結論
JKホールディングスは、住宅の建材を工務店や建材店に届ける卸の大手だ。中核のジャパン建材が、合板、木材、石膏ボード、サッシなどを全国に流す。売上は約4,000億円で、建材流通では渡辺パイプに次ぐ2位にいる。
筆者の結論は「割安」だ。商売は薄利で、売上に対する営業利益は1.6%しかない。それでも手元には純現金が171億円ある。時価総額の半分近くで、事業そのものは利益の5倍ほどでしか評価されていない計算になる。
ただし、この現金の半分以上は、仕入先への支払いを待ってもらっている分だ。筆者が「余った現金」と見るのは65億円までにとどめた。それでも、割安という結論は動かない。
事業の中身は地味だ。新築住宅は人口減で細り、2025年度の着工は過去最低水準まで落ちた。それでも売上は3,900億円前後を保った。値上げと、後継者のいない地場の建材店の買収が、減った量を埋めている。
10年先の中立は、売上5,500億円、営業利益100億円とみる。量は少し減り、値段は物価並みに上がり、買収でシェアがじわじわ上がる。利益率は2%に届かない。懸念は、新築のさらなる縮小と、赤字の合板製造子会社だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、JKは「悪くない事業を安く買える」型に見える。ただし、喜べるのは値段だけで、事業の質は凡庸だ。
堀は薄い。取り扱いの品は他社でも買え、粗利は12%ほどだ。物流網と仕入れの規模は強みだが、利益率に表れる力ではない。10年先も、この会社が高い利益率を稼ぐとは考えにくい。
一方で、オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は読みやすい。設備投資は小さく、運転資金は仕入先の支払いサイトに助けられている。営業キャッシュフローは年50億円前後ある。
経営者の資本の使い方は、改善の途上にある。借入金をここ数年で190億円ほど減らし、自社株買いを再開し、累進配当を掲げた。時価総額が純資産の6割に届かない状況で自社株を買うのは、理にかなう。一方、製造子会社の赤字を長く放置してきた点は減点だ。
安全域は、純現金と賃貸不動産、有形固定資産の厚みにある。悲観の筋書きでも、売れる資産と10年分の配当の合計は、今の時価総額の8割ほどある。この点で、安全域は十分に取れていると見る。確信度は中くらいに置いた。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は、建材メーカーと工務店のあいだに入ることだ。メーカーや輸入商社から合板、木材、石膏ボード、断熱材、サッシ、住宅設備を仕入れる。それを全国の物流拠点から、工務店や建材店に小口で届ける。売上の粗利は12%ほどで、薄利多売の商売である。
事業は三つの柱からなる。最大は総合建材卸売で、売上の83%を占める。中核のジャパン建材など12社が担い、営業利益の大半を稼ぐ。次が総合建材小売で、売上の13%。ブルケンなどの店舗が、地域の工務店や大工に建材を売る。三つ目が合板製造・木材加工で、売上は113億円と小さい。
製造は、合板と集成材をキーテックなどが作る。川上の原木調達まで持つ会社もあり、国産材の流れに関わる。ただし赤字が続いている。2022年3月期にウッドショックで42億円の利益を出したあと、ここ3期は毎年マイナスだ。
ほかに、足場工事の大和ビケサービス、住宅ローンの取次、物流子会社、フランチャイズ事業のハウス・デポ・ジャパンを抱える。連結の従業員は約4,100人で、グループは59社に及ぶ。
外部の顧客のうち、売上の10%を超える先は一つもない。小さな取引を無数に積み上げる構造だ。この分散が、取引先の倒産に強い一方で、値決めの力が弱い理由でもある。
優良さと弱いところ
優良さの核は、全国の物流網と仕入れの規模だ。売上が約4,000億円あり、建材流通でトップ2に入る。メーカーとの価格交渉で、地場の卸よりも有利に立てる。工務店は1つの窓口で多くの建材をそろえられるので、注文が集まる。
堀、つまり他社がまねできない強みは、広くはあるが浅い。取り扱いの品は他社でも買える。違いは納期と在庫、住宅の省エネ申請の支援といった付き合いの深さだ。この強みは、利益率の厚みにはなかなか表れない。
財務は堅い。純現金は171億円で、自己資本比率は29.5%まで上がり、借入金はここ数年で大きく減った。外部の売上が10%を超える顧客もない。ただし純現金のうち約100億円は、仕入先への支払いが売上代金の回収より遅い分だ。売上が縮むと、この分は逆に流れ出る。
弱みは資本効率と製造事業だ。ROEは6%台で、会社が目標にする9%に届かない。計画の達成度も低く、2026年3月期の営業利益は期初計画を2割下回った。製造の子会社は3年続けて赤字である。
一方で、経営の姿勢は変わりつつある。累進配当と自社株買いを掲げ、株価を意識した説明資料も出すようになった。筆者は、資本の使い方がやっと株主の方を向き始めたと見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社の需要は、新築住宅の着工に最も左右される。着工戸数は2014年度の約99万戸から、2025年度には約71万戸まで減った。2025年4月の建築基準法の改正前に駆け込みがあり、その反動が重なった。
先行きも厳しい。野村総合研究所は、2030年度に80万戸、2040年度に61万戸と予測する。人口減と世帯数の頭打ちで、新築は長期で細る。建材の価格や職人不足による建築費の高騰も、新築を押さえる。
下支えは三つある。一つはリフォームで、広い意味の市場は2040年に9.2兆円へ微増する見込みだ。二つ目は非住宅の木造で、矢野経済研究所は2030年度に1.1兆円へ広がると予測する。三つ目は、後継者のいない建材店の事業承継で、これはシェアを伸ばす好機になる。
合板は市況商品で、国産と輸入が半々ある。価格が急に動くので、卸の利益も振れる。2021年から2022年のウッドショックでは、JKの営業利益も平常の2倍以上に膨らんだ。今は落ち着いた水準にある。ただし足元は、中東情勢で供給が細り、価格が高止まりしている。
競争は、地域ごとに分散した形だ。建材と設備の流通では、渡辺パイプ、ナイス、ジューテック、ユアサ商事、伊藤忠建材、SMB建材などが競う。2025年版の売上順位では、渡辺パイプがはじめてJKを上回った。
人件費と運賃は上がり続けている。2026年3月期の販管費は3.7%増え、粗利の伸びを上回った。値上げを通せる会社が生き残る局面だ。
資本政策と M&A
還元は、ここ数年で明確に厚くなった。配当は累進配当、つまり減らさない方針で、下限も決めている。性向30%以上を目安とし、2027年度にDOE(純資産に対する配当の割合)3%を目標とする。2026年3月期は29億円の自社株買いも実行した。配当を合わせた還元は純利益を上回る。
資本の配分は、3年間の営業キャッシュフロー240億円を、成長投資105億円以上、還元50億円以上、借入金の返済に振り分ける計画だ。借入金は、ここ数年で約190億円減った。
M&Aは、小売と卸の拠点づくりが中心だ。2025年には潮田木材店、増田木材などの事業を引き継ぎ、2026年には荒木建材店と調布ハウジングを子会社にした。1件あたりの売上は10億円前後と小粒で、買収の失敗が経営を揺らす規模ではない。
株主の構成も見ておきたい。筆頭株主は石膏ボードの吉野石膏で、約13%を持つ。2025年末から2026年春にかけて、短期間で持ち株を約50万株減らした。ほかに個人の吉田繁氏が約9%、従業員持株会が約8%、SMB建材と伊藤忠建材が計10%ほど持つ。
持ち合いに近い株主が厚く、時価総額が純資産の6割に届かない。10年以内にTOB(株式公開買い付け)が起きる確率を、当サイトの参考値は2割台前半とみる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
新築が減っても、建材の量はそれほど減らない。リフォームの市場は広い意味で9兆円前後あり、非住宅の木造は2030年度に1.1兆円まで広がる。ここに大断面の集成材を持つキーテックが乗る。ティンバラムの大断面事業を引き継ぎ、製造は黒字に転じる条件がそろった。
卸売は、後継者のいない地場の建材店と卸が受け皿を探している。JKは事業承継の買収を毎年重ね、拠点を足している。シェアが1ポイント上がるだけで、売上は500億円ほど増える。M&Aの買い方も小粒で、のれんの負担も軽い。
値上げも通りやすくなる。職人不足で工事の単価が上がり、人件費と運賃の上昇を価格に載せられる。2027年3月期の第1四半期は、売上が5.8%増え、営業利益は10%増えた。中東情勢で供給が細り、卸売の価格は高水準にある。
還元の姿勢も変わった。2026年3月期は純利益を超える還元をした。DOE3%と累進配当を守り、必要なときは自社株買いを出す。時価総額が純資産の6割では、買い戻すだけで1株の価値が上がる。中計の経常利益100億円は、その延長線上にある。
慎重な見方
新築は止まらず細る。野村総合研究所は2040年度に61万戸を見込み、2025年度の71万戸からさらに減る。リフォームも、住宅ローン金利の上昇と建築費の高騰で重くなる。建材の量が減ると、薄利の卸はすぐ赤字に近づく。
利益率は構造的に伸びない。2026年3月期は売上が1.4%増えたのに、営業利益は12.6%減った。販管費が3.7%増え、粗利の伸びを上回ったからだ。人件費と運賃の上昇は止まらず、値上げが追いつかない年は利益が削られる。
製造は3期連続の赤字で、合板の市況に振り回される。経営は組織再編で赤字を縮めると言うが、ここ数年は出口が見えない。直近の計画の達成度も低い。2026年3月期は営業利益が期初計画の8割だった。
大手ビルダーの集中購買やメーカーの直販は、卸の取り分を削る。小さな買収を重ねても、のれんの管理は難しくなる。純現金の約100億円は仕入先への支払いを待ってもらう分で、売上が縮めば流れ出る。見かけほど強い財務ではない。
大株主の動きも読めない。筆頭株主の吉野石膏は持ち株を減らし始めた。株価が割安なのは、成長の源泉が見えないことへの当然の評価である。
どちらに重みを置いたか
量の減少と薄利は、慎重な言い分のとおりだ。実際、営業利益率は2%に届かず、直近の期初計画も2割外した。一方、純現金と還元の変化は、強気の言い分に分がある。事業が多少傷んでも、現金と配当で価値が下支えされる。
そこで、中立の確率を38%と最も厚くした。やや楽観は18%、楽観は6%と低めに抑えた。やや悲観を27%、悲観を11%と厚めにした。計画を大きく外した直後の会社なので、慎重側にも相応の重みを置いた。
結果として、本質価値は今の時価総額を大きく上回った。事業の質が凡庸でも、現金と配当が安全域を厚くしている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,247 円869 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,114 円298 億円)。 今の値に割り戻すと 2,397 円641 億円、今との差 +76.3%、 期待の年率 +12.4%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 7,331 円1,961 億円 | 1,739 円465 億円 | +567.0% | +20.9% | 544 円146 億円 |
| やや楽観 | 18% | 5,326 円1,425 億円 | 1,421 円380 億円 | +396.1% | +17.4% | 1,215 円325 億円 |
| 中立 | 38% | 3,755 円1,004 億円 | 1,163 円311 億円 | +261.6% | +13.7% | 1,869 円500 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,296 円347 億円 | 957 円256 億円 | +65.7% | +5.2% | 608 円163 億円 |
| 悲観 | 11% | 647 円173 億円 | 483 円129 億円 | −16.9% | −1.8% | 124 円33 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,247 円869 億円 | 1,114 円298 億円 | +220.6% | +12.4% | 4,360 円1,166 億円 |
今の株価時価総額 1,360 円364 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 6% 地場の買収でシェアが8%に上がり、製造も黒字化する 利益 108 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 7,331 円1,961 億円
新築は細るが、リフォームと非住宅の木造が穴を埋め、建材の量は今より4%ほど減るだけで済む。JKは後継者のいない地場の卸と小売を買い続け、国内の建材流通でシェアを8%まで広げる。人手不足で工事の単価が上がり、値上げも通りやすい。
合板製造は、大断面の集成材と非住宅の木造向けが伸びて黒字になる。製造子会社の赤字が消え、税の負担も正常に近づく。小売は買収した店舗を束ね、仕入れの交渉力が増して利益率が上がる。
営業利益は160億円、利益率は2.4%となる。ウッドショックの年を除けば過去の最高水準だ。ROEは11%台に乗り、DOE3%と累進配当に加えて、自社株買いも続く。会社の中計が目指す経常利益100億円は、その途中の通過点にすぎなくなる。
- 総合建材卸売:数量 48,000(住宅・小規模建築向け建材の国内流通市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 11.2%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 5,376 億円・営業利益 124 億円。市場は実質4%減、シェア8.0%(地場の卸の買収が進む)
- 合板製造・木材加工:数量 7,200(国内の合板・集成材の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 3.6%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 262 億円・営業利益 13 億円。大断面集成材と非住宅木造で黒字化(市場7,200億円×2.6%)
- 総合建材小売:数量 14,500(工務店・大工向け建材小売の国内市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 6.3%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 914 億円・営業利益 20 億円。買収した店舗を束ねて仕入れ力が増す(市場14,500億円×4.5%)
- その他(足場工事・物流・フランチャイズ):数量 41,000(足場工事・建材物流・FC支援の国内市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 0.3%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 115 億円・営業利益 3 億円。足場工事と物流が黒字化(市場41,000億円×0.20%)
倍率:事業の純利益 107 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)65 億円。全体の PER 17.69 倍、時価総額 1,961 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:リフォームと非住宅木造が新築の穴を埋め、買収が毎年積み上がり、製造が黒字化し、値上げも通る。これらが全部そろう必要がある。直近の期初計画を2割外した実績もあるので6%と低めに置いた。
やや楽観 18% 買収とリフォームで増収し、利益率が2%台に乗る 利益 85 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 5,326 円1,425 億円
建材の量は新築の減少で実質6%ほど減るが、リフォームと非住宅がそれを和らげる。JKは小粒な買収を年に数件のペースで続け、卸売のシェアを7.6%まで上げる。小売も事業承継の買収で拠点を増やす。
合板製造は、大断面の集成材と化粧板が育って赤字が消える。足場工事や物流もわずかな黒字になる。人件費と運賃の上昇は、値上げでほぼ吸収できる。
営業利益は127億円、利益率は2.1%になる。ウッドショックの年の3.3%には遠い。ROEは10%近くまで上がり、会社が目指す9%を超える。配当は累進で増え、自社株買いも折にふれて行う。
- 総合建材卸売:数量 47,000(住宅・小規模建築向け建材の国内流通市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 10.4%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 4,894 億円・営業利益 103 億円。市場は実質6%減、シェア7.6%
- 合板製造・木材加工:数量 7,000(国内の合板・集成材の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 3.2%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 221 億円・営業利益 7 億円。赤字が消え薄利に(市場7,000億円×2.3%)
- 総合建材小売:数量 14,000(工務店・大工向け建材小売の国内市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 5.8%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 806 億円・営業利益 15 億円。買収の積み上げで増収(市場14,000億円×4.2%)
- その他(足場工事・物流・フランチャイズ):数量 40,000(足場工事・建材物流・FC支援の国内市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 0.2%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 99 億円・営業利益 2 億円。小さな黒字(市場40,000億円×0.18%)
倍率:事業の純利益 84 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)65 億円。全体の PER 16.23 倍、時価総額 1,425 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収の積み上げと製造の赤字解消が進むが、人件費と運賃の上昇を吸収しきれず、利益率は2%前後で止まる。蓋然性のある強気の姿として18%を置いた。
中立 38% 量は少し減り、値段は物価並み。買収で薄く広く伸びる 利益 65 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 3,755 円1,004 億円
新築住宅は2030年度までいったん戻り、その後に細る。10年先の着工は、2025年度と同じ70万戸前後になる。建材全体の量は実質で7%ほど減るが、リフォームと非住宅の木造が受け止める。値段は物価並みに上がる。
JKは地場の卸と小売を買い続け、卸売のシェアを6.6%から7.2%に上げる。小売も3.9%まで上げる。買収する会社は小さく、のれんの負担は軽い。製造は組織再編と大断面の集成材で赤字を脱し、薄い黒字になる。
営業利益は100億円、利益率は1.8%だ。2026年3月期の1.6%を少し上回る。人件費と運賃の上昇を価格に載せるのが精いっぱいで、利益率は伸びない。ROEは7%台で、資本コストをわずかに下回る。DOE3%と累進配当は守られ、自社株買いも折にふれて続く。
- 総合建材卸売:数量 46,500(住宅・小規模建築向け建材の国内流通市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 9.6%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 4,486 億円・営業利益 85 億円。市場は実質7%減、シェア7.2%(買収で0.6ポイント上積み)
- 合板製造・木材加工:数量 6,650(国内の合板・集成材の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 2.7%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 178 億円・営業利益 2 億円。赤字を脱し薄利(市場6,650億円×2.0%)
- 総合建材小売:数量 13,950(工務店・大工向け建材小売の国内市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 5.2%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 729 億円・営業利益 12 億円。買収でシェアを積む(市場13,950億円×3.9%)
- その他(足場工事・物流・フランチャイズ):数量 38,000(足場工事・建材物流・FC支援の国内市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 0.2%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 82 億円・営業利益 1 億円。足場・物流・FCは薄利(市場38,000億円×0.16%)
倍率:事業の純利益 64 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)65 億円。全体の PER 14.57 倍、時価総額 1,003 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新築は細るが、リフォームと買収が量を支え、値段は物価並みに上がる。利益率は今と同じ水準で、製造の赤字は消える。いちばん確からしい筋書きとして38%を置いた。
やや悲観 27% 新築の細りと人件費の上昇で、利益率が1%台前半に沈む 利益 33 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,296 円347 億円
新築住宅が人口減と建築費の高騰で想定より早く細り、建材の量は実質で12%ほど減る。リフォームは住宅ローン金利の上昇で伸びきらない。値上げは物価の伸びに届かず、人件費と運賃の上昇を吸収しきれない。
卸売は、買収でシェアを保つのが精いっぱいだ。大手ビルダーの値引き要求も強まる。製造は赤字が残り、足場工事や物流も振るわない。仕入先への支払いを待ってもらう分が縮み、現金の一部が流れ出る。
営業利益は54億円、利益率は1.2%に下がる。純利益は33億円ほどで、ROEは4%台にとどまる。DOEの目標3%は満たせず、配当は下限近くに張りつく。自社株買いはほとんどなくなる。それでも赤字にはならず、現金が積み上がるため、財務が傷むことはない。
- 総合建材卸売:数量 44,000(住宅・小規模建築向け建材の国内流通市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 8.3%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 3,630 億円・営業利益 51 億円。市場は実質12%減、値上げは物価に届かない
- 合板製造・木材加工:数量 6,300(国内の合板・集成材の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 2.0%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 126 億円・営業利益 −1 億円。赤字が残る(市場6,300億円×1.6%)
- 総合建材小売:数量 13,200(工務店・大工向け建材小売の国内市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 4.3%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 561 億円・営業利益 6 億円。買収の分だけシェアを保つ(市場13,200億円×3.4%)
- その他(足場工事・物流・フランチャイズ):数量 36,000(足場工事・建材物流・FC支援の国内市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 0.2%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 59 億円・営業利益 −1 億円。足場・物流の赤字が残る(市場36,000億円×0.13%)
倍率:事業のROEは4%台で、資本コスト7.25%に届かない。この場合のPERの上限は1÷k=12.1倍で、式の約8.8倍の範囲で稼ぐ力として約66%の8.0倍を置いた。
確率:新築が想定より細り、値上げが物価に届かない姿。製造の赤字も残る。直近の期初計画を2割外した会社なので、27%と中立に近い厚みで置いた。
悲観 11% 構造的に負ける:新築の縮小と中抜きで、取り分を削られる 利益 9 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 647 円173 億円
新築住宅が人口減と建築費の高騰で3〜4割減り、建材の量は実質で22%ほど減る。大手ビルダーが建材を直接買うようになり、メーカーの直販も増える。JKは値引きに応じざるをえず、シェアが6.0%に落ちる。
製造は赤字が続き、減損が出る。足場工事と物流も赤字が残る。小売は店舗の統廃合で縮む。買収した会社の収益も伸びず、のれんの減損が重なる。仕入先への支払いを待ってもらう分が縮み、現金の多くが流れ出る。
営業利益は16億円、利益率は0.5%にとどまる。純利益は9億円ほどで、赤字には至らないが、事業の稼ぎは細る。配当は下限を割り、小幅に減らす。それでも賃貸不動産や有価証券などの売れる資産が、株主の価値を下支えする。
- 総合建材卸売:数量 39,000(住宅・小規模建築向け建材の国内流通市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 6.7%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 2,621 億円・営業利益 21 億円。市場は実質22%減、大手の直仕入れでシェア6.0%に低下
- 合板製造・木材加工:数量 5,500(国内の合板・集成材の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 1.6%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 86 億円・営業利益 −4 億円。合板の赤字が続き減損(市場5,500億円×1.4%)
- 総合建材小売:数量 11,000(工務店・大工向け建材小売の国内市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 3.4%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 370 億円・営業利益 1 億円。店舗の統廃合で縮小(市場11,000億円×3.0%)
- その他(足場工事・物流・フランチャイズ):数量 30,000(足場工事・建材物流・FC支援の国内市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア)× 価格 0.1%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 40 億円・営業利益 −2 億円。足場・物流が赤字(市場30,000億円×0.12%)
倍率:稼ぐ力は純利益9億円×PER6.5倍で約60億円にとどまり、事業のROEは1%台で資本コスト7.25%を大きく下回る。そこで値は、余った現金・賃貸不動産・有価証券の税後を合わせた床の資産172億円(今の自己資本641億円の0.27倍)で置いた。市場の値付けは根拠にしない。
確率:新築が3〜4割減り、大手ビルダーの直仕入れとメーカーの直販が卸の取り分を削る、構造的な負けの姿。人件費の上昇も重なる。この会社は純現金が厚く赤字には落ちないので、11%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
総合建材卸売
ジャパン建材を中核に、合板・木材・石膏ボード・サッシ・住宅設備などを、工務店や建材店に卸す。物流も自社で持つ。
| 数量住宅・小規模建築向け建材の国内流通市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 50,000 | 6.6% | 3,310 | 63 |
| 10 年後 中立 | 46,500 | 9.6% | 4,486 | 85 |
取り方:卸売の売上3,310億円と営業利益63億円は決算説明資料のセグメント実績による。国内の住宅・小規模建築向け建材の流通市場を約5兆円(開示なし、推定。新設住宅71万戸の建材費、リフォームの材料費、非住宅の木造などから積んだ概算)とみて、シェア約6.6%と逆算した。数量は実質の市場、物価3%は価格に入れた。
合板製造・木材加工
キーテック(合板・大断面集成材)、ティンバラム(集成材)など。国産合板や集成材を作って売る。
| 数量国内の合板・集成材の市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7,000 | 1.6% | 113 | −6 |
| 10 年後 中立 | 6,650 | 2.7% | 178 | 2 |
取り方:売上113億円と営業利益マイナス6億円は決算説明資料による。国内の合板と集成材の市場を約7,000億円(推定。国産・輸入の半々を含む)とみて、シェア約1.6%と逆算した。数量は実質の市場、物価3%は価格に入れた。
総合建材小売
ブルケン各社、ハウス・デポ関連など、地域の工務店や大工に建材を売る小売店舗網。事業承継の買収で広げている。
| 数量工務店・大工向け建材小売の国内市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 15,000 | 3.4% | 512 | 8 |
| 10 年後 中立 | 13,950 | 5.2% | 729 | 12 |
取り方:売上512億円と営業利益8億円は決算説明資料による。工務店・大工向けの建材小売市場を約1.5兆円(推定)とみて、シェア約3.4%と逆算した。数量は実質の市場、物価3%は価格に入れた。
その他(足場工事・物流・フランチャイズ)
ハウス・デポ・ジャパンのフランチャイズ、足場工事の大和ビケサービス、グループ物流など。
| 数量足場工事・建材物流・FC支援の国内市場(今の値段で測った実質・億円、推定)× シェア | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40,000 | 0.1% | 51 | −2 |
| 10 年後 中立 | 38,000 | 0.2% | 82 | 1 |
取り方:売上51億円と営業利益マイナス2億円は決算説明資料による。足場工事・建材物流などの周辺市場を約4兆円(推定)とみて、シェア約0.13%と逆算した。数量は実質の市場、物価3%は価格に入れた。
リスクと懸念
新築住宅の縮小
新設住宅は2025年度に約71万戸まで落ち、野村総合研究所は2040年度に61万戸と予測する。リフォームと非住宅の木造で補う前提だが、補いきれない年は量が減る。薄利の卸は、量が1割減るだけで利益が大きく削られる。
人件費と運賃の上昇に値上げが追いつかない
2026年3月期は売上が1.4%増えたのに、営業利益は12.6%減った。販管費が3.7%増え、粗利の伸びを上回った。値上げを通せない年が続けば、営業利益率の1.6%はさらに下がる。
合板の製造子会社の赤字
製造事業はここ3期、営業利益がマイナスだ。2026年3月期は6億円の赤字で、減損も出した。合板は国産と輸入が半々で、価格は市況で急変する。組織再編の効果が出なければ、赤字は固定費として残る。
計画の未達とM&Aの回収
2026年3月期の営業利益は、期初計画の80億円に対して64億円だった。中計の最終年度の経常利益100億円は、27年3月期の予想70億円から遠い。小粒な買収を重ねても、のれんと統合の負担が積み上がりかねない。
仕入先への支払いを待ってもらう現金
純現金171億円のうち、約100億円は仕入債務が売上債権と在庫を上回る分だ。売上が縮んだり、仕入先が支払いを早めたりすれば、現金は逆に減る。見かけの純現金ほど、余裕はない。
大手ビルダーの直仕入れとメーカーの直販
住宅メーカーやビルダーが大きくなると、建材を直接買う動きが強まる。メーカーも直販を広げる。卸が提供する物流と在庫の機能が、自前で代替されると、取り分が削られる。
大株主の動き
筆頭株主の吉野石膏は、2025年末から2026年春にかけて持ち株を減らした。取引先でもある株主が多く、売却や再編の動きが株価を左右しうる。TOBが起きれば価値は上がりうるが、起きるかどうかは読めない。
今後の分かれ目
- 卸売事業の営業利益率が2.2%を超えて定着する
- 値上げと買収の効果が出ている証拠になる。楽観・やや楽観の確率を上げてよい。
- 製造事業が黒字に転じ、通期でも赤字が出なくなる
- 組織再編の効果が確認でき、利益率と税の負担の両方が改善する。やや楽観に重みを移す。
- 新設住宅の着工が年60万戸台に落ち込み、リフォームも伸びない
- 量の減少が想定より速い証拠になる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 2028年3月期までに中計の経常利益100億円を達成する
- 計画の達成度が改善した証拠になる。中立の利益率を見直し、楽観側に寄せる。
- 吉野石膏や取引先が持ち株を市場で大量に売る、または公開買い付けが発表される
- 需給が崩れるか、価値が評価される局面になる。TOBなら価値の上振れ要因になる。
- 仕入債務が減り、純現金が急に減り始める
- 仕入先への支払いを待ってもらう構造が崩れた合図になる。余った現金を小さく見直す。
見ておくもの
- 卸売事業の営業利益率と、販管費の伸び(人件費・運賃)
- 新設住宅着工戸数と、リフォーム・非住宅木造の動き
- 製造事業(キーテック・ティンバラム)の営業利益
- 事業承継の買収の件数と、のれんの額
- 仕入債務と売上債権の差(純現金の質)
- 自社株買いの実績と、DOE・配当性向の推移
- 吉野石膏など大株主の持ち株の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPERを見ず、各筋書きのROEと資本コスト7.25%(基本7.5%に循環+0.5・値決め+0.25)から正当化PERを計算し、その上限(1÷k=12.1倍)の内側に置いた。ROEがkをわずかに下回る中立は上限の約9割とし、kに届かないやや悲観・悲観は稼ぐ力として置いた。余った現金は純現金171億円から仕入先への支払いを待ってもらう分約104億円を引いた65億円とし、戻り方は還元性向100%超の実績から1.0とした。賃貸不動産の含み益は賃料が利益に入っているので、悲観の床だけに使った。小売は自社所有の店舗が多くリース負債は小さいため、新リース会計基準(2028年3月期から)で価値は動かない。10年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→17.69 倍・やや楽観 PER 12→16.23 倍・中立 PER 10.5→14.57 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+0.75%(循環+0.5・値決め+0.25)を足してk 7.25%。純現金で借金の上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.25%。