結論
モリトは、服飾資材と自動車内装の小さな部品を扱う、大阪本社の専門商社兼メーカーだ。金属ホック(ベビー服やジーンズの留め具)は国内首位、世界でも 2 位と会社は言う。筆者の結論は、財務は強く経営も前向きだが、今の株価はやや割高というものだ。
稼ぐ力は着実に上がった。営業利益は 2022 年 11 月期の 21 億円から、2025 年 11 月期に 33 億円へ伸びた。粗利益率は 26% から 30% 台へ上がった。2026 年 11 月期は上期だけで営業利益 21 億円と、過去最高を更新している。
ただ、成長の中身は買収だ。2022〜2024 年は売上がほぼ横ばいで、2025 年の増収は婦人服飾雑貨の Ms.ID(43.6 億円)と服飾資材のミツボシコーポレーションの買収による。会社自身も、買収を除く売上の拡大が課題だと認めている。
新しい中期経営計画は、2031 年 11 月期に売上 1,000 億円、営業利益 60 億円、ROE 12% を掲げる。今の営業利益の 1.8 倍である。実現には、買収を重ねながら利益率を保つ必要がある。
財務は強い。自己資本比率は 72% で、現金は借入を 67 億円上回る。配当は純資産の 5% を目安にし、2031 年に 6% へ上げる方針だ。10 年後の中立は、営業利益 43 億円、ROE 7% 台。資本コスト 7.75% にわずかに届かない水準で、その価値は今の時価総額を下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、モリトは「小さいが筋の良い事業を、きれいな財務で営む会社」に見える。
良い点は 3 つある。無借金に近い財務、粗利益率の上昇、そして株主に返す姿勢だ。営業利益は 3 年で 3 割伸び、現金が借入を上回る。部品は完成品に比べて安く、一度採用されると替えにくい。
気になる点も 3 つ。1 つ目は成長の質。売上の拡大は買収に頼り、買収を除くと 3 年間ほぼ横ばいだった。2 つ目は資本の使い方。現金を買収に使うほど、ROE を押し上げる配当・自社株買いと、のれんの増加が綱引きになる。3 つ目は、10 年先も強いと言い切れる部分が、金属ホックと自動車のエンブレムなどに限られることだ。
安全域は、今の株価では厚くない。ROE は資本コストの手前にあり、現金の厚みを差し引くと、事業そのものを割安で買える水準にはない。筆者は、買収が当たり続ける筋書きが半分以上織り込まれた値段だと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、世界の衣料メーカーや自動車メーカーが使う小さな部品である。事業は 3 つに分かれる。
アパレル関連(売上の約 5 割強)は、金属ホック、ファスナー、ボタンなどの服飾資材を、衣料メーカーに納める。ベビー服、作業服、メディカルウェア、高級バッグ、スポーツシューズの付属品が中心だ。2025 年に買ったミツボシコーポレーションは作業服・ユニフォーム向けの資材商社で、空調服向けが伸びている。Ms.ID は福岡の婦人服飾雑貨で、消費者に直接売る。2026 年 4 月には金属ホックを作る久永製作所がグループに入った。
プロダクト関連(約 4 割弱)は、ヘルスケア商品、文具・ゲーム、均一価格店向けの商品、猛暑対策品などを、他社の工場に作らせて売る事業(ODM・OEM)が中心だ。ほかに、厨房機器の貸し出し・販売・清掃サービス(エース工機)と、アクションスポーツ用品(マニューバーライン)がある。
輸送関連(約 1 割)は、日系自動車メーカー向けの内装部品。ネット、ストラップ、フロアマット用エンブレムが主力で、エンブレムは国内首位と会社は言う。
売上の地域は、日本 74%、アジア 14%、欧米 12%。深セン、米国ジョージア州、ベトナムのダナンに自社工場があり、自社製造と商社の調達を組み合わせる。商社の仕入れ網で小ロットの注文を受け、納期と品質を保証するところが、顧客に選ばれる理由だ。
優良さと弱いところ
堀(他社がまねできない強み)は中程度である。筆者は、強い堀と呼べるほどではないと見る。
強みは 3 つある。ホックなどの小さな部品を、世界のブランドの規格に合わせて、小ロットで、短い納期で届ける力。日本・香港・中国・米国・欧州に広がる調達と販売の網。そして、金属ホックでの世界 2 位の規模だ。部品は完成品の原価に占める割合が小さく、品質が悪いと困るので、一度採用されると替えにくい。
弱みも明らかだ。部品の単価は小さく、顧客は価格交渉に強い。自動車は毎年の値下げ要請を受ける。会社自身が、プロダクトでは OEM など顧客の需要に左右されるビジネスが多いこと、輸送では調達が多くて低収益なこと、買収した会社とのシナジーが未完であることを、課題に挙げている。
数字は改善している。ROE は 2022 年の 4.8% から 2025 年の 7.3% へ上がった。ただ、過去 10 年の中央値は 4.4% で、資本コストに届いた期間は短い。2025 年は米国子会社ののれん 8 億円を減損した。買収の目利きは、まだ試されている最中だ。
経営は規律を持ち始めた。2022 年に事業会社を 3 つに分け、不採算を洗い出し、現金を回す速さ(CCC)を管理職の評価に入れた。これが粗利益率の上昇につながった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のアパレル小売市場は、2024 年に 8.5 兆円。コロナ前の 2019 年の 93% まで戻ったところで、人口が減る長期の流れは変わらない。ただ、モリトの売上の 3 割弱は海外で、ファストファッション、スポーツ、作業服など、衣料の生産は中国から東南アジアへ移っている。ホックなどの部品は、生産地の近くで作り、近くで売る「地産地消」が求められる。モリトがベトナムのダナンで工場を増やすのは、そのためだ。
服飾資材は、小さな市場の集まりである。ボタン、ファスナー、ホック、織りネーム、タグなどの品目ごとに専門メーカーがいる。モリトの対象を筆者は国内外で約 1.5 兆円と推計する。景気より、流行と在庫調整の波を受ける。2024 年は暖冬でアクティブスポーツが苦戦した。
プロダクトの市場は、品目がばらばらだ。筆者は約 1 兆円と置く。ヘルスケア商品や均一価格店向けは堅調だが、収益は仕入れと製造委託の力に左右される。
輸送は、日系自動車の生産台数に連動する。2026 年は、中国と米国の一部の日系メーカーの不振が響いている。トヨタ系は堅調でも、台数が伸びる市場ではない。
構造の変化は 2 つある。1 つ目は人手不足と物流費の上昇で、小さな部品を多品種で配る商社の負担が重くなる。2 つ目は環境対応で、廃漁網を使った資材のように、規制と顧客の要請が値段に乗る分野が出てきた。モリトの環境資材は年 10 億円ほどで、2031 年に 50 億円を目指す。
資本政策と M&A
還元の方針は、この会社でいちばん変わった点だ。配当性向は 50% 以上を基準に、DOE(純資産配当率)を 4% から、2027 年 11 月期に 5% へ上げ、2031 年に 6% を目標にする。累進配当、つまり減らさない方針も加えた。2026 年 11 月期の配当は DOE 4.6%の予想だ。
自社株買いも続けている。2026 年は上期だけで 12 億円ほどを買い、7 月にも上限 6 億円(30 万株)を決めた。配当と合わせて、利益の大半を株主に返す形になっている。
買収は、成長の中心だ。2014 年に米国のスコーヴィルを買い、2022 年からの中計で Ms.ID(43.6 億円)、ミツボシコーポレーション(10.9 億円)、久永製作所を加えた。ミツボシは安く買えて負ののれん益 11 億円が出たが、スコーヴィルは 2025 年に 8 億円を減損した。新しい計画は、現金と借入で買収を進める方針で、自己資本比率は 60% 程度へ下げる。
株主には、信託銀行(9.2%)、明治安田生命(6.5%)、カネエム工業(6.0%)、クラレ(5.1%)が並ぶ。投資有価証券は 66 億円あり、少しずつ売っているが、縮減の数値目標は見つからなかった。株主優待はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
モリトは、買収した会社を育てる段階に入った。2022 年に事業会社を分けて利益の見える化を進め、粗利益率は 26% から 30% 台へ上がった。上期の営業利益は、半期開示を始めて以来の最高だ。ミツボシは空調服向けで想定を超え、ベトナムではスポーツシューズ向けの付属品が伸びる。
金属ホックの世界 2 位は、規模の経済が効く。久永製作所の日本製ホックを「母工場」にし、中国・米国・ベトナムの工場へ技術を移せば、品質のばらつきが減り、地産地消が進む。Ms.ID の消費者向け事業は、自社ブランドの比率を上げ、粗利益率を押し上げる。環境資材は 5 倍に伸びる。
財務は厚い。営業キャッシュフローの半分を還元に回しても、残りと手元の現金で、設備投資と買収を続けられる。DOE 5〜6% の配当は利益と自社株買いで賄え、1 株利益は伸びる。2031 年に売上 1,000 億円、営業利益 60 億円、ROE 12% は、現実的な目標だ。PBR が 1 倍付近なのは、これを織り込んでいない。
慎重な見方
成長は買収頼みだ。2022〜2024 年は売上が 485 億円でぴたりと止まり、買収を除く拡大は課題のまま残っている。目標の 1,000 億円は、今の 1.6 倍で、買収を続けなければ届かない。スコーヴィルでは、のれんを 8 億円減損した。買収を重ねるほど、高い値段で買う失敗の確率が上がる。
アパレル資材は流行と在庫調整の波を受ける。2024 年は暖冬でアクティブスポーツが落ちた。空調服向けは猛暑の需要で、反動もありうる。輸送は、中国と米国で日系自動車メーカーの不振が続き、毎年の値下げ要請で利益率が削られる。
Ms.ID の消費者向け事業は、広告費と手数料がかかり、利益率が低い。のれん償却も重い。会社が掲げる ROE 12% には、営業利益 60 億円が必要で、その上に配当を DOE 6% で出し続けることは、利益の 7 割以上を使うことになる。業績が崩れれば、減配になりうる。
今の株価は、PBR 1.2 倍で、現金を差し引いた事業への評価は PER 14 倍ほどになる。計画どおりに進んで初めて妥当で、少しでも外れれば割高になる値段だ。
どちらに重みを置いたか
強気の主張は、粗利益率の上昇と買収の成果という実績に支えられていて、軽く見られない。だが、買収を除く成長が 3 年止まっていた事実と、スコーヴィルの減損は、慎重な見方を支える。中立は、買収の効果が定着して利益が緩やかに伸びる姿に置き、確率は中立側に厚く、悲観を少し薄くした。営業利益は 43 億円で、会社の中計よりかなり低い。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/11 期)
確率で加重した株価時価総額 1,721 円435 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 945 円239 億円)。 今の値に割り戻すと 1,467 円371 億円、今との差 −19.7%、 期待の年率 +3.9%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,763 円952 億円 | 1,503 円380 億円 | +188.4% | +11.2% | 421 円107 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,613 円661 億円 | 1,206 円305 億円 | +109.1% | +7.7% | 764 円193 億円 |
| 中立 | 36% | 1,755 円444 億円 | 1,068 円270 億円 | +54.6% | +4.5% | 1,016 円257 億円 |
| やや悲観 | 24% | 935 円236 億円 | 633 円160 億円 | −14.1% | −1.5% | 376 円95 億円 |
| 悲観 | 12% | 346 円88 億円 | 396 円100 億円 | −59.4% | −8.6% | 89 円23 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,721 円435 億円 | 945 円239 億円 | +46.0% | +3.9% | 2,667 円674 億円 |
今の株価時価総額 1,826 円462 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 買収と有機成長がかみ合い、会社の計画を超える 利益 56 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 3,763 円952 億円
久永製作所を母工場にして、中国・米国・ベトナムの工場の品質がそろい、金属ホックの世界での地位が固まる。ミツボシは作業服・ユニフォーム向けの資材で通年の寄与を出し、環境資材も 50 億円に届く。アパレル関連の売上は今の 2.3 倍、720 億円になる。
プロダクト関連は、厨房機器サービスの全国展開と自社ブランドの拡大で、売上が 390 億円に近づく。輸送はメキシコの工場と九州の営業所が実り、日系メーカーの不振を埋める。
M&A は 10 年で複数件が成功し、売上は 1,200 億円に達する。営業利益は 77 億円で、利益率は 6.4%。会社の中計の水準(6%)を少し上回る。配当は DOE 6% を守り、自社株買いも続く。ROE は 12% 台に乗る。
- アパレル関連:数量 53.7(国内外の服飾資材・服飾雑貨の実質規模 × モリトのシェア(十億円・2025 年の値段))× 価格 1.34(値段の指数(今=1.00。物価込みの名目))→ 売上 720 億円・営業利益 49 億円。ホック・資材の数量 1.75 倍(買収の通年効果+有機成長)、価格は物価並み。利益率 6.8%
- プロダクト関連:数量 29.7(国内の対象商品・サービスの実質規模 × モリトのシェア(十億円・2025 年の値段))× 価格 1.30(値段の指数(今=1.00。物価込みの名目))→ 売上 386 億円・営業利益 25 億円。数量 1.45 倍(厨房サービス・自社ブランド)、価格 1.30 倍。利益率 6.5%
- 輸送関連:数量 7.4(日系自動車メーカー向けの対象内装部品の実質規模 × モリトのシェア(十億円・2025 年の値段))× 価格 1.30(値段の指数(今=1.00。物価込みの名目))→ 売上 96 億円・営業利益 8 億円。数量 1.30 倍(メキシコ・九州)、価格 1.30 倍。利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 55 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.7% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 16.7 倍、時価総額 952 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金属ホックの地産地消、ミツボシや Ms.ID の定着、環境資材の伸びがそろい、買収も大きな失敗なく続く、複数の成功が連続する筋書き。買収を除く売上が 3 年止まっていた事実から、1 割を切る確率にとどめた。
やや楽観 20% 中計の方向どおり、売上 1,000 億円近くまで広がる 利益 43 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 2,613 円661 億円
アパレル関連は、買収の通年効果と有機成長で売上が 590 億円まで伸びる。ホックの地産地消が進み、ミツボシの空調服向けも定着する。プロダクトは厨房サービスとヘルスケア商品が堅調で、300 億円になる。輸送は日系メーカーの回復で微増する。
全社の売上は 970 億円で、会社の計画(2031 年に 1,000 億円)に 4 年遅れて届く。営業利益は 59 億円、利益率は 6.1%。粗利益率の改善が続き、のれん償却の重さを吸収する。
配当は DOE 5〜6% に沿って増え、自社株買いも続く。ROE は 9% 台で、資本コストを少し上回る。
- アパレル関連:数量 44.5(国内外の服飾資材・服飾雑貨の実質規模 × モリトのシェア(十億円・2025 年の値段))× 価格 1.32(値段の指数(今=1.00。物価込みの名目))→ 売上 588 億円・営業利益 39 億円。数量 1.45 倍、価格 1.32 倍。利益率 6.6%
- プロダクト関連:数量 23.6(国内の対象商品・サービスの実質規模 × モリトのシェア(十億円・2025 年の値段))× 価格 1.28(値段の指数(今=1.00。物価込みの名目))→ 売上 302 億円・営業利益 18 億円。数量 1.15 倍、価格 1.28 倍。利益率 6.0%
- 輸送関連:数量 6.3(日系自動車メーカー向けの対象内装部品の実質規模 × モリトのシェア(十億円・2025 年の値段))× 価格 1.28(値段の指数(今=1.00。物価込みの名目))→ 売上 80 億円・営業利益 6 億円。数量 1.10 倍、価格 1.28 倍。利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 43 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 14.81 倍、時価総額 661 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:粗利益率の上昇、買収した会社の定着、配当方針の引き上げと、足元の勢いは強い。実績が積み上がっているので、2 割を置いた。ただし、計画は未達が続いた過去も見て、中立より薄くした。
中立 36% 買収の効果が定着し、利益は緩やかに伸びる 利益 32 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 1,755 円444 億円
アパレル関連は、Ms.ID とミツボシの通年効果で一段高くなり、その後は国内の需要減と海外の伸びが打ち消し合う。売上は 450 億円。プロダクトは 250 億円、輸送は日系メーカーの生産が横ばいで 70 億円にとどまる。
全社の売上は 770 億円。物価の分だけ名目では伸びるが、実質では今の水準に近い。利益率は 5.7% で、過去最高(5.9%)をわずかに下回る。営業利益は 44 億円。
買収は 10 年で 1〜2 件にとどまり、のれんの償却も続く。配当は DOE 5〜6% を守り、自社株買いを一部加える。純現金は積み上がる。ROE は 7% 台で、資本コストに少し届かない。
- アパレル関連:数量 34.4(国内外の服飾資材・服飾雑貨の実質規模 × モリトのシェア(十億円・2025 年の値段))× 価格 1.30(値段の指数(今=1.00。物価込みの名目))→ 売上 447 億円・営業利益 29 億円。買収の通年効果で数量 1.12 倍(有機分は 0.88 倍)、価格 1.30 倍。利益率 6.5%
- プロダクト関連:数量 20.1(国内の対象商品・サービスの実質規模 × モリトのシェア(十億円・2025 年の値段))× 価格 1.25(値段の指数(今=1.00。物価込みの名目))→ 売上 251 億円・営業利益 13 億円。数量 0.98 倍、価格 1.25 倍(OEM の価格圧力)。利益率 5.3%
- 輸送関連:数量 5.4(日系自動車メーカー向けの対象内装部品の実質規模 × モリトのシェア(十億円・2025 年の値段))× 価格 1.25(値段の指数(今=1.00。物価込みの名目))→ 売上 68 億円・営業利益 5 億円。数量 0.95 倍、価格 1.25 倍(毎年の値下げ要請)。利益率 7.5%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 13.1 倍、時価総額 444 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:粗利益率の上昇は本物だが、買収を除く売上の伸びは 3 年止まっていた。会社の計画は過去に高めで、実績は着実に積み上がる側という両面から、最大の確率を置いた。
やや悲観 24% 買収が空振りし、アパレルと自動車が同時に細る 利益 19 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 935 円236 億円
Ms.ID の消費者向け事業が広告費に押されて利益を出せず、のれんを減損する。アパレル資材は、中国・ベトナムの安い部品メーカーとの競争で、有機成長が実質で 3 割落ちる。売上は 340 億円。
プロダクトは OEM の価格圧力で 210 億円にとどまる。輸送は、中国と米国の日系メーカーの不振と値下げ要請で、売上が減り、利益率も 5% 台に落ちる。
全社の売上は 600 億円。営業利益は 25 億円で、利益率は 4.1%。会社は DOE を維持できず、配当を純利益の 8 割程度に下げる。買収に使った現金が戻らず、ROE は 4% 前後に下がる。
- アパレル関連:数量 27.6(国内外の服飾資材・服飾雑貨の実質規模 × モリトのシェア(十億円・2025 年の値段))× 価格 1.22(値段の指数(今=1.00。物価込みの名目))→ 売上 337 億円・営業利益 17 億円。有機分が実質 3 割減、数量 0.90 倍。価格 1.22 倍。利益率 5.0%
- プロダクト関連:数量 17.4(国内の対象商品・サービスの実質規模 × モリトのシェア(十億円・2025 年の値段))× 価格 1.18(値段の指数(今=1.00。物価込みの名目))→ 売上 206 億円・営業利益 8 億円。数量 0.85 倍、価格 1.18 倍。利益率 4.0%
- 輸送関連:数量 4.6(日系自動車メーカー向けの対象内装部品の実質規模 × モリトのシェア(十億円・2025 年の値段))× 価格 1.15(値段の指数(今=1.00。物価込みの名目))→ 売上 52 億円・営業利益 3 億円。数量 0.80 倍、価格 1.15 倍。利益率 5.5%
倍率:事業の ROE 3.9% が k 7.75% 以下なので PER は 1÷k=12.5 倍まで。利益が薄く、のれんの減損リスクが残る年。稼ぐ力(純利益÷k)より倍率を抑える。上限の 7 割台半ばに置く。(上限の約 75% の 9.4 倍)
確率:買収した会社のシナジーが出ず、流行・在庫調整の波とアパレル資材の価格競争が重なり、日系自動車の不振が続く。スコーヴィルの減損や、買収を除く売上の停滞という実績があるので、2 割台半ばを置いた。
悲観 12% ホックも自動車も競争に負け、買収が裏目に出る 利益 7 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 346 円88 億円
アパレル資材は、ブランドが調達先を中国・ベトナムの専業メーカーに切り替え、モリトの数量が実質で 3 割減る。Ms.ID の消費者向け事業は撤退し、のれんを損失に計上する。
輸送は、日系自動車メーカーが中国と米国で失速し、毎年の値下げ要請に耐えられず、売上が 4 割減る。プロダクトも、OEM の取引先を失う。
全社の売上は 420 億円、営業利益は 7 億円。配当は DOE の目安を守れず、半分近くまで減らす。それでも純現金と投資有価証券が残るので、倒産は遠い。もはや優良な部品商社ではなく、資産の厚みだけで評価される会社になる。
- アパレル関連:数量 21.5(国内外の服飾資材・服飾雑貨の実質規模 × モリトのシェア(十億円・2025 年の値段))× 価格 1.12(値段の指数(今=1.00。物価込みの名目))→ 売上 241 億円・営業利益 6 億円。数量 0.70 倍、価格 1.12 倍。利益率 2.5%
- プロダクト関連:数量 13.3(国内の対象商品・サービスの実質規模 × モリトのシェア(十億円・2025 年の値段))× 価格 1.08(値段の指数(今=1.00。物価込みの名目))→ 売上 144 億円・営業利益 3 億円。数量 0.65 倍、価格 1.08 倍。利益率 2.0%
- 輸送関連:数量 3.4(日系自動車メーカー向けの対象内装部品の実質規模 × モリトのシェア(十億円・2025 年の値段))× 価格 1.05(値段の指数(今=1.00。物価込みの名目))→ 売上 36 億円・営業利益 1 億円。数量 0.60 倍、価格 1.05 倍。利益率 3.0%
倍率:構造的に負けた筋書きで、稼ぐ力(事業の純利益 6.3 億円 ÷ k)は 80 億円に届かない。床を売れる資産で見て、今の自己資本 386 億円に 0.22 倍を掛けた。内訳は、投資有価証券の時価 65.9 億円から含み益の税を引いた約 53 億円と、純現金 67 億円に戻り方 0.5 を掛けた約 34 億円で、合計約 87 億円。土地・のれん・商標権は数えない。ROE が k 以下で、売れる資産が稼ぐ力に近いため、後者を採った。
確率:ホックなどの小さな部品が中国・ベトナムの専業メーカーに取られ、日系自動車が構造的に細り、買収した事業ののれんを大きく減損する、構造的に負ける姿。財務が強く、複数の事業に分散しているので、確率は 12% にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
アパレル関連
金属ホック・ファスナー・ボタンなどの服飾資材、ミツボシコーポレーション(作業服向け資材)、Ms.ID(婦人服飾雑貨の消費者向け事業)、久永製作所。
| 数量国内外の服飾資材・服飾雑貨の実質規模 × モリトのシェア(十億円・2025 年の値段) | 価格値段の指数(今=1.00。物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 30.7 | 1.00 | 307 | 22 |
| 10 年後 中立 | 34.4 | 1.30 | 447 | 29 |
取り方:市場の規模は筆者の推計で約 1.5 兆円(実質)。国内のアパレル小売 8.5 兆円(2024 年)の資材分と、アジア・欧米向けを合わせた。売上 307 億円(会社資料の円グラフで全体の 54%)を割るとシェアは約 2.0%。営業利益 21.5 億円は、営業利益構成 57%(のれん償却前)から筆者が起こした。買収した Ms.ID は 9 か月分、ミツボシは 6 か月分しか入っておらず、2026 年 11 月期は通期になる。
プロダクト関連
ヘルスケア・文具・ゲーム・均一価格店向けの商品の企画と製造委託、厨房機器サービス(エース工機)、アクションスポーツ(マニューバーライン)。
| 数量国内の対象商品・サービスの実質規模 × モリトのシェア(十億円・2025 年の値段) | 価格値段の指数(今=1.00。物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 20.5 | 1.00 | 205 | 11 |
| 10 年後 中立 | 20.1 | 1.25 | 251 | 13 |
取り方:市場の規模は筆者の推計で約 1 兆円(実質)。ヘルスケア・文具・ゲーム・均一価格店向けの商品と、厨房機器のサービス。売上 205 億円(全体の 36%)を割るとシェアは約 2.0%。営業利益 11.3 億円は営業利益構成 30% から筆者が起こした。
輸送関連
日系自動車メーカー向けの内装部品(ネット、ストラップ、フロアマット用エンブレムなど)。日本・中国・米国・欧州。
| 数量日系自動車メーカー向けの対象内装部品の実質規模 × モリトのシェア(十億円・2025 年の値段) | 価格値段の指数(今=1.00。物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 5.7 | 1.00 | 57 | 5 |
| 10 年後 中立 | 5.4 | 1.25 | 68 | 5 |
取り方:市場の規模は筆者の推計で約 3,800 億円(実質)。日系メーカーの内装小物部品。売上 57 億円(全体の 10%)を割るとシェアは約 1.5%。営業利益 4.9 億円は営業利益構成 13% から筆者が起こした。2026 年は中国と米国の一部メーカーの不振で減る見込み。
リスクと懸念
買収に頼った成長と、買収の失敗
2022〜2024 年は売上が 485 億円で止まり、2025 年の増収は Ms.ID(43.6 億円)とミツボシの買収による。会社の目標の売上 1,000 億円は、買収を続けないと届かない。2025 年は米国子会社ののれん 8 億円を減損した。買収が増えるほど、高く買う失敗の確率が上がる。
アパレルの流行・在庫調整・生産地の移動
服飾資材は、暖冬や在庫調整の年に急に減る。衣料の生産が中国から東南アジアへ移る中、地産地消に遅れると、現地の専業メーカーにシェアを取られる。国内のアパレル小売はコロナ前の 93% の水準にとどまる。
日系自動車メーカーの不振と値下げ要請
輸送関連の売上は 1 割だが、中国と米国の一部の日系メーカーの不振が響いている。毎年の値下げ要請で利益率が削られ、関税の影響も受けうる。会社自身が、輸送は調達が多く低収益だと認めている。
消費者向け事業(Ms.ID)の採算とのれん
Ms.ID は広告宣伝費と販売手数料が重く、のれん償却も加わる。会社は 2026 年も費用が続くと説明している。消費者向けは流行の移り変わりが速く、シナジーが出なければ、減損の火種になる。
調達コストと人件費の上昇
中東情勢による調達リスクと一部原材料の価格上昇、人手不足による人件費の増加が続いている。価格交渉で転嫁できるかが粗利益率を左右する。粗利益率は 2022 年の 26% から 30% 台へ上がったが、これが守れるかは試されていない。
高い還元と財務の変化
配当は DOE 5%、2031 年に 6% へ上げる方針で、自社株買いも続く。買収は現金と借入で進め、自己資本比率は 72% から 60% 程度へ下がる見込み。業績が崩れれば、減配か、買収の見直しを迫られる。
今後の分かれ目
- 買収を除く売上(有機成長)が 2 期連続で伸びたら
- 成長が買収頼みでない証拠。中立の数量を上方に直し、楽観側の確率を厚くする。
- 粗利益率が 31% を超えて定着したら
- 価格転嫁と製品の質が改善した証拠。中立の営業利益率を 6% に近づけてよい。
- Ms.ID やミツボシで新たなのれん減損が出たら
- 買収の目利きに疑いが出る。やや悲観の確率を上げ、買収を伴う成長の見通しを下げる。
- 中国・米国の日系自動車メーカーの不振が長引いたら
- 輸送関連の数量と利益率を下方に直す。全社への影響は小さいが、値下げ要請の厳しさの指標になる。
- 2027 年 11 月期から DOE 5% が守られ、2031 年に 6% へ向かったら
- 還元方針が実行に移っている証拠。買収で現金が減る分と合わせて、余った現金の見方を見直す。
- 大型の買収(100 億円超)が発表されたら
- のれんと借入が増える。買収の相手の利益率と値段を見て、資本コストを超える稼ぎがあるかを確かめる。
見ておくもの
- 買収を除く売上の伸び(有機成長)と、粗利益率(30% 台を守れるか)
- Ms.ID・ミツボシ・久永製作所の営業利益と、のれん・商標権の償却と減損
- 金属ホックの地産地消(ダナン・米国・深センの稼働)
- 日系自動車メーカー向けの輸送関連の売上
- DOE 5% の実行と、自己資本比率・純現金の推移
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額 468 億円や PBR 1.2 倍を見る前に、3 つの事業を市場規模 × シェアで積み上げ、10 年後の利益と資本コスト 7.75% から倍率を決めた。中立は ROE が 7% 台で資本コストに届かず、倍率は式の上限(1÷k)の 9 割弱に置いた。余った現金は純現金 67 億円から運転資金の分(売上の 0.7 か月)を引いた 30 億円とし、時価総額は事業の利益 × 倍率に足した。結果は今の時価総額を 2 割ほど下回った。今の株価が倍でも半分でも、この数字は動かない。賃借はオフィスなど小さく、新リース会計基準の影響は小さい。10 年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.9→16.7 倍・やや楽観 PER 12→14.81 倍・中立 PER 11.5→13.1 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。