結論
トルクは、建設現場で使うボルトやナット、コンクリートに埋め込む金物を、メーカーから仕入れて工事会社や販売店に卸す大阪の商社だ。筆者の結論はやや割高である。時価総額は自己資本の 3 分の 1 しかないが、それでも稼ぐ力に比べて 2〜3 割高い。
売上は 200 億円台で 10 年ほとんど伸びていない。営業利益率は良い年で 4% 台、ならせば 2〜3% だ。2026 年 10 月期は夏の工事の休みと中小の建築の停滞で、営業利益が 4 割減る見込みである。
自己資本の 145 億円の裏には、取引先の岡部の株を中心とした 90 億円の上場株と、借入 125 億円がある。株の配当は利益に入るが、持ち合いの株は売られず、少数株主のものにはなりにくい。借入の金利が上がれば、薄い利益はさらに削られる。
10 年の中立では、売上は名目で 1 割強増えるが、利払いが増えて純利益は今と同じ 6 億円台にとどまる。ROE は 3% 台で、資本コストの 8.75% に遠く届かない。帳簿の安さは、ここでは安全域にならないと筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、トルクは「帳簿は厚いが、株主の手に届く利益は薄い」会社だ。
事業は 10 年後も残る。建物と工場とインフラがある限り、ボルトとナットは要る。現場に早く届ける商社の役割も消えない。だから事業の寿命の心配は小さい。
だが、オーナー利益、つまり株主のものになる利益は少ない。営業利益は 10 億円に届かず、その多くは在庫と売掛金に回る。配当は 1 割台しか出ない。
資本の使い方にも疑問が残る。借入を 125 億円抱えながら、取引先の株を 90 億円持つ。この株を売って借入を返せば、利払いが減り ROE は上がる。そうしないのは、取引関係と創業家の支配を優先しているからだ。
安全域は帳簿の上では大きく見える。PBR は 0.3 倍台だ。しかし資本コストを下回る ROE が続く限り、帳簿の 1 億円は 1 億円の価値を持たない。筆者は、払う値段に安全域があるとは見ない。
何で稼ぐ会社か
トルクは、ねじの業界で「鋲螺(びょうら)」と呼ばれるボルト・ナット類を扱う。事業は 1 つで、中身は 2 つの部門に分かれる。
大きい方は鋲螺部門だ。建物の鉄骨や設備、プラントで使う高力ボルトやアンカーボルト、ナット、機械工具を、全国の金物店や工事会社に売る。自社のウェブ受注の「ねじネット」と、スマートフォンで注文できるアプリで、小口の注文を手早くさばく。仕入れ先には大株主の岡部や、関連当事者の濱中ナット販売がある。
もう 1 つはコンクリート製品関連金物部門だ。コンクリートの壁や床の中に埋め込むインサート金物などを、コンクリート製品のメーカーや大型の工事に売る。港湾の工事、高速鉄道、能登半島地震の復興、都市の再開発が需要を支える。
稼ぎ方は商社の典型で、仕入れ値に上乗せした粗利が売上の 2 割強、販管費を引いた営業利益率は 2〜4% だ。在庫を厚く持ち、急な注文にすぐ応える。商品の在庫は 70 億円を超え、売掛金と合わせた運転資金を借入で賄う。
本社は大阪で、姫路の濱中家の会社が 3 割近くを持つ。創業家の色の濃い会社である。
優良さと弱いところ
トルクの強みは、品ぞろえと在庫、そして小口の注文をすぐ届ける物流だ。ボルトやナットは種類が多く、現場は必要な時に必要な数だけ欲しがる。数万点の在庫を持ち、ネットで注文を受ける仕組みは、工事会社や金物店にとって便利である。
だが、それは堀と呼ぶほど強くない。ボルトは規格品で、同じ物を他の商社も売る。値段は鋼材の相場と、仕入れ先のメーカーの値上げで決まる。トルクは値上げを客に伝えて粗利の額を守るのが精一杯だ。
資本の効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は 5% で、資本コストを大きく下回る。自己資本の 6 割は持ち合いの株の評価と、それに見合う借入でふくらんでいる。株主の取り分を厚くする方向の資本政策は、自社株の消却ぐらいしか見えない。
経営は手堅いが、守りに偏る。創業家と取引先が株の多くを持ち、外の株主から変化を迫られることも少ない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
建設用のねじの需要は、建設の量に沿って動く。日本の建設投資は名目で 75 兆円台と高い水準にあるが、その中身は二極化している。データセンターや半導体工場、国土強靱化の公共工事は底堅い一方、中小の建物の着工は止まっている。
量の先行きは細い。人口が減り、新しく建てる住宅と中小の建物は減っていく。職人の不足で工事は遅れ、夏の猛暑で現場を止める「夏季休工」も広がった。2026 年 10 月期のトルクの減収は、この流れを映す。
値段は鋼材の相場に連動する。中国の鉄の作りすぎで鋼材は安値が続きやすく、ボルトの値段も物価並みには上がりにくい。筆者は、業界の数量は 10 年で 1 割弱減り、値段は年 2% 前後の上昇にとどまると見る。
競争の形は分散している。ボルトの商社は全国に多く、メーカーの直販やネット通販のモノタロウなども小口の注文を取りに来る。生き残るのは、在庫と物流で現場の手間を減らせる会社だ。トルクのねじネットはその方向の手だが、規模で勝る相手は多い。
再編の余地はある。後継者のいない地方の金物店や小さな商社を束ねる動きは、業界のあちこちで続いている。
資本政策と M&A
配当は年間総額 1.4 億円ほどで、配当性向は 15% 前後と低い。株主優待は無い。
自己株式は多く、2026 年 3 月に 200 万株を消却したあとも、発行済株式の 1 割強の 339 万株を持つ。過去に買い戻した株を寝かせてきた形だ。
持ち合いは厚い。岡部の株を 540 万株、約 40 億円持ち、岡部もトルクの株を 15% 持つ。有報は「意義が不十分な株は縮減する」と書くが、売った実績はほとんど無い。濱中家の濱重興産と日本ナットを合わせると約 3 割で、その他の関係会社にあたる。
2026 年 1 月にスタンダード市場の上場維持基準の改善期間に入り、5 月に適合を発表した。流通する株の少なさが課題になりやすい会社である。溜まる現金の戻り方は、配当の低さと持ち合いの厚さから 0.5 とした。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
トルクは帳簿に比べて極端に安い。自己資本は 145 億円、上場株の時価は 90 億円あり、時価総額は 50 億円に届かない。株を税引き後で売るだけで、時価総額を上回る現金が手に入る。
本業も悪くない。2023〜2025 年に営業利益は 4 億円から 10 億円に増え、利益率は 4.5% と過去最高に並んだ。値上げを客に伝えて粗利の額を守る力はある。
需要の芯は強い。データセンター、半導体工場、港湾、高速鉄道、国土強靱化の工事はこれからも続く。コンクリート金物の部門は、こうした大型の工事で伸びた。
ねじネットとアプリは、小口の注文の手間を減らし、客を囲い込む。人手不足の現場ほど、こうした仕組みの価値は上がる。
資本政策も動き始めた。2026 年に自社株 200 万株を消却し、上場維持基準にも対応した。持ち合いの株を減らせば、ROE は一気に上がる。
人手不足で現場の職人は減り、材料をそろえる手間を商社に任せる流れは強まる。在庫を厚く持つ商社の出番は増える。
慎重な見方
帳簿の厚さは株主のものではない。90 億円の株の半分は取引先の岡部の株で、岡部もトルクの株を持つ持ち合いだ。売れば取引が揺らぐので、会社は売らない。売らない株の値打ちは、配当の年 2 億円余りにすぎない。
本業は山を越えた。2026 年 10 月期は営業利益が 4 割減る見込みで、2025 年の利益率 4.5% は山だった。過去 10 年の中央値は 2% 台である。
借入は重い。有利子負債は 125 億円で、金利が上がれば利払いは年 4 億円を超える。営業利益の半分近くが金利に消える年もありうる。
需要は二極化している。大型の工事は大手の商社とメーカーが押さえ、トルクの得意な中小の工事は減っている。ネット通販も小口の注文を奪いに来る。
創業家が 3 割を持ち、上場維持の基準ぎりぎりの会社で、少数株主の声は届きにくい。安い株価は、この構造が変わらない限り安いままだ。
子会社が訴えられた件もあり、中身はまだ見えない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。持ち合いの株は売られた実績が無く、本業の利益は 2026 年に山から下った。強気の見方の根拠は資産の厚みだが、少数株主がそれを手にする道筋が見えない。確率は中立を 38% に置き、やや悲観と悲観を合わせて 36% とした。資産の売却や持ち合いの解消が始まれば、確率を上に動かす。今はその兆しが無い。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した株価時価総額 395 円89 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 50 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 208 円47 億円、今との差 −0.7%、 期待の年率 +7.8%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 542 円123 億円 | 80 円18 億円 | +197.5% | +11.5% | 37 円8 億円 |
| やや楽観 | 20% | 502 円113 億円 | 66 円15 億円 | +171.7% | +10.5% | 114 円26 億円 |
| 中立 | 38% | 469 円106 億円 | 51 円12 億円 | +149.2% | +9.6% | 198 円45 億円 |
| やや悲観 | 24% | 314 円71 億円 | 40 円9 億円 | +69.3% | +5.4% | 85 円19 億円 |
| 悲観 | 12% | 66 円15 億円 | 22 円5 億円 | −57.7% | −8.2% | 11 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 395 円89 億円 | 50 円11 億円 | +112.6% | +7.8% | 444 円100 億円 |
今の株価時価総額 209 円47 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 大型工事の需要をつかみ、利益率 4.5% を保つ 利益 9 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 542 円123 億円
データセンター、半導体工場、港湾と高速鉄道、国土強靱化の工事が 10 年続く。コンクリート金物の部門がこうした大型の工事で伸び、鋲螺の数量の減りを埋める。
鋼材の値上がりを客に伝えきり、値段は物価に近い率で上がる。ねじネットとアプリで小口の注文を囲い込み、営業利益率は 4.5% を保つ。
利払いは増えるが、上場株の配当が増えてそれを補う。持ち合いの株を一部売り、自社株の消却も続ける。それでも ROE は 4% 台で、資本コストには届かない。
厚い自己資本が、高い利益率の効き目を薄めてしまうからだ。
- 鋲螺・コンクリート製品関連金物の卸:数量 45.0(取扱数量(千トン・推定))× 価格 6.50(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 293 億円・営業利益 13 億円。4.5 万トン(横ばい)× 単価 1.30 倍、営業利益率 4.5%(過去 12 年の山)
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 111 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2025 年の利益率 4.5% は過去 12 年の山で、10 年保つには大型工事の需要と値上げの両方が要る。2026 年に早くも減益なので 6%。
やや楽観 20% 大型工事が中小の減りを補い、利益率 4% 前後 利益 8 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 502 円113 億円
中小の建物の工事は減るが、大型の工事と公共の工事が補い、数量はわずかに減るだけにとどまる。値段は鋼材と人件費の上昇に沿って 2 割台半ば上がる。
営業利益率は 2025 年の山より少し下の 4% に落ち着く。ねじネットの注文が増え、小口の配送の効率も上がる。
借入の利払いは増えるが、配当と仕入割引で一部を補う。配当性向は少し上がる。自己資本は 200 億円を超え、ROE は 3% 台後半にとどまる。
事業は健全に回るが、持ち合いの株と借入の組み合わせが、株主の取り分を薄めたままだ。配当の総額も年 2 億円に届かない。
- 鋲螺・コンクリート製品関連金物の卸:数量 43.7(取扱数量(千トン・推定))× 価格 6.30(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 275 億円・営業利益 11 億円。4.37 万トン(0.97 倍)× 単価 1.26 倍、営業利益率 4%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.0% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 93 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2023〜2025 年の改善の多くが残る姿。2026 年の減益は夏季休工の一時的な面もあり 20%。
中立 38% 数量は 1 割弱減り、利払いが増えて利益は横ばい 利益 6 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 469 円106 億円
中小の建物の着工は減り続け、大型の工事が一部を補う。トルクの取扱数量は 10 年で 1 割弱減る。値段は鋼材の安値が続き、物価をやや下回る 2 割強の上昇にとどまる。
営業利益率は 2025 年の山と過去の中央値の間の 3.5% に落ち着く。借入の金利が上がり、利払いは年 4 億円を超える。配当と仕入割引で補っても、営業外の収支はほぼゼロになる。
純利益は 6 億円台で、今とほとんど変わらない。持ち合いの株は持ち続け、配当性向は 1 割台のままだ。自己資本は 200 億円を超え、ROE は 3% 台に下がる。
- 鋲螺・コンクリート製品関連金物の卸:数量 41.9(取扱数量(千トン・推定))× 価格 6.10(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 255 億円・営業利益 9 億円。4.19 万トン(0.93 倍)× 単価 1.22 倍(鋼材の安値で物価に届かない。業種のノートの年 +1〜2%)、利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 75 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:建設の量がゆっくり減り、値段は鋼材の相場で物価をやや下回る姿。過去 10 年の利益率の中央値と 2025 年の山の間を取り 38%。
やや悲観 24% 中小の工事が細り、利益率が 2% 台に戻る 利益 3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 314 円71 億円
中小の建物の着工は人口の減少で細り続け、大型の工事は大手の商社とメーカーに取られる。トルクの取扱数量は 2 割近く減る。
鋼材の安値で値段は物価に届かず、ネット通販との競争で粗利も削られる。営業利益率は 2.5% に戻る。
借入の利払いは減らず、純利益は 3 億円台に落ちる。持ち合いの株は持ち続け、借入の返済にも還元にも回らない。少数株主が受け取るのは、わずかな配当だけだ。
2025 年の利益は山で、10 年の平らな地は 2% 台だったことになる。上場維持の基準をめぐる不安も、ときどき顔を出す。
- 鋲螺・コンクリート製品関連金物の卸:数量 36.9(取扱数量(千トン・推定))× 価格 5.60(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 207 億円・営業利益 5 億円。3.69 万トン(0.82 倍)× 単価 1.12 倍、利益率 2.5%
倍率:ROE 1.7% は k 8.5% を大きく下回るので PBR。今の自己資本 142.8 億円の 0.22 倍で、株と土地を売って借入を返した残りの床にあたる。EV÷営業利益は 25 倍と高いが、営業利益が細るためで、価値は資産の床で決めた。
確率:過去 10 年の利益率の中央値(2% 台)に戻り、数量も 2 割近く減る姿。2026 年の減益の流れが続けば起こりうるので 24%。
悲観 12% ボルトの商社の役割が細り、利益がほぼ消える 利益 0 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 66 円15 億円
新しく建てる建物が人口とともに大きく減り、トルクの取扱数量は 3 割減る。鋼材は中国の作りすぎで安値が続き、値段は 10 年上がらない。
メーカーの直販とネット通販が小口の注文を奪い、営業利益率は 0.5% に落ちる。借入の利払いが営業利益を上回り、純利益はほぼゼロになる。
残る価値は、持ち合いの株と土地を売って借入を返した残りだ。だが売るかどうかは創業家と取引先が決め、少数株主には戻りにくい。
上場を続ける理由も薄れ、少数株主は資産の一部しか受け取れない。創業家による非上場化の提案があっても、値段は資産より低くなりやすい。
- 鋲螺・コンクリート製品関連金物の卸:数量 30.6(取扱数量(千トン・推定))× 価格 5.00(1 千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 153 億円・営業利益 1 億円。3.06 万トン(0.68 倍)× 単価 1.0 倍、利益率 0.5%
倍率:利益がほぼ消えるので PBR。今の自己資本 142.8 億円の 0.105 倍で、株と土地を売った残りに戻り方 0.5 を掛けた床にあたる。EV÷営業利益は 100 倍を超えるが、営業利益がほぼ消えるためで、価値は資産の床で決めた。
確率:建設の量が 3 割減り、鋼材の安値とネット通販で粗利が消える構造的な負けの姿。2020 年 10 月期の赤字の実例から 12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
鋲螺・コンクリート製品関連金物の卸
建設用の高力ボルト・アンカーボルト・ナット・機械工具と、コンクリートに埋め込むインサート金物の卸売。
| 数量取扱数量(千トン・推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 45.0 | 5.00 | 225 | 10 |
| 10 年後 中立 | 41.9 | 6.10 | 255 | 9 |
取り方:2025/10 期の売上 225.38 億円・営業利益 10.09 億円(単一セグメント)。数量は開示が無く、ボルト・ナット・金物の平均を 1 トン約 50 万円と見て約 4.5 万トンと推定した(推定)。
リスクと懸念
持ち合いの株と少数株主
上場株 90 億円の半分近くは岡部との持ち合いだ。会社は売らず、配当だけが利益に入る。株価が下がれば自己資本が削れ、売らない限り少数株主の手には届かない。
金利の上昇
有利子負債は 125 億円。金利が 3.5% に上がると、利払いは今の年 1.6 億円から 4 億円台に増える。営業利益の 4〜5 割が金利に消える年もありうる。
建設の量の減少と二極化
中小の建物の着工は止まり、夏の猛暑で工事を休む現場も増えた。大型の工事は大手の商社とメーカーが押さえ、トルクの得意な小口の需要が細る。
鋼材の相場
ボルトの値段は鋼材の相場に連動する。中国の鉄の作りすぎで相場が下がれば、在庫の値打ちが下がり、売値も下がる。
ネット通販とメーカーの直販
モノタロウのような工具のネット通販や、メーカーの直販が小口の注文を取りに来る。品ぞろえと配送の速さで負ければ、商社の役割は細る。
創業家の支配と上場維持
濱中家の会社が約 3 割、岡部が 15% を持ち、流通する株は少ない。2026 年に上場維持基準の改善期間に入った。基準を外れれば、上場の価値そのものが揺らぐ。
今後の分かれ目
- 岡部株など持ち合いの株を売り、借入を返す
- 利払いが減り ROE が上がる。溜まる現金の戻り方を 0.5 から上げ、倍率も一段上げてよい。
- 営業利益が 2 年続けて 6 億円を割る
- 2025 年の利益率は山だった。やや悲観の確率を上げる。
- 配当性向を 30% 以上に上げるか、自社株買いと消却を続ける
- 少数株主に戻る道が開く。戻り方を 0.75 に上げる。
- 岡部や濱中家がトルクを買い取る提案をする
- 資産の厚みに値が付く可能性がある。ただ少数株主の取り分が公正かを確かめる。
- データセンターや港湾の大型工事の受注が続く
- コンクリート金物の部門が伸び、やや楽観に近づく。
見ておくもの
- 四半期の売上と営業利益率
- 支払利息と有利子負債
- 岡部株などの保有の増減
- 配当性向と自己株式の消却
- 建設投資と中小の建築の着工
- 上場維持基準の流通株式比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は資本コスト 8.5% と ROE から式で出した。どの筋書きも ROE が k を大きく下回るので PER の上限は 1÷k の 11.4 倍で、楽観〜中立はその 7.5〜9 割に置いた。今の PBR 0.33 倍や同業の値付けは見ていない。持ち合いの株の配当を利益に入れたので、株の価値は別に足していない。悲観側は株と土地を売って借入を返した残りの床で置いた。純負債が時価総額を超えるので EV÷営業利益も見たが、中立で 16 倍前後にとどまる。悲観側は営業利益が細るので EV÷営業利益が 25 倍を超えるが、価値は利益でなく資産の床で決めた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.3→11.76 倍・やや楽観 PER 9.4→11.76 倍・中立 PER 8.6→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.25% を足して 8.75%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.50%。