結論
円谷フィールズは、パチンコ・パチスロ機を企画してホールに売る会社である。利益のほぼ全部がここから出る。ウルトラマンの円谷プロは傘下にあるが、まだ小さな稼ぎ手にとどまる。筆者の結論は、10年で測るとやや割高、である。稼ぎの本体が、縮む市場のヒット次第だからだ。
2026年3月期の営業利益は174億円で過去最高だった。エヴァンゲリオンや東京喰種など当たり機が続き、販売は27.4万台、シェアは約18%まで上がった。ただ、前の期のシェアは1割台前半とみられる。当たりが続かなければ元に戻る。しかも売る相手のホールは、4年で約2割減った。
期待のウルトラマンも、中国のライセンスが前期から半減した。会社は生誕60周年を機に立て直す構えだが、利益の柱になるのは先の話だ。
良い面もはっきりある。配当は連続で増え、今期は純利益の半分を超える額を返す計画だ。手元は純現金で、財務の傷みは小さい。だが、稼ぐ力が10年後も今の高さを保つとは言い切れない。筆者は、ヒット頼みの利益に満額の倍率は払えないと考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見るべき点は三つある。10年後もこの稼ぎが残るか。稼いだ金を賢く使うか。払う値段に余裕があるか。
一つ目は弱い。利益の大半を生む遊技機は、規制と客数の減少にさらされ、毎年の当たり外れで利益が動く。2017年3月期から3期続いた純利益の赤字が、その実例だ。強い堀を持つ会社なら、利益は流行に左右されにくい。この会社の遊技機は、そこまで言えない。
二つ目は評価できる。増配を続け、成長投資にも枠を取る。山本社長は大株主で、株主と利害がそろう。
三つ目で結論が出る。今の高い利益をそのまま10年先へ延ばせるか、まだ確かめられていない。ヒットで膨らんだ最高益に、満額の倍率は払えない。ウルトラマンは本物の資産だが、今の稼ぎは小さく、育つには年月がかかる。筆者は、この会社を手元に長く置きたい会社とまでは言えず、10年で見ると値段の余裕が足りないと判断する。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心はアミューズメント機器事業で、売上の9割を占める。仕組みはこうだ。自社で持つか権利を取ったキャラクターをもとに、提携メーカーへ遊技機の開発を持ちかける。できあがった機械を全国のホールに売る。扱うIPはエヴァンゲリオン、機動戦士ガンダム、ウルトラマン、東京喰種、犬夜叉など幅広い。ホール向けの設備を売る子会社もある。
収益は台数と1台あたりの売上で決まる。2026年3月期は27.4万台を売り、売上は約1,590億円、営業利益率は約12.5%だった。売上の6割ほどは仕入れた機械の代金である。開発は提携メーカーに任せるため身軽だが、ヒットの有無がそのまま利益に出る。
もう一つの柱がコンテンツ&デジタル事業だ。ウルトラマンを持つ円谷プロダクションが、玩具・カード・衣料などに使用を許諾して取り分を受け取る。国内最大級のCG・VFX会社デジタル・フロンティアが映像制作を担い、テレビシリーズやイベントも手がける。売上は139億円と小さく、営業利益は9億円にとどまる。
中計は、ここを2029年3月期に営業利益50億円へ伸ばし、将来は他社IPも扱うIP会社へ変える青写真を描く。ただ、今は遊技機が稼ぎ、IPはその稼ぎを使って育てる段階にある。
優良さと弱いところ
強みは、権利の厚みと、それを機械に仕立てる力である。エヴァンゲリオンは2025年のパチンコ販売で首位だった。当たり機を何度も出せるIPを複数持つ会社は、ホールから見て外しにくい取引先になる。
堀(他社がまねできない強み)は「普通」と見る。ホールに売る力は、新台を出し続けることでしか保てない。1機種の外れがシェアに響く。IPの権利は契約で守られるが、遊技機は行政の検定に通らなければ売れず、決めるのは当社ではない。
資本の効率は、いまは高い。2026年3月期のROEは21%だった。ただ、過去10年の中央値は5%で、純利益が赤字の期は過去20年で5回ある。今の水準を平常とみなすのは危うい。
弱みは偏りだ。売上の9割が遊技機で、営業利益もほぼ遊技機が稼ぐ。ウルトラマンの知名度は高いが、利益への寄与は9億円にとどまる。
経営は山本英俊社長(グループCEO)が筆頭株主で、約25%を持つ。判断が速く、増配や投資を一気に進められる。一方、特定の人への依存は、会社自身が有価証券報告書のリスクに挙げている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
遊技機は、売れる台数が横ばいでも、使われる台数は減る産業だ。2025年の販売はパチンコ87万台、パチスロ66万台で、合計153万台と前年並みだった。一方、ホールは2021年の8,458店から2025年末に6,464店へ減った。パチンコの設置台数も約234万台から約187万台へ落ちた。
二つが両立するのは、ホールが大型店へ集まりつつ、機械の入れ替えを続けているからだ。入れ替え需要が、設置の減りを埋めている。ただ、設置が減り続ければ、入れ替えの母数も細る。矢野経済研究所は、減少は鈍るが続くとみる。業界紙は、2026年のパチンコ販売が70万台を割る恐れを指摘する。
競争は、SANKYOが合計の約25%で首位、サミーとユニバーサルが続く。当社は約18%で上位に食い込んだ。勝負はIPの人気と機械の出来で決まり、順位は毎年入れ替わる。
規制も効く。型式試験の通過率が落ちれば新台が減る。2025年のパチスロの販売減は、それが一因とされる。
救いは客層の若返りだ。会社は、遊技人口が2025年に865万人、10〜20代が2021年の164万人から219万人に増えたと説明する。東京喰種のような若者向けIPが効いている。市場全体が伸びる姿は描きにくいが、下げ止まりの材料にはなる。
IPライセンスは別の市場である。中国のウルトラマンは2026年3月期に半減した。ブラインドボックスやカード販売の規制、投機資金の退出、競合IPの増加が重なった。日本のIP市場は約150億円と小さく、会社はこれを中国並みの約10倍へ育てる目標を掲げる。
資本政策と M&A
還元は厚くなっている。配当は6期連続で増え、2027年3月期は中間に60周年の特別配当を入れ、配当総額は約87億円を見込む。中間配当は来期以降も続ける方針だ。純利益に対する比率は5割台後半になる。自社株買いの実績は、筆者の調べでは確認できなかった。還元の主役は配当である。
投資の側では、2027〜2029年の営業キャッシュフローを約480億円と見て、うち最大350億円を成長投資に回す。映像、ライブイベント、AIを使った商品づくりが中心で、将来は他社IPも扱う。ここが資本配分の肝になる。IPや映像への投資は、当たれば大きいが、外れれば遊技機で稼いだ現金を溶かす。
筆頭株主の山本英俊社長は約25%を持つ。2025年9月提出の大量保有報告では、共同保有を含めて約39%だった。この構造は敵対的な買収を難しくし、TOBで高い値段がつく余地も小さくする。参考値として、kabufuの推計は10年以内のTOB・買収の確率を17%とする。
財務は純現金が約217億円、自己資本比率は約59%。借金の心配は小さい。ただ、受注残が前期比で約2割減り、在庫の増加が営業キャッシュフローを圧迫した点は見ておく。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
遊技機は、ヒットを出す力がついた。2026年3月期にシェアが約18%へ上がったのは偶然ではない。エヴァンゲリオン、ガンダム、東京喰種、犬夜叉と、強いIPを機械に仕立てる体制ができている。東京喰種の機械は若年層の比率が高く、客層を広げる役も果たす。中計は遊技機の営業利益を2029年3月期に240億円とし、足元の198億円からさらに上げる。会社は2026年7月に今期予想を引き上げ、営業利益を225億円とした。
市場の縮小も、悲観するほど深くない。販売は2025年に153万台と前年並みで、入れ替え需要が支えている。ホールが大型店へ集まるほど、人気機に注文が集まり、当たり機を持つ会社に有利になる。
IPの側では、ウルトラマンが60周年を迎える。毎週のテレビと毎夏の映画を回す計画で、国内の市場を中国並みの約10倍へ育てる目標を掲げる。中国は落ち込んだが、独占代理店と組んで立て直しに入った。ライセンスは固定費が軽く、利益率は5割に届く。当たれば、10年後の営業利益に100億円規模を足せる。
配当は厚く、現金は純現金だ。下値は固い。
慎重な見方
今の最高益は、ヒット機が重なった年の姿である。シェアは前の期の1割台前半から18%へ跳ねたが、機械の人気は長く続かない。エヴァンゲリオンの首位も、次の年には別の機種に変わる。販売台数は1年で3割以上増えており、同じ増え方は繰り返せない。受注残はすでに前期比で約2割減った。
市場そのものが細る。ホールは4年で約2割減り、設置台数は減り続ける。入れ替えの母数が細れば、新台の販売も遅れて減る。パチンコの2026年は70万台割れが懸念されている。ホールの採算が悪くなれば、機械の値上げも難しい。
規制も重い。型式試験の通過率が下がれば、計画した機種が出せなくなる。当社は純利益の赤字が過去20年で5期あり、2021年3月期の売上は388億円まで縮んだ。
IPの側も弱い。中国のライセンスは半減し、ブラインドボックスの規制や投機資金の退出で、戻りは読めない。国内の市場は約150億円と小さく、会社の目標どおり10倍になる保証はない。映像事業は利益が出ておらず、成長投資に最大350億円を使う計画は、外れれば遊技機の稼ぎを溶かす。
社長一人への依存も、会社自身がリスクに挙げている。
どちらに重みを置いたか
遊技機のヒットは続けて出せるが、市場の細りと規制を考えると、今の最高益を10年先まで引き延ばす見方は取りにくい。ウルトラマンの立て直しは本物の追い風だが、10年後の利益への寄与は限られる。そこで確率は中立を軸に、慎重な側を厚くした。楽観は1割、やや楽観は2割強にとどめた。配当の厚さと純現金は、悲観の深さを和らげる材料として床に入れている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,885 円2,418 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,354 円843 億円)。 今の値に割り戻すと 2,669 円1,662 億円、今との差 +6.0%、 期待の年率 +7.6%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 8,222 円5,118 億円 | 2,024 円1,260 億円 | +306.7% | +15.1% | 1,025 円638 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,627 円3,503 億円 | 1,767 円1,100 億円 | +193.5% | +11.4% | 1,627 円1,013 億円 |
| 中立 | 35% | 4,367 円2,719 億円 | 1,478 円920 億円 | +132.0% | +8.8% | 2,046 円1,274 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,185 円738 億円 | 996 円620 億円 | −13.4% | −1.4% | 480 円299 億円 |
| 悲観 | 11% | 323 円201 億円 | 241 円150 億円 | −77.6% | −13.9% | 62 円39 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,885 円2,418 億円 | 1,354 円843 億円 | +108.0% | +7.6% | 5,239 円3,261 億円 |
今の株価時価総額 2,519 円1,568 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% ヒットが続きウルトラマンが日本とアジアで立ち上がる 利益 274 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 8,222 円5,118 億円
遊技機でヒットが途切れず、シェアは19%前後を保つ。市場の台数は横ばいで、販売は29万台に届く。機械の値段は物価並みに上がり、利益率は13%台へ上がる。
ウルトラマンは60周年のあと、毎週のテレビと毎夏の映画が定着し、日本で一段高い水準のファンを得る。中国は立て直しに成功し、アジアでも同時に広がる。許諾先の販売額は実質で3倍を超え、ライセンスだけで営業利益は100億円近くになる。
映像・イベントも体制が広がって黒字になる。他社のIPも扱うプラットフォームになり、遊技機の稼ぎに頼らない収益の柱が立つ。
営業利益は360億円ほどで、今の2倍になる。配当は純利益の6割を返し、投資と還元を両立する。会社が掲げるIP会社への転換が、数字で確かめられる姿である。
- 遊技機(パチンコ・パチスロ):数量 29.0(遊技機の販売台数(万台)=市場の販売台数×シェア)× 価格 78(1台あたりの売上(万円・名目。周辺設備の売上を含む))→ 売上 2,250 億円・営業利益 304 億円。販売29.0万台(市場153万台×19%)、台価格は物価並みの1.34倍、営業利益率13.5%
- IPライセンス(ウルトラマン):数量 1,400(許諾先の商品の販売額(億円・実質))× 価格 0.13(円谷の取り分(販売額に対する率)×物価指数)→ 売上 188 億円・営業利益 94 億円。許諾先の販売額1,400億円(実質3.4倍)、取り分は物価込みで0.134、利益率50%
- 映像・CG・商品・イベント:数量 700(制作・事業に携わる人員(人・推定))× 価格 0.33(1人あたり売上(億円・名目))→ 売上 228 億円・営業利益 18 億円。体制700人、1人当たり売上は物価並み、利益率8%
倍率:事業の純利益 274 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 25.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍。全体の PER 17.89 倍、時価総額 4,902 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:遊技機のヒットが続き、かつウルトラマンが日本とアジアで立ち上がる。両方が要る。縮む市場の中で条件が重なる確率として、1割にとどめた。
やや楽観 22% 人気機を出し続けウルトラマンも戻る 利益 194 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 5,627 円3,503 億円
遊技機は人気機を継続して出し、シェアは17〜18%に高止まりする。市場は台数がやや縮んで145万台ほど。販売は25万台台、機械の値段は物価に近く上がる。
ウルトラマンは中国が戻り、国内も伸びる。許諾先の販売額は実質2倍ほどの900億円。映像事業は損益が均衡に近づく。
営業利益は250億円台で、中計が2029年3月期に描く水準(250億円)を、10年かけて名目で保つ姿だ。会社の計画は守られるが、遊技機の伸びは止まる。
配当は純利益の6割。成長投資の成果は映像とライセンスに出るが、買収は小さい。ホールの数が減っても、大型店向けの人気機が当たる。
- 遊技機(パチンコ・パチスロ):数量 25.4(遊技機の販売台数(万台)=市場の販売台数×シェア)× 価格 76(1台あたりの売上(万円・名目。周辺設備の売上を含む))→ 売上 1,941 億円・営業利益 243 億円。販売25.4万台(市場145万台×17.5%)、台価格1.32倍、利益率12.5%
- IPライセンス(ウルトラマン):数量 900(許諾先の商品の販売額(億円・実質))× 価格 0.13(円谷の取り分(販売額に対する率)×物価指数)→ 売上 121 億円・営業利益 54 億円。許諾先の販売額900億円(実質2.2倍)、利益率45%
- 映像・CG・商品・イベント:数量 560(制作・事業に携わる人員(人・推定))× 価格 0.33(1人あたり売上(億円・名目))→ 売上 182 億円・営業利益 9 億円。体制560人、利益率5%
倍率:事業の純利益 194 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.16 倍、時価総額 3,329 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:遊技機は人気機を出し続け、ウルトラマンも戻る。会社の中計に近い筋書きで、実現の可能性は2割強とみた。
中立 35% 市場は緩やかに縮み、IPは半分戻る 利益 152 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 4,367 円2,719 億円
遊技機の市場は、台数が横ばい圏から緩やかに縮み、シェアはヒットの出入りをならして16〜17%に落ち着く。2036年3月期は23万台ほどを売る。機械の値段は物価ほどには上がらない。ホールの採算が、値上げを許さないからだ。
ウルトラマンは、中国が半分戻り、国内が育つ。許諾先の販売額は、今の1.4倍の実質600億円まで増える。映像・イベントも体制が広がるが、利益は小さい。
営業利益は200億円ほどで、今の水準を名目でわずかに上回る。実質では2割ほど目減りした姿だ。
資本政策は大きく変わらない。配当を中心に純利益の6割ほどを返し、成長投資は映像とライセンスに絞る。大型の買収はせず、遊技機の稼ぎが10年続く形になる。
- 遊技機(パチンコ・パチスロ):数量 23.0(遊技機の販売台数(万台)=市場の販売台数×シェア)× 価格 75(1台あたりの売上(万円・名目。周辺設備の売上を含む))→ 売上 1,731 億円・営業利益 208 億円。販売23.0万台(市場140万台×16.5%)、台価格1.30倍、利益率12%
- IPライセンス(ウルトラマン):数量 600(許諾先の商品の販売額(億円・実質))× 価格 0.13(円谷の取り分(販売額に対する率)×物価指数)→ 売上 80 億円・営業利益 32 億円。許諾先の販売額600億円(実質1.4倍)、利益率40%
- 映像・CG・商品・イベント:数量 480(制作・事業に携わる人員(人・推定))× 価格 0.33(1人あたり売上(億円・名目))→ 売上 156 億円・営業利益 5 億円。体制480人、利益率3%
倍率:事業の純利益 152 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍。全体の PER 16.49 倍、時価総額 2,506 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ヒットはならして続き、市場は緩やかに縮み、IPは半分戻る。いちばん起こりやすい形として最大の確率を置いた。
やや悲観 22% ヒットの反動とホールの減少が重なる 利益 70 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,185 円738 億円
ヒット機が続かず、シェアは14%まで戻る。ホールの減少が進み、市場は125万台ほどへ縮む。販売は17〜18万台、機械の値段は物価ほど上がらない。ホールの採算が悪く、値上げが通らないからだ。
ウルトラマンの中国は戻らず、国内もそこまで育たない。許諾先の販売額は実質で今の水準にとどまり、取り分の率だけが物価で上がる。映像事業の黒字化は成らず、体制を絞る。
営業利益は90億円ほどで、今の半分だ。遊技機の稼ぎが細り、成長投資の回収も遅れる。配当は6割前後を保つが、利益が細るので総額は減る。
それでも赤字には沈まない。固定費が軽い販売会社で、現金も残るからだ。
- 遊技機(パチンコ・パチスロ):数量 17.5(遊技機の販売台数(万台)=市場の販売台数×シェア)× 価格 70(1台あたりの売上(万円・名目。周辺設備の売上を含む))→ 売上 1,216 億円・営業利益 116 億円。販売17.5万台(市場125万台×14%)、台価格1.20倍、利益率9.5%
- IPライセンス(ウルトラマン):数量 400(許諾先の商品の販売額(億円・実質))× 価格 0.13(円谷の取り分(販売額に対する率)×物価指数)→ 売上 54 億円・営業利益 16 億円。許諾先の販売額400億円(ほぼ横ばい)、利益率30%
- 映像・CG・商品・イベント:数量 400(制作・事業に携わる人員(人・推定))× 価格 0.33(1人あたり売上(億円・名目))→ 売上 130 億円・営業利益 0 億円。体制400人、利益は出ない
倍率:純利益約70億円、ROE約6.7%で資本コスト8.25%を下回るため、PERの上限は1÷k≒11.8倍。利益が薄く安定しないため、さらに低い8倍とした。
確率:ヒットの反動とホールの減少は、すでに数字に出ている。慎重な見方のほうが根拠が固いため、悲観寄りの確率を2割強に厚くした。
悲観 11% 遊技機市場が構造的に崩れ、IPも育たない 利益 −20 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 323 円201 億円
遊技機の市場が構造的に崩れる。ホールの閉店が加速し、規制の強化も重なって、販売は84万台ほどに縮む。当社も人気IPの契約を失い、シェアは11%へ下がる。機械の値段は上がらず、利益率は3%まで落ちる。
ウルトラマンも、中国が戻らず、国内の市場も育たない。許諾先の販売額は実質で6割に縮み、映像事業は赤字が続く。成長投資に使った数百億円の一部は、回収できずに減損になる。
営業利益は赤字に転じ、2017〜2021年の赤字期に近い姿だ。配当は、利益が残る最初の2年ほどだけ今の水準で払い、その後は打ち切りに近づく。赤字の年の配当は、遊休資産の売却や手元の現金でまかなう分を含む。それでも純現金の約217億円は残る。
株主の価値は、稼ぐ力ではなく、手元の現金で測られる局面になる。
- 遊技機(パチンコ・パチスロ):数量 9.2(遊技機の販売台数(万台)=市場の販売台数×シェア)× 価格 58(1台あたりの売上(万円・名目。周辺設備の売上を含む))→ 売上 534 億円・営業利益 16 億円。販売9.2万台(市場84万台×11%)、台価格は上がらず1.0倍、利益率3%
- IPライセンス(ウルトラマン):数量 250(許諾先の商品の販売額(億円・実質))× 価格 0.13(円谷の取り分(販売額に対する率)×物価指数)→ 売上 34 億円・営業利益 3 億円。許諾先の販売額250億円、利益率10%
- 映像・CG・商品・イベント:数量 350(制作・事業に携わる人員(人・推定))× 価格 0.33(1人あたり売上(億円・名目))→ 売上 114 億円・営業利益 −6 億円。体制350人、赤字
倍率:赤字のため稼ぐ力ではなく、純現金と売れる資産の税後で測る。今の自己資本609億円にPBR約0.33倍を掛け、床の201億円とした。
確率:10年のうちに市場が構造的に崩れるところまでは行かない公算が大きいが、2017〜2021年の赤字期という前例があり、1割強は置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
遊技機(パチンコ・パチスロ)
パチンコ・パチスロ機を提携メーカーと企画し、全国のホールに販売する。ホール向け周辺設備の販売・工事を含む。
| 数量遊技機の販売台数(万台)=市場の販売台数×シェア | 価格1台あたりの売上(万円・名目。周辺設備の売上を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 27.5 | 58 | 1,591 | 199 |
| 10 年後 中立 | 23.0 | 75 | 1,731 | 208 |
取り方:2026年3月期のアミューズメント機器の売上1,590.7億円を、販売台数27.48万台(パチンコ14.2万・パチスロ13.2万)で割り、1台あたり約57.9万円とした。周辺設備の売上を含む。市場は2025年で約153万台、シェアは約18%。営業利益198.8億円(利益率12.5%)は決算の値。
IPライセンス(ウルトラマン)
ウルトラマンなど円谷プロのIPの使用を許諾し、許諾先の商品の販売額に対する取り分を受け取る。
| 数量許諾先の商品の販売額(億円・実質) | 価格円谷の取り分(販売額に対する率)×物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 416 | 0.10 | 42 | 14 |
| 10 年後 中立 | 600 | 0.13 | 80 | 32 |
取り方:ライセンス収入41.6億円(うち中国25.6億円)。取り分の率は未開示のため10%と仮定し、許諾先の販売額を416億円(実質)と推定した。営業利益14億円も、セグメント営業利益9.3億円からの配分の推定。
映像・CG・商品・イベント
映像制作(デジタル・フロンティアのCG・VFX)、テレビ・映画、自社商品、ライブイベント。
| 数量制作・事業に携わる人員(人・推定) | 価格1人あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 400 | 0.24 | 97 | −5 |
| 10 年後 中立 | 480 | 0.33 | 156 | 5 |
取り方:コンテンツ&デジタルの売上138.7億円からライセンス41.6億円を引いた97.1億円。デジタル・フロンティアは約244人(採用情報)で、円谷プロ等を足し約400人、1人あたり約2,430万円と推定。営業利益は残りの-4.7億円。
リスクと懸念
ヒット機の反動
遊技機は1機種の当たり外れで利益が大きく動く。2026年3月期の販売は27.4万台と1年で3割以上増えたが、受注残は前期比で約2割減った。当たりが重ならない年が来れば、シェアは1割台前半へ戻りうる。その時の営業利益は、筆者の試算で今より3〜5割落ちる。
ホールの減少
ホールは4年で約2割減り、パチンコの設置台数も約234万台から約187万台へ減った。入れ替え需要が支えてきたが、母数が細れば新台の販売も減る。ホールの採算が悪くなれば、機械の値上げもできなくなる。
規制と検定
遊技機は行政の検定に通らなければ売れない。型式試験の通過率が落ちると新台が減り、2025年のパチスロの販売減の一因ともされた。ルールの変更で、人気の仕様が使えなくなることもある。
中国の戻りの遅れ
中国のライセンスは2026年3月期に半減し、25.6億円となった。規制、投機資金の退出、競合IPの増加が重なっている。60周年を機に独占代理店と立て直しを図るが、戻る速さは読めない。
成長投資の失敗
営業キャッシュフロー約480億円のうち、最大350億円を映像・イベント・AIなどに使う計画だ。IPや映像への投資は、当たれば大きいが外れも多い。外れが続けば、遊技機で稼いだ現金が消える。
特定の人への依存
社長グループCEOが筆頭株主で、約25%を持つ。意思決定は速い反面、特定の人への依存は、会社自身が有価証券報告書のリスクに挙げている。交代や不在があれば、投資と還元の方針が揺れうる。
IP契約の更新
遊技機の人気IPには、他社が権利を持つものが多い。契約の終了や条件の変更があれば、人気機の供給を失う。自社保有のウルトラマンと違い、更新のたびに条件が動く。
今後の分かれ目
- 次の新機種が続けて当たり、シェアが17%を保つ
- 中計の遊技機営業利益240億円が現実味を帯びる。楽観寄りの確率を引き上げて見る。
- 人気が分散してシェアが14%前後へ戻る
- 営業利益は100億円を割る水準へ落ち、配当の水準も見直しになりうる。
- パチンコの年間販売が70万台を割る
- 入れ替え需要の細りが本格化したしるし。市場の縮小幅を深く置き直す。
- 中国のライセンス収入が反転して増える
- IPの利益が育つ兆しになる。ライセンスの販売額の想定を引き上げる。
- 検定の通過率低下や仕様の変更で、計画した新台が出せなくなる
- 遊技機の売上が下振れし、ヒット頼みの弱さが表に出る。
- 成長投資で大型の映像・IP買収を発表する
- 価格と目的を見る。遊技機の稼ぎを使うなら、回収の見通しが立つかが分かれ目になる。
見ておくもの
- 遊技機の販売台数と市場シェア(四半期)
- 受注残高の増減
- パチンコ・パチスロの年間販売台数
- 国内ホール数と設置台数
- 中国のライセンス収入
- 新シリーズ・映画の視聴と興行の結果
- 配当方針(中間配当の継続)
- 成長投資の中身と回収
倍率と資本コストの決め方
倍率は、10年後の事業の純利益から出る正当化PERの9割前後に置いた。ヒットで膨らんだ利益には満額の倍率を払わないためである。今の株価や過去の倍率は倍率の根拠に使っていない。今の時価総額と比べたのは、価値を出したあとの最後の一度だけ。確率は、縮む市場とヒット頼みの重さから慎重な側を厚くした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→17.89 倍・やや楽観 PER 13→17.16 倍・中立 PER 12→16.49 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質の上乗せ1.0%を足して8.5%。個別の懸念は筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.25%。