結論
DCMホールディングスは、全国に900店超を持つ国内最大級のホームセンターである。DIY用品、日用品、園芸、リフォームまで暮らしの手回り品を一か所で売る。
筆者の結論は、今の値段はやや割高というものだ。理由は単純で、稼ぐ力が資本コストに届いていない。自己資本利益率(ROE)は6%前後、借金は自己資本の半分ある。中立の10年でも、この水準から大きくは上がらない。
店の数は着実に増えている。2023年にケーヨー、2025年にエンチョーとホームテックを傘下に入れ、売上は5,000億円台で踏み固まった。会社は2029年2月期に売上6,500億円・営業利益423億円を掲げる。ただし目標には、まだ決まっていない買収が入っている。
筆者が見るのは、足元の利益の質だ。2026年2月期は既存店の売上が4%減り、営業利益も減った。防災用品の反動という説明はつくが、ホームセンターの市場そのものが伸びにくいのは事実だ。
人口が減り、住宅の新築も細る。成長は店を買い足すか、PB(自社企画商品)とリフォームで客単価を上げるかのどちらかになる。どちらも投資が先に出る。
一方で、悪い会社ではない。PB比率は28.8%まで上がり、配当性向は40%に引き上げられた。総還元性向70%を目標に掲げ、株主を見る姿勢は明確だ。
中立では10年後の純利益が230億円前後に増える。それでも還元を足して資本コストで割り戻すと、今の時価総額に届かない。強い堀(他社が簡単にまねできない強み)を持たない小売業が、重い借金を抱えて成長を買う構図だからだ。
慎重な側の確率を厚めに置き、総合では本質価値が今より2割ほど低いと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべきは三つだ。堀の深さ、資本の使い方、そして安全域である。
堀は浅い。店は多いが、店に行く理由は便利さと品ぞろえであり、他社も同じものを売る。ブランド力で値段を決められる会社ではない。だから物価が上がっても利益率が上がらず、人件費の上昇は粗利を削る。
資本の使い方は評価できる面と、そうでない面がある。評価できるのは、配当性向を40%に引き上げ、総還元性向70%を掲げた点だ。ためた利益を無駄に抱え込まない姿勢は筋が通る。そうでないのは、買収に使う分だ。自己資本利益率は資本コストを下回り続けている。株主が出したお金に対して、資本コスト分すら稼げていない。
オーナーなら、この会社に長く資金を預けたいかを問う。答えは慎重になる。住宅需要と人口が細る国内市場で、借金を使って店を買い足す構図は、稼ぐ力を上げずに規模だけを増やしやすい。
安全域はどうか。純有利子負債は時価総額の7割を超える。借金の重い会社は、悪い年に利益が大きく削られる。割り引きなしに買える会社ではない。
ただし悪い会社でもない。現金を生む力は安定し、増配も続けている。払う値段が十分に低ければ、買ってもよい会社だ。今はその値段ではない、というのが筆者の見立てである。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、店に来る客が日々買う量だ。工具・資材・園芸・家庭用品・ペット用品・インテリアを幅広くそろえ、大きな駐車場のある郊外の大型店に客を集める。客は近隣の人が中心で、繰り返し通う。
店は全国の主要ブランドに分かれる。中核の「DCM」が約650店、東北・関東の「ホダカ」、小型の「ニコット」、2023年に完全子会社にしたケーヨー、2025年に加わったエンチョー(静岡)が続く。2026年2月期末の合計は900店を超えた。
利益を左右するのは三つだ。一つはPB。自社で企画した商品は仕入れ値が低く、粗利が厚い。PB売上の構成比は直営店で28.8%(2025年度)まで上がり、中計は粗利率を35.9%まで高める。二つ目は共同仕入れ。カーマ・ダイキ・ホーマックが2003年に提携して以来、仕入れをまとめて価格交渉力を磨いてきた。三つ目はリフォームだ。工事を伴う売上は客単価が大きい。2025年にリフォーム会社ホームテックを買収し、柱に育てようとしている。
もう一つ大事なのが、ネットで注文して店で受け取る仕組み(BOPIS)である。中計では対象770店で受け取り比率48%を目指す。店の在庫を使うので、ネット通販に客を取られにくくなる。
コストは固定費の塊だ。人件費と家賃(賃借の店が多い)は売上が落ちても同じだけかかる。だから売上が1割落ちると利益は半分近く減る。営業利益率が5〜6%台で推移してきた理由もここにある。
グループ全体では、ホームセンターとリフォームの店舗網が事業のすべてだ。セグメントを細かく分けるより、店の数と1店あたりの売上で見るほうが事業の実態に合う。
優良さと弱いところ
優良さは「中の上」にとどまる。規模はあるが、堀は深くない。
強みは三つある。第一に、店舗網の厚さだ。900店超という数は、仕入れ・物流・システムを共通にするうえで効く。第二に、共同仕入れとPBの経験が長い。第三に、買収した会社をそろえて同じ仕組みに乗せる実績がある。ケーヨーもエンチョーも、赤字や低収益の会社を取り込んでいる。
弱みも三つある。第一に、利益率が低い。営業利益率は直近で5.7%、10年で最も良かった年でも6.9%にとどまる。ニトリのように自社で作って自社で売る強さはない。
第二に、値段を自分で決めきれない。ホームセンターは近隣のカインズ、コーナン、コメリ、ドラッグストア、ネット通販と同じ商品を比べられる。物価が上がっても、売値を転嫁できるかは競争次第だ。
第三に、資本効率が低い。自己資本利益率は10年の中央値で6.7%、足元は5.8%だ。資本コストを下回っているので、利益をためても価値は増えにくい。店を増やすための投資が、思ったほど利益に結びついていない。
経営は資本配分を意識している。配当性向を40%に上げ、自己株式を5%程度で保ち、超える分は消却する。ただし買収のための借金で、利益のうち利払いに回る分が増えていく。借金は純有利子負債が約1,600億円、純負債のEBITDA倍率は3倍強だ。営業利益で利払いを10倍ほどまかなえるため危うくはないが、金利の上昇には弱い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ホームセンターの市場は、日本DIY・ホームセンター協会の推計で4兆円ほどだ。成熟市場で、数量は国内の人口と住宅の動きに縛られる。
人口は年0.5%ずつ減る。新築住宅も細る。だから実質の数量は、どう頑張っても横ばいか緩やかな減少になる。一方で、住宅の老朽化やリフォーム需要は底堅い。DIYをする層は高齢化するが、ペット用品や園芸、日用消耗品は人口が減っても落ちにくい。
上位の競争は寡占化の途上にある。カインズ(非上場)が営業収益5,700億円規模、DCMとコーナンが5,000億円台、コメリが3,800億円、ニトリやドラッグストアが隣接分野を取りに来る。上位が店を増やし、中小は共同購買や統合で生き残る形だ。
物価高はホームセンターにとって両面がある。商品価格が上がると売上は名目で伸びるが、客は買い控え、PBや安い店へ流れる。人件費は毎年3〜5%上がり、店の運営費を押し上げる。賃上げを吸収するのは、セルフレジなどの自動化と、売場面積あたりの売上を高める改装だ。
ネット通販は正面の脅威ではないが、重い・大きい資材や工具は店で買う人がまだ多い。DCMは店受け取りで対抗し、通販に食われる分を抑えようとしている。
筆者が重く見るのは、ホームセンターの数量が増えないまま、店の数だけが増える構図だ。市場が伸びない中で規模を拡大すると、買収の利益は仕入れと間接費の削減に頼る。ここに限界がある。
経済産業省によれば、物販のEC化率は10%弱で、まだ低い。ただし伸び続けている。
資本政策と M&A
資本政策は、株主を見る方向に動いている。2027年2月期から配当性向の目安を35%から40%に引き上げた。増配は11期連続になる見込みだ。総還元性向70%を目指し、自己株式は発行済株式の5%程度を持ち、超える分は消却する。
3年間(2026〜2028年度)で営業キャッシュフロー約1,200億円を生み、投資と還元に約1,500億円を回す計画だ。つまり利益のほとんどを使い切る。借金が減る速度は遅い。
買収は同社の成長手段そのものだ。2023年にケーヨーを公開買付けで完全子会社にし、2025年にはエンチョーを株式交換で取り込んだ。エンチョーは自己株式を使ったので、新しい株を出していない。中計の目標には、売上1,300億円規模の買収がまだ織り込まれている。
筆者が気にするのは、この買収の値段だ。赤字の会社を取り込むなら安く買えるが、改装と統合に投資が要る。計画どおりでも自己資本利益率は8%(2029年2月期)で、資本コストと同じ水準にとどまる。
他社に買われる側になる可能性も、無視はできない。業界は統合が続き、時価総額に比べて純有利子負債が重いからだ。ただし今の時点では、グループが買い手の側に立っている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
計画どおりに進めば、会社の稼ぐ力は目に見えて上がる。第4次中計は、2029年2月期に売上6,500億円・営業利益423億円・純利益265億円を目指す。ケーヨーとエンチョーの改装、PB比率の上昇、リフォームの伸びが三本柱になる。
改装の効果はすでに数字に出ている。改装した店の営業利益は前の年の1.25倍に伸びた。旧ケーヨーの90店は2030年度までに改装される。この余地は大きく、新店を作らなくても利益が増える。
PBも伸びる。構成比は29.9%まで上がっており、目標の34〜40%に向かって粗利率を押し上げる。粗利が1ポイント上がれば営業利益は100億円以上増える。
リフォームは客単価が高く、住宅の老朽化が追い風になる。ホームテックの買収で、工事の受注と店の送客を一体で動かせる。
資本政策も株主寄りだ。配当性向を40%に引き上げ、総還元性向70%を目標にする。利益が増えれば、還元は純粋に増える。
さらに、業界は統合が進む。DCMは買収の経験が豊富で、仕入れの共通化・物流の統合で収益を引き上げる力がある。上位の寡占化が進めば、利益率は今より上がる。
慎重な見方
国内のホームセンター市場は、人口が減り、新築住宅が細る中で数量が伸びない。DCMの既存店売上は2026年2月期に4.2%減り、2027年2月期の中間でも1.0%減った。防災用品の反動、梅雨明けの遅れと説明されるが、業界全体の需要が細っているのも事実だ。
店は増えても、売上は買収の積み上げでしかない。中計の6,500億円は、まだ決まっていない買収を織り込んでいる。買収がなければ、売上は5,700億円前後で止まる。
営業利益率は10年間、5〜7%の狭い範囲にとどまってきた。目標の6.5%は、過去で最も良かった水準に近い。人件費が毎年3〜5%上がる中で、それを売値に転嫁できる保証はない。
資本効率も弱い。自己資本利益率は10年の中央値で6.7%、直近は5.8%だ。資本コストを下回っているのだから、利益を投資や買収に回しても価値は増えにくい。
借金も重い。純有利子負債は約1,600億円で、金利が上がれば利払いは10年で約40億円増える。利益の2割に当たる額だ。リースの約束も加わると、悪い年に固定費が重くのしかかる。
競合は強い。カインズは非上場で規模が同じ、ニトリは自社企画で粗利が高く、ドラッグストアは日用品を取りに来る。値段を決める力が弱い会社が、この全部と戦う構図だ。
どちらに重みを置いたか
強気の材料は実在する。改装の効果もPBの伸びも、すでに数字に出ている。ただし、それが自己資本利益率を資本コスト以上に押し上げるところまで届くかが焦点だ。
中立でも、純利益は230億円前後に増えるが、自己資本もためた利益で膨らむため、ROEは6%前後にとどまる。資本コストを下回る会社の倍率は上がらない。
そのため確率は慎重な側に寄せた。楽観は6%と薄く、やや悲観と悲観を合わせて4割とした。構造的に負ける筋書き(悲観)にも、無視できない確率を置いた。借金と固定費が重く、悪い年に利益が大きく削られるからだ。
総合では、本質価値は今の時価総額を2割ほど下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,991 円2,720 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 796 円1,087 億円)。 今の値に割り戻すと 1,520 円2,077 億円、今との差 −4.5%、 期待の年率 +5.8%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,552 円4,854 億円 | 1,435 円1,960 億円 | +213.2% | +12.1% | 299 円409 億円 |
| やや楽観 | 17% | 2,893 円3,953 億円 | 1,039 円1,420 億円 | +147.0% | +9.5% | 669 円913 億円 |
| 中立 | 37% | 2,474 円3,380 億円 | 864 円1,180 億円 | +109.6% | +7.7% | 1,235 円1,687 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,058 円1,445 億円 | 684 円935 億円 | +9.4% | +0.9% | 470 円643 億円 |
| 悲観 | 13% | 655 円895 億円 | 220 円300 億円 | −45.1% | −5.8% | 114 円155 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,991 円2,720 億円 | 796 円1,087 億円 | +75.0% | +5.8% | 2,787 円3,807 億円 |
今の株価時価総額 1,592 円2,175 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 改装とPBが利益率を押し上げ、買収も成功する 利益 319 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 3,552 円4,854 億円
改装とPBの効果が積み上がる10年になる。旧ケーヨー90店を含む改装が進み、改装店の利益が1.25倍に伸びる実績が全店に広がる。PBの構成比は40%に向かい、粗利率が2ポイント近く上がる。
リフォームはホームテックと店の送客が噛み合い、客単価の高い売上が柱に育つ。買収は仕入れと物流の統合で収益を引き上げ、店舗数は1,000店近くまで増える。
営業利益率は7%に届き、過去最高の水準を超える。ただし人件費の上昇は避けられず、利益率の上振れは限られる。金利上昇は純利益を30億円ほど削る。
利益が増えるため、還元も厚くなり、総還元性向70%の目標を実現する。ROEは8%を超え、資本コストをわずかに上回る。株主が出したお金に対して、資本コスト以上を稼げる状態になる。
- ホームセンター事業(店舗網):数量 990(店舗数(店))× 価格 8.31(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 8,228 億円・営業利益 576 億円。営業利益率7.0%
倍率:事業の純利益 319 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.15 倍、時価総額 4,514 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改装・PB・リフォーム・買収のすべてが計画を上回る必要がある。会社の利益率は10年で最大でも6.9%にとどまり、上の筋書きの確度は低い。
やや楽観 17% 中計の目標にほぼ届き、利益率が6%台に定着する 利益 271 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,893 円3,953 億円
中計の方向にほぼ沿って進む。改装とPBで利益率は6%台に乗り、2029年2月期の営業利益は計画に近い水準になる。
店舗数は960店前後に増える。新店よりも、既存店の改装と小さな買収が中心だ。人口は減るが、店の客数は改装で守る。
リフォームも育つが、会社の想定ほどは伸びず、中計の目標にはやや届かない。物価は10年で1.34倍に上がり、売値にも転嫁できる。人件費の上昇は、自動化で相殺する。
配当性向40%と自己株式の取得で、還元は純利益の6割近くになる。ROEは7%を切るが、資本コストには近づく。借金は返済が進み、金利上昇の影響も薄まる。
- ホームセンター事業(店舗網):数量 960(店舗数(店))× 価格 8.07(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 7,751 億円・営業利益 496 億円。営業利益率6.4%
倍率:事業の純利益 271 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 3,612 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改装の効果は実際に出ており、中計の方向は理にかなう。ただし目標の一部は未定の買収に頼るため、中立より薄く置いた。
中立 37% 店は増えても利益率は5%台のまま、還元で資本を保つ 利益 228 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,474 円3,380 億円
店の数は緩やかに増え、売上は10年で3割強伸びる。ただしその大半は物価によるもので、客数は人口減で横ばいから微減になる。
営業利益率は5%台後半にとどまる。PBと改装で粗利は上がるが、人件費の上昇と新店の償却がそれを打ち消す。改装の効果は一部の店にとどまる。
買収は小規模で、値段に見合う利益を出す。会社の目標である売上6,500億円・営業利益423億円には、数年遅れて近づく。
金利は上がり、借り換えのたびに利払いが増える。10年で税引き前の利益を40億円ほど削る。純利益は230億円前後に増えるが、還元で自己資本の膨らみは抑えられ、ROEは6%前後にとどまる。資本コストを下回る状態は変わらない。
- ホームセンター事業(店舗網):数量 940(店舗数(店))× 価格 7.92(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 7,440 億円・営業利益 432 億円。営業利益率5.8%
倍率:事業の純利益 228 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 3,039 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:既存店が人口減を価格上昇で埋める、中心の筋書き。強い堀がなく、強気にも弱気にも振れすぎない。
やや悲観 27% 既存店が細り、人件費と金利で利益率が4%台へ下がる 利益 129 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,058 円1,445 億円
既存店の売上が細り、利益率が4%台へ下がる。人口減と住宅需要の縮小で、客数は10年で1割近く落ちる。物価の上昇分も、競争で売値に転嫁しきれない。
人件費は毎年3〜5%上がり、店の固定費を押し上げる。家賃は売上が落ちても同じだけかかる。リフォームの伸びは遅れ、PBの比率も目標に届かない。
買収で積み上げた店の一部は、利益が出ない。改装の費用も重く、投資に見合う利益が出ない。金利が上がり、借り換えのたびに利払いが増える。
利益は130億円ほどにとどまり、ROEは3%台に下がる。配当は維持されるが、増配は止まり、自己株式の取得も絞られる。会社は優良さを失い、「借金の重い低収益の小売」と見られるようになる。
- ホームセンター事業(店舗網):数量 920(店舗数(店))× 価格 7.36(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 6,772 億円・営業利益 284 億円。営業利益率4.2%
倍率:ROE 3.4% と資本コストを大きく下回り、利益の質も低い。上限は 1÷k=12.5倍だが、売上が細り固定費が重い会社なので、上限の約7割、8.5倍に置いた。
確率:既存店の減少、人件費の上昇、利払いの増加が重なる十分ありうる筋書き。借金が重く、悪い年の影響が大きいため厚めに置いた。
悲観 13% 競合と人口減で構造的に負け、赤字店を畳む 利益 31 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 655 円895 億円
競合と人口減で、構造的に負ける筋書きだ。カインズは規模を武器に値下げと店の改装を続け、ニトリは自社企画で粗利を取り、ドラッグストアが日用品を持っていく。DCMは値段を決める力が弱く、客は他へ流れる。
既存店は毎年落ち、売上は実質で2割近く減る。売場面積の大きい郊外店は、家賃と人件費が重く、赤字になる。リースの約束は売上が減っても残る。
会社は赤字店の閉鎖と減損を迫られる。営業利益率は2%に落ち、純利益は数十億円に縮む。配当は維持が難しくなり、借金は返済が滞る。
買収した店は、減損の対象になる。のれんや店の資産価値が落ち、自己資本は大きく減る。ただし店舗の土地と建物、在庫には売れる値打ちが残る。時価総額は、利益でなく売れる資産で測られるようになる。
- ホームセンター事業(店舗網):数量 860(店舗数(店))× 価格 6.73(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 5,786 億円・営業利益 116 億円。営業利益率2.0%
倍率:ROE 1〜2%と谷の利益で、稼ぐ力(事業の純利益÷k)は小さい。売れる資産から負債を引いた約900億円(floor_assets_oku)を床とし、今の自己資本2,982億円に対するPBR 0.30倍で測った。EV(時価総額+純有利子負債1,579億円)は営業利益の約21倍に見えるが、谷の利益では営業利益が小さいため倍率は意味を持たず、借金を引いた後に残る資産で見た。
確率:カインズ・ニトリ・ドラッグストア・通販に挟まれ、固定費の重い会社が構造的に負ける筋書き。店と借金が重く、10年のうちには無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ホームセンター事業(店舗網)
DCM・ホダカ・ニコット・ケーヨー・エンチョーの各ブランドで全国に店を構える、ホームセンターとリフォームの全体。
| 数量店舗数(店) | 価格1店舗当たり年間営業収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 918 | 5.91 | 5,423 | 310 |
| 10 年後 中立 | 940 | 7.92 | 7,440 | 432 |
取り方:店舗数は2026年2月期末の918店(DCM・ホダカ・ニコット・ケーヨー・エンチョー・ホームテックの合計)を使った。営業収益5,423億円を店数で割ると1店あたり約5.9億円になる。ただしエンチョーは9月からの半年分しか含まれないため、実態の1店あたり売上はやや高い。今後の1店あたり売上は、客数(人口減で実質は横ばいか微減)に、物価の上昇分(10年で1.34倍)を乗せて置いた。営業利益率は2026年2月期の5.7%を出発点にした。
リスクと懸念
既存店の売上減
2026年2月期の既存店は4.2%減、2027年2月期の中間でも1.0%減った。防災用品の反動や天候で説明できる部分はあるが、人口減と新築の減少で数量が伸びない構造は変わらない。買収で店が増えても、既存店が細れば利益は伸びにくい。
借金と金利の上昇
純有利子負債は約1,600億円で、時価総額の7割を超える。長期借入が中心で、借り換えのたびに利払いが増える。10年で税引き前の利益が約40億円削られる計算で、利益の2割に近い。金利上昇への耐性は強くない。
買収の値段と統合
中計の目標には売上1,300億円規模の買収が未定のまま含まれる。ケーヨー・エンチョーのような赤字・低収益の会社を取り込む手法は、改装と統合の費用が先に出る。想定の利益が出ないと、のれんの減損や自己資本利益率の低下につながる。
人件費の上昇
最低賃金が上がり、パートの確保も難しくなる。店舗運営費は年3〜5%増える。売値に転嫁できるかは競争次第で、セルフレジ・自動化・改装でどこまで吸収できるかが利益率を決める。
競合の規模
非上場のカインズは同規模で、PBと店の改装を続ける。ニトリは自社企画で粗利が厚く、ドラッグストアは日用品の客を取る。値段を決める力が弱いホームセンターは、競争の激化で利益率を削られやすい。
家賃とリースの約束
店の多くは賃借で、家賃は売上が落ちても払う固定の約束だ。2028年2月期から新リース会計基準で借入が増えたように見える。悪い年の利益の落ち込みを大きくする。
天候と防災需要の振れ
夏物・冬物、防災・防犯用品は天候や災害に左右される。反動で既存店が大きく振れる年があり、単年の利益は読みにくい。
今後の分かれ目
- 旧ケーヨーを含む改装店が、全体の既存店売上を押し上げ始めたら
- 改装の効果が全店に広がる確度が上がり、やや楽観側の確率を厚くしてよい。
- PB売上構成比が34%を超え、粗利率が35.9%に近づいたら
- 営業利益率の上振れが現実味を持つため、中立より上の筋書きの確率を上げる。
- 既存店の売上が2年続けて前年を割ったら
- 数量の細りが構造的と見て、やや悲観側に確率を寄せる。
- 売上1,300億円規模の買収が、高い値段で決まったら
- のれんと借金が増え、自己資本利益率がさらに下がるため、悲観側を厚くする。
- 金利が想定より上がり、借り換えの金利が4%を超えたら
- 利払いが利益を大きく削るため、純利益の見通しを下げる。
- ホームセンター業界で大型の統合が起き、上位が規模を一気に広げたら
- 競争が激しくなり値決めの力がさらに弱まる一方、DCMが統合の主体になれば仕入れの効果が出る。方向は統合の相手による。
見ておくもの
- 既存店売上高の前年比(月次)と改装店の利益
- PB売上構成比と粗利率(2029年2月期の目標35.9%)
- 純有利子負債と利払い、借り換えの金利
- 買収の発表(売上1,300億円規模の企業)
- ホームテックなどリフォームの売上と利益
倍率と資本コストの決め方
倍率は市場の PER・PBR からでなく、式(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、ROE が k 以下なら 1÷k が上限)と事業の質から置いた。ROE が資本コスト以下の筋書きが多いため、倍率は 1÷k の7〜10割に収まる。今の株価が倍でも半分でも、価値は動かない。悲観は今の自己資本を床の起点にし、売れる資産と稼ぐ力から置いた。なお新リース会計(2028年2月期から)で営業利益と純有利子負債の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.6→14.15 倍・やや楽観 PER 10.6→13.33 倍・中立 PER 10→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本7.5%に、借金の分として+0.5%を足した8.0%。純負債のEBITDA倍率が3倍を超え、金利が上がると利益が削られる。堀の深さ・事業の寿命・循環は普通と見て、他は足さない。事業が傾いてはいないので、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。