結論
関門海は、とらふぐ料理の専門店「玄品」を全国に展開する外食会社だ。直営 41 店とフランチャイズ 21 店を持ち、売上は 53 億円。筆者の結論は、10 年で見れば今の値段は割高だというものだ。
理由は利益の薄さにある。営業利益率は 3% 台で、2026 年 3 月期の純利益は 1 億円ほどだ。ふぐは冬に売れる商品で、夏は赤字になりやすい。2027 年 3 月期の第 1 四半期も営業赤字だった。
強みもある。ふぐ専門という看板と、フランチャイズを全国に広げた仕組みは、ほかの外食にない個性だ。コロナ後に黒字へ戻した実行力もある。ただ、客単価が高い会席型の外食は、景気と人件費の影響を受けやすい。
配当は出していない。余った利益は在庫や店に回り、株主に戻る道筋は見えにくい。筆者は、10 年たっても利益が今の 1.3 倍程度にとどまり、今の時価総額は支えにくいと見る。売上 53 億円の会社で、1 年の利益が 1 億円前後というのが現実だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を長く持ちたいとは思わない。
理由の第一は、利益の薄さだ。売上の 3% しか営業利益にならない商売は、少しの人件費や仕入れの上昇で赤字になる。第二に、堀が弱い。ふぐ専門の看板は個性があるが、客は景気と値段で選ぶ。第三に、資本の使い道が見えない。配当はなく、自社株買いもなく、利益が積み上がっても株主に戻る保証がない。
良い点は、フランチャイズ網という資本を食わない稼ぎ方だ。直営の店に頼らず、加盟店から食材代とロイヤリティを受け取る仕組みは、増えれば利益率を押し上げる。
安全域の面では、今の時価総額は利益の 20 倍を超え、ためた利益にも見合わない。10 年先でも、利益が今の 1.3 倍にとどまれば、時価総額は今より下がるとみる。筆者は、安い値段でなければ手を出せない会社だと考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、とらふぐ料理の専門店「玄品」だ。2026 年 3 月時点で 62 店あり、直営が 41 店、フランチャイズが 21 店。コース料理が中心で、ふぐ刺し、てっちり、唐揚げ、雑炊の流れで 1 人あたり 0.5 万円台の客単価になる。
直営店は、会社が店を借りて運営する。売上の大半はここから上がるが、家賃と人件費が重い。フランチャイズ店は、加盟店にふぐの食材を卸し、ロイヤリティを受け取る。店を持たないので利益率は高いが、売上は小さい。
ほかに、ふぐの通販「お取り寄せ」と、夏場に出す焼きふぐ・うなぎ料理がある。ふぐは冬の食べ物で、売上は 10 月から 3 月に偏る。夏場は店の維持だけで利益が出ない。
2012 年に「玄品ふぐ」への原点回帰を打ち出し、2014 年からエリアごとにフランチャイズ本部を募った。2016 年には全国の区域で契約を終えた。コロナで 2021 年 3 月期の売上は 26 億円まで落ち、2023 年 3 月期から黒字に戻った。店は都市部の繁華街や駅の近くが中心で、客層は家族の記念日や接待、訪日客などだ。
優良さと弱いところ
強みは、ふぐ専門という看板と、フランチャイズ網だ。とらふぐのコースは、家族や接待の特別な食事として選ばれやすい。価格も安い部類で、全国にチェーンがある店はほかにない。養殖ふぐの調達と調理の仕組みも、専門店として積み上げてきた。
ただし、堀と呼べるほどの強みではない。ふぐは仕入れ価格が相場で動き、ほかの和食や居酒屋とも客を取り合う。調理に免許が要る点はあるが、参入を完全に止めるほどではない。
収益の質は低い。営業利益率は過去 10 年で 3〜6% と薄い。2020〜2022 年は赤字が 3 年続き、自己資本が 3 億円まで減った。冬に稼いだ利益が夏の赤字で削られる。
財務は今は落ち着いている。純現金はほぼゼロで、自己資本比率は 5 割ほど。ただ、店を借りて営む会社なので、家賃という固定の約束が借金と同じ重さで残る。配当は出していない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食は、人件費が上がる国で値段を上げ続けなければならない商売だ。人手不足と最低賃金の上昇で、店の運営費は年 3% 以上のペースで増える。客数は人口とともに細り、増えるのは訪日客くらいだ。大手は店の自動化と海外出店で補うが、中小のチェーンには余裕がない。
ふぐ専門の店は、会席型の高い客単価が特徴だ。景気が悪化すると、接待や家族の外食が減り、客数が落ちる。ふぐは冬の需要が中心で、夏は別の商品で補う必要がある。
ふぐの仕入れは、養殖業者の価格と天候に左右される。会社自身も、とらふぐの調達と食の安全を事業のリスクとして挙げている。仕入れ価格が上がっても、客単価を急に上げにくい。
競合は、他のふぐ料理店や、和食・海鮮の専門店、居酒屋チェーンだ。ふぐ専門のチェーンは少ないが、地元の老舗や百貨店・ホテルのふぐ料理とも客を分け合う。
追い風は、訪日客が高品質な和食を求めることと、フランチャイズの拡大が資本をあまり食わないことだ。新しい会計基準では、店の賃借が貸借対照表に載るため、借金の見かけが変わる。同業と比べるときは、家賃を借金と同じ重さで見る必要がある。
資本政策と M&A
資本政策は守りが中心だ。配当は出しておらず、自社株買いの実績もない。コロナの赤字期には、第三者割当による新株予約権で資金を調達した。その後の黒字化で借入はほぼなくなり、自己資本は 14 億円まで戻った。
株主優待は、100 株以上で玄品の食事券を年 2 回出す。1,000 株以上なら枚数が 6 倍になる。額面は大きく見えるが、会社の費用は年 0.1 億円に満たないと見る。
買収や再編の実績は見つからなかった。TOBやMBOの発表もない。時価総額が 29 億円と小さく、流動性は薄い。筆者は、積み上がった現金が株主に戻るかは、経営の方針が見えず、半分程度と割り引いて見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ふぐ専門の看板は強く、フランチャイズを全国に広げた仕組みは資本を食わない。2026 年 3 月期は店舗数が 62 店まで広がり、直営の損益も黒字に戻った。コロナで売上が半分に落ちた会社が、3 年で黒字に戻した実行力がある。
人手不足と物価高の中でも、会席型の高い客単価は値上げが通りやすい。訪日客が高品質な和食を求める流れも追い風だ。フランチャイズ店が 10 年で 30 店を超えれば、食材卸とロイヤリティの利益だけで、本社費を超える稼ぎになる。
通販の「お取り寄せ」を伸ばせば、夏場の売上の穴も埋まる。冬の利益が夏の赤字を上回る構造が定着し、営業利益率は 5% を超えられる。
借入が少なく、自己資本は 14 億円と厚みを取り戻した。利益が 2 倍になれば、時価総額は今より大きくなる。
筆者は、この強気の見方が成り立つ条件は、フランチャイズ店が年 3 店以上増え続けることだと考える。フランチャイズの本部機能は、ふぐの調達・調理の教育・販促を担い、加盟店を増やしても本社の人手がそれほど増えない。
慎重な見方
ふぐは冬に売る商品で、夏は赤字になる。2026 年 3 月期の第 3 四半期までの累計営業損益は赤字だった。2027 年 3 月期の第 1 四半期も営業赤字で、年間を通した安定した利益が出ない。
営業利益率は 3% 台と薄く、人件費が年 3% 上がるだけで利益が消える。ふぐの仕入れ価格は養殖業者に左右され、客単価を急には上げられない。コロナ期には赤字が 3 年続き、自己資本は 3 億円まで減った。
フランチャイズは直営より利益率が高いが、売上は小さい。加盟店が採算割れすれば、食材の取引も縮む。
配当はなく、株主に戻る道筋は見えない。それなのに時価総額は純利益の 20 倍を超えており、利益が 2 倍になっても足りない。10 年で景気の谷が来れば、赤字に戻る可能性は高い。
外食は人件費の上昇に値上げで追いつけるかが、すべてを決める。加えて、夏場の赤字を埋める焼きふぐ・うなぎ・通販は、まだ売上が小さく、冬の落ち込みを補うには足りない。
どちらに重みを置いたか
強気の根拠は、フランチャイズ網と看板の個性だ。弱気の根拠は、利益の薄さと季節性、人件費の上昇だ。筆者は弱気が強いとみる。
営業利益率が 3% 台で、売上の波に利益がほぼ連動する。景気の谷で赤字に戻る力が強い。そこで、確率は中立に 4 割弱、やや悲観に 4 分の 1 を置き、楽観は 7% にとどめた。
悲観は、客数の減少と仕入れ高で赤字が定着し、店を減らす筋書きだ。確率は 1 割とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 181 円25 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 8 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 84 円11 億円、今との差 −60.9%、 期待の年率 −1.2%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 597 円82 億円 | 36 円5 億円 | +195.8% | +11.5% | 44 円6 億円 |
| やや楽観 | 20% | 310 円42 億円 | 9 円1 億円 | +48.9% | +4.1% | 64 円9 億円 |
| 中立 | 38% | 169 円23 億円 | 7 円1 億円 | −17.8% | −1.9% | 67 円9 億円 |
| やや悲観 | 25% | 41 円6 億円 | 5 円1 億円 | −78.5% | −14.3% | 11 円2 億円 |
| 悲観 | 10% | 31 円4 億円 | 0 円0 億円 | −85.7% | −17.7% | 3 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 181 円25 億円 | 8 円1 億円 | −11.5% | −1.2% | 189 円26 億円 |
今の株価時価総額 214 円29 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% フランチャイズが全国に広がり利益が 4 倍になる 利益 5 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 597 円82 億円
フランチャイズが 34 店まで増え、食材卸とロイヤリティで本社費を超える稼ぎが出る。通販の「お取り寄せ」が夏場の穴を埋め、季節性が弱まる。直営店も客単価を物価以上に上げられ、営業利益率は 8% に届く。
人手不足にも自動化と店舗改装で対応し、直営店の利益は今の 2 倍になる。訪日客の取り込みも進み、客数が 1 割増える。
純利益は今の 4 倍になり、配当と自社株買いを始める。ただし、資本効率は資本コストに届かない水準にとどまる。
筆者は、薄利の外食でここまで届く確率を小さく置いている。ただ、フランチャイズの立ち上げに成功した前例はあり、起こりえない筋書きではない。
- 直営店(玄品):数量 74.3(年間客数(万人))× 価格 0.87(客単価(億円/万人。0.6 = 0.6 万円))→ 売上 65 億円・営業利益 5 億円。客数+10%・単価+45%
- フランチャイズ・食材卸:数量 33.6(加盟店数(店))× 価格 0.57(1 店あたり売上(億円。食材卸+ロイヤリティ))→ 売上 19 億円・営業利益 5 億円。店数+60%・単価+40%
- 通販・その他:数量 2.0(年 1 式)× 価格 5.18(売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。通販 2 倍・単価+40%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.7% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.66 倍、時価総額 72 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:フランチャイズの拡大と通販が重なり、季節性も崩れる筋書き。薄利の外食でここまで届く確率は小さい。
やや楽観 20% フランチャイズの拡大で利益が 2.5 倍になる 利益 3 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 310 円42 億円
フランチャイズが 27 店まで増え、食材卸とロイヤリティの利益が積み上がる。直営店は客数が横ばいで、客単価は物価をわずかに上回って上がり、人件費の上昇を吸収する。
通販は 4 割増え、夏の売上の穴を一部埋める。営業利益率は 6% に近づく。
純利益は今の 2.5 倍になる。それでも配当は少額にとどまり、優待を続ける。
この筋書きでは、フランチャイズの拡大と直営店の値上げという、会社がすでに取り組んでいる方針がそのまま実を結ぶ。大きな新規投資は要らない。
訪日客が高品質な和食を求める流れも取り込めるが、筆者は大きく上積みするほどではないと見る。冬の需要に偏る構造は変わらず、夏場の赤字は続く。
- 直営店(玄品):数量 67.5(年間客数(万人))× 価格 0.83(客単価(億円/万人。0.6 = 0.6 万円))→ 売上 56 億円・営業利益 3 億円。客数±0・単価+38%
- フランチャイズ・食材卸:数量 27.3(加盟店数(店))× 価格 0.54(1 店あたり売上(億円。食材卸+ロイヤリティ))→ 売上 15 億円・営業利益 4 億円。店数+30%・単価+33%
- 通販・その他:数量 1.4(年 1 式)× 価格 4.81(売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。通販+40%・単価+30%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.8% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍。全体の PER 12.43 倍、時価総額 35 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:フランチャイズが緩やかに広がり、直営は値上げで人件費を吸収する筋書き。
中立 38% 客数の減りを値上げで補い、利益は今の 1.3 倍にとどまる 利益 2 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 169 円23 億円
直営店の客数は人口の減少で 10 年で 1 割近く減るが、客単価は物価並みに上がる。人件費も物価並みに上がるので、直営の利益率は 5% のまま動かない。
フランチャイズは 23 店ほどに増え、食材卸とロイヤリティの利益が少し伸びる。本社費などは物価で増える。
営業利益は 2.5 億円前後と、今より 3 割ほど増える。配当は出さず、優待を続ける。冬の利益と夏の赤字のバランスは変わらない。
大きな追い風も逆風もなく、10 年が過ぎる。人手不足とふぐの仕入れ高は、どちらも物価並みに価格へ転嫁される。会社は赤字を出さないが、利益も大きくは増えない。
- 直営店(玄品):数量 62.1(年間客数(万人))× 価格 0.80(客単価(億円/万人。0.6 = 0.6 万円))→ 売上 50 億円・営業利益 3 億円。客数-8%・単価+34%
- フランチャイズ・食材卸:数量 23.1(加盟店数(店))× 価格 0.53(1 店あたり売上(億円。食材卸+ロイヤリティ))→ 売上 12 億円・営業利益 3 億円。店数+10%・単価+30%
- 通販・その他:数量 1.2(年 1 式)× 価格 4.81(売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。通販+20%・単価+30%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 18 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人口減少で客数は緩やかに減り、値上げと人件費の上昇が相殺する。いちばんありそうな筋書き。
やや悲観 25% 客数が 2 割減り、利益がほぼ消える 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 41 円6 億円
景気の悪化や高齢化で接待・家族の会席需要が細り、直営店の客数は 2 割減る。ふぐの仕入れ価格と人件費は物価並みに上がるが、客単価は 1.25 倍にとどまる。
直営店の利益率は 3% に落ちる。フランチャイズも加盟店の採算割れで店数が減る。本社費は物価で増えるため、営業利益はほぼゼロになる。
赤字の年が増え、自己資本は今の水準で止まる。優待は縮小する。
コロナ後の黒字化が、一時的な需要の戻りだったと分かる筋書きだ。薄利の外食は、需要が 2 割落ちると利益が消える。
加盟店の撤退が出ると、食材卸の取引も縮む。会社は赤字を出さないよう店を減らすが、規模の縮小は看板の力を弱める。
- 直営店(玄品):数量 54.0(年間客数(万人))× 価格 0.75(客単価(億円/万人。0.6 = 0.6 万円))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。客数-20%・単価+25%
- フランチャイズ・食材卸:数量 18.9(加盟店数(店))× 価格 0.49(1 店あたり売上(億円。食材卸+ロイヤリティ))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。店数-10%・単価+20%
- 通販・その他:数量 1.0(年 1 式)× 価格 4.44(売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。通販±0・単価+20%
倍率:稼ぐ力はほぼゼロ。評価は今の自己資本 14 億円に 0.4 倍を掛けた(中立の PBR 0.5 を下回る)。EV÷営業利益は意味を持たない。
確率:景気の悪化とふぐの仕入れ高で客数が落ち、人件費の上昇を値上げで吸収できない筋書き。外食には起こりやすい。
悲観 10% 客数の減少が止まらず赤字が定着し、店を減らす 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 31 円4 億円
直営店の客数は 4 割減り、客単価も物価に追いつかない。家賃は固定費として残り、直営店は赤字になる。フランチャイズも加盟店が撤退し、店数が 3 割減る。
営業赤字が 3 億円近くに達し、自己資本が削られる。店を減らして立て直すが、看板の力は落ちる。
優待は廃止し、資金は新株予約権や借入で調達する。少数株主の取り分は薄まる。
筆者はこの筋書きの確率を、コロナ期の実績から 1 割に置く。同じ赤字を 3 年続けた前例が、10 年のうちに繰り返される可能性は小さくない。
借入や増資に頼らざるをえず、10 年のあいだに少数株主の取り分が薄まる可能性がある。ふぐ専門という看板は残っても、店の数は半分近くになる。
- 直営店(玄品):数量 40.5(年間客数(万人))× 価格 0.66(客単価(億円/万人。0.6 = 0.6 万円))→ 売上 27 億円・営業利益 −1 億円。客数-40%・単価+10%
- フランチャイズ・食材卸:数量 14.7(加盟店数(店))× 価格 0.45(1 店あたり売上(億円。食材卸+ロイヤリティ))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。店数-30%・単価+10%
- 通販・その他:数量 0.8(年 1 式)× 価格 4.07(売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。通販-20%・単価+10%
倍率:赤字で稼ぐ力は 0。値段の底は今の自己資本 14 億円に 0.3 倍を掛けた(敷金・店舗設備は閉店で回収が限られる)。
確率:景気の谷と人件費・仕入れ高が重なり、赤字が続く筋書き。コロナ期の 3 年の赤字は前例となる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
直営店(玄品)
ふぐ料理専門店「玄品」の直営 41 店。コース料理が中心で、店は借りて運営する。
| 数量年間客数(万人) | 価格客単価(億円/万人。0.6 = 0.6 万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 67.5 | 0.60 | 41 | 2 |
| 10 年後 中立 | 62.1 | 0.80 | 50 | 3 |
取り方:売上の内訳は開示を取れず、全体 52.7 億円から推定。直営 41 店の 1 店平均 1 億円弱で 40.5 億円、客単価 0.6 万円なら客数 67.5 万人。利益は営業利益率 5% の推定(店の家賃は売上の約 8%)。
フランチャイズ・食材卸
加盟店 21 店に食材を卸し、ロイヤリティを受け取る。店を持たず利益率が高い。
| 数量加盟店数(店) | 価格1 店あたり売上(億円。食材卸+ロイヤリティ) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 21.0 | 0.40 | 9 | 2 |
| 10 年後 中立 | 23.1 | 0.53 | 12 | 3 |
取り方:売上は推定 8.5 億円(1 店 0.4 億円)、利益率 25% の推定。FC 店数 21 は開示(2026 年 3 月)。
通販・その他
ふぐの通販「お取り寄せ」、夏場の焼きふぐ・うなぎ料理、その他。
| 数量年 1 式 | 価格売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 3.70 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.2 | 4.81 | 6 | 0 |
取り方:売上は全体の残りの推定 3.7 億円、利益率 5% の推定。
リスクと懸念
冬に偏る売上と夏の赤字
ふぐは冬の食べ物で、利益の大半は 10 月から 3 月に集中する。夏は店の維持費だけで赤字になりやすく、2027 年 3 月期の第 1 四半期も営業赤字だった。冬の客足が崩れれば、通期でも赤字に沈む。
ふぐの仕入れ価格
養殖とらふぐの価格は、養殖業者の事情や天候で動く。会社自身も、とらふぐの調達と食の安全を事業のリスクとして挙げる。仕入れが上がっても客単価を急には上げにくく、利益率が削られる。
人件費と家賃の固定費
直営 41 店は借りて運営しており、家賃は売上が落ちても減らない固定の約束だ。人件費も最低賃金の上昇で年 3% 以上増える。客数が 1 割落ちるだけで、直営の利益は大きく減る。
景気と接待需要
ふぐのコースは特別な食事で、景気が悪化すれば真っ先に削られる。コロナ期には売上が 26 億円まで落ち、赤字が 3 年続いた。同じ規模の谷が 10 年のあいだに来る可能性はある。
フランチャイズ加盟店の採算
FC は食材卸とロイヤリティで利益率が高いが、加盟店が採算割れすれば撤退して取引が縮む。FC 店 21 店のうち数店が抜けるだけで、本社の利益が目に見えて減る。
株主還元の見えなさ
配当はなく、自社株買いもない。利益が積み上がっても株主に戻る道筋は示されていない。コロナ期には新株予約権で資金を調達しており、少数株主の取り分が薄まる可能性もある。
今後の分かれ目
- フランチャイズ店が年 3 店以上のペースで増える
- 資本を食わない稼ぎ方が機能し、楽観寄りに確率を寄せる。営業利益率も 5% に近づく。
- 夏場の赤字が縮小し、通期の営業利益率が 5% を超える
- 季節性が弱まった証拠で、中立の確率を上げる。
- ふぐの仕入れ価格が大きく上がり、客単価に転嫁できない
- 利益率が崩れ、やや悲観の確率を上げる。
- 景気が悪化し、接待・家族の外食が減る
- 直営の客数が落ち、赤字に戻る。悲観の確率を上げる。
- 配当や自社株買いを始める
- 余った利益が株主に戻る道筋が見え、現金の戻り方を 0.5 から上げる。
見ておくもの
- 玄品の直営・FC の店舗数
- 冬期(10〜3 月)の営業利益と夏期の赤字幅
- ふぐの仕入れ価格と客単価
- 人件費率と家賃の負担
- 配当・自社株買いなど株主還元の開始
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化 PER の式(g 4%・k 8.75%・堀は弱いので残る割合 1/3)から置いた。中立は ROE が k を下回り上限は 1÷k の 11.1 倍で、利益の薄さと季節性から 9.5 倍にした。今の PER や PBR、過去の水準は根拠にしていない。今の時価総額は最後に比べただけ。新リース会計基準で営業利益・借入の形が変わる点は、10 年後も今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→13.66 倍・やや楽観 PER 10→12.43 倍・中立 PER 9.5→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5%。事業は傾いていない(黒字化済み)。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.75%。