結論
石光商事は、コーヒー生豆の輸入と焙煎、食品・農産の卸売を営む創業120年の専門商社だ。売上は765億円、営業利益は27億円と、どちらも過去最高を更新した。コーヒー・茶類が売上の55%を占め、国内約5,000件弱の自家焙煎店にも商品を届ける。
筆者の結論は「適正」だ。ただし中身は割り引いて読むべきだ。営業利益率3.5%は、過去12年の最高水準である。コーヒー相場の高騰を、販売単価にうまく転嫁できたことが効いた。相場が落ち着けば、売上も利益も縮む。
一方で、会社は新しい焙煎工場(兵庫県小野市)と海外比率25%を掲げ、利益率の改善に動いている。株主還元も、配当性向30%以上と増配を打ち出した。
筆者は、10年の中立の営業利益を25億円前後、利益率は2.7%とみている。今の27億円から少し下がる。これは、山を平らにならした読みだ。純負債55億円は、新工場の投資で増える見込みで、財務は楽ではない。株主にとっては、山の利益に高い値を払わないことが肝心だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、商社は「在庫と売掛金が利益の源の事業」だ。株主が自由に使える利益は、見かけの純利益より慎重に見積もるべきである。生豆の相場が上がれば在庫の評価益が出るが、現金は在庫に張り付く。2026年3月期は棚卸資産が増えた。
堀は、小口の自家焙煎店との関係と、創業120年の信用にある。強いが、値決め力は小さく、相場に収益が揺さぶられる。10年後の利益を確信を持って言い切れる事業ではない。
資本配分は、新工場に45億円規模を投じる決断が焦点になる。補助金が3分の1付くとはいえ、利益率の高い製品が増えなければ、投資は借入を増やすだけに終わる。
安全域は、今の利益が山にあることを割り引いたうえで、ようやく適正な水準にある。厚い余裕はない。筆者は、相場が落ち着いた後の利益を基準に置いた。
何で稼ぐ会社か
事業は4つに分かれる。いちばん大きいのがコーヒー・茶類で、売上の55%、約420億円。ブラジル、コロンビア、エチオピアなど産地から生豆を輸入し、倉庫で保管して国内の焙煎業者に売る。自社で焙煎した製品(アライドコーヒーロースターズなど)も扱う。生豆と製品が、ほぼ半々の構成だ。
2つめが食品で、売上の29%、約219億円。加工食品、水産物、調理冷凍食品を外食やメーカーに卸す。仕入れは国内と輸入の両方で、品目が広い。
3つめが農産で、売上の約10%。中国産の玉ねぎ、たけのこ、れんこんなどを輸入する。調達先を中国からベトナムなどに分散する途中だ。
4つめが海外(輸出)で、売上の6.6%。海外への販売の割合を、現在の19.6%から2028年3月期に25%へ引き上げる計画だ。
利益の源は、輸入品の「仕入れ値と売り値の差」と、商品の保管・加工・小分けなど卸の機能料である。相場が上がる局面では、在庫の評価益で利益が膨らみやすい。逆に下がる局面では評価損が出る。2026年3月期の営業利益は前期比74%増、営業利益率は3.5%に達した。
優良さと弱いところ
強みは、自家焙煎店という細かい顧客網を持つことだ。国内に約5,000件弱の取引先があり、生豆の小口販売、焙煎の技術相談まで手がける。大手商社が手を出しにくい小口の需要を押さえている。創業120年のブランドと、仕入れ先との長い関係も実績として積み上がっている。
弱みは、商品の値段を自分で決められない点だ。生豆の相場は天候と投機で大きく振れる。値上がりを転嫁できるときは強いが、下がるときは在庫の評価損が出る。過去12年の営業利益率は、0%台から3.5%まで揺れた。
財務は、自己資本比率34%、純負債55億円。営業利益は支払利息の約13倍あり、返済に困るわけではない。ただし新工場の投資で借入は増え、金利が上がれば利息の負担も重くなる。
資本効率は改善中だ。ROEは過去10年の中央値で5%台、足元の9.4%は山の水準である。会社はROE10%以上、PBR1倍以上を中期計画で掲げる。達成には、利益率の維持が前提になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本のコーヒーの消費量は、年40万トン台の高い水準で横ばいだ。人口は減るが、コンビニコーヒーや在宅需要、自家焙煎店の増加で量は落ちていない。10年では、量はほぼ横ばい〜微減とみるのが自然だ。
価格は、産地の天候不順と為替で大きく動く。ここ数年は異常な高騰が続き、2026年3月期はその値上がりを売値に転嫁できた。ただ、需給が緩めば相場は下がる。生豆の価格が10年で元の水準へ戻れば、物価の1.34倍と相殺し、名目の単価はほぼ横ばいになる。
食品の卸は、人口減で国内の量が縮む。外食の人手不足も重なる。調理冷食や水産は付加価値の高い商品へ寄せる必要がある。農産は、中国産への依存と輸入規制が課題で、調達先の分散にコストがかかる。
競合は、大手商社系のコーヒー専門会社、UCCや味の素AGFなどのメーカー、産地に近い専門商社、さらに自家焙煎店を直接開拓する中小の輸入商社だ。小口の自家焙煎店向けは、きめ細かさが勝負になる。物流費と人件費の上昇も業界共通の重荷で、小口配送の多い同社は特に影響を受けやすい。サステナビリティ認証の豆への需要も増えており、調達の信頼性が差を生む。
資本政策と M&A
配当は、2026年3月期に前の期の1.5倍へ増やし、配当性向は30%台だった。2027年3月期は連結配当性向30%以上を目安に、中間配当を新設して年2回にする。期末には創業120周年の記念配当が含まれる。自社株買いの実績は見当たらない。
株主優待は、自社取扱商品の詰め合わせで、300株以上が対象。年間の費用は1億円に届かない小額とみられ、還元の評価には足していない。
投資は、兵庫県小野市の新工場が最大だ。2026年12月末の完成予定で、補助金は対象経費の3分の1、約15億円とされる。総投資は45億円規模とみられ、純負債は増える。2027年3月期から減価償却が負担になる。
グループ会社が持つ不動産の売却益を2027年3月期に特別利益に入れる予定で、純利益の予想が大きく増える一因になる。これは一過性で、中立の利益には入れない。10年の還元は、利益の増減に連動させ、中立で45億円とした。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026年3月期の営業利益率3.5%は、一時的な山ではなく、新しい水準になりうる。高利益率の商品が全体の13%に育ち、社会課題解決型の商品を20%へ広げる計画が、中身を変えている。海外売上も20%から25%へ上がれば、国内の人口減を補える。
新工場が稼働すれば、焙煎製品の自社比率が上がり、卸の薄利から製造の利益へ重心が移る。補助金で投資の負担も軽くなっている。小口の自家焙煎店という顧客基盤は、大手が真似しにくい。
株主還元は、配当性向30%以上と増配を明示した。ROE10%、PBR1倍以上を中期計画に掲げた会社が、結果を出す意思を示している。
2028年3月期の営業利益30億円、純利益17億円という計画は、2026年3月期の実績に近い。現実的な目標で、達成できなくても大きく外れない。
さらに、コーヒー相場が高止まりすれば、価格転嫁の力を持つ会社に有利に働く。小口の自家焙煎店は相場に敏感で、情報と調達の相談に乗れる専門商社の価値が上がる。大手は小口を取りこぼすため、この層を押さえた会社は価格を維持しやすい。
慎重な見方
利益率3.5%は、過去12年で最も高い水準だ。コーヒー相場の高騰で、在庫の評価益と転嫁益が出た側面が強い。相場が落ち着けば、売上も利益も縮む。2027年3月期の営業利益は、会社自身が前期比で減益と見ている。
純利益が増えるのは、不動産の売却益という一過性の要因だ。事業の稼ぎそのものは伸びていない。新工場は45億円規模の投資で、減価償却の負担が2027年3月期から始まる。
農産は中国依存の規制リスクが高く、オランダの輸入規制で既存の取引が止まった例もある。中東情勢の長期化で、物流費も上がる。食品は国内の人口減で量が縮む。
純負債は55億円で、新工場でさらに増える。自己資本比率は34%と高くない。相場が反転すれば、在庫の評価損と借入の利息が同時に重なる。
商社の利益は、10年を通せば平均に戻る。足元の山を永続させる前提は危ういと考える。しかも、ROE10%の目標はPBR1倍以上とセットで、株価が上がって初めて意味を持つ。目標を掲げた会社が必ず達成するとは限らず、これまでの実績では達成した例が乏しい。
どちらに重みを置いたか
会社の取り組みと顧客基盤の評価では、強気の見方に分がある。ただ、利益率が山にあり、相場次第で簡単に崩れる事実は、慎重な見方の指摘が重い。10年の中立は、営業利益を今よりやや低い25億円前後に置いた。確率は、やや悲観を26%と厚めにし、山からの平均回帰を織り込んだ。悲観は10%にとどめ、120年続く事業の底堅さを残した。中立の倍率は資本コストの逆数の7割台とし、堀の強さは中程度と見た。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,348 円183 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 534 円42 億円)。 今の値に割り戻すと 1,481 円115 億円、今との差 +13.2%、 期待の年率 +8.2%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,347 円339 億円 | 706 円55 億円 | +286.3% | +14.5% | 404 円31 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,495 円272 億円 | 642 円50 億円 | +216.3% | +12.2% | 745 円58 億円 |
| 中立 | 38% | 2,716 円212 億円 | 578 円45 億円 | +151.8% | +9.7% | 1,252 円98 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,107 円86 億円 | 449 円35 億円 | +19.0% | +1.8% | 405 円32 億円 |
| 悲観 | 10% | 513 円40 億円 | 257 円20 億円 | −41.1% | −5.2% | 77 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,348 円183 億円 | 534 円42 億円 | +120.4% | +8.2% | 2,882 円225 億円 |
今の株価時価総額 1,308 円102 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 高付加価値と海外で、利益率が新しい水準へ 利益 22 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 4,347 円339 億円
新工場が稼働し、焙煎製品の自社比率と高利益率商品の割合が上がる。コーヒーの量は1割増え、利益率は3.5%に届く。食品・農産は調達先の分散が進み、安定する。海外は売上が3倍に近づき、比率は30%を超える。会社の2028年3月期の計画(営業利益30億円)をその後も維持・拡大し、営業利益は39億円まで伸びる。相場が下がっても転嫁と製品構成で利益率を保つ。配当は増配が続き、10年で55億円。ROEは15%台に届く。この筋書きでは、新工場の投資が借入ではなく利益で賄われ、純負債も減る。海外の取引先との関係も深まり、輸入規制のリスクを分散できる。
- コーヒー・茶類:数量 24.2(取扱量(千t・生豆換算の推定))× 価格 24(1千tあたり売上(億円・名目。生豆相場を含む))→ 売上 578 億円・営業利益 20 億円。取扱量1.1倍、単価1.25倍、営業利益率3.5%
- 食品(加工食品・水産・調理冷食):数量 31.3(取扱量(千t・推定))× 価格 9.66(1千tあたり売上(億円・名目))→ 売上 302 億円・営業利益 10 億円。量1.0倍、営業利益率3.3%
- 農産(中国産の玉ねぎ・たけのこ・れんこん等):数量 30.6(取扱量(千t・推定))× 価格 3.35(1千tあたり売上(億円・名目))→ 売上 103 億円・営業利益 3 億円。量1.0倍、営業利益率2.8%
- 海外(輸出):数量 17.6(輸出量(千t・推定))× 価格 8.71(1千tあたり売上(億円・名目))→ 売上 153 億円・営業利益 6 億円。輸出2.2倍、営業利益率4.0%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍。全体の PER 13.94 倍、時価総額 308 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新工場が稼働し、焙煎製品と海外で利益率が上がる連続成功が要る。利益率が山にある今、確率は低く置いた。
やや楽観 18% 山をほぼ維持し、海外と製品で上積み 利益 18 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 3,495 円272 億円
コーヒーの量は5%増え、生豆の相場は一部戻るが、焙煎製品の比率上昇で利益率は3.2%を保つ。食品は量が微減でも単価で補い、利益率は3.1%。農産は調達の分散で落ち着く。海外は1.8倍に伸び、比率は25%を超える。営業利益は31億円で、中計の30億円をわずかに上回る。新工場の減価償却は重いが、製品の利益で吸収する。配当は10年で50億円。ROEは10%台を回復する。この筋書きでは、相場の戻りが売上を押し下げるが、製品構成の改善が利益を守る。新工場も計画どおり立ち上がり、投資の回収が見えてくる。ただし、利益率は山の高さには戻らず、ROEの改善も緩やかにとどまる。
- コーヒー・茶類:数量 23.1(取扱量(千t・生豆換算の推定))× 価格 22(1千tあたり売上(億円・名目。生豆相場を含む))→ 売上 507 億円・営業利益 16 億円。取扱量1.05倍、単価1.15倍、営業利益率3.2%
- 食品(加工食品・水産・調理冷食):数量 31.0(取扱量(千t・推定))× 価格 9.38(1千tあたり売上(億円・名目))→ 売上 290 億円・営業利益 9 億円。量0.99倍、営業利益率3.1%
- 農産(中国産の玉ねぎ・たけのこ・れんこん等):数量 29.7(取扱量(千t・推定))× 価格 3.30(1千tあたり売上(億円・名目))→ 売上 98 億円・営業利益 3 億円。量0.97倍、営業利益率2.5%
- 海外(輸出):数量 14.4(輸出量(千t・推定))× 価格 8.58(1千tあたり売上(億円・名目))→ 売上 124 億円・営業利益 4 億円。輸出1.8倍、営業利益率3.6%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍。全体の PER 13.45 倍、時価総額 235 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:高付加価値化と海外の伸びで、足元の利益率の大半を維持する筋書き。中計の目標に近く、一定の確率を置いた。
中立 38% 相場は平常に戻り、利益率は2.7% 利益 13 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,716 円212 億円
コーヒーの量は横ばいで、生豆の相場は10年で平常へ戻る。名目の単価は物価の上昇と相殺し、1.05倍にとどまる。利益率は2.7%で、今の3.5%から下がる。食品は量が微減、単価は物価並みで3%近い利益率を保つ。農産は調達先の分散に費用がかかる。海外は1.5倍に増える。営業利益は25億円前後と、今の27億円から少し下がる。新工場の減価償却は新しい値段で加わり、既存設備の償却は物価で増やさない。更新投資は償却より多い分が現金から出る。純負債は借入で賄い、利息が増える。純利益は約13億円。配当は10年で45億円。
- コーヒー・茶類:数量 22.0(取扱量(千t・生豆換算の推定))× 価格 20(1千tあたり売上(億円・名目。生豆相場を含む))→ 売上 441 億円・営業利益 12 億円。取扱量1.0倍、単価1.05倍、営業利益率2.7%
- 食品(加工食品・水産・調理冷食):数量 30.3(取扱量(千t・推定))× 価格 9.38(1千tあたり売上(億円・名目))→ 売上 285 億円・営業利益 8 億円。量0.97倍、営業利益率2.8%
- 農産(中国産の玉ねぎ・たけのこ・れんこん等):数量 29.1(取扱量(千t・推定))× 価格 3.25(1千tあたり売上(億円・名目))→ 売上 95 億円・営業利益 2 億円。量0.95倍、営業利益率2.2%
- 海外(輸出):数量 12.0(輸出量(千t・推定))× 価格 8.46(1千tあたり売上(億円・名目))→ 売上 102 億円・営業利益 3 億円。輸出1.5倍、営業利益率3.3%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 170 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:生豆の相場が落ち着き、高利益率の商品で一部を補う筋書きが最も自然。会社の2027年3月期予想の営業利益24億円とも近い。
やや悲観 26% 相場の反転と新工場の重荷 利益 7 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,107 円86 億円
生豆の相場が大きく下がり、名目の単価は5%減る。在庫の評価損が出て、利益率は2%まで下がる。新工場の稼働が遅れ、減価償却と利息が重くなる。食品は国内の量が縮み、農産は規制で量が15%減る。海外は伸びても利益率が低い。営業利益は15億円まで落ちる。純負債は新工場の投資で増え、金利の上昇で利息が重くなる。配当は性向30%を下回らない範囲で下げ、10年で35億円。生豆の評価損は在庫の回転で徐々に消えるが、現金は在庫に張り付き、財務の余裕が薄くなる。金融機関との関係は保たれるが、投資の余力は乏しく、海外展開の速度も落ちる。
- コーヒー・茶類:数量 20.9(取扱量(千t・生豆換算の推定))× 価格 18(1千tあたり売上(億円・名目。生豆相場を含む))→ 売上 379 億円・営業利益 8 億円。取扱量0.95倍、単価0.95倍、営業利益率2.0%
- 食品(加工食品・水産・調理冷食):数量 29.1(取扱量(千t・推定))× 価格 9.10(1千tあたり売上(億円・名目))→ 売上 265 億円・営業利益 5 億円。量0.93倍、営業利益率2.0%
- 農産(中国産の玉ねぎ・たけのこ・れんこん等):数量 26.0(取扱量(千t・推定))× 価格 3.13(1千tあたり売上(億円・名目))→ 売上 81 億円・営業利益 1 億円。量0.85倍、営業利益率1.5%
- 海外(輸出):数量 9.6(輸出量(千t・推定))× 価格 8.20(1千tあたり売上(億円・名目))→ 売上 79 億円・営業利益 2 億円。輸出1.2倍、営業利益率2.5%
倍率:事業のROEは約3%でk以下、正当化PERの上限は1÷k=12.1倍。稼ぎが細り、堀の持ちを低く見て、上限の約6.2割の7.5倍に置いた。
確率:高騰したコーヒー相場は、天候や需給の緩みで反転しうる。利益率が山にある今、平均回帰の筋書きは厚めに置いた。
悲観 10% 相場の急落と調達先の喪失 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 513 円40 億円
相場の急落で大きな評価損が出て、価格転嫁の力も失われる。農産は中国の輸入規制で量が4割減り、食品も量が縮む。新工場の稼働が遅れ、減価償却と借入の利息が営業利益を食う。営業利益は5億円まで下がり、純利益は1億円前後。配当は大きく削る。事業は残るが、卸の薄利に戻る。コーヒーの需要自体は変わらないため、売上が消えるわけではない。ただ、新工場の償却が重くのしかかり、投資が裏目に出た形になる。自己資本は評価損と減損で目減りし、配当は据え置きも難しくなる。取引先の中には、価格交渉力の落ちた同社から離れる先も出てくる。株主の価値は、在庫・売掛金・工場の売却価値が下支えする水準になる。
- コーヒー・茶類:数量 18.7(取扱量(千t・生豆換算の推定))× 価格 15(1千tあたり売上(億円・名目。生豆相場を含む))→ 売上 286 億円・営業利益 3 億円。取扱量0.85倍、単価0.8倍、営業利益率1.0%
- 食品(加工食品・水産・調理冷食):数量 26.6(取扱量(千t・推定))× 価格 8.40(1千tあたり売上(億円・名目))→ 売上 223 億円・営業利益 2 億円。量0.85倍、営業利益率1.0%
- 農産(中国産の玉ねぎ・たけのこ・れんこん等):数量 18.4(取扱量(千t・推定))× 価格 3.00(1千tあたり売上(億円・名目))→ 売上 55 億円・営業利益 0 億円。量0.6倍、赤字
- 海外(輸出):数量 6.4(輸出量(千t・推定))× 価格 7.57(1千tあたり売上(億円・名目))→ 売上 49 億円・営業利益 1 億円。輸出0.8倍、営業利益率1.0%
倍率:利益が1億円に満たない年で、今の自己資本135億円に0.30倍。稼ぐ力ではなく、在庫・売掛金・工場の売却価値の税後が床になる。市場の値付けからは置いていない。EV÷営業利益で見ると22倍と重いが、これは利益が落ちた年の見かけで、床は資産で測る。
確率:コーヒー相場の急落と在庫損、農産の輸入規制、新工場の稼働失敗が重なる複合の筋書き。構造的に負ける形で、一定の確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コーヒー・茶類
生豆の輸入と、焙煎・加工した製品の販売。国内の自家焙煎店・業務用・小売に向ける。売上のほぼ半分を占める柱。
| 数量取扱量(千t・生豆換算の推定) | 価格1千tあたり売上(億円・名目。生豆相場を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 22.0 | 19 | 420 | 15 |
| 10 年後 中立 | 22.0 | 20 | 441 | 12 |
取り方:2026/03期の売上765億円のうち、コーヒー・茶類は54.9%の約420億円(決算説明)。生豆と焙煎製品がほぼ半々。取扱量は開示が無く、売上を平均単価(1kgあたり二千円弱と推定)で割った推定。生豆の相場は今が歴史的な高値圏で、10年で平常に戻る前提で名目単価は物価の1.34倍と相殺して中立1.05倍とした。セグメント利益も開示が粗く、全体の営業利益率3.5%を配分した推定。
食品(加工食品・水産・調理冷食)
輸入・国内の加工食品、水産物、調理冷凍食品の卸売。外食・中食・メーカー向け。
| 数量取扱量(千t・推定) | 価格1千tあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 31.3 | 7.00 | 219 | 7 |
| 10 年後 中立 | 30.3 | 9.38 | 285 | 8 |
取り方:売上構成の28.6%、約219億円。取扱量は平均単価(1kgあたり七百円と推定)で割った推定。利益は営業利益率の配分による推定。
農産(中国産の玉ねぎ・たけのこ・れんこん等)
中国などから野菜を輸入し、加工・業務用に卸す。調達先を中国からベトナムなどへ分散中。
| 数量取扱量(千t・推定) | 価格1千tあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.6 | 2.50 | 77 | 2 |
| 10 年後 中立 | 29.1 | 3.25 | 95 | 2 |
取り方:売上構成の約10%、約76億円。平均単価(1kgあたり二百五十円と推定)で割った取扱量の推定。
海外(輸出)
日本で焙煎・加工した製品や食品の輸出。海外売上比率は19.6%(2026/03期)で、2028/03期に25%を掲げる。
| 数量輸出量(千t・推定) | 価格1千tあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 6.31 | 51 | 2 |
| 10 年後 中立 | 12.0 | 8.46 | 102 | 3 |
取り方:売上構成の6.6%、約50億円。輸出量は平均単価で割った推定。海外売上比率19.6%はグループの海外売上全体で、この区分より広い。
リスクと懸念
コーヒー相場の反転
生豆の相場が下がると、売上が縮み、在庫の評価損が出る。2026年3月期の利益は、高騰の転嫁益が混じった山の水準で、相場が落ち着けば利益率は2%台に戻りうる。
新工場の投資負担
小野新工場は総投資45億円規模で、補助金は3分の1。完成は2026年12月末で、2027年3月期から減価償却が始まる。稼働率が上がらなければ、利益を圧迫する。
中国産農産の調達と規制
農産は中国依存が高く、輸入規制や関税の動きで取引が止まる。ベトナムなどへの分散にコストがかかる。
為替と金利
輸入品の仕入れは円安で原価が上がる。借入は新工場で増え、借り換えで金利が3.5%前後になれば、利息の負担が重くなる。
食品の量の縮み
国内の人口減と外食の人手不足で、食品卸の量が細る。調理冷食や水産で付加価値を上げられなければ、薄利が続く。
AIエージェント代替は小さい
売り物は商品と在庫で、人の時間を売る事業ではない。受発注の事務はAIで効率化できるが、利益の源ではない。
一過性の利益を実力と見誤る
2027年3月期の純利益予想は、不動産の売却益で大きく膨らむ。これは一度きりで、事業の稼ぎではない。
今後の分かれ目
- コーヒー相場が下落しても営業利益率が3%を保つ
- 価格転嫁と製品構成の改善が本物。中立の上側、やや楽観の確率を上げる。
- 2027年3月期の営業利益が24億円を割り込む
- 山からの平均回帰が早まっている。やや悲観の確率を上げる。
- 小野新工場の稼働率が上がり、焙煎製品の利益率が改善する
- 卸から製造への重心移動が成功。投資の回収が見えたとして評価を上げる。
- 中国産農産の輸入規制が強まる
- 農産の利益が消える。ベトナムなどの代替調達の進み具合を確かめ、悲観に寄せる。
- 海外売上比率が25%に近づき、利益率も維持される
- 国内の縮みを補う道筋が見える。楽観寄りの筋書きを強める。
- 純負債が80億円を超え、金利が上がる
- 利息の負担が利益を削る。財務の脆さを重く見て、悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 営業利益率(2027年3月期予想は2.7%で、前期の3.5%から低下)
- コーヒー相場と為替
- 小野新工場の稼働と減価償却
- 純負債と自己資本比率
- 海外売上比率とROE
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(資本コスト7.75%、ROEがk以下なので上限は1÷k=12.1倍)から置き、中立は上限の約7.4割。今の株価や過去のPERには寄せていない。足元の営業利益率3.5%は過去12年の山として、中立の利益率は2.7%に下げた(会社の2027年3月期予想と同水準)。不動産売却益は一過性なので利益に入れていない。コーヒー相場が10年で平常に戻る前提で、生豆の名目単価は物価1.34倍と相殺して1.05倍に置いた。数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→13.94 倍・やや楽観 PER 9.8→13.45 倍・中立 PER 9→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。