結論
三洋堂ホールディングスは、岐阜・愛知・三重などの郊外に 67 店を持つ書店チェーンだ。本と雑誌を軸に、トレーディングカード、中古のホビー、文具、レンタルを同じ店で売る。筆者の結論は「割高」である。
本の売上は毎年 5% ほど減っている。代わりに伸びているのがトレカと、中古ホビーの駿河屋のフランチャイズだ。トレカは前期より 27% 増え、駿河屋は 8 割増えた。2 期続けて黒字になり、ようやく赤字の時代を抜けた。
それでも稼ぐ力は細い。営業利益は 2.7 億円で、利益率は 1.6% だ。店は借り物が多く、家賃は年 11 億円と営業利益の 4 倍ある。売上が落ちても家賃は落ちない。
筆者は、10 年後の中立を、本が半分近くに縮み、トレカとホビーが倍に育つ姿とみる。それでも営業利益は 5 億円ほどにとどまる。今の時価総額は、純利益の 15 倍を超える。ホビーの伸びを先取りした値段で、安全域は無いとみる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は長く持ちたい事業ではない。本という主力の商品が毎年縮み、値段を自分で決められず、店の家賃は固定で重い。利益率は 1% 台で、少しの売上の減りで赤字に戻る。
ホビーへの転換は評価できる。トレカと駿河屋で 2 期続けて黒字にした。ただ、その伸びは流行に乗った部分が大きい。カードの熱が冷めた時、広い売り場の家賃だけが残る。
資本の使い方も見えにくい。無配が 8 年続き、利益は設備と転換に回してきた。大株主のトーハンは仕入先でもあり、少数株主の利益と仕入先の利益が同じとは限らない。
今の値段は、純利益の 15 倍を超える。本の縮みとホビーの伸びを差し引くと、10 年後の利益は今の倍にも届かない。筆者は、今の値段に安全域は無いと見る。転換の成功を確かめてからでも、値段を払うのは遅くない。
何で稼ぐ会社か
店は郊外のロードサイドが中心だ。広い売り場に本と雑誌を置き、その周りにトレカ、プラモデル、文具、中古のゲームやホビーを並べる。67 店と 2 つの教室を持ち、岐阜・愛知・三重が地盤だ。
売上 172 億円のうち、本と雑誌が 86 億円と半分を占める。仕入の 53% は取次のトーハンからで、トーハンは議決権の 37% を持つ筆頭株主でもある。本の粗利は 2 割強と薄く、売れ残りは返品できるが、値段は出版社が決める。
伸びているのはホビーだ。トレカの売上は 26 億円で、前期から 27% 増えた。トレカ館を 26 店に入れ、カードの対戦の場もつくる。中古ホビーの駿河屋はフランチャイズで 7 店に入れ、売上は 11 億円と 8 割増えた。プラモデルは 45 店で扱う。
残りは文具・雑貨・食品が 18 億円、レンタルが 7 億円、古本・中古ゲーム・映像の販売などだ。レンタルと映像は配信に押されて縮む。新規事業には教室やフィットネスがある。社員は 181 人で、パートが 600 人余りいる。
利益の地図は推定するしかない。部門別の利益は開示されないが、粗利の高いトレカと中古ホビーが全社の利益の大半を稼ぎ、本はほぼ収支とんとんとみる。
優良さと弱いところ
この会社の質は、縮む本と、伸びる趣味の綱引きだ。郊外に広い売り場を持ち、本を目当ての客が来る店は、トレカやホビーを売る場所として生かせる。売り場の入れ替えで客を呼び戻す力は、この 2 年の黒字で示された。
弱みは 3 つある。第 1 に、本の売上が年 5% 前後で縮み、粗利も薄い。第 2 に、家賃が重い。店の多くは借り物で、家賃は年 11 億円と営業利益の 4 倍ある。売上が落ちても、この固定費は残る。第 3 に、トレカの熱は流行に左右される。カードの人気が冷めれば、伸びは止まる。
資本の効率は不安定だ。ROE の過去 10 年の中央値は −0.8% で、赤字の年が多かった。今期は 11% だが、投資有価証券の売却益が入っている。自己資本は 30 億円と薄く、自己資本比率は 24% にとどまる。
経営はトーハンと創業家の会社が 6 割を持ち、安定している。2018 年からは無配で、来期にごく小さな額の復配を予定する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
書店の市場は、20 年以上縮み続けている。紙の本と雑誌の売上は、ピークの 1990 年代の半分以下だ。雑誌はスマートフォンに、本の一部は電子書籍と通販に置き換わった。全国の書店の数も、この 20 年で半分ほどに減った。
本の値段は出版社が決め、書店は値引きができない。粗利は 2 割強で、人件費と家賃が上がるほど利益は削られる。取次の物流の費用も上がり、書店の取り分を増やす話し合いが続いている。国も書店の振興策を出したが、流れを変えるほどの力は無い。
その中で、書店は売り場の使い方を変えている。トレカ、ホビー、文具、カフェ、教室を組み合わせ、本以外で稼ぐ店が増えた。トレカの国内市場はこの数年で大きく伸びた。ただし流行の波があり、10 年先まで同じ勢いで伸びる保証は無い。
競合は、TSUTAYA の系列、ゲオ、ブックオフ、そして通販だ。トレカではカードショップの専門店とも競う。三洋堂は郊外の広い売り場と東海の地盤で戦う。10 年の中立は、本が半分近くに縮み、ホビーが倍に育つ姿とみる。流行の波を考えると、ホビーの伸びはどこかで鈍る。
資本政策と M&A
還元はほとんど無い。2018 年から無配が続き、来期にごく小さな額の復配を予定する。自社株買いも無い。
株主優待はある。100 株以上の株主に、レンタルと買い物の割引カードを渡す。1 年以上持つ株主には、図書カードを贈る。優待の費用は開示されていないが、年 0.4 億円ほどとみる。10 年で 4 億円を還元に足した。
大株主はトーハンが 37%、創業家の資産管理会社とみられる日和エステートが 23% を持つ。トーハンは取締役を 2 人指名でき、仕入の半分を握る。借入は 29 億円で、現金は 25 億円ある。店の家賃は年 11 億円で、2028 年 3 月期からの新リース会計で負債に載る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
転換は成功しつつある。トレカは前期から 27% 伸び、駿河屋は 8 割伸びた。2 期続けて黒字になり、来期は 8 年ぶりに復配する。売り場を本から趣味に入れ替える戦略が、数字で効き始めた。
郊外の広い売り場は、本以外の用途に向く。トレカの対戦の場、プラモデル、中古ホビーは、ネットでは味わえない体験だ。トレカ館は 26 店、駿河屋は 7 店にすぎず、67 店に広げる余地は大きい。
トレカの市場は伸び続けている。大人の収集家と海外の需要が加わり、一時の流行を超えた市場になった。トレカと中古ホビーが倍、3 倍に育てば、営業利益は 10 億円を超える。
大株主のトーハンは、書店の再生に本気で取り組んでいる。仕入の条件の改善や、書店の取り分を増やす動きは、三洋堂の粗利を押し上げる。再編で値段が付く可能性もある。
財務も持ち直している。借入は現金でほぼ賄える水準まで減り、税の繰越も残る。黒字が続けば、自己資本は早いペースで厚くなる。
慎重な見方
本の縮みは止まらない。書店の売上は年 5% 前後で減り、今期も 6% 減った。売上の半分を占める商品が毎年縮む中で、ホビーの伸びがそれを埋め続けられるかは分からない。
トレカは流行の商品だ。人気のカードの発売で売上が跳ね、熱が冷めれば落ちる。専門のカードショップやネットの売買との競争も激しい。今の 27% の伸びを 10 年続けると見るのは楽観にすぎる。
家賃は重い。年 11 億円の家賃は、営業利益の 4 倍ある。売上が 1 割落ちれば、利益はすぐに消える。過去 10 年のうち、赤字の年は 6 回あった。
資本も薄い。自己資本は 30 億円で、借入は 29 億円ある。今期の純利益は有価証券の売却益で膨らんでいる。無配が 8 年続き、来期の復配もごく小さな額にすぎない。今の値段は、この先の伸びを先に払いすぎている。
家賃は物価とともに上がる。店の修繕や改装の費用も、建築費の上昇で膨らむ。売り場の入れ替えを続けるほど、現金は設備に出ていく。
どちらに重みを置いたか
慎重な側の主張がやや強いと筆者は見る。本の縮みと家賃の重さは数字で確かめられ、ホビーの伸びは流行の波を含む。転換の成果は本物なので、中立ではホビーが倍に育つと置いた。確率は中立を最も厚くし、やや悲観をそれに次ぐ重さにした。家賃の重さと赤字の歴史を見て、悲観も 1 割強の厚さを残した。強気の側の勢いは認めるが、まだ 2 年の実績しかない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 498 円36 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 80 円6 億円)。 今の値に割り戻すと 262 円19 億円、今との差 −63.1%、 期待の年率 −2.1%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,324 円96 億円 | 151 円11 億円 | +107.2% | +7.6% | 103 円8 億円 |
| やや楽観 | 18% | 782 円57 億円 | 111 円8 億円 | +25.5% | +2.3% | 161 円12 億円 |
| 中立 | 36% | 562 円41 億円 | 92 円7 億円 | −8.1% | −0.8% | 236 円17 億円 |
| やや悲観 | 27% | 194 円14 億円 | 48 円4 億円 | −66.1% | −10.2% | 65 円5 億円 |
| 悲観 | 12% | 84 円6 億円 | 27 円2 億円 | −84.4% | −16.9% | 13 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 498 円36 億円 | 80 円6 億円 | −18.8% | −2.1% | 578 円42 億円 |
今の株価時価総額 712 円52 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% ホビーが全店に広がり、書店から趣味の店に生まれ変わる 利益 7 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,324 円96 億円
トレカ館と駿河屋を全店に広げ、売り場の半分を趣味に入れ替える。トレカは大人と海外の需要で伸び続け、ホビーの売上は 10 年で 4 倍近くになる。利益率は 6.5% に上がる。
本は 3 分の 1 減るが、売り場を絞って赤字を止める。トーハンとの条件の見直しで粗利も少し上がる。文具やレンタルの跡地も趣味の売り場になる。
営業利益は 11 億円台に増える。配当を再開し、優待も続く。ROE は資本コストをやや上回る。家賃の重さは変わらないが、売上が伸びる分だけ固定費の比は下がる。
書店という看板は残るが、中身は趣味の店に変わる筋書きだ。
- 書籍・雑誌:数量 558(販売冊数(万冊・推定))× 価格 1,340(1 冊あたりの売上(円・名目))→ 売上 75 億円・営業利益 0 億円。冊数 0.65 倍、赤字を止める
- ホビー(トレカ・駿河屋・ゲーム・プラモデル):数量 1,635(販売点数(万点・推定))× 価格 952(1 点あたりの売上(円・名目))→ 売上 156 億円・営業利益 10 億円。点数 2.8 倍、利益率 6.5%
- 文具・レンタル・古本・その他:数量 290(購入件数(万件・推定))× 価格 2,010(1 件あたりの売上(円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 1 億円。跡地を趣味に
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.52 倍、時価総額 88 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:7%。トレカと中古ホビーの数量が 10 年で 3 倍近くに育ち、流行が冷めない必要がある。低く置く。
やや楽観 18% ホビーが倍以上に育ち、本の縮みを上回る 利益 4 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 782 円57 億円
トレカと駿河屋を入れる店が倍に増え、ホビーの点数は 10 年で 2.3 倍になる。値段は物価並みに上がり、利益率は 5.5% だ。
本は 4 割減り、小さな赤字にとどまる。文具や雑貨は少し縮むが、利益は出る。家賃は物価で上がるが、売り場の入れ替えで売上あたりの負担は増えない。
営業利益は 7 億円ほどになる。配当は少しずつ増え、優待も続く。ROE は 8% 前後で、資本コストに近づく。自己資本は厚みを取り戻し、借入は減る。
本の売り場は残しつつ、趣味の客を呼ぶ店としての形が固まる。それでも利益率は 4% 前後で、薄利の構造は残る。
- 書籍・雑誌:数量 515(販売冊数(万冊・推定))× 価格 1,320(1 冊あたりの売上(円・名目))→ 売上 68 億円・営業利益 0 億円。冊数 0.6 倍、小さな赤字
- ホビー(トレカ・駿河屋・ゲーム・プラモデル):数量 1,343(販売点数(万点・推定))× 価格 945(1 点あたりの売上(円・名目))→ 売上 127 億円・営業利益 7 億円。点数 2.3 倍、利益率 5.5%
- 文具・レンタル・古本・その他:数量 275(購入件数(万件・推定))× 価格 1,980(1 件あたりの売上(円・名目))→ 売上 54 億円・営業利益 1 億円。少し縮む
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 50 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:18%。今の転換の勢いが半分ほどの速さで続く姿。2 期の黒字の実績から届きうる。
中立 36% 本は半分近くに縮み、ホビーが倍に育って穴を埋める 利益 3 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 562 円41 億円
紙の本と雑誌の冊数は、10 年で 45% 減る。値段は出版社の値上げで物価並みに上がり、売上は 6 割強に縮む。売り場を減らしても家賃は残り、本は 1% の赤字だ。
ホビーは、トレカ館と駿河屋を入れる店を増やして点数が倍になる。流行の波はあるが、カードと中古ホビーの市場は残る。利益率は 5% に下がる。文具やレンタルは 15% 縮む。
営業利益は 5 億円ほどになる。借入の金利が上がり、税の繰越の効果も消える。純利益は 3 億円ほどだ。配当は 1 割ほどの性向で、優待は続く。ROE は 6% 前後で、資本コストに届かない。
- 書籍・雑誌:数量 472(販売冊数(万冊・推定))× 価格 1,300(1 冊あたりの売上(円・名目))→ 売上 61 億円・営業利益 −1 億円。冊数 0.55 倍、値段は出版社の値上げで物価並み、赤字 1%
- ホビー(トレカ・駿河屋・ゲーム・プラモデル):数量 1,168(販売点数(万点・推定))× 価格 938(1 点あたりの売上(円・名目))→ 売上 110 億円・営業利益 5 億円。点数 2 倍、利益率 5%
- 文具・レンタル・古本・その他:数量 260(購入件数(万件・推定))× 価格 1,950(1 件あたりの売上(円・名目))→ 売上 51 億円・営業利益 1 億円。15% 縮む
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 34 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:36%。本の縮みが過去と同じ速さで続き、ホビーは今の勢いが鈍りながら倍に育つ。最も厚く置いた。
やや悲観 27% トレカの熱が冷め、家賃の重さで利益が消える 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 194 円14 億円
トレカの人気は数年で落ち着き、ホビーの点数は 4 割増えたところで止まる。本は半分以下に縮み、家賃の重さで赤字が膨らむ。
文具やレンタルも縮み、全社の営業利益は 1 億円ほどに細る。借入の利払いを引くと、純利益はほぼ残らない。配当はごく小さな額のまま止まり、優待は縮められる。
店を閉じれば家賃は減るが、閉店の損と減損が出る。自己資本はわずかしか増えない。値段の土台は、店の保証金の回収と返品できる本の在庫に近づく。
トーハンの支えで会社は残るが、少数株主にとっての価値は薄い。広い売り場は、流行の去った後に重荷になる。
- 書籍・雑誌:数量 386(販売冊数(万冊・推定))× 価格 1,250(1 冊あたりの売上(円・名目))→ 売上 48 億円・営業利益 −1 億円。冊数 0.45 倍、家賃で赤字
- ホビー(トレカ・駿河屋・ゲーム・プラモデル):数量 818(販売点数(万点・推定))× 価格 910(1 点あたりの売上(円・名目))→ 売上 74 億円・営業利益 3 億円。点数 1.4 倍で止まる
- 文具・レンタル・古本・その他:数量 229(購入件数(万件・推定))× 価格 1,875(1 件あたりの売上(円・名目))→ 売上 43 億円・営業利益 0 億円。縮む
倍率:稼ぐ力はほぼ無く、値段は売れる資産で決まる。床の資産 8.5 億円を今の自己資本 30 億円で割った 0.28 倍。
確率:27%。トレカの伸びが早めに止まり、本の縮みと家賃の重さが残る姿。過去 10 年で赤字が 6 回あったので中立に近い厚さで置いた。
悲観 12% 本とトレカが同時に細り、赤字の書店に戻る 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 84 円6 億円
紙の本の縮みが速まり、冊数は 3 分の 1 近くになる。トレカの市場も崩れ、ホビーは今の量にとどまる。広い売り場の家賃だけが残り、全社は赤字に戻る。
店を次々に閉じ、減損と閉店の損が出る。配当は止まり、優待も縮められる。借入を返すために、保証金と在庫の回収が優先される。
トーハンが支える形で会社は残るが、少数株主の取り分は小さい。値段の土台は、保証金の一部の回収だけになる。再編が起きても、条件は少数株主に厳しい。
過去 10 年で 6 回赤字だった姿に戻る筋書きだ。自己資本も減損で削られる。株主は何も受け取れない。
- 書籍・雑誌:数量 300(販売冊数(万冊・推定))× 価格 1,200(1 冊あたりの売上(円・名目))→ 売上 36 億円・営業利益 −1 億円。冊数 0.35 倍、赤字
- ホビー(トレカ・駿河屋・ゲーム・プラモデル):数量 584(販売点数(万点・推定))× 価格 840(1 点あたりの売上(円・名目))→ 売上 49 億円・営業利益 0 億円。今の量で止まる
- 文具・レンタル・古本・その他:数量 183(購入件数(万件・推定))× 価格 1,800(1 件あたりの売上(円・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 −1 億円。赤字
倍率:赤字で稼ぐ力は無い。床の資産 6 億円を今の自己資本 30 億円で割った 0.2 倍。
確率:12%。本の縮みが速まり、トレカの市場も崩れる構造的な負け。家賃の固定費が重く、赤字の歴史もあるので 1 割強の厚さで置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
書籍・雑誌
郊外の店で本と雑誌を売る。仕入の半分強はトーハンから。値段は出版社が決める。
| 数量販売冊数(万冊・推定) | 価格1 冊あたりの売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 858 | 1,000 | 86 | −1 |
| 10 年後 中立 | 472 | 1,300 | 61 | −1 |
取り方:書店部門の売上 85.8 億円を、本と雑誌をならした 1 冊約 1 千円で割り、年 858 万冊とみた推定値。部門の利益は開示が無く、粗利と店の費用の割り振りから小さな赤字と推定した。
ホビー(トレカ・駿河屋・ゲーム・プラモデル)
トレカ館 26 店、中古ホビーの駿河屋のフランチャイズ 7 店、プラモデル 45 店、ゲームの販売。
| 数量販売点数(万点・推定) | 価格1 点あたりの売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 584 | 700 | 41 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1,168 | 938 | 110 | 5 |
取り方:トレカ 25.8・駿河屋 11.3・TV ゲーム 3.9 の合計 40.9 億円を、1 点約 0.7 千円で割り、年 584 万点とみた推定値。利益は粗利の高さから全社の大半を稼ぐと推定した。
文具・レンタル・古本・その他
文具・雑貨・食品、レンタル、古本、映像の販売、教室・フィットネスなどの新規事業。
| 数量購入件数(万件・推定) | 価格1 件あたりの売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 305 | 1,500 | 46 | 1 |
| 10 年後 中立 | 260 | 1,950 | 51 | 1 |
取り方:文具 17.7・レンタル 7.3・新規 7.3・古本 5.1・映像 4.7・サービス 3.6 の合計 45.8 億円を、1 件約 1.5 千円で割り、年 305 万件とみた推定値。
リスクと懸念
本の構造的な縮み
書店部門の売上は前期から 6% 減った。紙の本と雑誌は電子書籍と通販に置き換わり、縮みは止まらない。売上の半分を占める商品が毎年細る。
トレカの流行の波
トレカは前期から 27% 伸びたが、人気のカードの発売に左右される。熱が冷めれば伸びは止まる。専門店やネットの売買との競争も激しい。
家賃の固定費
店の多くは借り物で、家賃は年 11 億円と営業利益の 4 倍ある。売上が落ちても家賃は残る。2028 年 3 月期からの新リース会計で、負債の見かけは大きく増え、自己資本比率は下がる。
薄い自己資本と借入
自己資本は 30 億円、借入は 29 億円ある。過去 10 年で赤字が 6 回あった。金利が上がると利払いが増え、薄い利益をさらに削る。
仕入先が筆頭株主
トーハンは仕入の 53% を握り、議決権の 37% を持つ。仕入の条件は会社の利益を左右するが、仕入先と少数株主の利益は同じとは限らない。
今後の分かれ目
- トレカ館と駿河屋の導入店が 2 年で倍に増え、ホビーの売上が伸び続けたら
- 転換が本物とみて、やや楽観の確率を上げる。
- トレカの売上が前期を下回ったら
- 流行の波が下に向いたとみて、やや悲観の確率を上げる。
- トーハンとの取引条件の見直しで本の粗利が上がったら
- 本の赤字が縮むとみて、中立の本の利益率を上に直す。
- 店の閉鎖や減損が続いたら
- 家賃の重さが表に出たとみて、悲観側の確率を上げる。
- トーハンや他社が完全子会社化を提案したら
- 再編の値段が付く。筋書きの外の出来事として別に考える。
見ておくもの
- 書店部門とトレカ・駿河屋の売上の伸び
- トレカ館・駿河屋の導入店の数
- 営業利益率と家賃の比
- 借入と自己資本比率
- 配当と優待の扱い
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER には寄せていない。売上は冊数・点数・件数の推定から積み、倍率は ROE と k の式から上限の 7.5〜9 割で置いた。今の PER が 15 倍を超えることは、倍率の根拠にしていない。家賃は営業費用に入れた今の形でそろえ、新リース会計(2028 年 3 月期から)で負債が増える点は形の違いとして扱った。悲観は保証金の回収を床にした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→12.52 倍・やや楽観 PER 9.5→11.11 倍・中立 PER 8.5→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 9.25%。