結論
コメリは、農村と地方の小さな商圏に小型店を細かく並べる、農家のためのホームセンターだ。筆者の結論は「ほぼ適正、わずかに割高側」である。事業は堅いが、資本を厚く抱えて稼ぎが資本コストに届かず、10年かけても値打ちが今の値段から大きく離れないと見る。
強みは、肥料・農薬・資材・金物という生活と仕事の必需品を、人手の少ない店で安く売る仕組みにある。店は1,234店、PB(自社企画の商品)は売上の半分近くを占める。借金は軽く、自己資本比率は6割を超える。2021年3月期の営業利益率7.9%は例外で、ふだんは5〜6%台に収まる。
成長の土台は店数と物価だ。農村は人口が減るので客数は増えにくく、売上を押し上げるのは出店と値上がりである。出店は建築費の高騰で計画より遅れ、新店の稼ぎも既存店ほど高くない。中立の10年後でも利益率は6%前後、ROEは6%台にとどまる。
株主への還元は増えており、自社株買いも続く。それでも自己資本が3,500億円前後に膨らむと、資本コストを稼げない資本が増える。筆者がいちばん気にしているのは、この資本の重さだ。強気の筋書きでも時価総額は10年で2.5倍ほど、下は筋書き次第で半分に近づく。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、コメリは「悪くない事業を、高すぎない値段で持つ」会社だ。需要は必需品で、借金が軽く、店は長く使える。だが、オーナー利益(再投資を引いた、株主のものになる利益)は、見かけの利益より小さい。出店と改装、物流への投資が毎年かさみ、2026年3月期のフリーキャッシュフローは58億円と、営業キャッシュフロー238億円の4分の1にとどまった。
筆者が気にするのは、資本の使い方だ。自己資本は10年で倍近くに増えたのに、ROEは6%台で動かなかった。つまり、ためた利益を同じ低い効率で回し続けている。この姿のまま、さらに厚くなっていく。会社が自社株買いに動いたのは前向きだが、規模はまだ小さい。
安全域は、借金の軽さと自己資本の厚さにある。悪い筋書きでも、倒れる心配は小さい。ただ、払う値段に対して大きな上振れが見込める会社でもない。10年の価値は今の値段と近く、割安とは言い切れない。
長く持ちたい会社かと問われれば、事業は好ましいが、資本の使い方が改まるまでは、割安の目印が見えない会社だと答える。
何で稼ぐ会社か
コメリの稼ぎの源は、全国46都道府県に1,200店超を持つ直営の小型店網だ。主力の「ハード&グリーン」は、商圏人口1万人ほどの町に出す。2021年の報道では、社員2人にパートを足して10人弱で回す店だった。大型の「パワー」と、資材・工具の専門店「PRO」を加えた3業態で、市町村の約45%に出店している。
売れるのは、資材・建材、金物・工具、園芸・農業資材の3分野で、売上の約6割を占める。農家は肥料や農薬を季節ごとにまとめて買い、職人は資材と作業衣料を買う。景気の波に左右されにくい需要だ。農業分野では、農業アドバイザーが農家を回る営業もする。2025年6月からJAとの協業を進め、期末には8件に増えた。
PBは売上の48.7%を占め、会社は6割を目指す。ECは12.8%伸び、注文の8割超は店舗で受け取る。リフォームも全店で受け付ける。金融ではコメリカードを持つが、稼ぎの中心は小売だ。2026年2月には、国内12拠点で最大の関西流通センターが動き出した。物流の省力化で、店の作業を減らす狙いである。
営業収益は3,854億円、営業利益は231億円。売上はここ5年ほぼ横ばいで、年に1〜2%しか伸びていない。
優良さと弱いところ
堀は、小商圏に低いコストで店を出し続ける運営の力にある。コメリは、カインズやDCMが出しにくい人口の少ない町へ出店できる。店が少人数で回り、物流も標準化されているので、売上が小さくても採算が合う。農家やJAとの関係、2021年の報道で約500品目とされたPBの農薬・肥料も、他社が真似しにくい。ただし筆者は、この堀を強いとは見ない。農村の人口が減れば、堀の内側の需要自体が縮むからだ。
値決めの力は普通だ。PBが半分近くを占めて粗利は厚いが、ドラッグストアやディスカウント店、ネット通販と値段を比べられる。耐久財のカーペットなどは弱く、プロ向けの作業衣料や電材が支えている。
資本の使い方は課題だ。ROEは過去10年の中央値が6.6%で、資本コストに届かない。内部留保は積み上がり、自己資本は10年で倍近くになった。自己資本比率65%という安全性は、同時に資本の遊びを意味する。会社は自社株買いと増配に動き始めたが、株主にとって大事なのは、再投資が資本コストを上回る稼ぎを生むかどうかだ。
経営は捧雄一郎社長が率いる。筆頭株主は、創業時の屋号と同じ名の株式会社米利で、3割強を持つ。経営の継続性は高いが、支配が固いぶん、外部からの圧力で資本が動く場面は少ない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のホームセンターは、市場が約3.4兆〜4兆円で、人口減と住宅需要の鈍さの下、ほぼ頭打ちだ。成長するのは物価の上昇と、売場の大型化・出店で取れる分である。上位はカインズ(非上場)、コメリ、DCM、コーナン商事、アークランズ、ジョイフル本田が並び、共同購買や統合で規模を追う流れが続く。
コメリの競争の相手は、同じホームセンターより、商圏に近いドラッグストアとディスカウント店、そしてECだ。日用品はドラッグが奪い、工具・資材はネットが奪う。会社もECを伸ばし、受取は店舗を使うことで対抗している。農家向けの資材は、JAとの協業を広げて取りにいく。
出店は建築費の高騰で重く、2026年3月期は22店を出し、16店を閉じた。社長は、造成費の大きい土地は最初から候補にしないと話す。売場面積は年1〜2%の増にとどまる。長期ビジョンは3,000店・1.5兆円だが、実際の進みは遅く、現実的には店数が年に十数〜二十店の純増が続く姿になる。
再編では、コメリは筆頭株主が3割強を持つ。経営統合への動きは目立たず、買収される側になる可能性は低い。業界の統合は、PBの調達力や物流の共同化で、競合の力が強まる方向に効く点が脅威だ。
資本政策と M&A
還元は厚みを増している。配当は10期連続の増配を見込み、自己株式の取得と消却も決めた。上限は220万株・88億円である。株価が自己資本を下回る間の自社株買いは、残る株主の持ち分を増やす点で理にかなう。
投資は、出店と物流に偏る。中期計画の3年間で850億円を投じ、うち出店に550億円を充てる。1店当たりの建築費は上がっており、投資の回収は以前より遅い。筆者は、ここがこの会社の資本配分の肝だと見る。投資が資本コストを上回る稼ぎを生むなら価値が増え、生まなければためた資本の価値が目減りする。
買収はほとんどない。2002年にキッコリーを取得し、2006年に吸収したほかは、自力の出店で広げてきた。筆頭株主の米利が3割強を持ち、TOBや再編が起きる確率は低い。ただ、自己株式の消却が続けば、安定株主の持ち分は自然に高まる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
コメリは、他社が出られない小商圏で、人手の少ない店を回す仕組みを作り上げた。1,234店のうち、これから出店できる市町村はまだ半分以上あり、長期の3,000店構想には道がある。PBは売上の48.7%で、6割を目指す。粗利の厚いPBが増えるほど、同じ売上でも利益が増える。
農業とPROという2つの成長の芽もある。JAとの協業は8件に増え、競合だった組合が味方になりつつある。PROは2026年3月期の上期に前年比30%増の伸びを見せ、プロの職人の買い場として育っている。ECは1割強の伸びを続け、注文の8割超が店舗受取だから、店と物流の投資がそのまま活きる。
財務は、借金が軽く、自己資本比率は6割を超える。配当は10期連続増配、自社株買いも88億円まで決まった。ROEが低いと言われるが、これは資本が厚いからで、還元が増えれば自然に上がる。出店のペースが戻り、建築費が落ち着けば、営業利益320億円という中期計画の目標にも手が届く。10年なら、営業収益7,000億円台、ROE8%台は現実の範囲にある。
慎重な見方
売上は5年ほぼ横ばいで、営業利益率は6%前後に張り付いている。農村の人口は年に0.5%ほど減り、客数は実質で増えない。成長は物価と出店で作るしかないが、建築費が上がり、新店の採算は下がっている。2026年3月期は22店を出して16店を閉じ、純増はわずか6店だった。3年で100店の計画との差は大きい。
競合は強まる。ドラッグストアは日用品で、ネットは工具と資材で、カインズは小型店で、それぞれコメリの領域に入ってくる。PBが半分近くあっても、値段で比べられる点は変わらない。農業のJA協業は、組合側の再編が進めば、条件が厳しくなる恐れがある。
最大の問題は資本だ。ROEは過去10年の中央値が6.6%で、資本コストに届かない。自己資本は増え続け、稼ぎを生まない資本が積み上がっていく。借金が軽いのは安全だが、同時に資本を使いこなせていない証拠でもある。賃借店舗の家賃は固定費で、リース会計の見直しでは負債の見かけも増える。10年後も、効率の低い厚い資本を抱えた会社である可能性が高い。
どちらに重みを置いたか
事業の堅さと財務の厚さは、強気の言い分が正しい。一方、資本の効率が上がる道筋は、慎重な言い分のほうが具体的だ。中立は、店は微増、利益率は今のまま、稼ぎは物価の分だけ増えるという姿に置いた。
確率は、中立を最も厚く、やや悲観を2番目に置き、悲観は借金が軽いことから1割弱にとどめた。強気側は、農業とPROが伸びる余地を見て、合わせて2割台半ばとした。結果として、10年後の価値は今の値段をわずかに下回り、適正の範囲に収まる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,928 円2,746 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,869 円866 億円)。 今の値に割り戻すと 4,261 円1,974 億円、今との差 +9.0%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 11,401 円5,282 億円 | 2,398 円1,111 億円 | +252.9% | +13.4% | 966 円448 億円 |
| やや楽観 | 19% | 8,443 円3,912 億円 | 2,150 円996 億円 | +170.9% | +10.5% | 2,013 円932 億円 |
| 中立 | 38% | 6,876 円3,186 億円 | 1,962 円909 億円 | +126.0% | +8.5% | 3,358 円1,556 億円 |
| やや悲観 | 27% | 2,735 円1,267 億円 | 1,755 円813 億円 | +14.8% | +1.4% | 1,212 円562 億円 |
| 悲観 | 9% | 1,943 円900 億円 | 812 円376 億円 | −29.6% | −3.4% | 248 円115 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,928 円2,746 億円 | 1,869 円866 億円 | +99.4% | +7.1% | 7,797 円3,612 億円 |
今の株価時価総額 3,910 円1,811 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 農村の囲い込みが進み、3,000店構想へ前進 利益 345 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 11,401 円5,282 億円
出店余地の大きい市町村へ小型店が着実に広がり、店数は10年で1,600店規模になる。PB比率は6割に届き、粗利の厚みが営業利益率を押し上げる。JAとの協業は全国に広がり、農家の肥料・農薬・資材の買い場として定着する。PRO業態は建築・工事の職人を囲い込み、ECと店舗受取の組み合わせも物流の自動化で採算が改善する。
人手の少ない店舗運営が賃金上昇を吸収し、建築費の高騰も出店の工夫でこなす。長期ビジョンの1.5兆円には届かないが、営業収益は7,000億円台に乗る。ここまで行けば、ためた資本を使いこなす力が示され、資本効率は資本コストを上回る。
- ホームセンター事業(ハード&グリーン・パワー・PRO):数量 1,600(店舗数(店))× 価格 4.53(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 7,246 億円・営業利益 543 億円。営業利益率7.5%
倍率:事業の純利益 345 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.31 倍、時価総額 5,282 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店・PB・農業・PROのすべてが長く噛み合う筋書きで、人口減の農村では難しい。実現すれば強いが、確度は高くない。
やや楽観 19% 出店とPBが計画に近く進み、利益率が緩やかに上がる 利益 278 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 8,443 円3,912 億円
店数は1,500店規模まで増え、売場の大型化と改装で1店当たりの売上も伸びる。PBは5割台後半に乗り、PROと農業資材が既存店の伸びを支える。物流センターの省力化が進み、人件費と運賃の上昇をおおむね吸収する。
ただし建築費の高騰が続き、新店の投資回収は以前より遅い。賃借店舗の家賃も増え、営業利益率の上がり方は7%に届かない程度にとどまる。中期計画が掲げる2028年3月期の営業利益320億円は、数年遅れで達成する形になる。農業とPROの伸びも、既存店の客数の細りを補う程度で、飛躍にはならない。会社は計画をほぼ追う形で資本を使い、ROEは資本コストと同じ水準まで戻る。
- ホームセンター事業(ハード&グリーン・パワー・PRO):数量 1,500(店舗数(店))× 価格 4.37(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 6,559 億円・営業利益 439 億円。営業利益率6.7%
倍率:事業の純利益 278 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.07 倍、時価総額 3,912 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画の方向は実現しやすいが、建築費の高騰と退店で数字はいつも計画を下回ってきた。計画に近い筋書きとして2割弱を置いた。
中立 38% 店は微増、利益率は今のまま、物価の分だけ稼ぎが増える 利益 231 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 6,876 円3,186 億円
店数は年に約20店の純増で1,420店になる。新しい店は建築費が重く、1店ごとの稼ぎは既存店ほど高くない。客数は農村の人口減で実質ほぼ横ばいか微減だが、物価と売場の拡大が売上を押し上げ、営業収益は6,000億円台になる。
営業利益率は6%前後で動かない。PB比率が上がって粗利が厚くなっても、賃金・運賃・家賃の上昇がそれを食う。つまり成長はほぼ物価の伸びで、利益が実質で増えるわけではない。会社は配当と自社株買いで利益の半分近くを返すが、自己資本はなお厚く、ROEは6%台にとどまる。筆者はこの姿を、今の延長として最も有力と見る。
- ホームセンター事業(ハード&グリーン・パワー・PRO):数量 1,420(店舗数(店))× 価格 4.28(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 6,076 億円・営業利益 365 億円。営業利益率6.0%
倍率:事業の純利益 231 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 3,186 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人口が減る農村で物価と小幅な出店だけが成長を作る、最も素直な筋書き。過去10年も営業利益率は5〜6%台が中心で、これが続くとみて確率を最も厚くした。
やや悲観 27% ドラッグ・EC・大手HCに商圏を削られ、利益率が落ちる 利益 149 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 2,735 円1,267 億円
出店は鈍り、閉店が増えて店数は1,300店前後にとどまる。農村の人口減で客数が細り、ドラッグストアやディスカウント店が日用品を、ECが工具・資材を奪う。PB比率が上がっても値下げ競争で粗利の厚みは増えない。
賃金・運賃・家賃は物価並みに上がり、売上が伸びないぶん営業利益率は4%台に落ちる。会社は資本を厚く抱えたままで、自社株買いで返しても自己資本は大きく減らない。農業資材の売上は底堅いが、JAとの協業も店の増加にはつながらない。経営は資本の使い道に迷い、遊んだ資本が増える。稼ぐ力に比べて資本が重い姿が、いっそう目立つ10年になる。
- ホームセンター事業(ハード&グリーン・パワー・PRO):数量 1,300(店舗数(店))× 価格 4.06(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 5,278 億円・営業利益 238 億円。営業利益率4.5%
倍率:ROE 4.6% は資本コスト 7.25% を大きく下回り、ためた利益は額面未満の価値。事業の ROE が k 以下なので正当化 PER の上限は 1÷k = 13.3 倍。売上が伸びず固定費(賃金・家賃・物流)が重い会社になるため、上限の約 6.4 割の 8.5 倍に置いた。
確率:小商圏の農村でも、ドラッグストアや大手ホームセンターの小型店とECが重なって攻めてくる。人口減が続く以上、起こりやすい筋書きとして3割近くを置いた。
悲観 9% 小型店モデルが崩れ、農村で稼ぐ力を失う 利益 48 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,943 円900 億円
人口減とEC・ドラッグ・大手の侵食が重なり、既存店の客数が大きく落ちる。農業資材の優位も、農家とJAの再編で薄れる。建築費の高騰で新店は採算が合わず、不採算店の閉鎖と減損が続いて店数は1,150店前後まで減る。
賃借した店舗の家賃は売上が落ちても減らない固定費として残り、営業利益率は2%まで落ちる。稼ぐ力は小さく、価値は店舗不動産を売った後に残る資産で測るほかない。PBの比率が上がっても、売る場所そのものが細っては稼ぎにつながらない。経営は店を閉じて資産を整理する方向へ動き、配当は守られるが増えない。それでも借金が軽いので、会社が行き詰まる筋書きではなく、安く評価され続ける筋書きになる。
- ホームセンター事業(ハード&グリーン・パワー・PRO):数量 1,150(店舗数(店))× 価格 3.59(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 4,130 億円・営業利益 83 億円。営業利益率2.0%
倍率:ROE 1.8% と谷の利益で、稼ぐ力(事業の純利益 48 億円 ÷ k 7.25%)は 640 億円と小さい。店舗の土地・建物を売れば現金になるので、売れる資産の税後から純有利子負債を引いた約 900 億円(floor_assets_oku)を床とし、今の自己資本 2,570 億円に対する PBR 0.35 倍で測った。
確率:借金がなく自己資本比率が6割を超えるため、倒れる筋書きの確率は低い。ただ構造的に商圏を失う道は残り、1割弱を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ホームセンター事業(ハード&グリーン・パワー・PRO)
農村・地方の小商圏に出す小型店(ハード&グリーン)、大型店(パワー)、資材・工具の専門店(PRO)の全店舗網。ECと店舗受取、リフォーム、小さな金融事業(コメリカード)を含む。
| 数量店舗数(店) | 価格1店舗当たり年間営業収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,234 | 3.12 | 3,854 | 231 |
| 10 年後 中立 | 1,420 | 4.28 | 6,076 | 365 |
取り方:2026年3月期末の1,234店で営業収益3,854億円を割り、1店当たり約3.1億円とした。営業収益には金融などの小さな事業も含むが、区分の開示を使わず1区分で積んだ。店数は実質の量。1店当たり売上は名目で、中立は10年1.37倍(物価1.34倍に、売場の大型化・PRO・EC・リフォームの実質+2%を乗せ、農村の人口減による客数の細りと相殺した)。出店は計画の3年100店だが退店があり、中立の純増は年約20店とした。
リスクと懸念
農村の人口減と商圏の細り
店は農村と地方の小商圏に集中する。人口は年0.5%ほど減るので、客数は実質で増えにくい。成長を物価と出店に頼る形のため、出店が止まれば売上は横ばいになる。
建築費の高騰と出店の遅れ
建築費の高騰で出店は計画より遅れ、2026年3月期は22店を出して16店を閉じた。造成費が大きい土地は最初から候補にしない。新店の投資回収は延び、ROEの低い資本がさらに積み上がる恐れがある。
ドラッグ・ディスカウント・ECの侵食
日用品はドラッグストア、工具・資材はネットに奪われる。農村でも商圏が重なり、値段で比べられる。会社はECと店舗受取で対抗するが、PBが半分近くあっても値下げ競争を避けきれない。
賃金・物流費・家賃の上昇
店は人手が少ないが、賃金と運賃は物価並みに上がる。建築費の高騰で賃借店舗の家賃や減価償却費も増える。売上が伸びなければ営業利益率は6%を割り込み、固定費の重さが利益に出る。
資本の効率が上がらない
ROEは過去10年の中央値で6.6%と資本コストに届かない。自己資本は厚くなる一方で、自社株買いも規模はまだ小さい。還元が増えなければ、積んだ資本の価値は額面を下回って評価され続ける。
JAとの協業と農業需要の変化
農家向けの資材とJAとの協業は強みだが、JAの再編や農家の減少で条件が変わりうる。担い手が減れば、肥料・農薬・資材の売上の土台そのものが細る。
新リース会計と見かけの財務
新リース会計基準が2028年3月期から強制され、賃借店舗は貸借対照表に載る。純有利子負債と自己資本比率の見かけは悪化するが、家賃の約束は今も変わらない。悲観では家賃が固定費として残る。
今後の分かれ目
- PBの売上比率が6割に近づき、粗利率が改善したら
- 利益率の上振れ余地が見えるので、やや楽観の確率を上げてよい。
- 出店が年30店台の純増に戻り、新店の売上が既存店並みに立ち上がったら
- 資本の再投資が資本コストを上回る証拠になり、中立〜楽観側に重みを移す。
- 自社株買いが毎年の純利益の半分を超える規模で続いたら
- 資本の重さが解消に向かい、ROEが上がる道筋として確率を楽観側へ寄せる。
- 既存店の客数が連続して減り、営業利益率が5%を割り込んだら
- 商圏の侵食が構造的とみて、やや悲観・悲観の確率を厚くする。
- JAとの協業が全国に広がり、農業資材の売上が既存店を押し上げたら
- 農家向けの堀が深まったとみて、やや楽観側の確度を上げる。
- 筆頭株主の米利が関わる再編や非公開化の動きが出たら
- 現金での買い取りで時価総額が一段上がる可能性があるが、価格と条件の確認が先で、確率は動かさない。
見ておくもの
- PB比率の推移(目標6割)と粗利率
- 年間の出店・退店数と、新店の1店当たり売上
- 既存店の客数と客単価(月次)
- 自社株買いの規模と自己資本の増え方
- 農業分野のJA協業先の数とPRO業態の売上
倍率と資本コストの決め方
店数(実質)×1店当たり営業収益(物価込みの名目)で積み、利益率は物価で動かさず、自己資本は今+期間の純利益−還元で流して、ROEは結果として出した。倍率は式の上限(ROEがkを下回るので上限は1÷k、7.5%なら13.3倍)に対する割合で置き、市場の水準からは置いていない。純有利子負債は時価総額の7.7%で、純現金ではないため余剰現金は立てていない。悲観は、稼ぐ力(純利益÷k)と、店舗不動産の税後の概算から純有利子負債を引いた床(900億円・BS内訳は未確認の概算)で置き、過去のPBRの底からは置いていない。賃借店舗は新リース会計(2028年3月期)で純負債が増える形になるが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえている。今の値段に寄せて幅を狭めてはいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.4→15.31 倍・やや楽観 PER 11.5→14.07 倍・中立 PER 10.7→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality 0 を足した 7.5%。事業は傾いておらず、借金も軽いので上乗せ(extra)は置かない。出店の遅れ・建築費高騰・支配株主の固さといった個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.25%。