結論
ドトール・日レスホールディングスは、全国に約1,300店のドトール系の喫茶店と、約800店の星乃珈琲店・洋麺屋五右衛門などの飲食店を持つ外食グループである。ドトールは加盟店が3分の2を占め、豆と資材を卸して稼ぐ軽い仕組みだ。日レス側は直営が中心で、店ごとの稼ぎは厚い。
筆者の結論は、今の値段はやや割高というものだ。10年後の中立でも、利益は今の4割増にとどまる。店数は伸びにくく、値上げはコストの上昇に追いつくのが精いっぱいだからである。
堀は確かにある。ドトールは駅前や商業施設の一等地を押さえ、値段が手頃で、通勤客の習慣に根を下ろした。創業者系の大株主が上位に並び、買収で経営が揺れる心配も小さい。純現金は約260億円あり、財務は安全だ。
弱点は利益の薄さである。営業利益率は6%台で、豆の相場が動けばすぐ削られる。人件費の上昇も続く。海外の出店は年に数店で、国内の人口減を埋める柱にはまだならない。
還元は手厚い。直近は配当と自社株買いで、利益のほぼ全部を株主に返した。ただし、返した分だけ現金は減る。中立の10年後は、営業利益が約140億円、純利益が約100億円。時価総額は約1,500億円。還元を足しても、年率は4%台で、資本コストの7%台に届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で言えば、ドトールは「悪くはないが、安くもない」会社である。
まず事業の質。習慣に根ざした需要と、加盟店を軸にした軽い仕組みは、倒れにくい。財務は純現金で、潰れる心配はほぼない。10年後もドトールの看板は残っているだろう。ここは好ましい。
次に、株主のものになる利益の大きさ。営業利益率は6%台で、稼いだ利益の多くは店の維持と入れ替えに回る。株主が自由に使える利益は、見かけの純利益より小さい。
資本の使い方は評価できる。高い買収に走らず、利益の大半を返している。ただし、返せる余力は今の純現金が支えており、利益が伸びなければ細っていく。
最後に値段。10年後の中立で、利益は今の4割増、自己資本利益率は8%弱にとどまる。資本コストをわずかに超えるだけなので、倍率は大きくは伸びない。その先の価値を資本コストで割り引くと、今の時価総額を2割ほど下回る。大きな安全域はない、と筆者は見る。
決め手は、店の入れ替えで利益率が7%を超えられるかどうかだ。そこが見えれば、評価は変わる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は二本立てだ。
一本目はドトールコーヒーグループで、売上の6割を占める。ドトールコーヒーショップは国内に約1,080店あり、うち加盟店が約800店。ほかのカフェ業態を含めると、グループで約1,290店になる。加盟店には豆・資材・内装を卸し、ロイヤルティも受け取る。直営店は売上がそのまま入るが、人件費と家賃も背負う。1店あたりの売上は小さく、卸の売上が薄く広く積み上がる構造だ。
二本目は日本レストランシステムグループで、売上の3分の1強を占める。星乃珈琲店が約270店、洋麺屋五右衛門などを合わせて約780店になる。直営が中心で、1店あたりの売上はドトールより大きいが、家賃と人件費も重い。不振店を別の業態に切り替えて立て直しており、2026年2月には五右衛門の加盟店募集を再開した。
そのほかの事業は売上の4%ほどで、店舗網に付随する周辺事業とみている。店が増えれば一緒に伸びる性格のものだ。
直近の決算は、売上1,591億円、営業利益101億円。利益はドトール側が約48億円、日レス側が約45億円で、ほぼ半々になっている。2026年7月にドトールが価格改定に踏み切り、中間決算の営業利益は4割近く伸びた。店の数と1店あたりの売上、この二つが稼ぎの源である。
優良さと弱いところ
堀は、店の立地と手頃な値段の組み合わせにある。ドトールは駅前・オフィス街・商業施設の一等地を長年押さえてきた。1杯の値段を抑え、短い滞在で客を回す小さな店で稼ぐ。長居を前提にするコメダ珈琲店とは客層が違い、通勤客の習慣に根ざしている。この習慣は10年先も簡単には崩れない。
ただし、堀は広くない。コーヒー1杯の値段は、コンビニのいれたてコーヒーやスターバックス、タリーズと常に比べられる。値上げは物価並みが限度で、それを超えれば客を逃がす。
資本効率は普通だ。自己資本利益率は7%前後で、資本コストをわずかに超える程度。営業利益率は6%台と、外食の中でも低い。加盟店が多いので店が増えても投資は直営ほど重くならないが、そのぶん利益も薄い。
経営は堅実だ。営業赤字は2021年2月期とその翌期の2年あったが、財務は崩れず、自己資本比率は今も77%ある。筆者が評価するのは、無理な買収で規模を追わない点だ。一方、数値目標を掲げた中期計画が見当たらず、資本をどう使って成長させるのか、絵が見えにくい。
弱点は成長の第二の柱がないことだ。海外の出店は年に数店で、利益への寄与はまだ小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のカフェ市場は成熟している。人口は減り、一人が飲む量も大きくは増えない。それでも市場が崩れないのは、コーヒーが日常の習慣だからだ。
競争は三方向から来る。第一に、コンビニのいれたてコーヒーだ。ワンコインを切る値段で、ドトールの手軽さに真正面から重なる。第二に、スターバックスやタリーズなどの大手カフェ。第三に、長居型のコメダ珈琲店である。ドトールは「安く、早く」に絞ることで、三者のはざまに居場所をつくってきた。
コストは構造的に上がる。アラビカ豆の価格は、2024年から2025年にかけて約4割上がったと伝えられる。人件費も、最低賃金の上昇で年に3〜5%のペースで重くなる。値上げで吸収できる店が勝つ業界である。ドトールは2026年7月に価格改定を行い、中間期の既存店売上は3%強伸びた。値上げが客数を落とさずに通った形だ。
訪日客は追い風だが、一時的な要素が混じる。円高に振れれば逆風になるので、10年の前提には入れにくい。
業界の数量、つまり店と客の数は、横ばいから微増とみる。物価で値段が上がる分だけ売上が伸びる。10年の筋書きは、この中立を軸に、店の入れ替えがうまく進むか、豆の相場が荒れるかで上下に振れる。
資本政策と M&A
資本政策の特徴は、稼いだ利益のほとんどを株主に返していることだ。2026年2月期は配当を増やし、約50億円の自社株買いも行った。配当と自社株買いの合計は、純利益の約100%に当たる。2026年10月には最大約28億円の追加の自社株買いも決めた。
かつての方針は配当性向30〜40%が目安だった。いまは自社株買いを加え、利益に近い水準まで総還元を引き上げている。
買収で規模を追う会社ではない。近年は大きな買収で成長を買う動きは見えず、不振店の業態変更と加盟店の増加が成長の手段になっている。
株主は、日本レストランシステム側の創業者系の大林氏、ドトールの創業者の鳥羽氏、日本たばこ産業が上位に並ぶ。安定した株主が多く、TOBのような再編は起きにくい。半面、動きが少ないぶん、割安に放置されやすい面もある。
気がかりなのは、営業キャッシュフローが前期の123億円から70億円へ落ちたと報じられた点だ。還元が利益を超える状態は長くは続けられない。純現金は1年で約120億円減っている。
株主優待は年およそ 0.2 億円(推定)で、利益から引かれ済み。還元に足しても 1 億円に届かず、差は 1 ポイント未満のため数字は変えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ドトールの強みは、日常の習慣に根ざした需要と、軽い加盟店の仕組みにある。通勤・通学の動線に約1,300店を持ち、競合が簡単には埋められない立地を押さえている。
価格改定はすでに通り始めた。2026年7月の改定後も既存店の売上は伸び、中間期の営業利益は4割近く増えた。ドトール部門の利益はこの半年で5割近く伸びている。値上げが通る力がある証拠だ。
日レス側も立て直しが進んでいる。不振店を星乃珈琲店や五右衛門に切り替える業態変更が効き、中間期の利益は2割伸びた。五右衛門の加盟店募集の再開で、直営より軽い形で店を増やせる。
財務は純現金で、還元を厚くする余力がある。配当と自社株買いで、1株あたりの価値は着実に高まる。営業利益率が8%に乗り、店数が1割伸びれば、利益は10年で倍近くになり、自己資本利益率は10%を超える。外食の中でも、倒れにくく還元の厚い会社として、評価が上がる余地は小さくない。しかも、その還元は純現金に支えられ、事業の稼ぎが少し改善するだけで余力がさらに広がる。
慎重な見方
ドトールの利益は、コーヒー豆と人件費という二つのコストに首根っこを押さえられている。豆の相場は2024年から2025年にかけて約4割上がった。最低賃金は上がり続ける。値上げは物価並みが限度で、利益率は6%台から動きにくい。
店数も頭打ちだ。2026年2月期の計画は、ドトールが出店50に対して閉店30と、入れ替えに追われる形だった。国内は人口が減り、コンビニコーヒーとの価格競争も続く。海外の出店は年に数店で、成長の第二の柱にはならない。
今期の増益には、価格改定と訪日客の効果が混じっている。一時的な要素を除けば、利益の伸びは物価並みにとどまる。
還元も気がかりだ。利益のほぼ全部を返すと、営業キャッシュフローが落ちたときに現金が減る。純現金は1年で約120億円減った。店の入れ替え投資と還元を両立させるのは難しい。
直営店は約1,100店あり、家賃は売上が落ちても減らない固定費だ。景気が悪化すれば、利益は一気に薄くなる。2021年2月期の営業赤字が、その怖さを示した。
どちらに重みを置いたか
強い見方は事業の質と財務に、慎重な見方は利益率の薄さとコストの重さに根拠がある。どちらも的を射ているが、利益が物価並みにしか伸びないという慎重な見方のほうが、10年の積み上げとは整合する。価格改定の効果は確かだが、それは今期の利益に入っており、先の伸びを約束するものではない。このため、確率は中立を中心に、やや悲観に厚めに寄せた。強い堀の会社ではないので、悲観の確率も1割強を残した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 3,394 円1,428 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,387 円583 億円)。 今の値に割り戻すと 2,652 円1,116 億円、今との差 −24.9%、 期待の年率 +3.1%(資本コスト 7.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 6,049 円2,545 億円 | 1,849 円778 億円 | +123.7% | +8.4% | 711 円299 億円 |
| やや楽観 | 23% | 4,864 円2,046 億円 | 1,659 円698 億円 | +84.8% | +6.3% | 1,500 円631 億円 |
| 中立 | 34% | 3,904 円1,643 億円 | 1,464 円616 億円 | +52.1% | +4.3% | 1,825 円768 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,526 円642 億円 | 1,172 円493 億円 | −23.6% | −2.7% | 620 円261 億円 |
| 悲観 | 11% | 475 円200 億円 | 649 円273 億円 | −68.2% | −10.8% | 124 円52 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,394 円1,428 億円 | 1,387 円583 億円 | +35.4% | +3.1% | 4,780 円2,011 億円 |
今の株価時価総額 3,530 円1,485 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.3% を下回るほど割高。
楽観 9% 価格改定が通り続け、利益率が8%に乗る 利益 144 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 6,049 円2,545 億円
10年後、ドトールは価格改定を重ねても客数を落とさず、加盟店を中心に店が約1割増えている。星乃珈琲店と五右衛門は加盟店の形で軽く広がり、日レス側の利益率も9%に届く。
豆の相場が荒れても、値上げの転嫁がスムーズに通る。ドトール部門の営業利益率は7%に乗る。単価は物価を少し上回って伸び、カフェの習慣が日常の中でさらに深まる。
営業利益は約200億円、純利益は約140億円。自己資本利益率は10%を超え、還元も厚く続く。堀が10年のあいだ広がり続ける、強気の筋書きだ。
ただし、これが続くには、値上げが物価を超えて10年間通る必要がある。強みの域を超えた条件で、確率は1割に届かない。コンビニや大手カフェが同じ値上げに付いてくる場合や、人件費の上昇が想定を超える場合には、この筋書きは崩れる。
- ドトールコーヒーグループ(ドトール・エクセルシオールほか):数量 1,480(国内のドトール系店舗数(店))× 価格 1.04(1店舗あたり売上(億円。加盟店は卸の売上のみ計上されるため直営より小さい))→ 売上 1,545 億円・営業利益 108 億円。営業利益率7.0%
- 日本レストランシステムグループ(星乃珈琲店・洋麺屋五右衛門ほか):数量 880(国内の日レス系店舗数(店))× 価格 0.99(1店舗あたり売上(億円))→ 売上 874 億円・営業利益 79 億円。営業利益率9.0%
- その他(周辺事業):数量 2,360(グループ国内店舗数(店。周辺事業の取引の土台))× 価格 0.04(店舗あたりの周辺事業売上(億円))→ 売上 100 億円・営業利益 14 億円。営業利益率14.0%
倍率:事業の純利益 142 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 7.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.8% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)120 億円。全体の PER 17.04 倍、時価総額 2,545 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:物価を超える値上げを10年通し、さらに店数を1割増やす必要がある。堀が強いとは言えず、連続して上振れする確度は低い。
やや楽観 23% 店の入れ替えが実り、利益率が緩やかに上がる 利益 122 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 4,864 円2,046 億円
10年後、価格改定が定着し、ドトールの店は純増で約1割近く増えている。不振店を入れ替える業態変更が実り、日レス側の利益率は8%台になる。
加盟店は増えるが、豆の値上がりを転嫁しすぎれば離れる。そのさじ加減がうまく取れた形で、ドトール部門の営業利益率は6%を少し超える。
営業利益は約170億円、純利益は約120億円になる。自己資本利益率は9%台。還元は利益の7割を保ち、自己資本は大きく膨らまない。
足元の増益の勢いがそのまま続く、現実的な上振れだ。ただし中立との差は、価格改定の定着と、店の入れ替えの成功の二つだけである。どちらかが欠ければ、中立に落ちる。
- ドトールコーヒーグループ(ドトール・エクセルシオールほか):数量 1,430(国内のドトール系店舗数(店))× 価格 1.01(1店舗あたり売上(億円。加盟店は卸の売上のみ計上されるため直営より小さい))→ 売上 1,450 億円・営業利益 91 億円。営業利益率6.3%
- 日本レストランシステムグループ(星乃珈琲店・洋麺屋五右衛門ほか):数量 840(国内の日レス系店舗数(店))× 価格 0.97(1店舗あたり売上(億円))→ 売上 816 億円・営業利益 67 億円。営業利益率8.2%
- その他(周辺事業):数量 2,270(グループ国内店舗数(店。周辺事業の取引の土台))× 価格 0.04(店舗あたりの周辺事業売上(億円))→ 売上 96 億円・営業利益 12 億円。営業利益率13.0%
倍率:事業の純利益 120 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 7.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.8% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)120 億円。全体の PER 16.01 倍、時価総額 2,046 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:価格改定が定着し、業態変更が実る現実的な上振れ。足元の増益の勢いがその根拠になる。
中立 34% 中立:物価並みの成長で、利益は4割増 利益 104 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 3,904 円1,643 億円
10年後、店数は微増にとどまり、1店あたりの売上は物価並みの1.34倍になっている。値上げは豆と人件費の上昇に追いつくのが精いっぱいで、営業利益率は6%台前半で横ばいだ。
ドトールの店は約1,380店、日レス側は約800店。出店と閉店の入れ替えを繰り返し、数は大きくは変わらない。加盟店中心の仕組みが、店が増えない中でも利益を安定させる。
営業利益は約140億円、純利益は約100億円。自己資本利益率は8%弱で、資本コストをわずかに超える水準になる。還元は利益の7割を保つ。
悪い会社ではない。ただ、利益が物価並みにしか伸びない以上、株主の取り分も物価並みにしか増えない。10年の平均では、期待の年率は資本コストに届かない。
- ドトールコーヒーグループ(ドトール・エクセルシオールほか):数量 1,380(国内のドトール系店舗数(店))× 価格 1.00(1店舗あたり売上(億円。加盟店は卸の売上のみ計上されるため直営より小さい))→ 売上 1,379 億円・営業利益 77 億円。営業利益率5.6%
- 日本レストランシステムグループ(星乃珈琲店・洋麺屋五右衛門ほか):数量 800(国内の日レス系店舗数(店))× 価格 0.96(1店舗あたり売上(億円))→ 売上 771 億円・営業利益 56 億円。営業利益率7.2%
- その他(周辺事業):数量 2,180(グループ国内店舗数(店。周辺事業の取引の土台))× 価格 0.04(店舗あたりの周辺事業売上(億円))→ 売上 92 億円・営業利益 10 億円。営業利益率11.0%
倍率:事業の純利益 102 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 7.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.8% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)120 億円。全体の PER 14.88 倍、時価総額 1,642 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店数は微増、値段は物価並み、利益率は6%台前半という最も素直な筋書き。慎重な見方を少し織り込み、中立の確率は高めにしない。
やや悲観 23% コストが重く、利益率が4%台へ戻る 利益 69 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 1,526 円642 億円
10年後、豆と人件費の上昇が値上げに先行し続け、ドトールの利益率は4%まで下がっている。値上げが客数を落とし始め、1店あたりの売上は物価に届かない。
ドトール系の店は約1,300店と今を少し上回るだけ。出店は閉店に追われ、地方の店が減る。日レス側も、業態変更の効果が一巡して利益率は5%台に戻る。
営業利益は約90億円、純利益は約70億円。自己資本利益率は5%台で、資本コストに届かない。還元は純利益の7割を保てず、自社株買いは細る。
国内の成熟と、コンビニコーヒーとの競争を考えれば、十分にありうる姿だ。ブランドは残るが、稼ぐ力は今の8割に戻る。
- ドトールコーヒーグループ(ドトール・エクセルシオールほか):数量 1,300(国内のドトール系店舗数(店))× 価格 0.95(1店舗あたり売上(億円。加盟店は卸の売上のみ計上されるため直営より小さい))→ 売上 1,241 億円・営業利益 50 億円。営業利益率4.0%
- 日本レストランシステムグループ(星乃珈琲店・洋麺屋五右衛門ほか):数量 760(国内の日レス系店舗数(店))× 価格 0.92(1店舗あたり売上(億円))→ 売上 700 億円・営業利益 38 億円。営業利益率5.5%
- その他(周辺事業):数量 2,000(グループ国内店舗数(店。周辺事業の取引の土台))× 価格 0.04(店舗あたりの周辺事業売上(億円))→ 売上 79 億円・営業利益 6 億円。営業利益率8.0%
倍率:ROE 5.5%(純利益 69 億円 ÷ 自己資本 1,264 億円)で資本コストに届かない。RONIC = k 7.3% + 残る割合 1/2 ×(5.5 − 7.3)= 6.4%、g 3.8% から正当化 PER = 11.6 倍。利益率が4%台に戻り、家賃と人件費の固定費が重い構造を踏まえ、上限の7割以下の 8.2 倍に置いた。
確率:豆と人件費が値上げに先行し続ける筋書き。利益率は4%台に戻る。国内の成熟とコンビニとの競争を考えると十分ありうるので厚めに置く。
悲観 11% 客と加盟店を失い、薄利のまま固定費が残る 利益 19 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 475 円200 億円
10年後、コンビニや大手カフェとの競争で客と加盟店を失い、ドトールの店は約1,150店まで減っている。豆と人件費の上昇を値上げで吸収できず、利益率は1%台に落ちる。
日レス側は不振店を閉めても、家賃の約束が残る。星乃珈琲店の客足も細り、部門の利益はほぼ消える。直営約1,100店の家賃は売上が減っても減らず、固定費が利益を食い潰す。
営業利益は約20億円、純利益も同じ程度。店の減損で自己資本も減る。還元は利益の縮小に合わせて大きく絞られる。
ブランドと現金は残るので、倒産はしない。ただ、もう優良な外食企業とは呼べない。稼ぐ力は大きく損なわれ、時価総額は稼ぐ力と余った現金の半分でほぼ決まる。
- ドトールコーヒーグループ(ドトール・エクセルシオールほか):数量 1,150(国内のドトール系店舗数(店))× 価格 0.89(1店舗あたり売上(億円。加盟店は卸の売上のみ計上されるため直営より小さい))→ 売上 1,029 億円・営業利益 15 億円。営業利益率1.5%
- 日本レストランシステムグループ(星乃珈琲店・洋麺屋五右衛門ほか):数量 640(国内の日レス系店舗数(店))× 価格 0.83(1店舗あたり売上(億円))→ 売上 530 億円・営業利益 5 億円。営業利益率1.0%
- その他(周辺事業):数量 1,800(グループ国内店舗数(店。周辺事業の取引の土台))× 価格 0.03(店舗あたりの周辺事業売上(億円))→ 売上 62 億円・営業利益 2 億円。営業利益率4.0%
倍率:ROE は 1% 台で、稼ぐ力は事業の純利益 19 億円から余った現金の利息を引いた分に、やや悲観と同じ倍率 8.2 倍を掛けて足すと約 160 億円にとどまり、純現金と売れる資産の税後(約 200 億円)を下回る。そのため値は床の 200 億円で付く。今の自己資本 1,052 億円に対する PBR 0.19 倍。店の減損で自己資本は減る。
確率:コンビニや大手カフェとの競争で客と加盟店を失い、直営店の家賃が固定費として残る構造的な負け。ブランドは消えにくいが、悲観を1割強残す。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ドトールコーヒーグループ(ドトール・エクセルシオールほか)
ドトールコーヒーショップを中心に、加盟店への豆・資材の卸と直営店の運営を行う。国内約1,290店のうち加盟店が3分の2。
| 数量国内のドトール系店舗数(店) | 価格1店舗あたり売上(億円。加盟店は卸の売上のみ計上されるため直営より小さい) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 1,292 | 0.75 | 963 | 48 |
| 10 年後 中立 | 1,380 | 1.00 | 1,379 | 77 |
取り方:2026年2月期のドトールコーヒーグループ売上963億円を、グループの国内店舗数約1,292店(2026年8月の公式の数字)で割って1店あたり売上を逆算した。加盟店は卸の売上だけが入るので、直営と加盟の比率が変わると1店あたり売上も動く。10年の価格は中立で物価並みの1.34倍。店数は出店と閉店の差し引きで微増とみた。
日本レストランシステムグループ(星乃珈琲店・洋麺屋五右衛門ほか)
星乃珈琲店や洋麺屋五右衛門などの飲食店を主に直営で運営する。不振店の業態変更で立て直し中。
| 数量国内の日レス系店舗数(店) | 価格1店舗あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 782 | 0.72 | 563 | 45 |
| 10 年後 中立 | 800 | 0.96 | 771 | 56 |
取り方:2026年2月期の日レスグループ売上562.6億円を、国内店舗数(グループ全体2,074店からドトール系1,292店を引いた約782店。時点が少しずれる推定)で割った。10年の価格は中立で1.34倍。店数は業態変更とフランチャイズ再開で横ばいから微増。
その他(周辺事業)
店舗網に付随する周辺事業。売上は全体の4%ほどで、店が増えれば一緒に伸びる。
| 数量グループ国内店舗数(店。周辺事業の取引の土台) | 価格店舗あたりの周辺事業売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 2,074 | 0.03 | 65 | 9 |
| 10 年後 中立 | 2,180 | 0.04 | 92 | 10 |
取り方:売上65.4億円を、周辺事業の土台となるグループ国内店舗数2,074店で割った。中身の開示が薄いため、店数と物価に連動して伸びるとみる推定。営業利益は全社の営業利益から二つの事業の利益を引いた残り。
リスクと懸念
コーヒー豆の相場
アラビカ豆は2024年から2025年に約4割上がったと伝えられる。為替や産地の天候で再び跳ねれば、値上げが追いつくまで利益率が削られる。卸が中心の加盟店は豆の値上がりを自分で吸収できず、不満が出れば加盟店の離脱につながる。
人件費の上昇と人手不足
直営は約1,100店ある。最低賃金は上がり続け、パート・アルバイトの確保も難しい。省人化の投資で吸収できなければ、利益率の6%台は守れない。日レス側は直営中心で、影響がより大きい。
家賃という固定費
直営店の多くは賃借だ。売上が落ちても家賃は減らない。新リース会計基準で2028年2月期から貸借対照表に載るが、価値の計算は変わらず、純現金を見かけほど強いと読むべきではない。悲観では、この固定費が利益を一気に押し下げる。
コンビニとの競合
コンビニのいれたてコーヒーはワンコインを切る値段で、品質も上がった。ドトールの手軽さが武器である以上、この競争は逃げられない。客数を失えば、値上げの余地も同時に縮む。
今期の増益の質
中間期の営業利益は4割近く伸びたが、価格改定と訪日客の効果が混じる。円高や訪日客の減少が重なれば、増益は続かない。来期以降の計画の達成には、既存店の客数が落ちないことが前提になる。
還元と現金のバランス
直近は利益のほぼ全部を配当と自社株買いで返した。営業キャッシュフローが落ちたと報じられており、投資と還元の両立は簡単ではない。純現金は1年で約120億円減った。この減り方が続けば、還元は細る。
今後の分かれ目
- ドトール部門の営業利益率が7%を超えて定着したら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。価格改定が客数を落とさず通り、利益率の構造が一段上がったと読める。
- 既存店の客数が2期続けて前年を割ったら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。値上げが客離れを呼び、数量と価格の両方が苦しくなる。
- コーヒー豆の相場が再び3割以上跳ね、値上げが遅れたら
- 利益率は4%台まで落ちうる。やや悲観の筋書きに近づく。
- 営業キャッシュフローが2期続けて純利益を下回ったら
- 還元の余力を疑う。現金の取り分は下げ、自社株買いの継続は期待しない。
- 創業者系の大株主が持ち株を大きく売り、または非公開化の動きが出たら
- 再編の値上がりが入る可能性がある。ただし価値は事業の稼ぐ力で測り、買収の期待は別に扱う。
見ておくもの
- ドトールとエクセルシオールの既存店の客数・客単価(月次)
- ドトール部門と日レス部門の営業利益率の推移
- 出店と閉店の差し引きの店数、五右衛門の加盟店の増え方
- 営業キャッシュフローと純現金の推移、自社株買いの規模
- コーヒー豆の相場と最低賃金の改定
倍率と資本コストの決め方
ドトール系・日レス系・周辺事業の3つに分け、店舗数(実質)に1店あたり売上(名目、物価で1.34倍)を掛けて10年後の利益を積み、利益から自己資本の流れとROEを出した。倍率は新しく投じるお金の稼ぎ(RONIC)と長期成長率から式で出し、市場の倍率は見ていない。中立は式の下限(1÷k)に当たる倍率で、ROEが資本コストをわずかに上回る分、床に近い。店舗はリースの約束が重く、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に含める形)で置いた。新リース会計基準で2028年2月期から営業利益・純負債の見かけが変わる点は、価値の計算には入れていない。今の株価に寄せてはいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→17.04 倍・やや楽観 PER 14→16.01 倍・中立 PER 13.7→14.88 倍)。
資本コスト 7.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality −0.2% を足した 7.3%。堀は強いと言えないので下げは僅か。大株主構成や店の入れ替えの失敗など個別のリスクは k に足さず、確率で表した。事業は黒字で傾いておらず上乗せは置かない。