結論
マキヤは、静岡県を中心に総合ディスカウント店と食品スーパー、業務スーパーのフランチャイズ店など111店を営む会社だ。筆者の結論は、今の値段は安いというものだ。会社が自社株を買い取って株数が減り、利益に対する値段は7倍ほどになった。
2026年に、筆頭株主だった創業家の資産管理会社の持ち分43%を、会社が自己株の公開買付けで買い取った。買った株の一部は、業務スーパーの本家である神戸物産に売り、神戸物産が筆頭株主になった。大株主の売り圧力が消え、仕入れと出店で組む相手ができた。ここがこの会社の転機だ。
稼ぎは堅い。営業利益率は2%台で、決して高くはない。だが10年のうちに赤字の期は一度もなく、生活に近い商売なので波も小さい。物価が年3%で上がる世界では、売上は金額で伸びる。人件費の上昇を吸収できるかが、利益の厚みを決める。
一方、買付けの資金は借入で賄った。借金は増え、金利が上がる分だけ利益は削られる。それでも自己資本比率は5割ほどを保つ。筆者は、中立の10年で利益は今の1.6倍に育つと見る。それに対して市場は、利益の7倍ほどでしか値を付けていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を一言で言えば「悪くないが、普通」の小売だ。利益率は薄く、堀も弱い。それでも評価したいのは、値段の安さと、資本の使い方が株主の側に向いてきたことだ。
安全域は、利益の7倍という値段にある。10年先の利益が今の1.6倍になれば、倍率が10倍に上がらなくても、元は取れる。利益が横ばいでも、今の値段なら配当と自社株で報われる余地がある。
確かめたいのは、買付けで増えた借金の返し方と、神戸物産との提携の中身だ。提携が出店と仕入れの改善につながれば、利益率は2%台から3%近くに動く。逆に、提携が名ばかりで終われば、利益は物価で増えるだけになる。
オーナーとして持ち続けたいかと問われれば、利益率が3%に近づく確証が出るまで、確信は持てない。それでも、確信が持てない分を割り引いても、値段は安い。
何で稼ぐ会社か
マキヤの稼ぎは、静岡県を中心とした店舗の小売と、通販事業の二本立てだ。店の中心は総合ディスカウント店の「エスポット」で21店。食品、日用品、ドラッグ、ダイソーの雑貨を一つの店に並べる。食品スーパーの「ポテト」「マミー」が14店。神戸物産のフランチャイズで営む「業務スーパー」が54店。リユースのハードオフ・オフハウスのフランチャイズが7店。2025年12月時点で計111店になる。
2024年4月時点の売上の構成は、エスポットが6割、業務スーパーが2割強、ポテト・マミーが1割強だった。客は地元の家族連れで、毎日の買い物で使われる。食品を軸に、薬や雑貨を足して客単価を上げる作りだ。
通販は、2024年2月に買ったユージュアルグループが担う。アマゾン、楽天市場、ヤフーのモールで商品を売る会社で、買収前の売上は約60億円だった。2025年3月期の通販事業は、営業収益71億円、営業損失1億円強。店舗の仕入れと組み合わせて、利益の出る形にするのが課題だ。
2026年3月期は、営業収益937億円、営業利益21億円、純利益15億円だった。2026年4〜6月は、来店客数が0.2%増、買上点数が1.2%増、客単価が4.1%増と、値上げを客数減なしで通している。ただし内訳の数字(店舗と通販の利益の区分、店ごとの売上)は決算の細かい開示で、ここでは売上からの推定を使っている。
優良さと弱いところ
優良さは並みだ。強みは、店の種類を地域の暮らしに合わせて組み合わせられる点にある。ディスカウント、食品スーパー、業務スーパーを一つのグループで持ち、客を逃がさない。仕入れも、グループの量でまとめて買える。
ただし、堀、つまり他社がまねしにくい強みは弱い。食品は価格の比較が簡単で、静岡にはイオン系のマックスバリュ東海をはじめ、強い競合が多い。ドラッグストアも食品を売る。値決めの力は普通で、利益率は2%台にとどまる。
筆者が評価するのは、資本の使い方が変わりつつある点だ。創業家の持ち分を会社が買い取り、株数を3割減らした。少数株主にとっては、1株の稼ぎが増える。配当も、性向25%以上の方針で増やしてきた。
弱みは、営業利益率が過去12年の最高でも3.1%と、薄いことだ。人件費が物価を超えて上がると、利益はすぐ削られる。小さな会社なので、静岡という一つの地域に頼る度合いも高い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
静岡の食品小売りは、人口が減る中で、店の数が余り気味の市場だ。食品の量は、これから10年でじりじり減ると筆者は見る。ただし物価が年3%で上がるので、売上の金額は伸びる。
競争は、三つの方向から来る。一つは大手スーパー。マックスバリュ東海などイオン系が、プライベートブランド(自社ブランド)と規模で攻める。二つめはドラッグストア。薬と日用品に加えて、安い食品を並べる。三つめはネット通販。生鮮は弱いが、日用品はネットに流れる。
その中で、業務スーパーは追い風を受けている。冷凍食品と輸入の加工食品を安く売るモデルで、物価高の世でも客が来る。神戸物産のフランチャイズ店は全国で出店を続けており、マキヤも2029年3月期までに54店から70店に増やす計画だ。
人手の面では、最低賃金とパートの時給が年3〜5%で上がり続ける。セルフレジなどの自動化投資で吸収できる店と、吸収できずに利益を削られる店に分かれる。小さな会社ほど、この投資の負担が重い。マキヤは売上の約1割が通販で、店舗とは別の競争にも身を置いている。
資本政策と M&A
資本政策は、2026年5月に大きく変わった。筆頭株主だった創業家の資産管理会社マキリが、持ち分43.4%の全株を売る意向を示し、会社が自己株の公開買付けで買い取った。価格は市場価格を1割余り下回る水準で、総額は約45億円。買い付けの期間は5月27日から6月23日。
同時に、買った株のうち140万株を、神戸物産に第三者割当で売った。価格は直近の市場価格並みで、約17億円。神戸物産の持ち分は19.83%で、筆頭株主になる。持分法の適用会社にはならない。共同仕入れ、総菜、業務スーパーの出店で組む。
買付けの資金は、三菱UFJ銀行の借入(上限50億円)と手元資金で賄い、処分の代金で返済する。買付け後の純有利子負債は35億円ほどになる。株数は約1,000万株から約706万株に減った。
還元は、配当性向25%以上と、純資産に対する配当(DOE)の向上が方針だ。2026年3月期の配当は前の期から2割増やした。株主優待は年2回、買物額の1割を引く券を出す。100株で年12枚。年間の費用は開示がなく、株主数も確かめられていない。ここでは年0.6億円と推定して、還元に足した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
買付けで、売り手側の事情が消えた。創業家の持ち分43%は、会社が買い取った。残った株主にとっては、1株の利益が約4割増える。しかも神戸物産が筆頭株主として入り、業務スーパーの出店を70店まで増やす道筋がある。
業務スーパーは、冷凍と輸入の加工食品の安売りで、物価高の世に強い。すでにマキヤ内の稼ぎ頭の一つで、神戸物産のノウハウと共同仕入れが加われば、利益率の改善が見込める。総菜でも組む。
通販は、赤字から黒字に変われば、それだけで営業利益が数億円増える。店舗で仕入れた商品を通販でも売る相乗効果は、これからだ。ダイソーの増床など、既存店の改装で客単価を上げる余地も残る。
人件費は物価で上がるが、客単価は4%増と、値上げは通っている。2026年の営業利益は、1Qで16.5%増えた。値段が利益の7倍では、これらの改善を全く織り込んでいない。配当も前の期から2割増やしており、性向25%以上の方針が守られれば、利益が伸びる分だけ配当も伸びる。
慎重な見方
利益率が薄い会社に、借金が増えた。買付けで純有利子負債は35億円ほどになり、借り換えの金利は3.5%を見込む。利払いの増加は年1億円強で、純利益の1割弱を食う。しかも、買付けで流通する株は3割減り、買い手が少ない。
神戸物産との提携は、まだ書面の上の話だ。共同仕入れの利益は小さく、出店の費用は先に出る。業務スーパーのフランチャイズ店は、本部が利益を取り、加盟店の取り分は大きくない。出店を急ぐほど、立ち上がりの赤字が先に出る。
静岡は人口が減る。ドラッグストアとイオン系が食品に攻め込み、客数が落ちれば、2%台の利益率は一気に1%台に落ちる。通販は、モールの手数料と広告費で、赤字から抜け出す道がまだ見えない。のれんの減損という形で、買収の失敗が表に出る恐れもある。
PERが7倍なのは、市場がこの薄さを見抜いているからだ。安く見えるのは当然で、割安とは言えない。創業家という大口の買い手が消えた後、少ない流通株で売買が薄くなれば、値段が利益に追いつくまで時間がかかる。
どちらに重みを置いたか
利益の質を考えても、値段は安すぎる。そこで、楽観・中立側に確率の大半を置いた。利益率の薄さと借金という慎重な見方は、やや悲観と悲観に合わせて3割置くことで反映した。提携の成果が数字に出るまでは、楽観の確率は8%にとどめる。中立を4割、その上下を合わせて6割に分け、強気の見方の根拠である値段の安さを、確率の上では中立より上に厚く置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,422 円312 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 848 円60 億円)。 今の値に割り戻すと 2,736 円193 億円、今との差 +95.5%、 期待の年率 +14.2%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,292 円586 億円 | 1,341 円95 億円 | +588.1% | +21.3% | 771 円54 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,448 円455 億円 | 1,090 円77 億円 | +438.5% | +18.3% | 1,508 円106 億円 |
| 中立 | 40% | 4,882 円345 億円 | 906 円64 億円 | +313.5% | +15.3% | 2,315 円164 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,893 円134 億円 | 593 円42 億円 | +77.6% | +5.9% | 547 円39 億円 |
| 悲観 | 10% | 996 円70 億円 | 297 円21 億円 | −7.6% | −0.8% | 129 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,422 円312 億円 | 848 円60 億円 | +276.4% | +14.2% | 5,270 円372 億円 |
今の株価時価総額 1,400 円99 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 提携が実り、静岡の外へ出店が伸びる 利益 37 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 8,292 円586 億円
業務スーパーが70店を超えて100店に近づき、総菜の共同開発も当たる。静岡の外へ出店が進み、店は150店になる。物価が年3%で上がるなか、値上げは客数を落とさず通り、客単価が伸びる。共同仕入れで原価が下がり、営業利益率は過去の最高3.1%に並ぶ。通販は店舗の仕入れ網に乗って黒字に転換し、営業利益率は3%まで改善する。借入は5年で返し終わり、配当性向は35%に上がる。自社株買いも再開し、株主への還元は厚くなる。ただし、10年先まで3%超の利益率が続く保証はなく、売上の伸びで利益を取る筋書きだ。筆者は、この姿に届く確率は1割に満たないと見る。
- 店舗小売(エスポット・ポテト・マミー・業務スーパー・ハードオフ):数量 146(店数 × 1店の客数・買上数の指数(今を1))× 価格 10(1店あたりの年間営業収益(億円))→ 売上 1,493 億円・営業利益 46 億円。150店×客数指数0.97・営業利益率3.1%
- 通販(ユージュアルグループ):数量 347(受注件数(万件))× 価格 0.60(1件あたりの売上(万円))→ 売上 210 億円・営業利益 6 億円。通販 受注1.8倍・営業利益率3%
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍。全体の PER 15.74 倍、時価総額 586 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:神戸物産が筆頭株主になって初めての10年。出店と仕入れで成果が出る余地はあるが、小さな会社の提携が計画どおり進む例は多くない。成功しても利益率が3%台前半までで、確率は1割弱に抑えた。
やや楽観 20% 業務スーパーが伸び、利益率が少し上がる 利益 30 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 6,448 円455 億円
業務スーパーが70店に届き、エスポットも改装で客単価を伸ばす。店は135店になる。客数は人口減で4%ほど落ちるが、値上げは物価並みに通る。共同仕入れと総菜の効果で、営業利益率は2.9%まで改善する。通販は赤字を脱し、2%の営業利益率に届く。借入は6〜7年かけて返し、配当性向は3割強になる。神戸物産との関係は深まるが、完全子会社化のような形には進まない。ここまでは筆者が最も自然だと考える範囲で、会社の公表している出店の目標を少し上回る程度の成果だ。10年のうちに、配当は利益の伸びとともに増えていく。
- 店舗小売(エスポット・ポテト・マミー・業務スーパー・ハードオフ):数量 130(店数 × 1店の客数・買上数の指数(今を1))× 価格 10(1店あたりの年間営業収益(億円))→ 売上 1,330 億円・営業利益 39 億円。135店×客数指数0.96・営業利益率2.9%
- 通販(ユージュアルグループ):数量 290(受注件数(万件))× 価格 0.60(1件あたりの売上(万円))→ 売上 175 億円・営業利益 4 億円。通販 受注1.5倍・営業利益率2%
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍。全体の PER 14.82 倍、時価総額 443 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業務スーパーの出店計画(70店)は、すでに公表されており達成の見込みが高い。その結果、利益率が少し上がる筋書きは、強気・慎重のどちらから見ても十分あり得る。中立の次に厚く置いた。
中立 40% 出店は着実に進み、利益率は今の水準 利益 24 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 4,882 円345 億円
店は125店になり、出店の中心は業務スーパーだ。客数は5%ほど減るが、物価並みの値上げが通り、売上は金額で1.45倍になる。人件費は物価を上回って上がり、本社費や物流費も物価で増えるため、営業利益率は今の2.7%から2.6%へ少し下がる。今ある店の償却は取得時の値段のまま据え置かれるが、新店の建築費は上がる。通販は赤字を抜け、利益率1%にとどまる。買付けの借入は6年ほどで返し、配当性向は3割。中期計画の売上1,000億円は、2020年代の終わりに達する。神戸物産との提携は、仕入れの面で一定の成果が出るが、利益率を押し上げるほどではない。
- 店舗小売(エスポット・ポテト・マミー・業務スーパー・ハードオフ):数量 119(店数 × 1店の客数・買上数の指数(今を1))× 価格 10(1店あたりの年間営業収益(億円))→ 売上 1,219 億円・営業利益 32 億円。125店×客数指数0.95・営業利益率2.6%
- 通販(ユージュアルグループ):数量 251(受注件数(万件))× 価格 0.60(1件あたりの売上(万円))→ 売上 151 億円・営業利益 2 億円。通販 受注1.3倍・営業利益率1%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.68 倍、時価総額 326 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気の見方(買付けと提携の効果)と慎重な見方(利益率の薄さと借金)の落としどころ。業務スーパーの出店は進むが、利益率は人件費の上昇で伸びきらない姿を、最も確からしいと置いた。
やや悲観 22% 競争に押され、利益率が下がる 利益 12 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,893 円134 億円
イオン系とドラッグストアが食品を強め、客数は12%落ちる。値上げは物価に届かず、10年で1.30倍にとどまる。人件費だけが物価を超えて上がり、営業利益率は1.8%まで下がる。店は今の111店のまま増えない。通販は、モールの手数料と広告費に押されて赤字を抜け出せず、損益はゼロ近辺。借入の返済を優先して配当性向は3割弱に落ちる。提携の効果は小さい。神戸物産は筆頭株主でも、経営への関与は限られる。倒れる会社ではないが、値上げが通りにくい薄利の店になり、成長の物語は終わる。株主への還元は借入の返済を優先して細り、配当は据え置きに近い。
- 店舗小売(エスポット・ポテト・マミー・業務スーパー・ハードオフ):数量 97.7(店数 × 1店の客数・買上数の指数(今を1))× 価格 9.96(1店あたりの年間営業収益(億円))→ 売上 972 億円・営業利益 18 億円。111店×客数指数0.88・営業利益率1.8%
- 通販(ユージュアルグループ):数量 193(受注件数(万件))× 価格 0.59(1件あたりの売上(万円))→ 売上 113 億円・営業利益 0 億円。通販 受注1.0倍・営業利益率0%
倍率:事業の ROE 4.2%(k 7.5% を下回る)。ROE が k に届かない会社の倍率は 1÷k の 13.3 倍が上限で、ここでは薄利と成長の欠如から 8.5 倍に置いた。中立の倍率より低い。
確率:地方の食品小売は、競争が厳しく、人件費の上昇を吸収できない会社が出ている。静岡の人口減と大手・ドラッグの攻勢が重なる可能性は、決して小さくない。
悲観 10% 薄利の地方スーパーとして、優良さを失う 利益 3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 996 円70 億円
静岡で店の数が余り、赤字の店を閉める。店は95店まで減り、客数は22%落ち、値上げも10年で1.20倍にとどまる。人件費は物価で上がり続け、営業利益率は0.8%にまで落ちる。通販は成果が出ずに規模を縮め、のれんを減損する。店の固定費と家賃は売上が落ちても減らず、利益の落ち込みは売上の落ち込みよりずっと大きい。借入は残り、配当は性向25%の下限を守る程度に縮む。利益は今の2割ほどにとどまる。会社の価値は、稼ぐ力ではなく、売れる店と土地の価値で測られる。経営陣の交代や、神戸物産によるさらなる出資の増加で、少数株主の立場が変わる可能性もある。
- 店舗小売(エスポット・ポテト・マミー・業務スーパー・ハードオフ):数量 74.1(店数 × 1店の客数・買上数の指数(今を1))× 価格 9.19(1店あたりの年間営業収益(億円))→ 売上 681 億円・営業利益 5 億円。95店×客数指数0.78・営業利益率0.8%
- 通販(ユージュアルグループ):数量 154(受注件数(万件))× 価格 0.54(1件あたりの売上(万円))→ 売上 83 億円・営業利益 −1 億円。通販 受注0.8倍・営業利益率−1%
倍率:ROE が k を大きく下回り、稼ぐ力(事業の純利益 3 億円 ÷ k)は小さい。売れる資産の税後を床とみて、今の自己資本 196 億円に PBR 0.37 倍を掛けた。中立の PBR より低い。
確率:人口減・ドラッグの食品化・ネット通販の三つが同時に強まり、提携も実らない複合の筋書き。生活必需品の店は消えないが、薄利の地方チェーンが利益を失う例は十分にあり、無視しない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
店舗小売(エスポット・ポテト・マミー・業務スーパー・ハードオフ)
静岡県を中心とする総合ディスカウント店・食品スーパー・業務スーパーのフランチャイズ店など111店の小売。
| 数量店数 × 1店の客数・買上数の指数(今を1) | 価格1店あたりの年間営業収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 111 | 7.66 | 850 | 23 |
| 10 年後 中立 | 119 | 10 | 1,219 | 32 |
取り方:店舗数は2025年12月時点の111店。営業収益937億円から通販事業の約87億円(推定)を引いた約850億円を店舗に割り、1店あたり7.7億円とした。営業利益は連結21.3億円から通販の赤字と本社費を除いた推定。セグメントの細かい開示は未確認で推定。
通販(ユージュアルグループ)
アマゾン・楽天・ヤフーのモールで商品を売る2024年2月買収の子会社。
| 数量受注件数(万件) | 価格1件あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 193 | 0.45 | 87 | −1 |
| 10 年後 中立 | 251 | 0.60 | 151 | 2 |
取り方:2025年3月期の営業収益71億円・営業損失1.2億円を出発点に、2026年3月期の売上を約87億円(推定)、営業損失1.2億円と置いた。1件あたりの売上は約0.45万円と置いた推定で、受注件数の開示は未確認。2026年3月期の通販の開示も未確認。差額の本社費0.5億円は筋書きの調整に入れる。
リスクと懸念
買付けで増えた借金
買付けの総額は約45億円で、神戸物産への処分代金17億円を引いても、純有利子負債は35億円ほどになる。借り換えの金利は3.5%を見込み、利払いは年1億円強増える。利益率が薄い会社なので、金利の上昇が純利益の1割近くを削る。
人件費の上昇
最低賃金とパートの時給は、年3〜5%で上がり続ける。値上げが追いつかなければ、2%台の営業利益率は直接削られる。小さな会社は、セルフレジなどの自動化投資の負担も重い。
神戸物産との提携の実現度
共同仕入れと出店は、まだ協議中の段階だ。成果が出なければ、提携は看板だけになる。業務スーパーはフランチャイズなので、本部の取り分が大きく、加盟店のマキヤに残る利益は小さい。
静岡の人口減と競合
静岡は人口が減り、イオン系やドラッグストアが食品を強化している。客数が落ちると、固定費の重い店は利益が大きく減る。地域が一つに集中する分、逃げ場が少ない。
通販事業の黒字化
通販は買収後も営業赤字が続く。モールの手数料と広告費が重く、店舗との相乗効果が数字に出ていない。のれん(約14億円)の減損が出る可能性もある。
株式の流動性と大株主
買付けで流通する株は約706万株に減った。神戸物産が19.8%を持ち、残りは取引先の持株会や個人が多い。売買は薄く、神戸物産の持ち分が今後さらに増えるか(買い増し・子会社化)も株主の立場を左右する。
今後の分かれ目
- 業務スーパーが70店に届き、営業利益率が2.8%を超えたら
- 楽観・やや楽観の筋書きに重みを移す。提携の効果が数字に出た合図だ。
- 営業利益が、増収にもかかわらず2期続けて減ったら
- 人件費の吸収が難しいとみて、やや悲観側に重みを移す。
- 神戸物産が持ち分を20%超に増やす、または子会社化を打診したら
- 買収価格が焦点になる。今の値段を大きく上回る提示なら、本質価値に近づく動きとして重みを見直す。
- 通販が営業黒字に転じたら
- 店舗との相乗効果が出た証拠として、中立の利益率を少し引き上げて読む。
- 借入を前倒しで返し、配当性向を上げる発表が出たら
- 資本の使い方がさらに株主向きに動いたとみて、確率を楽観側へ寄せる。
見ておくもの
- 業務スーパーの店数(70店の目標)と既存店の客単価・客数(月次売上速報)
- 営業利益率の推移と人件費の増加額
- 純有利子負債の返済の進み具合
- 神戸物産の持株比率の変化
- 通販事業の営業損益
倍率と資本コストの決め方
店数×客数の指数を数量、1店あたりの営業収益を名目の価格として積み、利益率は人件費の上昇と競争から出した。倍率は正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限(k 7.5%、g 4.0%、RONIC=k+1/2×(ROE−k))の約9割を中立に置いた。今の株価が利益の7倍近いことは、倍率の根拠にしていない。自己株の公開買付けの価格や神戸物産への処分価格も使っていない。株数は買付け後の706万株で、kabufuの台帳の990万株とは違う。店舗の家賃は営業費用に入れた今と同じ形でそろえ、2028年3月期からの新リース会計基準で数字の形が変わる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.1→15.74 倍・やや楽観 PER 12.8→14.82 倍・中立 PER 11.5→13.68 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。