結論
セリアは、全国に約2,100店を持つ100円ショップの2番手だ。筆者の結論は、事業は優れているが今の値段は先を織り込みすぎている、というものだ。いちばんの理由は、100円という値札が利益の天井になることにある。
強みははっきりしている。商品の入れ替えが速く、女性客の「見つける楽しさ」を取っている。店は年100店を超えるペースで増え、足元の売上も利益も勢いがある。借金はなく、自己資本比率は7割を超える。
弱みは、人件費と仕入れ値が物価で上がる時に、値札を動かせないことだ。会社は300円以上の商品を増やして対応するが、客は100円の棚に戻りやすい。ダイソーとの規模の差も縮まらない。
10年後の中立の姿は、店が2,550店ほどに増え、営業利益率は今と同じ8%前後にとどまる。純利益は230億円ほどで、稼ぎの大半は配当と自社株買いで株主に戻る。
今の時価総額は、この筋書きの価値を上回る。海外のような数量の伸びがなく、国内の店数と物価で伸びが決まるためだ。今の値段が正当化されるのは、出店が3,000店台に乗り、利益率も過去最高を超える強気の筋書きに近い場合だけだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、セリアは「よい商売」だが「圧倒的な商売」ではない。小さな売り場で商品を速く回し、無借金で毎年利益を出す。この商売の質は高い。
オーナーとして持ち続けたいかを問うと、答えは条件つきだ。理由は、10年先の稼ぎが店数と物価の積で決まることにある。堀が並みなので、値札の枠内で原価と人件費の上昇に負け続ければ、利益率は削られる。
経営の資本の使い方は評価できる。大型買収に走らず、借金もしない。創業家の売却を自社株買いで受けた判断は、株主にとって損のない形だった。一方で、手元に積み上がる現金をどう戻すかは、今後も見ておきたい。
安全域は、今の値段にはない。店が着実に増え、利益率も保たれる中立の筋書きでも、10年後の価値を資本コストで割り戻すと今の時価総額に届かない。今の値段は、出店の加速と利益率の上昇がほぼ全部うまくいく世界を払っている。筆者はそう見る。ただし事業そのものは堅く、悲観の筋書きでも現金が価値の床になる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。100円(税抜)の雑貨を、全国のスーパーやショッピングセンターの一角で売る。収益は国内の直営店がほぼすべてで、FC店は30店ほどにすぎない。台所用品、収納、文具、インテリア雑貨、手芸まで、商品は数万点に及ぶ。
セリアの特徴は、他社より売り場が小さく、商品の入れ替わりが速いことだ。毎月多くの新商品を出し、流行を追う。デザインにこだわった雑貨が多く、20〜40代の女性客が中心になる。売れない商品は早く棚から外す。
商品の多くは中国などで作らせた輸入品で、原価を100円に収めるため、仕様の見直しと低原価品の開発が欠かせない。値札を守るため、容量や素材を調整することも多い。同時に300円以上の高価格商品も増やし、客単価と粗利益率を上げようとしている。
店は賃借が中心で、出店先は取引先のスーパーやショッピングセンターが多い。複数店を展開する取引先との関係が、出店の速さを左右する。新店を建てる投資は1店あたり小さく、回収は早い。
会社は、国内6,000店を最終目標にしている。体制を整えれば3,000〜4,000店は可能という見方だ。ただし時期は示していない。今期の出店は120店ほどで、うち約3分の1は閉店を伴う入れ替えだ。セルフレジは全店への導入を進めている。
優良さと弱いところ
セリアの優良さは、「小さくても稼ぐ」仕組みにある。営業利益率は8%前後と、スーパーより高い。借金はなく、自己資本比率は7割を超える。ROEは過去10年の中央値で16%と高い。ただしこれは、利益を厚くためた結果の面もある。
堀、つまり他社がまねできない強みは、並みと見る。商品企画の速さと、全国の出店網は本物だ。しかし仕入れの規模はダイソーに及ばず、100円という値札は他社も同じだ。客が「セリアでなければ」と選ぶ理由は、品ぞろえの新しさに限られる。強い堀とは言えない。
利益率は10年間、7〜10%台で動いた。2021年3月期に10.6%の高みをつけ、2024年3月期には6.8%まで落ちた。人件費と輸入原価の上昇が、値札を動かせない構造に重なったためだ。足元は持ち直したが、同じ圧力は再び来る。
経営は創業家の流れを引く。創業者の河合宏光氏の後を、河合映治氏が2013年に継いだ。創業家の資産管理会社が株の一部を手放し、会社が自社株として買い取ったのは、資本の使い方として良い判断だと筆者は見る。弱みは、成長の道筋が出店数に偏り、海外の成長力がない点だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
100円ショップ市場は、大手4社を中心に1兆1,000億円台まで育った。10年前の1.5倍だ。ただし2025年度の伸びは2.7%と、前年の6.8%から鈍った。店の数は大手4社で9,400店ほど。物価の上昇と店数の増加で市場は伸びたが、数量の天井も見えてきた。
競争の形は二極化だ。ダイソーが約4,000店でトップに立ち、セリア、キャンドゥ、ワッツが続く。小さな事業者は100円を守れず撤退している。ダイソーは仕入れの規模で優位に立つが、セリアは商品企画の速さで客を取っている。
もう一つの変化は「脱・100円」だ。大手は300〜500円の商品を増やしている。無印良品や300円ショップ、プチプラ雑貨との境目がぼやけ、競争相手が広がった。値札を超えた商品は粗利益率が高いが、100円に慣れた客の反応は不確かだ。
コスト面では、人件費が毎年3〜5%上がる。輸入品の仕入れ値は、円安と中国の製造コスト上昇で上がる。セルフレジやDXで省人化を進めても、完全には吸収できない。物価が上がる世界では、値札を動かせない業態に不利に働く。
景気の面では、100円ショップは不況に強い。節約の客が流れてくる。ただし、雑貨は買い控えもしやすい。リーマンの時のような谷でも、衣料や家具ほど落ち込みは深くないと見る。
資本政策と M&A
資本の使い方は、堅実で、近年は株主寄りだ。2025年6〜7月に、自己株式の公開買付けで約250億円を使った。創業家の資産管理会社が持株の一部を手放す意向を示し、市場価格から約2割引きの値段で会社が買い取った。創業家の持株比率は33%から17%へ下がった。
筆者はこれを前向きに見る。市場に大量の売りが出る事態を避け、1株あたりの利益を押し上げた。一方、配当は据え置きで、還元の水準はなお低い。今後は利益の伸びに合わせて検討するとしており、還元の厚みが今後の論点になる。
M&Aはほとんど行わない。出店は自社の成長が中心で、大型の買収で価値を壊す心配は小さい。創業家の持株は17%と、完全な支配からは下がった。2024年にはアクティビスト系の投資家が10%の議決権を持つ株主として現れた。今も保有しているかは未確認だ。TOBや再編の可能性は、他社より低くないと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
セリアは、国内で最も商品企画の速い100円ショップだ。足元は売上も利益も勢いがあり、第1四半期の営業利益は5割近く伸びた。出店は今期120店ほどで、会社は国内6,000店を最終目標にし、3,000〜4,000店までは体制を整えれば届くと言う。店は今の2倍近くまで増やせる余地がある。
利益率も伸びる。セルフレジの全店導入で人手が減り、低原価の商品開発と300円以上の高価格商品で粗利益率が上がる。不採算店の入れ替えも、1店あたりの売上を押し上げる。物価が上がる世界では、毎月新商品を出して客を飽きさせない店が有利になる。
資本の面でも変化が起きた。創業家の資産管理会社の売却を、自己株式の公開買付けで受けた。株の持ち手が変わり、還元を厚くする土台ができた。無借金で自己資本比率は7割を超えるため、還元と出店の両方に資金を回せる。ダイソーに次ぐ2番手として、市場が伸びる分を同じペースで取り込めば、10年で利益は2倍近くになる。
慎重な見方
100円ショップは、値札が100円に縛られた業態だ。最低賃金は毎年上がり、円安と中国の製造コストが輸入原価を押し上げる。それを価格に載せられない。会社は低原価品の開発で凌ぐが、容量や素材を削る工夫には限りがある。
足元の高い利益率は、一時的な原価率の改善に支えられた面がある。過去10年で、営業利益率は6.8%から10.6%の間を行き来した。次に人件費が重くなれば、利益率は簡単に7%台へ戻る。
競争は厳しい。ダイソーは約4,000店と仕入れの規模で勝り、出店攻勢も続く。300円ショップや無印良品、プチプラ雑貨など、100円に縛られない競争相手も増えた。会社が掲げる出店目標は大きいが、立地は取り合いで、閉店と入れ替えのコストもかかる。
しかも国内は人口が減る。海外の成長がないセリアは、店数と物価でしか伸びない。公開買付けで250億円の現金も使った。配当はまだ低く、利益の大半を積み上げて低ROEに戻るリスクもある。固定の家賃を抱えた小売は、売上が落ちると利益が先に削られる。
どちらに重みを置いたか
事業の質は強気の見方が正しく、10年の価値の置き方は慎重な見方が正しいと判断した。確率は、中立にいちばん重みを置き、やや楽観にも厚みを残した。足元の勢いと出店の余地は本物だからだ。一方で、値札に縛られる構造と、人件費・原価の上昇は避けにくい。楽観とやや楽観の合計は3割台、やや悲観と悲観は3割ほどに置いた。中立の価値は今の時価総額に届かない。楽観の筋書きでようやく今の値段を超える。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 7,001 円4,388 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,839 円1,153 億円)。 今の値に割り戻すと 4,773 円2,991 億円、今との差 +13.0%、 期待の年率 +7.7%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 13,334 円8,357 億円 | 2,234 円1,400 億円 | +268.5% | +13.9% | 1,868 円1,171 億円 |
| やや楽観 | 22% | 10,061 円6,305 億円 | 2,122 円1,330 億円 | +188.4% | +11.2% | 2,680 円1,680 億円 |
| 中立 | 36% | 7,228 円4,530 億円 | 2,074 円1,300 億円 | +120.2% | +8.2% | 3,349 円2,099 億円 |
| やや悲観 | 20% | 2,582 円1,618 億円 | 1,388 円870 億円 | −6.0% | −0.6% | 794 円498 億円 |
| 悲観 | 10% | 689 円432 億円 | 798 円500 億円 | −64.8% | −9.9% | 149 円93 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,001 円4,388 億円 | 1,839 円1,153 億円 | +109.2% | +7.7% | 8,840 円5,540 億円 |
今の株価時価総額 4,225 円2,648 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 12% 出店が3,000店台に乗り、100円の枠を超えて稼ぐ 利益 397 億円 · PER 21.1 倍 · 株価時価総額 13,334 円8,357 億円
出店の体制づくりが実り、店は10年で3,300店近くまで増える。人気の出店先をスーパーやショッピングセンターから先に押さえ、ダイソーとの店の重なりも整理が進む。100円の枠は守りながら、300円以上の雑貨の構成比が上がり、1店あたりの売上は物価を少し上回って伸びる。セルフレジの全店導入とスクラップ&ビルドで人手と不採算店が減り、営業利益率は過去最高の10%台に乗る。創業家が株を手放した後も、配当と自社株買いで稼ぎの大半が株主に戻る。国内の雑貨店として、ダイソーに次ぐ確かな2番手の座が固まる10年になる。
- 100円ショップ事業(直営+FC):数量 3,300(店舗数(店))× 価格 1.70(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 5,623 億円・営業利益 562 億円。営業利益率10.0%
倍率:事業の純利益 397 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.0 倍。全体の PER 21.05 倍、時価総額 8,357 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店余地の言葉どおりに店数が3割増え、利益率も過去最高を超える必要がある。連続して当たる確率は高くない。
やや楽観 22% 出店は計画どおり進み、利益率は少し上がる 利益 310 億円 · PER 20.3 倍 · 株価時価総額 10,061 円6,305 億円
出店は毎年100店を超え、閉店を引いた純増は年80店ほどになる。10年後の店数は2,900店ほどだ。値上げに頼らず、300円以上の商品と低原価の商品開発で粗利益率をじわりと上げる。セルフレジの定着で人件費の伸びを抑え、営業利益率は9%に届く。中国の生産コストの上昇や円安は、仕入れ先の分散で吸収できる。株主への還元は、公開買付けの経験もあって利益の65%前後まで厚くなる。ダイソーとの差は縮まらないが、100円ショップ市場の伸びを同じペースで取り込める。創業家の持株が下がった後も、経営は出店と還元の両立という姿勢を保つ。アクティビスト系の株主の目も、資本の無駄づかいを防ぐ。
- 100円ショップ事業(直営+FC):数量 2,900(店舗数(店))× 価格 1.67(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 4,835 億円・営業利益 435 億円。営業利益率9.0%
倍率:事業の純利益 310 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.3 倍。全体の PER 20.34 倍、時価総額 6,305 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今期の出店計画と足元の既存店の勢いが続けば届く水準。ただし店数の純増は、閉店とセットで考える必要がある。
中立 36% 店は増えるが、100円の枠が利益を押さえる 利益 233 億円 · PER 19.3 倍 · 株価時価総額 7,228 円4,530 億円
出店は続くが、よい立地が減り、純増は年45店ほどにとどまる。10年後は2,550店ほどだ。国内の客数は人口減で細り、1店あたりの売上は物価の伸びをやや下回る。100円という値札が利益の天井になり、人件費と仕入れ値の上昇を価格に載せきれない。営業利益率は今期並みの8%で横ばいになる。現金は積み上がりやすいが、公開買付けで見せた姿勢から、稼ぎの7割ほどは配当と自社株買いで戻る。強い会社だが、伸びは物価と店数で決まる静かな10年になる。アクティビスト系の株主が残っても、経営の方針は大きくは変わらない。人口減の国内で、売上の伸びはほぼ物価と店数の積に収まる。
- 100円ショップ事業(直営+FC):数量 2,550(店舗数(店))× 価格 1.58(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 4,034 億円・営業利益 323 億円。営業利益率8.0%
倍率:事業の純利益 233 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.3 倍。全体の PER 19.3 倍、時価総額 4,497 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店数は計画の下半分、価格は物価を少し下回るという、いちばん素直な置き方。足元の勢いは強いが、10年は長い。
やや悲観 20% コストが先に上がり、利益率が痩せる 利益 139 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 2,582 円1,618 億円
最低賃金の上昇と円安で、人件費と仕入れ値が価格の伸びを上回る。300円以上の商品を増やしても、客は100円の棚に戻る。ダイソーが価格で攻め、キャンドゥやワッツとの出店競争も重なる。店数は閉店を進めながら2,300店ほどにとどまる。1店あたりの売上は物価に届かず、営業利益率は5%台まで下がる。家賃は固定のため、売上が鈍ると利益が先に削られる。ROEは9%ほどと資本コストすれすれで、成長株の評価は消える。配当は増えるが、利益そのものが伸びないため、株主への還元の総額は中立を下回る。新リース会計の導入で、家賃の重さが見かけの負債として表に出る。
- 100円ショップ事業(直営+FC):数量 2,300(店舗数(店))× 価格 1.48(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 3,415 億円・営業利益 188 億円。営業利益率5.5%
倍率:事業の純利益約135億円・事業ROE約9%。ROEが資本コスト7.25%を少し超える程度で、競争と固定費で利益が痩せる筋書きのため、上限の1÷k=12.5倍よりかなり低い10.5倍に置いた。
確率:100円の値札を守る限り、人件費と原価の上昇を価格で返せない局面は現実にある。過去も利益率は7%台まで下がった。
悲観 10% 価格競争と固定費で、優良さを失う 利益 48 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 689 円432 億円
ダイソーの出店攻勢と300円帯の雑貨店に挟まれ、セリアの棚の強みだった「安くて新しい」が薄れる。客数が減り、店は1,900店ほどまで減る。価格は物価の3分の1しか上がらず、原価と人件費の上昇を吸収できない。店舗の家賃は固定のまま残り、営業利益率は2.5%まで落ちる。減損も出る。公開買付けで使った現金の分、手元の余力も薄い。ROEは資本コストを大きく下回り、事業の価値は手元の現金とほぼ同じ水準になる。創業家の持株は減り、経営の求心力も弱まる。アクティビスト系の株主は還元を求めるが、稼ぐ力そのものが細っていて、株価を支える材料にならない。
- 100円ショップ事業(直営+FC):数量 1,900(店舗数(店))× 価格 1.34(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 2,544 億円・営業利益 64 億円。営業利益率2.5%
倍率:事業の純利益約50億円・事業ROE約5%は資本コスト7.25%以下なので、上限は1÷k=12.5倍。競争劣位と固定の家賃で稼ぐ力が細る筋書きのため、上限の約7割の9.0倍に置いた。
確率:大手2社の規模差、300円ショップ、中小の撤退後の統合が同時に進む複合の筋書き。10年ならあり得るが、頻度は低い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
100円ショップ事業(直営+FC)
全国のスーパー・ショッピングセンターなどに出店する100円均一の雑貨店。店数の増加と1店あたりの売上で稼ぐ。
| 数量店舗数(店) | 価格1店舗当たり年間売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,101 | 1.22 | 2,557 | 210 |
| 10 年後 中立 | 2,550 | 1.58 | 4,034 | 323 |
取り方:2026年3月期の売上2,557億円を、期末の直営店数(約2,101店。2026年6月末の2,122店から4〜6月の純増21店を引いて推定)で割った。FC店(33店)の売上は小さいので合わせて数えた。先の1店あたり売上は、物価1.34倍から人口減による客数の目減りと新店の食い合いを引き、中立で10年1.30倍に置いた。店数は出店計画(年120店ほど、閉店を引いた純増は年45店)から置いた。
リスクと懸念
値札の制約と人件費・原価の上昇
100円という値札は他社も同じで、動かすと客が離れる。最低賃金は毎年上がり、円安と中国の製造コストも輸入原価を押し上げる。低原価品の開発や容量の調整には限りがあり、吸収しきれなければ営業利益率は一気に削られる。
ダイソーとの規模差と出店競争
ダイソーは約4,000店で仕入れの規模に勝る。キャンドゥやワッツも出店を続け、スーパーやショッピングセンターの立地は取り合いになる。出店が計画に届かない、あるいは近隣の自社競合や他社競合で1店あたりの売上が落ちれば、成長の柱が揺らぐ。
「脱・100円」の客離れ
300円以上の商品を増やす戦略は粗利益率を上げるが、100円に慣れた客が戻らない可能性もある。無印良品や300円ショップなど、100円に縛られない競争相手との境目もあいまいになり、100円ショップとしての独自性が薄れる。
固定の家賃
店は賃借が中心で、家賃は売上が落ちても減らない固定の約束だ。売上が鈍れば利益が先に削られる。新リース会計基準で2028年3月期から貸借対照表に載ると、見かけの負債が増える。無借金という見かけを、そのまま信じられない。
還元の方針と現金のたまり
公開買付けで約250億円を使ったが、配当は据え置きだ。利益を現金でためすぎれば、ROEは資本コスト近くまで下がる。逆に出店投資に使うなら、立地の質が落ちる。どちらに転んでも、1株あたりの価値が思うほど伸びない可能性がある。
創業家の持株とアクティビスト
創業家の持株は17%まで下がった。大株主の構成が変われば、経営の方向や資本政策が変わる可能性がある。2024年には大口の投資家が現れた。会社の自主性が揺らぐ一方、還元が厚くなる面もあり、方向は定まらない。
今後の分かれ目
- 今期・来期の出店が計画の120店ほどを超えて続き、閉店を引いた純増が年80店に届いたら
- やや楽観・楽観の確率を上げる。店数が3,000店台に乗る筋道が見えてくる。
- 既存店売上が2四半期以上続けて前年割れし、客数も減ったら
- やや悲観に寄せる。値札と人件費の板挟みが利益率に出始めたサインになる。
- 粗利益率が足元の水準から1ポイント以上下がり、営業利益率が7%を割ったら
- 中立の利益率を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 配当と自社株買いを合わせた還元性向が60%を超える方針が示されたら
- 還元が厚くなり、積み上がる現金の心配は減る。中立の倍率は変えないが、確率はやや楽観寄りにする。
- ダイソーが出店を一段と加速し、セリアの出店先を取り合う動きが強まったら
- 出店の純増を下方修正する。ただし値札をそろえた競争のため、利益率への影響を別に確認する。
- 300円以上の商品の構成比が上がり、客数も維持されたら
- 客単価と粗利益率の上振れを認め、やや楽観の筋書きの確度を上げる。
見ておくもの
- 月次の既存店売上・客数・客単価と、直営店数の純増(出店と閉店の内訳)
- 売上総利益率(原価率)と販管費率の四半期の動き
- 配当方針と自社株買いの発表、創業家と大株主の持株の変化
- 300円以上の商品の構成比、セルフレジの導入進捗
倍率と資本コストの決め方
店舗数と1店舗あたり売上で売上を積み、利益率は過去10年の7〜10%台の範囲で、筋書きの構造(値札・人件費・競争)から置いた。倍率は、事業ROEと資本コスト7.25%、長期の成長4%から正当化PERを式で出し、並みの堀として上限の7〜9割に置いた。悲観は、競争と固定の家賃で稼ぐ力が細る構造から出し、谷のPBRは使っていない。余った現金は、負債合計とほぼ同額の純現金が運転資金に見合うため分けなかった。今の株価やPERには寄せていない。新リース会計基準(2028年3月期から)で営業利益や負債の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れる形)にそろえた。家賃の額は開示で確認できず、売上の1割前後と推定した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.3→21.05 倍・やや楽観 PER 14→20.34 倍・中立 PER 12.8→19.3 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。