結論
アンドエスティHD(旧アダストリア)は、ニコアンドやグローバルワークを持つ国内3位の衣料チェーンだ。筆者の結論は「適正」で、割り戻した本質価値は今の時価総額を1割弱下回るだけにとどまる。
稼ぐ力は戻ってきた。主力のグローバルワークは足踏みが続くが、レプシィムやラコレが二桁で伸びている。2027年2月期の中間は営業利益が3割以上増えた。自社EC「アンドエスティ」は他社ブランドも売るモールに広げ、会員は2,170万人に達した。
ただし堀、つまり他社がまねできない強みは深くない。服は流行と値段で選ばれ、客が他の店へ移る費用はほとんどない。店の家賃は不況でも払う固定の約束で、純現金が約250億円あっても見かけほど安全ではない。
10年の中立は、店とECが成熟し、営業利益率が7%に届かない筋書きだ。物価の分だけ利益は大きくなるが、倍率は12倍台にとどまる。利益率が会社の目標の8%を超えれば、価値は今の1.5倍ほどになる。国内で値引きが常態になれば大きく割り込む。幅の広い銘柄だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10年後も存在する会社だが、持ち続けたい会社とまでは言えない。
堀が浅い点が最大の弱みだ。衣料は客が他店へ移る費用がほぼゼロで、流行と値段で決まる。10年たっても、同じ強さで残るとは言い切れない。
良い点もある。借金が無く、純現金がある。会員基盤を育て、モールで他社の力も借りる。経営の世代交代は進んだが、新社長の資本配分はまだ見えない。
オーナーとして見れば、利益の半分ほどが配当に回り、残りで店とモールを育てる。この再投資の稼ぎが資本コストを大きく上回る保証はない。値段が適正に近いと、安全域は薄い。大きく下がった時にだけ、買う価値が出る会社だ。
経営者の資本の使い方は、まだ評価が定まらない。損切りは速いが、買収は成功例が乏しい。純現金を抱えたまま、配当で還元する姿勢は堅実といえる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、国内の衣料・雑貨のチェーンだ。ニコアンド、グローバルワーク、レプシィム、ラコレ、ローリーズファームなど十数のブランドを、実店舗と自社ECで売る。売上の約9割を占め、ECは3割近い。
成長の柱は2つある。1つは自社モール「アンドエスティ」で、他社のブランドも並べ、手数料を取る。もう1つは海外で、中国のニコアンドを軸にタイ、フィリピンへ出た。米国は2025年に撤退した。
ほかに飲食(小さな赤字)がある。2024年に買ったトゥディズスペシャルは、ジョージズの出店が遅れて23億円の特別損失を出し、今はアダストリアに吸収された。2025年9月に持株会社へ移り、事業は新アダストリアが担う。
売上の中身は、ブランドごとに見たほうが分かりやすい。ニコアンドが378億円、グローバルワークが538億円で、レプシィムは172億円、ラコレは141億円だ。1ブランドに頼らず、10億〜500億円台のブランドが並ぶのが、この会社の形だ。服の売れ行きは年ごとに入れ替わるので、全体は少しずつ平らになる。店は全国に1,200ほどあり、直営の店が売上を支える。
優良さと弱いところ
優良さは、堀より運営力にある。
ブランドを多数持ち、1つが傾いても全体が崩れにくい。グローバルワークが停滞した年も、レプシィムとラコレの二桁成長が穴を埋めた。会員2,170万人は、客を呼び戻す手段として本物だ。
ただし値決め力は弱い。過去の値上げで、グローバルワークの客が離れた。原価は5〜10%上がる見通しだが、会社は全体の値上げに慎重だ。利益率は直近でも5%台にとどまる。
資本効率も平凡だ。ROEは10年の中央値で11%台、赤字の年も2回ある。純現金で借金が無いのは長所だが、店の家賃という固定の約束がある。強みは、ブランドを育てて入れ替える力と、モールで集客を広げる点にある。弱みは、どのブランドも一度客が離れると戻しにくいことだ。
経営の目は、数字に厳しい。不振のスマイルシードストアは早めに統合し、米国とフォーエバー21も整理した。損切りの速さは、売上より利益を見る姿勢の表れだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の衣料市場は、2024年に約8.5兆円まで戻した(矢野経済研究所)。ただし人口は減り、市場は数量では伸びない。伸びるのは単価と、ECに移る分だ。
競争は激しい。ファーストリテイリング、しまむら、ワークマンは価格と機能で強い。ZOZOは他社ブランドを束ねるモールで、アンドエスティが目指す姿と重なる。SHEINなど超低価格のECも客を奪う。
同社は国内3位とされるが、上位との差は大きい。勝ち筋は、若い層に合う複数のブランドと、会員の囲い込みだ。
海外は店の数が伸びる唯一の領域だが、米国の撤退が示すように失敗も多い。10年で国内は成熟、海外は数か国にとどまるのが素直な読みだ。ユニクロやしまむらのような単一の大看板が無く、複数のブランドを束ねて戦うのが、この会社の立ち位置だ。
追い風もある。円安で輸入の衣料は割高になり、国内の価格競争は限られる。一方、ECの手数料と物流費は上がり、利益を削る。単価が上がっても、利益率が上がるとは限らない。筆者は、市場の大きさよりも、ブランドの入れ替えの速さが勝負を分けると見る。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。方針は連結配当性向30%に、純資産に対する配当率4.5%以上を足したものだ。実績の総還元性向は2026年2月期で4割台と、方針より厚い。自社株買いは目立たない。
筆頭株主は(株)フクゾウで、持株比率は約35%だ。創業家の福田三千男氏は2026年3月に会長を退き、5月の総会で取締役も退く予定と報じられた。後任の社長は長男の福田泰生氏だ。
買収は小さく、成功とは言い難い。トゥディズスペシャルは特別損失を出した。中計は買収で売上を500億〜1,000億円上積みする方針を示す。大型買収をすれば価値を壊しかねず、筆者が一番気にしている点だ。
筆頭株主の持分が大きく、敵対的な買収は起こりにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
レプシィムは172億円まで育ち、ラコレも二桁で伸びている。次の200億円ブランドが続けば、グローバルワークの足踏みは穴にならない。
自社モールは外部ブランドが2倍以上に増え、会員は2,170万人、うち780万人が日常的に使う。服を売る店からモールに変われば、粗利が厚い手数料収入が増え、営業利益率は8%に届く。
2027年2月期の中間で営業利益が3割以上増えたのは、その入口だ。計画生産で値引き販売が減り、粗利率が上がり始めた。米国やフォーエバー21の整理が終わり、60億円の減収分も出店で埋まる見込みだ。
新社長のもとでブランドの入れ替えが速くなれば、利益率は今の5%台から8%台に乗る。海外は中国のECが黒字化し、東南アジアに広がる。利益が今の2倍を超える道筋は見えている。
さらに、会員を軸にした仕組みは、時間とともに強くなる。会員が増えるほど、1人当たりの集客費が下がる。モールで外部ブランドが売れれば、在庫を持たずに収入が入る。この変化は、衣料の景気に左右されにくい利益を生む。
慎重な見方
国内の衣料は人口が減り、数量は伸びない。伸びるのは物価の分だけだ。
主力のグローバルワークは値上げで客が離れ、立て直しに時間がかかっている。売上は538億円で2%しか伸びず、ジーナシスとベイフローは前年を割った。ブランドの寿命は短く、新しい柱が育つ前に古い柱が痩せる。
モールは外部ブランドが増えたと言うが、その流通額は約45億円と小さく、手数料収入も小さい。ZOZOが先を走る。海外は米国から撤退し、東南アジアの出店も遅れた。
営業利益率は、過去10年で5%台から6%台が上限だ。原価は5〜10%上がる見通しで、値上げが通らなければ利益は伸びない。家賃は不況でも払う固定の約束だ。純現金は、その約束と相殺して見るべきだ。
創業家系の筆頭株主の持分が大きく、経営の規律が働きにくい点も気にかかる。
さらに、2027年2月期の中間は営業利益が伸びたが、特別功労金などの特別損失が12億円あり、純利益は前年を割った。営業段階の改善が株主の手元まで届いているか、慎重に見る必要がある。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分も根拠がある。ただし強い堀を示す事実は乏しく、利益率が8%に届くには値上げが通る必要がある。
一方で、純現金と複数のブランドがあり、国内3位の運営力も確かだ。赤字に沈む危うさは小さい。そこで悲観側の確率は、他の衣料チェーンと同じ水準に置いた。
結局、10年の中立は利益率が7%に届かず、成熟した姿を見る。確率は強気より慎重な側にやや厚く置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 5,581 円2,575 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,375 円634 億円)。 今の値に割り戻すと 3,521 円1,624 億円、今との差 +14.1%、 期待の年率 +8.5%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 10,445 円4,819 億円 | 1,875 円865 億円 | +299.3% | +14.9% | 1,232 円568 億円 |
| やや楽観 | 22% | 8,356 円3,855 億円 | 1,664 円768 億円 | +224.8% | +12.5% | 2,204 円1,017 億円 |
| 中立 | 33% | 6,575 円3,034 億円 | 1,467 円677 億円 | +160.7% | +10.1% | 2,654 円1,225 億円 |
| やや悲観 | 23% | 2,066 円953 億円 | 1,138 円525 億円 | +3.8% | +0.4% | 737 円340 億円 |
| 悲観 | 12% | 441 円204 億円 | 629 円290 億円 | −65.3% | −10.1% | 128 円59 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,581 円2,575 億円 | 1,375 円634 億円 | +125.5% | +8.5% | 6,956 円3,209 億円 |
今の株価時価総額 3,085 円1,423 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 自社モールと新ブランドが花開く 利益 262 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 10,445 円4,819 億円
レプシィム、ラコレなど伸びているブランドが200億円規模の柱に育ち、グローバルワークも再び伸びる。自社モールには外部ブランドが数百店並び、手数料収入が積み上がる。会員は3,000万人に近づき、客が他店へ流れにくくなる。
値付けは物価並みに通り、値引き販売が減って粗利率が上がる。国内の営業利益率は9%台に乗る。海外は中国のEC黒字化を足がかりに東アジアで店を増やし、1割弱の利益率に届く。飲食は小さな黒字にとどまる。
新社長のもとで資本の使い方も締まり、不採算の事業は早めに畳まれる。会社が掲げる営業利益率8%を超え、利益は今の2.7倍になる。ここまで揃えば堀は少し深くなり、倍率も上がる。
- 国内の衣料・雑貨:数量 1,900(店舗換算数(実店舗の数+ECの売上を平均店の売上で割った数))× 価格 2.11(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 4,010 億円・営業利益 381 億円。営業利益率9.5%
- 海外:数量 300(店舗換算数(店とECの合計、推定))× 価格 2.45(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 736 億円・営業利益 59 億円。営業利益率8.0%
- 飲食:数量 60.0(店舗数(推定))× 価格 3.30(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 198 億円・営業利益 1 億円。営業利益率0.4%
倍率:事業の純利益 262 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍。全体の PER 17.71 倍、時価総額 4,640 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:グローバルワークの立て直し、モールの外部ブランド拡大、海外の黒字化が同時に当たる必要がある。会社の中計は実現すれば強いが、衣料で複数の賭けが揃う確度は高くない。
やや楽観 22% 利益率が7%台へ緩やかに戻る 利益 216 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 8,356 円3,855 億円
国内は伸びるブランドが全体を押し上げ、グローバルワークは横ばいから小幅の回復にとどまる。モールの外部ブランドは増えるが、利益に効くのは10年の後半になる。
海外は中国と東南アジアで店が増え、米国撤退の傷は癒える。利益率は6%台に乗る。飲食は赤字が消えるかどうかの水準だ。
粗利率は計画生産の拡大で少し改善し、値引き販売が減る。人件費と物流費の上昇は値上げで吸収しきれず、利益率の改善は国内で8%台止まりになる。利益は今の2.3倍になるが、堀が深くなるわけではない。会員の囲い込みが進み、広告費の効率は少し上がる。店とECの売上は、物価の分を除けば緩やかに伸びる。経営の判断は堅実だが、大胆な賭けは少ない。
- 国内の衣料・雑貨:数量 1,800(店舗換算数(実店舗の数+ECの売上を平均店の売上で割った数))× 価格 2.13(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 3,837 億円・営業利益 326 億円。営業利益率8.5%
- 海外:数量 240(店舗換算数(店とECの合計、推定))× 価格 2.45(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 589 億円・営業利益 38 億円。営業利益率6.5%
- 飲食:数量 60.0(店舗数(推定))× 価格 3.30(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 198 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.2%
倍率:事業の純利益 216 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍。全体の PER 17.03 倍、時価総額 3,678 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年2月期の中間で営業利益が3割以上増えた実績と、会社の中計の方向が重なる。ただし値上げが通りにくい経験が直近にあり、強気の確率を厚くはしなかった。
中立 33% 店もECも成熟し、利益率は7%に届かない 利益 176 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 6,575 円3,034 億円
国内の店舗換算数は微増にとどまる。店は増減を繰り返して純増は小さく、ECとモールが数を支える。値付けは物価に沿って上がり、1店当たりの売上は実質で横ばいになる。
国内の営業利益率は7%台半ばまで上がる。レプシィムなどの伸びが、グローバルワークの足踏みを補う。海外は店が増えて黒字になるが、利益は小さい。飲食は損益ゼロの水準にとどまる。
10年後の売上は今の1.4倍、営業利益は今の1.8倍ほどになる。物価の分を除けば成長は緩やかで、利益率も会社の目標に届かない。還元は純利益の半分ほどで、純現金は少しずつ積み上がる。
- 国内の衣料・雑貨:数量 1,720(店舗換算数(実店舗の数+ECの売上を平均店の売上で割った数))× 価格 2.11(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 3,630 億円・営業利益 272 億円。営業利益率7.5%
- 海外:数量 200(店舗換算数(店とECの合計、推定))× 価格 2.45(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 491 億円・営業利益 25 億円。営業利益率5.0%
- 飲食:数量 60.0(店舗数(推定))× 価格 3.30(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 198 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.0%
倍率:事業の純利益 176 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍。全体の PER 16.24 倍、時価総額 2,858 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内は成熟、モールと海外は育つが小さい、という最も素直な読み。強気と慎重の議論の落としどころで、確率を最も厚くした。
やや悲観 23% 客数が細り、値引きで利益が削られる 利益 96 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 2,066 円953 億円
人口が減るなかでブランドの入れ替えが続くが、新しい柱が育つより先に古い柱が痩せる。グローバルワークは値上げの反動から戻りきらず、店を畳む動きが続く。
同じ価格帯にユニクロ、しまむら、ZOZOの中古や超低価格のECが迫り、値引きで客をつなぐ。価格は物価に届かず、国内の営業利益率は5%に戻る。海外は黒字に届かない。飲食は赤字のままだ。
家賃と人件費は物価で上がり、売上が伸びなくても固定費は残る。利益は今とほぼ同じで、物価の分は取り戻せない。ROEは資本コストを下回る。純現金は残るが、成長株としての評価は後退する。
- 国内の衣料・雑貨:数量 1,600(店舗換算数(実店舗の数+ECの売上を平均店の売上で割った数))× 価格 2.03(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 3,242 億円・営業利益 162 億円。営業利益率5.0%
- 海外:数量 150(店舗換算数(店とECの合計、推定))× 価格 2.45(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 368 億円・営業利益 4 億円。営業利益率1.0%
- 飲食:数量 55.0(店舗数(推定))× 価格 3.30(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 181 億円・営業利益 −2 億円。営業利益率-1.0%
倍率:事業の純利益96億円・事業 ROE 7.7% は k 8% 以下なので、上限は 1÷k=12.1倍。競争で値引きが常態になる構造のため、上限の約7割の8.8倍に置いた。
確率:国内の衣料は人口減と価格競争で、値引きに頼る局面が何度も来た。2021年2月期の営業利益率は0.4%まで落ちた。慎重な見方の側に確率をやや厚く置いた。
悲観 12% 構造的に負ける:家賃と値引きだけが残る 利益 24 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 441 円204 億円
国内の衣料需要が細るなか、主力ブランドが客を失う。ZOZOと越境ECが若い客を奪い、ブランド単独の集客力が落ちる。店を閉めても家賃と退店費用が先に重くのしかかる。
価格は物価についていけず、値引きで在庫をさばく。国内の営業利益率は2%まで落ちる。海外は撤退に近づき、赤字が残る。飲食も縮小する。
純現金は在庫と退店費用に食われる。事業は優良さを失い、ただの中位の衣料チェーンになる。主力ブランドの再建は間に合わず、モールも外部ブランドが集まらないままだ。利益は今の4分の1に満たず、10年先の時価総額は純現金を少し上回る程度に落ちる。
- 国内の衣料・雑貨:数量 1,400(店舗換算数(実店舗の数+ECの売上を平均店の売上で割った数))× 価格 1.94(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 2,718 億円・営業利益 54 億円。営業利益率2.0%
- 海外:数量 60.0(店舗換算数(店とECの合計、推定))× 価格 2.45(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 147 億円・営業利益 −6 億円。営業利益率-4.0%
- 飲食:数量 40.0(店舗数(推定))× 価格 3.30(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 132 億円・営業利益 −4 億円。営業利益率-3.0%
倍率:事業の純利益24億円・事業 ROE は k 8% 以下で、稼ぐ力は純利益÷k=約290億円。構造的に劣位のため、今の自己資本814億円に0.25倍を掛けた約200億円で、売れる資産の約210億円と同じ水準に置いた。
確率:国内の需要減、価格競争、海外の失敗、モールの外部ブランドが集まらない、が重なる筋書き。会社は海外も米国も事業の整理を進めたが、十年規模で複合して外れる確度は高くない。quality と同じ理由では上げ下げしていない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の衣料・雑貨
ニコアンド、グローバルワーク、レプシィムなどを実店舗と自社EC、モール「アンドエスティ」で売る。売上の約9割。
| 数量店舗換算数(実店舗の数+ECの売上を平均店の売上で割った数) | 価格店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 1,689 | 1.58 | 2,660 | 178 |
| 10 年後 中立 | 1,720 | 2.11 | 3,630 | 272 |
取り方:アパレル・雑貨事業の売上2,898億円から、海外238億円を引いて国内2,660億円。ECは約3割で約770億円、実店舗は約1,890億円と推定し、実店舗は約1,200店(全社1,323店から海外・飲食を引いた推定)で平均1.575億円。ECを同じ額で割ると約490店分になり、合計1,689店分。国内の営業利益は、事業の利益173億円と海外の小さな赤字から約178億円と推定。実質の量を数量に、物価3%は価格に入れる。
海外
中国のニコアンドを軸に、台湾、タイ、フィリピンなどで展開する。米国は2025年7月に撤退した。
| 数量店舗換算数(店とECの合計、推定) | 価格店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 130 | 1.83 | 238 | −5 |
| 10 年後 中立 | 200 | 2.45 | 491 | 25 |
取り方:グローバル事業の売上238億円(2026年2月期)を、店とECを合わせた推定130店分で割った。中国のECは倍増ペースで、2027年2月期中の黒字化を会社は見込む。営業利益は小さな赤字と推定。 数量は実物(店舗換算数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
飲食
飲食事業。売上は約150億円の小さな事業で、赤字が続く。
| 数量店舗数(推定) | 価格店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 60.0 | 2.46 | 148 | −5 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 3.30 | 198 | 0 |
取り方:飲食事業の売上148億円(セグメント損失約5億円)を、推定60店で割った。店数は開示から確認できず推定。
リスクと懸念
グローバルワークの停滞
売上538億円の主力が、値上げの反動で2%しか伸びない。立て直しが失敗すれば、国内の柱が1本欠ける。ブランドの寿命が尽きると、新しい柱が育つまで利益は落ち続ける。
原価の上昇と値上げの限界
2027年2月期は原価が5〜10%上がる見通しだ。会社は全体の値上げを避けている。値上げが通らなければ、利益率は5%台から動かない。通せば客が離れる。
家賃という固定の約束
直営は千店を超える。家賃は不況でも払う固定の約束で、売上が落ちても減らない。純現金が約250億円あっても、見かけほど安全ではない。店の整理にも費用がかかる。
買収の失敗
トゥディズスペシャルは出店が遅れ、23億円の特別損失を出した。中計は買収で売上の上積みを狙う。割高な買収を重ねれば、資本を無駄にする。
海外の収益化
米国は撤退した。東南アジアの出店も遅れている。中国のEC黒字化が崩れれば、海外は赤字のまま残る。10年たっても小さい事業のままかもしれない。
筆頭株主の持分と経営の世代交代
フクゾウが約35%を持つ。三千男氏は退き、長男の泰生氏が社長に就いた。新体制の資本の使い方は、まだ実績がない。判断が遅れる、または大型買収に傾くおそれがある。
今後の分かれ目
- グローバルワークの売上が2年続けて前年を割る
- 国内の主力が崩れており、やや悲観の筋書きに寄る。モールや新ブランドが穴を埋められるかが分かれ目になる。
- モールの外部ブランドの流通額が全体の2割を超える
- 服を売る店からモール運営へ変わる証拠で、手数料収入が利益率を押し上げる。強気の筋書きに寄る。
- 営業利益率が2年続けて7%を超える
- 値引きが減り、粗利率が改善した証拠だ。中立の利益率の前提を上へ直す。
- 大型の買収(売上で数百億円規模)を発表する
- 資本配分が変わる合図で、買収額と稼ぐ力次第で価値が増減する。割高なら悲観側に寄る。
- 中国のECが2027年2月期中に黒字にならない
- 海外の収益化が遅れる。海外は10年たっても小さいままという見方が強まる。
- 配当性向が3割を大きく超えて還元が厚くなる、または自社株買いを始める
- 純現金を株主に戻す姿勢の変化で、利益の質が上がり、倍率を上限寄りに置く根拠になる。
見ておくもの
- グローバルワークの売上と店数
- モール「アンドエスティ」の流通総額と外部ブランドの比率
- 営業利益率と粗利率(値引き販売の割合)
- 原価の上昇と値上げの状況
- 中国のEC黒字化と海外の店数
- 純現金と配当、自社株買い
倍率と資本コストの決め方
国内は店舗換算数×1店当たり売上、海外・飲食も同じ形で10年を積み、物価3%は価格に入れた。国内の中立の利益率は7.5%とし、会社の目標8%や過去10年の営業利益率の最高6.5%に寄せていない。倍率は正当化PERの上限と、ROEが資本コストを上回る時の下限1÷kから置き、今のPERや同業の倍率は使っていない。悲観は家賃の固定費と値引きから、稼ぐ力と売れる資産で床を置いた。新リース会計基準でBSが変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→17.71 倍・やや楽観 PER 13.4→17.03 倍・中立 PER 12.5→16.24 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.75% を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 8.00%。