結論
コパ・コーポレーションは、商品を実際に使って見せる実演販売を起点に、テレビ通販やネット通販へ日用品を卸す会社だ。筆者の結論は「割高」である。2027年2月期の中間決算では営業黒字に転じたが、売上はなお前年を下回り、再び高い資本利益率を保てると判断するには早い。
2021年3月期に約68億円あった売上は、2026年2月期に約18億円まで縮んだ。4期続いた最終赤字で自己資本も約8億円まで減った。一方、ゴムポンつるつるやTsukumo傘など、用途を目の前で示すと伝わりやすい商品を作り、同じ実演映像を複数の販路で使う仕組みには一定の競争力がある。ネット上の説明文だけでは売りにくい商品を見いだす感覚は、10年後も消えないだろう。
ただし、それは強い独占ではない。テレビの放送枠、通販会社の採用、広告の成果、流行商品の寿命を自社だけでは制御できない。今の在庫は資産であると同時に、値崩れすれば現金を失う危うさでもある。2027年2月末が期限の上場維持基準不適合も、株主にとって無視できない。
2036年の中立では売上約28億円、純利益約0.75億円までの回復を考えたが、利益を留保しても資本コストに届きにくい。現在の時価総額約8.74億円に対し、五つの筋書きの加重現在価値は約3.88億円となる。差は約マイナス55.6%である。良い商品があることと、今の株主が払う値段に十分な安全域があることは別である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の目で問うべきことは、画面に映ったときに商品が売れるかではなく、10年にわたり売れる商品を繰り返し作り、得た現金を株主のために残せるかである。同社は商品に触れて驚く体験を商売にする。実演販売士の技能と商品発掘の眼力は一朝一夕には育たず、それ自体には価値がある。
ただ、価値のある技能と、資本を増やし続ける仕組みは同一ではない。売れた商品が次の年にも売れる保証はなく、卸先が自社で商品を作れば価格決定権は失われる。かつての好調期の利益率だけを見て、同じ収益性が再び10年間続くと考えるのは危険だ。実際に売上とROEは大きく後退し、多額の棚卸資産を抱えている。
この会社のオーナー利益は損益計算書の当期利益より厳しく見るべきである。顧客に売れない商品は在庫評価損となり、売れた商品の代金も回収まで現金にならない。2027年2月期中間期の営業黒字と営業現金流出の食い違いは、まさにその注意を促している。必要な商品仕入れや店舗賃料を差し引いた後に現金が何年も残って初めて、株主への再投資利回りが確認できる。
将来の価値を決めるのは、広告費削減の一度きりの成功ではなく、新しい商品を育てるたびに少ない追加資本で利益が増えるかどうかだ。実演販売が優位を保ち、売上に対する在庫を減らし、余剰資金を還元する道筋がはっきりすれば評価を上げられる。しかし現在は、回復の可能性に対して証拠が少なく、安全域の厚い投資先とは言いにくい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方の中心は、普通の卸売とは少し違う。実演販売士が商品の汚れ落ちや使い心地を目の前で見せ、消費者が納得した場面をテレビ番組や動画に広げる。その結果生まれた需要を、テレビ通販の番組運営会社への卸売、Amazonなどのネット通販、量販店・ドラッグストアへの卸売、自社店舗でも回収する。会社はこれを「3Dマーケティング販売戦略」と呼ぶ。
2026年2月期の販売先別売上は、テレビ通販約8.10億円、ネット通販約5.46億円、店頭向けベンダー販売約3.32億円である。この三つで全体の約95%を占める。テレビではジュピターショップチャンネルやロッピングライフなどの番組運営会社に商品を納めるため、画面上の小売売価がそのまま自社売上になるわけではない。ネット通販では商品の販売代金を得る代わりに、モール手数料、物流費、広告費を負担する。
小さい販路として、直営店「デモカウ」が約0.35億円、統合した「わくたん」系とその他が約0.23億円ある。クラウドファンディングの手数料と商品販売が混在するため、ここだけは注文単価を収益換算の目安として扱う。企業の依頼を受けた動画制作、実演販売士の派遣、社内研修などのセールスプロモーションは約0.33億円だ。これは物販と違い、人の出演・制作工数を売る事業でもある。
商品は「ゴムポンつるつる」「パルスイクロス」、エアコン洗浄剤、Tsukumo傘、「鎬」包丁などに広がる。自社ブランドや独占販売契約は、同じ商品の無断値下げを防ぐ手段になる。しかし製造設備を多く抱えない軽さの裏側には、仕入先、出演者、通販番組、モールの都合に左右される不安定さがある。2026年8月末の棚卸資産は約4.45億円であり、売れ筋の入れ替えを誤れば利益がすぐに消える。
優良さと弱いところ
同社の強みは、物を売る前に使い方を体験させる技術である。掃除用具や美容雑貨は、説明だけでは性能が伝わりにくい。実演販売士の話し方、現場で拾った反応、それを商品企画に戻す流れには蓄積がある。自社ブランドと独占販売を組み合わせ、実演の広告効果を他社にただ乗りされにくくする工夫も評価できる。
しかし、堀、つまり競争相手が容易に越えられない壁はまだ狭い。顧客が年間契約で離れられないわけではなく、番組運営会社は扱う商品と放送枠を変えられる。価格を毎年引き上げても売上数量が落ちないという開示実績も見当たらない。実演そのものを動画制作会社や人気配信者がまねることはできるし、Amazonや大手小売企業は代替品を並べられる。
資本効率は上場後に大きく崩れた。2020年ごろには二桁の営業利益率を稼いだが、2023年2月期から4期連続で営業損失となり、直近7年間のROE中央値はマイナス4.8%だ。旧来の利益を商品開発や在庫に再投資しても、増分の投下資本利益率が資本コストを上回った証拠にはならない。2027年2月期の中間では粗利益率40.0%を守りながら販管費を前年同期より18.6%減らし、費用構造を改善した点は事実として評価する。
それでも同じ中間期に営業キャッシュフローは約0.88億円の流出だった。売掛金が増え、仕入債務が減ったためで、会計上の黒字が株主の使える現金に変わったとは言えない。実演の知恵を持つ小型商社として生き残る余地はあるが、値上げ力と継続的な高ROEを前提に「強い堀」とみなすのは早計である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
最大の販路であるテレビ通販は、顧客年齢層や番組枠の変化を受ける成熟市場だ。電通の「情報メディア白書2026」によると、2024年度の国内テレビ通販市場は約6,640億円で微減だった。同社のテレビ向け卸売上8.10億円はこの市場の約0.12%に当たるが、市場は小売取扱高、会社側は卸売上であり、厳密なシェアではない。ジュピターショップチャンネルやQVCジャパンなどが販売枠を握り、同社はその商品供給者でもある。会社別の商品供給シェアは公表されていない。
成長するのはネット側である。経済産業省が2026年10月に公表した調査では、2025年の物販系BtoC-ECは15兆8,233億円、うち生活雑貨・家具・インテリアが約2兆6,258億円だった。同社のネット販売額は後者の約0.021%に相当するが、扱う美容・清掃用品の分類差があるため参考値にすぎない。Amazon、楽天市場、メーカー直販、動画配信者による販売との競争が強く、ネット市場全体が伸びても一社の注文数が自動的に伸びるわけではない。
ベンダー販売の主戦場となるドラッグストアは、業界団体の2025年度推計で約10.64兆円の市場規模がある。ただし食品や医薬品も含むため、その全体に対する同社のシェアを意味のある精度で算定することはできない。カインズ、DCM、コーナン、ドラッグストア各社、アイリスオーヤマなどのメーカー・小売網が競争相手となる。店舗に入れられるか、導入後に何点売れるか、商品数を増やせるかが数量の分かれ目だ。
中立ではテレビ通販の実質市場数量が10年で約0.85倍になる中、同社が企画枠を確保して出荷数量を少し増やすと考える。ネットの生活雑貨需要は実質で約1.2倍、同社の受注数は1.32倍とし、小幅なシェア獲得を条件にする。価格には物価年3%を基本的に含めるが、値引き圧力の強い人材派遣・動画制作には同じ上昇を認めない。店頭で生身の人が実演する価値は残っても、デジタルコンテンツの制作や研修の一部はAIエージェントに置き換わる。
資本政策と M&A
2026年10月15日公表の成長計画では、2030年2月期の売上高21.55〜25.16億円、営業利益0.215〜1.72億円を見通す。これは2027年2月期の営業損益がほぼゼロに戻ることを起点に、テレビ通販枠の獲得、店舗への新商品導入、TikTok Shopでのライブコマース、販促業務の拡大を目指す計画だ。ただしROE目標は示されず、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額については数字の約束なしである。会社の配当方針自体も、実施時期は未定としている。
直近5年間は無配で、株数を大きく減らす自社株買いの実績も確認できない。過去の買収で事業を一気に拡大した会社ではなく、2015年の子会社吸収合併以降は実演販売と商品開発、通販網への自前の投資が中心である。ところが在庫と広告に投じた資金の回収効率は悪化し、2026年2月期には売れ行きの弱い在庫を処分した。持続的な還元より先に、棚卸資産の回転と営業現金収支を改善する責任がある。
株主構成は集中している。2026年2月期の上位10株主は77.47%を持ち、10月には創業者が14万株を市場外で譲渡したが、共同保有グループの持分はなお約64%ある。市場外の既存株譲渡は新株発行でも自社株買いでもない。経営陣と少数株主が現金の使い方を共有できるかは未知数である。
さらに2026年2月末の流通株式時価総額は約4.13億円で、東証グロースの5億円基準に届かなかった。改善期限は2027年2月末であり、上場廃止は未決定だが失敗時の影響は大きい。2026年7月の資本金減少は剰余金への振替であって、新しい現金を生んだわけではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
実演販売そのものを発明し直す必要はない。同社は長年の実演口上、出演者の育成、テレビ放送との関係をすでに持ち、その動画をAmazonの販売ページ、SNS、店頭へ横展開できる。視聴者が商品の違いを理解した後に別の場所で買うことまで取り込めれば、一回の広告費から何度も売上を生み出せる。ゴムポンつるつるの累計販売実績や新商品の相次ぐ投入は、ヒットが単発で終わらない可能性を示す。
2027年2月期中間には、粗利益率が40%へ改善し、販管費を18.6%減らして実際に営業黒字へ戻した。生成AIを使った外注削減、わくたん系サービスの統合、海外製品の直接仕入れは、規模が小さい会社だからこそ利益率へ速く効く。今後も広告の効率と商品原価を改善できれば、売上増が利益に直結しやすい。
TikTok Shopでのライブ配信を実演販売士自身が担う戦略には、既存の販売文化との整合性がある。動画を見た後にすぐ購入できる販路が伸びれば、テレビが減速しても新しい顧客を獲得できる。テレビ枠と量販店の導入数を同時に増やせた場合、2030年の経営計画を通過点として2036年の規模をさらに広げる余地がある。大規模な工場投資が不要なため、資本配分さえ改善すれば残った利益を株主に回す選択肢も生まれる。
慎重な見方
会社が過去に稼いだ利益を基準にするのは危うい。2021年3月期に約68億円あった売上は直近期には約18億円であり、四期連続赤字という事実は、良い商品を見つける技術だけでは競争優位が維持できなかったことを示す。テレビ番組が取り上げなければ新商品は広がらず、Amazonでは広告費と値引き競争が続き、ドラッグストアの棚は大手メーカーが奪い合う。自社の意思だけで数量を伸ばせない。
在庫は2026年8月末時点でも約4.45億円にのぼる。会計上の粗利益が増えても、売掛金の回収や滞留在庫の処分で現金が減る。実際、直近の中間期は黒字でありながら営業キャッシュフローが赤字だった。商品の入れ替えが続くほど広告、仕入れ、物流の費用が増えるため、利益率が回復したとしても株主の自由な現金が増えるとは限らない。
上場維持基準への適合期限が迫るのも無視できない。改善策として大株主が株を譲ったが、これは企業の収益力を高める資本政策ではない。上場が維持できなければ流動性や取引条件は変わり、買収や完全子会社化が起きたとしても少数株主に高い価格が保証されるわけではない。さらに動画制作や人手に依存するセールスプロモーションではAIエージェントの代替が進み、実演とコンテンツ制作に付けられる手数料も細る可能性がある。
どちらに重みを置いたか
実演販売の知見は買い手の理解を助けるが、4期続いた損失、放送枠への依存、在庫の多さに比べればまだ堀は狭い。直近の黒字は人件費や広告費の削減を伴うもので、売上数量の反転を示さない。そこで楽観10%、やや楽観19%、中立31%、やや悲観25%、悲観15%とし、下側を上側より11ポイント重くした。AI代替が及ぶのは主に売上約2%の販促サービスだが、残りの物販も販路と商品寿命のリスクが大きい。現金の回収力と上場基準への適合が確認できるまで、現在の時価総額に十分な安全域は認められない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 299 円9 億円(+ 還元の換算額還元の合計 12 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 131 円4 億円、今との差 −55.9%、 期待の年率 +0.5%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 843 円25 億円 | 61 円2 億円 | +204.3% | +12.4% | 90 円3 億円 |
| やや楽観 | 19% | 456 円14 億円 | 20 円1 億円 | +60.4% | +5.0% | 91 円3 億円 |
| 中立 | 31% | 274 円8 億円 | 7 円0 億円 | −5.6% | −0.6% | 87 円3 億円 |
| やや悲観 | 25% | 154 円5 億円 | 0 円0 億円 | −48.3% | −6.4% | 38 円1 億円 |
| 悲観 | 15% | 30 円1 億円 | 0 円0 億円 | −89.8% | −20.4% | 5 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 299 円9 億円 | 12 円0 億円 | +4.6% | +0.5% | 311 円9 億円 |
今の株価時価総額 297 円9 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 実演をSNSへ移植し販路拡大 利益 2 億円 · PER 11.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 843 円25 億円
通販番組の出演者を増やし、大型放送枠の確保に成功する。実演の見せ方がTikTok Shopで定着し、テレビで知った商品をネットで買う流れを自社の売上に変える。ゴムポンつるつるに続く主力商品が複数生まれ、Tsukumo傘や美容用品も毎年の定番になり、放送枠が増えるだけでなく出荷数量が伸びる。
テレビ向けの実物出荷は2026年比1.45倍、ネット注文は1.70倍、量販店向け商品は1.60倍となる。テレビ通販市場そのものが縮んでも放送枠内の存在感を大きく増し、競合メーカーから棚を奪う。商品単価には物価上昇に加えて高付加価値品への移行が映る。ただし広告制作・派遣の案件数はAIエージェント代替を考慮して増やさず、需要の本体は有形商品に置く。
2030年の会社計画の上側を超えて売上約39億円に届く。広告の費用対効果を改善しながら販管費の規模拡大を抑え、2036年営業利益は約3.3億円となる。利益の一部を還元しても店舗・商品の更新投資に必要な資本を残せる。上場維持基準には早期に適合し、将来の事業売却や提携も株主の選択肢として残る筋書きである。
- テレビ通販向け商品卸:数量 65.3(年販出荷数量(万点・推計))× 価格 2,610(自社の税抜平均卸売単価(円/点))→ 売上 17 億円・営業利益 6 億円。テレビ通販の商品枠と出荷率を大幅拡大
- インターネット通販:数量 30.6(年間注文数(万注文・推計))× 価格 4,154(1注文当たり自社売上(円/注文))→ 売上 13 億円・営業利益 6 億円。SNSから直接購入する注文を獲得
- ベンダー・量販店向け卸:数量 35.2(年間納入数量(万点・推計))× 価格 2,142(税抜平均卸単価(円/点))→ 売上 8 億円・営業利益 3 億円。ドラッグストア・量販店の採用品目を増加
- セールスプロモーション・派遣・動画:数量 120(有償出演・制作案件換算(件・推計))× 価格 36(1案件換算の売上(万円/件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AIによる動画制作受託の数量増は見込まない
- デモカウ直営店舗:数量 1.6(年間購買件数(万件・推計))× 価格 5,032(1件当たり売上(円/件))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。実演の購買件数と高単価商品が増加
- わくたん・わくたんマーケット等:数量 1.3(注文・取引換算数(万件・推計))× 価格 4,461(手数料込み取引1件当たり収益(円/件))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。自社ECの取引を増やす
倍率:資本コストk=9.25%、2036年ROE=2.27÷16.17532=14.03%。moat=weakで超過ROEが残る割合は3分の1、RONICは約10.85%、長期名目成長率gは1%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=約11.00倍で、楽観側は式の上限そのものにする。市場の過去PERは使わない。自己資本は期首7.67532億円+10年間の累計純利益10.30億円−累計還元1.80億円=16.17532億円と整合する。
確率:大型テレビ通販枠、物販の高い実質数量成長、複数の連続ヒット、SNSでの顧客獲得、在庫圧縮が同時に成功する必要があり、単発の人気商品だけでは足りないため10%とした。
やや楽観 19% 計画達成後も採用商品が増える 利益 1 億円 · PER 10.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 456 円14 億円
経営が公表した2030年2月期の売上・利益目標をおおむね達成し、その後も新商品が途切れない。テレビ通販の大型枠を毎年必ず獲得できるほどではないが、既存商品の再登場と新しい実演販売士の育成によって番組運営会社との取引を維持する。国内テレビ市場が細っても、同社の出荷点数は今より2割増える。
ネットではAmazonに加え、自社発の短尺動画やライブ配信から購入する流れが育つ。注文数は約1.4倍になり、量販店向けもTsukumo傘に続く日用品が採用されて約1.36倍の数量となる。競合のアイリスオーヤマや小売各社のプライベートブランドと争うため、粗利益率は大幅には上がらない。AIで代替されやすい動画・研修の受託件数は約1割減る。
2036年には売上約31.5億円、営業利益約1.8億円に達し、今よりは安定する。売上の伸びは資本効率も改善させるが、高水準のROEを十年後も確実に維持できるとまでは言えない。純利益が積み重なれば少額の株主還元を再開する可能性があるものの、現時点の会社方針から無条件の高い還元率は想定しない。
- テレビ通販向け商品卸:数量 54.0(年販出荷数量(万点・推計))× 価格 2,502(自社の税抜平均卸売単価(円/点))→ 売上 14 億円・営業利益 5 億円。大手テレビ通販で商品枠を維持・増加
- インターネット通販:数量 25.6(年間注文数(万注文・推計))× 価格 4,063(1注文当たり自社売上(円/注文))→ 売上 10 億円・営業利益 5 億円。ライブ販売の定着で注文が増える
- ベンダー・量販店向け卸:数量 29.9(年間納入数量(万点・推計))× 価格 2,067(税抜平均卸単価(円/点))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。傘以外の日用品も量販店に採用
- セールスプロモーション・派遣・動画:数量 106(有償出演・制作案件換算(件・推計))× 価格 35(1案件換算の売上(万円/件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。外部動画受託はAI代替で微減
- デモカウ直営店舗:数量 1.3(年間購買件数(万件・推計))× 価格 4,784(1件当たり売上(円/件))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。既存店と体験販売が堅調
- わくたん・わくたんマーケット等:数量 0.9(注文・取引換算数(万件・推計))× 価格 4,362(手数料込み取引1件当たり収益(円/件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。統合ECが小幅に拡大
倍率:資本コストk=9.25%、2036年ROE=1.25÷14.07532=8.88%でk未満。稼ぐ利益が資本コストに届かないため正当化PERの上限は1÷k=10.81081倍。長期名目g=1%でも新規資本で増価を認めず、現行の市場PERを参照しない。期首自己資本7.67532億円+累計純利益7.00億円−累計還元0.60億円=期末14.07532億円である。
確率:新商品の導入数拡大と費用構造の回復には2027年上期の実績があるが、同時にテレビ・ネット・ベンダーが減収であり、2030年の計画上振れの持続に確証はないため19%。
中立 31% 生き残りながら緩やかな回復 利益 1 億円 · PER 10.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 274 円8 億円
同社は2027年の損益黒字化を実現し、2030年には公表した成長計画の中ほどに達する。ただし往年の大ヒット商品の勢いは戻らず、通販の番組枠は他の売れ筋商品との奪い合いが続く。テレビ通販市場の実質数量は縮む一方で、取扱番組と商品の採用を少し増やし、同社の実物出荷は1.07倍にとどまる。
Amazonなどの通販モールでは注文が1.32倍、量販店向けは商品採用の増加で納入点数が1.25倍となる。市場全体が伸びるだけでは十分ではなく、小さいながらシェアを拡大できることが前提だ。物販単価は年3%の物価上昇に沿うが、値段を上げられる特別な強さまでは認めない。派遣・研修・動画受託はAIエージェントに置き換わる仕事が増え、案件数量が0.70倍に縮む。
粗利益は売上約28.0億円に対し約11.3億円となる。会社が直近に進めた広告費削減、外注内製化、システム統合が続けば、物価を織り込んだ販管費を約10.2億円に抑えられ、営業利益約1.1億円、純利益約0.75億円が残る。ただし利益を留保して積み上がる自己資本に対してROEは約6%と、株主が求める利回りに届かない。
- テレビ通販向け商品卸:数量 48.2(年販出荷数量(万点・推計))× 価格 2,412(自社の税抜平均卸売単価(円/点))→ 売上 12 億円・営業利益 4 億円。成熟するテレビ市場で取引シェアをやや伸ばす
- インターネット通販:数量 23.8(年間注文数(万注文・推計))× 価格 4,063(1注文当たり自社売上(円/注文))→ 売上 10 億円・営業利益 4 億円。市場成長に加え小幅な注文シェア獲得
- ベンダー・量販店向け卸:数量 27.5(年間納入数量(万点・推計))× 価格 2,021(税抜平均卸単価(円/点))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。導入店舗数×販売数量×品目数を増やす
- セールスプロモーション・派遣・動画:数量 84.0(有償出演・制作案件換算(件・推計))× 価格 33(1案件換算の売上(万円/件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替で数量は現状の70%へ
- デモカウ直営店舗:数量 1.2(年間購買件数(万件・推計))× 価格 4,748(1件当たり売上(円/件))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。既存実演店舗の購入件数が微増
- わくたん・わくたんマーケット等:数量 0.9(注文・取引換算数(万件・推計))× 価格 4,428(手数料込み取引1件当たり収益(円/件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。クラウドファンディングの伸びを抑制
倍率:資本コストk=9.25%、2036年ROE=0.75÷12.97532=5.78%でk未満。長期名目g=1%を実現しても資本価値を増す超過収益ではないため、正当化PER上限は1÷k=10.81081倍。楽観から中立には恣意的な倍率の追加割引をしない。自己資本は現在7.67532億円+10年累計純利益5.50億円−累計還元0.20億円=12.97532億円となる。
確率:2027年の通期黒字化予想と2030年の会社計画を一部反映しつつ、年3%の物価上昇と穏やかな採用商品数増を積み上げる最も説明可能な筋書きとして31%。
やや悲観 25% 販路が伸びず利益はほぼ消える 利益 0 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 154 円5 億円
テレビ通販の大型企画が減り、成長を狙ったTikTok Shopでの販売も採算が合わない。Amazonではプラットフォーム側の広告費と競合品の値下げが重なり、会社が採用商品を増やしても注文件数が伸びない。テレビの出荷点数は今の94%、ネット注文はほぼ横ばいで、量販店向けの納入数量も変わらない。
商品の実物需要が増えない中、仕入価格と人件費にはインフレが残る。顧客に全額転嫁できないため、物販単価は10年間で物価上昇に届かない。動画・研修のプロモーション案件はAIエージェントと内製化に奪われ、件数が55%に縮小する。会社は損失を防ぐため、事務人員、広告、外注、店舗の費用をさらに減らす。
それでも2036年の売上は約21.7億円にとどまり、営業損益はほぼゼロとなる。期間の前半の小幅な黒字と後半の赤字が相殺され、自己資本は増えず、配当も実現しない。会社は存続するが資本コストに見合う利益を生まず、今ある現金・売掛金・在庫を慎重に換金した資産価値が株主価値の主な根拠になる。
- テレビ通販向け商品卸:数量 42.3(年販出荷数量(万点・推計))× 価格 2,250(自社の税抜平均卸売単価(円/点))→ 売上 10 億円・営業利益 3 億円。放送枠の競争激化で数量は減少
- インターネット通販:数量 18.7(年間注文数(万注文・推計))× 価格 3,850(1注文当たり自社売上(円/注文))→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。広告単価の上昇で注文獲得は停滞
- ベンダー・量販店向け卸:数量 22.0(年間納入数量(万点・推計))× 価格 1,871(税抜平均卸単価(円/点))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。採用商品が広がらず数量は横ばい
- セールスプロモーション・派遣・動画:数量 66.0(有償出演・制作案件換算(件・推計))× 価格 31(1案件換算の売上(万円/件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AI制作・教育の内製化で案件が減少
- デモカウ直営店舗:数量 1.0(年間購買件数(万件・推計))× 価格 4,394(1件当たり売上(円/件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。店舗販路はほぼ横ばい
- わくたん・わくたんマーケット等:数量 0.6(注文・取引換算数(万件・推計))× 価格 4,032(手数料込み取引1件当たり収益(円/件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。わくたんの取引は縮む
倍率:2036年の純利益はマイナス0.05億円でPER評価は不適当。2026年2月期の現在自己資本7.67532億円をPBRの基準に固定し、換金できる現金・売掛金・在庫の保守的な合計4.55億円だけを残す。PBR=4.55÷7.67532=0.59281であり、現在の自己資本に掛ける。中立の時価総額と将来自己資本の比率より低い。10年間の累計純利益と累計還元はともにゼロ、自己資本は7.67532億円のままとする。
確率:下に寄せる理由:売上が2021年の約68億円から約18億円へ縮み、営業赤字が4期続いた。2027年上期もテレビ・ネット・ベンダーが前年割れで、費用削減だけでは売れ筋の回復を保証しないため25%。
悲観 15% 商品のヒットが途切れ存続危機 利益 −4 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 30 円1 億円
テレビ番組から主力商品の採用が外れ、同じ商品の紹介をSNSへ移しても視聴者を購入に結び付けられない。ネットではAmazonの競合商品や小売企業の独自商品が安く提供され、在庫を売り切るために値下げを重ねる。テレビ向け実物出荷は今の6割、ネット注文は4分の3、ベンダー向け納入は約6割に落ちる。商品ごとの実演の巧みさは残っても、会社の棚取りと商品企画の優位は失われる。
物価が年3%上がる世界で卸売単価は1.10倍程度にしか伸びず、商品原価と物流・家賃が相対的に重くなる。実演販売の人員や動画の案件はAIエージェント代替と顧客の内製化で減る。経営は販管費を大幅に切り詰めるが、それでも約7.9億円の固定的な費用を支えきれず、売上約12.8億円に対して大幅な営業赤字となる。
期間を通じて在庫の処分損と収益悪化が積み重なり、自己資本は約1.8億円まで減る。増資や救済売却が必要になる直前の状態であり、今の現預金と棚卸資産をそのまま十年後の清算価値に足すことはできない。上場維持にも失敗する可能性があり、少数株主が得られる価値はわずかに残る回収資産に限られる。
- テレビ通販向け商品卸:数量 27.0(年販出荷数量(万点・推計))× 価格 1,980(自社の税抜平均卸売単価(円/点))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。実演商品の採用枠を失う
- インターネット通販:数量 13.5(年間注文数(万注文・推計))× 価格 3,396(1注文当たり自社売上(円/注文))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。安価な類似商品にシェアを奪われる
- ベンダー・量販店向け卸:数量 14.1(年間納入数量(万点・推計))× 価格 1,690(税抜平均卸単価(円/点))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。小売の独自商品で棚を失う
- セールスプロモーション・派遣・動画:数量 54.0(有償出演・制作案件換算(件・推計))× 価格 28(1案件換算の売上(万円/件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。派遣・動画はAI代替で大きく縮小
- デモカウ直営店舗:数量 0.6(年間購買件数(万件・推計))× 価格 3,898(1件当たり売上(円/件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。店舗を縮小し販売は激減
- わくたん・わくたんマーケット等:数量 0.2(注文・取引換算数(万件・推計))× 価格 3,569(手数料込み取引1件当たり収益(円/件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。クラウドファンディングはほぼ撤退
倍率:構造的な赤字と資金流出が続き、2036年末の自己資本は1.80億円へ毀損して倒産に近い。清算に必要な費用と不良在庫を差し引いた回収可能資産0.90億円を上限・床の双方とする。PBR=0.90÷1.80=0.50である。資本コスト9.25%に対して負の稼ぐ力しかない事業に追加価値は付けない。現在の自己資本7.67532億円に対して10年間の累計純損失5.87532億円、還元ゼロとすれば期末1.80億円になる。
確率:下に寄せる理由:上場維持基準の改善期限が2027年2月末に迫り、在庫4.45億円とキャッシュ流出が残る。取引先の採用失敗が重なれば商品価値と少数株主持分を同時に損なうため15%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
テレビ通販向け商品卸
実演販売士を番組に出演させ、ショップチャンネルなどの番組運営会社に主力生活用品を卸す。
| 数量年販出荷数量(万点・推計) | 価格自社の税抜平均卸売単価(円/点) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 45.0 | 1,800 | 8 | 3 |
| 10 年後 中立 | 48.2 | 2,412 | 12 | 4 |
取り方:2026年2月期有価証券報告書のチャネル売上8.10068億円を起点にした推計である。会社は出荷個数、卸単価、番組枠ごとの販売点数を開示していない。ゴムポンつるつるの公表小売希望価格1,870円(税込)や、より高単価の傘・洗浄剤の混合を考え、年間45万点、平均卸売単価約1,800円と仮定した。番組運営会社への卸値であり小売売価ではない。2024年度のテレビ通販市場約6,640億円と比較した売上比率約0.12%は参考値で、厳密な同種商品の市場シェアではない。op_okuは正式なチャネル営業利益ではなく、粗利益の概算寄与額である。
インターネット通販
Amazon等のモールで消費者に販売。購入点数を含む年間注文数を数量の目安にする。
| 数量年間注文数(万注文・推計) | 価格1注文当たり自社売上(円/注文) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 18.0 | 3,032 | 5 | 2 |
| 10 年後 中立 | 23.8 | 4,063 | 10 | 4 |
取り方:有価証券報告書のネット通販売上5.45725億円を起点に、年間18万注文、平均注文単価約3,032円と仮定する。メーカー希望価格1,870円の掃除用品と高単価の傘・包丁等を混ぜた平均であり、注文数は未開示なので推計である。2025年の生活雑貨・家具・インテリアEC市場約2兆6,258億円に対して売上比率は約0.021%だが、商品カテゴリーが一致しないため参考値である。経産省のEC市場調査を市場規模の根拠とする。op_okuは販管費控除前の推定粗利益寄与額である。
ベンダー・量販店向け卸
ドラッグストアや量販店にTsukumo傘等のPB・独占商品を卸す。
| 数量年間納入数量(万点・推計) | 価格税抜平均卸単価(円/点) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 22.0 | 1,508 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 27.5 | 2,021 | 6 | 2 |
取り方:会社の2026年2月期売上3.31867億円を基礎とし、導入店舗数×1店舗当たり販売数量×採用品目という会社計画の数量分解から、年間22万点、平均卸単価約1,508円を仮定した。導入店舗数、納入個数、卸単価の実測値は非開示であり、数量は独立に確認できない。ドラッグストア2025年度市場約10.64兆円には食品・医薬品が多いため、全体に対する比率を同種商品の正確なシェアとは扱わない。op_okuは粗利益寄与の概算値である。
セールスプロモーション・派遣・動画
企業からの依頼で出演者の派遣、実演研修、広告動画制作を請け負う。人の工数と広告制作が中心。
| 数量有償出演・制作案件換算(件・推計) | 価格1案件換算の売上(万円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 120 | 28 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 84.0 | 33 | 0 | 0 |
取り方:2026年2月期の販促売上0.33298億円を、年間120案件換算×平均約27.75万円と仮定した。会社が公表した2025年度の店頭実演約125回は参考となる活動数量だが、そのすべてが独立した有償契約ではなく、実際の受注件数・工数単価は未開示である。人月・工数販売と広告動画制作のAIエージェント代替型に分類する。中立の2036年数量は現状の0.70倍、価格は1.18倍で、物価3%を十分には転嫁できない。10年より先の当該事業単独の名目成長は0%と考える。op_okuは販管費控除前の概算粗利益である。
デモカウ直営店舗
東京ソラマチでの実演を伴う日用品の小売り。
| 数量年間購買件数(万件・推計) | 価格1件当たり売上(円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 1.0 | 3,544 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.2 | 4,748 | 1 | 0 |
取り方:有価証券報告書の直営店売上0.35435億円を、年間約1万件の購買×平均客単価約3,544円とした推計である。レジ件数と客単価の実測値は非開示なので、独立した数量の裏付けはない。実演を見て購入する単一店舗の性質上、出店数より購買件数と平均購入点数が重要である。家賃は固定費として全社販管費に含め、op_okuには含めていない。
わくたん・わくたんマーケット等
EC・クラウドファンディングの手数料、商品直販およびわずかなその他売上を合算する。
| 数量注文・取引換算数(万件・推計) | 価格手数料込み取引1件当たり収益(円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 0.7 | 3,305 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.9 | 4,428 | 0 | 0 |
取り方:2026年2月期のわくたん売上0.21210億円とその他0.01922億円を合計し、0.23132億円とした。商品直販とクラウドファンディングの手数料収入が混在するため、流通総額や商品点数とは同一視せず、年間約7,000取引換算×平均収益約3,305円という便宜的な単位を用いた。取引実数は未開示で、直近中間期にはクラウドファンディング事業が一時停止されている。op_okuは粗利益寄与の概算値である。
リスクと懸念
上場維持基準と少数株主の流動性
2026年2月末の流通株式時価総額は約4.13億円で、グロース市場の基準5億円に不適合だった。経営陣は株式の市場外譲渡も含めて改善中だが、2027年2月末までの基準達成が確認されない場合は整理銘柄指定・上場廃止につながり得る。正式な廃止決定は現時点でないものの、少数株主の売却可能性と買収条件に重大な影響を及ぼす。
棚卸資産の値崩れと現金回収
2026年8月末の在庫4.45億円は直近年間売上の約4分の1に当たる。すでに前年度に不振商品の在庫処分を行い、2027年中間期は営業黒字なのに営業キャッシュフローが約0.88億円流出した。新品の企画・大量仕入れを急ぐほど売れなかったときの損失が膨らみ、純現金をすぐ清算価値と見なすことは危険である。
テレビ通販枠と主要取引先の集中
2026年2月期にはジュピターショップチャンネル、Amazon Japan、ロッピングライフの売上だけで合計約55%を占める。取引先が番組枠や商品の採用を変更すれば、同社の商品販売数量は自社の意思とは無関係に減る。成熟したテレビ通販市場で取引先を増やせず、ネットで販路を補えない場合、固定費を賄う売上が失われる。
実演商品の短命化と競合の模倣
ゴムポンつるつるなどのヒット商品には知名度があるが、パルスイクロスや傘などの用途は誰もが模倣しやすい。自社ブランドや独占販売で同じ商品の値崩れを防いでも、別メーカーが代替品を発売することまでは止められない。客が価格差に敏感になるほど、物価3%を超える値上げ力や高い投下資本利益率を維持することが難しくなる。
AIエージェント代替と人月・広告制作
セールスプロモーションは、実演販売士の派遣・研修と広告動画の制作を人の時間で売るため、AIエージェント代替の対象に当たる。2026年2月期の売上構成比は約1.9%と小さいが、中立では案件換算数量を10年で70%に減らした。ライブ配信で人間が実物を見せる部分は残る一方、動画編集・台本・教育資料作成は顧客が内製化しやすい。
店舗賃料・資金調達・実体なき黒字
本社の年間賃料だけで約0.27億円が固定的に発生し、直営店や倉庫の費用も売上と同時には減らない。2026年8月末の借入金は約1.83億円で、資金流出が続けば借り換えや増資に頼る恐れがある。新リース会計基準で賃借の表示が変わっても、実際に必要な家賃の支払いは消えず、名目営業黒字とオーナー利益を混同してはならない。
今後の分かれ目
- 2027年2月末に流通株式時価総額5億円の上場維持基準への適合を正式に確認できたら
- 上場廃止に伴う急激な流動性損失のリスクを後退させる。ただし商品の競争優位や今後の利益率とは別の問題なので、事業収益の筋書きを機械的に引き上げない。
- 2027年2月期通期で営業黒字になり、翌期も営業キャッシュフローが継続的にプラスとなったら
- 費用削減が資金回収につながった証拠として中立とやや楽観を厚くする。売掛金と在庫が増えているだけの会計黒字なら見直さない。
- テレビ通販番組枠と量販店への導入店舗数が増え、出荷数量が2年連続で前年を超えたら
- 実演から複数販路へ需要を広げる競争力が定着し始めたと判断し、テレビとベンダーの2036年数量の上振れを検討する。
- ネット注文が市場成長率を上回り、広告費率も低下したら
- Amazon等への依存を抱えたままでも、実演をネットで収益化する力がついたと見て、ネットのシェアと粗利率の前提を上げる。
- 在庫が4億円前後に高止まりし、営業キャッシュフローが赤字のまま推移したら
- 在庫処分と資金調達の負担を重くしてやや悲観・悲観の可能性を上げる。現預金を余剰資産として価値に上乗せすることは避ける。
- 実演販売の派遣・動画制作案件数が減り、外部顧客がAI制作へ切り替えたら
- セールスプロモーションの数量・単価を人月・広告制作のAIエージェント代替型に従って引き下げる。物販の数量まで同率で減らす二重計上はしない。
見ておくもの
- 2027年2月末の上場維持基準適合状況と東京証券取引所の公表
- テレビ番組の新規採用枠・大型企画件数と販売1回当たりの出荷点数
- Amazon等のEC注文数、広告費対売上比率、客単価
- 量販店の導入店舗数・1店舗当たり販売数量・採用品目数
- 営業キャッシュフローと在庫残高・回転期間・在庫処分損
- 販促の実演派遣・動画案件数、AIコンテンツ内製化で減った費用
- 株主構成、配当・自社株買いの定量目標の新設と発行株数の変化
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額は添付factsの2026年10月22日終値295円と2,962,876株から8.7404842億円と確認したが、シナリオの数量・単価・粗利・費用を決めるまで値付けには使わなかった。各販売チャネルの数量と単価は実測ではなく、年次チャネル売上と公表商品価格から作った明示的推計である。
営業利益をチャネル別の粗利益貢献と全社販管費に分け、物価年3%、国債3%、為替150円を守った。現在のチャネル別粗利益寄与額の合計は約6.578億円で、実際の全社販管費約9.289億円を引くと営業損失約2.711億円になる。2036年のadjust_okuは、各シナリオの全社販管費を負数で計上したものである。
PERは資本コスト9.25%、長期成長率1%、堀が弱い場合のRONICから算出し、ROEが資本コスト以下なら1÷kを上限とする。悲観側は現在自己資本に対するPBRか、実際の換金可能資産を使い、相場の過去PBRを見ない。10年間の株主還元は期間の中間時点で割り引き、2036年の時価総額は10年で割り引いて確率加重した。現在の時価総額約8.74億円に対する価値約3.88億円、差約マイナス55.6%となり、判定は割高である。
2027年4月以後に始まる年度からの新リース基準で資産・負債の表示は変わるが、将来の営業費用は賃料を費用化する現行基準で統一し、余剰現金を重複して評価しない。倒産に近い悲観だけは十年で失った資産を今の清算床のまま残さない。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 1.0%。国債3.0%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%に、事業品質差+0.75%と継続赤字による困窮+1.0%を加え、資本コスト9.25%とする。