結論
INGSは、「らぁ麺 はやし田」「日本油党」「CONA」「焼売のジョー」などを展開する外食企業である。筆者の結論は「やや割安」だ。複数ブランドを生み出して店舗を増やす力には価値があるが、今の株価との開きは大きくなく、安心して十年間放置できるほどの安全域はない。
2026年8月期の売上高は約94億円、営業利益は約6.2億円となった。ラーメン直営店とレストラン直営店のほか、独立した店主に麺やスープを供給するプロデュース店、ブランドを貸すライセンス店が収益源である。後者は会社自身が店舗物件と人員を抱えずに広げられるため、成功すれば投資効率を押し上げる。しかし、加盟店の撤退が続けば、見かけの出店数ほど収益は積み上がらない。
2026年8月末の店舗数は188店で、前年度からの純増は14店にとどまった。前年の計画が描いていた208店には届かず、特に加盟店では新規出店とほぼ同じ勢いで閉店が生じた。この実績を踏まえ、十年後の中立では約320店相当の店舗網を見込む一方、長期構想の500店達成を当然とは考えない。
五つの筋書きで見た現在の本質価値は約69億円となり、比較対象の時価総額約61億円を約12%上回る。判断を支えるのは十年間の出店だけではない。現在の低い配当性向の下で蓄積する利益の一部が、将来は余剰現金として株主に帰属するという見方も含む。閉店率、改装費、人件費のどれかが悪化すれば、この小幅な割安幅は消えうる。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、飲食店の価値は出店数の多さより、一店に投じた現金がどれだけ増えて戻るかで決まる。INGSには、らぁ麺 はやし田を育てた商品開発力と、異なる業態を組み合わせて店舗物件を使う工夫がある。これは単なる店舗数の拡大とは違う強みだ。さらに、プロデュースとライセンスで他人の店舗を支援できれば、自ら大きな設備を抱えずに利益を増やせる。
それでも十年間の利益が高い確度で守られる事業とは言い切れない。客は毎日新しく店を選び、加盟店のオーナーは契約の採算を見て継続を判断する。会社がメニューの値段を上げても競合が似た料理を出せば、客数を失う可能性がある。ブランド名そのものより、同じ店に繰り返し人が来る実績が重要だ。
特に直営店は、会計上の純利益と株主の手元に残る現金を区別して考えたい。新しい店舗には設備、内装、保証金が必要で、古い店舗の更新にも投資がいる。見かけの減価償却費がインフレで増えなくても、将来の改装費は高くなる。利益を留保していても、そのすべてが余剰現金になるわけではない。
経営の過去の判断では、CONAの買収によってブランドを貸す側へ進出した点を評価できる。その一方で、買収の償却負担と加盟店の閉店実績を見れば、経営陣のすべての投資が高い利回りを生んだと断定するのは早い。筆者は、経営が次の十年にわたり一店ごとの採算を守り、採算の悪い出店を断れるかを重視する。
現在の時価総額に対しては、期待価値が小幅に上回る。ただし、その差の一部は将来の余剰現金が株主に帰属することと、直営店の収益性が維持されることに依存している。投資対象として理解できる事業ではあるが、本物の強い堀と呼ぶにはまだ実績が足りない。安全域を大きく見積もるより、閉店率、客単価、新店投資の回収を確認し続ける企業だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、会社が自ら運営する飲食店と、独立した店主を支援する店舗網の二つである。2026年8月期のラーメン事業は売上高約50.9億円、営業利益約4.45億円を稼いだ。レストラン事業は売上高約42.7億円、営業利益約1.73億円だった。会社が開示する報告セグメントはこの二つだが、投資家が収益の構造を理解するには、それぞれの直営店と加盟店を分ける必要がある。
ラーメン直営店の中心は「らぁ麺 はやし田」である。鴨や大山鶏を使ったスープ、店内の清潔感、調理工程の標準化を組み合わせている。ほかにも油そばや煮干しラーメンなどのブランドを持ち、立地に応じて商品を変えられる。2026年8月末の直営店は46店だ。一店の売上は来客数と客単価で決まり、営業時間、席数、厨房の処理能力が数量の上限になる。
ラーメンのプロデュース店は73店ある。ここでは会社の看板をそのまま掲げる通常のフランチャイズとは異なり、店主が独自の屋号を使える。INGSは麺、タレ、スープなどの指定食材を販売し、運営方法を提供する。月額固定フィーは5万円で、加盟金と研修費は原則不要である。したがって重要なのは契約店舗数そのものより、稼働店舗一店当たりの食材取引が続くかどうかだ。
レストラン直営店は37店で、イタリアンバルの「CONA」と大衆酒場の「焼売のジョー」が中心になる。2025年の会社資料で示された客単価は、CONAがおよそ2,700円、焼売のジョーがおよそ2,400円だった。レストランのライセンス店は32店あり、ブランド使用料と食材供給が収入になる。CONAは原則として開業前支援料と月額固定フィー、焼売のジョーは売上連動の月額フィーを採用している。
この構造には、同じ会社が店舗収益と加盟店向けの食材収益を両方獲得できる利点がある。ただし、加盟店の店頭売上をそのままINGSの売上に数えることはできない。また、店舗物件を借りて営業する直営店は、客数が減っても家賃を払い続ける。直営店が増えるほど売上は大きくなるが、出店時の保証金、厨房設備、内装、採用に現金が先に必要になる。
優良さと弱いところ
最も評価したい強みは、新しい商品を考え、それを違う店舗形態へ移植する力である。「らぁ麺 はやし田」は既存店での商品開発から生まれ、会社はラーメンだけでも複数の自社開発ブランドを持つ。一つの商圏にラーメンと酒場を出したり、大きな物件を二業態に分けたりできるため、単一ブランドの企業より出店候補を広く探せる。この商品開発と立地対応力には、一定の再現性がある。
一方で、価格を自由に決められるほどの堀、つまり競争相手が簡単には越えられない優位は、まだ証明されていない。会社は原材料価格の上昇に合わせてメニューと価格を改定し、既存店売上を伸ばしてきた。しかし2026年8月単月のラーメン既存店では客単価の上昇は小幅であり、レストランは客数が増える一方で客単価が下がった。値上げを続けても来店客が減らないという証拠は、より長い期間で確認する必要がある。
加盟店支援も独占的な仕組みではない。麺やスープの供給網には継続取引の価値があるが、店主は立地、家賃、人件費、店の評判を自ら負担する。2026年8月期は加盟店が18店開き、13店閉じた。新規契約を獲得しても既存契約を維持できなければ、営業力が利益に結びつかない。会社の競争優位を測るうえで、この閉店率はブランド数より重要である。
財務面では、上場による資本の増強と利益蓄積で自己資本が約23.5億円まで厚くなった。純有利子負債は小さいが、借りた店舗の家賃と原状回復義務までなくなったわけではない。また、レストラン事業には過去の企業買収に伴う償却費が残る。これが自然に終了すれば利益率には追い風だが、新たな買収で同じ費用が生じる可能性もある。
AIエージェント代替の指定類型には該当しない。INGSが売る中心価値は人が食べる料理と実店舗での体験であり、席課金の業務ソフトや人月の受託業務ではない。発注、採用、事務処理の自動化は収益改善の手段になりうるが、客が店で食事する需要そのものを代替するわけではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ラーメン市場は大きいが、圧倒的な一社が支配する市場ではない。INGSが2025年11月に公表した事業計画には、富士経済の調査を基に、2024年の国内ラーメン市場が4,979億円、店舗数がおよそ1万6,200店と示されている。店舗数で見た上位三社のシェアはそれぞれ2.6%、2.2%、1.9%で、残りの事業者が九割以上を占める。ここにはチェーンの伸びる余地があるが、参入障壁が低く、競争が絶えないという意味もある。
INGSのラーメン直営店46店は、この業界店舗数の約0.3%にすぎない。プロデュース店を加えれば食材供給先は広がるが、それらは独立した屋号の店舗であり、すべてを自社ブランドの店舗シェアと呼ぶのは不正確である。競合には「町田商店」などを展開するギフトホールディングス、「山岡家」の丸千代山岡家、「一風堂」の力の源ホールディングスがある。競争は知名度だけでなく、駅前や郊外で採算の合う物件を取れるか、店長を確保できるかで決まる。
居酒屋・炉端焼市場については、同じ会社資料に2024年の市場規模約1兆570億円、店舗数約7万7,300店とある。店舗数上位三社のシェアは1.1%、0.8%、0.6%で、こちらも極めて分散している。INGSのレストラン直営店37店の店舗数シェアは約0.05%にとどまる。競争相手は鳥貴族、串カツ田中、大庄などのチェーンに加え、地域ごとの独立系飲食店である。CONAの低価格ピザや焼売のジョーの看板商品が、繰り返し来店する理由を作れるかが問われる。
需要の数量を十年先まで伸ばす要因は、日本全体の人口ではなく、既存の独立店からチェーンへ移る客と、新しい商圏で獲得する客である。国内の外食回数そのものは人口減少の影響を受けるため、市場全体の実質数量が大きく増えるとは考えない。会社は首都圏の駅前や住宅地に複数ブランドを展開することで、業界全体が伸びなくてもシェアを広げられる。ただし、同じ商圏での出店が増えれば自社店舗同士の食い合いも起こる。
物価が年3%上がる世界では、十年間でメニュー価格は約1.34倍になるのが基本である。しかし食材、人件費、家賃、内装工事費も上がるため、売上の名目成長がそのまま利益成長になるわけではない。店舗の採用難は特に深刻で、同社自身も事業計画で外国籍人材の採用や退職者の再雇用を重視している。将来の勝者は店舗数の多い会社ではなく、新しい一店から十分な現金を回収できる会社だ。
資本政策と M&A
資本配分で評価すべき実績は、直営店だけに資金を集中させず、店舗の外側から稼ぐ仕組みを育ててきたことだ。2018年にはCONAのブランドを持つキャンディーBOXを買収し、2021年に合併した。これによってINGSはライセンスを受ける立場から貸す立場へ変わり、ブランド使用料と食材供給の収入を得るようになった。一方で、買収に伴うのれんと無形資産の償却は、レストラン事業の利益を長く圧迫してきた。
2026年8月期には約7.7億円の営業キャッシュフローがあったが、投資活動には約6.0億円を要した。店舗設備と保証金への支出を踏まえると、純利益をすべて自由に配れる企業ではない。今後は新店の投下資本に対する利益と、既存店の改装・更新資金を分けて確認したい。古い設備の減価償却は取得時の価格で続くが、十年後の設備更新にはインフレ後の価格を払う必要がある。
株主還元は2026年8月期に初めて配当を実施する段階へ移った。配当総額は約0.78億円、配当性向は約20%で、翌期の予想配当総額は約0.88億円である。株主優待の食事券もあるが、会社にとっての実際の費用は券の額面とは異なり、利用率は十分開示されていない。十年間の還元には優待費用を小さく見積もって含めた。
2025年11月の事業計画には、直営店200店とプロデュース・ライセンス店300店を合わせる長期500店構想がある。ただし達成年度は明示されておらず、複数年度の売上高、営業利益、ROE、DOE、自社株買い額を約束した中期経営計画でもない。2027年8月期の会社予想は売上高約108.6億円、営業利益約6.9億円、店舗純増32店である。初配当と翌期の増配予想は具体的な数字だが、十年間の高い還元率まで約束されたわけではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
INGSが優れているのは、国内ラーメン市場と居酒屋市場のどちらも分散している中で、複数のブランドを自社で作れることだ。商品開発を続けながら、一つの商圏にラーメンとレストランを出せば、物件探しや人材の配置に選択肢が増える。主力のらぁ麺 はやし田は本格的な商品と簡素な調理工程を組み合わせており、店長と調理スタッフを育成できれば、出店先を増やしやすい。
加盟店を支援する事業も見逃せない。ラーメンのプロデュースは店主が独自の屋号を使いながら、麺とスープの供給や運営方法を利用する仕組みである。INGSがすべての店舗物件を借り、すべての従業員を雇う必要はない。現在の店舗網は長期構想の500店を大きく下回っている。市場が分散していることを考えれば、商品と支援の品質を維持して全国に広げる余地はある。
直営レストランでは、過去のCONA買収に伴う償却費が自然に減ることも追い風となる。将来の利益増加のすべてを新店の成功に頼る必要はない。新たな買収をせず既存ブランドを磨けば、会計上の利益率が上がり、資本配分の透明性も増す。外国籍人材の採用内製化や退職者の再雇用によって店長不足を和らげられれば、同業より安定した出店ができる可能性がある。
長い目では、国内の飲食需要が成熟していても、独立店から運営の上手なチェーンへ顧客が移る。ラーメンの客単価と居酒屋の価格が物価に応じて上がる中で店舗数も伸びれば、売上は数量と価格の両方から増える。会社が初配当に踏み切ったことも、今後は投資と還元の両立を意識する転換点と受け止められる。成功すれば十年後の企業規模は現在の数倍になりうる。
慎重な見方
最大の問題は、店舗を増やすことと株主価値を増やすことが同じではない点だ。2025年時点で示されていた翌期の店舗数計画に対し、実際の2026年8月末は20店少ない188店となった。特に加盟店では、新しく18店が開いても13店が閉じた。これは、少ない資本で増やせるという利点の裏側で、加盟店の経営が会社の思いどおりにはならないことを示している。
プロデュース店は自社ブランドを名乗らず、加盟金も研修費も原則無料である。店主にとって参入しやすいが、INGSとの関係を切り替えにくくする力は強くない。月額フィー以上に重要な食材供給も、店主側の利益が足りなければ取引量が減る。加盟店が増えないまま食材の物流費と営業人員だけが増えれば、会社全体の利益率は下がる。
直営店にも重い固定費がある。厨房設備や内装に投資した後、客数が想定を下回っても家賃、人員、設備の更新費を負担しなければならない。賃金と建築費が物価以上に上がる環境では、メニュー価格を引き上げるだけで利益を守れるとは限らない。特に居酒屋は景気や飲酒習慣、若年層の消費行動の変化を受けやすい。店頭のピザや焼売が支持されなくなれば、別のブランドへ客は容易に移ってしまう。
資本政策にも不確かさがある。会社は2026年に初配当を始めたばかりで、十年間にわたる還元実績はない。経営者側の持株比率が高く、少数株主は出店や買収に資金を振り向ける判断を自ら制御できない。利益が増えても、採算が不十分な新店に資金を使い続ければ現金は残らない。長期の500店構想は魅力的だが、達成の過程で店舗の収益力を失うなら、株主には高い代償となる。
どちらに重みを置いたか
商品開発力と複数業態による出店余地は評価できる。しかし、加盟店の閉店実績と直営店の固定費を重く見て、楽観側27%に対して慎重側39%とした。下に寄せる理由は2026年の出店計画未達と、加盟店の高い入れ替わりである。中立では十年後に約320店の規模を想定するが、500店構想の達成は前提としない。
初配当と利益蓄積により将来の株主価値は改善する可能性があり、確率加重した現在価値は約69億円となる。時価総額約61億円に対してはやや割安だが、差は約12%と薄い。強い堀が確認された優良企業と同じ確信度は持たず、出店と閉店の両方を重視する結論である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 5,206 円131 億円(+ 還元の換算額還元の合計 448 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 2,717 円69 億円、今との差 +12.8%、 期待の年率 +9.4%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 13,638 円344 億円 | 877 円22 億円 | +502.5% | +20.8% | 1,306 円33 億円 |
| やや楽観 | 18% | 8,829 円223 億円 | 669 円17 億円 | +294.3% | +15.5% | 1,710 円43 億円 |
| 中立 | 34% | 6,016 円152 億円 | 536 円14 億円 | +172.0% | +11.1% | 2,228 円56 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,274 円32 億円 | 256 円6 億円 | −36.5% | −4.8% | 382 円10 億円 |
| 悲観 | 14% | 186 円5 億円 | 19 円0 億円 | −91.5% | −22.4% | 29 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,206 円131 億円 | 448 円11 億円 | +134.7% | +9.4% | 5,655 円143 億円 |
今の株価時価総額 2,409 円61 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 複数ブランドの全国展開が成功する 利益 21 億円 · PER 16.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 13,638 円344 億円
らぁ麺 はやし田と日本油党が都市部だけでなく郊外の主要商圏でも受け入れられ、ラーメン直営店は約100店の規模へ広がる。調理工程の簡素化と店長育成が進み、新店の開業後に安定した客数を集められる。麺とスープの品質も安定し、プロデュース店は約180店まで増える。店主が独自の屋号で営業できる魅力を保ちつつ、供給食材の取引が長期間続く。
CONAと焼売のジョーも複数ブランドの利点を生かし、レストラン直営店は約95店、ライセンス店は約90店の規模になる。飲酒需要が成熟しても、低価格で気軽に利用できる食事需要を獲得する。大型物件を異なる業態で使う工夫が成功し、既存店同士の客の奪い合いも抑えられる。設備の更新や人件費上昇を価格改定と省人化で吸収し、会社全体の営業利益率が一段と改善する。
新たな大型買収に依存せず、既存ブランドから出た現金を採算の良い出店に集中できる。CONAの過去の買収償却が終了した後も追加の大きな償却負担が生じず、蓄積した利益の一部が余剰現金として残る。国内市場全体の数量は大きく増えなくても、独立店や弱いチェーンから顧客を奪い、約465店相当の店舗網へ成長する。
- ラーメン直営店:数量 8.2(年間来客数(百万人))× 価格 1,830(来客一人当たり売上高(円))→ 売上 150 億円・営業利益 18 億円。年間約820万人、一店約8万人の来客を維持して直営約100店。客単価は今の1.41倍。規模拡大と厨房効率改善で営業利益率12%。
- ラーメンのプロデュース・食材供給:数量 180(年間平均稼働プロデュース店舗数(店))× 価格 0.15(稼働店舗一店当たり年間食材供給・フィー売上高(億円))→ 売上 26 億円・営業利益 4 億円。プロデュース店180店、閉店率低下と取引食材の増加で一店当たり年間売上を現在の1.54倍とする。
- レストラン直営店:数量 4.0(年間来客数(百万人))× 価格 3,600(来客一人当たり売上高(円))→ 売上 144 億円・営業利益 9 億円。レストラン直営約95店相当。客単価は現在の1.44倍で、買収償却終了と厨房・人員配置効率の改善を含む。
- レストランのライセンス・食材供給:数量 90.0(年間平均稼働ライセンス店舗数(店))× 価格 0.19(稼働店舗一店当たり年間使用料・食材供給売上高(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 4 億円。ライセンス店90店で、食材供給とロイヤルティが伸びる。店舗物件の負担を会社が直接負わない。
倍率:k8%、2036年以降の名目成長率g3%。十年間の純利益合計約111.58億円、累計還元22.62億円から自己資本112.51億円。余剰現金18億円と税後利息0.252億円を除いた事業ROEは約22.3%。堀が普通なのでRONIC=8%+0.5×(22.3%−8%)=約15.2%。正当化PER=(1−3%÷RONIC)÷(8%−3%)=約16.04倍。時価総額=(21.34−18×1.4%)×16.04+18×0.75=351.7515億円。余剰現金と利益を二重に数えていない。
確率:500店という長期構想に近づくには、商品開発、出店物件、人材育成、加盟店の継続率が十年間そろって改善する必要がある。複数ブランドの実績を評価する一方、2026年の計画未達を踏まえて成功確率は9%にとどめる。
やや楽観 18% 主力ブランドが着実に商圏を広げる 利益 14 億円 · PER 15.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 8,829 円223 億円
らぁ麺 はやし田を中心に、首都圏の駅前と郊外で店舗を増やす。日本油党などの別ブランドが新しい客層を獲得するが、すべての新商品が主力ブランドに育つわけではない。ラーメン直営店は約85店、プロデュース店は145店規模へ伸びる。加盟店の閉店は続くものの、店主の収益改善に向けた食材と運営支援が働き、純増を積み上げられる。
レストラン直営店は約70店、ライセンス店は68店へ増える。CONAと焼売のジョーは、気軽な価格帯を維持しながら少しずつ値上げを進める。メニューやスタッフの配置に工夫が生まれ、同じ店でも現在より多くの利益が残る。客単価が物価をやや上回って伸びる一方、賃金と食材の上昇を完全には抑えられないため、営業利益率の改善は楽観より穏やかになる。
M&Aによる大型の新ブランド取得は前提にしない。昔の買収に伴う償却負担が減る効果を含めても、店舗更新には相応の資金を使う。営業で生み出した現金の一部は出店に、一部は株主還元と将来の余剰資金に回る。中立を上回る成長が続くが、長期構想の500店には届かない。
- ラーメン直営店:数量 6.9(年間来客数(百万人))× 価格 1,770(来客一人当たり売上高(円))→ 売上 121 億円・営業利益 13 億円。ラーメン直営約85店、年間685万人。価格は現在の1.36倍で、厨房効率の改善を伴う。
- ラーメンのプロデュース・食材供給:数量 145(年間平均稼働プロデュース店舗数(店))× 価格 0.13(稼働店舗一店当たり年間食材供給・フィー売上高(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 3 億円。加盟店145店、供給単価は現在の1.41倍。店主の利益を守る支援がある程度定着する。
- レストラン直営店:数量 2.9(年間来客数(百万人))× 価格 3,520(来客一人当たり売上高(円))→ 売上 103 億円・営業利益 6 億円。直営レストラン約70店相当、年間292万人。客単価は今の1.41倍で、買収償却終了が収益を下支えする。
- レストランのライセンス・食材供給:数量 68.0(年間平均稼働ライセンス店舗数(店))× 価格 0.18(稼働店舗一店当たり年間使用料・食材供給売上高(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。ライセンス68店に拡大。食材供給が中心で、ロイヤルティ収入は補完する。
倍率:k8%、g3%。十年間の累積利益約85.05億円、還元17.26億円、自己資本91.33億円。余剰現金15億円と税後利息0.21億円を分離した事業ROEは約18.35%。残る割合0.5でRONICは約13.17%。正当化PERは約15.45倍。時価総額=(14.22−15×1.4%)×15.45+15×0.75=227.7045億円。
確率:ラーメンの主力ブランドと加盟店支援には既に出店実績があり、2027年の店舗拡大予想がある程度実現すれば到達可能である。ただし十年間の高い純増が必要なため、楽観よりは高く、中立より低い18%とする。
中立 34% 出店は続くが利益率改善は緩やか 利益 10 億円 · PER 14.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6,016 円152 億円
国内のラーメンと居酒屋の需要は大きく伸びないが、INGSは主力ブランドの立地を広げて市場内のシェアを高める。ラーメン直営店は約75店、プロデュース店は120店の稼働規模になる。加盟店の新規開業と閉店はともに続き、プロデュース契約の継続率に劇的な改善はない。主力のらぁ麺 はやし田以外にも需要を集めるブランドが育つが、失敗する新商品のために一定の開発費も負担する。
レストラン直営店は約60店、ライセンス店も約60店へ広がる。CONAと焼売のジョーが価格を物価並みに引き上げても、消費者の財布が緩むわけではない。来客数を保つための販促や商品変更は続く。2026年と同じ客数増を十年間繰り返すのではなく、客数の成長は新しい店舗を獲得することから生まれる。
新店の設備投資と古い店の改装費は大きくなるものの、営業利益は売上の伸びに伴って増える。過去の買収償却が終わる効果は、賃金、物流、設備更新費の上昇で一部相殺される。高い配当性向を約束する会社ではないため、利益の大部分は自己資本として積み上がる。そのうち将来の事業運営に必要な額を超える部分だけを余剰現金とみなし、株主にとっての価値を慎重に評価する。
- ラーメン直営店:数量 6.1(年間来客数(百万人))× 価格 1,740(来客一人当たり売上高(円))→ 売上 105 億円・営業利益 9 億円。ラーメン直営約75店、年間605万人。客単価は現在の1.34倍で、物価3%の十年分とほぼ一致する。
- ラーメンのプロデュース・食材供給:数量 120(年間平均稼働プロデュース店舗数(店))× 価格 0.13(稼働店舗一店当たり年間食材供給・フィー売上高(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。プロデュース店120店。食材供給単価は現在の1.34倍で、加盟店の経営負担にも配慮する。
- レストラン直営店:数量 2.5(年間来客数(百万人))× 価格 3,350(来客一人当たり売上高(円))→ 売上 84 億円・営業利益 4 億円。レストラン直営約60店、年間250万人。客単価は現在の1.34倍。家賃・人件費上昇を考慮し営業利益率4.5%。
- レストランのライセンス・食材供給:数量 60.0(年間平均稼働ライセンス店舗数(店))× 価格 0.18(稼働店舗一店当たり年間使用料・食材供給売上高(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。ライセンス店60店。一店当たり食材供給・フィー売上は現在の1.34倍。
倍率:k8%、g3%。2026年の純利益3.90億円から十年間ほぼ一定の比率で10.05億円へ伸びる経路では、累積純利益が約68.09億円、累積還元が13.82億円となり、自己資本は23.55+68.09−13.82=77.82億円。余剰現金12億円と税後利息0.168億円を分離した事業ROEは約15.01%、堀が普通なのでRONICは約11.51%。正当化PER=(1−3%÷11.51%)÷(8%−3%)=約14.79倍。時価総額=(10.05−12×1.4%)×14.79+12×0.75=155.1548億円。
確率:既存店の集客力と複数ブランドの出店余地を認める一方、2026年の加盟店閉店と計画未達を織り込む。十年間に年平均約13店の店舗純増を続ける見方が最も説明しやすく、確率34%を与える。
やや悲観 25% 人手不足と加盟店の撤退が成長を鈍らせる 利益 3 億円 · PER 11.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,274 円32 億円
ラーメンの直営店は出店を続けるものの、駅前の家賃と採用費が上がり、郊外では客数の伸びが止まる。利益の薄い店舗を閉じるため、十年後の直営店は約48店と今よりわずかな増加にとどまる。プロデュース店は一時増えるが、店主側の採算が悪化し、閉店と契約終了が続く。最終的な稼働店舗は85店となる。
CONAと焼売のジョーは低価格の魅力を守ろうとするが、人件費と食材価格を十分には転嫁できない。レストラン直営店は約43店、ライセンス店は42店にとどまる。顧客は大手の低価格チェーンや独立系の人気店へ分散し、既存店の来客も減る。会社は店舗数を追わず、赤字店の撤退と改装を優先する経営へ切り替える。
店舗の家賃と内装の更新費は、売上が伸びなくても支払い続けなければならない。昔の買収に伴う償却が終わる効果は残るが、新たな改装費や採用費がそれを打ち消す。累積の株主還元は利益の縮小に応じて抑えられる。会社は存続し、料理を求める客も残るものの、十分な超過収益を生み出さない普通の中小外食チェーンになる。
- ラーメン直営店:数量 3.9(年間来客数(百万人))× 価格 1,610(来客一人当たり売上高(円))→ 売上 62 億円・営業利益 3 億円。直営約48店。客単価は今より上がるが物価の上昇に追いつかず、既存店客数も弱い。
- ラーメンのプロデュース・食材供給:数量 85.0(年間平均稼働プロデュース店舗数(店))× 価格 0.12(稼働店舗一店当たり年間食材供給・フィー売上高(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。稼働85店。加盟店の価格転嫁力が弱く、供給単価は物価上昇を下回る。
- レストラン直営店:数量 1.8(年間来客数(百万人))× 価格 3,100(来客一人当たり売上高(円))→ 売上 56 億円・営業利益 1 億円。直営約43店。家賃と人件費の固定費負担が重く、利益率1.5%に低下する。
- レストランのライセンス・食材供給:数量 42.0(年間平均稼働ライセンス店舗数(店))× 価格 0.16(稼働店舗一店当たり年間使用料・食材供給売上高(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。ライセンス42店。契約の更新率が低下し、食材供給の利益率も下がる。
倍率:事業の純利益は余剰現金3億円に対応する税後利息0.042億円を除いて2.708億円。事業に必要な自己資本46.28億円に対するROEは約5.85%でk8%を下回る。ROEがk以下の正当化PERの上限12.5倍を超えず、衰えた競争力と更新投資のため11.3倍とする。時価総額=(2.75−3×1.4%)×11.3+3×0.75=32.8504億円。床の推定回収可能資産4.5億円も上回る。
確率:2026年に加盟店の新規開業18店に対し13店が閉店しており、成長の弱さは既に一部表れている。採用難と価格転嫁の限界が同時に進む現実的な下振れとして25%を与える。
悲観 14% 店舗撤退が続きブランドの優位を失う 利益 −1 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 186 円5 億円
消費者の好みが移り、らぁ麺 はやし田や日本油党の集客力が低下する。新しいブランドを立ち上げても、既存店から客を移すだけで会社全体の利益は増えない。採用難と内装費の高騰によって新店の投資回収が悪くなり、直営のラーメン店は約26店まで減少する。プロデュース店も契約終了が相次ぎ、50店まで縮小する。
レストラン事業では、CONAや焼売のジョーが大手の低価格チェーンとの競争に押される。客単価を上げると客が離れ、据え置くと人件費と食材価格の上昇が利益を奪う。会社は損失の大きな物件から撤退するが、賃借契約の残り期間に応じて家賃と原状回復費を負担する。レストラン直営店は約21店、ライセンス店は20店まで減る。
経営陣は店舗網の再建に現金を優先して使い、株主還元をほぼ停止する。初期には利益が残るものの、その後の赤字と店舗資産の減損が積み重なる。過去に投じた内装や買収に伴う無形資産は、清算時にほとんど価値を生まない。食事の需要が社会から消えるのではなく、INGSの店舗やブランドがその需要を取り込めなくなった結果である。十年後にも小規模な事業は残るが、純利益を安定して稼ぐ力は失われている。
- ラーメン直営店:数量 2.1(年間来客数(百万人))× 価格 1,500(来客一人当たり売上高(円))→ 売上 32 億円・営業利益 0 億円。直営約26店へ縮小。価格を十分に上げられず、固定費が売上総利益を吸収する。
- ラーメンのプロデュース・食材供給:数量 50.0(年間平均稼働プロデュース店舗数(店))× 価格 0.10(稼働店舗一店当たり年間食材供給・フィー売上高(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。プロデュース50店。加盟店の撤退が続き、供給数量と契約当たりの収入が縮小する。
- レストラン直営店:数量 0.9(年間来客数(百万人))× 価格 3,000(来客一人当たり売上高(円))→ 売上 27 億円・営業利益 −1 億円。レストラン直営約21店。家賃・人件費が残り、営業損失が続く。
- レストランのライセンス・食材供給:数量 20.0(年間平均稼働ライセンス店舗数(店))× 価格 0.13(稼働店舗一店当たり年間使用料・食材供給売上高(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。ライセンス20店。食材物流と支援業務の固定費で利益を失う。
倍率:営業赤字が続く構造的敗北なのでPERを使わない。2026年8月末の自己資本23.55億円から十年間の累積損失と配当、店舗資産の減損を経て2036年の自己資本が12億円まで縮むとする。店舗内装やのれんは換金性が低く、減損後の自己資本に対するPBR0.40を適用し、時価総額12×0.40=4.8億円。推定回収可能資産の床4.5億円を下回らない。倒産・清算による全損とは別の筋書きである。
確率:2026年の加盟店閉店と計画未達が十年間続き、直営店の固定費とブランドの競争力低下が重なる構造的敗北の筋書きである。突然の事業消滅までは見込まないため、確率14%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ラーメン直営店
らぁ麺 はやし田、日本油党などの直営店舗で料理を提供し、客数と客単価から収益を得る。
| 数量年間来客数(百万人) | 価格来客一人当たり売上高(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 3.4 | 1,300 | 44 | 4 |
| 10 年後 中立 | 6.1 | 1,740 | 105 | 9 |
取り方:2026年8月期のラーメン事業売上高50.87448億円と、期末の直営46店・プロデュース73店を会社決算資料から採用した。2025年11月の事業計画に示された売上構成では、ラーメン直営店が全社の45%を占め、はやし田の2025年8月単月客単価は都市型1,096円、郊外型1,178円だった。2026年の複数業態の客単価を平均1,300円と仮定し、年間340万人の来客を逆算した。年間平均42店に対して一店約8.1万人となる。2026年の直営・プロデュース別売上高と営業利益は直接開示されていないため、44.20億円と3.80億円は分析上の推定配分であり、会社開示の部門実績ではない。
ラーメンのプロデュース・食材供給
独自の屋号で営業する店主に麺・タレ・スープなどを供給し、運営支援と月額フィーから収益を得る。
| 数量年間平均稼働プロデュース店舗数(店) | 価格稼働店舗一店当たり年間食材供給・フィー売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 71.0 | 0.09 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 120 | 0.13 | 15 | 2 |
取り方:期末店舗数は2025年8月の69店から2026年8月の73店へ増加したため、期中平均稼働店舗を約71店とした。ラーメン事業売上高50.87448億円から推定直営売上44.20億円を控除すると6.67448億円となる。会社開示の月額フィーは5万円で、年間では一店0.006億円である。残りの約0.088億円は麺やスープなどの供給売上と推定する。期中平均店舗、供給単価、営業利益の配分は分析上の推定であり、報告セグメントの合計と整合させた。
レストラン直営店
CONAや焼売のジョーなどの直営店で飲食を提供し、来店人数と客単価に応じて売上を得る。
| 数量年間来客数(百万人) | 価格来客一人当たり売上高(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 1.5 | 2,500 | 39 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2.5 | 3,350 | 84 | 4 |
取り方:2026年8月期のレストラン事業売上高42.66404億円、期末直営37店・ライセンス32店を出発点とする。2025年11月の事業計画では2025年8月単月の客単価がCONA2,662円、焼売のジョー2,373円と開示されている。両ブランドの構成を平均した2,500円と年間154万人を仮定すると、年間平均36.5店に対して一店約4.2万人となる。営業利益1.10億円は買収に伴う償却費の負担も意識した推定配分で、会社の独立開示値ではない。
レストランのライセンス・食材供給
CONAや焼売のジョーのブランド使用料、開業支援、専用食材の供給などを収益源とする。
| 数量年間平均稼働ライセンス店舗数(店) | 価格稼働店舗一店当たり年間使用料・食材供給売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 31.5 | 0.13 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 0.18 | 11 | 2 |
取り方:2025年8月末31店、2026年8月末32店から期中平均稼働数を31.5店と推定した。会社の2025年事業計画では、CONAの開業前支援料150万円と月額フィー15万円、焼売のジョーの月売上4%のフィーが説明されている。全社売上の約4%という過去の開示とも照合し、レストラン事業売上高から推定直営売上38.50億円を除いた4.16404億円をこの部門へ配分した。一店当たりの額には食材供給と開業関連売上が含まれ、純粋なロイヤルティ単価ではない。
リスクと懸念
加盟店の閉店と契約更新の弱さ
2026年8月期にはプロデュース・ライセンス店の新規出店18店に対し、閉店が13店発生した。店主にとって開業しやすい仕組みは会社の拡大に役立つが、独立した屋号を使うラーメン店ではブランドへの拘束力が弱い。食材購入が続かなければ、契約獲得数は利益の安定性を示さない。加盟店の開店数だけでなく、一年以上継続している店舗の比率を確かめる必要がある。
家賃と人件費の固定費
直営店は賃借した物件と現場の従業員に依存する。客数が一割減っても家賃は一割下がらず、賃上げや採用費の負担が重くなる。2027年4月1日以後に始まる事業年度から適用される新リース会計基準によって、賃借の一部が使用権資産とリース負債に表れるようになる。会計表示が変わっても実際の家賃の支払い義務が新たに生まれるわけではなく、従来からある経済的負担である。
出店計画の未達と投資回収
2025年時点で示した2026年8月末の店舗数計画208店に対し、実績は188店だった。物件、人材、加盟店オーナーの確保に制約があることを示している。新店を増やせても、内装投資や保証金を回収するまでに長い期間がかかれば、帳簿上の利益増加は株主の現金増加に結びつかない。次の2027年8月期の純増32店計画は、その実行力を検証する機会となる。
値上げの限界と食品原価
小麦、鶏肉、魚介、油脂などの原材料には供給不安と値上がりがあり、メニュー価格への転嫁が遅れると利益率が下がる。会社には値上げや商品改定によって業績を伸ばした実績があるが、客単価だけでなく客数を保てるかが重要だ。特に低価格を売りにするCONAでは、看板商品の割安感を失うと店の来店理由が弱まる。
買収資産と店舗設備の減損
2018年のCONA関連事業買収によってブランド収益を取り込めた反面、のれんと無形資産の償却費がレストラン事業の利益を圧迫してきた。今後の業績が計画を下回れば、既存店の内装設備やその他の資産について減損が必要になる可能性がある。償却が自然に終わる利益改善と、新たな買収で生じる費用を混同してはならない。
首都圏集中とブランドの流行変化
直営店は一都三県を中心に展開しており、同じ地域の人手不足、賃料上昇、自然災害の影響を受けやすい。複数ブランドを持つことは客層を広げるが、それぞれが長期間の人気を保つとは限らない。新しいラーメン業態が流行すれば、従来のらぁ麺 はやし田の来客が減る可能性もある。自社ブランド同士で客を奪っていないかを見たい。
株式希薄化と少数株主への還元
上場後の株数は新株予約権の行使などで増加している。今後も潜在株式が行使されれば、一株当たりの既存株主の取り分は減る。また、経営者側の持株比率が高く、少数株主は投資と配当の選択を直接制御できない。初配当は前向きな変化だが、高い還元率や自社株買いを継続した実績はまだないため、利益の蓄積をそのまま株主還元と同一視しない。
今後の分かれ目
- 2027年8月期に会社計画の店舗純増32店を達成し、加盟店の年間閉店数も明確に減少したら
- 加盟店支援の継続性が改善した証拠として、中立からやや楽観の確率を引き上げる。純増だけでなく、稼働加盟店一店当たりの食材供給収入が伸びているかも確認する。
- ラーメン直営店の既存店売上が二年以上、客数の増加を伴って前年を上回ったら
- 価格改定だけではないブランドの集客力を評価し、直営店の数量と増分投資利回りの想定を引き上げる。新店の出店余地も増えると判断する。
- 加盟店の閉店が新規開店に近い状態で二期連続し、契約店舗数が横ばいになったら
- 店舗数を伸ばしやすいという投資仮説を修正する。プロデュースとライセンスの2036年店舗数を下げ、やや悲観側の確率を引き上げる。
- 新しい直営店の投資回収期間が長期化し、投資活動による支出が営業キャッシュフローを継続的に超えたら
- 会計上の利益成長がオーナー利益に転換していないと判断する。余剰現金の見積りを下方修正し、必要なら直営店の増加ペースも引き下げる。
- レストラン事業の買収償却が終了した後も、同事業の営業利益率が改善しなかったら
- 人件費と賃料の上昇、既存店集客の弱さが償却終了の利益改善効果を打ち消したと考え、中立の営業利益率を下方修正する。
- 利益成長に合わせて配当性向が引き上げられ、自社株買いによる発行済株式数の純減も確認できたら
- 経営者側が余剰資金を株主に返す行動を取った証拠として、将来の現金の戻り方を0.75から1.0へ見直すことを検討する。
見ておくもの
- 2027年8月期末220店の会社計画に対する四半期ごとの店舗純増数
- ラーメン直営店・レストラン直営店の既存店売上を客数と客単価に分けた月次推移
- ラーメンプロデュース店とレストランライセンス店の新規開店数・閉店数・期末稼働数
- 加盟店一店当たりの食材供給売上と契約更新率の開示状況
- 新規直営店の設備投資・保証金と、投資回収までの期間
- 2026年8月期の営業キャッシュフロー約7.7億円と投資支出約6.0億円の関係が翌期以降どう変わるか
- CONA関連ののれん・無形資産償却費の減少と、レストラン事業の実際の営業利益率
- 配当性向、自社株買い、新株予約権行使後の発行済株式数
- 長期500店構想の達成年度が明示されるか、また計画を修正するか
- 原材料費、人件費、家賃、店舗改装費の上昇が客単価改定を上回っていないか
倍率と資本コストの決め方
2026年10月23日の株価2,427円と最新の発行済株式2,525,240株から時価総額を約61.29億円とした。添付のbriefにある株数2,524,660株は2026年5月末の基準であるため、10月15日公表の通期短信に合わせて580株更新した。利益の起点も添付の2025年8月期ではなく、最新の2026年8月期とした。
十年後の売上は直営店の来客数と客単価、加盟店の稼働店数と取引額から作り、現在の株価や現在のPERから逆算していない。倍率はk8%、長期成長率3%、増分の資本収益率が将来薄れるという条件から求めた。十年間に蓄積する現金は事業の利益と自己資本から分け、利息と現金価値を二重に数えていない。将来の店舗賃借は2028年8月期から新リース会計基準による表示変更が見込まれるが、比較する十年後の利益は現在と同じく家賃を営業費用として扱う形でそろえた。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%に、事業の循環に関する0.5%を加えた。店舗数計画の未達や加盟店の閉店は資本コストではなく、五つの筋書きと確率に反映した。