結論
英和は、工場で温度・圧力・流量を測る計測制御機器と、ポンプ・バルブなどの産業機械を、メーカーから仕入れて納める大阪の技術商社だ。1948 年の設立で、石油化学・鉄鋼・電力・自治体などに直接売る。2026 年 3 月期の売上は 488 億円、営業利益は 30 億円(利益率 6.1%)で、4 期連続の増収増益だった。自己資本比率は 58%、有利子負債はほぼない。
会社は 2027 年 3 月期に、人事制度の変更で営業利益が 1 割ほど減ると見る。足元の第 1 四半期は営業利益が 5.8 億円と好調で、減益予想は保守的にも見える。筆者は、利益で測った本質価値を今の時価総額の 2 割ほど上と見て、やや割安とする。ただ、安全域は大きくない。
英和は、派手な成長株ではない。業績は設備投資の波に従うが、顧客と財務の分散が、波に耐える土台になっている。10 年で売上は 1.6 倍、営業利益率は 5% 台前半に落ち着くと、筆者は見る。
バリュー投資の観点から
この会社は、質の良い地味な会社に近い。顧客は分散し、借金はなく、利益は 4 年連続で伸びた。大きな堀はないが、技術提案と保守で顧客に食い込み、仕入先との関係も長い。
資本の使い方は穏当だ。設備投資は軽く、利益の約 3 割を配当し、残りは運転資金に回る。ROE は過去 10 年の中央値で 9.7% と、資本コスト 7.3% をわずかに上回る。ためた利益が、額面を少し上回る価値を生んでいる。
安全域は、純現金 48 億円(時価総額の 3 割)と、財務の強さにある。ただし、設備投資の波と、人事制度の変更で下がる利益率を見込むと、本質価値は今の時価総額を 2 割ほど上回る程度だ。筆者は、やや割安にとどまると見る。
経営者は、配当を毎年増やしてきた点で株主に向き合っている。ただ、純現金 48 億円の使い道は示されていない。会社が掲げる長期の ROE 11% 超を実現するには、現金を事業か還元に振り向ける必要がある。
何で稼ぐ会社か
英和の取扱いは大きく四つある。産業計測制御機器が売上の 47%(230 億円)、産業機械が 40%(196 億円)、環境計測分析機器が 9%(45 億円)、計測検査機器が 3%(17 億円)だ。工業計器、監視制御機器、FA 用センサ、ポンプ・バルブ・油空圧機器、産業車両などを扱い、設置工事や保守のエンジニアリングも担う。売上の 1 割を超える取引先はない。
子会社は 4 社ある。大阪府堺市の双葉テックが計測制御機器を製造し、主に英和を通じて売る。仙台の東武機器は東北でFA 機器の販売と電気・計装工事を行う。上海と台湾には販売会社がある。会社は DX・GX・社会資本整備を注力分野に掲げる。報告セグメントは単一で、売上と利益は下期に偏り、販管費の多くは固定費だ。社長は阿部吉典氏で、阿部姓の個人株主が上位に並ぶ。
注力分野の DX(デジタル化)は工場のデータの見える化、GX(脱炭素)は省エネとエネルギー管理の機器、社会資本整備は上下水道などのインフラ向けだ。筆者の見るところ、いずれも既存の計測制御の延長にあり、新しい事業ではない。
優良さと弱いところ
強みは、顧客の分散と仕入先との長い関係だ。石油化学・鉄鋼・電力・造船・自動車・自治体と、業種も顧客も広く、売上の 1 割を超える取引先がない。計測制御は、納入後の保守と更新で繰り返し需要が出る。4 期連続で営業利益が増え、営業利益率は 2.9%(2015 年 3 月期)から 6.1% に上がった。実質無借金で、自己資本比率は 58% だ。
弱みは、売上の半分近くを占める計測制御機器が、設備投資の波を受けることだ。商社なので、仕入先のメーカーが直販に動けば、取り次ぎの役割が薄れる。2026 年 3 月期は営業 CF が 2 億円のマイナスで、運転資金が膨らんだ。堀は深くないが、顧客の分散と財務の強さが、波に耐える土台になっている。
平均年間給与は約 741 万円、平均年齢は 43.9 歳、平均勤続は 13.7 年と、人の定着は良い。技術商社にとって、顧客に提案できる人が最大の資産だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
英和の需要は、国内の製造業とインフラの設備投資に連動する。人手不足による省人化、工場の計装の更新、水質・排ガスの規制強化、上下水道などの老朽更新が、構造的な追い風だ。業界ノートの見方では、FA(工場自動化)の市場は名目で年 4〜7% 伸びる。
筆者は、国内の計測制御機器の流通市場を実質で年 2〜3% の伸びと置く。物価の 3% は単価に入れる。10 年で、計測制御機器の数量は 1.3 倍、産業機械は成熟して 1.1 倍、環境計測は 1.35 倍。仕入価格の上昇は売価に転嫁でき、単価は 1.34 倍になる。
競争は分散的で、地域や品目ごとに専門商社が多数いる。在庫と IT で差をつける商社と、単純な仕入販売にとどまる商社で、収益力の差が開いている。英和は後者に近いが、技術提案と保守で値引き競争を避けてきた。
メーカーの側から見れば、商社は営業と保守の外部委託先だ。自前の販売網を築くには人とお金がかかり、中小口の顧客を網羅するには商社が残る。筆者は、取り次ぎの役割が一気に消えることは見込まない。ただ、大口の顧客から順にメーカーが直販に移る動きは、10 年かけて進むと見る。
資本政策と M&A
1 株の配当は 4 年で 2.5 倍に増えた。2026 年 3 月期の配当の支払いは約 5.4 億円(性向 29%)で、2027 年 3 月期も同額を予想する(性向約 33%)。自社株は 14 万株(発行済みの 2.2%)を持つ。長期の ROE 目標は 11% 超だ。
現預金は 50 億円で、前期の 61 億円から減った。有利子負債は 2 億円しかない。純現金は 10 年、21 億〜60 億円の間を行き来し、積み上がってはいない。設備投資は年 0.6 億円ほどと軽い。大株主は光通信グループのファンドが上位 1・2 位(合計約 12%)で、東京計器、長野計器といった計測機器メーカーが続く。光通信は保有の変更報告書を 2019 年から繰り返し出し、2026 年 9 月にも出した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
英和は、4 年連続で増収増益を重ねた。営業利益は 16 億円から 30 億円に 2 倍近くなり、営業利益率は 4% から 6% に上がった。国内の工場は人手不足で省人化に動き、計装の更新、環境規制、社会インフラの老朽更新が同時に来る。計測制御は、納入した機器の保守と更新で繰り返し需要が出るため、利益が積み上がる。
純現金 48 億円と自己資本比率 58% は、波に耐える体力だ。配当は 4 年で 2.5 倍になり、性向は 30% 前後にとどまるため、増配の余地がある。2027 年 3 月期の減益予想は、人事制度の変更に伴う一時的な費用で、足元の第 1 四半期は営業利益が前年を上回った。光通信グループのファンドが保有を積み増していることも、市場が成長を評価している証拠だ。10 年後に売上 940 億円、営業利益 59 億円は、手が届く。
英和は、資本効率の改善を明言している。長期の ROE 目標は 11% 超で、今の水準(10.9%)を保つ意思がある。配当性向の引き上げや自社株買いに踏み出せば、ROE は上がる。
慎重な見方
利益率 6.1% は、過去 12 年で最高だ。12 年のうち 9 年は 4.6% 以下で、今の水準が定着する保証はない。会社も 2027 年 3 月期は営業利益の 1 割減を見込む。商社の粗利は 17.8% で、販管費は人件費が中心の固定費だ。人手不足で人件費は物価を上回って増え、粗利が追いつかなければ利益率は下がる。
設備投資に連動する商売で、売上の半分は計測制御機器だ。メーカーが直販やオンライン販売に動けば、取り次ぎの役割は細る。2026 年 3 月期は営業 CF がマイナスで、利益は現金になっていない。純現金 48 億円も、運転資金そのもので、株主に自由に戻せる余剰ではない。ROE は 10 年の中央値で資本コストを少し上回るだけで、PER の上限は 1÷k の約 12 倍にとどまる。
光通信グループのファンドが上位に並ぶのも、安心材料とは限らない。還元を求める圧力が高まれば、運転資金の余裕を削って現金を出すことになり、波が来たときの耐久力が落ちる。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、足元の実績について正しい。ただ、10 年では、利益率が山から 5% 台に戻り、数量は実質で緩やかにしか伸びない。ROE は資本コスト並みの 8〜9% にとどまり、倍率は 1÷k の約 12 倍に届かない。本質価値は今の時価総額を少し上回る程度と見て、確率は中立に厚く置いた。 光通信グループの動きで資本政策が変わる可能性は、確率には入れず、変更報告書が出るたびに見直す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,307 円399 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,193 円75 億円)。 今の値に割り戻すと 3,956 円250 億円、今との差 +54.9%、 期待の年率 +11.4%(資本コスト 7.3%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 10,585 円670 億円 | 1,659 円105 億円 | +379.4% | +17.0% | 980 円62 億円 |
| やや楽観 | 22% | 8,732 円553 億円 | 1,422 円90 億円 | +297.6% | +14.8% | 2,234 円141 億円 |
| 中立 | 38% | 7,196 円455 億円 | 1,280 円81 億円 | +231.9% | +12.7% | 3,221 円204 億円 |
| やや悲観 | 22% | 3,269 円207 億円 | 948 円60 億円 | +65.1% | +5.1% | 928 円59 億円 |
| 悲観 | 10% | 853 円54 億円 | 521 円33 億円 | −46.2% | −6.0% | 137 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,307 円399 億円 | 1,193 円75 億円 | +193.6% | +11.4% | 7,499 円475 億円 |
今の株価時価総額 2,554 円162 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:省人化・環境規制・インフラ更新の投資が続く 利益 41 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 10,585 円670 億円
人手不足が慢性化し、工場の省人化と計装の更新、水質・排ガス規制の強化、社会インフラの老朽更新の投資が続く。国内の計測制御機器の流通市場は実質で年 4% 近く伸び、英和は数量を今の 1.55 倍まで増やす。仕入価格の上昇は売価に転嫁でき、単価は 1.34 倍になる。
環境計測は規制と更新の需要で 1.6 倍に伸びる。販管費は人件費を中心に物価の分だけ増えるが、粗利の増加がそれを上回り、全社の利益率は 6.2% と、2026 年 3 月期の水準(6.1%)に並ぶ。
売上は約 940 億円、営業利益は約 59 億円。配当は性向 30% 台を保ち、増配が続く。
- 産業計測制御機器(工業計器・監視制御機器・FA 用センサなど):数量 357(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 134(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 479 億円・営業利益 33 億円。数量 1.55 倍(省人化・DX・GX の投資)・単価 1.34 倍、利益率 6.8%
- 産業機械(ポンプ・バルブ・油空圧機器・産業車両・エンジニアリング):数量 245(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 134(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 328 億円・営業利益 15 億円。数量 1.25 倍・単価 1.34 倍、利益率 4.6%
- 環境計測分析機器・計測検査機器:数量 99.8(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 134(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 134 億円・営業利益 11 億円。数量 1.6 倍(水質・排ガスの規制と社会インフラの更新)・単価 1.34 倍、利益率 8.3%
倍率:事業の純利益 41 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.4% が k 7.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.8% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍。全体の PER 16.3 倍、時価総額 670 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:省人化・環境規制・インフラ更新の需要が重なる上振れ。4 期連続の増収増益で利益率は 6.1% の山にあり、これ以上の上振れは見込みにくいため 8% とした。
やや楽観 22% やや楽観:設備投資が底堅く、利益率は山に近い 5.8% 利益 35 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 8,732 円553 億円
国内の設備投資は底堅く、省人化の需要が続く。計測制御機器の数量は今の 1.42 倍、産業機械は 1.18 倍。仕入価格の上昇は売価にほぼ転嫁できる。
人事制度の変更で増えた人件費は吸収され、全社の利益率は 5.8%。山(6.1%)には届かないが、近い水準で安定する。
計測制御機器の保守・更新の売上が積み上がり、粗利率は 18% 前後を保つ。環境計測は規制の強化で 1.45 倍に伸びる。販管費は人件費中心に物価の分だけ増えるが、粗利の増加で吸収される。
売上は約 869 億円、営業利益は約 51 億円。配当性向は 33% 前後で推移する。
- 産業計測制御機器(工業計器・監視制御機器・FA 用センサなど):数量 327(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 134(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 438 億円・営業利益 28 億円。数量 1.42 倍・単価 1.34 倍、利益率 6.4%
- 産業機械(ポンプ・バルブ・油空圧機器・産業車両・エンジニアリング):数量 231(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 134(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 309 億円・営業利益 13 億円。数量 1.18 倍・単価 1.34 倍、利益率 4.3%
- 環境計測分析機器・計測検査機器:数量 90.5(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 134(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 121 億円・営業利益 9 億円。数量 1.45 倍・単価 1.34 倍、利益率 7.6%
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 7.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.8% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍。全体の PER 15.61 倍、時価総額 553 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:設備投資が底堅く、人事制度の変更の費用を吸収していく筋書き。2027 年 3 月期の第 1 四半期は営業利益 5.8 億円と順調に出た。
中立 38% 中立:数量は実質で緩やかに伸び、利益率は 5.4% に落ち着く 利益 31 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 7,196 円455 億円
国内の工場とインフラの設備投資は、実質で年 2〜3% 伸びる。人手不足による省人化と、環境規制の強化が支えだ。英和の数量は、計測制御機器が今の 1.30 倍、産業機械が 1.10 倍、環境計測が 1.35 倍。仕入価格の上昇は売価に転嫁し、単価は物価並みの 1.34 倍になる。
利益率は、粗利率(今は 17.8%)がほぼ保たれる一方、販管費は人件費を中心に物価で 1.34 倍に増える。2027 年 3 月期は人事制度の変更で、営業利益が 1 割減る見込みだ。この費用増は定着し、全社の利益率は 5.4% と、2026 年 3 月期の最高(6.1%)より低い水準に落ち着く。設備投資は年 0.6 億円と軽く、償却費はほとんど利益に響かない。
売上は約 803 億円、営業利益は約 44 億円(利益率 5.4%)。配当は性向 33% 前後で、10 年に約 81 億円を出す。
- 産業計測制御機器(工業計器・監視制御機器・FA 用センサなど):数量 300(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 134(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 401 億円・営業利益 24 億円。数量 1.30 倍(国内の設備投資は実質で年 2.7%)・単価 1.34 倍(物価を転嫁)、利益率 6.0%
- 産業機械(ポンプ・バルブ・油空圧機器・産業車両・エンジニアリング):数量 215(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 134(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 288 億円・営業利益 12 億円。数量 1.10 倍(産業機械は成熟)・単価 1.34 倍、利益率 4.0%
- 環境計測分析機器・計測検査機器:数量 84.2(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 134(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 113 億円・営業利益 8 億円。数量 1.35 倍・単価 1.34 倍、利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 7.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.8% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.93 倍、時価総額 455 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の設備投資が実質で緩やかに伸び、利益率が山から少し下がって安定する、最も起きやすい姿。会社自身が 2027 年 3 月期の減益(営業利益 10.6% 減)を見込む。
やや悲観 22% やや悲観:投資が伸び悩み、仕入価格の転嫁が遅れる 利益 19 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 3,269 円207 億円
国内の設備投資が伸び悩み、仕入先メーカーの値上げを売価に載せきれない。計測制御機器の数量は 1.05 倍、産業機械は 0.92 倍と縮み、単価は 1.28 倍にとどまる。
販管費は物価で増え、粗利が追いつかず、利益率は 4.4% に下がる。過去 12 年の平均(4% 台前半)に戻る姿だ。メーカーの直販が一部に広がる。
仕入先メーカーの値上げを売価に載せきれず、粗利率が下がる。営業 CF がマイナスの年が増え、運転資金の負担が重くなる。配当は性向を保つため、利益に連動して減る。
売上は約 620 億円、営業利益は約 27 億円。配当は 60 億円ほどにとどまる。
- 産業計測制御機器(工業計器・監視制御機器・FA 用センサなど):数量 242(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 128(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 310 億円・営業利益 15 億円。数量 1.05 倍・単価 1.28 倍、利益率 4.8%
- 産業機械(ポンプ・バルブ・油空圧機器・産業車両・エンジニアリング):数量 180(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 128(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 230 億円・営業利益 8 億円。数量 0.92 倍・単価 1.28 倍、利益率 3.3%
- 環境計測分析機器・計測検査機器:数量 62.4(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 128(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 80 億円・営業利益 5 億円。数量は横ばい・単価 1.28 倍、利益率 6.0%
倍率:事業の ROE は約 6.1% と k を下回る。ためた利益は額面未満の価値しかなく、PER の上限は 1÷k=12 倍。利益が縮む局面なので、上限の 75% の 9.0 倍に置いた。
確率:投資が伸び悩み、仕入価格の転嫁が遅れる筋書き。過去 12 年のうち 9 年は営業利益率が 4.6% 以下だった。
悲観 10% 悲観:国内製造業の空洞化とメーカー直販で取り次ぎの役割が薄れる 利益 7 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 853 円54 億円
構造的に負ける筋書き。国内の製造業の海外移転が進み、工場の数と設備投資の絶対量が縮む。同時に、計測機器メーカーが直販とオンライン販売に移り、商社の取り次ぎの役割が薄れる。英和は主要な仕入先の取扱権を失い、計測制御機器の数量は今の 0.75 倍、単価は 1.15 倍にとどまる。
産業機械は 0.65 倍に縮む。人件費は物価で増え続け、粗利が足りなくなる。環境計測も官公庁の予算が縮み、利益率は 3.5% に下がる。
売上は約 402 億円、営業利益は約 10 億円(利益率 2.4%)。配当は 33 億円ほどに減る。
- 産業計測制御機器(工業計器・監視制御機器・FA 用センサなど):数量 173(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 115(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 199 億円・営業利益 5 億円。国内の工場が縮み、メーカー直販も進んで数量 0.75 倍・単価 1.15 倍、利益率 2.5%
- 産業機械(ポンプ・バルブ・油空圧機器・産業車両・エンジニアリング):数量 127(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 115(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 146 億円・営業利益 3 億円。数量 0.65 倍・単価 1.15 倍、利益率 1.8%
- 環境計測分析機器・計測検査機器:数量 49.9(対象市場の実質規模(億円)× シェア)× 価格 115(値段の指数(今 100。名目))→ 売上 57 億円・営業利益 2 億円。官公庁の予算縮小で数量 0.8 倍・単価 1.15 倍、利益率 3.5%
倍率:取扱権を失い、利益が縮み続ける姿なので、事業の純利益 6.7 億円を 8 倍(上限 12 倍の 3 分の 2)で評価した約 54 億円に置く。今の自己資本 189.9 億円に対する PBR にして 0.28 倍。自己資本の過半は売掛金・在庫・投資有価証券などで、取扱権を失った商社では額面どおりには回収できないと見た。
確率:国内製造業の空洞化とメーカー直販が重なる構造的な負け。単一顧客への依存はなく(売上の 1 割を超える取引先はない)、財務も強いため、業界の標準(10% 前後)に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
産業計測制御機器(工業計器・監視制御機器・FA 用センサなど)
石油化学・鉄鋼・電力などの工場で、温度・圧力・流量・液面を測り、制御する機器を、メーカーから仕入れて納める。取扱いの最大の柱。
| 数量対象市場の実質規模(億円)× シェア | 価格値段の指数(今 100。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 230 | 100 | 230 | 16 |
| 10 年後 中立 | 300 | 134 | 401 | 24 |
取り方:2026/03 期の産業計測制御機器の売上は 230.4 億円(前期比 4.2% 増、構成比 47%)。国内の工業計器・制御機器の対象市場を 1 兆 2 千億円前後(実質・推定)と置き、シェアは約 1.9%。報告セグメントは単一のため、営業利益は全社 29.8 億円を粗利と取扱いの性格から按分した推定(利益率 7.0%)。
産業機械(ポンプ・バルブ・油空圧機器・産業車両・エンジニアリング)
工場や公共インフラ向けに、ポンプやバルブ、油空圧機器、産業機器、特装車などを納め、設備の据え付けや保守も請け負う。
| 数量対象市場の実質規模(億円)× シェア | 価格値段の指数(今 100。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 196 | 100 | 196 | 9 |
| 10 年後 中立 | 215 | 134 | 288 | 12 |
取り方:2026/03 期の産業機械の売上は 195.6 億円(前期比 1.6% 増、構成比 40%)。対象市場(産業機械・ポンプ・バルブ・油空圧機器の国内流通)を 1 兆 5 千億円前後(実質・推定)、シェア約 1.3% と置いた。営業利益は按分した推定(利益率 4.5%)。
環境計測分析機器・計測検査機器
排ガス・水質などを測る環境計測・分析機器と、品質を調べる測定・検査機器。官公庁・自治体や研究機関向けが多い。
| 数量対象市場の実質規模(億円)× シェア | 価格値段の指数(今 100。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 62.4 | 100 | 62 | 5 |
| 10 年後 中立 | 84.2 | 134 | 113 | 8 |
取り方:2026/03 期は環境計測分析機器 45.3 億円(前期比 14.2% 増)と計測検査機器 17.0 億円(5.1% 減)の合計 62.3 億円(構成比 13%)。対象市場を 3 千億円前後(実質・推定)、シェア約 2.1% と置いた。営業利益は按分した推定(利益率 7.9%)。
リスクと懸念
設備投資の波
売上の半分近くが計測制御機器で、顧客の設備投資の増減が業績に直結する。有価証券報告書も、景気変動を最初のリスクに挙げる。2009 年のような不況で、機械商社の営業利益が 4〜6 割減った例がある。
メーカーの直販・オンライン化
仕入先のメーカーが直販に動けば、商社の取り次ぎの役割が薄れる。英和は技術提案と保守で食い込むが、全品目に及ぶわけではない。
人件費の上昇と固定費
販管費の多くは人件費中心の固定費だ。2027 年 3 月期は人事制度の変更で営業利益が 1 割減る見込みで、人手不足でさらに上がれば粗利が追いつかない。
運転資金の膨張
2026 年 3 月期は営業 CF が 2 億円のマイナスだった。売掛金や在庫が積み上がると、利益が現金にならない。取引先の倒産による与信リスクもある。
大株主の動き
光通信グループのファンドが上位 2 位までを占め、保有の変更報告書を繰り返し出している。経営への働きかけや、将来の買収の可能性は読めない。流通する株が少なく、値動きが荒くなる面もある。
政策保有株式
上場銘柄 19 件を持合株式として持つ。簿価と含み益の額は確かめていない。売却は資本効率の改善につながるが、仕入先との関係に影響しうる。
季節性
売上と利益は下期に偏る。中間期の数字で通期を見誤りやすい。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 6% を超えて定着し、2028 年 3 月期に営業利益が 30 億円を上回ったら
- 利益率が山に並ぶ筋書き(楽観側)の確率を上げる。
- 仕入先のメーカーが、直販・オンライン販売の比率を引き上げると発表したら
- 悲観の確率を引き上げる。取扱権を失う型の負けに近づく。
- 営業 CF のマイナスが 2 期続いたら
- 運転資金の膨張が構造的と見て、純現金の価値を割り引く。
- 光通信グループが保有を 10% 超に増やす、または経営への提案を公表したら
- 資本政策が動く可能性として、還元の額を引き上げる。
- 配当性向の引き上げや自社株買いが発表されたら
- 還元を厚くし、payout の額を引き上げる。
- 政策保有株式の売却方針が、数字つきで開示されたら
- 売却益と使い道を確かめたうえで、資本効率の改善として評価する。
見ておくもの
- 四半期の営業利益率(今期の会社予想 5.5%)と、産業計測制御機器の売上
- 仕入先メーカーの販売方針(直販・EC の比率)
- 営業 CF と現預金(今は 50 億円)の動き
- 配当性向と、自社株買いの有無
- 光通信グループの保有割合の変更
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価(PER 約 8 倍・PBR 0.85 倍)から置いていない。事業の ROE は中立で 8.6% と資本コスト 7.3% をわずかに上回り、正当化 PER の上限は 1÷k の約 12 倍で、ROE が k を上回るので 1÷k を下回らせず、中立は 12.0 倍に置いた。中立の営業利益率 5.4% は過去 12 年の山 6.1% より低い。会社の長期 ROE 目標(11% 超)は筋書きの根拠に使っていない。株主優待の開示は確認していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→16.3 倍・やや楽観 PER 12.2→15.61 倍・中立 PER 12→14.93 倍)。
資本コスト 7.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5%+quality 0.8%=8.3%。同じ設備・FA 部品商社の明治電機工業・進和(8.5%)、椿本興業(8.2%)、日伝(8.3%)と並ぶ。借金が無く売上先も分散している点は進和・日伝に近く、小型で投資の波を受ける点で因幡電機産業(7.2%)より高い。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.30% → 7.30%。