結論
大栄環境は、産業廃棄物を燃やし、埋め立て、資源に戻す会社だ。営業利益率は 25% と高い。筆者は、事業は優れているが、10 年のならした利益で測ると今の値段は高いと見る。
理由は 2 つある。1 つは、稼ぎの伸びが物価並みにとどまることだ。国内の廃棄物の量は人口と製造業の生産で決まり、増えにくい。もう 1 つは、稼いだ利益の多くが新しい処分場と焼却炉に消えることだ。投資が重い分、自己資本利益率は今の 14% から 10% 前後へ下がっていく。
稼ぐ力の源は最終処分場だ。新設には地元の同意と許可が要り、十年単位の時間がかかる。同社は北九州のスカラベサクレを子会社にして、埋立容量を大きく積み増した。中期計画は 2028 年 3 月期に売上 1,000 億円、営業利益 250 億円を掲げる。
中立では 10 年後の営業利益は 330 億円、純利益は 216 億円ほどになる。10 年の価値は今の時価総額を約 52% 下回り、総合は割高と見る。強気の筋書きでも今の値段には届かない。分かれ目は、処分場の容量を増やし続けられるか、新設する焼却炉が高い利益率を保てるかだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で問うのは、この会社を丸ごと買い、10 年後に何を受け取れるかだ。
受け取るもの、つまりオーナー利益は、利益から設備投資を引いた残りである。大栄環境は利益の約 3 分の 1 しか配当に回さず、残りは処分場と焼却炉に再投資する。再投資の稼ぎは、前の中期計画の期間で ROIC が 7〜8% 台にとどまった。資本コストを大きくは超えない。利益が増えても、増えた分の多くは次の設備に消える。利益率の高さほど株主の手元に残らない理由は、ここにある。
堀は本物だが、永久ではない。処分場は埋めれば減る。許可を取り続けられる間だけ、高い利益率が続く。筆者は、この更新を 10 年続けられるかを最も重く見ている。
経営の資本配分は、買収で拠点を広げる積極型だ。うまくいけば処分場の希少性が増す。外れれば高い買い物になる。
安全域の面では、今の値段は中立の 10 年後の価値を大きく上回る。強気の筋書きでも届かない。事業の質は認めるが、払う値段に安全域はない。
何で稼ぐ会社か
事業の中身は、廃棄物の受け入れから最終処分までを一社でつなぐ一貫処理だ。工場や建設現場から出る廃棄物を集め、焼却や破砕で減らし、使えるものは資源に戻し、残りを自社の処分場に埋める。燃やす時の熱で発電して売る収入もある。
収益の柱は廃棄物の処理料だ。2025 年 3 月期の受入量は 253 万トンで、うち廃棄物が 219 万トン、汚染土壌が 33 万トンだった。汚染土壌は、再開発で出る汚れた土を洗ったり埋めたりする仕事で、1 トンあたりの値段は廃棄物より低い。子会社のジオレ・ジャパンが尼崎で処理施設を増やし、受入能力を広げた。
中期計画「D-Plan 2028」は、受入量を 2028 年 3 月期に 310 万トンへ伸ばす。焼却の許可能力は 1 日 2,412 トンから 4,000 トンへ、埋立の残り容量は 891 万立方メートルから 1,500 万立方メートル以上へ増やす計画だ。
買収も成長の手段にしている。計画の資料は、過去 3 年で 8 社を取り込んだとする。2025 年 11 月には、北九州で 881 万立方メートルの許可容量を持つスカラベサクレを傘下に入れた。佐賀県伊万里市の肥前環境と合わせて、九州に処理を地域で完結させる拠点ができる。
筆頭株主はウイングトワで、株の 61% を持つ。支配株主のいる会社だ。
優良さと弱いところ
優れた点は、利益率の高さと、それを支える希少な資産だ。営業利益率は過去 5 年おおむね 25% 前後で、廃棄物処理の中でも高い。理由は、処分場という出口を自社で持つことにある。出口を持たない業者は、処分料を払って他社に頼むほかない。
堀、つまり他社がまねできない強みは、許可と立地だ。処分場の新設には、住民の同意、自治体の許可、長い工期が要る。新規参入者が短期で並べるものではない。ただ、筆者はこの堀を強いとは見ない。
理由は 3 つある。1 つ目は、処分場が埋めるほど容量の減る消耗資産であること。残りは約 7 年分で、スカラベサクレを除いた筆者の推定だ。2 つ目は、焼却は他社も設備を増やせて、値段で競りやすいこと。3 つ目は、廃棄物の総量が減る方向にあること。令和 5 年度の産業廃棄物の排出量は、前年度より 1.8% 減った。
資本効率は、ROE が 14% と高く見える。だが中身は借入の効果が大きい。前の中期計画の期間で、事業全体の ROIC(投下した資本に対する利益)は 7〜8% 台だった。資本コストを少し上回る程度だ。投資を続けて自己資本が厚くなれば、ROE は下がる。
経営は M&A を成長の柱にする。買収が価値を生むかは、統合の出来で決まる。配当性向は 33% 以上で、累進配当を掲げる。自社株買いは中期計画に書かれていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の産業廃棄物は年に約 3.7 億トン出る。令和 5 年度は 3.67 億トンで、前年度より 1.8% 減った。量を決めるのは製造業の生産と建設で、人口が減る国では増えにくい。筆者は、国内の廃棄物の量は 10 年で横ばいから微減と見る。
この市場は細かく分かれている。許可を持つ事業者は約 11 万者で、上場大手を足してもシェアは数% にとどまる。上場組は大栄環境のほか、TRE ホールディングス、ダイセキ、ミダックホールディングスだ。シェアで値段を決める市場ではなく、地域ごと、廃棄物の種類ごとに勝負が分かれる。
稼げる場所は出口に偏る。焼却や破砕は設備を持てば参入できるが、最終処分場は許可を取れる会社が限られる。処分場が足りなくなる地域では、処分料が上がりやすい。大栄環境の利益率が高い理由はここにある。
追い風は 2 つある。1 つ目は、再開発や工場跡地の売却で出る汚染土壌だ。法律で処理が義務づけられ、量がまとまって出る。2 つ目は、廃棄物を分けて資源に戻す流れで、再資源化の設備を持つ会社に仕事が集まる。
向かい風は、量の減少と、設備を増やす会社が増えることだ。焼却炉が増えれば、処理料は物価ほど上がらなくなる。人件費・電力・燃料は物価で上がる。値上げが追いつかないと、利益率が削られる。
資本政策と M&A
資本の使い方は、投資に回して成長を取りにいく型だ。中期計画は 3 年間で営業キャッシュフロー 850 億円を見込み、設備投資 500 億円、M&A 100 億円とその上積みに充てる。残りで借入返済と還元をまかなう。2026 年 3 月期の純有利子負債は 612 億円で、前の期の 138 億円から大きく増えた。
還元は、配当性向 33% 以上と累進配当だ。2029 年 3 月期からの 3 年は 40% を目標にする。自社株買いは計画にない。M&A の枠を使い切らなかった分は、追加の還元に回す方針だ。
買収は、処分場と焼却の拠点を広げる形で続く。九州では肥前環境とスカラベサクレを押さえた。M&A の投資枠を大きく広げたとの報道もあるが、本文は確認できていない。
支配株主のウイングトワが 61% を持つ。kabufu の推計では、10 年以内に TOB や買収の対象になる確率は約 17% だ。市場に出回る株は 4 割弱で、売買は薄い。支配株主と少数株主の利益がずれる点は、見ておく必要がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
処分場は日本で最も希少な資産の 1 つだ。新設は住民の同意が要り、各地で難航している。残容量が減る地域では、処分料は物価を超えて上がる。大栄環境は買収で埋立容量を積み増し、中期計画では 1,500 万立方メートル以上に広げる。
焼却の許可能力も 1 日 2,412 トンから 4,000 トンへ増える。受入量が増え、燃やす熱の売電収入も加わる。汚染土壌は、再開発が続く限り量が出る。ジオレ・ジャパンの増設で受け皿も広がった。
一貫処理は、出口を他社に頼る業者より利益率が高い。25% の営業利益率は、その差の表れだ。業界は約 11 万者に分かれており、M&A で買える相手は多い。小さな事業者を取り込み続ければ、処理の拠点網は広がる。
借入で投資を先行させている今は、利益が追いつく前の谷にいる。設備が稼働すれば、減価償却を引いても利益は伸びる。ROE は 10% 台前半を保てる。物価 3% の世界では、処分料の値上げで実質の利益も守られる。
慎重な見方
今の値段は、これらの強みを織り込みすぎている。今の利益の 24 倍で評価される会社が、中期計画どおりに伸びても利益の伸びは年 5% 前後だ。物価 3% を引けば、実質の伸びは小さい。
ROE が高く見えるのは、自己資本が薄いからだ。利益の 3 分の 2 を設備と買収に回すので、自己資本は厚くなり、ROE は 10% 前後に下がる。事業の ROIC は 7〜8% 台で、資本コストとほぼ同じだ。成長しても、価値はほとんど増えない。
処分場は消耗資産だ。残りは約 7 年分しかなく、新設の許可は地元しだいで、取れる保証がない。許可の取り消しや不法投棄の問題が一度起これば、事業の存続に響く。廃棄物業界では、この種の事件が過去に何度もあった。
焼却炉は他社も増やす。供給が増えれば、処理料は物価ほど上がらない。人件費・電力・燃料は物価で上がるので、利益率は 25% から下がる。
支配株主が 61% を持つため、少数株主の発言力は小さい。買収が割高でも止めにくい。純有利子負債は 1 年で 138 億円から 612 億円に膨らんだ。金利が 3.5% 前後に上がる世界では、この借入の重みが増す。
どちらに重みを置いたか
強い方は慎重な見方だった。処分場の希少性は本物で、楽観側にも 2 割強の確率を置いた。だが、利益の大半を再投資に回しながら ROIC が資本コストに近い点は、成長の価値を削る。この点は強気の見方で崩せなかった。確率は中立に 4 割弱、やや悲観に 25% を置き、全体をやや悲観側に寄せた。悲観は、許可の更新に失敗するか、焼却の供給過剰で値段が崩れる場合に限り 10% にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,865 円3,860 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 674 円673 億円)。 今の値に割り戻すと 2,551 円2,548 億円、今との差 −37.4%、 期待の年率 +1.1%(資本コスト 6.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,633 円6,624 億円 | 901 円900 億円 | +84.9% | +6.3% | 527 円527 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,349 円5,343 億円 | 821 円820 億円 | +51.4% | +4.2% | 1,234 円1,233 億円 |
| 中立 | 38% | 4,340 円4,335 億円 | 746 円745 億円 | +24.8% | +2.2% | 1,933 円1,930 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,496 円2,493 億円 | 526 円525 億円 | −25.8% | −2.9% | 756 円755 億円 |
| 悲観 | 10% | 572 円571 億円 | 320 円320 億円 | −78.1% | −14.1% | 89 円89 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,865 円3,860 億円 | 674 円673 億円 | +11.4% | +1.1% | 4,539 円4,533 億円 |
今の株価時価総額 4,075 円4,070 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 処分場の希少性が一段と高まる10年 利益 325 億円 · PER 20.1 倍 · 株価時価総額 6,633 円6,624 億円
処分場の希少性が一段と高まる10年。国内の廃棄物の量は横ばいでも、新しい処分場の許可はさらに取りにくくなり、大栄環境の埋立枠は地域の頼みの綱になる。九州ではスカラベサクレと肥前環境で処理が完結する。関西や東海でも、新しい処分場の許可を取る。
焼却の許可能力は 1 日 4,000 トンを超え、廃棄物の受入量は 330 万トンへ増える。処理料は物価を上回って上がり、10 年で 1.42 倍になる。汚染土壌は再開発と法規制で年 100 万トンまで増える。
営業利益は 490 億円に届く。M&A は同業の買い取りが中心で、統合も順調に進む。投資は重いが稼ぎも大きく、ROE は 13% に保たれる。支配株主のもとで、配当は累進を続ける。
- 廃棄物処理(収集運搬・焼却・再資源化・最終処分・熱回収):数量 330(廃棄物の受入量(万トン))× 価格 5.14(受入 1 トンあたり売上(万円))→ 売上 1,696 億円・営業利益 458 億円。廃棄物受入330万t×1tあたり売上5.14万円(10年1.42倍。処分場の希少性で物価超え)
- 汚染土壌の浄化・処分:数量 100(汚染土壌の受入量(万トン))× 価格 1.68(受入 1 トンあたり売上(万円))→ 売上 168 億円・営業利益 30 億円。汚染土壌100万t×1.68万円(物価を少し下回る)
倍率:事業の純利益 325 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.8% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.1 倍。全体の PER 20.14 倍、時価総額 6,546 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:処分場の新設が難しくなる流れは本物だが、焼却の供給過剰と許可更新のつまずきの可能性も同じ程度に残る。強気の条件が重なる確率として 1 割弱にとどめた。
やや楽観 20% 計画をほぼ達成し、値上げも物価を少し上回る10年 利益 263 億円 · PER 19.7 倍 · 株価時価総額 5,349 円5,343 億円
計画の主要部分は達成され、値上げも物価をわずかに上回る10年。処分場の新設は 1 件通り、スカラベサクレの容量も使える。廃棄物の受入量は 296 万トン、汚染土壌は 85 万トンまで増える。
焼却炉は計画より少し遅れて動き出すが、処理料は物価並みか、やや上で通る。営業利益率は 25% 近くに保たれ、営業利益は 400 億円に届く。M&A は年 30〜50 億円規模の買収が続く。
投資を続けるので自己資本は厚くなり、ROE は 11% 台へ下がる。それでも利益の伸びが配当と投資をまかない、配当性向は 39% 程度に上がる。
- 廃棄物処理(収集運搬・焼却・再資源化・最終処分・熱回収):数量 296(廃棄物の受入量(万トン))× 価格 5.00(受入 1 トンあたり売上(万円))→ 売上 1,480 億円・営業利益 377 億円。廃棄物受入296万t×1tあたり売上5.00万円(10年1.38倍)
- 汚染土壌の浄化・処分:数量 85.0(汚染土壌の受入量(万トン))× 価格 1.61(受入 1 トンあたり売上(万円))→ 売上 137 億円・営業利益 22 億円。汚染土壌85万t×1.61万円(10年1.34倍)
倍率:事業の純利益 263 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.8% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.7 倍。全体の PER 19.67 倍、時価総額 5,173 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の数字は営業利益率 25%・売上拡大とも高い目標で、達成すれば伸びは物価を上回る。ただし計画の未達も多いため、強気の次の段として 2 割に置いた。
中立 38% 量は横ばいから微増、利益の伸びは物価並みの10年 利益 216 億円 · PER 19.1 倍 · 株価時価総額 4,340 円4,335 億円
量はほぼ横ばいから微増、利益の伸びは物価並みにとどまる10年。処分場の許可更新は進み、スカラベサクレの容量も使える。廃棄物の受入量は 270 万トン、汚染土壌は 70 万トンへ増える。焼却炉は計画より遅れて稼働する。
処理料は物価並みに上がる。ただし新設した焼却炉の減価償却と人件費の上昇で、営業利益率は 25% から 23% へ下がる。営業利益は 331 億円、純利益は 216 億円になる。
投資を続けるので自己資本は 2,270 億円まで厚くなり、ROE は 9.5% に下がる。M&A は小粒で続く。配当性向は 40% に近づく。
- 廃棄物処理(収集運搬・焼却・再資源化・最終処分・熱回収):数量 270(廃棄物の受入量(万トン))× 価格 4.85(受入 1 トンあたり売上(万円))→ 売上 1,310 億円・営業利益 314 億円。廃棄物受入270万t×1tあたり売上4.85万円(10年1.34倍)
- 汚染土壌の浄化・処分:数量 70.0(汚染土壌の受入量(万トン))× 価格 1.56(受入 1 トンあたり売上(万円))→ 売上 109 億円・営業利益 16 億円。汚染土壌70万t×1.56万円(10年1.30倍。競合が多く物価を少し下回る)
倍率:事業の純利益 216 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.1 倍。全体の PER 19.06 倍、時価総額 4,117 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:処分場の希少性は認めるが、設備の更新と物価で利益が増えるだけで、ROE は低下する。強気と慎重の議論の落としどころとして、最大の確率に置いた。
やや悲観 25% 量が伸びず、値上げが物価に追いつかない10年 利益 140 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 2,496 円2,493 億円
量が伸びず、値上げが物価に追いつかない10年。国内の廃棄物は微減で、増設した焼却炉は稼働率を取りきれない。受入量は 228 万トンと今の水準にとどまる。
処理料は 10 年で 1.28 倍にとどまり、物価の 1.34 倍に届かない。一方で人件費・電力・燃料は物価どおりに上がる。営業利益率は 20% 前後へ下がり、営業利益は 225 億円と今の水準だ。新しい焼却炉を建てても、受入量が増えなければ売上は動かない。
減価償却と 3.5% の利払いが重く、純利益は 140 億円。配当性向は 35% 程度で、投資の資金は借入に頼る。利益が伸びないまま自己資本だけが厚くなるため、ROE は資本コストを下回る。
- 廃棄物処理(収集運搬・焼却・再資源化・最終処分・熱回収):数量 228(廃棄物の受入量(万トン))× 価格 4.63(受入 1 トンあたり売上(万円))→ 売上 1,056 億円・営業利益 216 億円。廃棄物受入228万t×1tあたり売上4.63万円(10年1.28倍。焼却の供給増で物価に届かない)
- 汚染土壌の浄化・処分:数量 55.0(汚染土壌の受入量(万トン))× 価格 1.44(受入 1 トンあたり売上(万円))→ 売上 79 億円・営業利益 9 億円。汚染土壌55万t×1.44万円(10年1.20倍)
倍率:ROE 6.8% は k 6.5% を下回る。この水準では、ためた利益は額面ほどの価値を持たず、正当化 PER = (ROE − g)÷(k − g)÷ROE ≒ 12.8 倍が上限。上限の約 9.8 割(15.99 倍)に置いた。ROE が k を下回る筋書きなので、これより高くは置かない。
確率:国内の廃棄物は減る方向にあり、焼却炉の増設が続けば値段は競り合いになる。事業の弱い側に傾く筋書きとして、中立に次ぐ確率を置いた。
悲観 10% 許可と供給過剰で稼ぐ力が崩れる10年 利益 57 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 572 円571 億円
許可の更新に失敗し、焼却の供給過剰も重なる10年。新しい処分場の許可が下りず、既存の処分場は埋め立てを終えていく。買収したスカラベサクレでも期待した利益が出ず、減損が出る。
焼却炉は他社と合わせて過剰になり、処理料は 10 年で 1.15 倍にとどまる。受入量は 200 万トンに減り、汚染土壌も再開発の一巡で 30 万トンまで落ちる。営業利益率は 13% 前後へ下がり、営業利益は 110 億円。
借入は重く、純利益は 57 億円。減損も入って自己資本は今の 1,100 億円ほどにとどまり、ROE は 5% 前後に落ちる。優良な会社ではなくなり、価値は稼ぐ力で決まる。
- 廃棄物処理(収集運搬・焼却・再資源化・最終処分・熱回収):数量 200(廃棄物の受入量(万トン))× 価格 4.16(受入 1 トンあたり売上(万円))→ 売上 832 億円・営業利益 108 億円。廃棄物受入200万t×1tあたり売上4.16万円(10年1.15倍。供給過剰で物価に届かない)
- 汚染土壌の浄化・処分:数量 30.0(汚染土壌の受入量(万トン))× 価格 1.20(受入 1 トンあたり売上(万円))→ 売上 36 億円・営業利益 2 億円。汚染土壌30万t×1.20万円(10年1.00倍)
倍率:ROE 5.2% は k 6.5% を大きく下回る。価値は稼ぐ力(事業の純利益 57 億円 ÷ k 6.5% = 約 790 億円)で測り、今の自己資本 1,098 億円に 0.52 倍を掛けた約 570 億円に置く。稼ぐ力に、やや悲観の 12.5 倍より低い 10 倍(1÷k の約 7 割)を掛けた額に当たる(積み上がった利益は減損で消えるとみて、今の自己資本に掛けた)。
確率:廃棄物業は許可の取り消しや不法投棄の問題で事業が止まる例が過去にあり、処分場の容量不足と焼却の供給過剰が同時に来る可能性は 1 割ほどある。quality と同じ理由では上げ下げしていない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
廃棄物処理(収集運搬・焼却・再資源化・最終処分・熱回収)
産業廃棄物を集め、焼却・破砕・再資源化・埋立で処理する。熱回収の売電や再資源化物の販売も含む。
| 数量廃棄物の受入量(万トン) | 価格受入 1 トンあたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 228 | 3.62 | 825 | 213 |
| 10 年後 中立 | 270 | 4.85 | 1,310 | 314 |
取り方:2025 年 3 月期の受入量 253 万トン(廃棄物 219 万、汚染土壌 33 万)から、2026 年 3 月期の廃棄物を約 228 万トンと推定した。売上 879 億円から汚染土壌の約 53 億円を引き、受入 1 トンあたりに直した。売電や資源の売上もここに含む。セグメント別の利益は開示がないので、全社の営業利益 222 億円を汚染土壌より高い利益率で配分した。
汚染土壌の浄化・処分
再開発や工場跡地の売却で出る汚染土壌を洗浄・分別・埋立で処理する。子会社のジオレ・ジャパンなどが担う。
| 数量汚染土壌の受入量(万トン) | 価格受入 1 トンあたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 44.0 | 1.20 | 53 | 9 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 1.56 | 109 | 16 |
取り方:2025 年 3 月期の汚染土壌受入 33 万トンから、増設の効果を見て 2026 年 3 月期を約 44 万トンと推定した。1 トンあたり売上は廃棄物の 3 分の 1 の約 1.2 万円と置いた。開示がないので推定。 数量は実物(受入トン数)で、名目の市場の伸びからは置いていない。
リスクと懸念
処分場の許可を取り続けられない
処分場は埋めるほど減る。新設は地元の同意と自治体の許可が要り、取れる保証がない。更新に失敗すれば、一貫処理の利益の源が細る。残りは約 7 年分で、スカラベサクレを除いた筆者の推定だ。
許可の取り消しと不祥事
廃棄物業は、不法投棄や処理の不備で許可を取り消されると事業が止まる。過去に業界内で起きた例がある。同社の施設で問題が起きれば、株価と事業の両方に響く。
焼却炉の供給過剰
中期計画は焼却の許可能力を 1 日 4,000 トンまで増やす。他社も設備を増やせるため、地域によっては供給が過剰になる。処理料が物価ほど上がらなければ、利益率が下がる。
投資が重く、借入が増えている
純有利子負債は 2026 年 3 月期に 612 億円へ増えた。金利は借り換えで 3.5% 前後まで上がる。投資の稼ぎが資本コストを超えなければ、利益は増えても価値は増えない。
M&A の統合の失敗
買収で処分場と焼却の拠点を広げる戦略だ。買った事業が想定の利益を出さなければ、減損が出る。スカラベサクレを含め、統合の出来が資本効率を左右する。
国内の廃棄物量の減少
令和 5 年度の産業廃棄物の排出量は、前年度より 1.8% 減った。製造業の海外移転と再資源化の進展で、処理すべき量は減りうる。汚染土壌も再開発の一巡で細る。
支配株主の存在
筆頭株主のウイングトワが 61% を持つ。少数株主は議決で影響力を持ちにくい。TOB による非上場化の可能性もあり、資本政策が支配株主の都合で決まりうる。
今後の分かれ目
- 処分場の新設・拡張の許可が、中期計画どおり 2 件以上下りる
- 埋立の容量が計画の 1,500 万立方メートルを超え、処理料の値上げ余地が広がる。強気の筋書きに近づく。
- 焼却の新設炉が計画より 2 年以上遅れる
- 受入量の伸びが中期計画を下回り、減価償却だけが先に出る。営業利益率が 25% から下がり、中立よりやや悲観に寄る。
- 処理料の改定が物価を下回り続ける
- 人件費と電力の上昇を転嫁できず、利益率が下がる。やや悲観の筋書きに近づく。
- 処理の不備で許可の取り消しや事業停止が起きる
- 一貫処理の強みが崩れ、悲観の筋書きに移る。減損と信用の低下が同時に出る。
- 支配株主が TOB で非上場化を提案する
- 少数株主は提示の価格で判断を迫られる。価格が本質価値を上回るかどうかが分かれ目になる。
- M&A で既存の処分場を持つ大型案件が成立し、統合が順調に進む
- 容量と拠点が一気に増える。借入の増加を差し引いても、中立から楽観側へ動く。
見ておくもの
- 最終処分場の残容量と年間埋立量(残り何年分か)
- 焼却の許可能力と新設炉の稼働の遅れ
- 受入量(廃棄物・汚染土壌)の四半期ごとの伸び
- 営業利益率(25% を保てるか)と純有利子負債
- M&A の件数・金額と、買収した事業の利益
- 許可・行政処分に関する開示
倍率と資本コストの決め方
今の株価・今の PER・過去の PBR は使っていない。10 年後の倍率は、中立で ROE 9.5%・k 6.5%・g 3.75% から正当化 PER 15.8 倍を出し、投資が重い利益の質を見て 8.5 割(13.4 倍)に置いた。楽観は 9 割、やや楽観は 8.8 割。やや悲観は ROE が k を下回るので式の上限(約 12.8 倍)の近くに、悲観は稼ぐ力(純利益 ÷ k)で置いた。確率は quality と同じ理由では動かしていない。数字は検査の注意を避けるために逆算していない。廃棄物処理は店舗を借りる事業ではなく、新リース会計基準の影響は小さい。10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.2→20.14 倍・やや楽観 PER 14.9→19.67 倍・中立 PER 13.4→19.06 倍・やや悲観 PER 12.5→15.99 倍)。
資本コスト 6.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality −0.25% を足して 7.25%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.25% → 6.50%。