結論
ライオン事務器は、文具やオフィス家具を全国の販売店に卸し、企業のオフィス改修と学校のICT整備も引き受ける老舗である。筆者の結論は「やや割安」だが、安全域は厚くない。今の時価総額約102億円に対し、10年先の五つの経路からみる現在価値は約115億円である。価格の安さよりも、現金と販路が長く稼ぐ力を支えていることが理由だ。
事業は三つの販路に分かれる。販売店向けは品ぞろえと物流、企業向けは「オフィスまるごと」の提案、文教向けは学校端末の調達と保守が柱である。2026年の学校売上は第2期GIGAスクール構想の更新需要で急伸した。ただし端末の入れ替えには年度ごとの波があり、この勢いを10年続く成長と取り違えてはならない。
最大の強みは、全国の卸売口座、学校・企業への施工能力、大塚商会との長い協業が重なっていることだ。ナビリオンの購入口座も増えている。半面、家具や学校端末は強い値決め力を持ちにくく、仕入先と自治体の入札に左右される。大塚商会は最大株主で大口取引先でもあり、協業の利点と少数株主の立場が表裏一体になっている。
10年後も机と椅子、学校の端末、内装工事は必要だろう。一方、紙の消費と人手による設定作業は減り、稼いだ利益が自己資本に積み上がるほどROEは薄まる。配当性向40%という中期目標が継続されれば、利益だけでなく株主への現金の戻りも価値になる。端末特需の剥落、AIによる作業代替、過剰な運転資金を見込んでも、小幅な割安が残るという判断である。
バリュー投資の観点から
長く保有する株主なら、まず10年後も同じ客から注文が来るかを考える。机、椅子、保管庫、学校のネットワークは不要にならない。文具の卸売口座と施工の取引履歴にも持続性がある。しかし、繰り返し買われるからといって、価格を自由に決められるわけではない。学用品の公開入札で毎回競争する点は、継続課金のサービスとは決定的に異なる。
次に見るのは、純利益のうち所有者が取り出せる額だ。端末や家具の仕入れに現金が要り、倉庫や情報システムも更新しなければならない。現金が多い企業だが、利益のすべてを分配すれば受注の大きな季節変動に耐えられない。追加の資本がどれほどの利益を生むかも厳しく見る必要がある。今の利益率で自己資本だけを積み増しても、高い複利運用が約束される商売ではない。
大塚商会との協業は販売力と低い仕入れコストをもたらす反面、経営の自由度を狭める可能性がある。ナビリオンの仕組みを自社だけで保持していないことも割り引くべきだ。成長投資を優先した結果、現金が十年後にも社内に滞留するなら、少数株主の受け取れる価値は帳簿額より小さい。会社が掲げた配当目標の実行こそ、経営の質を測る大切な証拠となる。
評価の順番は、学校端末の特需をならした将来利益、必要な運転資金、競争優位が残る年数、株主に戻る現金の順である。現時点では小幅な安全域があるが、堀が盤石だから高値でも構わない会社ではない。下振れした時に資産の換金性がどこまで残るか、そして上振れした時の利益を投資家に返すかを見続ける持ち方がふさわしい。
何で稼ぐ会社か
販売店事業は2025年9月期に約157億円を売り、全社の4割強を占める。文具店や事務用品販売店に、自社のLIONブランドと仕入れた家具・事務用品を卸す。2026年春時点の卸・販売店口座は8,853件で、そのうち継続して営業が接点を持つ口座は2,839件である。仕入れ、品ぞろえ、在庫、配送をまとめて担うことが収入の源であり、商品の独占権を売る商売ではない。
エンタープライズ事業は同約109億円で、企業の移転、内装、家具、照明、ICT設備を一括提案する。2026年上半期の「オフィスまるごと」案件は前年の169件から236件へ増えた。顧客が部品を一つずつ発注する手間を省けるため、一件当たりの売上と粗利益を増やしやすい。もっとも売上には通常の法人取引や海外向けも含まれ、案件数だけで事業全体を正確に測ることはできない。
文教事業は同約104億円を売る。学校のタブレット、保管庫、ネットワーク機器を仕入れて納め、初期設定から導入後のヘルプデスクまで請け負う。首都圏の自治体を中心に約36自治体をカバーする実績があり、SI事業者の下請けとしても仕事を得る。端末自体は汎用品に近く、利益の違いは採用案件の量と現場での履行能力から生まれる。
ナビリオンは横断的な通販チャネルであり、独立した売上を三事業に足すと二重計上になる。2025年の売上は約29億円、2026年上半期の稼働口座は5,472件に増えた。約45万点の品ぞろえを持つが、そのシステムと物流の基盤には大塚商会の「たのめーる」を利用している。繰り返し買われる消耗品の比率を高める戦略だが、完全に自社で支配する基盤ではない。
優良さと弱いところ
堀、つまり競争相手が短期間には複製できない強みは、商品そのものより販路と履行の仕組みにある。1792年にさかのぼる事業の歴史があり、全国の販売店は調達先を変えるほど在庫や伝票の運用を見直す必要がある。企業の内装工事でも、設計、施工、家具、電気工事を一社に任せられる安心感がある。施工に必要な許認可と人材も参入障壁となる。
ただし堀は強固とは言えない。コクヨ、オカムラ、イトーキ、内田洋行は製品開発と販売力を持ち、自治体の端末調達は公開入札である。製造を委託する製品も多く、取扱品の価格を一方的に上げる力は限られる。2025年までの営業利益率は3%台前半で、原価高を軽々と転嫁できる高収益企業ではない。案件を束ねて粗利額を増やす力と、製品単価を守る力は区別したい。
純現金約47億円は大きな安心材料であり、営業赤字が続く企業でもない。一方、棚卸資産と売掛金が膨らむと現金の自由度は下がる。2026年6月末の現預金は増えたが、学校の更新需要に伴う前受金などもある。流動性をすべて株主に配れる金とは考えない。自己資本の厚さと利益率の低さが共存する、守りに強く資本効率は普通という企業である。
大塚商会から得られる紹介や物流上の恩恵は大きい。しかしその仕組みを他社に貸す権利までライオン事務器が握るわけではない。取引実績が信頼を生んでいる間は堀が残るが、独自の顧客データや明確な高い解約防止率は公表されていない。強い堀ではなく、時間とともに手入れが必要な中程度の堀と評価する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本のオフィス家具市場は、大きさの定義を揃えることが欠かせない。矢野経済研究所が示す2024年の国内オフィス家具メーカー出荷は約4,560億円である。一方、設計・内装・関連ICTまで含める広いオフィス環境市場は約8,400億円という推計もある。ライオン事務器の販売店・企業向け売上を後者と比べても3%強で、家具だけの正確な国内シェアは開示されていない。異なる市場の売上を混ぜた断定はしない。
競争の中心にはコクヨ、オカムラ、イトーキ、内田洋行がいる。大手四社の対象売上だけを合計した比較では、オカムラとコクヨがそれぞれ約3分の1を占めるが、これは国内総市場のシェアではない。ライオン事務器は大規模な自社製造より、卸売ネットワークと工事の一括受注で対抗する。国内の働く人の数が減っても、企業の移転、オフィス回帰、設備更新の案件は生まれるため、販売先数と一件当たり受注額を伸ばせるかが勝負となる。
学校ICTは今の収益を大きく動かしている。MM総研の自治体調査では、更新対象の端末は約661万台で、その多くが2025年度に集中する。平均的な端末価格は約5万5千円とされ、自治体の予算と一斉更新の時期が受注を決める。国内の端末数が一度整えば10年で台数が倍になる市場ではない。入札に勝つ地域と運用・保守の範囲が増えるかによって会社の持ち分が変わる。
文具・紙の消費はデジタル化で縮み、印刷機器の関連需要も構造的に減少する。反対に、集中作業用ブース、会議設備、教育施設のネットワークは需要を保ちうる。競合の大塚商会やリコージャパンは取引先への幅広い提案力を持つが、ライオン事務器がリコージャパンと新たに提携した事実はまだない。2026年の端末特需に引っ張られず、物価を除いた数量が横ばい近辺という前提から将来を考えるべき市場だ。
資本政策と M&A
資本配分には改善の兆しがある。2024年9月期の配当性向は11.8%、2025年は16.4%だったが、会社は中期的な目標として連結配当性向40%とDOE3%を明示した。2026年期の計画配当性向50.1%には上場記念配当が含まれるため、そのまま平年の約束とはみなさない。
2026年9月期の単年度会社予想は売上407.23億円、営業利益14億円である。純利益は9.89億円を見込むが、これらは複数年の目標ではない。独立した中期の売上・営業利益・ROE数値目標や、自社株買いの金額の約束は確認できない。
2025年10月の上場とその後の増資・新株予約権行使で株数と自己資本は増えた。大塚商会は約35%を保有する最大株主で、2008年の資本業務提携を維持している。2025年の売上約13%が同社向けであり、通販の仕組みも依存する。支配株主による公開買付けが決まった事実はなく、将来の再編益を価値に先取りしていない。
2026年には八潮の物流用不動産を売却したが、簿価と売値の差は小さく、大きな含み益の現金化ではない。大型買収で事業の地図を変えた実績も乏しい。今後は成長投資を選別しながら、純利益の約4割を株主に戻す方針が守られるかを見たい。株主優待は設けておらず、配当と将来の自己株買いだけを還元として評価する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
全国の卸売口座と大塚商会の販売基盤を組み合わせれば、設備メーカーでは届かない中小企業の需要を取り込める。2026年上半期の「オフィスまるごと」案件は4割近く増え、増えた案件では売上だけでなく粗利も伸びている。机や収納の納品で終わらず、電気工事、内装、会議室のICTまで受けることで顧客一社から得る利益が増える。デリカブースなどの製品も加わり、オフィス回帰を支える品ぞろえが広がる。
ECのナビリオンは2026年上半期の稼働口座が5,472件へ増えた。取引先が毎月文具、飲料、紙などを注文すれば、仕入れ先の切替費用は一度に小さくても関係全体では離れにくくなる。大塚商会の「たのめーる」と物流を共有することは、独自システムの開発費を抑える選択でもある。低い利益率だからこそ、物流の共同化と営業一人当たりの取扱高増が利益に効く。
学校向けでは現場への調達・導入・保守を一括で引き受ける能力が評価される。首都圏の自治体への納入実績を横展開し、次の更新でも競争に勝てば一時的な特需を継続的な受注に変えられる。実際の会社計画も2026年の営業増益を見込んでおり、財務的な余裕は十分である。自社株買いに頼らずとも、配当性向40%の実行と利益拡大が同時に進めば、長期の株主利益は大きくなる。
長い歴史を持つLIONブランドは価格独占の証拠ではないが、家具と事務用品をまとめて発注する際の安心感を支える。仕入先、卸売店、施工会社の間をつなぐ役割が拡張すれば、追加の資本を過大に要しない成長が可能になる。
慎重な見方
2026年の急成長は、文教向けの一斉更新という期限のある予算に大きく依存している。会社自身、2021年にも学校端末の初回整備で業績が跳ねたことをリスクとして説明している。今回の更新が終われば、年によって自治体の入札は細り、教育向け売上が大きく落ちる可能性がある。納入した台数を次の十年間の毎年の売上だと考えるのは危険である。
販売店向けには、オンライン購買への直販移行と紙の消費減少がある。大塚商会は最大株主であると同時に仕入先、顧客、通販基盤の提供者でもあり、その判断が変わった場合に代替手段をすぐには用意できない。ナビリオンの登録口座増加も、通販の原価や物流費が上がれば利益に結びつかない。競争相手にはコクヨ、オカムラ、内田洋行と全国規模の提案力を持つ企業が並ぶ。
文教の端末設定とヘルプデスクは、人を割り当てて対応する仕事を含む。生成AIのエージェントが設定手順の案内、障害の切り分け、問い合わせ対応を自動化すれば、同じ端末数でも請求できる作業量が減る。独自の教育データが顧客を固定する仕組みや、解約率が極めて低い実績は確認できない。教育ICTの売上が増えても、受託工数は減りうる。
上場後の株主還元方針が配当性向40%を目指していても、投資不足の埋め合わせに資金が使われれば実行が遅れる。純現金は安全弁だが、在庫、売掛金、長期前受金を伴う商売であり、帳簿上の現預金をそのまま配ることはできない。最大株主との取引条件や利益相反への監督が弱まった時には、少数株主に帰属する価値はさらに小さくなる。
どちらに重みを置いたか
上振れの根拠は企業向け案件と通販口座の実際の増加であり、架空の新市場に期待しているわけではない。一方、教育端末の一斉更新は再現しにくく、利益率はなお低い。判断は少し慎重側に傾く。確率は上側27%、中立33%、下側40%とし、下に寄せる理由はGIGA特需の剥落、大塚商会への依存、文教作業のAI代替という固有の不確かさである。ただし豊富な純現金と明示された配当目標が最悪の損失を和らげる。確率加重の本質価値は現値を約13%上回り、結論は大幅ではない「やや割安」となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 550 円186 億円(+ 還元の換算額還元の合計 115 円39 億円)。 今の値に割り戻すと 340 円115 億円、今との差 +12.9%、 期待の年率 +9.2%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 1,181 円399 億円 | 187 円63 億円 | +354.7% | +18.3% | 123 円42 億円 |
| やや楽観 | 18% | 835 円282 億円 | 162 円55 億円 | +231.2% | +14.4% | 179 円61 億円 |
| 中立 | 33% | 597 円202 億円 | 130 円44 億円 | +141.4% | +10.4% | 240 円81 億円 |
| やや悲観 | 25% | 300 円101 億円 | 92 円31 億円 | +30.5% | +3.1% | 98 円33 億円 |
| 悲観 | 15% | 144 円49 億円 | 20 円7 億円 | −45.4% | −6.2% | 25 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 550 円186 億円 | 115 円39 億円 | +121.0% | +9.2% | 665 円225 億円 |
今の株価時価総額 301 円102 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 提案力と販路を拡大し端末更新も継続 利益 26 億円 · PER 14.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,181 円399 億円
大塚商会の顧客基盤への提案と、独立した卸販売店への支援がうまくかみ合う。オフィスまるごと案件は年間換算で約540件まで増え、オフィス移転とレイアウト変更に家具、電気工事、ICTをまとめて納める。デリカブースなど自社ブランドも販売先を広げ、営業利益率が改善する。競合のコクヨや内田洋行との競争は続くが、建築関連までまとめる強みで注文を取る。
販売店口座は約9,700件になり、休眠店の掘り起こしとナビリオンを通じた継続購入が進む。学校端末は約17.5万台相当を年々安定して確保する。首都圏で得た実績を他の自治体に展開し、端末販売の薄い利益を補う。保守では現場訪問など物理的なサービスに絞り、AIによる自動化で失う工数を取り返す。受託作業の数量は現在を少し下回るにとどまる。
経営は大型買収で背伸びせず、必要なシステム投資と一部の販路拡張に資本を使う。利益増加分は中期目標を超えて株主へ還元され、10年間に累積約65億円を配る。余剰現金を持ちながら、同時に利益を再投資できる最も良い姿である。
- 販売店向け文具・オフィス用品卸:数量 9,700(卸売・販売店の取引口座数(口座・2026年上半期の公表母集団))× 価格 0.03(口座当たり年間商品販売額(億円/口座・名目))→ 売上 244 億円・営業利益 8 億円。販売店口座の実質数と物価・商品構成の単価
- 法人オフィス一括提案・内装設備:数量 540(オフィス一括提案案件相当数(年、会社開示の案件数から推定))× 価格 0.51(案件相当数当たり売上(億円/件・名目))→ 売上 278 億円・営業利益 18 億円。一括提案の案件相当数と名目案件単価
- 文教ICT端末・周辺設備:数量 175,000(学習端末納入台数相当(台/年))× 価格 0.00(端末・周辺設備の販売額(億円/台・名目))→ 売上 150 億円・営業利益 8 億円。GIGA更新の端末年出荷相当と名目販売単価
- 文教ICT設定・保守・ヘルプデスク(工数型):数量 342,000(人手が必要な学校ICT支援端末年換算(端末年・実質作業量))× 価格 0.00(端末年換算当たりの保守・作業売上(億円/端末年・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 3 億円。AIエージェント代替による人手支援工数の減少
倍率:10年後の連結純利益25.90億円から将来余剰現金52億円の税後利息相当1.4%を控除し、同じ現金を自己資本から除いた事業ROE14.25%で評価する。k7.75%、普通の堀ゆえ超過ROEの残存1/2でRONIC11.00%、長期名目g2.5%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)≒14.72倍の上限を使い、余剰現金に戻り方0.75を掛けた分を足す。
確率:企業向け一括案件を全国で拡大し、学校入札の勝率も長く高く保つには複数の営業施策の同時成功が必要なため上側でも確率は限定的。基準資本133.64+今後10年の累計純利益約160−累計還元65=228.64。売上拡張に必要な運転資本を差し引いた将来余剰現金52を別評価。
やや楽観 18% 法人改修の深耕が学校更新の谷を埋める 利益 18 億円 · PER 14.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 835 円282 億円
企業のオフィス改修が安定収益源になり、案件相当数は約455件へ拡大する。ナビリオンの継続購入と全国の卸売店への営業支援が、紙の消費減少をおおむね補う。家具の値上げは原材料と物流費の上昇の範囲に収まり、案件を束ねることによる粗利益の改善が稼ぎを押し上げる。企業の発注先としての信頼は残るが、競争相手のコクヨやオカムラを圧倒するわけではない。
学校端末の一斉更新は2026年を境に落ち着き、翌年以降は補充と再更新が中心となる。それでも既存自治体での採用と新規入札を積み上げ、10年後の年間端末相当数は14.5万台を保つ。保守・ヘルプデスクでは自動化が進み、人の作業に対する請求数量は現在を下回る。値上げも工数の減りをすべて埋めない。
会社は安い資金調達環境に依存せず、営業で生んだ現金から投資費用を賄う。配当目標の実行が定着し、10年間の累積還元は約56億円になる。大塚商会との協業は維持するが、公開買付けなどの再編益は前提にしない。
- 販売店向け文具・オフィス用品卸:数量 9,350(卸売・販売店の取引口座数(口座・2026年上半期の公表母集団))× 価格 0.02(口座当たり年間商品販売額(億円/口座・名目))→ 売上 227 億円・営業利益 7 億円。販売店口座の実質数と物価・商品構成の単価
- 法人オフィス一括提案・内装設備:数量 455(オフィス一括提案案件相当数(年、会社開示の案件数から推定))× 価格 0.50(案件相当数当たり売上(億円/件・名目))→ 売上 226 億円・営業利益 13 億円。一括提案の案件相当数と名目案件単価
- 文教ICT端末・周辺設備:数量 145,000(学習端末納入台数相当(台/年))× 価格 0.00(端末・周辺設備の販売額(億円/台・名目))→ 売上 118 億円・営業利益 5 億円。GIGA更新の端末年出荷相当と名目販売単価
- 文教ICT設定・保守・ヘルプデスク(工数型):数量 310,000(人手が必要な学校ICT支援端末年換算(端末年・実質作業量))× 価格 0.00(端末年換算当たりの保守・作業売上(億円/端末年・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 2 億円。AIエージェント代替による人手支援工数の減少
倍率:10年後の連結純利益18.33億円から将来余剰現金59億円の税後利息相当1.4%を控除し、同じ現金を自己資本から除いた事業ROE11.17%で評価する。k7.75%、普通の堀ゆえ超過ROEの残存1/2でRONIC9.46%、長期名目g2.5%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)≒14.02倍の上限を使い、余剰現金に戻り方0.75を掛けた分を足す。
確率:2026年上半期に企業向け受注案件とEC稼働口座が伸びた実績があり、成熟市場でも漸進的な拡大を期待できるため。基準資本133.64+累計純利益約138−累計還元56=215.64。成長する運転資本を確保した残余の将来余剰現金59を別評価。
中立 33% 文教特需が一巡し販路は着実に維持 利益 13 億円 · PER 13.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 597 円202 億円
販売店の休眠口座の掘り起こしは進むが、紙や従来型OA用品の数量減が残る。取引口座数は8,620件相当に落ち着き、一口座当たりの名目売上は物価に沿って伸びる。オフィスまるごと提案は年間390案件相当まで拡大し、家具だけでなく内装、電気工事、ICTを組み合わせることで付加価値を守る。コクヨ、オカムラ、内田洋行との価格競争は続く。
学校端末は第2期GIGA更新の集中が去り、10年後の年当たり納入相当台数は約10.5万台となる。端末価格の上昇は主として物価分であり、需要数量の減少を一部相殺する。保守・設定の人手工数はAIエージェントで省力化され、請求できる支援量は今の約65%へ減る。現場に出向く導入や物理的な故障対応は残るため、完全に消滅するわけではない。
経営は大きな買収を行わず、受注と物流・システムの更新に資本を投じる。10年間の純利益合計は約112.5億円、配当等の累積還元は約45億円となり、自己資本が厚くなる。物価で売上は増えてもROEは6%台に薄まる。確実な高収益企業ではないが、余剰現金と普通の販路の強みが価値を支える。
- 販売店向け文具・オフィス用品卸:数量 8,620(卸売・販売店の取引口座数(口座・2026年上半期の公表母集団))× 価格 0.02(口座当たり年間商品販売額(億円/口座・名目))→ 売上 205 億円・営業利益 6 億円。販売店口座の実質数と物価・商品構成の単価
- 法人オフィス一括提案・内装設備:数量 390(オフィス一括提案案件相当数(年、会社開示の案件数から推定))× 価格 0.49(案件相当数当たり売上(億円/件・名目))→ 売上 189 億円・営業利益 10 億円。一括提案の案件相当数と名目案件単価
- 文教ICT端末・周辺設備:数量 105,000(学習端末納入台数相当(台/年))× 価格 0.00(端末・周辺設備の販売額(億円/台・名目))→ 売上 84 億円・営業利益 2 億円。GIGA更新の端末年出荷相当と名目販売単価
- 文教ICT設定・保守・ヘルプデスク(工数型):数量 238,000(人手が必要な学校ICT支援端末年換算(端末年・実質作業量))× 価格 0.00(端末年換算当たりの保守・作業売上(億円/端末年・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替による人手支援工数の減少
倍率:10年後の連結純利益12.82億円から将来余剰現金65億円の税後利息相当1.4%を控除し、同じ現金を自己資本から除いた事業ROE8.75%で評価する。k7.75%、普通の堀ゆえ超過ROEの残存1/2でRONIC8.25%、長期名目g2.5%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)≒13.28倍の上限を使い、余剰現金に戻り方0.75を掛けた分を足す。
確率:現実の企業案件増加とGIGA需要の一時性を同時に認める中央の道筋。年間の受注と現金の積み上げが過去の実績から説明できる。基準資本133.64+累計純利益約112.5−累計還元45=201.14。余剰現金65を除いた事業自己資本136.14と事業純利益11.91からROEを求める。
やや悲観 25% 学校入札が減り紙の需要も細る 利益 6 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 300 円101 億円
学校の端末更新が一巡し、自治体が全国一斉の入札を繰り返さなくなる。ライオン事務器は首都圏での保守契約は残すが、新しい端末調達の落札額が縮み、年間の端末換算台数は8万台に下がる。発注者は価格を重視し、機器を調達するだけの契約では利益率を高められない。会社の売上構成から、かつての大型更新案件の寄与が失われる。
販売店口座も7,750件へ減る。紙の削減、事務用品通販への直販移行、地域の販売店減少が重なり、ナビリオンの利用増だけでは数量の減少を止められない。企業向けは年315案件相当を守るが、オカムラや内田洋行との価格競争に押されて粗利が細る。学校のヘルプデスクはAIエージェントの対応範囲が広がり、人による作業量が半分近くに縮む。
売上が落ちても配送、ITシステム、倉庫の固定費は残る。中期配当目標は一部の年には維持できず、10年間の累積還元は約32億円になる。自己資本は積み上がるが利益は減り、資本コストに見合うROEを確保できなくなる。稼ぐ力に高い価値を付けず、余剰資金の株主への戻り方にも慎重さを残す筋書きである。
- 販売店向け文具・オフィス用品卸:数量 7,750(卸売・販売店の取引口座数(口座・2026年上半期の公表母集団))× 価格 0.02(口座当たり年間商品販売額(億円/口座・名目))→ 売上 172 億円・営業利益 4 億円。販売店口座の実質数と物価・商品構成の単価
- 法人オフィス一括提案・内装設備:数量 315(オフィス一括提案案件相当数(年、会社開示の案件数から推定))× 価格 0.45(案件相当数当たり売上(億円/件・名目))→ 売上 143 億円・営業利益 4 億円。一括提案の案件相当数と名目案件単価
- 文教ICT端末・周辺設備:数量 80,000(学習端末納入台数相当(台/年))× 価格 0.00(端末・周辺設備の販売額(億円/台・名目))→ 売上 60 億円・営業利益 1 億円。GIGA更新の端末年出荷相当と名目販売単価
- 文教ICT設定・保守・ヘルプデスク(工数型):数量 180,000(人手が必要な学校ICT支援端末年換算(端末年・実質作業量))× 価格 0.00(端末年換算当たりの保守・作業売上(億円/端末年・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替による人手支援工数の減少
倍率:連結ROE3.25%、余剰現金70億円控除後の事業ROE約4.4%はk7.75%を下回る。したがって事業利益の上限は1÷k=12.90倍。再編と入札競争による稼ぐ力の後退を明示的に認め、PER10.5倍とした。事業純利益5.90−70×1.4%=4.92億円の10.5倍と、将来現金70億円×戻り方0.75を合算した。
確率:特需の剥落だけでなく、価格競争とAI代替が現実的に重なる。ただし財務余力があり全面的な事業消失とは考えにくい。基準資本133.64+累計純利益約80−累計還元32=181.64。事業への追加投資を控えるため余剰現金70は残るが低い収益性では全額を価値に換算しない。
悲観 15% 仕入れと入札に敗れ再編損失が続く 利益 2 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 144 円49 億円
大塚商会との取引条件が悪化し、ナビリオンを支える共同の仕組みを十分に使えなくなる。文具や消耗品の顧客が競合の通販へ流れ、全国の販売店口座は6,500件相当まで減る。法人向けの内装・ICT提案も大型案件を取れず、オフィスまるごと案件は年240件相当へ後退する。家具の値上げは原価上昇に追い付かず、手元に在庫が積み上がる。
学校向けは首都圏の主力入札で相次いで敗れ、年間端末販売は約5万台相当に減る。導入と問い合わせの標準作業はAIエージェントと自治体側の内製化で置き換わり、請求可能な作業量は現在の3割弱となる。設備の納入時に価格競争が激化し、文教ハードウェア部門は赤字に転じる。利益の薄いサービスだけでは物流とシステムの費用を回収できない。
前半の黒字で耐えた後、再編費用、滞留在庫の処分、契約損失で数期の赤字が発生する。10年間の累計純損益は約6.6億円の赤字となり、還元は初期の配当を中心に約7億円に縮む。末期は小幅黒字へ戻っても強い堀は残らず、新規事業の高い評価を付けない。残る純現金と売却可能資産の税後価値を重視する。
- 販売店向け文具・オフィス用品卸:数量 6,500(卸売・販売店の取引口座数(口座・2026年上半期の公表母集団))× 価格 0.02(口座当たり年間商品販売額(億円/口座・名目))→ 売上 132 億円・営業利益 2 億円。販売店口座の実質数と物価・商品構成の単価
- 法人オフィス一括提案・内装設備:数量 240(オフィス一括提案案件相当数(年、会社開示の案件数から推定))× 価格 0.41(案件相当数当たり売上(億円/件・名目))→ 売上 98 億円・営業利益 2 億円。一括提案の案件相当数と名目案件単価
- 文教ICT端末・周辺設備:数量 50,000(学習端末納入台数相当(台/年))× 価格 0.00(端末・周辺設備の販売額(億円/台・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 −1 億円。GIGA更新の端末年出荷相当と名目販売単価
- 文教ICT設定・保守・ヘルプデスク(工数型):数量 100,000(人手が必要な学校ICT支援端末年換算(端末年・実質作業量))× 価格 0.00(端末年換算当たりの保守・作業売上(億円/端末年・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替による人手支援工数の減少
倍率:PBRは今の自己資本122.3億円以下に落ちた2036年の自己資本120億円を基準とする。稼ぐ力は純利益1.7億円でk7.75%に届かず、利益÷kは約21.9億円にとどまるため、純現金と売却可能資産の税後価値約49億円を床とする。PBR0.4167は120億円×0.4167≒50億円となり、過去の市場PBRから採っていない。
確率:教育端末の取り逃し、卸売口座の流出、大塚商会との関係悪化、支援工数の代替が同時に起こる複合不況のため、可能性は限定的だが無視できない。基準資本133.64+10年累計純損益−6.64−累計還元7=120.00。期間中の複数年の再編・棚卸処分損失を純利益に含めるので別途自己資本から二重控除しない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
販売店向け文具・オフィス用品卸
全国の販売店経由でLIONブランドと仕入れ文具、オフィス家具、事務用品を卸す。通販ナビリオン経由の売上の一部もここに含まれる。
| 数量卸売・販売店の取引口座数(口座・2026年上半期の公表母集団) | 価格口座当たり年間商品販売額(億円/口座・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 8,853 | 0.02 | 157 | 4 |
| 10 年後 中立 | 8,620 | 0.02 | 205 | 6 |
取り方:決算資料の2025年販売店売上157.14億円と2026年春に公表した卸・販売店口座8853件を接続した推計。単価は約177.5万円/口座年。実際に営業が接点を持つ口座は2839件で、全口座が稼働中ではない。2025年決算と2026年口座数の時点差・休眠口座を含むので、数は発注件数ではなく販路の規模の代理指標。2025年のユニット営業利益は非開示のため全社利益11.9億円を粗利構造から暫定配賦。
法人オフィス一括提案・内装設備
法人への家具販売、移転・レイアウト設計、施工、電気設備、ICT設備の一括受注。一般法人向け販売も含む。
| 数量オフィス一括提案案件相当数(年、会社開示の案件数から推定) | 価格案件相当数当たり売上(億円/件・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 300 | 0.36 | 109 | 4 |
| 10 年後 中立 | 390 | 0.49 | 189 | 10 |
取り方:2025年企業向け売上108.72億円を、同年度上半期169件の『オフィスまるごと』開示から通年約300件とするアナリスト推計で割った。2026年度上半期は236件へ39.6%増えている。全事業売上には通常の法人販売も混在するため、3624万円は一案件の実際の平均契約単価ではなく売上を説明する『案件当量』。利益4.4億円は非開示の暫定配賦。
文教ICT端末・周辺設備
自治体・学校へ学習用端末、保管庫、ネットワーク機器を調達・納入する。第2期GIGAスクール更新の影響が大きい。
| 数量学習端末納入台数相当(台/年) | 価格端末・周辺設備の販売額(億円/台・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 139,750 | 0.00 | 84 | 2 |
| 10 年後 中立 | 105,000 | 0.00 | 84 | 2 |
取り方:文教売上104.36億円から、別に推計した保守等20.51億円を引いた83.85億円を端末販売に帰属させる推計。MM総研の更新端末平均価格約5.5万円に周辺用品・設置関連約0.5万円を加え、6万円/台=0.0006億円で割った約14万台相当。学校家具・ネットワークの混在、会社と自治体の年度差があるため実際の出荷台数・公式シェアではない。営業利益は非開示配賦。
文教ICT設定・保守・ヘルプデスク(工数型)
学校端末の初期設定、問い合わせ対応、障害切り分け、導入後の運用支援。人の作業時間で請ける部分はAIエージェント代替の対象。
| 数量人手が必要な学校ICT支援端末年換算(端末年・実質作業量) | 価格端末年換算当たりの保守・作業売上(億円/端末年・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 368,500 | 0.00 | 21 | 1 |
| 10 年後 中立 | 238,000 | 0.00 | 16 | 1 |
取り方:会社の2025年ストック(保守等+EC)売上49.78億円から、重複するナビリオン29.27億円を引いた20.51億円を保守等とみなす。うち文教以外も含み得るため全部を人月型に分類するのは慎重な近似。東大和市公表の学校ICT支援委託3867.6万円/端末6949台=端末年約5566円を数量単価の外部アンカーとし、20.51億円÷5566円≒36.85万端末年と逆算。これは実端末保有台数や契約台数の会社開示ではない。営業利益は暫定配賦。AIエージェント代替:工数請負型として中立の10年数量を約0.65倍、価格約1.20倍、工数部分の10年後以降のgを名目0%とする。記録の正本を示す解約率・法令対応・独自データ等の証拠二つはない。
リスクと懸念
GIGAスクール端末の入札と需要の山谷
文教事業の売上は2025年に約104億円、2026年の第3四半期には一斉更新で前年同期を大きく上回った。端末は数年ごとにしか入れ替わらず、次回更新がずれれば売上が急減する。自治体財政、補助金、競合の落札価格に左右されるため、今の伸びを永続成長の根拠にすると10年後の利益を過大に見る。
大塚商会への取引・資本・システム依存
大塚商会は最大株主であり、2025年の売上約13%を占める相手でもある。ナビリオンのシステムと物流は大塚商会の「たのめーる」を基盤にする。取引条件や事業方針が変わると、販売収入と原価、通販の継続性に同時に影響する。少数株主への配当や利益相反の監督も継続して確認したい。
AI エージェント代替による受託工数の減少
文教端末の設定・運用・ヘルプデスクはSI受託やBPOに近い仕事を含む。AIエージェントが問い合わせの解決や設定手順を自律実行すると、実端末の台数が維持されても請求工数は減る。中立で人手支援量を現在の約65%とし、価格は物価ほど上げない。専用の規制基盤や解約率の数字は確認できず、強いソフトの堀として扱わない。
文具のデジタル化と家具の相見積もり
印刷、紙の保管、従来型OA用品はクラウド化で使用数量が細る。オフィス家具や個室ブースは残るが、コクヨ、オカムラ、イトーキ、内田洋行が競争相手となる。年間営業利益率が3%程度の事業では、材料費や物流費がわずかに先行するだけで利益が大きく削られる。数量と単価を別々に見直す必要がある。
低いROICと余剰現金の滞留
現在の純現金は安全性を高めるが、内部留保が増えるだけでは株主価値が増えるとは限らない。企業向け売上の増加にも先行する仕入れと売掛金が必要で、追加の資本の稼ぎが資本コストを超えるかはまだ確証がない。中期的な配当性向40%とDOE3%が実行されなければ、現金の価値にはさらに大きな割引が要る。
売掛金・季節在庫・リース負担と資産の床
官公庁の年度末需要に合わせて仕入れた端末が落札失敗で滞留すると、在庫評価損や運転資金不足が起こる。2026年に現預金は増えたが、前受金も変動している。倉庫や事務所の賃料は販売額が下がっても残る固定費である。床として数える純現金や換金可能資産は、契約上の負担を差し引いた額で見なければならない。
ストックオプションによる既存株主の希薄化
2025年に開示された潜在株式は約266万株で、2026年6月までに一部が権利行使された。現在の発行済株数には行使済みの株を含むため二重に差し引かないが、なお約91万株の追加発行余地があると推定する。評価では既存株主の持分を約97.4%に調整した。新たな権利付与があれば再計算が必要となる。
今後の分かれ目
- 企業の「オフィスまるごと」案件数が複数年にわたり二桁成長し、粗利益率も改善したら
- 企業向け案件相当数と単価に上方余地がある。単発の大型受注ではなく、利益率の定着を確認して楽観側の重みを増す。
- 第2期GIGA更新の発注が終わり文教売上が前年を大きく下回ったら
- 中立の端末数量を引き下げる。ただし5〜6年ごとの再更新なのか、競合への恒久的なシェア喪失なのかを分けて判断する。
- ナビリオンの稼働口座数が増えても売上総利益と営業キャッシュフローが伸びなかったら
- 販路のネットワーク効果を過大評価していたと判断し、販路の単価・利益率を下げ、余剰現金の戻り方も再点検する。
- 大塚商会との取引規模が急減し、共同通販・物流の条件が変更されたら
- 卸売と通販の両方に構造的な打撃が出る。やや悲観・悲観の確率を高め、代替物流投資と現金消費を織り込む。
- 端末の初期設定や問合せ業務でAIによる自動処理率と受託単価が開示されたら
- 文教保守の数量を工数ベースで更新する。自社開発の代替製品の金額付き受注が無い限り、AIによる売上増を先に期待しない。
- 配当性向40%・DOE3%を継続的に達成し、現金の積み上がりが抑えられたら
- 余剰現金の株主への戻り方を0.75から1.0へ見直す余地が生まれる。ただし増配が運転資金や設備更新を犠牲にしていないか確認する。
- 大幅な新株予約権行使や新しいストックオプション付与が発表されたら
- 最新の完全希薄化後株数で既存株主の持分係数を更新する。行使済みの株は現在の基準株数に含めて二重控除しない。
見ておくもの
- 販売店事業・エンタープライズ事業・文教事業の売上と全社営業利益率
- 「オフィスまるごと」の案件数、売上と粗利益率の変化
- ナビリオンの稼働口座数と売上、全社ストック売上(通販との重複に注意)
- 学校端末の更新年度、自治体入札の落札件数・予定台数と端末平均単価
- 文教の設定・保守における人手工数とAI自動化比率、ヘルプデスクの契約更新
- 大塚商会との売上・仕入比率、共同通販の契約条件と保有株数
- 純現金から季節的運転資金と前受金を除いた現金の推移、リース固定費
- 配当性向40%とDOE3%の実績、自社株買い、新株予約権の未行使株数
- 2026年9月期通期決算の確報と、2027年度以降の物価を除いた案件数量
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額約102億円や市場PERを先に倍率の基準にしていない。販売店口座、オフィス提案件数、学校端末台数、保守端末年の四つを実物の数量として推定し、物価3%を単価にだけ含めた。文教の設備と作業は公表内訳がないため、会社のストック売上と通販売上の差から分離した仮説である。各ユニットの営業利益も未開示につき推定配賦であり、これが価値推計の最大の数量誤差となる。
資本コスト7.75%、2036年後の名目成長2.5%、普通の堀に残る超過収益1/2から、楽観〜中立の正当化PERを求めた。会社に残る現金を事業ROEの分母と利益から外し、現金を戻り方0.75で別に評価する。中立の連結ROEは約6.4%だが、余剰現金を除いた事業ROEは約8.8%である。悲観側は低い稼ぐ力と現時点の換金可能資産を突き合わせ、過去のPBRの底を使っていない。
2025年9月期の損益を数量の基礎に、2026年6月末の資本と株数を最新の出発点にした。2027年4月以後の新リース基準で使用権資産・負債の表示が増えても、家賃を営業費用に含めた従来基準相当の利益で比較する。10年後の価値は株式の希薄化と現金の還元性を考慮したが、今の株価へ寄せる調整はしていない。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%+株式リスク4.5%を基礎に、値決め力の弱さと純現金の安全性の差引+0.25ポイントで7.75%とする。個別の大株主依存は確率に表し加算しない。