結論
ソマールは、電子部品用フィルムや電気絶縁用の粉体塗料を自社で作る化学品の会社だ。商社として工業用殺菌剤や食品の増粘剤も売る。売上の 7 割、利益の 9 割は高機能材料が稼ぐ。
筆者の結論は、10 年で見れば適正の圏内、やや割安寄りということだ。割安に見える理由は資産の厚さにある。営業利益 26 億円に対し、時価総額は 140 億円にとどまり、純現金も 52 億円ある。
注意点が 2 つある。1 つは、営業利益率が 3 年前から急に上がったこと。2016 年から 2023 年までは 1〜5% だった。素材の利益は市況で振れるので、中立では戻りを見込んだ。もう 1 つは、現金が株主に戻りにくいことだ。配当は年 1.9 億円と純利益の 13% で、大株主は関連会社だ。
現金の半分しか戻らないと見ても、中立の価値は今の時価総額を大きく上回る。ただ、悪い筋書きの確率を加えると、差は 1 割に届かない。筆者は、資産に守られた下値の固さを評価する一方、上値は利益率の戻り次第と見る。経営が動けば、評価は変わりうる。
賭けどころは、電子材料の需要が続くことよりも、会社が持つ現金と株の価値を少数株主が取り戻せるかにある。そこが動かなければ、事業の利益だけで価値を見ることになる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず、買う値段に比べて会社が稼ぐ現金を見る。営業利益 26 億円、純現金 52 億円、政策保有株 30 億円。これらに対して、時価総額は 140 億円にすぎない。下値の安全域は厚い。
次に事業の質だ。粉体塗料のような用途特化の素材は、顧客の設計に組み込まれると長く使われる。ただ、直近の利益率は 3 年しか続いておらず、素材は市況で利益が振れる。中立では利益率の一部が戻るとみた。
最後は資本の使い方だ。現金は積み上がるのに、還元は薄い。大株主が関連会社で、少数株主には現金の使い方を決める力がない。使い道が見えない現金は、帳簿の額面ほどの価値を認めにくい。配当を倍にしても純利益の 3 割に届かず、余力は十分にある。この点で、戻り方を 0.5 に割り引いた。
筆者は、割り引いても下値の固さは消えないと見る。現金を無駄に使われる心配はあるが、買収に使うなら、むしろ事業の幅が広がる。ただし、買収の実績が乏しい会社なので、失敗の確率も織り込んだ。
何で稼ぐ会社か
事業は 4 つで、高機能材料が売上の 72%、環境材料が 19%、食品材料が 8% を占める。営業利益では高機能材料が 9 割を占める。
高機能材料は、電子部品用のコーティングフィルム、電気絶縁用のエポキシ樹脂粉体塗料、回路基板材料、機能性樹脂を扱う。粉体塗料はモーターや電子部品の絶縁に使われ、EV の拡大が追い風になる。2026 年 3 月期は売上 225 億円、利益 25.5 億円で、利益率は 11.3% だった。北米の子会社 Somar North America の工場設備に投資している。
環境材料は、工業用殺菌剤と、紙塗工用バインダーなどの製紙用化学品。売上は 59.9 億円で 10.9% 減った。紙の需要が縮んでいる。食品材料は増粘安定剤や乾燥野菜を売る商社部門で、利益は 1.3 億円と小さい。
連結の従業員は 464 人と少なく、1 人あたり売上は 6,700 万円ほど。海外売上比率は 32.8% である。少人数で回すため、1 人あたりの利益は大きいが、事業の幅は広くない。
設備投資は 2026 年 3 月期で約 9.7 億円と小さく、高機能材料が 8.8 億円を占める。減価償却費を超える大型投資は今のところなく、現金が積み上がる最大の理由はここにある。
優良さと弱いところ
強みは、用途に合わせて調合を変える受託型の開発力だ。電気絶縁用の粉体塗料は、顧客ごとに性能の要求が違い、一度採用されると切り替えにくい。粉砕加工の技術も、他の素材の受託加工に広げ始めた。小さな会社なので、顧客との距離が近く、仕様変更に素早く応じられる。
弱みは、顧客と原料が外から決まることだ。電子部品や車載の顧客が少数に偏り、原料の石油化学品は中東情勢で値が動く。2026 年 3 月期は、食品材料の利益が原料高で減った。
財務は強い。自己資本比率は 63%、純現金が 52 億円ある。ただ、経営の方針は目標を守る形で、営業利益率 4%・ROA 5% という低い目標を既に超えている。野心が低いのが気がかりだ。
過去には赤字の期が 6 回ある。2015 年 3 月期の純損失は 28 億円で、堀が厚いとまでは言えない。筆者は、強みと弱みが同居する会社と見ている。
経営陣の姿勢も気になる。2026 年 3 月期は中間配当を見送り、期末だけに払った。海外売上比率が 3 割を超え、目標の 20% を大きく上回った。掲げる目標が実績より低く、経営の野心は見えにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
電子材料の需要は、スマートフォン、車載、半導体の 3 つが牽引する。いずれも景気に敏感で、顧客の設備投資の山谷が、そのまま出荷量の山谷になる。EV のモーターやパワー半導体では、絶縁と放熱を両立する粉体塗料の需要が伸びており、世界の産業用粉体塗料の市場は 2030 年まで年 5% 台の成長が見込まれる。
競合は大手の化学メーカー(東亞合成、AkzoNobel など)と、価格で攻める中国勢だ。ソマールは小回りの利く受託型で棲み分けているが、大量に作る品目では価格競争を受ける。
環境材料の製紙用薬品は、紙の需要減で縮む。食品材料は、増粘剤の世界の需要が安定して伸びるが、ソマールは販売のみで、利益率が低い。売上の 8% を占めるが、全社の利益では 5% ほどの存在感しかない。
2027 年 3 月期は第 1 四半期の営業利益が 7.4 億円と、通期予想の 34.7 億円に向けて順調だ。ただ、会社予想の増益率は 3 割と高く、割り引いて見る。売上の伸びは電子材料の回復と値上げの両方に依存し、片方が欠ければ予想は届かない。EV 向けの絶縁材料は新しい成長分野だが、採用が決まるまで数年かかる。
為替は 150 円で固定して見ている。円高に振れれば、海外売上の円換算が減り、輸入原料は安くなる。両方が相殺するので、利益への影響は限られる。
資本政策と M&A
配当の総額は約 1.9 億円。純利益の 13% ほどで、5 年同額が続く。中間配当は見送り、期末だけに払う。会社は「株主還元を最優先」と書くが、実際の還元は薄い。自己株式の取得は開示されていない。
その他の関係会社のナガツタコーポレーション、シンク、対和の 3 社が議決権の 33.2% を持ち、宗屋も 12.4% を持つ。大株主は経営に深く関わるので、現金を戻す方針に切り替える力は強いが、これまでは動いていない。
政策保有株は上場 18 銘柄で 30 億円。三菱 UFJ、三井住友 FG、NOK、北越などだ。
大型の M&A は近年ない。過去に大株主が入れ替わった経緯があり、TOB の観測は確認できない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電気絶縁と電子部品向けの需要は、EV と半導体で今後も伸びる。ソマールは粉体塗料の受託型で顧客と長く付き合い、高機能材料の利益率は 11% を超えた。2027 年 3 月期は営業利益 34.7 億円の予想で、第 1 四半期は 7.4 億円と順調だ。北米の工場が稼働すれば、海外の自動車・電機メーカーにも直接供給できる。円安は海外売上の円換算を押し上げる。
純現金は 52 億円、自己資本比率は 63% で、財務に不安はない。政策保有株の 30 億円も含み益が出ている。時価総額 140 億円に対し、これらの資産の合計は 80 億円を超える。残りの事業価値は、営業利益 26 億円に対して 60 億円ほど、つまり 2〜3 年分の利益で買える計算だ。
大株主の関連会社が動けば、現金を戻す方向に変わる可能性もある。営業利益が 34.7 億円になれば、配当を 3 倍にしても純利益の 3 割に届かない。TOB の可能性も排除できず、その場合は純資産に近い価格になりうる。
慎重な見方
利益率は 3 年前から急に上がったばかりで、2016 年から 2023 年の営業利益率は 1〜5% だった。素材は中国勢の安値攻勢と原料高に弱く、赤字の期は過去 6 回ある。2026 年 3 月期の高機能材料の営業利益は 3.7% しか伸びておらず、利益率の伸びは頭打ちだ。
現金が積み上がるのに、配当は 5 年変わらず年 1.9 億円のままだ。大株主が関連会社の 33.2% を握る構造では、少数株主が現金の使い方を決められない。使い道が買収なら、失敗するリスクもある。
環境材料の製紙用薬品は構造的に縮み、食品材料は利益が減った。電子材料の顧客も少数に偏る。会社予想の 34.7 億円は達成に自信が持てない。前期は予想を達成したが、純利益は投資有価証券の売却益が消えて 4 割減った。本業の伸びが小さい年は、会社予想の増益率が高すぎる恐れがある。また海外売上の円換算は為替に左右され、円高に戻れば効果は薄れる。
どちらに重みを置いたか
現金の半分しか戻らない前提でも、中立の価値は今の時価総額を上回る。一方で、利益率の戻りと現金の滞留を重く見て、やや悲観と悲観に 4 割弱の確率を置いた。その結果、総合は適正の圏内に収まった。割安さは資産が支える部分が大きい。事業だけで見れば、過去の赤字を考えて慎重に置いた。筆者は、確率を悲観寄りにすると、割安は薄まって適正圏に収まると見る。決め手は利益の戻りの深さで、現金の戻り方はその次に効く。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 17,755 円344 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,543 円30 億円)。 今の値に割り戻すと 9,689 円188 億円、今との差 +39.4%、 期待の年率 +10.8%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 37,843 円733 億円 | 2,838 円55 億円 | +485.3% | +19.3% | 2,848 円55 億円 |
| やや楽観 | 18% | 28,363 円550 億円 | 2,064 円40 億円 | +337.8% | +15.9% | 5,477 円106 億円 |
| 中立 | 38% | 20,399 円395 億円 | 1,548 円30 億円 | +215.8% | +12.2% | 8,340 円162 億円 |
| やや悲観 | 25% | 7,929 円154 億円 | 1,239 円24 億円 | +31.9% | +2.8% | 2,292 円44 億円 |
| 悲観 | 12% | 2,219 円43 億円 | 619 円12 億円 | −59.2% | −8.6% | 341 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 17,755 円344 億円 | 1,543 円30 億円 | +177.7% | +10.8% | 19,297 円374 億円 |
今の株価時価総額 6,950 円135 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% EV・半導体向けの絶縁材料とフィルムが広がり、北米も立ち上がる 利益 44 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 37,843 円733 億円
EV のモーター、電池、パワー半導体の絶縁と放熱に、ソマールの粉体塗料と機能性樹脂が採用される。電子部品用フィルムも、スマートフォンから車載・データセンターへ用途が広がる。
北米の工場が稼働し、現地の自動車・電機メーカーへの供給が始まる。出荷量は 10 年で 1.5 倍を超え、価格は物価を少し上回って通る。利益率は 12% まで上がる。
環境材料は紙の縮小が続くが、殺菌剤が支える。食品材料は横ばい。純利益は 40 億円を超えるが、配当は大きく増えず、現金がさらに積み上がる。経営が現金をどう使うかで、株主の取り分は大きく変わる。
- 高機能材料:数量 29,121(出荷量(トン・推定))× 価格 168(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 489 億円・営業利益 59 億円。出荷量 1.55 倍 × 1 トンあたり売上 1.40 倍(物価 1.34 × 高付加価値化 1.04)、利益率 12.0%
- 環境材料:数量 7,484(取扱量(トン・推定))× 価格 107(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 80 億円・営業利益 3 億円。取扱量横ばい、物価どおり、利益率 4.0%
- 食品材料:数量 4,531(取扱量(トン・推定))× 価格 80(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 36 億円・営業利益 2 億円。取扱量 1.05 倍、物価どおり、利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)34 億円。全体の PER 15.93 倍、時価総額 729 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出荷量が 10 年で 1.5 倍を超えるには、北米工場の立ち上げと新用途の採用が両方うまくいく必要がある。利益率 12% は直近の高機能材料の 11% を上回り、素材の競争で保つのは難しい。
やや楽観 18% 電子材料の需要が堅調で、利益率は直近の高さを保つ 利益 34 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 28,363 円550 億円
電子部品、車載、半導体向けの需要が堅調で、高機能材料の出荷量は 10 年で 4 割増える。原材料の値上がりは価格に転嫁でき、利益率は 10% 台を保つ。顧客の分散が進み、特定の顧客に左右される度合いも下がる。環境材料は殺菌剤が堅調で、利益の落ち込みを埋める。
北米の工場は黒字になり、海外売上は全体の 4 割に近づく。環境材料は殺菌剤が支えて小幅の減、食品材料は横ばい。
純利益は 3 割ほど増える。配当は少しずつ増えるが、会社に現金がたまる構造は変わらない。大株主が動かなければ、現金は事業の外で眠り続ける。
- 高機能材料:数量 26,303(出荷量(トン・推定))× 価格 163(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 429 億円・営業利益 46 億円。出荷量 1.4 倍 × 1 トンあたり売上 1.36 倍、利益率 10.8%
- 環境材料:数量 7,110(取扱量(トン・推定))× 価格 107(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 76 億円・営業利益 3 億円。取扱量 0.95 倍、物価どおり、利益率 3.5%
- 食品材料:数量 4,315(取扱量(トン・推定))× 価格 80(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 2 億円。横ばい、物価どおり、利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)34 億円。全体の PER 14.93 倍、時価総額 536 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近 3 年で営業利益率が 3% 台から 8% 台に上がった流れが、そのまま続く筋書き。海外売上比率が 33% まで上がり、円安と北米拠点が支えになる。
中立 38% 電子材料は伸びるが、直近の高い利益率は少し戻る 利益 26 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 20,399 円395 億円
高機能材料の出荷量は 10 年で 1.25 倍。電子部品、車載、半導体向けの需要は伸びるが、中国勢の価格攻勢で利益率は 9.5% と、直近の 11% から少し戻る。
環境材料は紙の縮小で取扱量が 1 割減り、殺菌剤で補う。食品材料は横ばい。本社費などの調整は物価で 1.34 倍に増える。
営業利益は 40 億円弱、純利益は 28 億円。会社は配当を大きく増やさないので、10 年で現金が 200 億円規模に積み上がる。その現金が株主に戻るかどうかが、価値を左右する。中国勢の攻勢と原料高は続くが、用途特化の強みで大崩れは避けられる。
- 高機能材料:数量 23,485(出荷量(トン・推定))× 価格 161(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 378 億円・営業利益 36 億円。出荷量 1.25 倍 × 1 トンあたり売上 1.34 倍、利益率 9.5%
- 環境材料:数量 6,736(取扱量(トン・推定))× 価格 104(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 70 億円・営業利益 2 億円。取扱量 0.9 倍(紙の縮小)、価格 1.30 倍、利益率 3.0%
- 食品材料:数量 4,315(取扱量(トン・推定))× 価格 78(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 1 億円。横ばい、価格 1.30 倍、利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)34 億円。全体の PER 13.64 倍、時価総額 374 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の利益率の跳ね上がりが続くか、昔の水準へ戻るかの中間に置いた。出荷量は市場並みに伸び、価格は物価どおりに通る。ただし赤字の期が 6 回ある会社なので、強気には寄せない。
やや悲観 25% 中国勢との価格競争で、利益率が昔の水準に近づく 利益 12 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 7,929 円154 億円
電気絶縁やフィルムの用途で、中国・韓国勢が同じ性能を安く出してくる。ソマールは価格を物価ほど上げられず、出荷量も伸びない。高機能材料の利益率は 6.5% に落ちる。
環境材料は紙の需要減でさらに縮み、食品材料も原料高で薄利になる。北米工場は稼働が遅れ、償却だけが増える。
営業利益は 20 億円強まで下がるが、会社は無借金に近く、赤字には沈まない。利益率が下がるほど固定費の重さが目立ち、人員の削減や拠点の整理が課題になる。配当は据え置き、現金がたまり続ける。新しい用途の開拓は遅れ、収益の柱は電子部品用フィルムに偏り続ける。
- 高機能材料:数量 18,788(出荷量(トン・推定))× 価格 150(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 282 億円・営業利益 18 億円。出荷量横ばい × 1 トンあたり売上 1.25 倍、利益率 6.5%
- 環境材料:数量 5,987(取扱量(トン・推定))× 価格 96(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 1 億円。取扱量 0.8 倍、価格 1.20 倍、利益率 2.0%
- 食品材料:数量 4,099(取扱量(トン・推定))× 価格 72(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。取扱量 0.95 倍、価格 1.20 倍、利益率 3.0%
倍率:事業の ROE は 5% 台で k を大きく下回る。上限は 1÷k=12.5 倍で、その 7 割弱。素材の価格競争が続き、利益の質が落ちる分を織り込んだ。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8.5 倍・時価総額 124 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:2016 年から 2023 年までの営業利益率は 1〜5% で、直近の 8% 台は 3 年しか続いていない。原料高を転嫁できない局面と中国勢の安値攻勢が来れば、この筋書きになる。
悲観 12% 顧客の内製化と中国勢の台頭で、高機能材料の稼ぎが崩れる 利益 3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 2,219 円43 億円
主要顧客が絶縁材料を内製化する、または中国の素材メーカーに切り替える。ソマールの出荷量は 2 割減り、残る分も値引きを迫られる。
環境材料は紙の需要減で 4 割縮み、赤字に近づく。北米の工場は稼働率が上がらず、重い固定費になる。
営業利益は数億円まで落ち、固定費をまかなえなくなる。会社は人員と拠点の整理に追われ、新しい用途を開拓する余力を失う。この筋書きは、2015 年 3 月期に純損失 28 億円を出した経験の再来にあたる。大株主が現金の使い方を変えないまま、事業の価値だけが目減りする。ただし純現金と政策保有株という売れる資産があり、株主の取り分はそれらが決める。会社が買収や投資で現金を使い切れば、床はさらに下がる。
- 高機能材料:数量 15,030(出荷量(トン・推定))× 価格 138(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 207 億円・営業利益 7 億円。出荷量 0.8 倍 × 1 トンあたり売上 1.15 倍、利益率 3.5%
- 環境材料:数量 4,490(取扱量(トン・推定))× 価格 88(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 0 億円。取扱量 0.6 倍、価格 1.10 倍、利益率 0.5%
- 食品材料:数量 3,668(取扱量(トン・推定))× 価格 66(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。取扱量 0.85 倍、価格 1.10 倍、利益率 2.0%
倍率:この筋書きの純利益は 3 億円ほどで、稼ぐ力は 40 億円に届かない。価値は純現金と売れる株の床で決まり、今の自己資本 223 億円に 0.19 倍。
確率:赤字の期が過去に 6 回あり、電子材料の顧客は少数に偏る。顧客が代替素材や内製に切り替える構造的な負けを、1 割強の確率で置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
高機能材料
電子部品用フィルムなどのコーティング製品、電気絶縁用のエポキシ樹脂粉体塗料、回路基板材料、機能性樹脂。自社で作って売るメーカー機能が中心。
| 数量出荷量(トン・推定) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 18,788 | 120 | 225 | 26 |
| 10 年後 中立 | 23,485 | 161 | 378 | 36 |
取り方:売上 225.46 億円・セグメント営業利益 25.54 億円(有価証券報告書、前期比 7.1% 増)。トン数は開示がなく、1 トンあたり売上を 120 万円(コーティング・樹脂・電子材料の混合の仮定)として売上から逆算した推定。
環境材料
工業用殺菌剤などのファインケミカルズと、紙塗工用バインダーなどの製紙用化学品。
| 数量取扱量(トン・推定) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7,484 | 80 | 60 | 2 |
| 10 年後 中立 | 6,736 | 104 | 70 | 2 |
取り方:売上 59.87 億円(10.9% 減)・営業利益 1.98 億円。トン数は開示がなく、1 トンあたり 80 万円の仮定で売上から逆算した推定。製紙用は紙需要の縮小で減っている。
食品材料
増粘安定剤、乾燥野菜、食品添加物の販売(商社機能)。
| 数量取扱量(トン・推定) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,315 | 60 | 26 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4,315 | 78 | 34 | 1 |
取り方:売上 25.89 億円(3.1% 増)・営業利益 1.28 億円(8.5% 減)。トン数は開示がなく、1 トンあたり 60 万円の仮定で売上から逆算した推定。中東情勢での原料高が効いた。
リスクと懸念
利益率の戻り
営業利益率は 2016〜2023 年が 1〜5%、直近 3 年が 7〜8%。素材の価格競争や原料高で、昔の水準に近づく可能性がある。中立は戻りを一部見込んだが、全部戻れば利益は半分近くになる。
現金が戻らない
純現金は 52 億円で時価総額の 37%。関連会社が議決権の 33.2% を持ち、配当は 5 年同額のまま。現金の戻り方を 0.5 に割り引いたが、さらに低ければ割安さは縮む。
顧客と用途の集中
高機能材料は電子部品・車載の少数顧客に偏る。顧客が内製化や中国勢への切り替えを進めれば、出荷量が一気に落ちる。
原料高と中東情勢
石油化学系の原料は中東情勢で値が動く。2026 年 3 月期は食品材料の利益が原料高で減った。転嫁が遅れる局面では利益率が下がる。
環境材料の縮小
製紙用の化学品は紙の需要減で売上が 10.9% 減った。この部門は構造的に縮み続け、利益 2 億円の小さい部門だが、固定費が重くなる。
北米工場の立ち上げ
Somar North America の工場投資は 2026 年 3 月期の設備投資 9.7 億円の大半を占める。稼働が遅れれば償却だけが先に増える。建築費も上がっている。
政策保有株の価格
上場株 30 億円は相場で上下する。評価差額金は自己資本に入り、相場が崩れれば自己資本も減る。
今後の分かれ目
- 高機能材料の営業利益率が 2 年続けて 9% を割る
- 直近の利益率の跳ねが一過性だった可能性が高い。やや悲観の確率を厚くする。
- 配当性向の引き上げ、自己株式の取得、特別配当が出る
- 現金が株主に戻る。戻り方を 0.5 から 0.75 に上げる材料になる。
- 北米工場が黒字化する
- 海外売上の伸びが確かになる。やや楽観の確率を厚くできる。
- 関連会社による TOB や株の買い増しが出る
- 純資産に近い価格が付く可能性がある。少数株主の戻り方が変わる。
- 大型の M&A が出る
- 現金の使い道が決まる。買収の対象と価格で、現金の価値が上下する。
- 環境材料の整理・売却が決まる
- 固定費が減って全社の利益率が少し上がる。
見ておくもの
- 高機能材料の営業利益率
- 配当性向と自己株式の取得
- 北米工場の稼働状況
- 大株主(ナガツタコーポレーション・宗屋)の動き
- 海外売上比率
- 石油化学系原料の価格
倍率と資本コストの決め方
倍率は、資本コスト 7.5%(基本 7.5% に循環 +0.5%)と、事業の ROE(中立で 8% 台)から式で置いた。余った現金は事業から切り離して、戻り方 0.5 を掛けて足した。直近の高い利益率が続くとは置かず、中立の利益率を直近より低くした。今の株価や PER は見ていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→15.93 倍・やや楽観 PER 11.5→14.93 倍・中立 PER 10→13.64 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に循環 +0.5% を足して 8.0%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。