結論
カナモトは北海道発の建設機械レンタル大手だ。ショベルカーや高所作業車を建設会社に貸して稼ぐ。国内ではアクティオ、ニシオHDと並ぶ上位グループにいる。筆者の結論は、事業は良いが今の株価は割高、である。理由は、この商売が資本を食うことにある。
利益は今が山に近い。値上げの浸透と稼働率の改善で、2026年10月期の営業利益は200億円を超える見込みだ。国土強靱化の予算やデータセンター工事が需要を支えている。ただ、貸す機械は買い替えのたびに物価の分だけ高くなる。稼いだ利益の多くは機械の更新に消え、ROEは8%前後で足踏みする。財務も見かけほど軽くない。借入金だけなら現金が上回るが、機械の割賦の未払金を足すと、実質の純負債は500億円近い。
10年先の中立でも、売上は3,000億円弱、営業利益は250億円台にとどまる。それでも自己資本利益率は資本コストに届かず、利益の価値は払う値段に満たない。強気の筋書きですら今の時価総額を大きくは超えない。上振れの条件は、値上げが物価を超えて定着し、地方の中堅買収で寡占が進むことだ。逆に建設投資が実質で縮めば、機械という固定費の重さが利益を削る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見るのは、株主が自由に使えるオーナー利益だ。カナモトの利益は、機械の更新という避けられない出費を引くと目減りする。営業利益が200億円でも、年400億円前後の設備投資は償却費の約350億円を上回る。数字上の利益と、手元に残る利益は別物だ。割賦の未払金と電子記録債務を含めると、実質の純負債は500億円近い。借入金だけで見て無借金に近いと呼ぶのは正確でない。
堀は地域の拠点網と整備力で、北海道では厚いが首都圏では薄い。値上げが通ったのは需要が強かったからで、需要が弱れば値段を守る力は限られる。10年先もこの事業が残ることは疑わない。ただ、今より強くなっているとまでは言い切れない。
資本の使い方は誠実だ。還元に積極的で、大型買収で資本を傷めない。この点は評価できる。
問題は安全域だ。資本コストを上回る稼ぎがない事業に、成長の対価を払うことはできない。中立の筋書きでも、10年後の価値は今の時価総額を下回る。ROEが資本コストを安定して超える見通しが立つまで、安全域はないと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。ショベルカー、高所作業車、仮設ハウスなどを建設会社に貸し、貸し出し料を受け取る。売上の約9割がこの建設関連で、残りは鉄鋼製品の販売、情報機器、福祉用具などだ。
国内は北海道が地盤で、東北・関東・西日本・九州へ広げてきた。レンタル売上の地域別では北海道が約4分の1、関東甲信越が約2割強、東北が約2割を占める。北海道では市場の約5割を握る一方、首都圏と西日本は1割に届かない。地方で厚く、都市部で薄い構図である。
この会社の本質は、機械を持つ会社だということだ。レンタル用の資産は取得価額で3,300億円ほどあり、毎年350億円前後の償却が出る。機械を買い、使い込み、償却が終わった機械を貸し続けるほど利益率が上がる。使い終えた機械を中古で売る商売も、この循環の一部である。
海外は売上の4%前後で、オーストラリアとアジアが中心だ。会社は海外比率10%を掲げ、北米での調査も続けるが、実績はまだ小さい。2026年9月には群馬の高崎事務器(ユニットハウスなどのレンタルと販売)を買い、関東の現場設備の厚みを増した。
客は建設会社が中心で、多数にわたる。北海道は冬に工事が減るため、季節の波がある。中期経営計画Progress 65は、2029年度に売上2,354億円、営業利益210億円、ROE8.2%を掲げる。
優良さと弱いところ
強みは、地域で厚い拠点網と整備力だ。北海道では市場の半分近くを持ち、営業所と整備工場の密度が客を逃がさない。レンタルは「今日頼んで明日使える」ことに価値がある。近くに機械と整備の人がいることが堀、つまり他社がまねしにくい強みになる。ただし堀は北海道と九州で厚く、首都圏では薄い。
値段を自分で決める力は中程度だ。会社は2023年から単価の引き上げを続け、3年で営業利益率を6%台から8%台へ戻した。人件費と仕入れの上昇を客に転嫁できた点は評価できる。ただ、同じ機械を大手4社と地場が貸す市場で、値上げは競合が追随して初めて通る。
弱点は資本効率だ。機械を買い続けるため、利益の多くが設備に回る。ROEは過去10年の中央値で7%台にとどまる。会社は8%以上、中長期で10%以上を掲げるが、鍵は稼働率と単価に尽きる。
財務は見かけより重い。借入金だけなら現金が上回る。だが機械の割賦購入の未払金と電子記録債務が、合わせて550億円を超える。これは実質の借金に近い。営業所の統廃合など、経営は資本の効率に向き合っている。それでも2009年に赤字へ沈んだ通り、景気の谷には弱い。
数字の見方にも注意がいる。会社が掲げる2029年度の営業利益210億円は、2026年度の見込み204億円とほぼ同じ水準だ。目標はすでに射程に入っており、次の目標が資本効率の改善を伴うかが問われる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の建機レンタルは、年1兆2千億円ほどの市場だ。2023年度は前年比4.9%増の1兆2,397億円で、3年続けて伸びた(日経の業界調べ)。ただ、この伸びの大半は値上げと建設費の上昇である。
需要の柱は、公共では国土強靱化と老朽インフラの更新、民間ではデータセンター、物流施設、再開発、半導体工場、防衛関連施設だ。2026年度の国内建設投資は名目で約80兆円と見込まれる。だが物価を除いた実質は約60兆円で、この数年ほぼ横ばいである。会社自身も、長期の建設投資は減る方向とみている。
供給側では、人手不足と後継者難で中小のレンタル業者が大手に吸収される流れが続く。大手はアクティオ(非上場)、カナモト、ニシオHD、レンタルのニッケンの4社だ。ニシオHDは売上2,150億円、営業利益率9%台と、カナモトとほぼ同じ姿をしている。寡占が進むほど値崩れしにくいが、大手同士の稼働率競争は残る。
10年の分かれ目は2つある。実質の建設投資が60兆円前後を保てるか。値上げが物価並みに続くか。前者が崩れれば稼働率が下がり、後者が崩れれば増え続ける償却費を値段で吸収できない。環境対応機への入れ替えや、遠隔・無人化施工の広がりは、機械を持つ側の設備投資をさらに重くする。
建設会社が機械を自前で持たず借りる傾向は、人手不足とともに強まる。これが実質の市場を支える材料で、中立の筋書きでもその効果を見込んでいる。
資本政策と M&A
還元は厚く、方針は明確だ。総還元性向50%超を掲げ、累進配当(減らさず増やす配当)を続ける。2026年10月期は配当を期初予想から引き上げ、自己株買いの枠も50億円に広げた。2026年6月末には自己株式200万株、発行済み株式の5%強を消却した。
ただ、成長の投資も大きい。2025年度からの5年で、レンタル資産に2,000億円以上、成長投資と株主還元にそれぞれ250億円以上を充てる計画だ。稼ぐ力の大半が機械の更新に向かい、還元に回るのはその残りである。
M&Aは小口を積む型だ。沖縄のソーキ(2020年)、オーストラリアのPorter(2020年)、測量機器のCACH(2024年)、2026年9月の高崎事務器(売上50億円)と続く。大型買収で資本を傷める会社ではない。買う側として地方の中堅レンタルを取り込む余地は残る。時価総額が2,000億円に届かない会社で、買われる側になる可能性も否定はできないが、確かな材料は見当たらない。
ガバナンスでは、2025年度に指名報酬委員会を新設した。会長と社長の2人が経営の舵を握る体制は続く。
還元の評価は2つに割れる。方針は厚いが、利益の相当部分は機械の更新に先に使われ、株主に戻る額は残りものになる。そこは冷静に見たい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
建機レンタルは、人手不足の日本で需要が減りにくい。技能者が足りないほど、機械で省力化したい現場は増える。国土強靱化の予算、データセンターや物流施設の建設、老朽インフラの更新が、10年は途切れない。2026年度の国内建設投資は約80兆円と、名目では高い水準にある。
供給側は有利だ。中小の業者は後継者難と設備更新の負担に耐えられず、大手へ売りに出る。大手4社が稼働率を競っても、拠点網を買い足せる会社が勝つ。カナモトは北海道で市場の約5割、九州でも3割近くを持つ。首都圏と西日本は買収で埋める余地がある。
収益は改善の途中にある。2023年に始めた単価の引き上げが浸透し、営業利益率は6%台から9%台へ上がった。償却の終わった機械を貸し続けるほど利益率は伸びる。営業所の統廃合で固定費も軽くなった。会社は2029年度の営業利益率を8.9%と置くが、2026年度はすでに9%を超える。目標を上回る展開が続けば、ROEは10%に届き、資本効率の評価が変わる。
海外はまだ4%前後だが、オーストラリアとアジアの基盤を厚くする余地は大きい。2026年に上方修正したあとも、第3四半期までの営業利益の進捗は75%を超え、会社予想には余裕がある。
慎重な見方
需要は強く見えるが、伸びの中身を見る必要がある。名目80兆円の建設投資は、実質に直すと約60兆円で、数年ほぼ動いていない。会社自身が長期の見通しを減少傾向と認める。人口が減る国で、新築の仕事が増え続ける理由はない。
利益が山に近い今の数字を、10年に延ばすのは危うい。営業利益率9%台は、価格改定と稼働率の改善がそろった結果だ。値上げは競合が従って初めて通り、需要が緩めばまず値引きで崩れる。2009年に営業利益率が0.2%まで落ちて赤字になった事実は、この商売の景気耐性を物語る。
最大の問題は資本の重さだ。機械の購入額は物価で上がるのに、貸し出し料は競争で上がりにくい。償却費は増え続け、ROEは過去10年で5%から15%の間を行き来し、中央値は7%台だ。会社が掲げる2029年度の8.2%も、資本コストをやっと満たす程度にすぎない。
財務は、借入金では現金が上回る。だが割賦の未払金と電子記録債務を足すと、実質の借金は500億円に近い。金利が上がる世界では、この利払いが利益を削る。高崎事務器のような周辺レンタルへの拡大も、本業の資本効率が低いままなら、資本を薄く広げるだけに終わりかねない。
どちらに重みを置いたか
事業の質と需要の追い風では、強気の言い分が勝つ。だが価値を決めるのは利益の大きさでなく、資本コストを上回る稼ぎだ。この事業は機械の更新に資本を食われ、10年の中立でもROEは7%台にとどまる。この点では慎重な見方が強い。そこで確率は中立を中心に置き、やや悲観をやや楽観より少し厚くした。景気の谷での崩れやすさは資本コストの上乗せで見ており、悲観の確率には重ねていない。強気の筋書きでも、10年の価値は今の時価総額とほぼ同じ水準にとどまる。悲観には、実質の建設投資の縮みと値上げの停止が重なる筋書きとして12%を置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した株価時価総額 5,508 円1,868 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,242 円760 億円)。 今の値に割り戻すと 4,315 円1,463 億円、今との差 −22.8%、 期待の年率 +3.3%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 10,803 円3,664 億円 | 2,887 円979 億円 | +144.9% | +9.4% | 958 円325 億円 |
| やや楽観 | 20% | 8,094 円2,745 億円 | 2,621 円889 億円 | +91.7% | +6.7% | 2,143 円727 億円 |
| 中立 | 36% | 6,402 円2,171 億円 | 2,503 円849 億円 | +59.3% | +4.8% | 3,206 円1,087 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,520 円855 億円 | 1,858 円630 億円 | −21.7% | −2.4% | 1,094 円371 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,649 円559 億円 | 1,250 円424 億円 | −48.1% | −6.4% | 348 円118 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,508 円1,868 億円 | 2,242 円760 億円 | +38.6% | +3.3% | 7,749 円2,628 億円 |
今の株価時価総額 5,590 円1,896 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 値上げが物価を超えて定着し、地方の寡占が進んで ROE が 10% に乗る 10 年 利益 227 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 10,803 円3,664 億円
公共と民間の大型工事が10年切れず、実質の市場が今の水準を保つ。データセンター、半導体、防衛、老朽インフラの更新が重なる。カナモトは地方の中堅レンタルを買い足してシェアを1割強増やし、値上げは物価を上回って定着する。レンタル単価は10年で4割半上がる。
償却済みの機械を貸し続ける比率が高まり、国内の営業利益率は11%に届く。海外はオーストラリアとアジアで2倍強に伸び、北米にも小さな足場を作る。営業利益は370億円規模になり、ROEは10%に乗る。会社が掲げる成長と効率化の両立が、文字どおり実現する10年である。
ただし、この姿は複数の追い風が同時に続くことを要する。大手同士の競争と建設投資の長期の減少を考えれば、実現の確度は高くない。還元も厚くなり、10年の配当と自社株買いの合計は利益の5割台半ばに達する。
- 国内の建機レンタルと関連販売:数量 3,584(国内のレンタル用資産の規模(取得価額ベース、億円。今の値段で測った実質。市場の大きさ × シェアで決まる))× 価格 0.82(資産 1 億円あたりの年間売上(億円。貸し出し料と稼働率の掛け算で、物価で上がる))→ 売上 2,943 億円・営業利益 324 億円。市場は実質で横ばい、シェアは 1 割強増。値段は 4 割半上がり、利益率 11%
- 海外の建機レンタル:数量 286(海外のレンタル用資産の規模(取得価額ベース、億円。今の値段で測った実質))× 価格 0.93(資産 1 億円あたりの年間売上(億円。ドル円は 150 円で固定))→ 売上 265 億円・営業利益 24 億円。オーストラリアとアジアで 2 倍強、北米にも小さく足場
- その他事業(鉄鋼・情報機器・福祉):数量 230(その他事業の取扱高(億円、今の値段で測った実質))× 価格 1.40(値段の指数(今を 1.00。物価に沿う))→ 売上 322 億円・営業利益 18 億円。鉄鋼・情報機器・福祉は物価並みに伸びる
倍率:事業の純利益 227 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍。全体の PER 16.14 倍、時価総額 3,664 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国土強靱化・データセンター・値上げ・買収の 4 つが 10 年そろって続く必要があり、実現の幅は狭い。建設投資の実質は長期に減る見通しで、5% 以上は置くが 1 割には届かない。
やや楽観 20% 需要の追い風と買収が効き、会社の中期目標を少し上回る 10 年 利益 183 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 8,094 円2,745 億円
需要は強いが、物価を大きく超える値上げは続かない。国土強靱化とデータセンターの工事が実質で市場の縮みを和らげ、買収でシェアは1割弱増える。レンタル単価は10年で4割弱上がり、国内の営業利益率は9.8%まで高まる。
海外は2倍弱に伸びるが、売上比率10%の目標には届かない。測量機器や仮設ハウスなど、周辺のレンタルを買い足す動きは続く。営業利益は300億円規模で、ROEは8%台半ばに乗る。会社の中期目標を少し上回る、順調な10年である。
還元は利益の6割弱で続くが、機械の更新が重く、ROEは資本コストをわずかに超える程度にとどまる。伸びの質は悪くないが、資本を食う事業の性格は変わらない。
- 国内の建機レンタルと関連販売:数量 3,424(国内のレンタル用資産の規模(取得価額ベース、億円。今の値段で測った実質。市場の大きさ × シェアで決まる))× 価格 0.79(資産 1 億円あたりの年間売上(億円。貸し出し料と稼働率の掛け算で、物価で上がる))→ 売上 2,695 億円・営業利益 264 億円。市場は実質で小幅に縮み、買収でシェアを 1 割弱増やす。利益率 9.8%
- 海外の建機レンタル:数量 234(海外のレンタル用資産の規模(取得価額ベース、億円。今の値段で測った実質))× 価格 0.93(資産 1 億円あたりの年間売上(億円。ドル円は 150 円で固定))→ 売上 217 億円・営業利益 17 億円。海外は 2 倍弱に伸びるが、比率 10% には届かない
- その他事業(鉄鋼・情報機器・福祉):数量 230(その他事業の取扱高(億円、今の値段で測った実質))× 価格 1.36(値段の指数(今を 1.00。物価に沿う))→ 売上 313 億円・営業利益 16 億円。その他は横ばいで物価並み
倍率:事業の純利益 183 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 15 倍、時価総額 2,745 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足もとの値上げ浸透と稼働率改善、地方の寡占化は実績があり、会社の中期目標を少し上回る展開は現実的。ただ、物価を超える値上げが続く保証はない。
中立 36% 底堅い需要と人口減が相殺し、ROE が 8% に届かず足踏みする 10 年 利益 154 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 6,402 円2,171 億円
需要は底堅いが、実質では伸びない10年になる。国土強靱化とデータセンターの追い風は続く。一方で人口減と建設投資の実質的な縮小が重なり、市場は実質で4%ほど縮む。カナモトは買収と拠点の強化でシェアを1ポイント余り伸ばし、これを補う。
値段は物価並みに上がり、営業利益率は9%前後で定着する。10年後の営業利益は250億円台、純利益は150億円台だ。金利の上昇で借入と割賦の利払いが増え、営業利益に対する純利益の割合は今よりわずかに下がる。
還元は利益の6割で続くが、機械の更新が重く、ROEは7%台後半にとどまる。会社が掲げる8%以上に届くか届かないかの水準で足踏みする、平凡で崩れない10年である。
- 国内の建機レンタルと関連販売:数量 3,296(国内のレンタル用資産の規模(取得価額ベース、億円。今の値段で測った実質。市場の大きさ × シェアで決まる))× 価格 0.76(資産 1 億円あたりの年間売上(億円。貸し出し料と稼働率の掛け算で、物価で上がる))→ 売上 2,501 億円・営業利益 225 億円。市場が実質で 4% ほど縮み、買収と拠点強化のシェア増が補う。利益率 9%
- 海外の建機レンタル:数量 195(海外のレンタル用資産の規模(取得価額ベース、億円。今の値段で測った実質))× 価格 0.93(資産 1 億円あたりの年間売上(億円。ドル円は 150 円で固定))→ 売上 181 億円・営業利益 13 億円。海外は豪州中心に 5 割増
- その他事業(鉄鋼・情報機器・福祉):数量 219(その他事業の取扱高(億円、今の値段で測った実質))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00。物価に沿う))→ 売上 293 億円・営業利益 13 億円。その他は数量が 5% 減、値段は物価並み
倍率:事業の純利益 154 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.1 倍、時価総額 2,171 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要の底堅さと人口減・建設投資の実質縮小が相殺し、事業構造が大きくは変わらない筋書きに最も重みを置く。利益率は近年の実績(8〜9%)の範囲で定着する。
やや悲観 25% 建設投資の実質の縮みと値上げの鈍りで、利益率が 6% 台に戻る 10 年 利益 85 億円 · PER 9.2 倍 · 株価時価総額 2,520 円855 億円
建設投資の実質が1割ほど縮み、大手同士の稼働率競争が値段を押さえる。レンタル単価は10年で2割ほどしか上がらず、物価で増える償却費と人件費を吸収しきれない。国内の営業利益率は6%台に落ちる。
海外の拡大は鈍く、買収のもくろみも外れる。営業利益は150億円弱、純利益は90億円弱だ。還元は続くが、機械の更新を減らして稼働率を守るため、成長は止まる。
ROEは4%台と資本コストを大きく割る。ニシオHDなど同業との稼働率競争が長引き、2023年に営業利益率が6%台へ沈んだ姿が、10年にわたり常態になる展開である。
- 国内の建機レンタルと関連販売:数量 2,880(国内のレンタル用資産の規模(取得価額ベース、億円。今の値段で測った実質。市場の大きさ × シェアで決まる))× 価格 0.69(資産 1 億円あたりの年間売上(億円。貸し出し料と稼働率の掛け算で、物価で上がる))→ 売上 1,990 億円・営業利益 129 億円。市場が実質で 1 割縮む。値段は物価に追いつかず、利益率 6.5%
- 海外の建機レンタル:数量 156(海外のレンタル用資産の規模(取得価額ベース、億円。今の値段で測った実質))× 価格 0.83(資産 1 億円あたりの年間売上(億円。ドル円は 150 円で固定))→ 売上 130 億円・営業利益 5 億円。海外は伸び悩み、現地の値上げも鈍い
- その他事業(鉄鋼・情報機器・福祉):数量 207(その他事業の取扱高(億円、今の値段で測った実質))× 価格 1.25(値段の指数(今を 1.00。物価に沿う))→ 売上 259 億円・営業利益 9 億円。その他は数量が 1 割減る
倍率:ROE 4.5% は k 以下なので PER の上限は 1÷k = 12.1 倍。値上げが止まり利益が構造的に細る筋書きなので、稼ぐ力(純利益 85 億円 ÷ k)から上限の約 7.6 割(9.2 倍)に置いた。7 割へは引き上げていない。
確率:実質の建設投資は数年横ばいで長期は減る見通し。大手同士の稼働率競争で値上げが物価に追いつかない展開は、やや楽観より少し厚く見る。
悲観 12% 建設投資が構造的に縮み、値下げ競争で機械の重さだけが残る 10 年 利益 34 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,649 円559 億円
公共投資の縮小と民間の着工減が同時に来て、実質の市場が2割縮む。大手が稼働率を守るために値下げへ走り、単価は10年で1割しか上がらない。物価で増え続ける償却費が重くのしかかり、国内の営業利益率は3%台まで落ちる。
海外は撤退に近い縮小で小さな赤字が残る。中古建機の相場も崩れ、レンタル資産に250億円の減損が出る。営業利益は60億円ほど、純利益は30億円台まで沈む。
事業は残るが、もう稼ぐ会社ではない。配当は維持を試みるものの、自社株買いは止まる。この筋書きの価値は、稼ぐ力ではなく売れる資産で測る。
- 国内の建機レンタルと関連販売:数量 2,496(国内のレンタル用資産の規模(取得価額ベース、億円。今の値段で測った実質。市場の大きさ × シェアで決まる))× 価格 0.62(資産 1 億円あたりの年間売上(億円。貸し出し料と稼働率の掛け算で、物価で上がる))→ 売上 1,555 億円・営業利益 54 億円。市場が実質で 2 割縮み、値段は 1 割しか上がらず利益率 3.5%
- 海外の建機レンタル:数量 104(海外のレンタル用資産の規模(取得価額ベース、億円。今の値段で測った実質))× 価格 0.76(資産 1 億円あたりの年間売上(億円。ドル円は 150 円で固定))→ 売上 79 億円・営業利益 −2 億円。海外は縮小して小さな赤字
- その他事業(鉄鋼・情報機器・福祉):数量 196(その他事業の取扱高(億円、今の値段で測った実質))× 価格 1.15(値段の指数(今を 1.00。物価に沿う))→ 売上 225 億円・営業利益 6 億円。その他も数量が 15% 減る
倍率:稼ぐ力(純利益 34 億円 ÷ k 7.25% = 約 410 億円)より、売れる資産の税後(約 585 億円)の方が大きいので、床は資産で測る。今の自己資本 1,472 億円に PBR 0.38 倍を掛けた。ためた利益には掛けていない。市場の PBR は使っていない。
確率:公共と民間の建設投資が同時に実質で大きく縮み、価格競争まで重なる構造的な負けが条件。2009 年に赤字へ沈んだ実績があり、5% 未満にはできない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の建機レンタルと関連販売
建設会社への建設機械・仮設機材のレンタルと、中古建機などの販売。北海道を地盤に全国へ展開する。
| 数量国内のレンタル用資産の規模(取得価額ベース、億円。今の値段で測った実質。市場の大きさ × シェアで決まる) | 価格資産 1 億円あたりの年間売上(億円。貸し出し料と稼働率の掛け算で、物価で上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 3,200 | 0.57 | 1,812 | 154 |
| 10 年後 中立 | 3,296 | 0.76 | 2,501 | 225 |
取り方:レンタル用資産は取得価額で 3,299 億円(2025/10 期の BS)。海外分を引いた国内を約 3,200 億円とした。建設関連の売上 1,902 億円(全社の 89.2%)から海外の約 90 億円を引いた 1,812 億円を割って、資産 1 億円あたりの売上 0.566 億円を得た。市場は業界調べで 1 兆 2 千億円台、会社のシェアは 1 割強。市場が縮むか会社のシェアが変わると保有する機械の量(数量)が動き、値段と稼働率は 1 億円あたり売上の側に入る。営業利益は建設関連の営業利益 158 億円から海外分を引いた。
海外の建機レンタル
オーストラリア・東南アジアなどの建機レンタル(豪 Porter など)。
| 数量海外のレンタル用資産の規模(取得価額ベース、億円。今の値段で測った実質) | 価格資産 1 億円あたりの年間売上(億円。ドル円は 150 円で固定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 130 | 0.69 | 90 | 4 |
| 10 年後 中立 | 195 | 0.93 | 181 | 13 |
取り方:2022/10 期の海外売上約 90 億円(報道)を今の水準の目安にした。資産は全体の 4% 弱、約 130 億円と推定。開示が薄いため推定で、営業利益率は 5% 程度と置いた。 数量は今の値段で測った実質の資産規模で、名目の市場の伸びではない。
その他事業(鉄鋼・情報機器・福祉)
鉄鋼関連の販売、情報機器の販売・レンタル、福祉用具など。
| 数量その他事業の取扱高(億円、今の値段で測った実質) | 価格値段の指数(今を 1.00。物価に沿う) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 230 | 1.00 | 230 | 9 |
| 10 年後 中立 | 219 | 1.34 | 293 | 13 |
取り方:全社売上 2,133 億円の 10.8%(2025/10 期の開示)。営業利益はその他事業の約 9.4 億円。調整額は +5.9 億円(adjust)。鉄鋼・情報機器・福祉は単位が揃わず、1 つの数量に束ねられないため、売上を実質の取扱高と値段の指数に分けた(価格 1 は理由があってのこと。全体の 1 割)。
リスクと懸念
建設投資の実質の縮み
名目の建設投資は約80兆円と高いが、物価を除くと約60兆円で数年横ばいだ。会社自身も長期は減る見通しと認める。人口減で新築が細れば、稼働率が落ち、機械という固定費の重さが利益を直撃する。機械は需要が減っても減価償却が止まらず、稼働率が1割落ちると利益はそれ以上に落ちる。
値上げの頭打ちと大手間の競争
2023年からの単価引き上げが利益改善の主因だ。だが大手4社が同じ機械を貸すため、値上げは競合が従って初めて通る。需要が緩めば、まず値引きで崩れ、稼働率を守る競争が利益率を押し下げる。値下げは取り戻すのに時間がかかり、一度崩れた単価は戻りにくい。
機械の更新負担と償却費の増加
貸す機械は買い替えのたびに物価の分だけ高くなる。償却費は年350億円前後で増え続け、貸し出し料がそれに追いつかなければ利益率は下がる。利益の多くが更新に消え、ROEが資本コストを超えにくい。環境対応機への入れ替えが進めば、この負担はさらに重くなる。
景気の谷と実質の借金
2009年に営業利益率が0.2%まで落ち赤字になった。借入金だけなら現金が上回るが、割賦の未払金と電子記録債務を足すと実質の純負債は500億円に近い。景気の谷と金利上昇が重なると、利払いが利益を削る。会社は金利変動の影響を軽微と説明するが、借り換えが進めば効いてくる。
災害復旧など一時的な需要の反動
2026年の上方修正には、災害復旧や国土強靱化の需要が効いた。こうした需要は年によって波がある。山の利益を10年の標準として置くと、反動で稼働率と単価が下がった時に見立てが崩れる。今の利益率は、10年の標準というより上振れに近い水準と見るのが安全だ。
海外・買収の実行
海外比率10%の目標に対し実績は4%前後で、北米は調査段階にある。買収は小口が中心で、大きな失敗は考えにくい。だが、統合が進まなければ追加の費用だけが残り、成長の柱にならない。海外は為替の影響も受ける。
今後の分かれ目
- 2029年度までにROE8.2%の目標を達成し、10%へ向かう
- 資本効率の改善が確認でき、やや楽観・楽観の筋書きの確度が上がる。
- 実質の建設投資が60兆円を割り込み、稼働率が下がる
- 固定費の重さが利益を削り、やや悲観・悲観の筋書きが現実味を帯びる。
- レンタル単価の引き上げが物価を上回って続く
- 利益率が10%を超える展開に近づき、やや楽観・楽観に寄る。
- 大手同士の値引き競争が表面化する
- 単価の上昇が物価に追いつかず、やや悲観の筋書きが濃くなる。
- 地方の中堅レンタルの買収が相次ぎ、首都圏・西日本のシェアが伸びる
- 資本を使って規模を買う局面だが、資本コストを超える稼ぎが出れば楽観側の材料になる。
- 割賦の未払金と借入を合わせた実質の純負債が増え、金利が上がる
- 利払いが利益を削り、純利益の割合が下がる。
見ておくもの
- 建機レンタル各社の稼働率と単価の動き(カナモトとニシオHDの四半期決算)
- 実質の建設投資(建設経済研究所の見通し)と公共工事の予算
- レンタル資産への投資額と償却費、ROE と営業利益率の推移(会社目標 2029年度 8.2%・8.9%)
- 割賦の未払金・電子記録債務を含む実質の純負債と金利
- 中古建機の売却価格、買収の件数と規模、北米への進出の有無
倍率と資本コストの決め方
数量と価格から積んだ10年の利益を先に決め、その時点の ROE から倍率を出した。自己資本は今の値に期間の純利益を足し、還元を引いて流した。k は基本7.5%に品質の調整 +0.75% を足した8.25%で、景気に左右される需要と値決めの弱さを織り込み、借金と寿命では上乗せしていない。中立は ROE が k 以下なので、PER は 1÷k(12.1倍)の約8.5割(10.3倍)に置いた。今の PER・PBR は使っていない。純現金は借入金だけで見た数字で、割賦の未払金と電子記録債務を借金として扱うと実質の純負債は500億円近い。このため純現金を余った現金として分けなかった。金利は、借入と割賦の借り換えが3.5%に上がり、現金が2%で回る前提で、純利益÷営業利益を過去の中央値0.62よりわずかに低い0.60に置いた。悲観は稼ぐ力ではなく売れる資産で床を置いた。新リース会計基準(2028年10月期から)は、営業所の賃借が少なく影響が小さいとみて、数字は今と同じ形で置いている。結果が割高に出たのは計算に従った結果で、今の株価に寄せていない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。