結論
アステナホールディングスは、旧イワキの専門商社を母体に、医薬品の受託製造(CDMO)、化粧品・食品の原料、後発医薬品、基板向けの表面処理薬品を束ねた持株会社だ。2025年11月期の売上は627億円で、ファインケミカルが3割台半ば、HBC・食品が3割弱、医薬が2割、化学品が1割台半ばを占める。
筆者の結論は、足元の利益が山にあるぶん、割安とは言いにくいというものだ。2026年11月期の3四半期累計は、営業利益30億円と過去最高を更新した。けん引役は化学品で、生成AI向けのパッケージ基板の投資に乗っている。
弱みは、利益の質と借入にある。化学品の利益は設備投資の循環で動く。純有利子負債は124億円で時価総額の6割近く、自己資本比率は36%だ。2024年11月期には純損失25億円も出している。
中立の10年後は純利益32億円、時価総額は305億円ほどとみる。ROEが7%と資本コストに届かないため、倍率は上げられない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は二つの顔を持つ。化学品とCDMOは堀のある事業だが、HBC・食品や通販は薄い利益の商売だ。両方を同じ傘に入れているため、全体のROEは資本コストを下回る年が多い。
足元の最高益は魅力的だが、中身を割り引く必要がある。化学品の利益は基板投資の循環に乗っており、10年続く前提では置けない。2024年11月期の純損失25億円は、事業の読みを誤ったときの重さを示した。
資本の使い方にも疑問がある。池田物産の取得はHBC・食品の商社機能を厚くするが、のれん償却を抱え、足元の利益率は2%に届かない。借入を増やしての買収は、資本コストを上回る稼ぎが出てはじめて意味を持つ。
手元に残る利益は、純利益から設備投資を引いた額で、2025年11月期はかなり小さい。今の時価総額は、中立の本質価値を上回る。安全域は無く、確信度は低い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は四つの事業に分かれる。第一はファインケミカルで、売上の3割台半ばを占める。医薬品の製造方法の研究開発(CMC)と受託製造、医薬品原料の製造販売が中心で、スペラファーマが主力だ。ペプチドを扱うJITSUBOも加わる。
第二はHBC・食品で、売上の3割弱。食品や機能性食品の原料、化粧品原料の販売に加え、化粧品の通販も手がける。2025年9月に池田物産をグループに入れ、香料や化粧品・食品の原料に商売を広げた。
第三は医薬で、売上の2割。岩城製薬を中心に、後発医薬品と医療機器、美容医療向けの化粧品を作って売る。
第四は化学品で、売上の1割台半ば。顧客は基板や電子部品の工場で、日本のほか中国にも販売先がある。メルテックスが表面処理薬品、東京化工機が設備を作る。基板の配線に使うめっき薬品などがあり、AI向けのパッケージ基板の投資に乗って足元は大きく伸びている。
全体は、製造業の色が濃い専門商社だ。仕入れて売るだけでなく、中核の稼ぎを自社の工場と技術に置く。そのぶん資本は食うが、卸の薄い利益率よりは高い営業利益率を狙える。持株会社の下に子会社が並ぶ形で、本社の費用は小さい。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、化学品とファインケミカルの一部にある。ハイエンドの表面処理薬品は、顧客の基板の工程に合わせて薬液を調整し、一度採用されると他社への切り替えが起きにくい。半導体や電子部品の分野で高いシェアを持つとの報道もある。ペプチドの合成法の開発も、技術で差がつく領域だ。
一方でHBC・食品の原料販売や通販は、商社的な薄い利益で、堀は弱い。医薬は後発薬で、毎年の薬価の引き下げを受ける。
資本の効率は高くない。過去10年のROEの中央値は6.7%で、資本コストを下回る年が多い。営業利益率は2024年11月期の4.9%が最高だ。赤字の期は2008年以降で4回ある。
財務は中くらいの重さだ。純有利子負債は124億円で、営業利益は支払利息の13倍強あり、返済の不安は小さい。ただ池田物産の取得ののれんが載り、減損の種になる。経営に支配株主はおらず、信託口や持株会が上位にいる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
化学品の需要は、生成AI向けのサーバー基板の投資がけん引する。パッケージ基板と高多層基板の層が増えるほど、めっき薬品と処理設備の需要が増える。ただし設備投資の循環は強く、過去も半導体や電子部品で山と谷が繰り返された。中国の薬品会社の追い上げも続く。競合は、国内ではめっき薬品大手の上村工業がある。
医薬品の受託製造は、製薬会社が製造を外に出す流れに乗る。国内の後発医薬品は供給不安を経て、品目数の整理が進んだ。ペプチド医薬は肥満症薬の登場で関心が高く、受託製造の需要が見込まれるが、競合の海外大手も多い。
化粧品・食品の原料は、国内の人口減で内需はほぼ横ばいだが、輸出とインバウンドの追い風がある。ただ原材料の価格に左右され、足元は中東情勢で原材料と包装資材が上がっている。
数量は、国内の成熟需要が中心の医薬と食品原料で横ばいから微増、基板向けの化学品とCDMOで2〜6割の増加を中立にみる。価格は物価並みに上げるが、医薬は薬価の引き下げがあるため、物価の6割ほどしか転嫁できない。化学品も、顧客が値下げを求める力が強く、金属価格の転嫁を除くと上げにくい。
資本政策と M&A
還元は、株主資本配当率(DOE)1.5%以上と、配当性向3割程度を掲げる。2026年11月期の総還元性向は3割強の見込みだ。配当は年7億円台で、安定している。自社株買いは大きくない。
優待は11月末で、500株以上を1年以上持つ株主に自社商品を贈る。2024年11月期末から、以前の100株からの制度を500株以上に絞った。優待の費用額は会社が開示していない。筆者は、500株以上の株主を約3千人、券面の平均を3千円、自社商品の原価率を6〜7割として、年0.6億円ほどと推定し、10年の還元に足した。ここは大きくぶれる。
資本政策では、政策保有株式を2027年11月期までに連結純資産の1割未満に減らす方針だ。売却で得た資金を成長投資や借入の返済に回せる。
中期経営計画は毎期見直すローリング方式で、2027年11月期に売上700億円、営業利益35億円、ROE8.8%を目標にする。新しい計画は2027年1月に出る。長期ビジョンはROE13%だが、実績は遠い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
アステナは、化学品が足元で急に稼げるようになった。2026年11月期の3四半期累計で、化学品の売上は前年同期より34%増え、営業利益率は9.8%と3.7ポイント上がった。生成AIのサーバー基板では、層が増えるほど薬品と設備の需要が増える。この流れは数年続く。
医薬は後発薬の需要が底堅く、営業利益率は9.6%。ファインケミカルは、ペプチドを含む受託製造の需要が拡大している。中国の浙江省に設ける新拠点は、基板向けの設備の供給を現地に近づける。
HBC・食品は池田物産の取り込みで売上が48億円増えた。化粧品原料の輸出も伸びている。のれん償却がなくなる先では、利益率が大きく上がる余地がある。
中計の2027年11月期、営業利益35億円は、3四半期の時点で既に30億円に達しており、通期予想の営業利益34億円は上振れる公算が大きい。配当性向は3割で、増配の余地もある。ROE13%の長期ビジョンも、化学品の利益率が高ければ手が届く。
慎重な見方
化学品の好調は、設備投資の循環の山にある。AI向けの基板投資は、半導体や電子部品のこれまでの局面と同じく、数年で一巡するおそれがある。中国の薬品会社が安い薬液で追い上げれば、価格も利益率も下がる。
全体の営業利益率は4.8%と、過去12年の最高に近い。2025年11月期のROEは8.1%、過去10年の中央値は6.7%で、資本コストを下回る年が多い。2024年11月期には純損失25億円も出した。
ファインケミカルは、足元の9カ月は売上が減り、利益率も5.9%にとどまる。CMCの受注が限られ、原料製造の大型品が減った。HBC・食品は池田物産ののれん償却と統合の費用が重く、利益率は1.8%で、この事業の収益力は薄い。
純有利子負債は124億円と時価総額の6割近くある。通期予想の営業利益は34億円だが、第4四半期は原材料と包装資材の上昇を織り込む。今の時価総額は、山の利益を前提にしている。
池田物産の取得で、のれんと統合の費用が先に出ている。取得の代金を回収する前に、足元の好調が反転すれば、純資産の毀損と減損が同時に来る。政策保有株の売却で借入を減らす計画も、売却の時期と額が示されていない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。足元の最高益は事実だが、化学品の循環と、のれん・設備の減損の種は、10年で見ると無視できない。確率はやや悲観を25%、悲観を12%に置き、中立は36%に絞った。上振れの合計は27%。最良の姿でも、今の時価総額から大きく離れない。強気の見方が語る化学品の伸びは、確かに本物だ。ただ会社全体の利益の質とROEを見ると、山の利益を長く続くものと置く根拠は弱い。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/11 期)
確率で加重した株価時価総額 862 円354 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 209 円86 億円)。 今の値に割り戻すと 542 円223 億円、今との差 +3.6%、 期待の年率 +7.4%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,908 円785 億円 | 304 円125 億円 | +323.0% | +15.5% | 155 円64 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,328 円546 億円 | 255 円105 億円 | +202.8% | +11.7% | 317 円130 億円 |
| 中立 | 36% | 988 円406 億円 | 219 円90 億円 | +130.8% | +8.7% | 434 円179 億円 |
| やや悲観 | 25% | 333 円137 億円 | 182 円75 億円 | −1.4% | −0.1% | 129 円53 億円 |
| 悲観 | 12% | 198 円81 億円 | 105 円43 億円 | −42.2% | −5.3% | 36 円15 億円 |
| 加重平均 | 100% | 862 円354 億円 | 209 円86 億円 | +104.8% | +7.4% | 1,071 円440 億円 |
今の株価時価総額 523 円215 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% AI向けの基板投資が長く続き、化学品とCDMOが伸びる 利益 56 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 1,908 円785 億円
筆者が描く最良の姿は、AI向けのパッケージ基板と高多層基板の投資が長く続き、化学品が会社の稼ぎ頭になる道だ。表面処理薬品の出荷量は10年で2.2倍になり、高い価格を維持できる。営業利益率は10.5%に届く。
ファインケミカルは、ペプチドを含む医薬の受託製造が広がる。国内の製薬会社が製造を外に出す流れが続き、量は1.5倍になる。HBC・食品は池田物産の香料と化粧品原料が加わり、輸出も伸びて量が1.5倍になる。
医薬は後発薬の需要が底堅い。ただし毎年の薬価の引き下げで、価格は物価ほど上がらない。
営業利益は81億円、純利益は56億円に届く。自己資本は550億円ほどに積み上がり、ROEは10%を超える。還元は配当性向3割に優待の受け取り分を足して約125億円。
- ファインケミカル:数量 670(原薬・中間体換算の取扱量(トン))× 価格 0.67(1トン当たり売上(億円、名目))→ 売上 449 億円・営業利益 27 億円。営業利益率6%
- HBC・食品:数量 6,821(原料・製品換算の取扱量(トン))× 価格 0.05(1トン当たり売上(億円、名目))→ 売上 366 億円・営業利益 10 億円。営業利益率2.6%
- 医薬:数量 13.7(出荷した包装単位(百万包装))× 価格 12(百万包装当たり売上(億円、名目))→ 売上 164 億円・営業利益 16 億円。営業利益率10%
- 化学品:数量 7,135(薬品換算の出荷量(トン))× 価格 0.04(1トン当たり売上(億円、名目))→ 売上 287 億円・営業利益 30 億円。営業利益率10.5%
倍率:事業の純利益 56 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 14.01 倍、時価総額 785 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:生成AI向けの基板投資が10年にわたって続く前提は、設備投資の循環を考えると強い。過去12年に営業利益率が5%を超えた期は無く、確率は低く置く。
やや楽観 20% 化学品が堅調に伸び、ファインケミカルが戻る 利益 43 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,328 円546 億円
化学品は基板向けの薬品が伸び続け、出荷量は10年で1.9倍になる。中国の新拠点が動き、設備の販売も積み上がる。営業利益率は9%を保つ。
ファインケミカルは、CMC(医薬品の製造方法の研究開発)の受注が戻り、ペプチドの受託も増えて、量は1.35倍。営業利益率は5.3%まで上がる。
HBC・食品は池田物産を取り込んだ効果が通年で出る。量は1.4倍で、輸出と化粧品原料が伸びる。ただし通販の化粧品は広告費が重く、利益率は2.2%にとどまる。
営業利益は63億円、純利益は43億円。ROEは8.5%で資本コストをわずかに下回る。還元は配当性向3割に優待を足して約105億円。
- ファインケミカル:数量 603(原薬・中間体換算の取扱量(トン))× 価格 0.67(1トン当たり売上(億円、名目))→ 売上 404 億円・営業利益 21 億円。営業利益率5.3%
- HBC・食品:数量 6,366(原料・製品換算の取扱量(トン))× 価格 0.05(1トン当たり売上(億円、名目))→ 売上 341 億円・営業利益 8 億円。営業利益率2.2%
- 医薬:数量 13.3(出荷した包装単位(百万包装))× 価格 12(百万包装当たり売上(億円、名目))→ 売上 156 億円・営業利益 14 億円。営業利益率9.2%
- 化学品:数量 6,162(薬品換算の出荷量(トン))× 価格 0.04(1トン当たり売上(億円、名目))→ 売上 244 億円・営業利益 22 億円。営業利益率9%
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.85 倍、時価総額 546 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元は化学品が過去最高益で、中計の2027年11月期の営業利益35億円も射程に入っている。基板関連の投資が高水準で続く前提は現実的で、やや厚く置く。
中立 36% 化学品の山を均しながら、利益率5%弱の複合企業になる 利益 33 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 988 円406 億円
中立の姿は、四つの事業が互いの波を和らげる複合企業だ。化学品は基板向けの需要が続くものの、投資の山と谷を均して出荷量は10年で1.6倍。営業利益率は8%。中国勢との競争で、足元の10%近い水準は保てない。
ファインケミカルは量が1.25倍。受託製造の案件は増えるが、足元の9カ月は売上が前年を下回り、原料製造の大型品が減っている。利益率は4.8%。
HBC・食品は池田物産の通年分で1.3倍に増える。利益率は1.8%と薄く、のれん償却と通販の広告費が上限を決める。医薬は量が1.05倍。薬価の引き下げがあり、価格は物価の6割ほどしか転嫁できない。
営業利益は51億円。借入の利払いが3億円ほど増え、純利益は32億円強。自己資本は470億円弱で、ROEは7%にとどまる。還元は配当性向3割に優待の受け取り分を足して約90億円。
- ファインケミカル:数量 558(原薬・中間体換算の取扱量(トン))× 価格 0.67(1トン当たり売上(億円、名目))→ 売上 374 億円・営業利益 18 億円。営業利益率4.8%
- HBC・食品:数量 5,911(原料・製品換算の取扱量(トン))× 価格 0.05(1トン当たり売上(億円、名目))→ 売上 317 億円・営業利益 6 億円。営業利益率1.8%
- 医薬:数量 13.1(出荷した包装単位(百万包装))× 価格 12(百万包装当たり売上(億円、名目))→ 売上 150 億円・営業利益 13 億円。営業利益率8.5%。価格は薬価の引き下げで物価の6割ほどしか転嫁できず10年1.15倍
- 化学品:数量 5,189(薬品換算の出荷量(トン))× 価格 0.04(1トン当たり売上(億円、名目))→ 売上 202 億円・営業利益 16 億円。営業利益率8%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 406 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元は最高益だが、化学品は設備投資の循環に乗る事業で、山の利益を10年続くとは置けない。医薬と食品原料の堅実な稼ぎで下支えされる姿を中心に置く。
やや悲観 25% 基板投資が一巡し、ファインケミカルの回復が遅れる 利益 17 億円 · PER 8.3 倍 · 株価時価総額 333 円137 億円
AI向けの基板投資が数年で一巡し、化学品は谷に入る。出荷量は10年で1.25倍にとどまり、中国の薬品会社との値下げ競争で価格は物価に追いつかない。営業利益率は5.5%まで下がる。
ファインケミカルは受注の戻りが遅い。製薬会社の外部委託の流れは続くが、競合が多く、量は1.1倍、利益率は3.5%。
HBC・食品は池田物産ののれん償却と統合の費用が残り、利益率は1.3%。通販の化粧品は競争で伸びない。医薬は量が横ばいで、薬価の引き下げが続き、価格は1.08倍にとどまる。
営業利益は30億円。利払いが増え、純利益は16億円強に落ちる。自己資本は400億円ほどで、ROEは4%。配当は据え置きを基本に、優待は4分の3に縮む。還元は約75億円。
- ファインケミカル:数量 491(原薬・中間体換算の取扱量(トン))× 価格 0.65(1トン当たり売上(億円、名目))→ 売上 319 億円・営業利益 11 億円。営業利益率3.5%
- HBC・食品:数量 5,229(原料・製品換算の取扱量(トン))× 価格 0.05(1トン当たり売上(億円、名目))→ 売上 272 億円・営業利益 4 億円。営業利益率1.3%
- 医薬:数量 12.4(出荷した包装単位(百万包装))× 価格 11(百万包装当たり売上(億円、名目))→ 売上 134 億円・営業利益 9 億円。営業利益率7%
- 化学品:数量 4,054(薬品換算の出荷量(トン))× 価格 0.04(1トン当たり売上(億円、名目))→ 売上 152 億円・営業利益 8 億円。営業利益率5.5%
倍率:ROE 4.1%(純利益 16.5 億円 ÷ 自己資本 401 億円)が資本コスト 8% 以下なので、PER の上限は 1÷k = 11.1 倍。ためた利益は額面の価値に届かない。稼ぐ力が弱く、借入もある局面なので、上限の 7.5 割の 8.3 倍に置いた。
確率:化学品は足元が山にあり、AI向けの投資には過去の半導体や電子部品と同じ循環の谷が来る。池田物産の統合にも時間がかかり、中立より下に厚みを置く。
悲観 12% 基板投資の反動と統合の失敗で、利益が消える 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 198 円81 億円
AIバブルがはじけ、基板向けの投資が大きく落ち込む。化学品の出荷量は10年で1割減り、価格も上がらない。営業利益率は2%まで下がる。
ファインケミカルは受注が戻らず、ペプチドの設備投資が重荷になる。量は5%減り、営業利益率は1.5%。HBC・食品は池田物産の事業が想定どおり伸びず、のれんの減損が出る。利益はほぼゼロ。
医薬だけは後発薬の需要で営業利益5%台を保つが、全体の穴は埋まらない。営業利益は10億円前後に細り、のれんと設備の減損で純損失になる。配当は大きく減り、優待は半分に縮む。
借入は純負債124億円と重く、利払いが利益を食う。親会社に当たる株主はおらず、買収の対象にもなりうるが、床は売れる資産の価値で測る。
- ファインケミカル:数量 424(原薬・中間体換算の取扱量(トン))× 価格 0.60(1トン当たり売上(億円、名目))→ 売上 255 億円・営業利益 4 億円。営業利益率1.5%
- HBC・食品:数量 4,547(原料・製品換算の取扱量(トン))× 価格 0.05(1トン当たり売上(億円、名目))→ 売上 218 億円・営業利益 1 億円。営業利益率0.5%
- 医薬:数量 11.2(出荷した包装単位(百万包装))× 価格 10(百万包装当たり売上(億円、名目))→ 売上 112 億円・営業利益 6 億円。営業利益率5%
- 化学品:数量 2,919(薬品換算の出荷量(トン))× 価格 0.03(1トン当たり売上(億円、名目))→ 売上 96 億円・営業利益 2 億円。営業利益率2%
倍率:稼ぐ力が赤字に近いので、床は売れる資産に近い。今の自己資本271億円に0.3倍を掛けて置いた(のれんと設備の減損、純負債の重さを引くと、帳簿の自己資本の3割ほど)。
確率:赤字の期は2008年以降で4回あり、直近の2024年11月期も純損失25億円を出した。のれんや設備の減損が重なる構造的な負けは、1割は置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ファインケミカル
医薬品のCMC(製造方法の研究開発)と受託製造、医薬品原料の製造販売、ペプチドの受託。
| 数量原薬・中間体換算の取扱量(トン) | 価格1トン当たり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 447 | 0.50 | 223 | 11 |
| 10 年後 中立 | 558 | 0.67 | 374 | 18 |
取り方:2025年11月期の外部売上223.3億円。取扱量は開示が無く、原薬・中間体の平均単価を1キログラム当たり5万円と筆者が仮置きして約447トンと推定した(平均単価は仮定)。先の量は、受託製造の広がりで中立10年1.25倍。1トン当たりの値段は物価並みの1.34倍。セグメント利益は直近9カ月の利益率5.9%から筆者が推定した。
HBC・食品
食品・機能性食品の原料、化粧品原料の販売、化粧品の通販。池田物産(香料・化粧品・食品原料)を2025年9月に連結。
| 数量原料・製品換算の取扱量(トン) | 価格1トン当たり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 4,547 | 0.04 | 182 | 3 |
| 10 年後 中立 | 5,911 | 0.05 | 317 | 6 |
取り方:2025年11月期の外部売上181.9億円。取扱量は開示が無く、原料と通販製品の平均単価を1キログラム当たり4千円と筆者が仮置きして約4,550トンと推定した(仮定)。池田物産は2025年9月からの3カ月分しか入っておらず、通年では売上が約45億円増えるため、先の量は中立で10年1.30倍(池田の通年分と輸出)。値段は物価並みの1.34倍。セグメント利益は推定。
医薬
岩城製薬を中心に、後発医薬品・医療機器・美容医療向けの化粧品を作って売る。
| 数量出荷した包装単位(百万包装) | 価格百万包装当たり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 12.4 | 10 | 124 | 11 |
| 10 年後 中立 | 13.1 | 12 | 150 | 13 |
取り方:2025年11月期の外部売上124.3億円。包装単位の数は開示が無く、1包装の平均を1千円と筆者が仮置きして約1,243万包装と推定した(仮定)。先の量は後発薬の需要で中立10年1.05倍。値段は毎年の薬価の引き下げで物価の6割ほどしか転嫁できず、10年1.15倍にとどまる。セグメント利益は推定。
化学品
メルテックスの表面処理薬品と東京化工機の設備。基板、半導体、電子部品向け。
| 数量薬品換算の出荷量(トン) | 価格1トン当たり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 3,243 | 0.03 | 97 | 6 |
| 10 年後 中立 | 5,189 | 0.04 | 202 | 16 |
取り方:2025年11月期の外部売上97.3億円(設備を薬品換算に含める)。出荷量は開示が無く、薬品の平均単価を1キログラム当たり3千円と筆者が仮置きして約3,240トンと推定した(仮定)。足元の9カ月は売上が34%増えており、先の量はAI向けの基板投資で中立10年1.6倍。値段は原料の金属価格の転嫁と中国勢の競争で10年1.30倍。セグメント利益は推定。
リスクと懸念
化学品の設備投資の循環
化学品の足元の好調は、生成AI向けの基板投資に乗っている。この種の投資は過去の半導体や電子部品でも山と谷を繰り返した。谷に入ると売上も利益率も同時に落ち、会社全体の利益の3割強が揺れる。
中国の薬品会社との競争
表面処理薬品は、中国の地場の薬品会社が安い価格で追い上げる。中国の新規顧客の獲得が好調な今は表に出ないが、顧客が現地調達に切り替えると、価格と数量の両方に響く。
池田物産の統合とのれん
2025年9月に取得した池田物産は、のれん償却とPMI費用で、HBC・食品の利益を押し下げている。香料や化粧品原料の商売が想定どおり伸びなければ、のれんの減損が出る。2024年11月期の純損失25億円の再現になりかねない。
借入と金利
純有利子負債は124億円で時価総額の6割近くある。営業利益は支払利息の13倍強あり返済の不安は小さいが、金利が上がる世界では、借り換えのたびに利払いが増え、10年で3億円ほど利益を削る。
薬価の引き下げと供給制約
医薬は毎年の薬価の引き下げを受け、物価が上がっても価格を転嫁できない。後発薬の原料の供給制約も、一部の品目で売上を押し下げている。
原材料と為替
中東情勢で原材料と包装資材の価格が上がっている。会社は販売価格の見直しを進めるが、原価の上昇が残る見込みだ。食品・化粧品原料の輸出は、為替の円高に弱い。
今後の分かれ目
- 化学品の営業利益率が2027年11月期にかけて10%を保ち、設備の受注も伸びたら
- 化学品の量と利益率を引き上げ、やや楽観・楽観の確度を高める。
- AI向け基板の投資が減速し、化学品の売上が前年を下回ったら
- やや悲観・悲観に重みを寄せる。循環の谷に入ったと判断する。
- 2027年1月の新中計で、HBC・食品の利益率が3%を超える道筋が出たら
- HBC・食品の利益率を引き上げる。のれん償却を除いた稼ぐ力を見直す。
- 池田物産ののれんの減損が出たら
- 純利益と自己資本を引き下げ、買収の資本効率の評価を下げる。
- 優待が縮小・廃止されたら
- 還元の受け取り分を減らして見直す。利益には響かないが、株主の取り分は下がる。
見ておくもの
- 化学品の四半期の売上と営業利益率(基板向け薬品、設備、中国の新規顧客)
- ファインケミカルのCMC受注とペプチドの受託の進み具合
- HBC・食品の営業利益率と池田物産ののれん償却
- 純有利子負債と営業利益の比
- 2027年1月に出る新中計の目標と、政策保有株の売却の進み
- 優待の内容変更
倍率と資本コストの決め方
ファインケミカル・HBC・食品・医薬・化学品の四つに分け、数量(実質)×価格(名目)で10年を積んだ。数量は開示が無いため、平均単価の仮置きで換算した。ROEが資本コスト8%以下なので、中立のPERの上限は1÷k=11.1倍で、その8.5割の9.4倍に置いた。今の株価や過去のPER・PBRには寄せていない。悲観の床は政策保有株の売却と棚卸資産の処分で測り、過去のPBRの谷は使っていない。営業利益率は中立で4.8%台と、過去12年の最高4.9%以下に収めた。足元の3四半期の化学品の営業利益率9.8%は、設備投資の循環の山とみて8%に下げた。優待は年0.6億円と推定して還元に足した。減価償却は取得時の値段のままとして、本社費だけを物価で増やした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→14.01 倍・やや楽観 PER 9.4→12.85 倍・中立 PER 9.4→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+1.5%を足して9.0%。存続に疑いはなく、赤字は続いていないので、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.00%。