結論
ハイパーは、中小企業や中堅企業にパソコンやサーバーを売り、設定や運用まで引き受ける会社だ。もう一つの柱として、アスクルの代理店として事務用品の注文を取り次ぐ。筆者の結論は「割高」だ。2025年12月期はWindows10のサポート終了に伴う買い替えで売上が過去最高に近づいたが、それは数年に一度の山にすぎない。会社自身、2026年12月期の営業利益を前の期の4割ほどと見込む。
PCの販売は、メーカーと大きな販売会社の間に挟まれた薄利の商売だ。営業利益率は良い年でも2%台で、悪い年は1%を切る。アスクルの代理店の手数料は利益率が高いが、2025年秋にはアスクルへのサイバー攻撃で注文が止まり、他社の事情に左右される弱さも見えた。
手元の現金は見かけ上は厚いが、仕入れの支払いの時期で大きく増減する。資本コストを上回って稼ぐ姿は描きにくく、今の値段は買い替えの山の利益を前提にしている。
10年の中立の姿で積み上げると、価値は今の時価総額を大きく下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、わかりやすいが良い事業とは言いにくい。PCの再販はメーカーと大手の販売会社に挟まれ、利益は売上の1〜2%しか残らない。数年に一度の買い替えの山で利益が膨らみ、谷では細る。値段を決める力が無く、稼ぎは資本コストに届かない。
アスクルの代理店は利益率が高いが、他社の事業の上に乗った稼ぎだ。条件を決めるのはアスクルで、この会社ではない。2025年のサイバー攻撃は、その弱さを見せた。
オーナーとして見ると、手元の現金と小さな配当は安心材料だ。しかし、事業に再投資しても資本コストほどは稼がず、たまった利益は帳簿に積もるだけになりやすい。
値段は買い替えの山の利益を前提にしているように見える。筆者が見方を変えるのは、セキュリティや運用の代行のような継続して手数料が入る売上が育ち、ITサービスの利益率が2%を超えて続いた時だ。
何で稼ぐ会社か
事業は三つある。2025年12月期の売上138億円のうち、ITサービスが125億円、アスクルエージェントが12億円、障害のある人の就職を支える就労移行支援が1億円弱だった。
ITサービスは、パソコン、サーバー、ネットワーク機器を企業に売り、設定、設置、セキュリティ対策、運用の管理までを引き受ける。社内に情報システムの担当がいない中小企業の代わりに、機器の調達と面倒を見る役回りだ。「ビジネスコアネクスト」という名前でこのサービスを売り込んでいる。2024年には司コンピュータを買い、顧客を広げた。売上の大半は機器の販売で、利益はその小さな上乗せと保守の手数料から生まれる。エプソン販売が株主に入っており、メーカーとのつながりも深い。
アスクルエージェントは、アスクルの通信販売を中小企業に広げる代理店の仕事だ。顧客を開拓し、注文の受け付けと代金の回収を担い、手数料を受け取る。売上は小さいが、利益はITサービスと同じくらい稼ぐ。
その他の就労移行支援は、職業訓練と就職の支援で、規模はまだ小さい。
顧客は首都圏の中小企業が中心だ。
優良さと弱いところ
優良さは顧客の数と、面倒を見る手間を肩代わりする仕組みにある。社内にIT担当がいない会社にとって、PCの選定から設定、故障の対応まで任せられる相手は便利だ。一度取引が始まれば、次の買い替えでも声がかかりやすい。
ただ、値段を決める力はほとんど無い。PCの値段はメーカーが決め、同じ機種はネット通販や大手の販売会社でも買える。ITサービスの営業利益率は買い替えの山の2025年12月期でも1.6%で、2024年12月期は0.6%だった。粗利の小さな商売で、人件費が上がるほど利益は削られる。
アスクルの代理店の手数料は利益率が1割前後と高いが、条件はアスクルが決める。アスクルが直販を強めたり手数料を下げたりすれば、この稼ぎは細る。2025年秋のシステム障害では、他社の事故がそのまま自社の減収になった。
資本の効率は、ROEが過去10年の中央値で6%台と資本コストに届いていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
法人向けのPCの市場は、数年に一度の買い替えの波で大きく揺れる。2025年はWindows10のサポート終了で企業の買い替えが集中し、出荷は前年を大きく上回った。その反動で、2026年の国内のPCの出荷は25〜30%減ると見られている。次の大きな波は、AIの処理に向いたPCへの切り替えだが、どれほどの山になるかはまだ読めない。
長い目で見ると、企業のPCの台数は働く人の数で決まる。国内の働き手は増えず、AIのエージェントが事務の仕事を肩代わりするほど、1社あたりの席の数は減る。一方で、サイバー攻撃が増え、セキュリティの対策や運用の代行を外に頼む需要は伸びる。
競争は激しい。大塚商会のような大手の販売会社は、品ぞろえと保守の網で中堅企業を押さえる。ネット通販の法人向けのサイトも安く売る。中小の販売会社は、地域と顧客の近さで生き残るしかない。10年の中立では、PCの販売台数は買い替えの山を除くと横ばいからやや減り、1台あたりの売上は物価にやや届かないと見る。
中小の販売会社にとって、生き残りの鍵は運用とセキュリティの継続の手数料をどれだけ積めるかにある。
資本政策と M&A
配当は年2回で、1株あたりの額を変えずに続けている。配当性向は3割前後だ。株主優待は2023年に一度やめたが、2026年に再開した。12月末に300株以上を持つ株主に、0.5万円分のデジタルギフトを贈る。費用は推定で年0.2億円前後で、配当の3割ほどに当たる。
財務は堅いが、現金は見かけほど自由ではない。2025年12月末の現金は31億円で、借入8億円を引いても23億円の純現金がある。ただ、売掛金と買掛金はともに20億円を超え、支払いの時期で現金は大きく増減する。2026年6月末の純現金は14億円ほどだった。
大株主はララコーポレーションが24%、玉田宏一氏が13%、エプソン販売が7%を持つ。M&Aでは2024年に司コンピュータを買った。中小のIT販売会社の業界は再編が進んでおり、買う側にも売る側にもなりうる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
顧客の基盤は本物だ。社内にIT担当がいない中小企業は多く、PCの選定から設定、故障の対応、セキュリティまで丸ごと任せられる相手を求めている。サイバー攻撃の被害が相次ぎ、セキュリティの代行の需要は増え続ける。会社は保守や運用の継続した手数料を伸ばそうとしている。
次の買い替えの波もある。AIの処理に向いたPCが標準になり、数年のうちに企業はまた入れ替えを迫られる。2026年は反動の年だが、上期の営業利益は通期の計画をすでに上回った。会社の計画は控えめだ。
アスクルの代理店は利益率が1割前後と高い。2025年秋のシステム障害は一時のもので、注文の受け付けは戻りつつある。障害の後で離れた顧客を取り戻せば、利益は元の水準に戻る。
財務も堅い。純現金は時価総額の半分を超え、借入は小さい。配当に加えて優待も再開した。現金を使った買収で顧客を増やせば、規模の利益も出てくる。
再販の会社でも、継続の手数料が育てば利益は安定し、値段の見方も変わる。
慎重な見方
2025年の利益は、Windows10のサポート終了という数年に一度の山の上にある。会社自身が2026年の営業利益を前の期の4割と見込み、PCの出荷は25〜30%減ると言う。山の利益で値段を測るのは危うい。
PCの再販は薄利だ。ITサービスの営業利益率は山の年で1.6%、谷の年は0.6%だった。メーカーが値段を決め、大手の販売会社とネット通販が同じ品を安く売る。人件費が上がれば、この薄い利益はさらに削られる。AIのエージェントが事務の仕事を肩代わりすれば、企業のPCの台数そのものが減る。
アスクルの代理店の稼ぎも安泰ではない。アスクルが直販を強め、手数料の条件を変えれば、利益の4割近くを生む柱が細る。サイバー攻撃の時のように、他社の事故で売上が止まることもある。
現金も見かけほど厚くない。年末の現金は買掛金の支払い前で膨らんでおり、6月末の純現金は14億円ほどだった。
平常の年の利益で測れば、今の値段は決して安くない。現金を除いても、事業に払う倍率は資本コストに届かない稼ぎに対して高い。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。顧客の基盤とセキュリティの需要は認めるが、利益の大半は買い替えの山と他社の代理店の手数料から来ており、値段を決める力は無い。確率は中立に4割弱、楽観側に2.8割、悲観側に3.4割を置いた。純現金と小さな借入があるので、会社が傾く筋書きは厚くしない。継続の手数料が数字で見えるようになれば、強気の見方に寄せる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 283 円28 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 84 円8 億円)。 今の値に割り戻すと 177 円17 億円、今との差 −54.9%、 期待の年率 −0.7%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 533 円52 億円 | 133 円13 億円 | +69.5% | +5.4% | 53 円5 億円 |
| やや楽観 | 20% | 411 円40 億円 | 112 円11 億円 | +33.1% | +2.9% | 105 円10 億円 |
| 中立 | 38% | 312 円31 億円 | 92 円9 億円 | +2.7% | +0.3% | 153 円15 億円 |
| やや悲観 | 22% | 158 円16 億円 | 61 円6 億円 | −44.1% | −5.7% | 48 円5 億円 |
| 悲観 | 12% | 38 円4 億円 | 20 円2 億円 | −85.2% | −17.4% | 7 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 283 円28 億円 | 84 円8 億円 | −6.7% | −0.7% | 367 円36 億円 |
今の株価時価総額 393 円38 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 運用の代行とセキュリティが柱に育つ 利益 4 億円 · PER 11.6 倍 · 株価時価総額 533 円52 億円
中小企業はサイバー攻撃への備えを外に頼むようになり、PCの調達と運用、セキュリティを丸ごと任せる契約が広がる。会社は買収で顧客を増やし、PCの販売台数も今の山の水準を保つ。1台あたりの売上は、保守と運用の手数料が乗って物価を上回って上がる。
アスクルの代理店は障害から立ち直り、取引先を2割増やす。手数料の条件も保たれる。就労移行支援も事業所を増やす。
営業利益は5億円台後半になり、営業利益率は3%近くまで上がる。それでもROEは8%前後で、資本コストにわずかに届かない。再販の薄さは残るからだ。
同業の再編の中で、買う側として顧客を集めることになる。
- ITサービス:数量 8.5(PC換算の販売台数(万台・年、推定))× 価格 20(1万台あたりの売上(億円。保守や周辺機器を含む))→ 売上 166 億円・営業利益 3 億円。8.5万台×1台あたり1.29倍、利益率2%
- アスクルエージェント:数量 2.3(取引する事業所(万社、推定))× 価格 8.20(1万社あたりの年間売上(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 2 億円。2.3万社×1社あたり1.37倍、利益率12%
- 就労移行支援:数量 50.0(利用者(人、推定))× 価格 0.05(1人あたりの年間売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。50人×1.5倍、利益率5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 11.59 倍、時価総額 52 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:継続して手数料が入る運用とセキュリティの売上が育ち、アスクルの代理店も伸びる姿。両方がそろう必要があるので1割未満。
やや楽観 20% AIのPCへの切り替えで山が来る 利益 3 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 411 円40 億円
2020年代の終わりに、AIの処理に向いたPCへの切り替えが企業に広がり、もう一度買い替えの山が来る。10年後の時点では山を越えた後だが、販売台数は今の山のやや下で保たれる。運用と保守の手数料も少しずつ増える。
アスクルの代理店は障害の前の水準に戻り、手数料の条件も変わらない。営業利益は4億円台で、2025年12月期を少し上回る。
配当は少しずつ増え、優待も続く。ROEは6%前後で、資本コストには届かない。
山と谷を繰り返しながら、利益の水準は少しずつ上がっていく。余った現金はそのまま手元に残る。
- ITサービス:数量 7.8(PC換算の販売台数(万台・年、推定))× 価格 19(1万台あたりの売上(億円。保守や周辺機器を含む))→ 売上 148 億円・営業利益 2 億円。7.8万台×1台あたり1.26倍、利益率1.6%
- アスクルエージェント:数量 2.0(取引する事業所(万社、推定))× 価格 8.00(1万社あたりの年間売上(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 2 億円。2万社×1社あたり1.33倍、利益率11%
- 就労移行支援:数量 40.0(利用者(人、推定))× 価格 0.04(1人あたりの年間売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。40人×1.4倍、利益率4%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 40 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI向けのPCへの切り替えでもう一度買い替えの山が来て、アスクルの代理店も元に戻る姿。2割。
中立 38% 山を越え、薄利の再販に戻る 利益 2 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 312 円31 億円
Windows10の入れ替えの山が過ぎ、PCの販売台数は2024年ごろの平常の水準に戻る。働き手は増えず、AIが事務の仕事の一部を肩代わりするので、企業のPCの台数は少しずつ減る。1台あたりの売上は保守と周辺機器で物価にやや届く程度に上がる。ITサービスの営業利益率は山と谷の間の1.2%前後だ。
アスクルの代理店は障害から戻るが、取引先は少し減る。手数料の利益率は1割を保つ。営業利益は3億円前後で、2025年12月期とほぼ同じ額にとどまる。物価の分だけ、実質の稼ぎは目減りする。
配当と優待は続き、利益の半分近くを株主に回す。ROEは4%台で、資本コストの半分に届かない。
- ITサービス:数量 7.0(PC換算の販売台数(万台・年、推定))× 価格 19(1万台あたりの売上(億円。保守や周辺機器を含む))→ 売上 132 億円・営業利益 2 億円。7万台×1台あたり1.25倍(PCの値下がりと保守の上乗せが打ち消し合う)、利益率1.2%
- アスクルエージェント:数量 1.8(取引する事業所(万社、推定))× 価格 7.80(1万社あたりの年間売上(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。1.8万社×1社あたり1.3倍、利益率10%
- 就労移行支援:数量 30.0(利用者(人、推定))× 価格 0.04(1人あたりの年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。30人×1.33倍、利益率3%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 30 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買い替えの山を除いた平常の台数と、今の利益率の幅の中ほどを中心に置いた。
やや悲観 22% 台数が減り、代理店の稼ぎも細る 利益 1 億円 · PER 9.3 倍 · 株価時価総額 158 円16 億円
企業はAIのエージェントに事務を任せ、1社あたりのPCの台数が減る。残る需要も大手の販売会社とネット通販に流れ、販売台数は今の山の7割まで落ちる。ITサービスの利益率は0.6%前後で、2024年12月期の谷の水準だ。
アスクルは自社の直販と大口の顧客の取り込みを強め、代理店の取引先は1.5万社まで減る。手数料の利益率も8%に下がる。営業利益は1.5億円前後で、今の半分になる。
配当は維持するが、優待はやめる。余った現金の一部は小さな買収に使われる。ROEは3%を割る。
株主に残るのは小さな配当と、目減りした現金だ。
- ITサービス:数量 6.0(PC換算の販売台数(万台・年、推定))× 価格 18(1万台あたりの売上(億円。保守や周辺機器を含む))→ 売上 108 億円・営業利益 1 億円。6万台×1台あたり1.19倍、利益率0.6%
- アスクルエージェント:数量 1.5(取引する事業所(万社、推定))× 価格 7.50(1万社あたりの年間売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。1.5万社×1社あたり1.25倍、利益率8%
- 就労移行支援:数量 25.0(利用者(人、推定))× 価格 0.04(1人あたりの年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。収支とんとん
倍率:ROE2.7%で資本コストに遠く届かない。帳簿は床にならないので稼ぐ力(純利益÷k)より低い9.27倍を事業の純利益に掛け、7.5億円に減った余った現金を戻り方0.75で足す。
確率:AIで事務の席が減り、大手とネット通販に押され、アスクルの条件も厳しくなる姿。2割余り。
悲観 12% 代理店の契約を失い再販は赤字に 利益 0 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 38 円4 億円
アスクルは代理店を通さない直販に切り替え、手数料の稼ぎはほぼ消える。PCの再販は大手の販売会社とネット通販に挟まれ、販売台数は今の6割まで落ちる。値引きの競争で、ITサービスはわずかな赤字になる。
会社は人員を減らし、拠点を閉じるが、利益は戻らない。余った現金は赤字の穴埋めと事業の整理に使われ、5億円まで減る。配当は減らし、優待もやめる。
10年後、会社は小さな販売会社として残るか、同業に売られる。赤字の会社に高い値段は付かない。
株主に残るのは、細った現金だけだ。顧客の基盤も、稼ぎを生まなければ値打ちを失う。
- ITサービス:数量 5.0(PC換算の販売台数(万台・年、推定))× 価格 17(1万台あたりの売上(億円。保守や周辺機器を含む))→ 売上 85 億円・営業利益 0 億円。5万台×1台あたり1.13倍、赤字
- アスクルエージェント:数量 0.0(取引する事業所(万社、推定))× 価格 0.00(1万社あたりの年間売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。代理店の仕組みが終わる
- 就労移行支援:数量 20.0(利用者(人、推定))× 価格 0.04(1人あたりの年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。収支とんとん
倍率:赤字なのでPBRで置く。稼ぐ力は無く、床は残る余った現金に戻り方を掛けた約3.75億円。今の自己資本30.7億円に0.12倍を掛けた額がこれに当たる。
確率:アスクルが代理店の仕組みを縮め、PCの再販も赤字に沈む構造的な負け。純現金があるので1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ITサービス
PC・サーバー・ネットワーク機器の販売と、設定・保守・セキュリティ・運用の代行。
| 数量PC換算の販売台数(万台・年、推定) | 価格1万台あたりの売上(億円。保守や周辺機器を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 8.3 | 15 | 125 | 2 |
| 10 年後 中立 | 7.0 | 19 | 132 | 2 |
取り方:台数の開示は無い。売上125.1億円を、周辺機器と保守を含む1台あたり約0.15億円÷100の売上と置いて約8.3万台と推定。2025年はWindows10の入れ替えの山。
アスクルエージェント
アスクルの代理店として中小企業の注文を取り次ぎ、手数料を受け取る。
| 数量取引する事業所(万社、推定) | 価格1万社あたりの年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.0 | 6.00 | 12 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.8 | 7.80 | 14 | 1 |
取り方:取引先の数の開示は無い。売上12.0億円を、1社あたり年約0.0006億円の手数料の売上と置いて約2万社と推定。2025年秋のアスクルのシステム障害で減収。
就労移行支援
障害のある人の職業訓練と就職の支援。
| 数量利用者(人、推定) | 価格1人あたりの年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 24.0 | 0.03 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 0.04 | 1 | 0 |
取り方:利用者数の開示は無い。売上0.72億円を、1人あたり年約0.03億円の給付費と置いて約24人と推定。
リスクと懸念
買い替えの山の反動
2025年の利益はWindows10のサポート終了の買い替えの上にある。2026年の国内のPCの出荷は25〜30%減る見込みで、会社も営業利益を前の期の4割と計画する。山の利益を平常と見ると、価値を高く見誤る。
アスクルへの依存
アスクルの代理店は売上の1割弱で利益の4割近くを生む。条件を決めるのはアスクルで、直販の強化や手数料の見直しで稼ぎは細る。2025年秋のサイバー攻撃では、注文の停止がそのまま減収になった。
薄い利益率
ITサービスの営業利益率は山の年で1.6%、谷の年で0.6%しかない。メーカーの値段の変更や人件費の上昇がわずかに効くだけで、利益は大きく揺れる。
AIで席が減る
AIのエージェントが事務の仕事を肩代わりすれば、企業のPCの台数は減る。中小企業向けの販売の数量が、人の数とともに細る恐れがある。
大手とネット通販との競争
大塚商会のような大手の販売会社や法人向けのネット通販が、同じ機種を安く売る。顧客との近さだけで値段の差を埋めるのは難しくなっていく。
今後の分かれ目
- 保守・運用・セキュリティの継続の売上を開示し、年1割以上伸ばす
- 楽観側の筋書きに近づく。利益の振れが小さくなる。
- アスクルが代理店の手数料の条件を変える
- やや悲観から悲観の筋書きに寄る。利益の柱の一つが細る。
- AI向けのPCへの切り替えの山が来る
- 一時的に利益が膨らむが、山の後の平常の台数を見て判断する。
- 同業の買収で顧客を大きく増やす
- 規模の利益が出れば中立から楽観側に寄る。買う値段しだいでは現金の価値を削る。
- ITサービスの営業利益率が谷の年でも1.5%を保つ
- 中立とやや楽観の間に寄る。値段の力が少し付いた証拠になる。
見ておくもの
- ITサービスの営業利益率
- アスクルエージェントの売上と利益
- 国内の法人向けPCの出荷台数
- 6月末と12月末の純現金
- 保守・運用の継続の売上
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や過去のPERから置いていない。中立のROEは4%台でk8.75%を大きく下回るので、PERの上限は1÷kの11.1倍で、その約85%の9.5倍を事業の純利益(現金の利息を除く)に掛け、余った現金10億円を戻り方0.75で別に足した。12月末の純現金は買掛金の支払い前で膨らむので、6月末の水準を平常とみた。悲観側は稼ぐ力と残る現金で置いた。優待の費用は利益から引き済みで、還元にはその受け取り分を足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→11.59 倍・やや楽観 PER 10→11.43 倍・中立 PER 9.5→11.43 倍・やや悲観 PER 9→9.27 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に質の上乗せ1.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.75%。