結論
アスモは、老人ホームなどへの給食、訪問介護と有料老人ホーム、食肉の輸入、香港の外食の 4 つを営む会社だ。親会社は老人ホームを運営するベストライフ系の Persons Bridge で、議決権の 61% を持つ。筆者の結論は「やや割高」である。
事業は地味だが安定している。給食は親会社グループの施設が大口の客で、売上の 35% がそこから来る。介護は高齢者の増加という追い風を受ける。営業利益は 6.5 億円で、利益率は 3% ほどだ。
目を引くのは現金だ。手元の現金は 51 億円あり、借金はほとんど無い。時価総額は 52 億円なので、事業はほとんどただで値が付いている計算になる。
それでも筆者は割安とは見ない。親会社が過半を握る上場子会社では、現金が少数株主に戻る道が細い。配当性向は 3 割ほどで、残りは会社に残る。介護は人件費の上昇に報酬の上げが追いつかず、利益率は細りやすい。10 年後の中立は、給食と介護の数量が伸び、利益率が少し下がる姿である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安いが、手が届かない」銘柄だ。時価総額 52 億円に対し、現金が 51 億円ある。事業は毎年 6 億円ほどを稼ぐ。数字だけ見れば、事業をほぼただで買える。
だが、少数株主にとっての価値は帳簿と違う。親会社が 6 割を握り、給食の客でもある。現金をどう使うかは親会社の都合で決まる。配当性向は 3 割で、残りは会社にたまり続ける。ためた現金が少数株主に戻る見込みは、半分ほどとみるのが妥当だ。
事業そのものは悪くない。高齢者の食事と介護は、10 年後も必ずある需要だ。ただ、値段を決めるのは国と親会社で、人件費の上昇は自分で止められない。利益率は過去 10 年で大きく下がった。
筆者は、親子上場の解消か還元の強化が起きない限り、帳簿の安さは値段に乗りにくいと見る。安全域は、現金の半分と事業の稼ぎの分だけだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は 2 つある。1 つ目は給食だ。アスモフードサービスが、老人ホームや病院の厨房を請け負い、毎日の食事をつくる。売上は 92 億円、営業利益は 3.6 億円で、全社の売上の 43% を占める。大口の客は親会社のベストライフ系の老人ホームで、関係の深い 7 社で売上の 35% になる。
2 つ目は介護だ。アスモ介護サービスが、訪問介護 32 か所と居宅介護支援 11 か所、有料老人ホーム 7 施設を営む。支援する利用者は約 2,000 人、ホームの入居者は 408 人いる。売上は 53 億円、営業利益は 4.3 億円で、利益率は 8% と全社で最も高い。
残りの 2 つは小さい。アスモトレーディングは食肉を輸入して卸し、売上 41 億円で営業利益は 0.9 億円だ。香港の ASMO CATERING は現地で外食と卸を営み、売上 26 億円で利益はわずかだ。台湾の子会社は 2025 年に清算した。
2026 年 4 月には、介護の現場に人を送る人材派遣の Trust Growth を買った。外国人の技能実習の人材も扱う。グループの施設と組み合わせ、人手不足を自前で補う狙いだ。本社は 18 人で、連結の従業員は約 1,400 人になる。
優良さと弱いところ
この会社の質は、安定した需要と、弱い値決め力の組み合わせだ。高齢者の食事と介護は景気に左右されず、10 年後も確実にある。給食は厨房に人を置き、毎日欠かさず食事を出す仕事で、一度請け負えば簡単には替えられない。
弱みは 3 つある。第 1 に、給食の大口の客が親会社グループだ。取引の条件は親会社との話し合いで決まり、値上げの余地は外の客より小さい。第 2 に、介護の値段は国が決める。介護報酬の上げは物価や賃金の上げに遅れやすく、人件費が利益率を削る。第 3 に、人手不足だ。調理員も介護職も集めにくく、派遣会社を買ったのはその裏返しである。
資本の効率は低い。ROE の過去 10 年の中央値は 6.9% で、資本コストに届かない。自己資本の 7 割が現金で、事業に使われていない。利益率は 2010 年代前半の 10% 前後から 3% 前後に下がり、戻っていない。経営は手堅いが、資本を返す姿勢は弱い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
給食の市場は、病院と老人ホームの数で決まる。日本の 75 歳以上の人口は 2030 年代に向けて増え、施設の食事の数も増える。一方で調理の人手は足りず、施設は外の会社に厨房を任せる流れが強まる。受託の会社には追い風だが、人件費と食材費の上昇を契約に移す交渉は毎年の勝負になる。
介護の需要は伸び続ける。85 歳以上の人口は 10 年で 2〜3 割増える見込みだ。ただし介護職の不足は深刻で、事業所を増やしたくても人が集まらない。介護報酬は 3 年ごとの改定で上がるが、上げ幅は物価と賃金の上げに届かないことが多い。利益率は細りやすい構造である。
競合は大手の給食会社と地域の同業だ。日清医療食品、LEOC、富士産業などが病院と施設の給食を広く請け負う。アスモは規模で大手に及ばないが、親会社グループの施設という安定した客を持つ。介護では、ニチイやツクイなど大手の訪問介護が競合になる。
食肉の輸入は、世界の相場と円の値で利益が振れる。香港の外食は現地の景気次第だ。どちらも全社の利益への寄与は小さい。10 年の中立は、給食と介護の数量が 1〜3 割増え、利益率が少し下がる姿とみる。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。配当は年 2 回で、今期の総額は 1.3 億円、配当性向は 3 割ほどだ。自社株買いは行っていない。2026 年 7 月に自己株を処分しており、株は増える方向に動いた。株主優待の記載は無い。
現金は 51 億円あり、借金は 1 億円にすぎない。Trust Growth の取得に一部を使ったとみられるが、金額は開示されていない。親会社は議決権の 61% を持ち、上位の親会社のベストライフ HD が支配する。
親子上場の解消は、上振れの筋書きの 1 つだ。親会社が少数株主から株を買い取れば、現金の厚さが値段に乗る。ただし具体的な動きは確かめられなかった。筋書きの確率には大きく入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
数字の上の安さは際立つ。現金 51 億円で時価総額をほぼ賄え、事業は毎年 6 億円を稼ぐ。借金は無く、景気にも左右されない。下値の心配は小さい。
需要は確実に伸びる。75 歳以上の人口は 2030 年代まで増え、老人ホームの食事も介護の利用者も増える。親会社のベストライフは施設を増やしており、給食の量は自然に増える。施設が人手不足で厨房を外に任せる流れも追い風だ。
Trust Growth の買収は、人手不足への的確な答えだ。介護の現場に人を送る仕組みを自前で持てば、施設を増やす速さを上げられる。外国人の人材も扱えるので、国内の人手の細りを補える。
親子上場の解消は、時間の問題かもしれない。取引所は親子上場の説明を求めており、親会社が少数株主から株を買い取る例は増えている。その時の値段は、現金の厚さを反映するはずだ。
利益率にも戻る余地がある。2010 年代前半の利益率は 10% 前後あった。給食の契約を物価に合わせて見直し、介護で人を確保できれば、半分を取り戻すだけで営業利益は今の倍近くになる。
慎重な見方
現金は少数株主のものではない。親会社が 6 割を握り、給食の大口の客でもある。配当性向は 3 割で、10 年かけて現金はむしろ積み上がってきた。親会社が解消に動く兆しも無い。
利益率は長く下がってきた。2010 年代前半は 10% 前後あったが、今は 3% ほどだ。給食の値段は親会社との話し合いで決まり、上げにくい。介護報酬の上げは賃金の上げに追いつかない。数量が伸びても、利益は思ったほど増えない。
人手不足は解決していない。調理員も介護職も集めにくく、派遣の会社を買ったのは、その深刻さの表れだ。派遣で人を補えば、費用はさらに上がる。
小さな事業も重荷だ。香港の外食と食肉の輸入は、相場と景気で利益が振れる。台湾は清算した。経営の手が分散し、本業に集中しきれていない。
親会社との取引の条件も見えにくい。売上の 3 分の 1 を占める客が、議決権の 6 割を持つ株主でもある。少数株主の利益と親会社の利益がぶつかる時、どちらが優先されるかは明らかだ。
どちらに重みを置いたか
慎重な側の言い分がやや強いと筆者は見る。安さの源の現金が少数株主に戻る道が細いことは、数字で確かめられる。一方で、需要の伸びと借金の無さは本物で、深い悲観も起きにくい。中立を最も厚くし、強気と慎重の確率をほぼ左右対称に置いた。親子上場の解消は、楽観に少しだけ含めた。現金が戻る見込みは、確率でなく戻り方の半分という形で表した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 662 円89 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 111 円15 億円)。 今の値に割り戻すと 382 円52 億円、今との差 −0.8%、 期待の年率 +7.2%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,241 円168 億円 | 164 円22 億円 | +265.1% | +13.8% | 112 円15 億円 |
| やや楽観 | 20% | 959 円130 億円 | 132 円18 億円 | +183.4% | +11.0% | 218 円29 億円 |
| 中立 | 38% | 743 円100 億円 | 114 円15 億円 | +122.6% | +8.3% | 326 円44 億円 |
| やや悲観 | 24% | 306 円41 億円 | 93 円13 億円 | +3.5% | +0.3% | 96 円13 億円 |
| 悲観 | 10% | 148 円20 億円 | 59 円8 億円 | −46.2% | −6.0% | 21 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 662 円89 億円 | 111 円15 億円 | +100.7% | +7.2% | 773 円104 億円 |
今の株価時価総額 385 円52 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 親会社の施設の拡大に乗り、給食と介護が太る 利益 9 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 1,241 円168 億円
親会社のベストライフが施設を増やし、給食の量は 10 年で 4 分の 1 増える。外の病院や施設の受託も取り、値上げも物価並みに通る。給食の利益率は 4.2% に上がる。
介護は Trust Growth の人材を生かして事業所を増やし、利用者は 6 割増える。介護報酬の上げも賃金に近づき、利益率は 7.5% を保つ。食肉と香港も小さく稼ぐ。
営業利益は 12 億円台に増える。ROE は資本コストを上回る。親会社が少数株主の株を買い取る動きも出て、現金の厚さが値段に乗りやすくなる。
人手不足を自前の派遣で補えたことが、この筋書きの鍵になる。
- 給食(アスモフードサービス):数量 1,913(年間の提供食数(万食・推定))× 価格 816(1 食あたりの売上(円・名目))→ 売上 156 億円・営業利益 7 億円。食数 1.25 倍、単価 1.36 倍、利益率 4.2%
- 介護(アスモ介護サービス):数量 3,874(介護の利用者と入居者の数(人))× 価格 282(1 人あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 109 億円・営業利益 8 億円。利用者 1.6 倍、報酬は物価にやや遅れる
- 食肉の輸入・卸(アスモトレーディング):数量 4.3(取扱量(千トン・推定))× 価格 1,360(キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 59 億円・営業利益 1 億円。相場が安定
- 香港の外食・卸(ASMO CATERING (HK)):数量 287(年間の提供食数(万食・推定))× 価格 1,340(1 食あたりの売上(円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 1 億円。香港の景気が戻る
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 15.31 倍、時価総額 157 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:8%。給食と介護の両方で数量が大きく伸び、利益率も保つ必要がある。人手不足の中では低く置く。
やや楽観 20% 給食と介護が高齢化に沿って伸び、利益率を保つ 利益 7 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 959 円130 億円
給食の量は 10 年で 17% 増え、値段は物価並みに上がる。人件費の上昇は値上げで吸収し、利益率は 3.9% を保つ。
介護は利用者が 45% 増える。人材派遣の会社を持つことで、人を集める費用を抑える。介護報酬の上げは物価に少し遅れ、利益率は 6.8% に下がる。食肉と香港はとんとんよりやや上だ。
営業利益は 10 億円ほどに増える。配当は利益に合わせて増えるが、性向は 3 割のままだ。現金は会社にたまり続け、少数株主に戻る分は限られる。
事業は着実に太るが、資本の使い方は変わらない筋書きだ。
- 給食(アスモフードサービス):数量 1,790(年間の提供食数(万食・推定))× 価格 810(1 食あたりの売上(円・名目))→ 売上 145 億円・営業利益 6 億円。食数 1.17 倍、利益率 3.9%
- 介護(アスモ介護サービス):数量 3,510(介護の利用者と入居者の数(人))× 価格 276(1 人あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 97 億円・営業利益 7 億円。利用者 1.45 倍、報酬は物価に遅れる
- 食肉の輸入・卸(アスモトレーディング):数量 4.1(取扱量(千トン・推定))× 価格 1,340(キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 55 億円・営業利益 1 億円。今並み
- 香港の外食・卸(ASMO CATERING (HK)):数量 274(年間の提供食数(万食・推定))× 価格 1,320(1 食あたりの売上(円・名目))→ 売上 36 億円・営業利益 1 億円。今並み
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 14.2 倍、時価総額 119 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:20%。高齢化の数量の伸びを取り、値上げも物価に近く通る姿。親会社の施設が増えれば届く。
中立 38% 給食と介護の量は伸びるが、人件費で利益率が少し下がる 利益 6 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 743 円100 億円
給食の量は 10 年で 1 割増える。親会社の施設の拡大と、外の施設の受託が少しずつ積み上がる。値段は物価並みに上がるが、人件費の上昇で利益率は 3.6% に下がる。
介護は Trust Growth の加入と高齢化で、利用者が 35% 増える。介護報酬の上げは年 2% ほどで物価に遅れ、賃金の上げに押されて利益率は 6% に下がる。食肉と香港は小さく稼ぐ。
営業利益は 8 億円ほどになる。現金の利息が利益に少し加わる。配当は性向 3 割を保ち、自己資本は 100 億円台に積み上がる。ROE は 5% 前後で、資本コストに届かない。
- 給食(アスモフードサービス):数量 1,683(年間の提供食数(万食・推定))× 価格 804(1 食あたりの売上(円・名目))→ 売上 135 億円・営業利益 5 億円。食数 1.1 倍、単価 1.34 倍、利益率 3.6%
- 介護(アスモ介護サービス):数量 3,268(介護の利用者と入居者の数(人))× 価格 269(1 人あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 88 億円・営業利益 5 億円。利用者 1.35 倍(派遣の加入を含む)。介護報酬は年 2% で物価に遅れる
- 食肉の輸入・卸(アスモトレーディング):数量 3.9(取扱量(千トン・推定))× 価格 1,340(キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 52 億円・営業利益 1 億円。量は少し減る
- 香港の外食・卸(ASMO CATERING (HK)):数量 261(年間の提供食数(万食・推定))× 価格 1,300(1 食あたりの売上(円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 0 億円。今並み
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 12.96 倍、時価総額 90 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:38%。高齢化の数量の伸びと、介護報酬が賃金に遅れる構造の両方が効く。過去 5 年の延長として最も厚く置いた。
やや悲観 24% 人件費に押され、給食と介護の利益率が細る 利益 2 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 306 円41 億円
調理員と介護職の不足が深まり、人件費は物価を上回って上がる。給食の値上げは親会社との交渉で抑えられ、利益率は 2.8% に下がる。量も施設の人手不足で伸びない。
介護は利用者が 2 割増えるが、介護報酬の上げは小さい。派遣で人を補う費用もかさみ、利益率は 4% に落ちる。食肉は相場で振れ、香港はとんとんだ。
営業利益は 4 億円台で、今より細る。配当は今の額を守るのが精一杯になる。現金は残るが、施設の更新と人の確保に少しずつ使われる。
借金が無いので会社は揺らがないが、株主の価値はゆっくり目減りする。
- 給食(アスモフードサービス):数量 1,454(年間の提供食数(万食・推定))× 価格 768(1 食あたりの売上(円・名目))→ 売上 112 億円・営業利益 3 億円。食数は少し減る、利益率 2.8%
- 介護(アスモ介護サービス):数量 2,905(介護の利用者と入居者の数(人))× 価格 254(1 人あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 74 億円・営業利益 3 億円。報酬の上げが小さい
- 食肉の輸入・卸(アスモトレーディング):数量 3.5(取扱量(千トン・推定))× 価格 1,250(キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 44 億円・営業利益 1 億円。相場で振れる
- 香港の外食・卸(ASMO CATERING (HK)):数量 222(年間の提供食数(万食・推定))× 価格 1,200(1 食あたりの売上(円・名目))→ 売上 27 億円・営業利益 0 億円。とんとん
倍率:事業の ROE は 4% 前後で k 8.0% を大きく下回り、上限は 1÷k=12.5 倍。利益率が細り続ける筋書きなので、上限の約 6.5 割の 8.0 倍。
確率:24%。人手不足で人件費が報酬と契約の上げを上回り続ける姿。介護と給食の業界ですでに起きている流れで、中立に近い厚さで置いた。
悲観 10% 親会社の給食が外に流れ、介護も赤字に沈む 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 148 円20 億円
親会社グループが給食を内製に切り替えるか、大手の給食会社に移す。アスモの給食の量は 4 割減り、利益はほとんど出ない。親会社の都合ひとつで、売上の 3 分の 1 が揺らぐ。
介護は人が集まらず、事業所を閉じる。利益率は 1% まで落ちる。食肉と香港も赤字だ。全社の営業利益は赤字になり、のれんの減損も出る。
現金は残るが、親会社の意向で使われる。少数株主にとっての値段の土台は、戻りうる現金の一部だけになる。
親会社の施設が増えても、給食の客が戻る保証は無い。のれんの減損で自己資本も削られる。配当も減らされる。
- 給食(アスモフードサービス):数量 918(年間の提供食数(万食・推定))× 価格 720(1 食あたりの売上(円・名目))→ 売上 66 億円・営業利益 1 億円。量が 4 割減る
- 介護(アスモ介護サービス):数量 2,421(介護の利用者と入居者の数(人))× 価格 243(1 人あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 59 億円・営業利益 1 億円。人が集まらない
- 食肉の輸入・卸(アスモトレーディング):数量 2.9(取扱量(千トン・推定))× 価格 1,150(キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 0 億円。とんとん
- 香港の外食・卸(ASMO CATERING (HK)):数量 157(年間の提供食数(万食・推定))× 価格 1,100(1 食あたりの売上(円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 −1 億円。赤字
倍率:稼ぐ力はほぼ無く、値段は戻りうる現金で決まる。床の資産 20 億円を今の自己資本 70 億円で割った 0.287 倍。
確率:10%。親会社グループの給食の契約が細り、介護の人手不足で赤字になる構造的な負け。借金が無いので 1 割にとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
給食(アスモフードサービス)
老人ホームや病院の厨房を請け負い、毎日の食事をつくる。大口の客は親会社のベストライフ系の施設。
| 数量年間の提供食数(万食・推定) | 価格1 食あたりの売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,530 | 600 | 92 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1,683 | 804 | 135 | 5 |
取り方:給食の売上 91.8 億円を、施設の食事 1 食あたり約 0.6 千円(食材と調理の込み)で割り、年 1,530 万食とみた推定値。食数の開示は無い。
介護(アスモ介護サービス)
訪問介護 32 か所・居宅介護支援 11 か所・有料老人ホーム 7 施設。2026 年 4 月から介護の人材派遣 Trust Growth が加わる。
| 数量介護の利用者と入居者の数(人) | 価格1 人あたりの年間売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,421 | 221 | 53 | 4 |
| 10 年後 中立 | 3,268 | 269 | 88 | 5 |
取り方:2026 年 3 月末の支援中の利用者 2,013 人と入居者 408 人の合計 2,421 人で、売上 53.4 億円を割ると 1 人あたり年約 220 万円。
食肉の輸入・卸(アスモトレーディング)
牛肉・豚肉などを輸入し、国内の外食や加工業者に卸す。
| 数量取扱量(千トン・推定) | 価格キロあたりの売値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.1 | 1,000 | 41 | 1 |
| 10 年後 中立 | 3.9 | 1,340 | 52 | 1 |
取り方:売上 41 億円を、輸入食肉の平均キロ 1 千円で割り、約 4.1 千トンとみた推定値。
香港の外食・卸(ASMO CATERING (HK))
香港で飲食店と食品の卸を営む。
| 数量年間の提供食数(万食・推定) | 価格1 食あたりの売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 261 | 1,000 | 26 | 0 |
| 10 年後 中立 | 261 | 1,300 | 34 | 0 |
取り方:売上 26.1 億円を、1 食あたり約 1 千円で割り、年 261 万食とみた推定値。
リスクと懸念
親会社グループへの依存
給食の大口の客は親会社のベストライフ系の施設で、関係の深い 7 社で売上の 35% を占める。取引の条件は親会社との話し合いで決まり、内製や他社への切り替えがあれば売上の 3 分の 1 が揺らぐ。
人手不足と人件費の上昇
調理員と介護職は集めにくく、賃金は物価を上回って上がる。介護報酬の上げは 3 年ごとで、賃金に遅れやすい。利益率は過去 10 年で 10% 前後から 3% 前後に下がった。
現金が少数株主に戻らない
現金 51 億円は時価総額に迫るが、親会社が 6 割を握る。配当性向は 3 割で、自社株買いは無い。親子上場の解消が無い限り、現金の厚さは値段に乗りにくい。
施設の賃借の固定費
有料老人ホームや事業所は借りて営む部分がある。売上が落ちても家賃は残る。2028 年 3 月期からの新リース会計で、負債の見かけは増える。悲観では家賃が固定費として利益を圧迫する。
買収と小さな海外事業
Trust Growth の取得額は開示されておらず、のれんの減損の恐れがある。香港の外食と食肉の輸入は、景気と相場で利益が振れる。台湾は清算した。
今後の分かれ目
- 親会社が少数株主の株を買い取る方針を出したら
- 現金の厚さが値段に乗る。筋書きの外の上振れとして別に考える。
- 配当性向を 5 割以上に上げるか、自社株買いを始めたら
- 現金が株主に戻る道が開いたとみて、戻り方を 0.75 以上に直す。
- 給食の利益率が 2 年続けて 3% を割ったら
- 人件費に押される筋書きが現実になったとみて、やや悲観の確率を上げる。
- 介護報酬の改定で賃上げの分が上乗せされたら
- 介護の利益率の見通しを上に直す。
- 親会社グループ以外の給食の受託が増えたら
- 親会社への依存が薄まったとみて、悲観の確率を下げる。
見ておくもの
- 給食の営業利益率と親会社グループ向けの売上の割合
- 介護の利用者数と事業所数
- 介護報酬の改定率と賃金の上げ
- 配当性向と自社株買い・親子上場の扱い
- Trust Growth の業績とのれん
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER には寄せていない。売上は給食の食数、介護の利用者数、食肉の取扱量から積み、倍率は ROE と k の式から上限の 6.5〜9 割で置いた。時価総額が現金とほぼ同じことは、割安の根拠にしていない。現金は親子上場を理由に半分だけ数えた。新リース会計で形が変わる点は、家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→15.31 倍・やや楽観 PER 10.5→14.2 倍・中立 PER 10→12.96 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。