結論
白銅は、アルミを中心とした金属素材を在庫から切って売る専門商社だ。顧客は半導体や液晶の製造装置メーカーが中心で、短納期が武器になる。
筆者の結論は、10 年で見ると今の値段はやや割高というものだ。理由は、足元の利益が半導体投資の急回復と素材高の在庫益で、山に近い所にあるからだ。会社は今期の営業利益を 51 億円と見込むが、直近 10 年の営業利益の平均は 27 億円ほどにすぎない。
事業そのものは悪くない。手元は純現金で自己資本比率が 5 割を超え、配当は利益の 45% 以上と決めている。小口の注文を拾う仕組みは、他社がすぐには真似できない。
一方で、粗利の厚い標準在庫品の販売量が景気で大きく振れる。2025 年 3 月期から 2026 年 3 月期にかけて、売上が伸びても営業利益が減った。半導体が戻ると利益が跳ね、止まると削られる。
中立の筋書きでは、営業利益は 10 年後に 70 億円弱へ育つ。それでも倍率は 12 倍に届かず、本質価値は今の時価総額の 8 割台にとどまる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、白銅は「いい商売だが、振れの大きい利益を買う会社」だ。小口に応える在庫と加工は、10 年後も要る機能だと見る。借金がなく、純現金があり、安全域の面では合格だ。
問題は、利益の質だ。白銅の営業利益は、2022 年 3 月期に 43 億円まで跳ね、2024 年 3 月期には 25 億円に戻った。山で膨らみ、谷で削られる。今期の予想 51 億円は、新しい山の可能性が高い。
株主が自由にできる利益、つまり再投資を引いた余りは、利益の半分ほどと見る。素材商社は在庫と売掛金に資金を取られ、工場にも投資が要るからだ。
倍率は、山の利益に高い値を付けない。筆者は中立で 12 倍弱にとどめる。
長く持つなら、半導体装置向けの小口で白銅が取り分を守れるかが決め手になる。守れるなら良い会社だが、今の値段は山の利益を先取りしている。
何で稼ぐ会社か
白銅は、アルミ・伸銅・ステンレス・特殊鋼・チタン・プラスチックを仕入れ、切って削って売る産業用素材の専門商社だ。売上の約 65% をアルミが占める。
特徴は、約 5,700 品目の標準在庫品を常に工場に置き、切断やフライス加工をして短納期で出す点だ。大量に決まった物を運ぶ卸ではなく、小口で急ぎの注文を引き受ける。国内の売上は 87% で、顧客は半導体・液晶の製造装置、工作機械、航空・宇宙、防衛など。装置メーカーは、設計が変わるたびに必要な寸法の素材を少量ほしがる。そこに応える。
受注の入り口は「白銅ネットサービス」だ。約 27 万品目をネットで注文でき、登録は 1.5 万社を超える。注文の電子化は、人手の要らない営業網として効いている。
海外は売上の 16% で、米国・中国・タイにある。米国では 2025 年に子会社 WCAS を完全子会社にした。住宅向けのステンレスが中心で、黒字に転換したところだ。中国とタイは半導体装置向けが伸びている。
仕入れ先はアルミ圧延メーカーや素材メーカーで、約 5,500 品目にのぼる。原材料の価格は仕入れ先と市況が決め、白銅は加工と在庫で付加価値を乗せる立場にある。
優良さと弱いところ
筆者がこの会社でいちばん評価するのは、小口の機能を磨き続ける姿勢だ。標準在庫と切断加工、ネット受注を組み合わせ、納期と品ぞろえで勝負する。メーカーが相手にしにくい小口を拾う分、粗利が厚い。
ただし堀、つまり他社がまねできない強みは深くない。アルミの供給は UACJ・神戸製鋼所・日本軽金属など圧延メーカーに握られ、同業には滑川軽銅のような非鉄流通の大手もいる。価格は市況に従う部分が大きい。堀は普通と見る。
資本の効率は高くない。自己資本利益率は 8〜9% で、10 年の中央値は 9% 台だ。純現金が積み上がり、財務は堅いが、その分 ROE を押し下げている。
経営は堅実だ。借金に頼らず、工場に投資し、配当は利益の 45% 以上という方針を明確にした。反面、1 年目の中期計画は未達だった。半導体の回復が遅れる読みの甘さは、課題として残る。
弱みは三つある。半導体装置に偏る売上、粗利の振れ幅、新工場やテレビ広告で膨らんだ固定費だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
白銅の商売は、半導体装置の設備投資に大きく左右される。アルミ厚板の半導体装置向け需要は、2025 年に回復を期待されながら後ろにずれ、2026 年に入って本格的に動き出した。圧延大手の UACJ は厚板の販売量を倍にする見通しを示している。AI 向けデータセンターの投資が、先端ロジックやメモリーの増産を引っ張っている。
工作機械の受注も、2026 年 4〜6 月に内需・外需ともに 4 割超伸びた。素材の需要が全体に戻っている。
ただし半導体の設備投資は、数年ごとに急に止まる。足元の回復の勢いを 10 年続く成長と読むのは危うい。
競争の形は、メーカー系の販売会社、独立系の非鉄流通、小口の切り売り専門業者の三つ巴だ。滑川軽銅は 2026 年度の売上 150 億円を計画し、3 工場の設備に約 10 億円を投じる。圧延メーカーも直販を強める。
素材の価格は、アルミが中東情勢と供給の懸念で高い。銅は円安と供給の不安で上がっている。素材高は在庫の値上がり益を生み、利益を一時的に押し上げる。その益は、価格が戻れば逆に削る。
資本政策と M&A
還元は明快だ。通期の配当性向 45% 以上、または年 9 億円ほどの下限の高い方を払う。今期の配当総額は 16 億円ほどの予想で、前の期の 10 億円から大きく増える。自社株買いの方針は示していない。
投資は、2028 年 3 月期までの 3 年で約 60 億円を見込む。生産能力に 22 億円、M&A に 20 億円、システムに 7 億円だ。M&A は小さな買収を想定していて、大型の買収は想定していない。筆者はこの慎重さを好ましく見る。
純現金は 77 億円で、この投資を賄える。埼玉第二工場は賃借で、賃料は固定費として利益を押す。
大株主の筆頭は K&P アセット・マネジメントで、約 12% を持つ。保有の狙いは確かめられない。時価総額は 400 億円ほどと小さく、TOB の確率は外部推計で 10 年以内に 2 割弱だ。株主優待は年 1 億円に満たず、還元に与える差は小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方はこう読む。半導体の設備投資は AI のおかげで、これまでより底が高く山も長い。アルミ厚板の需要が戻り、圧延大手の UACJ も厚板の販売量を倍にする見通しだ。白銅は国内で標準在庫品の販売量が 2割以上増え、粗利の厚い品から先に売れている。
新しい工場が動けば、加工品の比率が上がって粗利が改善する。海外も追い風だ。中国とタイは装置向けで増収、米国の WCAS は黒字に転じ、電子商取引の仕組みをそのまま持ち込める。インドでも販売提携を結んだ。
売上の依存を下げる手も打つ。航空・宇宙は民間機の回復と防衛の官需で堅調で、自動車向けも広げる。一本足と言われる半導体の比率は、時間とともに薄まる。
財務は純現金で、配当性向も 45% 以上と決めた。経営は資本を無駄にしない姿勢を示している。会社は 2028 年 3 月期に売上 1,041 億円、経常利益 60 億円を狙う。計画を達成すれば、今の値段はまだ安いと強気は見る。会社は半導体専門の営業組織も立ち上げ、顧客の裾野を広げている。
慎重な見方
慎重な見方は、まず利益の振れ幅を突く。営業利益は 2022 年 3 月期の 43 億円から 2024 年 3 月期の 25 億円まで、2 年で 4 割落ちた。売上は逆に増えていた。粗利の厚い標準在庫品が減ると、利益は一気に痩せる。
今期の 51 億円は、素材高の在庫益と半導体の回復が重なった結果だ。素材が下がれば、在庫益は逆回転する。
中期計画の 1 年目は未達だった。生成 AI 以外の半導体が戻らず、設備投資の計画が見直された。回復が後ろにずれる癖は、今も変わらない。
さらに競争がある。圧延メーカーは直販を強め、同業は設備を増やす。固定費は新工場・本社の増床・テレビ広告で膨らみ、売上が落ちると重くなる。海外の米国は黒字になったばかりで、拡大に失敗すれば減損になる。
自己資本利益率が 8% 台にとどまる会社に、山の利益で高い倍率は付けられない。しかも仕入れ先が競合にもなる構造は、今後も変わらない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方が当たるのは、半導体の回復が続く間だ。だが、利益の振れ幅と山の高さについての慎重な指摘のほうが重い。そこで確率は、中立を最も厚くしたうえで、やや悲観と悲観を楽観側より厚く置いた。
10 年の悲観は、国内の半導体が海外へ移り、メーカー直販で小口も奪われる筋書きで、1 割強を置く。財務は堅いので、倒れる筋書きではなく、利益が細る筋書きだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,369 円723 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,358 円154 億円)。 今の値に割り戻すと 4,120 円467 億円、今との差 +21.0%、 期待の年率 +8.5%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 13,536 円1,536 億円 | 2,080 円236 億円 | +358.6% | +16.5% | 1,093 円124 億円 |
| やや楽観 | 20% | 9,956 円1,130 億円 | 1,719 円195 億円 | +242.9% | +13.1% | 2,335 円265 億円 |
| 中立 | 38% | 7,425 円843 億円 | 1,463 円166 億円 | +161.0% | +10.1% | 3,378 円383 億円 |
| やや悲観 | 24% | 2,168 円246 億円 | 1,014 円115 億円 | −6.6% | −0.7% | 764 円87 億円 |
| 悲観 | 11% | 802 円91 億円 | 635 円72 億円 | −57.8% | −8.3% | 158 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,369 円723 億円 | 1,358 円154 億円 | +126.9% | +8.5% | 7,727 円877 億円 |
今の株価時価総額 3,405 円386 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:AI 投資が長く続き、半導体向けの専門商社になる 利益 81 億円 · PER 19.0 倍 · 株価時価総額 13,536 円1,536 億円
半導体の設備投資が大きな谷を作らずに続き、アルミの取扱量は今の 2 倍を超える。国内の切断・加工の拠点が増え、標準在庫品の欠品が少ないことが顧客の囲い込みになる。米国の子会社は電子商取引の仕組みを使って黒字を厚くし、ステンレスの量も倍になる。半導体に偏る売上は航空・宇宙や防衛が支え、一本足とは見られなくなる。
営業利益率は 6% 台に乗る。素材高の局面で在庫の値上がり益が出ることも手伝うが、それだけではない。小口注文の値上げが定着し、運賃や人件費の上昇を価格に移せるようになる。配当は利益の 45% を保ち、会社は計画どおりの還元を続ける。
- アルミニウム(板・棒・押出型材):数量 10.3(取扱重量(万トン))× 価格 121(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 1,246 億円・営業利益 81 億円。アルミの量が 2 倍を超える
- 伸銅(銅・真ちゅう):数量 0.6(取扱重量(万トン))× 価格 201(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 119 億円・営業利益 5 億円。伸銅も量が増える
- ステンレス:数量 2.5(取扱重量(万トン))× 価格 80(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 200 億円・営業利益 10 億円。米国と海外で量が倍に
- 特殊鋼・チタン・プラスチックほか:数量 2.6(取扱重量(万トン))× 価格 94(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 247 億円・営業利益 16 億円。チタンなど高付加価値が伸びる
倍率:事業の純利益 81 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.0 倍。全体の PER 18.96 倍、時価総額 1,536 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI 向けの半導体投資が 10 年途切れず、海外の拡販も当たる筋書きで、起こりにくいと見て小さく置いた。
やや楽観 20% やや楽観:半導体と海外が計画に近い形で育つ 利益 63 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 9,956 円1,130 億円
半導体装置向けの需要は、波を挟みながら今の 1.8 倍ほどの重さまで増える。埼玉第二工場が動き、加工品の比率が上がって粗利が厚くなる。海外は売上の 2 割台に乗り、米国では厚板の切断販売も軌道に乗る。
航空・宇宙、防衛、自動車の比率を上げる施策も実り、半導体が不調の年でも赤字にならない。営業利益率は 5% 台後半で、会社が掲げる 5.5% 前後の目標を少し上回る。買収は 20 億円規模の小さなものにとどまり、のれんの傷は出ない。配当は利益の 45% を保ち、新工場の投資も純現金の範囲で賄える。会社は計画どおりの還元と成長投資を両立する。
- アルミニウム(板・棒・押出型材):数量 8.9(取扱重量(万トン))× 価格 121(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 1,069 億円・営業利益 62 億円。アルミの量が 8 割増
- 伸銅(銅・真ちゅう):数量 0.5(取扱重量(万トン))× 価格 201(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 109 億円・営業利益 4 億円。伸銅は小幅に増える
- ステンレス:数量 2.0(取扱重量(万トン))× 価格 80(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 163 億円・営業利益 7 億円。ステンレスは海外で 8 割増
- 特殊鋼・チタン・プラスチックほか:数量 2.3(取扱重量(万トン))× 価格 94(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 219 億円・営業利益 13 億円。特殊鋼・チタンが伸びる
倍率:事業の純利益 63 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍。全体の PER 17.93 倍、時価総額 1,130 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画の方向に近く、半導体の回復が続いて海外も育つ筋書き。計画の初年度は未達だったため、確率は中立より小さくした。
中立 38% 中立:半導体の成長と物価上昇を取り込み、利益率は今の水準 利益 50 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 7,425 円843 億円
アルミの取扱量は 10 年で 1.5 倍強。AI 向けの設備投資が世界で伸び、国内の装置メーカーに納める素材も増える。米国のステンレスと海外の拡販が、国内の成熟を補う。金属の価格は物価並みに上がり、売上は 1,300 億円台に乗る。
営業利益率は 5% 前後で、足元の 4% 台からは上だが、直近の山の水準は超えない。10 年のあいだに半導体の調整局面が一度は来て、利益は 2 年ほど落ちる。それでも在庫と加工という機能は崩れず、赤字にはならない。
競合の滑川軽銅など非鉄流通の同業や、メーカー系の販売会社との間で、取り分は大きくは動かない。還元は利益の 45% が続く。筆者は、これが 10 年の落としどころだと見る。
- アルミニウム(板・棒・押出型材):数量 7.6(取扱重量(万トン))× 価格 121(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 920 億円・営業利益 49 億円。アルミの量が 1.5 倍強
- 伸銅(銅・真ちゅう):数量 0.5(取扱重量(万トン))× 価格 201(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 105 億円・営業利益 3 億円。伸銅は 15% 増
- ステンレス:数量 1.7(取扱重量(万トン))× 価格 80(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 136 億円・営業利益 5 億円。ステンレスは米国で 5 割増
- 特殊鋼・チタン・プラスチックほか:数量 2.0(取扱重量(万トン))× 価格 94(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 191 億円・営業利益 11 億円。その他は 4 割増
倍率:事業の純利益 50 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍。全体の PER 16.85 倍、時価総額 842 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体向けのアルミが実質で年 3% 台、物価は並みに上がる穏やかな筋書き。景気の波を一度は挟む前提で最も厚くした。
やや悲観 24% やや悲観:半導体の調整が長引き、競争で利益率が戻らない 利益 30 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 2,168 円246 億円
半導体の装置向けは、期待ほど量が増えない。アルミ圧延メーカーが厚板の増産を終えると、供給は余り、切断販売の価格競争が激しくなる。同業が設備を増やし、小口の値上げは元に戻る。
営業利益率は 4% 前後にとどまり、固定費である新工場の賃料や広告、本社の増床が重い。物価で上がる人件費と運賃を、価格に移し切れない。海外は黒字にはなるが、拡大の速度は計画を下回る。純利益は 30 億円弱で、足元の最高益水準には戻らない。還元は利益に合わせて少し絞る。
米国の拡販は思うように進まず、WCAS は薄利のままだ。半導体の比率を下げる狙いの自動車・航空宇宙向けも、先行する競合が多く、伸びは小さい。会社の成長投資は縮み、手元の現金は運転資金として積み上がる。
- アルミニウム(板・棒・押出型材):数量 6.2(取扱重量(万トン))× 価格 117(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 720 億円・営業利益 29 億円。アルミの量は 25% 増にとどまる
- 伸銅(銅・真ちゅう):数量 0.5(取扱重量(万トン))× 価格 195(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 88 億円・営業利益 3 億円。伸銅は横ばい
- ステンレス:数量 1.4(取扱重量(万トン))× 価格 78(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 106 億円・営業利益 3 億円。ステンレスは 2 割増
- 特殊鋼・チタン・プラスチックほか:数量 1.7(取扱重量(万トン))× 価格 91(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 153 億円・営業利益 7 億円。その他は 15% 増
倍率:事業の純利益 30 億円・ROE 7.4% は k 7.25% 以下なので、上限は 1÷k=11.8 倍。利益の山が過ぎ、資本の稼ぎが資本コストに届かない局面のため、上限の約 7 割の 8.2 倍に置いた。
確率:半導体の設備投資の回復は何度も後ろにずれてきた。その実績と、メーカー直販・同業の設備増強を考え、中立に次いで厚く置いた。
悲観 11% 悲観:構造的に負け、素材の取り次ぎ役に戻る 利益 13 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 802 円91 億円
国内の半導体装置メーカーが海外で生産を増やし、素材の調達も現地で完結する。アルミのメーカーは大口の顧客に直接売り、残る小口の注文は電子商取引に奪われる。取扱量は今を下回る。
金属の価格も上がらず、物価を価格に移せない。賃料や人件費などの固定費は残るため、営業利益率は 2〜3% に落ちる。米国の拡販は赤字が続いて縮小する。のれんと新工場の減損も出る。純利益は 15 億円を割り、配当は大きく絞られる。会社は存続するが、在庫を抱えた小さな加工商社になる。
手元に純現金があるため、財務が行き詰まることはない。ただし、その現金は事業の運転資金でもあり、株主に自由に戻るとは限らない。
- アルミニウム(板・棒・押出型材):数量 4.4(取扱重量(万トン))× 価格 108(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 478 億円・営業利益 13 億円。アルミの量が 1 割減
- 伸銅(銅・真ちゅう):数量 0.4(取扱重量(万トン))× 価格 180(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 68 億円・営業利益 1 億円。伸銅も減る
- ステンレス:数量 1.0(取扱重量(万トン))× 価格 72(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 73 億円・営業利益 1 億円。ステンレスも 1 割減
- 特殊鋼・チタン・プラスチックほか:数量 1.2(取扱重量(万トン))× 価格 84(1 トンあたり平均単価(万円))→ 売上 104 億円・営業利益 3 億円。その他も縮む
倍率:事業の純利益 13 億円・ROE 3.6% は k 7.25% 以下で、上限は 1÷k=11.8 倍。構造的に負けて稼ぐ力が資本コストを大きく下回る筋書きのため、上限の約 6 割の 7.0 倍に置いた。現金の戻り方は筋書きの文章に書いた。
確率:半導体が国産化・海外移転で国内の量を失い、メーカー直販が進む筋書き。単一業界への依存と薄い粗利から、1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
アルミニウム(板・棒・押出型材)
半導体・液晶の製造装置、工作機械向けの板・棒・型材を在庫から切断・加工して短納期で売る。売上の約 65%。
| 数量取扱重量(万トン) | 価格1 トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.9 | 90 | 443 | 20 |
| 10 年後 中立 | 7.6 | 121 | 920 | 49 |
取り方:アルミの売上 443 億円は、売上の約 65% というアナリスト資料の比率から置いた推定。取扱重量 4.9 万トン×平均単価 90 万円/トン(切断済みの厚板・小口の加工品を含む値)。開示は地域別のみで品種別の数量は無い。半導体装置向けの量は実質で伸び、価格は物価並みに上がる。
伸銅(銅・真ちゅう)
銅・真ちゅうの板・棒。装置や電気部品向けに切断して売る。
| 数量取扱重量(万トン) | 価格1 トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.5 | 150 | 68 | 2 |
| 10 年後 中立 | 0.5 | 201 | 105 | 3 |
取り方:伸銅の売上 68 億円は売上の約 1 割とした推定。取扱重量 0.45 万トン×平均単価 150 万円/トン。電気銅の建値は円安と供給懸念で上がっているが、中立の価格は物価並みの 1.34 倍に置く。
ステンレス
ステンレスの板・棒。米国子会社(WCAS)の住宅向けと、国内の装置向けが中心。
| 数量取扱重量(万トン) | 価格1 トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.1 | 60 | 68 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1.7 | 80 | 136 | 5 |
取り方:ステンレスの売上 68 億円は売上の約 1 割とした推定。取扱重量 1.13 万トン×平均単価 60 万円/トン。北米の住宅向けと国内の装置向けが中心で、数量は米国の拡販で伸びる。市中価格は横ばい。
特殊鋼・チタン・プラスチックほか
特殊鋼、航空・宇宙向けのチタン、エンジニアリングプラスチックなど。粗利は厚い。
| 数量取扱重量(万トン) | 価格1 トンあたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.5 | 70 | 102 | 5 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 94 | 191 | 11 |
取り方:特殊鋼・チタン・プラスチックの売上 102 億円は売上の約 15% とした推定。重量換算で 1.46 万トン×平均単価 70 万円/トン。航空・宇宙向けのチタンは民間機の回復と防衛の官需で伸び、特殊鋼とプラスチックは横ばい。
リスクと懸念
半導体装置向けの景気循環
粗利の厚い標準在庫品の多くは、半導体と液晶の装置メーカーに売る。設備投資が止まると販売量が落ち、2022 年 3 月期から 2024 年 3 月期にかけて売上が増えても営業利益が 4 割減った。足元の回復も、同じ波の一部だ。AI 投資が鈍る局面で、固定費が増えた会社がどこまで耐えるかが課題になる。
素材価格の反転
今期の粗利は、素材高による在庫の値上がり益に押し上げられている。アルミや銅の価格が下がれば、益は逆に削る側に回る。中東情勢や円安がきっかけで動くので、会社の努力で制御できない。予想の 51 億円は、素材の相場が高止まりする前提を含む。
メーカー直販・同業との競争
UACJ・神戸製鋼所・日本軽金属といった圧延メーカーは、半導体向け厚板を増産し、大口の顧客に直接売る。滑川軽銅など同業も設備を増強している。小口の値上げが元に戻れば、白銅の粗利は削れる。仕入れ先が競合にもなる構造が弱みだ。
固定費の膨らみ
埼玉第二工場の賃料、テレビ広告、本社の増床、運賃の上昇で、販管費は増えている。売上が伸びているうちは吸収できるが、減収局面では重しになる。賃借の工場は賃料が固定の約束で、新リース会計の適用後は負債としても見える。
海外拡大と買収の失敗
売上の海外比率を 2 割に高める計画だ。米国の WCAS は黒字になったばかりで、パトリオットメタルズなどへの出資もある。中計は M&A に 20 億円を見込む。小規模でも価格を払いすぎればのれんの減損になる。拡大の速度より、利益に結びつく規律が問われる。
中期計画の未達と信頼
計画の 1 年目は利益目標に届かず、半導体が戻る時期を読み違えた。2028 年 3 月期の売上 1,041 億円・経常 60 億円も、半導体の回復頼みだ。計画が外れる癖が続けば、配当や投資の前提が崩れる。筆者は計画より筋書きを重く見る。
今後の分かれ目
- 半導体装置メーカーの設備投資が減速し、標準在庫品の販売重量が前年を 1 割下回る
- 楽観側の確率を下げ、やや悲観と悲観を厚くする。利益が 2 年続けて落ちるなら、中立の営業利益も下げて見る。
- アルミ・銅の相場が大きく下がる
- 在庫の値上がり益が削れる。粗利率の低下が続くなら、中立の利益率を下方に直す。
- 埼玉第二工場が稼働し、加工品の比率と粗利が上がる
- 利益率の改善を中立に織り込める。加工能力が埋まるなら、やや楽観の確率を上げてよい。
- 20 億円を超える買収を発表する
- のれんの減損の恐れが増す。買う事業の利益率と価格を確かめ、悪ければ悲観の確率を上げる。
- K&P など大株主が提案を出す、または TOB の動きが報じられる
- 買収の上乗せが乗る可能性はある。ただし本質価値は変わらないので、値段が価値を超えていないかを見直す。
- 海外売上比率が 20% を超え、米国が安定した黒字になる
- 成長の二本目が育つ。海外の数量を上げ、依存度の低下を確率に反映する。
見ておくもの
- 白銅単体の標準在庫品の販売重量と単価、粗利率(四半期)
- 半導体製造装置の受注と、アルミ厚板の出荷(UACJ・日本軽金属)
- アルミ・銅の相場と在庫の値上がり益の大きさ
- 埼玉第二工場の稼働と販管費の伸び
- 海外売上比率と WCAS の損益、配当性向 45% の維持
倍率と資本コストの決め方
先にアルミ・伸銅・ステンレス・その他の 4 つで、取扱重量×単価(物価は価格側に 1.34 倍)と営業利益率を積み、純利益と自己資本の流れから ROE を出して、その ROE で正当化 PER の上限を計算し、楽観〜中立を上限の約 9 割に置いた。品種別の分解は開示でなく推定。資本コストは 7.25%(基本 7.5%、quality +1.0%)。純現金 77 億円は運転資金と投資に使う前提で分けていない。賃借工場の賃料は営業費用に入れた形でそろえ、新リース会計で数字の形が変わる点は 10 年後に反映していない。今の株価や PER からは逆算していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.2→18.96 倍・やや楽観 PER 12.5→17.93 倍・中立 PER 11.7→16.85 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.25%。