結論
極東貿易は、地震計や重電機器、ステンレスベルト、塗料、精密ねじなどを国内外へ売る専門商社だ。売上は645億円、営業利益は26億円。取り扱いは産業設備、産業素材、機械部品の三つに分かれる。
筆者の結論は、今の値段はやや高いというものだ。会社は2029年3月期に営業利益35億円を掲げるが、営業利益率は4%で、すでに過去最高の水準にある。ここからさらに利益率を上げるには、防衛や防災などの高い収益の案件が育つか、買収が当たる必要がある。
救いは資産の厚さだ。純現金が54億円、取引先の株の含み益も大きく、自己資本は時価総額を上回る。だが、資産は厚くても稼ぐ力が弱いと、そのまま株価の価値にはならない。自己資本利益率は過去10年の中央値で5%に届かず、資本コストを下回り続けてきた。
2022年から3年間は配当性向100%と特別配当を実施し、株主へ現金を返す姿勢を見せた。今は性向50%を目安に、減配しない方針だ。この姿勢が続けば、現金の価値は目減りしない。筆者は、中計の目標が達成されても、値段は適正に近いと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、極東貿易は「資産は厚いが、稼ぐ力が資本コストに届かない」会社だ。
事業の本質は、メーカーと顧客の間の技術商社である。防災や防衛のように、国の政策が続く限り需要が見込める分野に強い。ただし、全体の利益率は4%で、売上の半分以上は薄利の取引だ。
オーナー利益、つまり再投資を引いた株主のものになる利益は、設備投資が少ないので純利益に近い。しかし純利益には、保有株や持分法といった営業外の利益が混ざる。営業の本業だけで見ると、稼ぐ力はもう少し小さい。
経営は、過去の配当性向100%や、割安な買収の選び方など、資本配分に前向きな面がある。ROEの目標を8%に引き上げたのも評価できる。ただし、実績はまだ追いついていない。
安全域は、純現金と取引先の株の評価益が支える。悲観の筋書きでも、これらが下値を支える。ただし、10年後に収益力が上がらなければ、資産は厚くても価値は増えない。
何で稼ぐ会社か
極東貿易は、輸出入と国内販売の両方を手がける専門商社で、取り扱いは三つの部門に分かれる。2026年3月期の売上は産業素材が280億円、機械部品が201億円、産業設備が165億円だ。
産業設備部門は、地震・振動の計測機器、洋上風力の調査、重電機器、航空宇宙・防衛機器などを扱う。官公庁向けの地震計や、鉄道の保守点検、海外のプラント向けの重電機器が主力で、営業利益率は7%と三部門で最も高い。持分法を使うABB日本ベーレーなども、この領域に連なる。
産業素材部門は、高機能ステンレスベルト、重防食塗料、樹脂材料、接着剤、免震装置関連を扱う。2024年に子会社にした三幸商会(樹脂材料と成形機の商社)が通期で入り、売上が4割増えた。利益率は2%台と低く、薄利多売の商売だ。
機械部品部門は、精密ねじ(ファスナー)、特殊ばね、船舶の補修部品を扱う。自動車や住宅設備向けが多く、中国・東南アジアの自動車市場の停滞で伸び悩んだ。特殊ばねは構造改革で収益が改善している。
輸出入と外国間取引が売上の約5割を占める。米国やタイなどに海外子会社を持つ。連結従業員は659人。
優良さと弱いところ
極東貿易の優良さは、特定の分野で長年の取引関係を持つ点にある。ただし堀、つまり他社がまねできない強みは、普通かやや弱い。
良い点は、地震計や防衛機器のように、官公庁や大手メーカーが相手の分野で信頼を積んでいることだ。こうした案件は、一度入ると長く続く。藤倉化成やニレコとの関係も、長い付き合いの取引先との連携だ。
悪い点は三つある。第一に、全体の営業利益率が4%と低く、取扱い商品の多くが他社と競合する。第二に、売上の5割が輸出入と外国間取引で、為替や関税政策に揺れる。第三に、利益のうち、保有株の評価益や持分法の利益、負ののれん益といった営業の外の利益の比重が大きい。純利益が営業利益を上回る年も多かった。
資本の使い方は、近年は改善している。ROEは過去10年の中央値で4.8%と低かったが、中計でROE8%以上を目標に掲げた。配当性向100%の時期もあり、株主への姿勢は前向きだ。買収は三幸商会など小型で、負ののれんが出るような割安な案件を選んでいる。
筆者は、堀は普通、収益の質はやや劣ると判断する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
極東貿易の収益は、防災・防衛・エネルギーといった国の政策に近い需要と、自動車・住宅の市況という二つの顔を持つ。
政策に近い分野は追い風だ。防衛費の増額、地震や台風への備え、洋上風力などのエネルギー投資は、10年単位で続く見込みである。地震計や重電機器は、この恩恵を受けやすい。中計でも防災、防衛、エネルギー、モビリティ、半導体の5分野に重点を置く。
一方、素材と部品は景気に連動する。精密ねじは中国・東南アジアの自動車市場の停滞と、北米の住宅設備の不振で伸び悩んだ。米国の関税政策が輸出入の取引を直撃するおそれもある。
専門商社は国内に数百社あり、競争は分散的だ。メーカーが直接販売に切り替える動き、いわゆる中抜きが長期の最大の脅威である。生き残る商社は、技術の説明、輸入手続き、在庫、海外の拠点といった機能を提供できる会社に限られる。
10年後の見方はこうだ。設備部門の案件は増えるが、素材と部品は取引先がほぼ横ばいで、物価の分だけ売上が増える。利益率を左右するのは、薄利の取引をどれだけ高収益の案件に入れ替えられるかである。三幸商会のような買収で取扱商材を広げ、既存の取引先に別の商品を売る動きも続く。
資本政策と M&A
還元の方針は、原則として減配しない進歩的配当で、一時的な損益を除いた調整後の純利益に対して配当性向50%を目安とする。2026年3月期の配当総額は約9億円を予定する。2022年3月期からの3年間は、配当性向100%に特別配当を加える異例の還元を行った。
純現金は54億円で、時価総額の26%に当たる。この会社は輸出入が多く、納品が3月に集中するので、運転資金が大きい。買収の余力も必要なので、余りと見るのは約20億円にとどめた。過去に現金を返した実績があるため、戻り方は満額とみる。
中計では3年間で50億円以上をM&Aなどに使う。前の計画ではTWD Japan、三幸商会、ウエルストンの3社を買収した。三幸商会では負ののれんが出ており、割安に買う目利きは評価できるが、のれんが重くなるリスクもある。
政策保有株はニレコ、藤倉化成など取引先の株が中心で、毎年取締役会で見直す。配当は利益に入っているため、価値としては別に足さない。
株主優待は有価証券報告書に記載がない。賃借の負担は小さい。kabufuの試算では10年以内の買収・TOBの確率は29%と高い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
防衛費の増額、地震への備え、洋上風力といった国の政策は、10年単位で続く。極東貿易は、地震計や重電機器、航空宇宙・防衛機器でこの流れの中心にいる。産業設備部門の利益は、すでに一年で14%増えた。
中計では2029年3月期に営業利益35億円を掲げる。前の計画では、経常利益の目標19億円に対し、実績は28億円と大きく上回った。目標を達成する実力は実証済みだ。
三幸商会など買収した会社が通期で寄与し、素材部門の利益は4倍以上に増えた。M&Aの枠は3年で50億円以上あり、割安な会社を探せる。
それに自己資本は時価総額を上回り、純現金も厚い。ROE8%の目標に向けて自社株買いを行えば、株主価値は上がる。買収や大株主の動きも十分ありうる。10年国債が3%になる世界では、現金は2%で回り、純現金の利息だけでも利益が増える。加えて、三幸商会のように、割安で取得して利益を生む買収の実績もある。株主還元を強める余地が大きい会社だ。
慎重な見方
営業利益率4%は、すでに過去最高だ。過去20年のうち赤字の年が3回あり、利益率の安定性は低い。10年後にこの水準を保てる保証はない。
売上の半分以上は素材と部品の取引で、利益率は2〜4%と薄い。自動車や住宅の市況に左右され、中国・東南アジアの停滞も続いている。米国の関税政策は、輸出入取引を直撃する。
純利益には、保有株の評価益や持分法の利益、負ののれん益といった営業外の利益が混ざる。2025年3月期の純利益37億円のうち、21億円は負ののれん益だった。本業の稼ぐ力は、見た目より小さい。
ROEは過去10年の中央値で4.8%と、資本コストを大きく下回ってきた。目標のROE8%も、資本コストと同程度にすぎない。資産が厚くても、稼ぐ力が低ければ、その資産は価値にならない。株主資本を使い切れていない点が最大の弱みである。退職給付債務や在外子会社の経費増も、じわじわと利益を削っている。売上の3月への偏りも大きく、期末の納期ずれ一つで決算が揺れる。買収を続ければ、のれんの償却と減損という新しい重荷も加わる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。政策に近い分野の追い風は本物だが、利益率はすでに過去最高の水準で、これ以上の上積みには買収の成功が要る。ROEが資本コストを下回る状態が長く続いており、資産の厚さを評価に足し上げるのは危うい。確率は中立に38%を置き、強気側を27%、慎重側を35%とした。強気の言い分である政策の追い風は、すでに設備部門の利益に表れている。慎重な側の指摘する営業外の益の混入と低いROEは、数字で確かめられる事実だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,502 円296 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 979 円116 億円)。 今の値に割り戻すと 1,825 円216 億円、今との差 +4.5%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,656 円550 億円 | 1,447 円171 億円 | +249.5% | +13.3% | 427 円50 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,559 円421 億円 | 1,235 円146 億円 | +174.6% | +10.6% | 959 円113 億円 |
| 中立 | 38% | 2,943 円348 億円 | 1,041 円123 億円 | +128.2% | +8.6% | 1,514 円179 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,163 円138 億円 | 736 円87 億円 | +8.8% | +0.8% | 475 円56 億円 |
| 悲観 | 10% | 547 円65 億円 | 508 円60 億円 | −39.6% | −4.9% | 105 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,502 円296 億円 | 979 円116 億円 | +99.3% | +7.1% | 3,480 円411 億円 |
今の株価時価総額 1,746 円206 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 防衛・防災の案件が大きく育ち、買収も当たる 利益 39 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 4,656 円550 億円
防衛費の増額と地震・エネルギー投資が10年続き、産業設備の納入案件が年700件へ増える。1件あたりの規模も、洋上風力や重電機器の大型化で物価を超えて伸びる。素材と部品も、買収した会社が取引先を広げ、取引先数がそれぞれ1割以上増える。営業利益率は連結で4.9%まで上がり、過去最高の4.0%を超える。これは高収益の防衛・防災案件の比率が上がり、買収の相乗効果が出た場合に限る。還元は純利益の6割まで厚くなる。ただし、仕入先や主要な顧客の方針が10年間変わらないことが前提だ。買収は防衛や半導体の部材商社を中心に3〜4社を加え、のれんの減損は小さくとどまる。現金は買収で減る分を利益で補い、純現金は今の水準を保つ。
- 産業設備関連部門:数量 700(年間の納入案件数(件))× 価格 46(1件あたり売上(百万円))→ 売上 323 億円・営業利益 26 億円。利益率8.0%
- 産業素材関連部門:数量 1,550(取引先数(社))× 価格 2,814(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 436 億円・営業利益 13 億円。利益率2.9%
- 機械部品関連部門:数量 1,200(取引先数(社))× 価格 2,482(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 298 億円・営業利益 13 億円。利益率4.4%
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 13.59 倍、時価総額 550 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防衛・防災の需要が10年続き、3年で50億円以上の買収が複数当たる必要がある。利益率が過去最高をさらに上回るので、重い条件で7%にとどめる。
やや楽観 20% 政策分野が着実に伸び、買収が数件うまくいく 利益 32 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,559 円421 億円
防災・防衛の案件が着実に増え、納入案件は650件に達する。素材は三幸商会の商材の拡大で取引先が増え、部品は自動車市況の回復で伸びる。営業利益率は連結で4.4%と、過去最高を少し上回る。配当性向は58%に高まり、自社株買いも行われる。素材部門の三幸商会は樹脂の成形機まで扱う強みを活かし、取引先が増える。米国の関税は一時の逆風だが、10年を均せば吸収できる。中計の目標35億円を超え、10年後に40億円台に乗せる。ただし利益率の上昇は小幅にとどまり、素材と部品の薄利は変わらない。買収は1〜2件が成功する程度で、のれんの負担も許容できる範囲だ。
- 産業設備関連部門:数量 650(年間の納入案件数(件))× 価格 44(1件あたり売上(百万円))→ 売上 287 億円・営業利益 21 億円。利益率7.4%
- 産業素材関連部門:数量 1,480(取引先数(社))× 価格 2,734(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 405 億円・営業利益 11 億円。利益率2.6%
- 機械部品関連部門:数量 1,150(取引先数(社))× 価格 2,446(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 281 億円・営業利益 11 億円。利益率4.0%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)25 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 421 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の目標達成の実績(前計画は目標超過)があり、上振れが一定の確率で見込める。2割。
中立 38% 政策分野は伸びるが、素材・部品の薄利が足を引っ張る 利益 27 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,943 円348 億円
設備部門は納入案件が年600件に増え、1件あたりの規模も物価をやや上回る。素材は取引先が1,450社に増え、薄利のまま物価並みに売上が伸びる。部品は取引先がほぼ横ばいで、物価並みの伸びにとどまる。営業利益率は連結で3.9%と、今とほぼ同じ水準を保つ。これは前の中計で目標を上回った実績と、特殊ばねの構造改革が根拠だ。還元は純利益の55%で、配当は減らさない方針が守られる。現金は買収に一部使われ、残りは保たれる。政策に近い設備部門が利益を支える一方、素材と部品の薄利は変わらない。為替と関税は、時に追い風、時に逆風となり、10年を均すと中立とする。
- 産業設備関連部門:数量 600(年間の納入案件数(件))× 価格 42(1件あたり売上(百万円))→ 売上 253 億円・営業利益 17 億円。利益率6.8%
- 産業素材関連部門:数量 1,450(取引先数(社))× 価格 2,680(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 389 億円・営業利益 9 億円。利益率2.3%
- 機械部品関連部門:数量 1,100(取引先数(社))× 価格 2,445(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 269 億円・営業利益 10 億円。利益率3.7%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)20 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 348 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防災・防衛の追い風と、素材・部品の停滞が相殺する、会社の実力どおりの落としどころ。最も厚く置く。
やや悲観 25% 自動車・住宅の停滞が続き、輸出入が関税で圧迫される 利益 17 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,163 円138 億円
中国・東南アジアの自動車市場の停滞が続き、北米の住宅設備も弱い。精密ねじの取引先が減り、機械部品の利益率は2.5%まで下がる。素材は競争で価格転嫁が遅れ、利益率が2%を割る。設備部門は防衛・防災の案件が続くが、納入案件は520件にとどまる。営業利益率は連結で2.9%に落ちる。還元は純利益の5割に下がり、特別配当は無くなる。為替の円高で輸入の採算は一時改善するが、輸出の採算は悪化する。買収した会社の統合が遅れ、のれんの償却も重くなる。為替は円安が一服し、輸入の仕入れ採算は悪化する。設備部門だけは国の予算に支えられて利益を保つが、全体を支えるには足りない。
- 産業設備関連部門:数量 520(年間の納入案件数(件))× 価格 39(1件あたり売上(百万円))→ 売上 203 億円・営業利益 11 億円。利益率5.5%
- 産業素材関連部門:数量 1,350(取引先数(社))× 価格 2,560(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 346 億円・営業利益 6 億円。利益率1.6%
- 機械部品関連部門:数量 950(取引先数(社))× 価格 2,336(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 222 億円・営業利益 6 億円。利益率2.5%
倍率:事業のROEは約4%でk以下なのでPERは1÷k=11.8倍が上限。ためた利益は額面未満の価値と見て、上限の6割強の7.5倍に置く。
確率:米国の関税政策や自動車市場の停滞は、すでに数字に出ている。10年のうち一度は景気の谷を通る可能性が高く、2割台の中盤。
悲観 10% 関税と景気後退で素材・部品が崩れ、買収も失敗する 利益 9 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 547 円65 億円
世界的な景気後退と関税で、輸出入の取引が大きく減る。素材と部品は取引先が3割近く減り、利益率は1%前後まで落ちる。買収した会社ののれんの減損が出る。防衛や防災の案件は国の予算に守られ、設備部門だけが何とか利益を出し、全体の営業利益率は1.7%に低下する。素材の仕入れ価格が上がっても転嫁できず、為替の変動が採算をさらに押し下げる。人件費の上昇は止まらず、固定費の重さが利益を削る。配当は減らさない方針を守れなくなり、純利益の4割台に下がる。純現金は赤字の穴埋めに使われ、半分が減る。取引先の株の評価損も出て自己資本が痩せる。清算されない限り少数株主が現金を自由に使えないため、現金の価値も割り引いて見る。
- 産業設備関連部門:数量 430(年間の納入案件数(件))× 価格 36(1件あたり売上(百万円))→ 売上 155 億円・営業利益 6 億円。利益率4.0%
- 産業素材関連部門:数量 1,150(取引先数(社))× 価格 2,360(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 271 億円・営業利益 2 億円。利益率0.8%
- 機械部品関連部門:数量 750(取引先数(社))× 価格 2,190(1社あたり年間売上(万円))→ 売上 164 億円・営業利益 2 億円。利益率1.0%
倍率:事業のROEは2%台でk以下。稼ぐ力(事業の純利益÷k)と現金で値を付けた。PER6.5倍は上限の55%。
確率:輸出入が5割を占める商社が、関税・景気後退・買収の失敗に同時に見舞われる複合の筋書き。過去20年に3回の赤字があった実績から、1割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
産業設備関連部門
地震・振動計測機器、重電機器、洋上風力、航空宇宙・防衛機器などを官公庁と大手メーカーへ販売する。
| 数量年間の納入案件数(件) | 価格1件あたり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 550 | 30 | 165 | 12 |
| 10 年後 中立 | 600 | 42 | 253 | 17 |
取り方:売上164.75億円を、納入案件を年約550件(推定)として割り、1件あたり約30百万円とした。案件数の開示は無く、官公庁・プラント向けの大型案件と小口の保守を合わせた推定。
産業素材関連部門
ステンレスベルト、重防食塗料、樹脂材料、接着剤、免震装置関連を扱う。2024年に三幸商会を子会社化。
| 数量取引先数(社) | 価格1社あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,400 | 2,000 | 280 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1,450 | 2,680 | 389 | 9 |
取り方:売上279.93億円を、取引のある製造業・商社約1,400社(推定)で割り、1社あたり約2,000万円とした。三幸商会の通期分を含む。
機械部品関連部門
精密ファスナー、特殊ばね、船舶補修部品を自動車・住宅設備・造船向けに販売する。
| 数量取引先数(社) | 価格1社あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,100 | 1,825 | 201 | 8 |
| 10 年後 中立 | 1,100 | 2,445 | 269 | 10 |
取り方:売上200.69億円を、取引先約1,100社(推定)で割り、1社あたり約1,825万円とした。
リスクと懸念
利益率が過去最高の水準にある
営業利益率は4.0%で過去最高だ。過去には赤字の年が3回ある。10年後もこの水準を保てるかは、防衛・防災の案件の定着と素材の薄利をどう扱うかにかかる。
関税政策と為替
輸出入と外国間取引が売上の約5割を占める。米国の関税政策や為替の変動が、取引と仕入れの採算を直撃する。為替予約でヘッジするが、全ては避けられない。
自動車・住宅向け部品の停滞
精密ねじは中国・東南アジアの自動車と北米の住宅設備が主な販売先で、どちらも停滞している。機械部門の営業利益は2026年3月期に減った。
営業外の益に頼った純利益
純利益には保有株の評価益、持分法の利益、負ののれん益が混ざる。2025年3月期の純利益37億円のうち21億円は負ののれん益だった。本業の稼ぐ力は見た目より小さい。
買収ののれんの負担
3年で50億円以上を買収に使う計画だ。負ののれんが出る割安な案件を選ぶ目利きはあるが、案件が増えれば減損の可能性が高まる。
メーカー直販による中抜き
素材や部品では、メーカーが直接販売に切り替える動きがある。技術の説明や在庫の機能を持たない取引から、順に失われていく。
退職給付債務
退職給付債務は割引率や運用成績で変動し、利益と自己資本を揺らす。金利が上がる局面では債務が減るが、運用の損が出れば逆に響く。
今後の分かれ目
- 産業設備部門の営業利益率が2期連続で8%を超えたら
- 防衛・防災の案件が定着した証拠で、やや楽観・楽観側に確率を寄せる。
- 機械部品部門の営業利益率が2%を割ったら
- 自動車市況の停滞が構造的になる。やや悲観側に確率を寄せる。
- 中計の目標35億円が2029年3月期を待たずに達成されたら
- 上振れの実績が積み上がり、楽観側の確率を上げる。
- 1件で純現金の半分を超える大型の買収を発表したら
- のれんの減損の確率を上げ、現金の価値を下げて評価し直す。
- 米国が主要な輸出入品に高い関税を課したら
- 素材・部品の採算が悪化する。やや悲観側に確率を寄せる。
- 自社株買いを大規模に行い、ROE8%に近づいたら
- 資本効率の改善が確認でき、中立のPERを上限に近づけてよい。
見ておくもの
- 産業設備部門の営業利益率と案件数
- 中計の営業利益35億円に対する進捗
- 素材部門の利益率(三幸商会の寄与)
- 配当性向と自社株買いの実施
- 米国の関税政策と為替
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)を、事業のROEと普通の堀から出した。ROEがk以下の筋書きは上限の1÷kに対し、利益の質(営業外の益が混ざる)を考えて6〜8割に置いた。今の株価は見ていない。余った現金は運転資金と買収の余力を除く20億円、戻り方は過去の100%配当の実績から満額とした。賃借の負担は小さく、新リース会計基準による数字の形の変化は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→13.59 倍・やや楽観 PER 10→12.5 倍・中立 PER 9→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。