結論
ケーズホールディングスは、郊外の大型店で家電を売る全国チェーンだ。売上は 7,600 億円で、国内の家電量販店では 5 番手に当たる。現金値引きと長期の無料保証という分かりやすい約束で、地道に客を集めてきた。
筆者の結論は「やや割高」だ。経営の質は悪くない。ただ、いまの好調はエアコンの特需が押し上げている。2027 年 4 月に省エネ基準が上がるため、その前に駆け込みで売れ、あとで反動が来る。この山を恒常の力と読むと、値段を見誤る。2027 年 3 月期の営業利益 305 億円という予想も、特需が前提だ。
稼ぐ力そのものも、資本コストにあと一歩届かない。自己資本は 2,500 億円あるが、営業利益率は 3% 台で、ROE は 6% 前後だ。中期計画は最終年度の ROE 8% を掲げるが、中身は特需に頼っている。
財務は堅い。自己資本比率は 59% で、借金も軽い。株主への還元に前向きな点も評価できる。一方、ヤマダとエディオンの統合が決まり、仕入れの力で差が開く心配が残る。
中立の筋書きでは、10 年後の利益は 230 億円ほどで、倍率も 10 倍台にとどまる。強気の筋書きが実現して初めて、今の値段に見合う。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ケーズは「手堅い会社」だが「割安な会社」ではない。事業は 10 年後も残る。ただ、他社がまねできない強みが厚いとは言えず、そこから高い倍率は正当化しにくい。
オーナーが気にするのは、自己資本がどれだけ稼ぐかだ。ケーズは 2,500 億円の自己資本で、利益は 150〜200 億円ほど。資本コストの 8% 台に届かない年が多い。利益の大半を還元に回して初めて、株主に報いる構図になる。
本質価値を決めるのは、特需ではなく平らな年の利益だ。筆者は営業利益を 300〜350 億円、純利益を 220 億円前後と見る。物価の分は伸びるが、人口の減少と人件費の上昇がそれを削る。
安全域は、今の値段にはない。エアコンの反動が来る年、特需の利益がそのまま消えるわけではないが、市場の期待はしぼむ。自己資本の裏付けはあるので、倒れることはない。ただ、それは割安であることとは違う。
経営の質には敬意を払う。派手な買収をしない。還元に前向きだ。それでも、払う値段が高ければ、良い会社でも良い投資にはならない。待つ価値のある会社であることと、今が買い時であることは別の話だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、郊外・ロードサイドの大型家電店だ。直営店とフランチャイズ(FC)を合わせ、2027 年 3 月末に 558 店を見込む。売れるのは冷蔵庫・洗濯機・エアコン・テレビなどの生活家電で、粗利率は 28% 前後だ。売上の大半を占める。
店の約束は 2 つある。1 つは、値札から現金で値引きする価格政策。もう 1 つは、10 年・5 年・3 年の長期無料保証だ。保証は免責も回数の制限もなく、買った後の安心で選ばれる土台になっている。値引きは現金払いが前提で、ポイントに頼らない分、利益の中身が見えやすい。
エアコンの比重が高い。2026 年 3 月期は 1,017 億円を売り、前の期から 8.7% 増えた。粗利が厚い商品なので、増えるほど利益が出る。反対に、携帯電話やパソコンは粗利が薄く、売上は増えても利益に響きにくい。
ネット通販には出遅れが指摘されてきた。中期計画では、売上の倍増を掲げる。店頭で受け取る注文は 2026 年 3 月期に 18% 増え、店とネットを結ぶ流れが育ちつつある。新サイトは 2027 年 3 月期中に公開する。
運営は在庫が重い。在庫は 1,700 億円近くあり、売れ残りが利益を削る。店は借りて営む分も多く、家賃は売上が落ちても払う固定の約束だ。
人手も要る。接客と設置の質が売りなので、人件費は削りにくい。最低賃金が上がる中、値段を物価並みに上げられるかが、利益を守る鍵になる。FC は自社の投資を抑えて網を広げる手段で、直営と並ぶ両輪だ。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、堀(他社がまねできない強み)というより、運営の地味な上手さにある。店舗の規模は上位 4 社より小さいが、粗利を守る売り方と、保証で信頼をつなぐ売り方が、長く利益を出してきた。
価格を決める力は弱い。客はネットでも値段を比べる。ヤマダ・ビックカメラ・エディオンとの競り合いで、利益率は 2021 年 3 月期の 6.5% から直近は 3% 台へ下がった。コロナ禍の特需が剥げたあと、構造的に戻ったとみるのが自然だ。
資本の使い方には課題が残る。自己資本は 2,500 億円あるのに、ROE は過去 10 年の中央値で 9%、直近は 6% ほどだ。利益を生まない資産が厚く、数字の割に事業が効率よく回っているとは言いにくい。ただ、自社株買いと消却で改善を進める姿勢は本物だ。
財務は安定している。自己資本比率は 59% で、借金の利払いも利益の 30 分の 1 ほどだ。赤字の年は長く出ていない。
弱点は 2 つある。家電に特化しているため、家電の不振が会社の不振になる。もう 1 つは、競合が統合で仕入れの力を高めること。差別化の源は保証と接客だけで、それは他社も追える。経営の継続性には問題がなく、安定した会社であることは確かだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の家電量販店の市場は約 10 兆円だ。2024 年は省エネ家電への買い替えが進み、3 年ぶりに 10 兆円を超えた。家電大型専門店だけで見ると約 4.9 兆円で、ケーズはその 15% ほどを持つ。残りは、ヤマダ・ビックカメラ・エディオンなどが分け合う。
人口は減るが、家電の台数は急には減らない。買い替えが続く限り、数量は 10 年で 5% 前後の減少にとどまる。物価の分は価格に乗るため、売上は名目で横ばいから緩やかな増加になる。ここにエアコンの基準改定が重なる。
2027 年 4 月から、エアコンの省エネ基準が引き上がる。基準を満たさない安価な機種は作れなくなり、値段は上がる。2026 年の上半期は出荷台数が 19% 増え、駆け込みはすでに始まっている。反動は 2027 年度以降に出る。台数は落ちるが、1 台あたりの値段は上がる、という相殺が続く。
競争の形は、上位への集中だ。2026 年 6 月、ヤマダ HD とエディオンが経営統合で基本合意した。売上は合わせて約 2.5 兆円で、ケーズの 3 倍を超える。仕入れの条件で差が開き、中堅は統合や提携を迫られるだろう。
ネット通販の比率は家電で 4 割を超える。店は、設置・保証・相談という「ネットでできないこと」で戦う業態になる。ケーズが得意とする郊外の大型店は、車で来て大型家電を買う客に合う。この客層は、ネットに流れにくい。
資本政策と M&A
株主への姿勢は、積極的だ。中期計画は、配当性向 40%、総還元性向 80% を目標に置く。配当には下限があり、減らさない方針だ。
2024 年 5 月から 12 月に、約 200 億円で 1,360 万株を買った。2025 年 2 月には 1,500 万株を消却し、発行済株式の約 8% が消えた。その後も買付枠を設けている。無駄に現金を抱えず、自己資本を絞って ROE を上げる意図だ。
設備投資は店舗の新設と改装、システムが中心だ。中計は 3 年で店舗投資 500 億円、DX 投資 100 億円を計画する。大型の買収で規模を買う会社ではない。この点は他の量販店と違い、資本の使い方が守りに寄っている。
再編では、受け身の立場にある。ヤマダ・エディオンの統合後、残る中堅は少ない。TOB(株式の公開買付け)の確率は、kabufu の試算で 10 年に 19% ほどだ。買収される側にも、統合に加わる側にもなりうる。ただし、条件次第で動く会社だと筆者は見る。
還元の置き方:中計は配当性向40%・総還元性向80%を目標にする。10年の還元はその80%を上限に置いた。2024〜25年の自社株買い(約200億円)は株数に反映済みで、10年の還元には入れていない。
株主優待は年約1.3億円(会社の費用ベース。優待券2,000円/年×株主約6.7万人の下限(額面1.34億円))。優待の費用は販管費として利益から引き済みなので、株主が受け取る分として10年の還元に「年額×10年×続く見込み(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)」を足した(中立+13億円)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2027 年 3 月期の営業利益 305 億円は、特需だけで説明がつかない。粗利率は 28% を見込み、店の運営が効いている。第 1 四半期は営業利益が 2.3 倍の 124 億円と大きく伸び、年間予想は据え置きでも、上振れの余地が大きい。
エアコンの値段が上がる流れは、むしろ追い風だ。基準を満たす機種は割高で、高付加価値品の比率が上がる。店頭で相談して買う客が増えれば、粗利の厚い売り方を続けているケーズが有利になる。
競合の統合は、混乱を生む。ヤマダとエディオンは、店舗網・システム・仕入れの統合に何年もかかる。その間、店員の離職や商品の欠品で、客の一部がケーズへ流れる。保証と接客で選ばれる強みは、統合では作れない。
EC は倍増の途上にある。新サイトが動き、店頭受取が育てば、ネットで負けていた客を取り込める。店が荷物の拠点になるので、物流費も抑えられる。
自社株買いが続けば、ROE は 10% に近づく。営業利益率が 4.5% を超えれば、10 年後の利益は 350 億円に届く。倍率も 12 倍台に上がり、今の値段を大きく上回る。
慎重な見方
営業利益 305 億円の予想は、エアコン特需を織り込んだ数字だ。省エネ基準の駆け込み需要で、2027 年 3 月期に売上を先取りしている。2028 年 3 月期は反動で台数が落ち、利益が戻ることはまずない。
過去 3 年の営業利益は 190 億〜270 億円だった。過去に 5% を超えたのは、コロナ禍の巣ごもり需要の年だけだ。平らな年の力は、3% 台前半とみるのが現実的だ。ROE が 6% ほどなら、資本コストの 8% 台を割り込む。
競合は大きくなる。ヤマダとエディオンが統合すれば、売上は 2.5 兆円で、ケーズの 3 倍を超える。メーカーへの値引き交渉で差が開き、同じ商品を同じ値段で売っても粗利が負ける。
ネット通販は、家電で 4 割を超える。店は商品を見る場所になり、客単価は上がらない。保証や設置が強みでも、それをネットの専業が追い上げる。
家賃・人件費は固定費だ。売上が 1 割落ちると、利益は 3 割ほど減る。在庫も重く、値崩れの時に評価損が出る。自己資本があっても、稼ぐ力が細れば倍率は上がらない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強いと、筆者は判断した。理由は、特需の山がはっきり見えていることと、競合の統合で仕入れの差が開く点にある。強気の見方の言う運営力は本物だが、それは「今の利益を守る」力で、「利益率を上げる」力ではない。
確率は中立に 36% を置き、やや悲観を 24%、悲観を 10% とした。強気側は、やや楽観を 21%、楽観を 9% にとどめた。悲観の確率を 1 割にとどめたのは、自己資本が厚く、赤字に落ちる確率が小さいためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,638 円2,532 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 912 円1,409 億円)。 今の値に割り戻すと 1,379 円2,132 億円、今との差 −19.5%、 期待の年率 +4.1%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 3,191 円4,931 億円 | 1,280 円1,978 億円 | +160.8% | +10.1% | 402 円622 億円 |
| やや楽観 | 21% | 2,340 円3,617 億円 | 1,099 円1,698 億円 | +100.6% | +7.2% | 722 円1,116 億円 |
| 中立 | 36% | 1,828 円2,825 億円 | 964 円1,490 億円 | +62.9% | +5.0% | 1,005 円1,553 億円 |
| やや悲観 | 24% | 732 円1,132 億円 | 734 円1,135 億円 | −14.4% | −1.5% | 352 円544 億円 |
| 悲観 | 10% | 257 円398 億円 | 424 円656 億円 | −60.2% | −8.8% | 68 円105 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,638 円2,532 億円 | 912 円1,409 億円 | +48.8% | +4.1% | 2,550 円3,941 億円 |
今の株価時価総額 1,714 円2,649 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 9% 統合の混乱を追い風に、ROE 10% を超える優良店になる 利益 348 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 3,191 円4,931 億円
ヤマダとエディオンの統合が長引き、店員や商品供給の混乱で、客の一部がケーズに移る。保証と接客で選ばれる店の評価が高まり、シェアが 2〜3 ポイント上がる。
エアコンは基準改定で値段が上がり、高付加価値機の比率が増える。EC の売上は倍増を超え、店頭受取が定着して物流費も抑えられる。営業利益率は 4.6% で定着し、2018〜20 年の水準に戻る。
自社株買いと配当で稼ぎの 8 割を還元し、自己資本は膨らまない。ROE は 11% を超え、市場は堅実に稼ぐ優良な小売として評価する。中堅の統合の受け皿としての選択肢も残る。会社の規模は小さくても、利益の質で上位に並ぶ会社になる。
- 家電の店舗とネット通販(直営店・FC・EC の全体):数量 24.7(年間の会計件数(百万件))× 価格 44,800(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 11,066 億円・営業利益 509 億円。統合の混乱を追い風にシェアを 2〜3 ポイント上げ、1 会計の金額も高付加価値機で上がる
倍率:事業の純利益 348 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.17 倍、時価総額 4,931 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率が 4.5% 台の高い水準で定着する筋書き。統合の混乱の利得、EC の定着、特需後の反動の小ささが同時に起きる必要があり、1 割に届かないと置いた。
やや楽観 21% 特需の反動をこなし、利益率 4% を保つ 利益 278 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 2,340 円3,617 億円
2028 年 3 月期にエアコンの反動が来るが、1 台あたりの値段が上がっており、売上は大きく落ちない。粗利の厚い商品の比率が保たれ、営業利益率は 4% で落ち着く。
店舗の数と客数は横ばいで、シェアは今の水準を守る。EC は倍増に届かないが、店頭受取で店への来店につながる。統合する競合に取られる客は、保証と接客で食い止める。
ROE は 9% 台で、資本コストにわずかに届く。総還元性向 80% は守られ、自己資本は緩やかにしか増えない。中期計画の目標には届かないが、堅実な優良店として評価される。
- 家電の店舗とネット通販(直営店・FC・EC の全体):数量 23.7(年間の会計件数(百万件))× 価格 43,520(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 10,332 億円・営業利益 413 億円。シェア維持、反動はこなし、高付加価値機で単価は物価並み以上
倍率:事業の純利益 278 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍。全体の PER 13.01 倍、時価総額 3,617 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:特需の反動を小さく抑え、営業利益率が 4% 前後に定着する筋書き。中期計画の目標(ROE 8%)に近い。過去 10 年の利益率の中央値と同じ水準で、実績の裏付けはある。
中立 36% 運営は堅実でも、利益率は 3% 台半ばで頭打ちになる 利益 226 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,828 円2,825 億円
2028 年 3 月期にエアコンの反動が出て、そのあとは平らな年に戻る。台数は人口の減少で 10 年に 4% ほど減るが、値段は物価並みに上がる。粗利の確保と経費の抑制で、営業利益率は 3.5% を保つ。
店は粛々と入れ替わり、558 店前後の網が残る。EC は育つが、収益の柱にはならない。ヤマダ・エディオン連合の価格攻勢には、保証と接客で耐える。大きな買収はなく、還元は総還元性向 80% の水準が続く。
純利益は 226 億円ほどで、中期計画が掲げる ROE 8% には届かない。堅実な運営が続く一方、利益の伸びは物価の分がせいぜいだ。 株主優待の費用は利益から引き済みで、還元には受け取り分(年約1.3億円×10年)を足している。
- 家電の店舗とネット通販(直営店・FC・EC の全体):数量 22.8(年間の会計件数(百万件))× 価格 42,880(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 9,772 億円・営業利益 342 億円。台数は 10 年で 4% 減、単価は物価並み、利益率は 3.5%
倍率:事業の純利益 226 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 2,825 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率が 3% 台半ばにとどまり、数量が人口とともに緩やかに細る筋書き。過去 3 年の実績に最も近い。強気と慎重の主張が拮抗するところに置いた。
やや悲観 24% 統合した競合に仕入れで負け、利益率が 2% 台に落ちる 利益 138 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 732 円1,132 億円
ヤマダ・エディオン連合が仕入れの条件を引き上げ、同じ商品の粗利でケーズが劣る。値引き競争に付き合えば利益率が削られ、付き合わなければ客が減る。台数は 10 年で 1 割ほど減る。
ネット通販の比率が上がり、店は商品を見る場所になる。1 会計の金額は物価に届かず、値上げが通らない。人件費・家賃が毎年 3% 以上上がる中、利益率は 2.4% まで落ちる。
ROE は 5% 前後で、資本コストを大きく下回る。還元は配当の下限を守る程度に抑えられ、自己資本が積み上がる。店舗の改装と値下げ対応に資金が回り、自社株買いの余力は細る。市場は、成長も還元も乏しい会社として扱う。
- 家電の店舗とネット通販(直営店・FC・EC の全体):数量 21.4(年間の会計件数(百万件))× 価格 41,600(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 8,890 億円・営業利益 213 億円。台数は 10 年で 1 割減、値上げが通らず単価は 1.30 倍
倍率:(家賃を営業費用に入れた今と同じ形)ROE 4.5%(純利益 138 億円 ÷ 自己資本 3,062 億円)。ROE が資本コスト 8% を大きく下回り、新しく投じるお金は k を稼げないので、PER の上限は 1÷k = 12.1 倍。利益率が競争で削られる構造的な負けの筋書きで、上限の 6.8 割の 8.2 倍に置いた。
確率:仕入れの差とネット通販で、営業利益率が 2% 台前半まで落ちる筋書き。直近の 2024〜25 年 3 月期(2.6〜2.9%)の下の水準で、競合統合の影響が出る分を加えた。
悲観 10% 家電が汎用品になり、店の存在価値が薄れる 利益 31 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 257 円398 億円
家電の販売の主役がネットと統合した競合に移り、ケーズの店は客の入りが 2 割以上減る。保証と接客という差別化は、ネット専業の追い上げで意味を失う。
売上が落ちても家賃と人件費は落ちない。営業利益率は 0.8% まで下がり、利益はほとんど出ない。在庫の評価損と、店を閉める費用で自己資本も目減りする。
もはや優良な会社ではない。店舗網の大半は、閉めるか、競合に売るか、フランチャイズに出すかを迫られる。稼ぐ力は細り、価値は売れる資産の税後に近づく。配当は借入や資産の売却で維持する年もあり、還元の合計は純利益の合計を上回る。
- 家電の店舗とネット通販(直営店・FC・EC の全体):数量 18.5(年間の会計件数(百万件))× 価格 38,400(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 7,112 億円・営業利益 57 億円。台数は 10 年で 2 割減、単価は 1.20 倍にとどまり、家賃が固定費で残る
倍率:(家賃を営業費用に入れた今と同じ形)谷の底で純利益 31 億円にすぎず、稼ぐ力(31 億円 ÷ k)は約 380 億円。家賃が固定費として残り、売れる資産の税後が約 400 億円(floor_assets_oku)と近いので、これを床とし、今の自己資本 2,487 億円に対する PBR 0.16 倍で測った。EV ÷ 営業利益は谷の利益が小さく意味を持たない。帳簿の自己資本 2,300 億円に対する PBR は 0.17 倍と低いが、在庫と店舗は売って初めて現金になり、帳簿の額では回収できないと見たためだ。借金は軽いので、重さは床の薄さで見た。
確率:10 年のうちに、家電が完全にネットの汎用品となり、統合した競合の仕入れにも負ける構造的な負けの筋書き。優良な会社ではなくなる。家賃が固定費で残り、赤字ぎりぎりまで落ちる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
家電の店舗とネット通販(直営店・FC・EC の全体)
郊外の大型店とネット通販で、生活家電・エアコン・テレビ・携帯などを売る。直営店と FC の網で全国に展開する。
| 数量年間の会計件数(百万件) | 価格1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 23.7 | 32,000 | 7,597 | 267 |
| 10 年後 中立 | 22.8 | 42,880 | 9,772 | 342 |
取り方:連結売上 7,597 億円を 1 会計約 3.2 万円(推定。冷蔵庫・エアコンなど高額の生活家電と、携帯・小物の混在)で割って約 2,370 万件。市場規模から見ると、家電大型専門店の約 4.9 兆円(2025 年・経済産業省)の約 15% をケーズが持つ計算で、シェアは 10 年とも大きく動かさない。営業利益 267 億円は決算短信の値。台数は人口の減少とシェア維持の差し引きで、中立は 10 年で 4% 減。1 会計の金額は物価並みの 1.34 倍(エアコンは基準改定で上がるが、競争で上げにくい)。
リスクと懸念
エアコン特需の反動
2027 年 4 月の省エネ基準の引き上げで、駆け込み需要が出ている。2027 年 3 月期の営業利益 305 億円は、その特需を織り込んだ数字だ。反動は 2028 年 3 月期以降に出る。値段が上がる分で一部は相殺されるが、台数の落ち込みが大きければ、利益は一気に戻る。
ヤマダ・エディオンの統合
2026 年 6 月に基本合意した統合で、売上は約 2.5 兆円になる。メーカーとの仕入れ交渉で差が開き、同じ商品で粗利が負けかねない。ケーズは規模で張り合えず、差別化は保証と接客に頼る。価格競争を強いられれば、利益率が削られる。統合の効果が出るまでの数年は、競合が内向きになる分、ケーズに追い風も吹く。
ネット通販への客離れ
家電のネット通販の比率は 4 割を超える。店は商品を見る場所になり、買うのはネットという動きが進めば、客単価と来店数の両方が落ちる。中期計画は EC の倍増を掲げるが、遅れていると取り戻すのは難しい。出遅れの代償は、客の年齢層が上がるほど大きくなる。
在庫と評価損
在庫は 1,700 億円近くあり、需要の読みを誤ると売れ残りが利益を削る。特需の年に仕入れを増やした分は、反動の年に重くのしかかる。値崩れが起きれば、評価損も出る。在庫の重さは、小売の利益の質を左右する。
家賃と人件費の固定費
店は借りて営む分が多く、家賃は売上が落ちても払う約束だ。人件費も最低賃金の上昇で毎年 3% 以上増える。売上が 1 割落ちると、利益は 3 割ほど減る構造になっている。2028 年 3 月期から新リース会計基準が始まり、借金の見かけも変わる。
資本効率の低さ
自己資本は 2,500 億円あるが、ROE は 6% 前後だ。中期計画は最終年度に 8% を掲げるが、特需を除けば届かない。自社株買いで資本を絞る努力は続くが、利益率が上がらなければ限りがある。資本を絞っても、稼ぎが増えなければ株主の取り分は増えない。
今後の分かれ目
- 2028 年 3 月期にエアコンの反動が小さく、営業利益が 280 億円以上を保つ
- 特需ではなく運営の力だった可能性が高まり、やや楽観の確率が上がる。10 年の見通しは今より大きく改善する。
- 2028 年 3 月期の営業利益が 200 億円を割る
- 特需の剥げ落ちが重く、平らな年の力は 3% を割るとみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- ヤマダ・エディオン統合のあと、ケーズの仕入れ条件が悪化し、粗利率が 27% を割る
- 規模の差が利益に出始めたと判断する。やや悲観の筋書きに寄せる。
- EC の売上が倍増し、店頭受取が拡大して物流費が下がる
- ネットとの共存に成功したとみなし、中立の利益率の上振れを見込む。
- 自社株買いを毎年続け、総還元性向 80% を守る
- 自己資本が膨らまず、ROE が 8% を超える。倍率は中立から上に寄る。
- ヤマダ・エディオン以外の大手が、ケーズに統合や提携を持ちかける
- 規模の経済は強まるが、資本効率の改善にはつながりにくい。条件を見て評価する。
見ておくもの
- エアコンの月次売上と出荷台数(反動の時期と大きさ)
- 営業利益率と粗利率(28% の維持)
- ヤマダ・エディオンの統合の進み方
- EC 売上と店頭受取の件数
- 自社株買いの実施額と総還元性向
- 在庫の水準
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価からではなく、10 年後の ROE と資本コスト 8%、成長 4% から決めた。中立は ROE が k を下回るので、式の上限 11.8 倍に対し 10.6 倍とした。今の PER が高いことを根拠にしていない。売れる資産の税後は推定で、確認できた数字は決算短信の範囲に限る。2028 年 3 月期から新リース会計基準で営業利益が少し増え、純有利子負債にリース負債が加わるが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。エアコン特需の剥げ落ちが 2028 年 3 月期に出る前提で、利益率を 3.5% と置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.1→14.17 倍・やや楽観 PER 10.9→13.01 倍・中立 PER 10.6→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.75% を足した 8.25%。エアコン特需の反動やヤマダ・エディオン統合の影響は k に足さず、筋書きの利益率と確率で表した。赤字や存続の疑いはないので上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 8.00%。