結論
オーハシテクニカは、日系の自動車メーカーに締結部品やプレス部品など約 2 万点を納める、独立系の部品商社兼メーカーだ。ボルトとナットの販売から出発し、いまは自社の工場と約 400 社の協力メーカーを使い分けて部品を届ける。売上は 400 億円台で、日本と海外がほぼ半々を占める。
筆者の結論は「適正、ただし割高寄り」だ。会社の体力は申し分ない。現金は時価総額の 6 割に当たり、赤字の期もない。ただ、稼ぐ力は車の生産台数に縛られ、営業利益率は 4〜6% 台と資本コストを超えにくい。
強みは、日本の全メーカーと直接取引する口座と、作り手を選べる柔軟さだ。独自の接合技術も電動車で採用が広がっている。中期経営計画は営業利益率 9% 台を掲げるが、筆者はそこまで届くとは見ていない。
重い論点は 3 つある。ホンダ系が売上の 4 割を占める顧客の偏り。車体を一体で鋳造する工法が広がった時の部品点数の減少。そして、利息しか生まない厚い現金の使い道だ。現金が株主に戻るなら、価値は上向く。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「安全だが、稼ぐ力が足りない会社」だ。
良い点は財務の安全である。現金の厚みが時価総額の 6 割に当たり、事業が傾いても会社は残る。
ただ、オーナーとして残る利益を見ると、物足りない。自動車部品は、設備と運転資金が要る商売だ。利益のかなりの部分が、物価で膨らむ在庫と工場に吸われる。自己資本利益率は 10 年の中央値で 5% 台、資本コストを下回る。ためた利益は、額面どおりの価値にならない。
堀は広くない。値段を決めるのは自動車メーカーで、同社は価格改定の交渉で粘る側だ。直近の利益率の回復は、価格改定と米国の自動化投資の成果で、素直に評価できる。しかし、中期経営計画の営業利益率 9.2% は、2019 年 3 月期が最後に見た水準で、届くとは考えにくい。
経営の資本配分は、改善の途上にある。還元の方針は明確になり、自社株買いも実行した。それでも現金の大半は事業に使われず、利息を稼いでいる。この現金をどう使うかが、価値を大きく左右する。
安全域を言えば、現金があるので悲観でも会社は残る。一方、楽観でも大きく上振れる絵は描きにくい。払う値段が、事業の稼ぐ力と現金の合計をかなり下回って、はじめて安全域が生まれる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、自動車メーカーが組み立てに使う部品を、図面に合わせて作って届けることだ。ボルトやナット、切削品、冷間圧造品、精密プレス品など、約 2 万点を扱う。
この会社の特徴は、作り方の二刀流にある。グループの工場で作る「ファクトリー機能」と、約 400 社の協力メーカーに作ってもらう「ファブレス機能」だ。ファブレスとは、自社で工場を持たず、他社に作ってもらう形をいう。グループ工場の製造比率は売上の 26% で、会社はこれを 40% まで引き上げる計画だ。
売り先は日系メーカーのほぼ全社である。2025 年 3 月期の販売先は、ホンダ系 41%、商用車 20%、トヨタ系 17%、日産系 10%。上位 10 社で単体売上の約 7 割を占める。
地域は、日本が売上の約 5 割、米州が約 3 割半、残りが中国、アセアン、欧州だ。工場は米国、タイ、中国にあり、日本、米国、タイ、中国の 4 拠点で同じ加工ができる体制を目指している。台湾には調達の子会社がある。
連結の従業員は 721 人。営業が自動車メーカーの開発部門に入り込み、図面になる前の要望を拾う。この関係が、受注の入口になっている。
優良さと弱いところ
強みは「作り手を選べる力」と「顧客の口座」の 2 つだ。
1 つ目は、冷間圧造、プレス、切削と加工法の違う部品を、自社工場でも協力メーカーでも作れることだ。車種ごとの注文に、品質と値段の釣り合いで応じやすい。同じ形の会社は他に見当たらず、競争相手は部品ごとの専業メーカーになる。
2 つ目は、メーカーと直接取引する資格である。一次部品メーカーとしての口座は、新しく取るのが難しい。同社は日本の全メーカーに口座を持つ。
独自技術もある。「圧入プロジェクション接合」は、軽くて強い部品をつくる特許の技術で、電動車向けに採用が広がっている。
数字は静かだ。自己資本比率は 8 割を超え、赤字の期はない。ただ、営業利益率は 2016 年 3 月期の 11.3% から、2024 年 3 月期の 4.2% まで下がった。直近は 5.9% まで戻ったが、昔の水準には遠い。
弱みは 3 つある。値決めの力が弱く、メーカーは毎年のコスト下げを求める。顧客が偏り、ホンダ系だけで 4 割を超える。資本の効率も低く、自己資本利益率は 10 年の中央値で 5% 台だ。
堀、つまり他社がまねできない強みは、狭く浅い。筆者は「普通の堀」と見ている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は、日系メーカーの生産台数で決まる。2025 年の日系 8 社の世界生産は約 2,417 万台で、国内が約 799 万台、海外が約 1,617 万台、うち北米が約 554 万台だった。国内は人口とともに緩やかに減る。北米は関税を受けつつも、日系の現地生産は底堅い。
追い風と逆風が混ざる。追い風は、メーカーが調達先を絞り、品ぞろえの広い会社にまとめたがることだ。同社は新規受注品で売上を支えている。逆風は中国とタイだ。中国では日系の販売が落ち、ホンダ向けの売上が 2 年連続で 3 割減り、直近の中間期もさらに 2 割減った。タイは自動車ローンの審査が厳しくなり、販売が弱い。中国の電気自動車(EV)メーカーが東南アジアで工場を建て始めたことも、日系の生産には重い。
EV 化の影響は、部品で違う。エンジンや変速機の部品は減る。足回り、ボディ、シート、ステアリングは電動車でも使うので、会社は取り扱いをこちらに寄せている。
ただ、筆者が気にするのは別の動きだ。車体の大きな部分を一体で鋳造する工法が広がれば、締結部品もプレス部品も点数が減る。時間はかかるが、10 年あれば形は変わりうる。
為替は 10 年とも 150 円で固定して見る。米国の関税は、原則として販売価格に転嫁する方針だ。
競争の相手は、部品ごとの専業メーカーである。大手の一次部品メーカーの下請けでなく、独立系として全メーカーに納めるのが、同社の立ち位置になる。
資本政策と M&A
還元の姿勢は、この数年で明らかに強まった。方針は DOE(純資産配当率)2.8% 以上、配当性向 35% 以上、累進配当(減らさず増やす)だ。2024 年 11 月には DOE の目標を 2.5% から引き上げた。中期経営計画では、2028 年 3 月期まで増配を見込む。
自社株買いも動いた。2024 年 11 月から 2025 年 6 月に約 7.5 億円分(約 38.5 万株)を取得し、同年 11 月に 30 万株を消却した。2026 年 1 月には 1 株を 2 株に分割している。
資本の使い道は工場の増強だ。6 年で設備投資 95 億円を見込み、米国の工場拡張と、子会社オーハシ技研工業の鈴鹿第二工場が含まれる。グループ製造比率を 26% から 40% に上げる計画で、M&A や資本提携も選択肢に入る。
2023 年には、メキシコの子会社の代表者が偽の指示で約 2.8 億円を送金し、詐欺にあった。社外取締役を責任者とする調査・対策チームが再発防止策をまとめ、役員報酬の一部も返上した。2026 年 3 月期には一部の回収益が出ている。
2026 年 3 月期の中間には、投資有価証券の売却益が 7.3 億円出た。筆頭株主は取引先持株会(9%)で、特定の親会社はない。別の推計では、10 年以内の TOB(株式の公開買い付け)の確率は 2 割ほどとされる。株主優待のおこめ券の費用は年 1 億円に満たないと見積もり、還元の額には足していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
会社は底を打った。営業利益率は 2024 年 3 月期の 4.2% から 2026 年 3 月期の 5.9% まで戻り、2027 年 3 月期の会社予想も同じ水準を保つ。戻した力は、価格改定の定着と、米国での自動化投資による生産性の向上だ。米州の営業利益は 1 年で 6 割増え、アセアンと欧州は二桁の利益率を出している。
次の 10 年は、日系メーカーの現地生産に乗る。北米の日系生産は約 550 万台で底堅く、同社は米国の工場を拡張中だ。関税は原則として価格に転嫁できる。
グループ製造比率を 26% から 40% に上げれば、仲介の薄い利益に、作る側の付加価値が乗る。圧入プロジェクション接合のような独自技術は、電動車の軽量化で採用が広がっている。
資本の面でも会社は変わった。DOE 2.8% 以上と累進配当を宣言し、自社株買いと消却を実行した。220 億円を超える現金は、M&A か還元に向かう。この現金が動けば、自己資本利益率は資本コストに近づき、倍率は上がる。
EV 化の影響も限られる。同社が増やしている足回り、ボディ、シート、ステアリングの部品は、電動車でも使う。
慎重な見方
利益の中身を分けて見る必要がある。2026 年 3 月期の純利益には、投資有価証券の売却益 7.3 億円が入っている。これを除くと、本業の稼ぎは 15 億円前後にとどまる。
中期経営計画の目標も疑わしい。最初の計画は 2026 年 3 月期に営業利益 41.5 億円を掲げたが、実績は 24 億円だった。期限を 2 年延ばしても目標は同じ 41.5 億円で、必要な利益率は 9.2% になる。2023 年 3 月期以降は 6% 以下が続いている。
顧客の偏りも重い。ホンダ系が 4 割を占め、中国でホンダ向けは減り続けている。日系メーカーは中国でも東南アジアでも、中国勢にシェアを奪われつつある。顧客が弱れば、部品の取引先も整理される。
メーカーの値下げ要請は毎年くる。価格改定が通ったのは、人件費や材料の高騰を訴えやすい今の局面だからだ。物価が落ち着けば転嫁は難しくなる。
最後は資本の使い方である。現金が 220 億円を超えるのに、自己資本利益率は 5% 台にとどまる。工場投資や M&A に使えば、買収の失敗や設備の遊びを招く。還元も DOE 2.8% 程度では現金は減らない。ためた現金は、額面の価値を見込めない。
車体の一体鋳造のような工法が広がれば、締結部品とプレス部品の点数は減る。この動きは、同社の中心の商品を直接削る。
どちらに重みを置いたか
強い方は慎重な見方だ。直近の利益率の回復は本物だが、10 年で見ると成長の大半は物価で、実質の稼ぐ力は伸びにくい。中期経営計画は一度、期限を延ばしても目標が同じままで、達成の実績が乏しい。顧客がホンダ系に偏り、中国勢の攻勢にさらされる点も軽くない。確率はやや悲観と悲観に寄せ、合わせて 3 割半とした。一方、現金が厚く悲観でも会社は残り、還元の強化という上振れの余地もある。楽観とやや楽観にも 2 割半を残した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,731 円443 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 561 円143 億円)。 今の値に割り戻すと 1,255 円321 億円、今との差 +13.4%、 期待の年率 +7.6%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,094 円792 億円 | 762 円195 億円 | +248.6% | +13.3% | 270 円69 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,495 円639 億円 | 664 円170 億円 | +185.6% | +11.1% | 569 円146 億円 |
| 中立 | 40% | 1,984 円508 億円 | 606 円155 億円 | +134.2% | +8.9% | 1,036 円265 億円 |
| やや悲観 | 23% | 950 円243 億円 | 469 円120 億円 | +28.3% | +2.5% | 326 円84 億円 |
| 悲観 | 12% | 444 円114 億円 | 313 円80 億円 | −31.6% | −3.7% | 91 円23 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,731 円443 億円 | 561 円143 億円 | +107.2% | +7.6% | 2,292 円586 億円 |
今の株価時価総額 1,106 円283 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 計画に近い成長:作る側の付加価値が乗る 利益 43 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 3,094 円792 億円
中期経営計画が、ほぼ届く。米国の工場拡張と自動化が実り、米州は日系の現地生産に乗って、数量が 3 割増える。国内は新規受注品が車種の減産を補い、数量は横ばいを保つ。グループの製造比率は 4 割に近づき、利益率は作る側の付加価値で 8% 台まで上がる。アセアンと欧州は新しい車種の部品を取り、数量が 3 割強増える。圧入プロジェクション接合が複数のグローバル車種に載り、独自技術が値決めの力になる。M&A で加工技術を持つ会社を取り込み、内製が進む。中国は赤字を抜けて小さな黒字になる。現金は買収と増配に回り、自己資本利益率が資本コストを超える。ただし、ホンダ系への依存は残り、利益率は過去の山の 11% 台には届かない。
- 日本:数量 831(日系メーカーの国内生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 3,345(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 278 億円・営業利益 19 億円。数量 1.04 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 7.0%
- 米州:数量 720(日系メーカーの北米生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 3,413(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 246 億円・営業利益 23 億円。数量 1.30 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 9.5%
- 中国:数量 315(日系メーカーの中国生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 870(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。数量 0.90 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 4.0%
- アセアン・欧州:数量 469(日系メーカーのアセアン・欧州の生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 1,758(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 83 億円・営業利益 11 億円。数量 1.34 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 13.0%
倍率:事業の純利益 41 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)120 億円。全体の PER 16.22 倍、時価総額 792 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画どおりに近い形で、米国の工場拡張と内製化が実る筋書き。過去の計画は未達が続いており、1 割を切る確率とした。
やや楽観 18% 米州とアセアンが伸び、利益率が 7% 台へ 利益 36 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 2,495 円639 億円
米国の現地生産に乗って、米州の数量が 2 割増える。国内は新規受注品が減産を補い、数量は横ばいで踏みとどまる。アセアンと欧州は、タイの低迷が一巡したあと緩やかに伸びる。中国は縮小が続くが、武漢支店の閉鎖などで赤字は止まり、損益は小さな黒字になる。価格改定が定着し、米国の自動化も進んで、営業利益率は 7% 台後半まで上がる。計画の 9% 台には届かないが、直近の回復の延長として自然な姿だ。還元は DOE 2.8% の水準を守り、自社株買いも折々に加わる。現金は事業に使う分を除いて動かず、利息を生み続ける。
- 日本:数量 799(日系メーカーの国内生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 3,345(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 267 億円・営業利益 17 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 6.2%
- 米州:数量 665(日系メーカーの北米生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 3,413(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 227 億円・営業利益 19 億円。数量 1.20 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 8.2%
- 中国:数量 287(日系メーカーの中国生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 870(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円。数量 0.82 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 2.5%
- アセアン・欧州:数量 438(日系メーカーのアセアン・欧州の生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 1,758(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 77 億円・営業利益 9 億円。数量 1.25 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 12.0%
倍率:事業の ROE は 8.6% で k 7.25% とほぼ同じ。RONIC は k にほぼ等しく、正当化 PER は 1÷k=15.02 倍に近い。自動車の循環と顧客の偏りを見て、この水準に置いた。
確率:米国の現地生産に乗り、利益率が緩やかに上がる筋書き。直近の回復の延長にあたり、中立に次いで起こりうる。
中立 40% 現地生産に乗りつつ、国内と中国が細る 利益 30 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,984 円508 億円
国内は日系メーカーの減産と車種の整理で、数量が 3% ほど減る。新規受注品が一部を補う。米州は日系の北米生産が底堅く、同社の工場拡張も進んで、数量は 1 割強増える。アセアンと欧州は 1 割強の増加にとどまる。中国は日系の販売が落ち続け、数量が 4 分の 1 減る。物価 3% の世界で価格は 10 年で 1.34 倍になり、売上は 560 億円台に乗る。営業利益率は 6% 台半ばで、過去 12 年の山を大きく下回る。価格改定と自動化の成果は残るが、メーカーの値下げ要請がそれを削る。還元は DOE 2.8% を守り、自社株買いを少し足す。現金は物価で膨らむ運転資金と設備に充てられ、余った分はほぼ今のまま残る。
- 日本:数量 775(日系メーカーの国内生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 3,345(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 259 億円・営業利益 14 億円。数量 0.97 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 5.3%
- 米州:数量 620(日系メーカーの北米生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 3,413(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 212 億円・営業利益 14 億円。数量 1.12 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 6.8%
- 中国:数量 262(日系メーカーの中国生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 870(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。数量 0.75 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 0.5%
- アセアン・欧州:数量 402(日系メーカーのアセアン・欧州の生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 1,758(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 71 億円・営業利益 8 億円。数量 1.15 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)120 億円。全体の PER 13.84 倍、時価総額 508 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の減産と中国の縮小を、米州とアセアンの伸びが補う筋書き。利益率は過去 12 年の山を大きく下回る 6% 台に置いた。最も起こりやすい。
やや悲観 23% 日系のシェア低下で数量が減り、増配が止まる 利益 20 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 950 円243 億円
日系メーカーが北米と東南アジアで、中国勢にシェアを奪われる。同社の数量は国内で 1 割強、中国で 4 割半減り、米州は横ばいにとどまる。関税の転嫁は思うように進まず、価格は物価の上昇に届かない。ホンダ系と日産系の再編で、取引する車種が整理される。新規受注品では減産を補えない。自社工場の稼働が落ち、固定費が重くなって、営業利益率は 5% を割る。人件費と材料費は物価で上がるのに、売上が追いつかない。会社は残り、配当も続くが、増配は止まる。余った現金の一部は、運転資金と工場の維持に食われる。グループ製造比率 40% の計画は、先送りになる。優良な独立系の部品商社という姿は、ここで一段くすむ。
- 日本:数量 703(日系メーカーの国内生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 3,245(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 228 億円・営業利益 10 億円。数量 0.88 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 4.2%
- 米州:数量 554(日系メーカーの北米生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 3,311(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 183 億円・営業利益 9 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 5.0%
- 中国:数量 193(日系メーカーの中国生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 812(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。数量 0.55 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 -2.0%
- アセアン・欧州:数量 350(日系メーカーのアセアン・欧州の生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 1,706(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 60 億円・営業利益 5 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 9.0%
倍率:事業の ROE は 5% 前後で k を大きく下回り、PER の上限は 1÷k=11.8 倍。シェアを失って固定費が重くなる筋書きなので、稼ぐ力から上限の 7 割弱に当たる 8.0 倍に置いた。余った現金は 0.75 倍の 90 億円。
確率:日系メーカーが北米と東南アジアで中国勢に押され、関税の転嫁も遅れる筋書き。自動車部品には起こりやすい形で、中立に次ぐ確率を置いた。
悲観 12% 顧客の再編と部品点数の減少で、役割が細る 利益 9 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 444 円114 億円
ホンダ系と日産系の縮小に、車体の一体鋳造など部品点数の減る工法が重なる。締結部品とプレス部品の需要が構造的に細り、国内の数量は 3 割近く減る。米州も日系の現地生産が減り、数量は 2 割弱落ちる。中国はほぼ撤退に近い規模へ縮む。価格は物価に追いつかず、値下げ要請に押される。固定費の重い自社工場が足を引っ張り、営業利益率は 2% 台まで下がる。海外工場には減損が出て、拡張投資は裏目に出る。部品商社としての優良さを失い、現金のうち余った分も運転資金と減損の穴埋めに使われる。配当は続くが、持ち分に見合う利益は出ない。
- 日本:数量 575(日系メーカーの国内生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 2,870(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 165 億円・営業利益 3 億円。数量 0.72 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 2.0%
- 米州:数量 454(日系メーカーの北米生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 3,056(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 139 億円・営業利益 3 億円。数量 0.82 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 2.5%
- 中国:数量 122(日系メーカーの中国生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 714(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。数量 0.35 倍・価格 1.10 倍・営業利益率 -5.0%
- アセアン・欧州:数量 280(日系メーカーのアセアン・欧州の生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台))× 価格 1,509(1 台あたりの当社売上(円・名目))→ 売上 42 億円・営業利益 3 億円。数量 0.80 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 6.0%
倍率:事業の ROE は 2% 台で k を大きく下回る。構造的に稼ぐ力が細る筋書きなので、稼ぐ力から上限の 6 割に当たる 7.0 倍に置いた。余った現金は半分の 60 億円。
確率:ホンダ系・日産系の縮小に、車体の一体鋳造など部品点数の減る工法が重なる構造的な負け。10 年あれば起こりうる水準として 1 割余りを置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本
日系メーカー向けの締結部品・プレス部品・切削品を国内で供給。売上の約 5 割。ファクトリー機能(オーハシ技研工業など)とファブレス機能の両方を持つ。
| 数量日系メーカーの国内生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台) | 価格1 台あたりの当社売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 799 | 2,496 | 199 | 10 |
| 10 年後 中立 | 775 | 3,345 | 259 | 14 |
取り方:日系 8 社の国内生産(2025 年・約 799 万台)を当社の部品が載る台数の目安とし、日本セグメントの売上 199.4 億円を割り戻して 1 台あたり単価を 2,496(円換算の値)とした(推定)。台数は実質で、取り込み(シェア)の増減は数量に入れた。物価と価格改定は価格に入れた。営業利益 9.8 億円は開示。
米州
米国を中心に、日系メーカーの北米工場へ部品を供給。ホンダ系の比重が高い。米国に自社工場があり、拡張中。
| 数量日系メーカーの北米生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台) | 価格1 台あたりの当社売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 554 | 2,547 | 141 | 9 |
| 10 年後 中立 | 620 | 3,413 | 212 | 14 |
取り方:日系 8 社の北米生産(2025 年・約 554 万台)を目安とし、米州の売上 141.1 億円を割り戻して 1 台あたり単価を 2,547(円換算の値)とした(推定)。台数は実質、シェアの増減は数量、物価と関税の転嫁は価格に入れた。営業利益 8.9 億円は開示。
中国
日系メーカーの中国工場へ部品を供給。ホンダ向けが 2 年連続で約 3 割減るなど縮小が続き、赤字。武漢支店は閉鎖。
| 数量日系メーカーの中国生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台) | 価格1 台あたりの当社売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 350 | 649 | 23 | −1 |
| 10 年後 中立 | 262 | 870 | 23 | 0 |
取り方:日系メーカーの中国生産を約 350 万台と推定(ホンダの中国生産が約 68 万台など。合計は未確認)、中国の売上 22.7 億円を割り戻して 1 台あたり単価を 649(円換算の値)とした。台数は実質、物価は価格に入れた。営業利益はマイナス 0.9 億円(開示)。
アセアン・欧州
タイを中心とするアセアンと欧州の日系メーカー向け供給。利益率は二桁で、全社の利益の稼ぎ頭。台湾の調達子会社はここに含めず調整に入れる。
| 数量日系メーカーのアセアン・欧州の生産台数に当社の取り込みを掛けた台数相当(万台) | 価格1 台あたりの当社売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 350 | 1,312 | 46 | 6 |
| 10 年後 中立 | 402 | 1,758 | 71 | 8 |
取り方:日系メーカーのアセアンと欧州の生産を約 350 万台と推定(合計は未確認)、アセアン 31.1 億円と欧州 14.9 億円の売上計 45.9 億円を割り戻して 1 台あたり単価を 1,312(円換算の値)とした。台数は実質、物価は価格に入れた。営業利益はアセアン 4.5 億円と欧州 1.7 億円の計 6.2 億円(開示)。
リスクと懸念
ホンダ系への依存
売上の 4 割をホンダ系が占める。ホンダの生産や調達方針が変われば、同社の数量は直接動く。中国ではホンダ向けが 3 年続けて減っており、日産系も 1 割ある。顧客の再編は、数量と価格の両方に響く。
車体の一体鋳造など工法の変化
車体の大きな部分を一体で作る工法が広がれば、締結部品とプレス部品の点数が減る。EV 化より速く、同社の中心の商品を削る可能性がある。進行は遅いが、10 年あれば形が変わりうる。
中国勢のシェア拡大
中国と東南アジアで、日系メーカーは中国勢にシェアを奪われつつある。日系の生産が減れば、部品の取引も細る。同社の中国事業はすでに赤字が続き、ホンダ向けは減少が止まっていない。
メーカーの値下げ要請
直近の利益率の回復は、価格改定の定着に支えられた。物価の上昇が落ち着けば、転嫁は難しくなる。毎年のコスト下げ要請が戻れば、利益率は 5% 台前半に押し戻される。
現金の使い方と資本効率
現金が 220 億円を超えるのに、自己資本利益率は 5% 台にとどまる。工場投資や M&A に失敗すれば、現金の価値が目減りする。還元を強めなければ、現金は額面の価値にならない。
海外子会社の統制
2023 年にメキシコの子会社で約 2.8 億円の詐欺被害があった。再発防止策は出されたが、海外拠点が多く、現地の代表者に権限が集まりやすい構造は残る。
今後の分かれ目
- 中国でのホンダ向けの売上が下げ止まらず、さらに減り続けたら
- 中国事業は撤退に近い縮小となる。損失が膨らみ、やや悲観の確率を上げる。
- 米州の営業利益率が 7% を安定して超えたら
- 米国の自動化と価格改定の成果が定着した。中立の利益率と、やや楽観の確率を引き上げる。
- グループの製造比率が 30% を超えたら
- 内製化が進み、作る側の付加価値が乗り始める。利益率の見通しを上げる。
- DOE の引き上げや大型の自社株買いを発表したら
- 現金が株主に動く。余った現金の戻り方が増し、価値の上振れ要因になる。
- ホンダ系か日産系の取引が大きく減ると開示されたら
- 顧客の偏りが実際の数量減になった。やや悲観と悲観の確率を上げる。
- 車体の一体鋳造が日系メーカーの主力車種に広がったら
- 締結部品とプレス部品の点数減が現実になる。悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 米州の売上と営業利益率
- 国内の売上と日系メーカーの国内生産台数
- 中国事業の損益とホンダ向けの売上
- グループの製造比率と設備投資の進み具合
- DOE・配当性向・自社株買いの方針
- 中期経営計画の営業利益率の達成度
倍率と資本コストの決め方
先に日本・米州・中国・アセアンと欧州の 4 地域で、数量(日系メーカーの生産台数と当社の取り込み)と価格(1 台あたり売上の名目)を置き、10 年後の売上と営業利益を積み上げた。倍率は今の株価や過去・同業の PER から置いていない。k 7.25%(基本 7.5% に品質 +1.0%)と g 4% から正当化 PER を求め、事業の ROE が k を下回る中立は上限 1÷k の 9 割、やや悲観と悲観は稼ぐ力から 7 割弱と 6 割に置いた。余った現金 120 億円は事業の利益と分けて別に足した。利払いは、現金がすでに海外で高い利回りで回っているため、円預金の分だけ 0.5 億円ほど上乗せした。結果は今の時価総額に近く出たが、数字を今の株価に合わせて調整してはいない。リースは本社や拠点の賃借が小さく、新リース会計基準の影響は小さい。10 年後の数字は、家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→16.22 倍・やや楽観 PER 11.8→15.02 倍・中立 PER 10.6→13.84 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。