結論
コロワイドは、牛角・温野菜・大戸屋・かっぱ寿司・ステーキ宮などを買収で束ねた外食グループである。筆者の結論は割高だ。利益が薄いまま、借金で規模を買い足しているからだ。
規模は大きい。売上は 3,000 億円、店は世界で 2,600 店を超え、4月に買ったカフェのC-Unitedが加わって 3,200 店になった。だが稼ぎは細い。事業利益は 125 億円、純利益は 22 億円で、自己資本に対する利益率は 2.6% にとどまる。
本業の稼ぎを食うのは借金と金利である。純借金は 830 億円あり、そこに C-United の買収 440 億円が乗った。これから借り換えのたびに金利が上がり、利益を削る。会社は 2027年3月期に事業利益 160 億円を見込むが、それが10年続いても純利益は 75 億円前後と筆者は見る。
資本コストは 8.5% と置いた。買収で積んだ事業の多くが、この水準の稼ぎを出せていない。利益の質が低いまま倍率を高く置く理由がなく、10年後の中立の値段は今の時価総額を大きく下回る。値段が先の改善を織り込みすぎている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続けたい会社には見えない。事業は10年後も存在するが、堀が広がる確信が持てない。
稼ぎのうち、株主のものになる利益はわずかだ。純利益は 22 億円で、減損と少数株主の取り分に削られ、営業利益の 4 分の 1 しか残らない。その利益も、店の改装と出店と買収に回り、配当は 5 億円ほどだ。
経営は事業を拡げる力が強い。買収した会社を黒字に戻した例(大戸屋、レインズ)がある。ただ、資本をどう配分するかという点では、買収額に見合う稼ぎが出るまでに時間がかかり、借金で補う形が続く。
筆者が言いたいのは、規模の大きさと稼ぐ力は別だということだ。店の数が増えても、1 店が株主に残す利益が増えなければ価値は増えない。
安全域も薄い。純負債は自己資本に近く、利払いは営業利益の半分近い。景気の谷が来たとき、固定費の重い外食は利益が一気に消える。筆者は、払う値段に見合う余裕が見えないと考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は、国内の外食、海外の外食、そして調達・製造を担うコロワイドMDの三つに分けられる。国内が売上の 8 割を占め、事業利益も 6 割強を稼ぐ。
国内の柱は焼肉・しゃぶしゃぶ(牛角、温野菜、カルビ大将)で、加盟店を含めて 1,147 店ある。次いで定食の大戸屋が 455 店、回転寿司のかっぱ寿司とにぎりの徳兵衛が 361 店、居酒屋が 231 店、ステーキ宮などが 129 店である。フレッシュネスバーガーとチーズガーデンも持つ。直営は 1,501 店、加盟店は 1,132 店だ。
裏方のコロワイドMDが、肉や野菜を仕入れ、セントラルキッチンで加工し、各ブランドに送る。グループ内の売上を除いても 1,000 億円の規模があり、事業利益は 50 億円ほど。ブランドがバラバラでも、原価と物流を束ねて利益を出す仕組みになっている。
海外は北米 73 店、アジア・中東 328 店。加盟店が中心で、売上は 370 億円にとどまる。2025年6月に豪州のステーキ事業 Seagrass が加わり、この事業は利益率が 12% 台と高い。ほかに病院・介護施設向けの給食事業も育てている。
2026年4月には、カフェ・ベローチェ、珈琲館、カフェ・ド・クリエを持つ C-United を 440 億円で買収した。夕方から夜に偏る焼肉・寿司・居酒屋の弱点を、朝から昼の客で埋める狙いだ。
優良さと弱いところ
筆者は、この会社の優良さは平均的だと見る。強いのはブランドの数ではなく、仕入れと物流を束ねる仕組みと、買収した会社を立て直してきた経験である。
堀、つまり他社がまねできない強みは、牛角の焼肉に限られる。レインズが 47 億円の事業利益を稼ぎ、大戸屋も 18 億円を出す。一方、かっぱ寿司は売上が 730 億円あっても利益は 3 億円台で、アトムはほぼゼロだ。どちらも減損と繰延税金資産の取り崩しで、純利益を押し下げた。
資本の効率は低い。過去10年の ROE の中央値は 1.7% で、資本コストを下回り続けてきた。過去20年に赤字の期が6回あり、2021年3月期には希薄化を伴う資金調達もした。景気の谷では、家賃などの固定費が重い。
値決めの力も強くない。かっぱ寿司は首位のスシローに大きく離され、価格競争に巻き込まれる。人件費や食材の上昇を値上げで吸収しきれるかは、ブランドごとに差がある。
経営は、創業家の蔵人金男会長と野尻公平社長が率いる。2012年4月から続く体制で、買収で規模を広げる路線は一貫している。筆者がいちばん気にしているのは、買収の数が多く、一つひとつの採算が見えにくい点だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食は、数量が伸びにくく、人件費に最も敏感な業界である。国内の市場は 24 兆円規模で、コロナ前の水準に戻る途中にあるが、人口は減る。成長は、値上げで売上を名目で伸ばすか、海外・新分野に出るかの二択になる。
物価が年 3% で上がる世界では、値上げが通るブランドと通らないブランドの差が利益を分ける。低価格帯の牛丼や回転寿司の大手は下方シフトの受け皿になれる。かっぱ寿司はこの競争で、スシローやくら寿司に押されがちだ。
焼肉は物語コーポレーションの焼肉きんぐなどが強く、牛角は郊外の家族客を取り合う。居酒屋は、コロナ後に会食の頻度が戻りきらず、店の整理が続く。定食の大戸屋は、中食や弁当との競争がある。
人件費は年 3〜5% で上がり続ける。自動化に投資できる大手と、できない会社に分かれる。コロワイドは調達と物流の規模で原価を抑えるが、店ごとの自動化は大手専業に遅れがちだ。
カフェは日中の需要を持つが、スターバックスやコメダ、ドトールなどが手ごわい。海外は、アジアと中東の加盟店、豪州のステーキ、北米の焼肉で攻めるが、為替を 150 円で動かさない前提では、成長の源は店の数に限られる。
資本政策と M&A
還元は薄い。配当は年 5 億円ほどで、自社株買いはしない。株主優待は 500 株で年に約 2 万円分と手厚いが、配当ではなく店の客数づくりの色が濃い。純利益の少なさもあり、還元の余地は小さい。
お金の使い道は、出店と買収だ。レインズ、大戸屋、カッパ・クリエイト、アトム、フレッシュネスと買い進め、2025年に豪州の Seagrass、2026年4月に C-United を加えた。C-United の買収額は 440 億円で、会社の予想する事業利益は 33 億円。
借金が膨らむ点が課題だ。純借金は 830 億円、リース負債は 400 億円ある。買収後は純借金が 1,260 億円前後に増えると筆者は見る。営業利益は支払利息の 2 倍にとどまる。
大株主は信託口が 9% 台、続いて創業家関連の名が並ぶ。創業家の影響力は強く、非上場化や大型の再編が起きても不思議ではない。ただ、借金が重い会社を買う側にも負担が大きい。
点検済み(割高の見落とし点検 2026-10-19):株数は自己株控除後の 1.06 億株、純利益÷営業利益は利払い 65 億円・税 38%・少数株主を引いて 0.36、買収後の純借金とリース負債を悲観の床に入れた。
株主優待(現物の還元):年およそ5億円を会社の費用ベースで見込む(500株以上に年4万ポイント(1pt=1円)×対象株主約1万人超×原価率。会社の開示額は確認できず推計)。費用は販管費として利益から引き済みなので、10年の還元には「年額×10×続く見込み」(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)を受け取り分として足した。自己資本の流れには入れない。
点検済み:中立の営業利益率4.2%は会社予想(27・28年3月期3.9〜4.0%)に近く、国内4.2%も今(3.3%)から少し上げるだけ。数字は据え置く。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
グループの利益は、これから増える。2027年3月期の事業利益は 160 億円と、前期の 125 億円から 28% の伸びを見込む。かっぱ寿司は 3 億円から 11 億円へ、アトムはほぼゼロから 10 億円へ、立て直しが予想されている。
買収の成果は、すでに出ている。レインズは事業利益を 48 億円から 64 億円へ伸ばす計画だ。大戸屋は 18 億円、豪州の Seagrass は 26 億円から 35 億円へ増える。C-United の 33 億円が丸ごと乗る。
コロワイドMDの調達力で、牛肉や米、水産の原価を抑えられる。人件費の上昇も、改装と自動化で相殺できる。2030年に売上 5,000 億円という目標は、買収を続けるだけで届く水準だ。
借金が増えても、利益が伸びれば利払いは吸収できる。海外のアジア・中東は加盟店が伸び、北米も一時の費用負担が終われば採算が戻る。純利益が 100 億円を超えれば、ROE は資本コストに近づく。
慎重な見方
純利益 22 億円が示すとおり、稼ぐ力はまだ薄い。事業利益 125 億円から、減損や支払利息、少数株主の取り分を引くと、株主の手元に残る利益はわずかだ。過去20年のうち6回が赤字で、2021年には希薄化を伴う資金調達もした。
借金の負担がこれから重くなる。営業利益は支払利息の 2 倍で、借り換えのたびに金利が上がる。C-United の 440 億円が加わり、純借金は 1,260 億円前後に増える。会社の事業利益の予想が達成されても、金利が数十億円の利益を食う。
買収の採算にも疑いがある。C-United の売上は 360 億円、営業利益は報道の計画で 18 億円だった。440 億円は、その 24 倍にあたる。統合の効果が出なければ、のれんの減損が出る。
人件費は構造的に上がる。かっぱ寿司とアトムは減損を繰り返しており、立て直しの前提が3年続けて外れている。10年の利益の伸びは、名目の物価の範囲にとどまる。
どちらに重みを置いたか
筆者は慎重な見方が強いとみる。事業利益の改善という強気の指摘は妥当だが、利払いと減損と少数株主の取り分を引くと、株主に残る利益が小さいという指摘のほうが重い。そこで確率を、やや悲観と悲観に寄せた。楽観と中立は、買収の再生が続く前提を置いた。借金の重さは資本コストに入れ、筋書きの確率では二重に数えていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 800 円851 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 103 円110 億円)。 今の値に割り戻すと 423 円450 億円、今との差 −80.4%、 期待の年率 −8.3%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,400 円2,552 億円 | 160 円170 億円 | +18.8% | +1.7% | 205 円218 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,434 円1,525 億円 | 136 円145 億円 | −27.1% | −3.1% | 314 円334 億円 |
| 中立 | 32% | 829 円882 億円 | 113 円120 億円 | −56.3% | −7.9% | 301 円321 億円 |
| やや悲観 | 27% | 162 円173 億円 | 83 円88 億円 | −88.6% | −19.5% | 66 円70 億円 |
| 悲観 | 13% | 95 円101 億円 | 38 円40 億円 | −93.8% | −24.3% | 17 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 800 円851 億円 | 103 円110 億円 | −58.1% | −8.3% | 904 円961 億円 |
今の株価時価総額 2,155 円2,292 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 買収した事業の再生が当たり、利益率が一段上がる 利益 196 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 2,400 円2,552 億円
買収した事業の再生がそろって当たる。かっぱ寿司とアトムは黒字が定着し、C-United のカフェは日中の客を取り込んで、グループの利益率が一段上がる。
牛角と大戸屋は値上げが通り、郊外の出店と業態転換で国内の店数は 3,000 店台に乗る。調達と物流をまとめるコロワイドMDの強みが、買収した事業の原価にも効く。
海外はアジアと中東の加盟店が増え、北米は採算が戻る。豪州のステーキ事業も出店が進み、売上は 6,000 億円を超える。借金は返済が進み、金利の負担が軽くなる。
それでも、純利益は 200 億円前後だ。買収の効果と借金の返済が同時に進む、うまく行った場合の姿である。
株主優待は現物の還元で、年およそ5億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に50億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 国内外食(牛角・温野菜・大戸屋・かっぱ寿司・居酒屋・カフェなど):数量 3,150(国内の店舗数(直営+加盟店、店))× 価格 1.43(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 4,492 億円・営業利益 270 億円。営業利益率6.0%
- 海外外食(北米・アジア・中東):数量 800(海外の店舗数(直営+加盟店、店))× 価格 1.27(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 1,017 億円・営業利益 81 億円。営業利益率8.0%
- オセアニア(豪州のステーキ事業 Seagrass):数量 40.0(店舗数(直営、店))× 価格 16(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 646 億円・営業利益 84 億円。営業利益率13%
倍率:事業の純利益 196 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍。全体の PER 13.02 倍、時価総額 2,552 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収を重ねながら、不採算を黒字にし、借金も返すという三つが10年続く必要がある。外食の過去20年で赤字の期が6回ある会社なので、上振れは低い確率にとどめた。
やや楽観 20% かっぱ寿司とアトムが戻り、買収の効果が出る 利益 129 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,434 円1,525 億円
会社の計画に近い道筋をたどる。2027年3月期に事業利益 160 億円を達成し、その後も買収した事業の黒字化が着実に進む。
国内は C-United を含めて 3,000 店で横ばいから微増、客単価の上昇が人件費の増加をほぼ吸収する。かっぱ寿司とアトムの利益率は低いまま持ち直し、減損は出ない。
海外とオセアニアは出店が中計どおり進む。売上は 5,700 億円規模になり、借金は少しずつ減って、自己資本比率は 30% に近づく。
純利益は 130 億円ほどに伸びるが、それでも自己資本に対する利益率は資本コストにわずかに届かない。
株主優待は現物の還元で、年およそ5億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に50億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 国内外食(牛角・温野菜・大戸屋・かっぱ寿司・居酒屋・カフェなど):数量 3,000(国内の店舗数(直営+加盟店、店))× 価格 1.39(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 4,155 億円・営業利益 212 億円。営業利益率5.1%
- 海外外食(北米・アジア・中東):数量 680(海外の店舗数(直営+加盟店、店))× 価格 1.24(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 843 億円・営業利益 61 億円。営業利益率7.2%
- オセアニア(豪州のステーキ事業 Seagrass):数量 34.0(店舗数(直営、店))× 価格 16(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 533 億円・営業利益 64 億円。営業利益率12%
倍率:事業の純利益 129 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.82 倍、時価総額 1,525 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:予想どおり事業利益が 160 億円を超え、かっぱ寿司とアトムが黒字に戻るという道筋。会社の計画に近く、実現しうる上振れとして置いた。
中立 32% 規模は伸びるが、利益は借金と金利に削られる 利益 75 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 829 円882 億円
規模は伸びるが、利益は思ったほど増えない。売上は約 5,000 億円で、中計が掲げる目標に約 6 年遅れて届く。
国内は、C-United を含めて店数がほぼ横ばいだ。人口減で客数は細るが、値上げで売上は名目で伸びる。かっぱ寿司とアトムは黒字を保つが、利益率は低いままだ。
海外は、アジアと中東の加盟店、豪州のステーキで少し伸びる。純借金は 1,200 億円前後で、金利の上昇が利益を削り続ける。純利益は 75 億円前後で、ROE は 6% にとどまる。
人件費の上昇は値上げでほぼ吸収できるが、利益率が大きく上がる要因は見当たらない。買収した事業が黒字を保つだけで、中立の姿になる。
株主優待は現物の還元で、年およそ5億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に50億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 国内外食(牛角・温野菜・大戸屋・かっぱ寿司・居酒屋・カフェなど):数量 2,850(国内の店舗数(直営+加盟店、店))× 価格 1.35(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 3,848 億円・営業利益 162 億円。営業利益率4.2%・C-United混合で今の1.105の1.22倍。同じ店なら物価並み
- 海外外食(北米・アジア・中東):数量 560(海外の店舗数(直営+加盟店、店))× 価格 1.24(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 694 億円・営業利益 45 億円。営業利益率6.5%
- オセアニア(豪州のステーキ事業 Seagrass):数量 28.0(店舗数(直営、店))× 価格 16(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 435 億円・営業利益 48 億円。営業利益率11%
倍率:事業の純利益 75 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 882 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内は店の数が横ばい、海外とオセアニアで少し伸びる道筋。買収した事業が黒字を保ち、利益率は今より少し上がるという落としどころ。
やや悲観 27% 人件費と食材高に押され、買収の消化が遅れる 利益 15 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 162 円173 億円
食材と人件費の上昇を値上げで吸収しきれず、利益率が今より下がる。C-United の統合は遅れ、カフェの客単価と客数が伸びない。
国内の店数は不採算の整理で 2,650 店に減る。かっぱ寿司は価格競争に押され、利益はほぼ出ない。居酒屋は縮小が続く。
海外は北米の採算が戻らず、出店を絞る。借金は減らず、借り換えのたびに金利が上がる。営業利益は 110 億円、純利益は 15 億円まで落ちる。
配当は据え置きで、買収のための借入はそれ以上増やせない。事業の整理が遅れ、改善の見えない状態が続く。借金の返済に回せる利益が乏しく、出店や改装の投資も絞らざるをえない。
株主優待は現物の還元で、年およそ5億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.75で10年に38億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 国内外食(牛角・温野菜・大戸屋・かっぱ寿司・居酒屋・カフェなど):数量 2,650(国内の店舗数(直営+加盟店、店))× 価格 1.30(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 3,450 億円・営業利益 104 億円。営業利益率3.0%
- 海外外食(北米・アジア・中東):数量 470(海外の店舗数(直営+加盟店、店))× 価格 1.18(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 554 億円・営業利益 25 億円。営業利益率4.5%
- オセアニア(豪州のステーキ事業 Seagrass):数量 24.0(店舗数(直営、店))× 価格 14(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 347 億円・営業利益 31 億円。営業利益率9%
倍率:ROE 1.5%。稼ぐ力(事業の純利益 15 億円 ÷ k 8.5%=約 170 億円)を価値とみて、今の自己資本 842 億円に対する PBR 0.205 倍で測った。ためた利益に掛けず、借金とリースの約束を差し引くと、売れる資産の税後も株主に残る額はこの程度にとどまる。
確率:借金が重く、金利と人件費の上昇で買収の効果が相殺される道筋。純負債が自己資本に近く、利払いの負担も大きいので、中立に近い厚みを置いた。
悲観 13% 不採算が広がり、借金に追われて切り売りする 利益 −95 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 95 円101 億円
不採算が広がり、構造的に優良さを失う。景気の谷と食材高が重なり、かっぱ寿司・アトム・居酒屋の減損が続く。C-United の買収額も回収できず、のれんの損失が出る。
国内の店数は 2,350 店に減り、利益率はほぼゼロだ。海外は北米が赤字になり、豪州のステーキも客足が鈍る。
純借金は 1,200 億円を超えたまま減らず、家賃などの固定費が重くのしかかる。営業赤字が続き、ブランドの売却や増資で借金を返す局面に入る。株主の取り分はわずかになる。
景気の谷が一度来るだけで、この筋書きは現実になりうる。過去にも 2020 年から 2021 年にかけて、営業赤字が続いた。
株主優待は現物の還元で、年およそ5億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.5で10年に25億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 国内外食(牛角・温野菜・大戸屋・かっぱ寿司・居酒屋・カフェなど):数量 2,350(国内の店舗数(直営+加盟店、店))× 価格 1.21(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 2,834 億円・営業利益 14 億円。営業利益率0.5%
- 海外外食(北米・アジア・中東):数量 380(海外の店舗数(直営+加盟店、店))× 価格 1.07(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 405 億円・営業利益 4 億円。営業利益率1%
- オセアニア(豪州のステーキ事業 Seagrass):数量 19.0(店舗数(直営、店))× 価格 12(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 236 億円・営業利益 9 億円。営業利益率4%
倍率:営業赤字で稼ぐ力はゼロ。価値は、ブランドと工場を切り売りして借金(純 1,200 億円超)とリース負債 400 億円を払ったあとに残る額で測る。今の自己資本 842 億円に対する PBR 0.12 倍とした。のれんの減損で帳簿の自己資本の大半が消える前提で、帳簿に掛けた額ではない。
確率:景気の谷や食材高が重なり、かっぱ寿司・アトム・居酒屋の減損が広がる筋書き。過去に希薄化を伴う資金調達をした会社で、借金の返済に追われる確率を無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内外食(牛角・温野菜・大戸屋・かっぱ寿司・居酒屋・カフェなど)
国内の直営と加盟店を合わせた外食と、コロワイドMDの調達・加工、給食。2026年4月から C-United のカフェが加わる。
| 数量国内の店舗数(直営+加盟店、店) | 価格1店舗当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,213 | 1.11 | 2,446 | 80 |
| 10 年後 中立 | 2,850 | 1.35 | 3,848 | 162 |
取り方:2026年3月期の地域別の開示(国内の売上収益 2,446 億円・事業利益 80 億円・店舗数 2,213 店、加盟店を含む)をそのまま使った。1店舗当たり売上は、加盟店の売上が小さい、コロワイドMDや給食の売上も含むため、店の実態より粗い目安。10年後の店数には、2026年4月に加わる C-United の 563 店と 1 店当たり売上の低さ(約 0.7 億円)。同じ店で見れば物価並みの 1.34 倍を置いたの混合を織り込んだ。
海外外食(北米・アジア・中東)
牛角などの焼肉を中心に、北米の直営、アジア・中東の加盟店で展開する外食。
| 数量海外の店舗数(直営+加盟店、店) | 価格1店舗当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 401 | 0.93 | 371 | 23 |
| 10 年後 中立 | 560 | 1.24 | 694 | 45 |
取り方:2026年3月期の地域別の開示で、北米(売上 190 億円・事業利益 4 億円・73 店)とアジア・中東(売上 181 億円・事業利益 19 億円・328 店)を足した。北米は一時的な費用で利益が前期の 10 億円から 4 億円に減った。加盟店が多く、1店当たり売上は 0.93 億円と低い。
オセアニア(豪州のステーキ事業 Seagrass)
2025年6月に連結に加わった豪州のステーキ・高級レストラン事業。利益率が高い。
| 数量店舗数(直営、店) | 価格1店舗当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 19.0 | 9.66 | 184 | 23 |
| 10 年後 中立 | 28.0 | 16 | 435 | 48 |
取り方:2026年3月期は 10 か月の連結で、売上 183 億円・事業利益 23 億円・店 19 店。12 か月に直すと 1 店当たり売上は 11.6 億円。10年後の価格は、この通年の値に物価 1.34 倍を掛けて置いた。
リスクと懸念
借金と金利
純借金は 830 億円、買収後は 1,260 億円前後に増える。営業利益は支払利息の 2 倍にとどまり、借り換えのたびに金利が上がる。景気の谷で利益が落ちれば、利払いで赤字になる。リース負債 400 億円も、家賃と同じく毎年必ず払う約束だ。
C-United の統合
買収額 440 億円に対し、会社予想の事業利益は 33 億円。カフェは朝から昼の客を持つが、スターバックスやコメダなどの競合が強い。統合の効果が出なければ、のれんの減損と借金の増加が同時に来る。
かっぱ寿司とアトムの立て直し
かっぱ寿司は売上 730 億円でも事業利益が 3 億円台、アトムはほぼゼロで、どちらも減損と繰延税金資産の取り崩しの原因になった。会社は来期に大きく改善するとみるが、価格競争の中で利益率が戻る保証はない。
人件費と食材の上昇
最低賃金の上昇とパート・アルバイト不足で、店の運営費は年 3〜5% で上がる。牛肉、米、水産物の輸入価格も円安で重い。値上げが客数減に結びつけば、固定費の重い外食は利益が一気に消える。
海外の採算
北米は一時的な費用で事業利益が 10 億円から 4 億円に落ちた。ERP の導入で業務効率を上げる計画だが、効果が見えるのは先になる。アジア・中東は加盟店中心のため、本部の利益率は高くても額が小さい。
創業家の支配と資本政策
創業家の蔵人氏が会長と副社長を務め、関連の名義が大株主に並ぶ。買収の判断が速い反面、少数株主への還元は薄い。配当は年 5 億円ほどで、自社株買いはない。再編が起きれば、価格は創業家の都合で決まりうる。
今後の分かれ目
- 2027年3月期に事業利益 160 億円を達成し、かっぱ寿司とアトムが黒字を保てたら
- 中立に近い筋書きの確度が上がる。やや楽観側に確率を移すが、金利の重さは残る。
- かっぱ寿司かアトムで、さらに大きな減損が出たら
- やや悲観・悲観側に重みを移す。立て直しの前提が崩れたと見る。
- C-United の事業利益が会社予想の 33 億円を下回り続けたら
- のれんの減損と借金の増加を意識し、やや悲観に寄せる。買収の採算が合っていないと見る。
- 純借金が減り、自己資本比率が 30% を超えたら
- 金利の負担が軽くなり、純利益が伸びる。中立の純利益を上方に修正する。
- 最低賃金の上昇が自動化の効果を上回り続けたら
- 利益率の前提を下げる。やや悲観側の確率を上げる。
- 創業家が非上場化や大型の再編を提案したら
- 価格は創業家と借入条件で決まる。株主への分配の中身を見て前提を見直す。
見ておくもの
- 2027年3月期の事業利益(会社予想 160 億円)の進捗と、減損の有無
- かっぱ寿司(カッパ・クリエイト)とアトムの事業利益の推移
- C-United の事業利益と、統合後の店舗数・客単価
- 純借金と営業利益÷支払利息、借り換えの金利
- 国内外の直営店の出退店数と、人件費の上昇率
倍率と資本コストの決め方
国内・海外・オセアニアの三つに分け、店の数(実質)× 1店当たり売上(名目)で積んだ。国内の売上は物価 1.34 倍に客数減を少し引いて置き、倍率は新しい投資の稼ぎ(RONIC)と長期 g 4.0% から式で出し、その上限の 8 割前後にとどめた。今の株価で倍率を置いてはいない。ROE が資本コストに届かず、倍率の上限は PER 9〜11 倍にとどまった。IFRS なので、リースはすでに借金として載り、営業利益は家賃でなく使用権資産の償却と利息を引いた形である。10年後も今と同じ形(IFRS の形)でそろえ、新リース基準による数字の変化はない。C-United の 440 億円は 2026年4月で期末に入っていないので、純借金は買収後の 1,260 億円前後で見た。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.3→13.02 倍・やや楽観 PER 9.7→11.82 倍・中立 PER 7.7→11.76 倍・やや悲観 PBR 0.2→0.205 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.2% を足して 8.7%。借金の重さだけが強く出る。個別のリスクである買収の消化や創業家の支配は k に足さず、やや悲観・悲観の確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.70% → 8.50%。