結論
ホットマンは、宮城を本拠に東北と茨城でイエローハットの店を 90 運営する加盟店の会社だ。筆者の結論は割高である。車検と整備の需要は固いが、資本の稼ぎは資本コストの半分ほどで、今の値段はその弱さを十分に織り込んでいない。
事業は手堅い。雪国ではタイヤの履き替えが年 2 回あり、車検は 2 年ごとに必ず来る。ここ 10 年、営業利益は 2〜7 億円で赤字の年は無い。TSUTAYA やダイソー、コメダ珈琲店など他社の看板の店も 30 余り持つ。
弱点は 2 つある。1 つは加盟店ゆえの値決め力の弱さで、前期もタイヤの仕入れ値の上げで減益になった。もう 1 つは資本の使い方だ。配当は利益の 2 割強で、ROE は 5% 前後にとどまる。帳簿が積み上がるほど株主の取り分は薄まる。
借入と退職給付の引当も重く、悪い年が続いた時の床は薄い。利益の 11 倍ほどという今の値段は、伸びない利益に払う値段としては高いと筆者は見る。上振れの鍵は、本部のイエローハットによる加盟店の買い取りか、還元の強化だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「つぶれにくいが、育ちにくい」事業だ。雪国の車検とタイヤは毎年必ず来る需要で、10 年後も店は残っているだろう。だが看板も仕入れも本部のもので、値段は競合に決められる。
オーナーとして持ち続けたいかと問えば、値段しだいだ。資本の稼ぎは資本コストの半分ほどで、利益をためるほど株主の価値は薄まる。今の値段は帳簿の半分だが、稼ぎに比べると安くない。利益の 11 倍ほどを払って、伸びない利益を買うことになる。
安全域は薄い。借入と退職給付が重く、悪い年が続けば帳簿は思ったより早く減る。
筆者がいちばん気にしているのは、利益の使い道だ。8 割近くを手元に残す会社は、その使い方で価値が決まる。店の更新と小さな出店に回るなら、資本の稼ぎはさらに下がる。株主に戻す決断があって初めて、帳簿の半分という値段が安く見えてくる。
何で稼ぐ会社か
売上の 8 割弱はイエローハットの店だ。宮城・福島・岩手・山形・秋田と茨城に 90 店を持ち、タイヤ、バッテリー、オイル、カーナビを売って取り付けで工賃を取る。車検と整備にも力を入れ、アプリの会員と WEB の作業予約で来店を平準化している。冬の前と春のタイヤの履き替えが売上の山で、雪国ならではの需要だ。
残りは他社の看板を借りた店の集まりだ。書店と雑貨の TSUTAYA が 6 店、中古カー用品のアップガレージが 8 店ある。ほかにカーセブン、ダイソー、シャトレーゼ、コメダ珈琲店、買取大吉、宝くじ売場を営む。どれも本部に使用料を払う加盟店の形で、地域の客を別の業態でも取り込む狙いだ。TSUTAYA は閉店が続き赤字だが、アップガレージは利益率が 1 割を超える。
店の多くは借りており、家賃は売上が落ちても払う固定費だ。土地も 25 億円ほど持つ。借入は 40 億円強、退職給付の引当も 15 億円あり、身軽な会社ではない。
創業者の伊藤信幸氏が株の 15% 台を持ち、イエローハット本体も 15% を持つ。
優良さと弱いところ
優良さは並みとみる。強みは店の密度と雪国の需要だ。東北の郊外は車なしでは暮らせず、タイヤの履き替えと車検は景気に左右されにくい。ここ 10 年、営業利益が赤字になった年は無い。
弱みは値決め力だ。看板と仕入れの条件は本部が決め、タイヤとオイルは通販やディーラーと値段で比べられる。前期は売上が増えたのに、仕入れ値の上げで営業利益は減った。整備士の人件費も上がり続ける。
資本の質も弱い。ROE は 10 年の中央値で 4% 台で、資本コストの 8% 台に届かない。借入と退職給付が重く、純利益の多くは返済と店の更新に回る。多業態の店は客を広く取る工夫だが、どれも他社の看板で、堀、つまり他社がまねできない強みにはならない。
経営は創業者の伊藤信幸氏が長く担い、出店と閉店の判断は手堅い。ただ、資本を株主に戻すより事業の中に置く姿勢が強い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
カー用品と整備の市場は国内の車の数で決まる。業種ノートでは 10 年で 1 割ほどの縮みを中立とみる。東北は人口の減りが全国より速く、車の数の縮みもそれに近い。一方で平均の車齢は延び、古い車ほど部品の交換と整備が要る。車検関連の市場は過去 10 年、ほぼ横ばいを保ってきた。
競争は大手 2 社の店網の争いだ。イエローハットとオートバックスが全国に店を持ち、ディーラーの整備部門、タイヤの通販、ガソリンスタンドが割り込む。ホットマンはイエローハットの陣営で、東北という広い地盤を押さえる。
大きな変化は EV だ。オイルや点火プラグの需要は消えるが、重い車体でタイヤは早く減る。寒冷地は EV の普及が遅く、変化はゆっくり来るとみる。業界では本部が加盟店を買い取る動きもあり、加盟店の立場は本部の方針しだいだ。イエローハット本体も加盟店の株を持ち、関係を深めている。
人件費の上昇は業界全体の課題だ。整備士は全国で足りず、賃金は物価より速く上がる。値上げで取り返せる会社と、取り返せない加盟店の差は開いていく。
資本政策と M&A
配当は年 1 回で、前期は増配した。総額は 0.8 億円弱で、利益の 2 割強にとどまる。自社株買いは近年していない。株主優待は 9 月末の株主に JCB ギフトカードを贈る形で、費用は開示が無いが年 0.1 億円に届かない小さな額とみる。
筆頭株主は創業者で、イエローハット本体と合わせて株の 3 割を持つ。敵対的な買収は起きにくいが、本部が加盟店を買い取る道はある。その時は帳簿の価値が一つの目安になる。
借入は 40 億円強で、金利が上がれば利払いが増える。新しいリースの会計基準では 2028/03 期から借りた店が BS に載り、負債はさらに大きく見える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
値段は帳簿の半分にすぎない。土地を 25 億円持ち、ここ 10 年は毎年黒字を出してきた。雪国のタイヤの履き替えと車検は景気に強く、車が古くなるほど整備の需要は増える。WEB の作業予約で来店は安定し、今期は営業利益 7 億円と増益を見込む。
イエローハット本体が株の 15% を持つことも心強い。本部が加盟店を買い取る動きが進めば、帳簿の価値に近い値がつく道が開く。多業態の店は地域の客を広く取り込み、アップガレージのように利益率 1 割を超える店もある。
悪い材料は値段に出尽くしており、配当も少しずつ増えている。
借入も 10 年前の 45 億円から少しずつ減ってきた。金利が上がっても、返済を進めれば利払いは抑えられる。地盤の東北は車が生活の足で、都市のような車離れは起きにくい。EV の普及も寒冷地では遅れ、エンジン車の整備の需要は長く残る。今期の会社予想どおり増益が続けば、利益の 11 倍という値段も数年で 9 倍台まで下がる。
慎重な見方
帳簿の半分という値段には理由がある。資本の稼ぎが資本コストの半分しかないからだ。配当は利益の 2 割強で、残りは帳簿に積まれる。ROE は 10 年で 4% 台を出ず、これからも上がる理由が無い。
値決め力も無い。前期はタイヤの仕入れ値の上げを売値に移せず、売上が増えたのに減益になった。整備士の人件費は物価より速く上がる。東北の人口は全国より速く減り、車の数も減る。
財務も見かけより重い。借入 40 億円強に退職給付 15 億円、さらに店の家賃という固定の約束がある。利益の 11 倍という値段は、伸びない利益に対して高い。
しかも本部の方針一つで加盟店の立場は変わる。看板の使用料の条件が厳しくなれば、利益率はさらに下がる。多業態の店も、TSUTAYA のように本部の不振をそのまま受ける。帳簿の半分という値段を安いと見るのは、帳簿がこの先も同じ価値を保つと信じる時だけだ。稼ぎの細る帳簿は、年ごとに価値を失っていく。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。事業の手堅さは本当だが、資本の稼ぎの低さは値段に十分入っていない。中立に 4 割弱、悲観側に 3 割強、楽観側に 3 割弱を置いた。還元を大きく増やすか、本部が加盟店の買い取りに動けば、楽観側に寄せる。逆にイエローハット事業の利益率が 4% を割る年が続けば、慎重な側に寄せ直す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 591 円42 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 123 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 365 円26 億円、今との差 −36.2%、 期待の年率 +2.2%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,152 円81 億円 | 166 円12 億円 | +130.4% | +8.7% | 92 円7 億円 |
| やや楽観 | 20% | 896 円63 億円 | 145 円10 億円 | +81.9% | +6.2% | 208 円15 億円 |
| 中立 | 38% | 704 円50 億円 | 130 円9 億円 | +45.9% | +3.9% | 317 円22 億円 |
| やや悲観 | 23% | 238 円17 億円 | 118 円8 億円 | −37.8% | −4.6% | 82 円6 億円 |
| 悲観 | 12% | 71 円5 億円 | 48 円3 億円 | −79.2% | −14.5% | 14 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 591 円42 億円 | 123 円9 億円 | +24.8% | +2.2% | 714 円50 億円 |
今の株価時価総額 572 円40 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 車検と整備を取り込み、利益率が過去の山へ戻る 利益 6 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,152 円81 億円
東北と茨城の店網が、車検と整備の受け皿として太る。車は古くなるほど点検と部品の交換が要り、WEB の作業予約で来店も読みやすくなる。イエローハットの売上は物価を除いても 1 割強伸び、利益率は 5% 台に乗る。ダイソーやシャトレーゼ、買取大吉などの小さな店も数を増やし、本業の客を別の業態で取り込む。営業利益は 12 億円ほどになり、純利益は 6 億円を超える。それでも配当は利益の 2 割強にとどまり、資本の稼ぎは資本コストに届かない。上振れは事業より、溜まる現金の使い道しだいだ。自社株買いに踏み切れば、株主の取り分はさらに増える。
- イエローハット(加盟店・車検):数量 23,750(国内のカー用品と取付・整備の対象市場(億円・今の値段で測った実質))× 価格 1.1%(シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍)=実質の市場に対する売上の割合(名目))→ 売上 255 億円・営業利益 14 億円。市場 2.375 兆円(実質・今の 0.95 倍)× シェア 0.80% × 物価 1.34 倍、利益率 5.5%
- TSUTAYA・アップガレージ・その他の加盟店:数量 40.0(店の数(店))× 価格 2.03(1 店あたりの売上(億円・名目))→ 売上 81 億円・営業利益 4 億円。40 店 × 1 店 2.03 億円(物価 1.34 倍)、利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 81 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:WEB 予約と車検の取り込みが実を結び、多業態の店も育つ筋書き。営業利益率は 2012/03 期に 6% 台があったが、ここ 10 年は 3% 前後なので 1 割に届かない 7% とした。
やや楽観 20% 車検の取り込みで、物価より少し速く伸びる 利益 5 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 896 円63 億円
車の数はゆっくり減るが、ホットマンは地域の車検と整備の客を少しずつ集める。スタッドレスタイヤの需要は雪国の地盤で底堅く、季節の山を取り逃さない。イエローハットの売上は物価を除いて横ばいを少し上回り、利益率は 5% 強に戻る。その他の店は 38 店に増え、TSUTAYA の赤字は閉店で消える。営業利益は 10 億円弱、純利益は 5 億円ほどになる。配当は毎年少しずつ増えるが、利益の 2 割強という方針は変わらない。悪くない 10 年だが、資本の稼ぎは資本コストの 6 割にとどまる。借入の返済が進み、金利の上昇の痛みは小さく済む。
- イエローハット(加盟店・車検):数量 23,000(国内のカー用品と取付・整備の対象市場(億円・今の値段で測った実質))× 価格 1.0%(シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍)=実質の市場に対する売上の割合(名目))→ 売上 234 億円・営業利益 12 億円。市場 2.3 兆円(今の 0.92 倍)× シェア 0.76% × 物価 1.34 倍、利益率 5.2%
- TSUTAYA・アップガレージ・その他の加盟店:数量 38.0(店の数(店))× 価格 1.97(1 店あたりの売上(億円・名目))→ 売上 75 億円・営業利益 4 億円。38 店 × 1 店 1.97 億円(1.30 倍。TSUTAYA の縮みで物価を少し下回る)、利益率 5%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 63 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の今期予想(営業利益 7 億円)の線を 10 年延ばし、シェアを少し広げる筋書き。直近 2 期は営業利益 6〜7 億円で安定しているので 2 割。
中立 38% 車は減るが整備で支え、物価の分だけ伸びる 利益 4 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 704 円50 億円
国内の車の数は 10 年で 1 割減り、東北の地盤では人口の減りがもっと速い。それでも雪国の車は傷みが早く、タイヤの履き替えと車検は毎年必ず来る。ホットマンは店を大きくは増やさず、車検と作業予約で客を囲い込み、市場の縮みを取り分の広がりで埋める。売上は物価の分だけ伸び、イエローハットの利益率は 5% 弱を保つ。本社の費用と人件費も物価で上がり、全社の利益率は今より少し低い 2% 台後半になる。純利益は 4 億円弱で、今とほぼ同じだ。配当は利益の 2 割強で、残りは借入の返済と店の更新に回る。地味だが崩れもしない 10 年である。
- イエローハット(加盟店・車検):数量 22,500(国内のカー用品と取付・整備の対象市場(億円・今の値段で測った実質))× 価格 1.0%(シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍)=実質の市場に対する売上の割合(名目))→ 売上 217 億円・営業利益 11 億円。市場 2.25 兆円(実質・今の 0.90 倍)× シェア 0.72% × 物価 1.34 倍、利益率 4.9%
- TSUTAYA・アップガレージ・その他の加盟店:数量 36.0(店の数(店))× 価格 1.97(1 店あたりの売上(億円・名目))→ 売上 71 億円・営業利益 3 億円。36 店 × 1 店 1.97 億円(1.30 倍)、利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.6% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 50 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種ノートの中立(カー用品・整備の市場は数量で 1 割減)に、車検の取り込みでシェアを少し広げる形。イエローハット・アイエーグループの中立と同じ物差しで、もっとも起こりやすいとみた。
やや悲観 23% 車離れと人件費で、利益が細る 利益 1 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 238 円17 億円
東北の人口減で車の数は 10 年で 15% 減る。タイヤは通販とディーラーに値段で比べられ、仕入れ値の上げを売値に移せない。整備士の取り合いで人件費は物価より速く上がり、店の家賃は売上が落ちても下がらない。イエローハットの利益率は 4% を割り、その他の店も閉店が続く。営業利益は 3 億円ほど、純利益は 1 億円台に落ちる。借入の金利も上がり、利払いが利益を削る。配当は据え置かれるが、帳簿を生かす稼ぎは無い。値段は稼ぐ力に見合う水準まで下がる。TSUTAYA などの赤字の店を閉める費用も、利益を削る。
- イエローハット(加盟店・車検):数量 21,250(国内のカー用品と取付・整備の対象市場(億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.9%(シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍)=実質の市場に対する売上の割合(名目))→ 売上 182 億円・営業利益 7 億円。市場 2.125 兆円(今の 0.85 倍)× シェア 0.66% × 価格 1.30 倍、利益率 3.8%(家賃は固定)
- TSUTAYA・アップガレージ・その他の加盟店:数量 32.0(店の数(店))× 価格 1.85(1 店あたりの売上(億円・名目))→ 売上 59 億円・営業利益 2 億円。32 店 × 1 店 1.85 億円(1.22 倍)、利益率 3.5%
倍率:ROE は約 1.5%で k を大きく下回り、値段は稼ぐ力(純利益÷k)までで PER の上限は 12.1 倍。家賃と人件費が固定費として残り利益の振れが大きいので、上限の 7.5 割の 9.0 倍。PBR は 0.13 倍と低いが、借入と退職給付が重く床の資産は約 5 億しかないので、稼ぐ力の方が値段を決める。
確率:整備士の人件費とタイヤの仕入れ値が上がり、値上げが追いつかない筋書き。前期も仕入れ高で減益になったので 2 割強を置いた。
悲観 12% 店を閉め、資産を処分して借入を返す 利益 −4 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 71 円5 億円
車の数は 10 年で 4 分の 1 減り、カーシェアと EV で整備の中身が変わる。エンジンまわりの部品と油脂の需要が消え、EV の整備はメーカー系のディーラーに流れる。イエローハットの本部は店の統廃合を進め、加盟店のホットマンは不採算の店を閉める。家賃と人件費が残る中で営業赤字が続き、減損で自己資本は 6 割ほどに減る。配当は数年で止まる。値段は土地と在庫を売り、借入と退職給付を払った残りに近づく。創業家とイエローハットが株の 3 割を持ち、清算を少数株主が決めることはできない。土地は郊外にあり売れるが、在庫は投げ売りになる。
- イエローハット(加盟店・車検):数量 18,750(国内のカー用品と取付・整備の対象市場(億円・今の値段で測った実質))× 価格 0.7%(シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍)=実質の市場に対する売上の割合(名目))→ 売上 135 億円・営業利益 2 億円。市場 1.875 兆円(今の 0.75 倍)× シェア 0.60% × 価格 1.20 倍、利益率 1.2%
- TSUTAYA・アップガレージ・その他の加盟店:数量 28.0(店の数(店))× 価格 1.70(1 店あたりの売上(億円・名目))→ 売上 48 億円・営業利益 0 億円。28 店 × 1 店 1.70 億円、収支とんとん
倍率:赤字なので PBR で置く。稼ぐ力はゼロで、値段は床の資産(土地・在庫・現金から借入と退職給付を引いた約 5 億、floor_assets_why)まで。今の自己資本 77 億に対し 0.065 倍。
確率:車の数が 4 分の 1 減り、イエローハット本部の直営化や店の統廃合が進む構造的な負けの筋書き。退職給付と借入が重く、赤字になると床が薄いので 1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
イエローハット(加盟店・車検)
東北と茨城でイエローハット 90 店を運営し、用品の販売と取り付け・車検・整備で稼ぐ。売上の 8 割弱。
| 数量国内のカー用品と取付・整備の対象市場(億円・今の値段で測った実質) | 価格シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍)=実質の市場に対する売上の割合(名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25,000 | 0.7% | 173 | 9 |
| 10 年後 中立 | 22,500 | 1.0% | 217 | 11 |
取り方:業種ノートのカー用品市場約 1.7 兆円に整備の取り込み分を足して対象市場を約 2.5 兆円とした(イエローハット・アイエーグループと同じ置き方。推定)。売上 173.4 億円÷2.5 兆円でシェア約 0.69%。セグメント利益は短信の値。
TSUTAYA・アップガレージ・その他の加盟店
TSUTAYA 6・アップガレージ 8・カーセブン・ダイソー・シャトレーゼ・コメダ・買取大吉・宝くじの計 34 店と不動産賃貸・保険。
| 数量店の数(店) | 価格1 店あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 34.0 | 1.52 | 52 | 2 |
| 10 年後 中立 | 36.0 | 1.97 | 71 | 3 |
取り方:TSUTAYA 13.6・アップガレージ 11.9・その他 26.1 億円の売上を合わせ、宝くじを除く店の数で割った推定(宝くじと賃貸・保険は 1 店あたりに含めた)。利益は −0.30+1.58+1.28 億円。
リスクと懸念
タイヤの仕入れ値と値決め力
前期はタイヤの仕入れ値の上げを売値に移せず、売上が増えたのに減益になった。加盟店で値付けの自由は小さく、仕入れ値が上がる局面では利益率が真っ先に削られる。
東北の人口減と車の数
地盤の東北は人口の減りが全国より速い。店の来客は車の数に比例するので、数量が 1 割落ちると家賃と人件費が固定のまま利益は大きく削られる。
本部の方針への依存
看板と仕入れの条件、店の出し方はイエローハット本部しだいだ。ロイヤルティの条件や直営化の方針が変われば、加盟店の利益と地位がそのまま動く。
借入と退職給付の重さ
借入 40 億円強と退職給付の引当 15 億円がある。金利が 3.5% に上がれば利払いは年 1 億円近く増え、純利益の 4 分の 1 ほどを食う。
多業態の店の赤字
TSUTAYA は閉店が続き赤字だ。他社の看板を借りた小さな店は、本部の不振や業態の衰えをそのまま受け、減損で利益を削る。
今後の分かれ目
- 配当性向を大きく上げるか、自社株買いを始めたら
- 積み上がる帳簿が株主に戻り、資本の稼ぎの低さが和らぐ。楽観側の確率を上げてよい。
- イエローハット本体が加盟店の買い取りや持株の引き上げに動いたら
- 帳簿の価値に近い値がつく道が開く。株主には上振れの材料になる。
- イエローハット事業の利益率が 2 年続けて 4% を割ったら
- 仕入れ値と人件費を売値に移せない形が定着した印。やや悲観の筋書きに近づく。
- 車検の台数が 2 年続けて減ったら
- 整備の需要の固さという前提が崩れる。中立の数量を下げる。
見ておくもの
- イエローハット事業のセグメント利益率
- 車検・作業予約の件数
- 配当性向と自社株買いの有無
- イエローハット本部の加盟店政策
- 借入の残高と金利
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価から置いていない。還元が利益の 2 割強で 10 年後の自己資本が膨らみ、全ての筋書きで ROE は k 7.75% を下回る。PER の上限は 1÷k=12.1 倍で、利益の質で 7.5〜9 割を選んだ。悲観は土地・在庫・現金から借入と退職給付を引いた約 5 億で置いた。新リース会計基準で 2028/03 期から借りた店が BS に載るが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.9→12.9 倍・やや楽観 PER 10.3→12.9 倍・中立 PER 9.7→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。