ。月額で入るため、手術件数に左右されにくい。導入は合わせて 140 施設ほどで、今期中に 300 施設へ広げる計画だ。
M&A も使う。首都圏のウイン・インターナショナルと東北のテスコが核で、買収で東北から北海道までエリアを広げてきた。2026 年 1 月には函館のプラステンメディカルを加えた。
優良さと弱いところ
優良さの核は、手術の現場に入り込んだ営業の力と、メーカーとの長い関係にある。
強みは三つある。一つめは機器の知識だ。新しい治療機器は使い方が難しく、メーカーは販路に専門の営業を求める。二つめは広い取り扱いだ。ステント、カテーテル、ペースメーカーなど、一人の医師の注文をまとめて受けられる。三つめは身軽さだ。借入はなく、現金が厚い。
弱みもはっきりしている。値段を自分で決められない。償還価格は国が決め、改定のたびに下がる。前期の売上総利益率は、前期から 0.4 ポイント下がった。
メーカーの立場が強いことも見ておく。仕入れ先が販売網を組み替えたり、自社の営業で直販に切り替えたりすれば、取扱高が一気に動く。上位 2 社の販売先で売上の 2 割強を占める点も偏りだ。
経営は資本の使い方に誠実だ。前期の総還元は純利益の 1.4 倍に近く、現金をためこまない姿勢が出ている。一方で、買収は小さな会社が中心で、成果が数字に出るまで時間がかかっている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の心臓治療は、高齢化に合わせて件数が緩やかに増える分野だ。件数が目立って伸びているのは、不整脈のカテーテルアブレーションで、2024 年に年 12 万件を超えた。
治療の技術も変わっている。2024 年 9 月に、電気パルスで組織を焼かずに処理する新方式が心房細動に保険適用された。前期、同社の不整脈関連が 22% 伸びた背景にある。心臓の弁を治す治療や、心臓を支える補助ポンプも伸びている。狭心症のカテーテルは件数が横ばいで、薬剤をぬった風船などの高い機器へ置き換わっている。
値段は逆風だ。医療材料の償還価格は 2 年に 1 度改定される。2026 年 6 月の改定は全体で 0.1% の引き下げだが、会社は自社の売上に 1.2% の影響があると見ている。診療報酬は 30 年ぶりの高い水準で引き上げられ、病院の経営には追い風だ。
競争は、独立系や大手卸、メーカーの子会社が入り混じる。病院が値引きを求め、メーカーも自社の営業を持つ。再編は進みやすい。
この市場は人口減に強い。病気は高齢者に集中するためだ。ただし、件数の伸びは 2040 年ごろに頭打ちになる。
資本政策と M&A
資本政策の軸は、配当と自社株買いを両方出すことだ。前期の配当総額は 15 億円ほどで、純利益の約 7 割にあたる。自社株買いに 14 億円を使い、総還元は純利益を上回った。
会社は ROE 15% 以上を中期の目標に置く。実績は 8.9% で、手元の現金が厚いために数字が伸びない。それを戻すことで ROE を上げる、というのが会社の意図と読める。今期の配当も増える見込みだ。
借入はなく、リース債務が 7 億円ほどある。現預金は 159 億円で、そのうち 50 億円は 3 か月を超える定期預金だ。
M&A は継続している。2017 年にテスコ秋田販売、2018 年にエムシーアイ、2022 年にトーセイメディカル、2023 年にトライテック、2026 年にプラステンメディカルを加えた。いずれも小さく、地域の網を埋める買収だ。会社は「業界再編の促進」を戦略に掲げる。
大株主には法人と個人が並ぶ。筆頭の法人が 25.75%、運用会社のフィデリティが 9.73% を持つ。筆頭株主の持分が大きいため、TOB は買い手に条件が合わなければ成立しにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
不整脈の治療は、新方式の保険適用でこれからが本番だ。前期の不整脈関連は 22% 伸びた。使う機器の単価が高く、1 件あたりの売上が上がる。弁の治療や補助ポンプも伸びる。
売上は今期 1,000 億円の大台に乗る計画で、営業利益は 2019 年 3 月期の最高益を超える見込みだ。物流の自動化で商品を一括管理し、人手の負担も減る。クラウドサービスの月額収入が積み上がれば、利益率も戻る。
会社は ROE 15% を掲げ、現金を戻している。実行の力は、自社株買いと配当の実績が示す。小さな買収で北海道まで広げ、再編の中心になれる。メーカーの新製品が出るたびに、使い方の支援を担う同社の価値は上がる。
現金が厚く、借入がない。景気の波もなく、需要は高齢化で底堅い。この財務の安全と成長が並ぶ会社は少ない。
利益が増え始めた段階で、現金の厚さはそのまま株主への還元余力になる。市場が割り引いているのは、価格改定への不安だけだ。
慎重な見方
利益率は 10 年で下がってきた。2016 年 3 月期に 5.5% あった営業利益率が、直近は 3.3% だ。売上が増えても、利益が追いつかない。
価格は国が決める。償還価格の改定は避けられず、病院も値引きを迫る。仕入れ先は値上げを要請してくる。間に挟まれた商社の取り分は、構造的に削られる。
仕入れ先の動きも危うい。メーカーが販売網を組み替えたり、直販に切り替えたりすれば、取扱高は一気に動く。上位 2 社の販売先に売上の 2 割強が集まる点も弱い。
営業は人の力で、人件費は物価で上がる。人手不足で採用費も重い。クラウドサービスは立ち上がりで、利益に出ていない。
過去 10 年の ROE は 9% が中央で、会社が掲げる 15% には一度も届いていない。計画の達成実績が乏しいまま、高い収益性を前提にするのは危うい。
現金の厚さは安心材料に見えるが、使い道が買収に向かえば価値を壊しうる。小さな買収が続くほど、統合の失敗が積み重なる心配も出てくる。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、新方式の治療が広がるという足元の事実に支えられている。慎重な言い分は、利益率が 10 年かけて下がってきた実績に支えられている。利益の伸びを売上より遅く置き、強気に倒れすぎないようにした。
確率は中立に最も厚く置いた。やや楽観よりやや悲観をわずかに薄くし、悲観は構造的な負け筋として 1 割に置いた。現金の厚さが下を支えるため、悲観の深さは限られる。
結論は、値付けはやや割安に寄る。ただし、利益率の戻りは見込まない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,664 円733 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 902 円248 億円)。 今の値に割り戻すと 1,921 円528 億円、今との差 +54.6%、 期待の年率 +11.1%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,838 円1,330 億円 | 1,280 円352 億円 | +392.6% | +17.3% | 612 円168 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,616 円994 億円 | 1,066 円293 億円 | +276.9% | +14.2% | 1,030 円283 億円 |
| 中立 | 38% | 2,900 円797 億円 | 935 円257 億円 | +208.7% | +11.9% | 1,457 円401 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,118 円308 億円 | 731 円201 億円 | +48.9% | +4.1% | 370 円102 億円 |
| 悲観 | 10% | 593 円163 億円 | 378 円104 億円 | −21.8% | −2.4% | 97 円27 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,664 円733 億円 | 902 円248 億円 | +187.1% | +11.1% | 3,566 円980 億円 |
今の株価時価総額 1,242 円342 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 新方式の治療が定着し、再編の中心になる 利益 55 億円 · PER 23.2 倍 · 株価時価総額 4,838 円1,330 億円
不整脈のアブレーションが年 18 万件へ広がり、同社の納入手技は実質で 55% 増える。弁の治療と補助ポンプも伸び、高単価の機器へ移る分で 1 件あたりの納入額は 18% 上がる。
東北から北海道へ広げた網を足場に、近隣の中小商社を次々に取り込む。業界再編の受け皿になり、取引病院は 45% 増える。
クラウドの月額収入が積み上がり、物流の自動化も実り、営業利益率は 4.5% まで戻る。2016 年の最高水準(5.5%)には届かない。
売上は 1,690 億円、営業利益は 76 億円。ROE は 20% を超え、配当と自社株買いで株主へ厚く返す。
- 循環器カテーテル・デバイス(不整脈・虚血・心臓外科・末梢血管):数量 15.6(納入手技の件数(万件・推定))× 価格 83(手技 1 件あたりの納入額(万円・名目))→ 売上 1,285 億円・営業利益 58 億円。手技 1.55 倍。償還価格の引き下げ(約 −6%)を、高単価の機器への移行 +26% が上回り 1.18 倍
- 医療機器関連・その他(糖尿病機器・汎用品・クラウドサービス):数量 674(取引病院の数(施設))× 価格 6,063(1 施設あたりの売上(万円・名目))→ 売上 409 億円・営業利益 18 億円。病院 1.45 倍、価格は物価 1.34 倍に新サービスで 1.045 倍
倍率:事業の純利益 54 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 35.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 21.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 23.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 23.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)85 億円。全体の PER 23.23 倍、時価総額 1,330 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:不整脈・弁の治療の伸び、クラウドの月額収入、小さな買収の成功が同時に出る必要がある。条件が重なるので 1 割に置いた。
やや楽観 22% 不整脈の伸びが続き、利益率が少し戻る 利益 43 億円 · PER 21.8 倍 · 株価時価総額 3,616 円994 億円
不整脈と弁の治療が伸び、手技は実質で 45% 増える。償還価格の引き下げを、高単価の機器への移行が上回り、1 件あたりの納入額は 14% 上がる。
小さな買収を重ね、取引病院は 3 割増える。糖尿病機器とクラウドも育つ。
営業利益率は 3.9% まで戻る。物流の自動化と月額収入の効果が出る形だ。売上は 1,520 億円、営業利益は 59 億円。
ROE は 17% を超える。配当と自社株買いを続け、現金は薄いまま保つ。
悲観材料は残る。償還価格の改定は続き、仕入れ先との価格交渉も楽にはならない。それでも、手技の増加が価格の逆風を上回る姿だ。
- 循環器カテーテル・デバイス(不整脈・虚血・心臓外科・末梢血管):数量 14.6(納入手技の件数(万件・推定))× 価格 80(手技 1 件あたりの納入額(万円・名目))→ 売上 1,161 億円・営業利益 45 億円。手技 1.45 倍。償還価格の引き下げ(約 −6%)を、高単価の機器への移行 +21% が上回り 1.14 倍
- 医療機器関連・その他(糖尿病機器・汎用品・クラウドサービス):数量 604(取引病院の数(施設))× 価格 5,933(1 施設あたりの売上(万円・名目))→ 売上 358 億円・営業利益 14 億円。病院 1.30 倍、価格は物価 1.34 倍に近い 1.37 倍
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 26.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)85 億円。全体の PER 21.8 倍、時価総額 994 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元で起きている伸びが続く姿。ただし、価格改定の逆風があり、中立より薄い 2 割台に置いた。
中立 38% 中立:治療の伸びは続くが、価格が利益率を抑える 利益 36 億円 · PER 20.6 倍 · 株価時価総額 2,900 円797 億円
不整脈のアブレーションが伸び、弁と末梢血管の治療も増える。手技は実質で 4 割増える。償還価格は改定のたびに下がるが、高単価の機器への移行が相殺し、1 件あたりの納入額は 12% 上がる。
取引病院は 25% 増える。買収と新サービスの寄与だ。人件費と物流費は物価で上がり、営業利益率は 3.4% と今の水準にとどまる。
売上は 1,440 億円、営業利益は 49 億円になる。会社の 2028 年 3 月期の計画(売上 1,100 億円、営業利益 37 億円)の延長にあたる。
ROE は 14% 台で、配当と自社株買いは利益の 9 割ほどを占める。
- 循環器カテーテル・デバイス(不整脈・虚血・心臓外科・末梢血管):数量 14.1(納入手技の件数(万件・推定))× 価格 78(手技 1 件あたりの納入額(万円・名目))→ 売上 1,102 億円・営業利益 38 億円。手技 1.40 倍。価格は償還価格が国の決定で物価に連動せず、改定ごとの自社売上 −1.2%(10 年で約 −6%)を、高単価の機器への移行 +17% が相殺して 1.12 倍
- 医療機器関連・その他(糖尿病機器・汎用品・クラウドサービス):数量 581(取引病院の数(施設))× 価格 5,804(1 施設あたりの売上(万円・名目))→ 売上 337 億円・営業利益 12 億円。病院 1.25 倍、価格は物価 1.34 倍
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)85 億円。全体の PER 20.64 倍、時価総額 797 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新方式の広がりと価格改定の逆風が打ち消しあい、利益率は今の水準を保つ。最も起こりやすい形として最も厚く置いた。
やや悲観 20% 価格改定が重く、利益は今の水準にとどまる 利益 21 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 1,118 円308 億円
償還価格の引き下げが続き、病院の値引きも強まる。手技は実質で 15% しか増えず、1 件あたりの納入額は 2% 上がるにとどまる。
人件費は物価で上がり、営業利益率は 2.6% に下がる。売上は 1,090 億円だが、営業利益は 28 億円と今の水準に近い。
名目の利益は変わらず、実質では目減りする。買収も止まり、取引病院は 5% しか増えない。
ROE は 9% 台。配当は続けるが、自社株買いは細る。
この筋書きでは、会社が掲げる ROE 15% の目標は遠のく。株主への還元も純利益の範囲にとどまり、現金は使い道を失ったまま積み上がる。
- 循環器カテーテル・デバイス(不整脈・虚血・心臓外科・末梢血管):数量 11.5(納入手技の件数(万件・推定))× 価格 71(手技 1 件あたりの納入額(万円・名目))→ 売上 824 億円・営業利益 21 億円。手技 1.15 倍。償還価格の引き下げ(約 −8%)を、機器の移行 +11% がわずかに上回り 1.02 倍
- 医療機器関連・その他(糖尿病機器・汎用品・クラウドサービス):数量 488(取引病院の数(施設))× 価格 5,414(1 施設あたりの売上(万円・名目))→ 売上 264 億円・営業利益 7 億円。病院 1.05 倍、価格は物価 1.34 倍に届かず 1.25 倍
倍率:事業の ROE は 14% で、k 7.5% を超えるため、目安は 1÷k の 12.9 倍の近く。価格改定が重く利益の質が弱い筋書きなので 12 倍に置く。余った現金は書かないので今の 0.75 倍(約 64 億円)を足す。
確率:償還価格の引き下げが強まり、病院の値引きも続く姿。利益率が 10 年かけて下がってきた実績があり、2 割に置いた。
悲観 10% 悲観:主要メーカーの販売網が組み替わり、取扱高が落ちる 利益 8 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 593 円163 億円
上位メーカーが販売網を組み替え、同社の取扱いが外れる。直販へ移る製品が増え、手技は実質で 15% 減る。病院の値引きも重なり、1 件あたりの納入額は 5% 下がる。
営業の人員と物流の費用は残り、営業利益率は 1.2% まで落ちる。売上は 800 億円、営業利益は 10 億円にとどまる。
買収は止まり、現金は不測の備えに残る。配当は減るが、赤字までは落ちない。
人員を絞っても、手術の立ち会いの体制は維持が必要で、固定費は下がりにくい。取引病院も、メーカーの直販へ流れて数が減る。
利益の稼ぐ力は値にならず、流動資産から負債を引いた手元の資産が価値の支えとなる。
- 循環器カテーテル・デバイス(不整脈・虚血・心臓外科・末梢血管):数量 8.5(納入手技の件数(万件・推定))× 価格 66(手技 1 件あたりの納入額(万円・名目))→ 売上 567 億円・営業利益 7 億円。手技 0.85 倍。償還価格の引き下げ(約 −8%)と病院の値引きで 0.95 倍
- 医療機器関連・その他(糖尿病機器・汎用品・クラウドサービス):数量 442(取引病院の数(施設))× 価格 5,197(1 施設あたりの売上(万円・名目))→ 売上 230 億円・営業利益 3 億円。病院 0.95 倍、価格は物価 1.34 倍に届かず 1.20 倍
倍率:ROE 3% 台で k 7.5% 以下。稼ぐ力(純利益 8 億円 ÷ k = 105 億円)より、売れる資産のほうが大きいので、今の自己資本 232.9 億円に 0.70 倍を掛ける。
確率:代理店契約の変更や直販への切り替えは医療機器商社で現実に起きる構造的な負け筋。起きると深いので 1 割に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
循環器カテーテル・デバイス(不整脈・虚血・心臓外科・末梢血管)
ペースメーカー、アブレーション機器、ステント、心臓外科用機器などを病院に納め、手術の立ち会いと使い方の支援まで担う中核事業。
| 数量納入手技の件数(万件・推定) | 価格手技 1 件あたりの納入額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 70 | 703 | 24 |
| 10 年後 中立 | 14.1 | 78 | 1,102 | 38 |
取り方:不整脈 253.7 億、虚血性心疾患 201.4 億、心臓外科 154.3 億、末梢血管・脳外科 93.2 億の合計 702.5 億円。手技 1 件の機器代の平均を 70 万円と仮置きし、件数 10.04 万件を逆算した(開示なし。国内のアブレーションは年 12 万件超、そのほか手技を合わせた国内総数の約 2 割にあたる)。営業利益は非開示のため全社の利益率 3.3% を按分。価格は償還価格が物価に連動しないことと、高単価の機器へ移る変化を価格に入れる。数量は実質(件数)。
医療機器関連・その他(糖尿病機器・汎用品・クラウドサービス)
糖尿病機器、汎用の医療材料、機器管理のクラウドサービスなどを、取引のある病院に納める事業。
| 数量取引病院の数(施設) | 価格1 施設あたりの売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 465 | 4,331 | 201 | 7 |
| 10 年後 中立 | 581 | 5,804 | 337 | 12 |
取り方:医療機器関連 84.1 億円とその他 117.3 億円の合計 201.4 億円。取引病院は 465 施設(会社の中計ページ)で、1 施設あたり約 4,331 万円。営業利益は全社の利益率 3.3% を按分。汎用品は物価に連動して値上がりしやすく、価格は物価並みとする。数量は取引病院数(実質)。
リスクと懸念
償還価格の改定と病院の値引き
医療材料の償還価格は 2 年ごとに改定され、下がるのが常だ。2026 年 6 月の改定は会社の売上に 1.2% の影響を見込む。病院は値引きを求め、メーカーは値上げを要請する。間に挟まれた商社の取り分は削られやすい。
メーカーの販売網の組み替え
代理店契約が切り替わったり、メーカーが直販に移ったりすれば、取扱高が一気に動く。上位の仕入れ先ほど影響は大きい。契約の中身は開示されず、外から見えにくい点が怖い。
販売先の偏り
上位 2 社の販売先で売上の 2 割強を占める。どちらかが取引先を絞れば、売上と利益に直接響く。取引は長いが、契約の保証はない。
人件費と物流費の上昇
営業は人の力で成り立つ。人手不足で給与と採用費が上がる。前期の販管費は 7.8% 増え、売上総利益の伸びを上回った。価格に転嫁できなければ、利益率はさらに下がる。
買収が成果を生まない
小さな買収を続ける方針だが、統合の効果が数字に出るまで時間がかかる。前期は買収関連費用で経費が増えた。大型の買収に踏み込めば、財務の身軽さが損なわれる。
筆頭株主の持分と TOB の可能性
筆頭の法人が 25.75% を持つ。TOB は成立の条件が難しい。一方、筆頭株主の意向で資本政策が動く余地があり、少数株主は決定に関われない。
AIによる営業の代替
営業日報の解析など、提案支援は AI で効率化できる。ただし手術の立ち会いは人にしかできず、置き換わりにくい。費用が下がる分は病院の値引きに回る可能性がある。
今後の分かれ目
- 償還価格の改定が連続して大幅な引き下げになる
- やや悲観の確率を上げる。売上総利益率が 11% を割れば、営業利益は 25 億円台へ戻りうる。
- 主要メーカーが代理店契約を他社へ切り替える、または直販へ移る
- 悲観の確率を大きく上げる。取扱高の 1 割が動けば、営業利益の 3 割が消える。
- クラウドサービスの導入が 300 施設を超え、月額収入が売上の 2% を超える
- やや楽観の確率を上げる。利益率の底上げに効く。
- 売上総利益率が 12% を超えて戻る
- 楽観側の確率を上げる。価格交渉とシェア管理が実を結んだ証拠になる。
- 大型の買収を発表し、現金を使い切る
- 余った現金の評価を下げる。買収額と得られる利益の比で判断する。
- 筆頭株主や運用会社の持分が大きく動く
- TOB や再編の可能性が高まる。値付けは本質価値と別になるが、現金化の機会が生まれる。
見ておくもの
- 売上総利益率(12% 台の維持)
- 不整脈関連の伸び(前期 22% 増)
- 償還価格の改定幅と会社の見込み
- クラウドサービスの導入施設数(今期末の目標 300 施設)
- 自社株買いと配当の総額(純利益の 1 倍前後)
- 販売先・仕入れ先の変更の開示
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。k 7.5%(quality +0.25)、g 4%、堀は普通。事業の ROE は余った現金を除いて 20% を超え、正当化 PER は 19 倍台になる。価格が国に決められる質の弱さと利益率の薄さから、上限の約 75% の 14.5 倍に置いた。今の PER や株価は見ていない。今の PER が高いのは、使わない現金が自己資本に厚く乗っているためで、倍率の根拠にはしていない。営業利益の按分、手技 1 件の単価 70 万円は推定で、開示は無い。賃借の約束はリース債務 7 億円と小さく、日本基準の新リース会計基準(2028 年 3 月期から)でも数字の形はほぼ変わらない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 17→23.23 倍・やや楽観 PER 15.3→21.8 倍・中立 PER 14.5→20.64 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。