結論
TREは、産業廃棄物の処理、鉄・非鉄スクラップの再生、木質バイオマス発電と電力小売を束ねた「静脈産業」の持株会社である。産廃のタケエイとスクラップのリバーが2021年に統合して生まれた。筆者の結論は、10年のならした利益で測ると今の値段は割高だ。理由は、足もとの好業績が一時的なものだからである。
2026年3月期の純利益は147億円と前期比で2割増えたが、これは能登半島地震の公費解体に伴う災害廃棄物の処理が生んだ特需である。会社自身が2027年3月期の純利益を50億円前後と、3分の1に落ちる計画を示している。特需を除いた実力は、災害前の2022〜2024年3月期の純利益36〜52億円に近い。
会社は2031年3月期に純利益80億円を掲げ、千葉県市原市に焼却発電・高度選別・スクラップの新工場を重ねる。投資は5年で約575億円。計画は魅力的だが、第2次中計では複数の工場の稼働が数年ずれた。筆者は、10年後の利益が会社の目標とほぼ同じ水準に、5年遅れでたどり着く姿を中心に置く。
借入を増やして成長投資を進めるため、株主に残る利益の資本効率は資本コストに届きにくい。中立の10年価値は今の時価総額を4割ほど下回る。強気の筋書きでも、特需で膨らんだ今の値段を大きく超える余地は小さい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「持ち続けたい事業」と「払ってよい値段」を分けて考える必要がある。産廃の許認可と処分場は、長く使える堀になりうる。廃棄物は景気が悪くても出る。事業そのものは、十分に残る。
ただし、直近の利益の大部分は、地震という一回限りの事情から生まれた。バリュー投資家は、こういう利益を永続するものとして数えない。ならした利益は、会社が自ら予告した2027年3月期の水準と、災害前の水準の間にある。
次に、資本の使い方を見る。毎年、売上の1割強を設備投資に回し、借入を増やして新工場を重ねる。投資が計画どおり稼げば価値は増すが、すでに稼働が数年遅れた実績がある。資本効率が資本コストに届かない事業に、お金を積み続けるのは警戒すべき姿だ。
安全域については、中立の筋書きでも今の値段を下回る。特需で膨らんだ値段に対し、10年のならした利益で測った価値は4割ほど低い。強気でも、今の値段から大きく上回る期待は持ちにくい。
何で稼ぐ会社か
事業は3本柱と周辺に分かれる。
廃棄物処理・再資源化は、建設現場や工場から出る産業廃棄物を受け入れ、破砕・選別・焼却・埋立で処理して再資源化する。受け入れ量に処理単価を掛けて稼ぐ。2026年3月期の売上は約530億円で、能登の災害廃棄物がその半分近くを占めた。中計が示す平時の姿は、2027年3月期で売上約320億円、事業利益約41億円である。
資源リサイクルは、鉄・アルミ・銅などのスクラップを集め、選別して製鉄会社や非鉄メーカーに売る。自動車や家電の再資源化も含む。売上は約430億円と最大だが、事業利益率は8%前後で、稼ぎは国際市況と買い値の差に左右される。
再生可能エネルギーは、木質バイオマス発電と電力小売である。売上約150億円、事業利益は約8億円と薄い。会社は小売の販売量を2030年度に2025年度の7倍にする目標を掲げる。固定価格買取制度の終了を見据え、新しい制度(FIP)への移行も進める。
その他は環境コンサルティングとエンジニアリングで、売上約85億円、利益率は高い。
グループは年間130万トン超の廃棄物と使用済み製品を受け入れ、再資源化率は92.8%に達する。新設の市原の複合事業は、焼却発電、プラスチックの高度選別、金属の選別、スクラップの高品位化を一つの土地に集める構想である。
優良さと弱いところ
筆者が見る堀は、産廃の許認可・処分場・首都圏の拠点網と、廃棄物からスクラップやRPF(固形燃料)まで一貫して扱える幅である。処分場や焼却炉は新たに許可を取りにくく、地域では同業が限られる。再資源化率92.8%という実績は、大手の排出元に選ばれる理由になる。
ただし堀は広くない。建設系の廃棄物は同業との価格競争がある。スクラップは国際市況と製鉄会社の買い値で決まる商いで、価格を自分では決められない。電力小売も仕入れ価格に左右される。
資本効率は、能登の特需を除くと高くない。ROEは特需前の2022〜2024年3月期で5〜8%台にとどまり、2026年3月期の17.8%は一時のものだ。営業利益率も災害前は8%台である。
財務は自己資本比率48.4%、純有利子負債272億円と、いまは堅い。ただし中計は5年で営業キャッシュフロー約800億円に対し、設備投資575億円・M&A 270億円・更新投資370億円を見込み、純借入を約400億円増やす。堅さは投資で薄まっていく。
経営の資本配分では、投資額の上振れと稼働の遅れが続いた点を重く見る。新工場の1つ(T&Hエコみらい)の開業は約1年超遅れて2030年4月の予定である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
産業廃棄物の国内市場は約5兆円規模で、量は人口減と建設の縮小で伸びにくい。建設系廃棄物は新築が減れば細り、製造業系は工場の国外移転で減る。一方で、解体・インフラ更新が増え、廃棄物の再資源化の規制は厳しくなる。許可と処分場を持つ業者は、処理単価を物価に合わせて上げやすい。
循環経済の市場は80兆円へ拡大すると会社は見るが、これは目標に近い数字で、そのまま当社の売上に結びつかない。後継者難による同業の再編は進んでおり、TREはその「業界再編の核」を狙う。同じ領域の大栄環境やミダックのような処分場を持つ会社とは、地域ごとに競う関係になる。
スクラップは、国内の鉄スクラップの流通量が年に数千万トン規模(筆者の推定)で、当社の取扱量は数%にとどまる。取扱量を増やしても、製鉄会社の買い値と国際市況から逃げられない。電炉の増加や、銅・アルミの需要拡大は追い風になる。
電力は、木質バイオマス発電の固定価格が期限を迎え、新制度では収入の保証が弱まる。燃料の木材の確保も競争になる。
10年後は、国内の量がほぼ横ばいで物価の分だけ名目が伸びる世界が中立である。楽観は、高品位スクラップと再エネが新しい稼ぎになる姿。悲観は、建設・産業廃棄物が縮み、新工場が採算に乗らない姿である。
資本政策と M&A
還元は、総還元性向を35〜40%以上とし、年間配当に下限を設ける方針である。2026年2月には株主優待も新設した。第2次中計では増配と自己株取得を続けたが、2026年3月期の純利益が特需で膨らんだ分を考えれば、平時の還元余力は大きくない。
5年の資金計画は、営業キャッシュフロー約800億円と借入の純増約400億円に手元資金の取り崩し約140億円を足し、設備投資575億円・M&A 270億円・更新投資370億円・還元約125億円に充てる。借入が増える設計である。
買収は、解体事業の内製化や地域の廃棄物業者を軸にする。みずほリース、カナデビアなどとの動静脈連携を使い、太陽光パネル・リチウムイオン電池・紙おむつなどの新しい再資源化も立ち上げる。買う側であり、時価総額と事業の性格から、TOBで買われる可能性は小さい。大株主は信託口と証券会社が中心で、支配株主はいない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
特需が消えても、会社の足場は着実に厚くなっている。市原の複合事業は、焼却発電・高度選別・金属選別・スクラップ高品位化を同じ土地に集める。首都圏で出る廃棄物を船と道路で運び入れ、再資源化したものを製鉄会社や自動車メーカーに直接売る。これは地域の同業が簡単には真似できない。
循環経済は国策になった。環境規制は厳しくなり、再資源化できる業者への集中が進む。処分場と許可を持つ会社は、処理単価を物価に合わせて上げやすい。スクラップは、電炉の増加、銅やアルミの需要拡大で、高品位品の値打ちが上がる。電力は、小売の販売量を2030年度に7倍にする計画で、燃料の木材から発電、販売までを一貫して扱う強みがある。
会社の計画では、2031年3月期の売上1,350億円・純利益80億円。さらに2030年代に売上3,000億円を目指す。みずほリースなどとの提携や、後継者難の同業の買収も重なれば、利益は計画を超える。財務もまだ堅い。能登で稼いだ利益で自己資本は829億円まで厚くなり、投資を支える余力がある。
慎重な見方
利益の大半は特需だった。2027年3月期は営業利益が約87億円と、前期の223億円から6割落ちる。この水準が本来の姿に近い。災害前の営業利益率は8%台で、能登が終わっても急に上がる理由はない。
新規投資は重い。5年で575億円の設備投資、270億円のM&A、370億円の更新投資に対し、営業キャッシュフローは約800億円しかなく、純借入を400億円増やす。借り換えで金利が上がれば、利払いが利益を削る。工場の稼働は数年ずれてきた実績があり、投資額も上振れた。新工場の1つは開業が約1年遅れた。
事業の質も限られる。スクラップは国際市況と買い値の差で決まる商いで、規模を増やしても利ざやは厚くならない。バイオマス発電は固定価格の期限切れが近づき、電力小売は仕入れの変動を抱える。建設・産業廃棄物の量は人口減で細る。売上3,000億円という野心は、現状の2.5倍で、買収で届かせれば資本効率は一段と下がる。会社自身の計画でも、新工場・新規分の事業利益は立ち上がり期に赤字の年を見込んでいる点は軽くない。
どちらに重みを置いたか
事業の足場は強気の言い分に分があるが、数字の置き場所では慎重な言い分が強い。特需を除いた利益が出発点であること、投資の稼働が遅れる実績があること、借入を増やして資本効率が資本コストに届かないことの3つは、否定しにくい。
強気の筋書きに7%、やや楽観に21%、中立に36%、やや悲観に24%、悲観に12%を置いた。会社の計画に近い姿は中立の先にあるが、5年遅れで着くと見た。悲観は、投資が採算に乗らないという構造的な負けで、確率は低くないとみる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,822 円857 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 522 円246 億円)。 今の値に割り戻すと 1,176 円553 億円、今との差 −33.3%、 期待の年率 +2.9%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,789 円1,782 億円 | 791 円372 億円 | +159.8% | +10.0% | 321 円151 億円 |
| やや楽観 | 21% | 2,629 円1,236 億円 | 646 円304 億円 | +85.8% | +6.4% | 688 円323 億円 |
| 中立 | 36% | 1,992 円937 億円 | 502 円236 億円 | +41.5% | +3.5% | 898 円422 億円 |
| やや悲観 | 24% | 845 円397 億円 | 468 円220 億円 | −25.6% | −2.9% | 315 円148 億円 |
| 悲観 | 12% | 705 円332 億円 | 319 円150 億円 | −41.9% | −5.3% | 123 円58 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,822 円857 億円 | 522 円246 億円 | +33.0% | +2.9% | 2,344 円1,102 億円 |
今の株価時価総額 1,763 円829 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 市原の新工場が計画どおり立ち上がり、再エネと高品位スクラップが第二、第三の柱になる10年 利益 136 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 3,789 円1,782 億円
市原の複合事業が計画より少し遅れて立ち上がり、焼却発電・高度選別・高品位スクラップの3本が揃う。受け入れる廃棄物の量は新設備の分だけ増え、処理の単価は処理しにくい品目を引き受けることで物価を上回って上がる。スクラップは鉄・アルミ・銅の高品位化で製鉄会社や自動車メーカーに直接売る比率が上がり、市況の波に左右される度合いが下がる。再エネは電力小売が伸び、木質バイオマス発電は固定価格の期限切れ後も新制度で採算を保つ。会社が掲げる「売上3,000億円」には届かないが、売上は2,000億円台に乗り、利益率も10%に近づく。みずほリースなどとの動静脈連携が広がり、買収も価値を壊さない。
- 廃棄物処理・再資源化:数量 140(廃棄物の受け入れ量(万トン、推定))× 価格 4.69(1トン当たり処理単価(万円、推定))→ 売上 656 億円・営業利益 92 億円。受入量140万トン。焼却発電・破砕選別が稼働、処理しにくい品目で単価が上がる
- 資源リサイクル:数量 135(スクラップ取扱量(万トン、推定))× 価格 6.82(1トン当たり販売単価(万円、推定))→ 売上 920 億円・営業利益 92 億円。取扱135万トン。高品位化の比率が上がり1トン当たりの利益が増える
- 再生可能エネルギー(バイオマス発電・電力小売):数量 1,500(販売電力量(GWh、推定))× 価格 31(1kWh当たり販売単価(円、推定))→ 売上 469 億円・営業利益 47 億円。販売電力量1,500GWh。小売が伸び新制度でも採算
- その他(環境コンサル・エンジニアリング):数量 1,100(受注件数(件、推定))× 価格 1,420(1件当たり受注額(万円、推定))→ 売上 156 億円・営業利益 19 億円。環境コンサル・エンジニアリングが拡大
倍率:事業の純利益 136 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.1 倍、時価総額 1,782 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新工場の立ち上がり・スクラップ高品位化・電力小売の拡大が揃って成功する必要がある。同社は第2次中計で複数の投資案件の稼働が数年ずれており、連続して当たる確率は低い。
やや楽観 21% 新工場の稼働は遅れながらも進み、利益が計画の線に近づく10年 利益 102 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,629 円1,236 億円
新工場はおおむね計画の1〜2年遅れで稼働する。廃棄物の受け入れ量は伸び、解体・一般廃棄物にも事業が広がるが、立ち上がりの費用がかさんで利益率の改善はゆっくりになる。スクラップは取扱量が増え、高品位化の分だけ1トン当たりの利益も上がる。電力小売は計画ほどは伸びない。バイオマス発電は燃料の木材の調達コストを価格に転嫁しきれず、利益は横ばいに近い。能登の特需が消えたあとの谷から、2030年代前半にかけて着実に利益が戻る。ただし新工場の償却と借入の利払いが重く、株主に残る利益は会社計画の2030年度目標をやや下回る。
- 廃棄物処理・再資源化:数量 132(廃棄物の受け入れ量(万トン、推定))× 価格 4.55(1トン当たり処理単価(万円、推定))→ 売上 601 億円・営業利益 75 億円。受入量132万トン。稼働が1〜2年遅れで立ち上がる
- 資源リサイクル:数量 122(スクラップ取扱量(万トン、推定))× 価格 6.62(1トン当たり販売単価(万円、推定))→ 売上 808 億円・営業利益 73 億円。取扱122万トン
- 再生可能エネルギー(バイオマス発電・電力小売):数量 1,250(販売電力量(GWh、推定))× 価格 30(1kWh当たり販売単価(円、推定))→ 売上 380 億円・営業利益 34 億円。販売電力量1,250GWh
- その他(環境コンサル・エンジニアリング):数量 1,000(受注件数(件、推定))× 価格 1,380(1件当たり受注額(万円、推定))→ 売上 138 億円・営業利益 15 億円。受注が緩やかに増加
倍率:事業の純利益 102 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 1,236 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新工場が遅れながらも稼働し、利益が計画の線へ近づく筋書き。会社の計画に最も近い姿だが、計画は繰り返し遅れてきたので、やや楽観に厚みを持たせすぎない。
中立 36% 災害の特需が消えたあと、新工場の遅れと物価上昇が打ち消し合って横ばいに近い利益で落ち着く10年 利益 74 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,992 円937 億円
能登半島地震の災害廃棄物という特需は2年で消え、会社は利益が約3分の1に落ちる谷を自ら予告している。そのあとは新工場の稼働と物価の上昇で利益が戻るが、工事の遅れと人件費・エネルギー費の上昇が戻りを鈍らせる。廃棄物の受け入れ量は新設備の分だけ増え、スクラップの取扱量も高品位化で伸びる。再エネは小売電力が伸びる一方、バイオマス発電の優遇価格が終わり利益は薄い。10年後の利益は会社が2031年3月期に掲げる水準とほぼ同じで、計画から5年遅れで着く姿である。配当は下限を守り、残りは借入の返済と投資に回る。
- 廃棄物処理・再資源化:数量 122(廃棄物の受け入れ量(万トン、推定))× 価格 4.42(1トン当たり処理単価(万円、推定))→ 売上 539 億円・営業利益 59 億円。受入量122万トン。新設備の分だけ増える。単価は物価並み
- 資源リサイクル:数量 112(スクラップ取扱量(万トン、推定))× 価格 6.43(1トン当たり販売単価(万円、推定))→ 売上 720 億円・営業利益 59 億円。取扱112万トン。高品位化で緩やかに増加
- 再生可能エネルギー(バイオマス発電・電力小売):数量 1,000(販売電力量(GWh、推定))× 価格 29(1kWh当たり販売単価(円、推定))→ 売上 295 億円・営業利益 22 億円。販売電力量1,000GWh。小売が伸びバイオマスは優遇価格の終了で薄利
- その他(環境コンサル・エンジニアリング):数量 900(受注件数(件、推定))× 価格 1,340(1件当たり受注額(万円、推定))→ 売上 121 億円・営業利益 13 億円。受注900件で緩やかに増加
倍率:事業の純利益 74 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.3% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 897 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:特需が消えたあと、新工場の遅れと物価・人件費の上昇が打ち消し合う筋書き。会社自身が27年3月期を谷と認めており、10年後も計画の5年遅れの利益水準というのが最も起こりやすい。
やや悲観 24% 投資の回収が遅れ、金利と人件費が利益を削り続ける10年 利益 36 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 845 円397 億円
新工場の稼働がさらに遅れ、立ち上げ費用と償却が利益を押さえ込む。借入を増やして進めた投資の利払いは、借り換えで金利が上がるほど重くなる。建設現場から出る廃棄物は人口減と新築の減少でじわじわ細り、地域の同業との価格競争も続く。スクラップは製鉄会社の買い値に左右され、取扱量を増やしても利益が乗らない。電力小売は仕入れ価格の変動で利益が出たり出なかったりする。会社の目標とした利益の半分ほどに届かない年が長く続き、配当は下限に張り付く。自己資本は積み上がるが、稼ぐ力は上がらない。中計が描く2031年3月期の純利益80億円には、2036年になっても届かない。
- 廃棄物処理・再資源化:数量 105(廃棄物の受け入れ量(万トン、推定))× 価格 4.19(1トン当たり処理単価(万円、推定))→ 売上 440 億円・営業利益 37 億円。受入量105万トン。建設系が細り価格競争が続く
- 資源リサイクル:数量 98.0(スクラップ取扱量(万トン、推定))× 価格 6.10(1トン当たり販売単価(万円、推定))→ 売上 597 億円・営業利益 39 億円。取扱98万トン。市況に左右され利益が乗らない
- 再生可能エネルギー(バイオマス発電・電力小売):数量 800(販売電力量(GWh、推定))× 価格 28(1kWh当たり販売単価(円、推定))→ 売上 224 億円・営業利益 11 億円。販売電力量800GWh。仕入れ価格の変動で利益が出にくい
- その他(環境コンサル・エンジニアリング):数量 800(受注件数(件、推定))× 価格 1,270(1件当たり受注額(万円、推定))→ 売上 102 億円・営業利益 8 億円。受注800件で横ばい
倍率:ROE 約 3% は k 8.25% 以下なので、上限は 1÷k = 11.8 倍。事業の純利益 36 億円 ÷ k 8.25% = 約 420 億円が稼ぐ力で、投資回収が遅れる筋書きなので上限の約 8 割(9.4 倍)に置いた。
確率:過去2期の遅れの傾向と、投資のための借入増が続くことから、慎重な筋書きの確率はやや厚く置く。需要は景気に左右されるが急減はしない。
悲観 12% 巨額の新規投資が稼げないまま重荷になり、スクラップ市況と産廃量の縮小が重なる10年 利益 −1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 705 円332 億円
市原を中心とする大型投資が、稼働の遅れと設備費の上振れで採算に乗らない。能登の特需で厚くなった自己資本は、減損と低い利益で目減りする。国内の建設解体は新築の減少で量が縮み、製造業の国外移転で産業廃棄物も減る。スクラップは国際市況の下落と、製鉄会社の電炉化の遅れによる需要の弱さで利ざやが薄くなる。電力は固定価格の期限切れで採算が悪化する。配当は下限を守れず、追加の借入と資産の売却で凌ぐことになる。会社は事業を保つが、環境企業としての成長物語は崩れ、事業は地域の中堅処理業者並みの稼ぐ力に戻る。株主にとっては、手元の資産を削って配当を維持する期間が長く続く。
- 廃棄物処理・再資源化:数量 92.0(廃棄物の受け入れ量(万トン、推定))× 価格 3.80(1トン当たり処理単価(万円、推定))→ 売上 349 億円・営業利益 17 億円。受入量92万トン。国内の解体・産廃が縮み単価も伸びない
- 資源リサイクル:数量 85.0(スクラップ取扱量(万トン、推定))× 価格 5.52(1トン当たり販売単価(万円、推定))→ 売上 469 億円・営業利益 16 億円。取扱85万トン。国際市況の下落で利ざやが薄い
- 再生可能エネルギー(バイオマス発電・電力小売):数量 600(販売電力量(GWh、推定))× 価格 25(1kWh当たり販売単価(円、推定))→ 売上 152 億円・営業利益 0 億円。販売電力量600GWh。固定価格の期限切れで採算悪化
- その他(環境コンサル・エンジニアリング):数量 700(受注件数(件、推定))× 価格 1,150(1件当たり受注額(万円、推定))→ 売上 80 億円・営業利益 4 億円。受注700件に縮小
倍率:純利益はほぼゼロで、稼ぐ力では価値を測れない。床は売れる資産(用地・焼却炉・破砕選別設備・保有林)の売却価値から借入を返したあとの分。今の自己資本 829 億円の 4 割(PBR 0.40)に置いた。EV(時価総額+純有利子負債)÷ 営業利益は 40 倍超で、利益の倍率では測れない筋書きである。
確率:投資の大半が採算に乗らず、事業が構造的に縮む筋書き。起こる確率は高くはないが、投資額が自己資本の半分以上あり、起これば大きな負けになるため12%を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
廃棄物処理・再資源化
建設・工場の産業廃棄物の受け入れ、破砕選別・焼却・埋立。能登の災害廃棄物処理を含む。
| 数量廃棄物の受け入れ量(万トン、推定) | 価格1トン当たり処理単価(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 160 | 3.30 | 528 | 187 |
| 10 年後 中立 | 122 | 4.42 | 539 | 59 |
取り方:売上約528億円(中計)を受け入れ量と単価に分解した推定。2026年3月期は能登の災害廃棄物が約6割を押し上げ、通常の受け入れは約98万トン。10年の単価は物価並みの1.34倍を基本にした。
資源リサイクル
鉄・アルミ・銅スクラップの集荷・選別・販売、自動車・家電の再資源化。
| 数量スクラップ取扱量(万トン、推定) | 価格1トン当たり販売単価(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 90.0 | 4.80 | 432 | 35 |
| 10 年後 中立 | 112 | 6.43 | 720 | 59 |
取り方:売上約432億円(中計)を取扱量と平均単価に分解した推定。単価は国際市況に連動するが、中立では物価並み(10年で1.34倍)とした。
再生可能エネルギー(バイオマス発電・電力小売)
木質バイオマス発電と電力小売。
| 数量販売電力量(GWh、推定) | 価格1kWh当たり販売単価(円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 668 | 22 | 147 | 8 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 29 | 295 | 22 |
取り方:売上約147億円(中計)を販売電力量と単価に分解した推定。数量は電力量なので小売の拡大で伸び、単価は燃料費・調達費の上昇で物価並みに動くとした。 数量は実物(販売電力量)で、名目の市場の伸びからは置いていない。
その他(環境コンサル・エンジニアリング)
環境コンサルティング、環境エンジニアリング。
| 数量受注件数(件、推定) | 価格1件当たり受注額(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 850 | 1,000 | 85 | 14 |
| 10 年後 中立 | 900 | 1,340 | 121 | 13 |
取り方:売上約85億円(中計のその他)を受注件数と単価に分解した推定。単価は人件費に連動して物価並みとした。
リスクと懸念
特需の剥落と本来の利益水準
能登の災害廃棄物の特需が消え、2027年3月期の事業利益は約75億円(前期225億円)に落ちる計画である。ここから回復する速さが読みにくい。新工場の稼働が遅れれば、谷が長引く。
市原の大型投資の遅れと上振れ
第2次中計では、複数の投資の稼働が数年遅れ、投資額も増えた。T&Hエコみらいの開業は約1年超遅れて2030年4月の予定である。遅れるたびに償却と利払いが先に出て、利益を押さえる。
借入の増加と金利上昇
5年でネット借入が約400億円増える計画で、借り換えのたびに金利が上がる。財務は今は堅いが、投資が稼ぐ前に金利負担が先行すれば、株主に残る利益が薄くなる。
スクラップ市況と製鉄会社の買い値
資源リサイクルは売上最大の柱だが、利益率は8%台で、国際市況と製鉄会社の買い値に左右される。高品位化で利幅を厚くする計画は、買い手との協業が前提である。
国内の産廃量の縮小
建設系の廃棄物は新築の減少で細り、製造業系も国外移転で減りうる。地域の同業との価格競争もあり、処理単価が物価に追いつかない年が出るおそれがある。
バイオマス発電の優遇終了と燃料の確保
固定価格買取の期限が近づき、新制度では収入の保証が弱まる。燃料の木材の価格と確保も競争になり、発電の利益が薄くなる可能性がある。
M&Aと野心の大きさ
会社は2030年代に売上3,000億円、将来は5,000億円を掲げる。現状の2.5〜4倍で、買収に頼れば資本効率が下がり、統合の失敗も起きやすい。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の利益が計画の谷(営業利益87億円前後)より上で着地する
- 谷が浅く回復も早いことになり、中立から楽観側の筋書きの確度が上がる。
- 市原の焼却発電・高度選別・スクラップ高品位化が予定の時期に稼働し、利益率が計画に近づく
- 投資が採算に乗る証拠になり、やや楽観・楽観の確度が上がる。
- 新工場の稼働がさらに遅れる、または投資額が再び上振れする
- 投資の回収が遅れ、やや悲観・悲観の確度が上がる。
- スクラップ市況が下落し、取扱量が増えても利益が増えない
- 資源リサイクルの利益率が計画の8〜9%に届かず、中立より低い利益になる。
- 大きな買収に踏み切り、借入が一段と増える
- 買収が価値を生むかで二極化する。統合に失敗すれば、悲観に近づく。
- 能登に続く大規模災害で、再び災害廃棄物の処理を受託する
- 数年だけ利益が膨らむが、永続の利益として数えない。
見ておくもの
- 年間の営業利益の推移(2027年3月期の谷から、新工場の稼働とともに戻るか)
- 市原の各工場の稼働時期と、投資額の上振れの有無
- 資源リサイクルの取扱量と事業利益率(8%台から高品位化で上がるか)
- 電力小売の販売量(2030年度に7倍の計画)とバイオマス発電の採算
- 純有利子負債と自己資本比率の推移、総還元性向と配当の下限の維持
倍率と資本コストの決め方
今の値段(時価総額811億円・直近のPER約5.5倍)は、倍率の根拠に使っていない。直近の純利益147億円は能登の災害廃棄物の特需なので、出発点の利益は会社計画の2027年3月期の純利益50億円(net_start)にした。自己資本は今の829億円に期間の純利益を足し還元を引いて流し、ROEは結果として出した。ROEは中立で6%台と資本コスト8.25%(基本7.5%に quality +1.0%)を下回るので、PERの上限は1÷k=11.8倍で、中立はその約8.5割に置いた。悲観は稼ぐ力がほぼ無いため売れる資産の売却価値(推定)で測り、内訳が開示されない点は不確かさとして残る。同領域の資産集約型の会社(インフロニア・ジャパンマテリアル)と同じ k 8.25% にそろえた。工場・設備は自社保有が中心で店舗などの賃借は小さいため、リースの約束による自己資本比率の見かけの強さの問題は小さいが、新リース会計基準で数字の形は変わる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.9→13.1 倍・やや楽観 PER 10.8→12.12 倍・中立 PER 10→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。