結論
ケイティケイは名古屋のオフィス用品の会社だ。使い終わったトナーのカートリッジを集めて詰め直すリユーストナーを自社で作り、事務用品とあわせて中小企業に売る。筆者の結論は、今の値段はほぼ適正だというものだ。現金は厚く利益も伸びているが、主力の紙の印刷が構造的に縮み、10 年の稼ぎは今とあまり変わらないと見るからだ。
足元は好調だ。2026 年 8 月期の営業利益は 31% 伸び、売上は中計の 200 億円に 1 年早く届いた。トナーの顧客にパソコンや複合機、ネットワークを売る IT の事業も育っている。定期預金を含む純現金は 23 億円で、時価総額の半分を超える。
それでも、利幅は薄い。全社の営業利益率は 3% に届かず、ROE は資本コストを下回る年が多かった。紙の印刷が減れば、トナーの数も減る。IT がその穴を埋めても、利益が大きく伸びる絵は描きにくい。厚い現金と、これから積み上がる現金を数えて、ようやく今の値段に見合う。安全域はほとんど無い。好調な今の数字を、そのまま 10 年に伸ばすことはできない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、地味な消耗品の商売で、手堅いが伸びにくい会社だ。客が毎月使うトナーは注文が途切れにくく、厚い現金もある。経営は無理な借金をせず、着実に配当を増やしてきた。
しかし 10 年のオーナーとして見ると、主力の需要が縮む点が重い。紙の印刷は減り続け、トナーの数もそれにつれて減る。IT の伸びがそれを埋めても、資本の利回りが資本コストを超えるのは強気の筋書きだけだ。
厚い現金は安全域になるが、配当性向が 2 割台では株主の手に戻るのに時間がかかる。筆者は、現金の使い方が変わるか、IT が利益の柱として育つのを見てから考えたい。
それでも、この会社が壊れにくいことは評価したい。消耗品の定期的な注文、借金の無い財務、地域の客との長い付き合いは、悪い年にも会社を支える。払う値段が中心の価値を下回れば、安全域のある買い物になりうる。今はその手前にある、と筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
売上は 202 億円で、4 分の 3 がサプライ、4 分の 1 が IT ソリューションだ。
サプライの芯はリユーストナーである。企業が使い終わったトナーのカートリッジを回収し、自社の工場で掃除してトナーを詰め直す。純正品より安く、ごみも減る。インクリボンの再生から始まった会社で、上場するリユーストナーの会社は同社だけだという。トナーのほかに、純正のトナーや用紙、文具などの事務用品も売る。客の多くは中小企業で、営業の担当が定期的に回って注文を取る。
IT ソリューションは、その同じ客に複合機・パソコン・ネットワーク・業務ソフトを売り、保守まで受け持つ。トナーの注文で築いた関係を使う、いわば横の売り込みだ。2025 年には、IT に強い障害者の就労支援の会社を子会社にした。
稼ぐ仕組みは、細かい注文を多くの客から積み上げることだ。一つひとつの取引は小さいが、客が毎月使う消耗品なので注文は途切れにくい。そのぶん営業と配送の手間が重く、利幅は薄い。
工場は名古屋の近くにあり、全国の営業拠点から客を回る。大きな設備は要らず、投資の負担は軽い。そのぶん人と車の費用が利益の大半を左右し、人件費や燃料の値上がりを売値にどこまで移せるかが毎年の勝負になる。
優良さと弱いところ
優良さは中くらいだ。リユーストナーは、回収・再生・販売を一つの会社でこなす仕組みに強みがある。回収の網と再生の技術、そして中小企業への営業の網は、新しく入る会社がすぐにはまねできない。業界は再編の途中で、体力のある会社に注文が集まりやすい。
弱いのは値段だ。純正のトナーを売るメーカーは、再生品に対して値下げや特許で対抗できる。他の再生品の会社や、事務用品の通販の大手とも競う。だから利益率は長く 1〜3% にとどまってきた。ROE は 10 年の中央値で 7.6% で、資本コストを下回る。
財務は堅い。純現金が厚く、借金の心配は無い。ただ現金をためる一方で、配当性向は 2 割台と控えめだ。
経営は堅実だが、攻めの資本の使い方は見えない。IT を第 2 の柱にする方針は筋が通っているものの、今のところ利益の 2 割を占めるにすぎない。主力の縮みに、柱の育ちがどこまで追いつけるかが、この会社の優良さを決める。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
トナーの需要は、紙の印刷の量で決まる。企業の印刷はペーパーレスの流れで年々減り、コロナの後の在宅勤務で一段と減った。電子の請求書や契約の広がりも続く。トナーの数は 10 年で 2 割ほど減ると筆者は見る。
ただ、減る市場の中でもリユース品の割合は上がりうる。値段が安く、環境の面でも説明しやすいからだ。業界では中小の再生品の会社の撤退や統合が進んでおり、回収と再生の規模を持つ会社に注文が集まる。ケイティケイの売上がこの数年伸びたのは、この流れも一因だ。
IT の側は、中小企業のデジタル化の需要が長く続く。人手不足の中で、業務ソフトやクラウドを入れたい会社は多い。ただこの市場には複合機のメーカーの販売会社や、地域の IT の会社がひしめく。トナーの客との関係がどこまで武器になるかが勝負だ。
全体として、主力が縮み、第 2 の柱がそれを埋めにいく業界の形である。
業界の再編は、ケイティケイには追い風だ。ただ、再編で残った会社どうしの値段の競争が終わるわけではない。縮む市場の勝ち残りは、量を守れても利幅までは守れないことが多い。値段を上げる力を持つのは、最後まで純正のメーカーの側である。
資本政策と M&A
資本政策は穏やかだ。配当は増配を続け、2026 年 8 月期は総額 1.1 億円、配当性向は 23.5% だった。自社株買いの方針は無い。
大株主は創業家の会社の青雲堂で 18.5%、次が名古屋中小企業投資育成である。過半を持つオーナーはいないが、安定した株主が上位に並ぶ。
買収は小さく、必要な所に絞る。2025 年に IT に強い障害者の就労支援の会社を子会社にした。厚い現金をどう使うかが、これからの価値を左右する。筆者は還元の上積みか、IT の小さな買収に回ると見る。現金の厚さは、株主にとって安心と不満の両方の種だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
足元の数字は強い。2026 年 8 月期の営業利益は 31% 伸び、売上は中計の目標に 1 年早く届いた。リユーストナーの業界は再編の途中で、回収と再生の規模を持つケイティケイに注文が集まっている。
IT の事業はもっと伸びる。トナーの注文で毎月顔を合わせる客に、パソコンや業務ソフトを売るのは自然な流れだ。人手不足の中小企業はデジタル化を急いでおり、IT の利益は前の期に 37% 伸びた。
財務の安全域も厚い。定期預金を含む純現金は 23 億円で、時価総額の半分を超える。今の値段は利益の 8 倍台で、この現金を引けば事業はほとんどただで買える。現金を還元に回すだけで、株主の利回りは大きく変わる。
縮む市場の勝ち残りには、意外な旨みもある。競合が退けば値下げの圧力は和らぎ、回収の網が太るほど再生の費用は下がる。トナーの数が減っても、一つあたりの利益が増えれば、サプライの利益は守れる。業界で唯一の上場の会社という信用も、大きな客を取る時の武器になる。
慎重な見方
主力の市場は確実に縮む。企業の印刷は減り続け、電子の請求書や契約がその流れを速める。トナーの数が減れば、リユース品の割合が上がっても売上の芯は細る。
利幅も薄い。全社の営業利益率が 3% を超えた年は 20 年以上無い。純正のメーカーは値下げや特許で再生品に対抗でき、事務用品は通販の大手と値段で競う。IT もまた競合だらけの市場で、トナーの客との関係だけで勝てるとは限らない。
現金も株主の手には戻りにくい。配当性向は 2 割台で、自社株買いの方針も無い。現金が積み上がっても、資本の利回りは下がるだけだ。今の好調は再編の一時の追い風かもしれない。
IT の伸びにも限りがある。中小企業の IT の市場では、人材を集められる会社が勝つ。技術者の賃金は上がり続け、地方の会社には不利だ。トナーの客の関係は入り口にはなっても、価格と技術で負ければ契約は取れない。好調の数字に引っ張られて、10 年の絵を描きすぎない方がよい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。足元の好調と厚い現金は本物だが、紙の印刷が縮む流れはそれより大きい。中心の筋書きは、トナーの数が 2 割余り減り、IT がそれを埋めて利益が横ばいの形とした。強気の側にも 3 割近い重みを残した。
厚い現金と、配られずに積み上がる現金は、本質価値の下支えになる。それを数えて、今の値段はようやく見合う。IT の利益が育つのを決算で確かめるまでは、強気の側に大きく寄せる理由は無い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した株価時価総額 1,627 円89 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 215 円12 億円)。 今の値に割り戻すと 900 円49 億円、今との差 +25.0%、 期待の年率 +9.8%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,170 円228 億円 | 365 円20 億円 | +529.9% | +20.2% | 363 円20 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,639 円144 億円 | 292 円16 億円 | +307.1% | +15.1% | 586 円32 億円 |
| 中立 | 37% | 1,625 円89 億円 | 228 円13 億円 | +157.4% | +9.9% | 686 円38 億円 |
| やや悲観 | 23% | 548 円30 億円 | 146 円8 億円 | −3.6% | −0.4% | 160 円9 億円 |
| 悲観 | 12% | 320 円18 億円 | 73 円4 億円 | −45.4% | −5.9% | 47 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,627 円89 億円 | 215 円12 億円 | +155.8% | +9.8% | 1,842 円101 億円 |
今の株価時価総額 720 円39 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:IT が第 2 の柱に育ち、トナーは再編の勝ち残りになる 利益 12 億円 · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 4,170 円228 億円
リユーストナーの業界の再編で、中小の再生品の会社が次々に退く。ケイティケイは回収と再生の規模を生かして注文を集め、紙の印刷が減ってもトナーの数は 1 割しか減らない。値上げも物価並みに通る。
IT の事業は第 2 の柱に育つ。トナーの客の中小企業に、業務ソフトとクラウドの導入と保守を広く売り、顧客は 2.4 倍になる。保守の継続的な収入が積み上がり、IT の利益率は 6% 台に乗る。
全社の営業利益は 16 億円になり、資本の利回りは資本コストを超える。厚い現金は配当と小さな買収に回る。消耗品の会社から、中小企業の事務の面倒を丸ごと見る会社に、顔が変わる 10 年になる。
- サプライ:数量 2,828(トナー・事務用品の出荷(千個・年、推定))× 価格 0.67(1 個あたりの平均の売値(万円・名目))→ 売上 189 億円・営業利益 14 億円。個数 0.92 倍(再編でシェアを取る)、売値は物価並み、利益率 7.5%
- IT ソリューション:数量 11,568(取引のある顧客の数(社、推定))× 価格 134(1 社あたりの年間の売上(万円・名目))→ 売上 155 億円・営業利益 10 億円。顧客 2.4 倍、売値は物価並み、利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 17.37 倍、時価総額 210 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:IT の利益は 2026 年 8 月期に 37% 伸び、リユーストナーの業界の再編で同社に注文が集まる兆しもある。ただ主力の市場が縮む中での話なので 8%。
やや楽観 20% やや楽観:IT の伸びがトナーの縮みを上回る 利益 8 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 2,639 円144 億円
紙の印刷は減るが、再編でシェアを取り、トナーの数の減りは 15% にとどまる。IT の顧客は 10 年で 1.9 倍になり、利益率も少しずつ上がる。
中計の営業利益 6 億円は数年遅れで届き、その後も伸びる。全社の営業利益は 10 億円を超える。配当は利益とともに増え、配当性向は 3 割に近づく。厚い現金は残るが、一部は IT の小さな買収に使われ、うまく働く。資本の利回りは資本コストに近づく。IT の保守の収入が積み上がり、景気の波にも強くなる。サプライの利益率は再編の追い風で 6% 台後半を保つ。顧客一社あたりの取引も厚くなる。
- サプライ:数量 2,613(トナー・事務用品の出荷(千個・年、推定))× 価格 0.66(1 個あたりの平均の売値(万円・名目))→ 売上 172 億円・営業利益 12 億円。個数 0.85 倍、売値 1.32 倍、利益率 6.8%
- IT ソリューション:数量 9,158(取引のある顧客の数(社、推定))× 価格 132(1 社あたりの年間の売上(万円・名目))→ 売上 121 億円・営業利益 7 億円。顧客 1.9 倍、利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 15.82 倍、時価総額 129 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の売上 200 億円は 1 年早く届いた。IT の顧客の増え方が続けば、利益は今より伸びるので 20%。
中立 37% 中立:トナーは細り、IT が埋めて利益は横ばい 利益 5 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 1,625 円89 億円
紙の印刷は減り続け、トナーの数は 10 年で 2 割余り減る。売値は物価にわずかに負ける。それでもリユース品の割合が上がり、サプライの利益率は今と同じ 6% 台を保つ。
IT の顧客は 1.6 倍になり、主力の縮みをちょうど埋める。全社の営業利益は 6 億円前後で、今の会社の計画並みにとどまる。
配当は増え続けるが、配当性向は 2 割台のままで、現金は積み上がる。手堅いが、株主の取り分は物価並みにしか増えない 10 年になる。厚い現金は、悪い年の支えとしては心強いが、株主の利回りを上げる道具としては使われない。
- サプライ:数量 2,398(トナー・事務用品の出荷(千個・年、推定))× 価格 0.65(1 個あたりの平均の売値(万円・名目))→ 売上 156 億円・営業利益 10 億円。個数 0.78 倍(紙の印刷の縮小)、売値 1.30 倍、利益率 6.2%
- IT ソリューション:数量 7,712(取引のある顧客の数(社、推定))× 価格 130(1 社あたりの年間の売上(万円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 5 億円。顧客 1.6 倍、売値 1.30 倍、利益率 4.6%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 13.69 倍、時価総額 75 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:紙の印刷の縮みと IT の伸びが打ち消し合う中心の筋書き。過去 12 年の営業利益率が 1〜3% で推移した事実を重く見て 37%。
やや悲観 23% やや悲観:ペーパーレスが速まり、トナーの利幅が崩れる 利益 2 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 548 円30 億円
電子の請求書と契約が一気に広がり、企業の印刷は大きく減る。トナーの数は 10 年で 4 割近く減り、純正のメーカーの値下げで再生品の値段も崩れる。サプライの利益率は 5% 台に落ちる。
IT は競合に阻まれ、顧客は 3 割しか増えない。本社と営業の費用は物価で増え続け、全社の営業利益は 1 億円台まで細る。配当は据え置きになる。現金は残るが、働かないまま資本の利回りを押し下げる。IT の技術者の賃金が上がり、利幅はさらに削られる。業界の再編で残った会社どうしの値下げも続く。好調だった数年は、再編の一時の追い風だったことになる。
- サプライ:数量 1,906(トナー・事務用品の出荷(千個・年、推定))× 価格 0.63(1 個あたりの平均の売値(万円・名目))→ 売上 119 億円・営業利益 7 億円。個数 0.62 倍、売値 1.25 倍、利益率 5.5%
- IT ソリューション:数量 6,266(取引のある顧客の数(社、推定))× 価格 128(1 社あたりの年間の売上(万円・名目))→ 売上 80 億円・営業利益 3 億円。顧客 1.3 倍、利益率 3.5%
倍率:ROE 2.3% が k 8% 以下なので、ためた利益は額面未満で、PER の上限は 1÷k=11.8 倍。利益が細る筋書きなので上限の 7 割(上限の 70%=8.24 倍)。余った現金 11.2 億円は戻り方 0.75 を掛けて足した。
確率:紙の印刷はコロナの後に一段と減った。リユース品は純正の値下げにも弱いので 23%。
悲観 12% 悲観:トナーの需要が崩れ、本社の費用だけが残る 利益 −2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 320 円18 億円
トナーの需要が崩れる。印刷はさらに減り、純正のメーカーがカートリッジの仕組みを変えて再生品を締め出す。トナーの数は半分以下になり、サプライの利益はほぼ消える。
IT も大手と地域の会社に挟まれて伸びず、本社と営業の費用だけが残る。本業は赤字になり、配当は減る。会社は現金を取り崩して事業を立て直す。株主に残るのは、厚い現金の一部と、投資有価証券や土地に見合う価値だけだ。IT の小さな買収も実を結ばず、のれんの減損が出る。好調だった数年は、縮む市場の最後の明るさとして振り返られる。配当も細り、現金は立て直しの資金として静かに減っていく。
- サプライ:数量 1,383(トナー・事務用品の出荷(千個・年、推定))× 価格 0.55(1 個あたりの平均の売値(万円・名目))→ 売上 76 億円・営業利益 2 億円。個数 0.45 倍、売値 1.10 倍、利益率 2.5%
- IT ソリューション:数量 4,820(取引のある顧客の数(社、推定))× 価格 120(1 社あたりの年間の売上(万円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 1 億円。顧客横ばい、利益率 1%
倍率:本業はほぼ赤字で、稼ぐ力では値が付かない。床は売れる資産(floor_assets)とし、検査が今の自己資本とみる 2025 年 8 月期の 44.8 億円の 0.39 倍にあたる 17.5 億円に置いた。
確率:主力の市場は構造的に縮み、IT は大手と競う。赤字の期が 2012・2015 年にあったので 12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
サプライ
使い終わったトナーのカートリッジを回収して詰め直すリユーストナーを自社で作り、純正のトナー・用紙・事務用品とあわせて企業に売る。
| 数量トナー・事務用品の出荷(千個・年、推定) | 価格1 個あたりの平均の売値(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 3,074 | 0.50 | 154 | 10 |
| 10 年後 中立 | 2,398 | 0.65 | 156 | 10 |
取り方:2026 年 8 月期の短信のセグメント売上 153.7 億円を、トナー・インク・用紙・事務用品の平均の売値を 1 個 0.5 万円と置いて約 307 万個に割り戻した推定で、開示の実数ではない。利益はセグメント利益 9.54 億円。
IT ソリューション
サプライの顧客の中小企業に、複合機・パソコン・ネットワーク・業務ソフトの導入と保守を売る。
| 数量取引のある顧客の数(社、推定) | 価格1 社あたりの年間の売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 4,820 | 100 | 48 | 2 |
| 10 年後 中立 | 7,712 | 130 | 100 | 5 |
取り方:セグメント売上 48.2 億円を、1 社あたり年 100 万円と置いて約 4,800 社に割り戻した推定。利益はセグメント利益 2.21 億円。本社の費用(調整 −6.17 億円)は 10 年後に物価並みの −8.27 億円と置いた。
リスクと懸念
ペーパーレスの加速
電子の請求書・契約・会議資料の広がりで、企業の印刷はさらに減る。トナーの数が想定より速く減れば、IT の伸びでは埋めきれず、利益は細る。
純正メーカーの対抗
複合機やプリンターのメーカーは、再生品を締め出すための値下げや、カートリッジの仕組みの変更、特許の主張で対抗できる。リユーストナーの値段と数量の両方に効く。
IT の競争
中小企業の IT の市場には、複合機のメーカーの販売会社や地域の IT の会社がひしめく。人材の確保も難しく、IT が第 2 の柱に育たなければ、主力の縮みをそのまま受ける。
現金が働かない
純現金は 23 億円あるが、配当性向は 2 割台で自社株買いの方針も無い。現金が積み上がるほど資本の利回りは下がり、割高な買収に使われる危うさも残る。
利幅の薄さ
営業利益率は 3% に届かない。配送費や人件費が上がり、値上げが遅れると利益はすぐに消える。2012 年と 2015 年には赤字の期もあった。
今後の分かれ目
- IT ソリューションの利益が 3 億円を超えて伸び続けたら
- やや楽観の筋書きに寄る。第 2 の柱が主力の縮みを上回り始めた合図だ。
- サプライの売上が前の年を下回り始めたら
- 中立からやや悲観に寄る。再編の追い風が終わり、紙の縮みが表に出た合図だ。
- 配当性向を大きく上げるか、自社株買いを始めたら
- 現金の戻り方を見直し、本質価値は上に動く。
- 純正のメーカーが再生品を締め出す仕組みを広げたら
- 悲観の側の確率を上げる。
- 中計の営業利益 6 億円を 2027 年 8 月期に達成したら
- 利幅の改善が定着したと見て、中立の利益を上に見直す。
見ておくもの
- サプライのセグメントの売上と利益率
- IT ソリューションの利益
- 配当性向と自社株買い
- リユーストナーの業界の再編の動き
倍率と資本コストの決め方
facts は 2025 年 8 月期までで古いので、2026 年 8 月期の短信の自己資本と、特別利益を除いた純利益を起点にした。数量はトナーと事務用品の個数、IT の顧客数を売上から推定し、物価は売値に入れた。中立の営業利益率は 2.3% で過去 12 年の山を超えない。ROE が k を下回るので倍率は 1÷k を上限に掛け目を決め、今の PER 8 倍台は見ていない。純現金は定期預金を含めて数えた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.87→17.37 倍・やや楽観 PER 11.05→15.82 倍・中立 PER 9.41→13.69 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。