結論
グローバルダイニングは、東京の西麻布や渋谷を地盤に、和食の「権八」、イタリアンの「ラ・ボエム」、アジア料理の「モンスーンカフェ」などを営む外食の会社だ。店は国内に 45、米国のロサンゼルスに 3 つある。客単価の高い大型の店を、自社で作った業態だけで回す。
利益は戻ってきた。2026 年 12 月期の中間期は、既存店の売上が 1 割強伸び、営業利益は前年の 3 倍の 6 億円になった。訪日客で権八がにぎわい、育った人材でラ・ボエムの売上も伸びた。那須の宿泊付きの複合施設と米国の赤字が重しだったが、どちらも縮み始めている。
ただ、この会社は 2010 年代のほぼ半分の年で赤字だった。大きな店の家賃と人の費用は、客が減っても残る。創業者の長谷川耕造氏が株の 6 割を持ち、配当は利益の 1 割に届かない。筆者は、事業の回復は本物だが、ためた利益が株主に戻りにくい点を割り引くと、今の値段はほぼ見合っていると見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い店を持つが、良い事業とは言い切れない」会社だ。
権八やラ・ボエムは 30 年続き、訪日客まで呼べる店になった。まねしにくい資産であることは確かだ。しかし、店の良さが株主の利益に変わるまでに、家賃と人の費用という 2 つの重い壁がある。どちらも客が減っても残る。過去 20 年で 12 期が赤字という記録が、その壁の厚さを物語る。
もう 1 つの難しさは資本の使い方だ。創業者が 6 割を持ち、利益は配当でなく大型の投資に回る。那須や米国が実れば価値は上がるが、外れれば株主の資本が削られる。筆者は、店の力と回復した利益を認めつつ、利益の振れと還元の細さを割り引くと、今の値段はおおむね見合っていると見る。安全域と呼べるほどの値引きは無い。値段を決める力は店の格に宿り、それを保つには創業者の目と、育った人材が要る。その両方が続くかを見極めてから考えたい会社だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、客単価の高い大型のレストランだ。夜の会食や観光の客を相手に、1 人数千円から 1 万円台を払ってもらう。業態は自社で作ったものだけで、他社のブランドを借りるフランチャイズはほとんど無い。
柱は 2 つある。権八は和食の居酒屋で、西麻布の店が海外の要人の来店で知られ、今は訪日客が席を埋める。年の売上は 35 億円。ラ・ボエムはパスタとピザの店で、住宅地や商業施設にも出て、売上は 32 億円になった。モンスーンカフェ、ディナーレストラン、ゼストがこれに続く。
米国ではロサンゼルスに 3 店を持ち、売上は 25 億円と全体の 2 割弱を占める。2025 年に開いたイタリアンの Settecento が伸びたが、山火事の影響もあり営業損益は小さな赤字だった。本社の経営陣が米国の経営も兼ねる体制に変え、2026 年は黒字を目指す。
2025 年 3 月には、栃木県那須塩原市に宿泊付きの複合施設「那須パラダイスヴィレッジ」を開いた。土地を自社で持つ大きな投資で、開業の費用が 2025 年の利益を押し下げた。店の多くは借りた建物で、家賃は売上の 1 割前後とみられる。土地は帳簿で 30 億円を持ち、借入は 24 億円ある。
優良さと弱いところ
グローバルダイニングの優良さは、中くらいより下だ。店の力は強いが、稼ぎが続かない年が長かった。
強みは業態を作る力と立地だ。権八やラ・ボエムは 30 年近く続く店で、西麻布や渋谷の一等地にある。大きな店で雰囲気を売るので、価格の比べ合いになりにくい。2026 年の既存店の売上が 1 割強伸びたのは、値上げと訪日客の両方が効いたからだ。
弱みは利益の振れだ。過去 20 年で 12 期が赤字で、2020 年はコロナ禍で売上が 4 割減り、自己資本の 4 割を失った。大型の店は家賃と人の費用が重く、売上が 1 割落ちると利益はほぼ消える。営業利益率の山は 2021 年の 7.6% で、普通の年は 5〜6% だ。
資本の使い方にも癖がある。那須や米国のように、創業者の判断で大きな投資を決め、回収に時間がかかる。ROE は 2021 年から 5 年の平均で 1 割を超えたが、繰越欠損金で税が軽かった年を含む。税が普通にかかる今は 7〜8% が実力だろう。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食の市場は、コロナ禍の落ち込みから戻り、2023 年に 24 兆円まで回復した。数量は人口の減りで横ばいが続き、伸びは値上げと訪日客から来る。
グローバルダイニングが戦うのは、その中の高めの価格帯だ。会食や観光の客は景気に敏感で、不況の年は真っ先に削られる。リーマン危機の時は、外食全体で既存店の売上が 2〜3 割落ちた。高単価の店ほど落ち方は深い。
追い風は訪日客だ。円安が続き、東京の夜を楽しむ外国人の客は増えている。権八のような「日本らしさ」を売る店は、その恩恵を真っ先に受ける。一方で、訪日客は為替や国際情勢で急に減る。2020 年に一度ゼロになった需要に、利益の多くを頼るのは危うい。
向かい風は人の費用だ。最低賃金は毎年上がり、接客の質で売る店ほど人を減らしにくい。配膳ロボットやセルフレジは、雰囲気を売る大型店には向かない。筆者は、10 年で客数はほぼ横ばい、客単価は物価に連れて上がると見る。値上げが通るかどうかは、店の格を保てるかどうかで決まる。同業では、高単価の多業態を営む WDI やワイズテーブルコーポレーション、うかいが近い。いずれも利益率は 3〜5% 台で、利益の薄さはこの価格帯の宿命でもある。
資本政策と M&A
創業者の長谷川耕造氏が株の 59% を持つ。社長も続けており、オーナーがすべてを決める会社だ。大株主の 2 位も関係の会社とみられ、市場に出回る株は少ない。
還元は細い。2025 年 12 月期に 17 年ぶりの配当を出したが、総額 0.5 億円、利益の 1 割に届かない。会社は ROE 1 割と ROA 5% を目標に掲げるが、配当性向や自社株買いの方針は示していない。利益は那須や米国のような投資と、借入の返済に回ってきた。
株主優待は 500 株以上の株主に、国内の直営店で 15% 引きになる優待証を年 2 回贈る。費用の開示は無いが、年 0.1〜0.3 億円ほどとみられ、価値への影響は小さい。新しいリースの会計基準が 2027 年 12 月期から当てはまると、店の賃借が資産と負債で載り、自己資本比率は今の 5 割から下がって見える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
店の力は本物だ。2026 年の中間期は既存店の売上が 11% 伸び、営業利益は 3 倍になった。値上げをしても客が減らないのは、価格の比べ合いをしない店だからだ。
訪日客は長く続く。円安と日本食の人気で、東京の夜を楽しむ外国人は増え続ける。権八の西麻布の店は、海外で名の知られた数少ない日本の居酒屋で、その恩恵を真っ先に受ける。
重しだった 2 つの投資も実り始めた。米国は Settecento が伸び、赤字は 2 億円から 0.6 億円に縮んだ。本社の経営陣が兼ねる体制で、2026 年は黒字が見える。那須の複合施設は開業の費用が終わり、優待の対象にも加えて客を呼ぶ。
財務は 5 年前と別物だ。自己資本は 61 億円まで戻り、純負債は 8 億円しかない。土地は 30 億円を自社で持つ。会社が掲げる ROE 1 割は、中間期の利益の勢いなら届く水準だ。米国で成功した業態を東海岸や他の都市に広げる道もある。外食の大手が海外で育てた店のように、日本の業態は海外で高い値段をとれる。
慎重な見方
記録が答えを出している。過去 20 年で 12 期が赤字で、2020 年には自己資本の 4 割を失った。大きな店は家賃と人の費用が重く、売上が 1 割落ちれば利益はほぼ消える。
今の好調は、訪日客と円安という自分では動かせない追い風に乗っている。為替が円高に振れたり、国際情勢で客が減ったりすれば、権八の席は空く。その時、家賃と人の費用はそのまま残る。人手不足で最低賃金は毎年上がり、接客で売る店ほど人を減らせない。
資本の使い方も危うい。那須の複合施設は地方の大型投資で、回収の道筋は見えていない。米国も 3 店で 20 年以上やってきて、黒字は安定しない。いずれも創業者の判断で決まり、6 割を持つオーナーを止める仕組みは弱い。
還元は利益の 1 割に届かない配当だけだ。ためた利益は次の大型投資に回り、少数株主にはなかなか戻らない。創業者の後を誰が継ぐのかも示されていない。業態を作る目と店の格を保つ目が、人に宿っている会社の弱さだ。
どちらに重みを置いたか
店の力と利益の回復は認める。一方で、利益の振れと還元の細さを指摘する慎重な見方にも重みがある。中立は客数を横ばい、客単価を物価並みに置き、利益率は過去の山を少し下回る水準とした。確率は、訪日客の追い風が続く筋をやや楽観に置き、悲観側は家賃と人の費用が残る構造を見て厚めにした。オーナー支配は、溜まる現金の戻り方を半分にして一度だけ割り引いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,104 円115 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 92 円10 億円)。 今の値に割り戻すと 574 円60 億円、今との差 +29.8%、 期待の年率 +10.5%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,439 円254 億円 | 210 円22 億円 | +499.4% | +19.6% | 212 円22 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,657 円173 億円 | 125 円13 億円 | +303.2% | +15.0% | 356 円37 億円 |
| 中立 | 35% | 1,266 円132 億円 | 108 円11 億円 | +211.0% | +12.0% | 481 円50 億円 |
| やや悲観 | 24% | 455 円47 億円 | 50 円5 億円 | +14.3% | +1.3% | 121 円13 億円 |
| 悲観 | 13% | 194 円20 億円 | 0 円0 億円 | −56.1% | −7.9% | 25 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,104 円115 億円 | 92 円10 億円 | +170.6% | +10.5% | 1,196 円125 億円 |
今の株価時価総額 442 円46 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 訪日客と米国の拡大で、高単価の外食として育つ 利益 15 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 2,439 円254 億円
円安と日本食の人気で訪日客は増え続け、権八とラ・ボエムは東京と観光地で店を増やす。国内の客数は今の 1.12 倍、客単価は物価を上回って 1.45 倍になる。米国では Settecento の成功を足がかりに、ロサンゼルスの外にも店を広げ、客数は 1.8 倍になる。那須の施設も稼働が上がり、国内の利益率は 9% 台に乗る。営業利益は 25 億円前後まで伸び、ROE は 1 割を超える。配当も増え、オーナーが還元の方針を示す。高単価の日本の外食として、海外でも名前の知られた会社になる。後継の経営陣も育ち、業態を作る力が人から組織に移る。
- 国内の店舗(権八・ラ・ボエムほか、那須を含む):数量 255(来店客数(万人・年、推定))× 価格 7,250(客単価(円・名目、推定))→ 売上 185 億円・営業利益 18 億円。255 万人 × 客単価(今の 1.45 倍)、利益率 9.5%
- 米国(ロサンゼルスの 3 店):数量 38.7(来店客数(万人・年、推定))× 価格 16,800(客単価(円・名目、推定))→ 売上 65 億円・営業利益 5 億円。38.7 万人 × 客単価(今の 1.40 倍)、利益率 7%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.5 倍。全体の PER 15.55 倍、時価総額 233 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:訪日客の追い風が 10 年続き、米国で業態を広げる両方が要る。過去に何度も赤字に戻った会社なので確率は低い。
やや楽観 20% 店の力で値上げが通り、米国も黒字が定着する 利益 11 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 1,657 円173 億円
訪日客と住宅地の店がともに伸び、国内の客数は今の 1.05 倍になる。値上げは物価をやや上回って通り、客単価は 1.38 倍になる。米国は本社の経営陣が兼ねる体制で黒字が定着し、ロサンゼルスで 1〜2 店を足して客数は 1.35 倍になる。国内の利益率は 8% に上がる。営業利益は 16 億円前後、ROE は 8% 台になる。配当は少しずつ増えるが、利益の多くは店の改装と新しい業態に回る。那須の施設は赤字を脱し、優待の客も呼べる観光地の拠点になる。人の費用の上昇は、店の格を保った値上げで吸収できる。借入は返し終わり、財務は外食の中でも軽い部類に入る。
- 国内の店舗(権八・ラ・ボエムほか、那須を含む):数量 240(来店客数(万人・年、推定))× 価格 6,900(客単価(円・名目、推定))→ 売上 166 億円・営業利益 13 億円。240 万人 × 客単価(今の 1.38 倍)、利益率 8%
- 米国(ロサンゼルスの 3 店):数量 29.0(来店客数(万人・年、推定))× 価格 16,320(客単価(円・名目、推定))→ 売上 47 億円・営業利益 2 億円。29 万人 × 客単価(今の 1.36 倍)、利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.26 倍、時価総額 150 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年の既存店は 1 割強伸び、米国の赤字も縮んだ。今の勢いが続けば、利益率の小さな改善は十分にありうる。
中立 35% 客数は横ばい、客単価は物価並みで、利益率は 6% 台 利益 8 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,266 円132 億円
国内の客数は、訪日客の伸びと地方の店の弱さが打ち消し合い、ほぼ横ばいで続く。客単価は物価に連れて 1.34 倍に上がる。人件費と家賃も物価で上がり、国内の利益率は 7.25% と、過去の山を少し下回る水準にとどまる。米国は収支均衡の少し上で、客数は 1.15 倍になる。営業利益は 12 億円前後、ROE は 6〜7% で資本コストに届かない。配当は利益の 1〜2 割で、残りは店の改装と借入の返済に回る。自己資本は積み上がるが、その多くは事業の中に残る。創業者の後継が決まれば、資本の使い方が変わる余地はある。
- 国内の店舗(権八・ラ・ボエムほか、那須を含む):数量 228(来店客数(万人・年、推定))× 価格 6,700(客単価(円・名目、推定))→ 売上 153 億円・営業利益 11 億円。228 万人 × 客単価(今の 1.34 倍)、利益率 7.25%
- 米国(ロサンゼルスの 3 店):数量 24.7(来店客数(万人・年、推定))× 価格 16,080(客単価(円・名目、推定))→ 売上 40 億円・営業利益 1 億円。24.7 万人 × 客単価(今の 1.34 倍)、利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.26 倍、時価総額 109 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:外食の数量は人口で横ばいが基本で、訪日客の上振れと人件費の重さが打ち消し合う。中立に最大の確率を置く。
やや悲観 24% 訪日客の一服と人件費で、利益が薄くなる 利益 4 億円 · PER 8.6 倍 · 株価時価総額 455 円47 億円
円高と国際情勢で訪日客の伸びが止まり、権八の席に空きが出る。国内の客数は今の 0.92 倍に減り、値上げも物価を下回る。人件費と家賃は物価で上がり続け、国内の利益率は 4.5% に下がる。米国は人件費の高さで再び赤字になり、店を 1 つ閉じる。営業利益は 5 億円前後、ROE は 3% 台に落ちる。配当は細り、那須の施設は減損の候補になる。家賃という固定の約束が、売上の小さな減りを大きな利益の減りに変える構造が、ここで表に出る。会社は店を絞って守りに入るが、ためた利益は資本コストを稼がない。少数株主には、細い配当しか残らない。
- 国内の店舗(権八・ラ・ボエムほか、那須を含む):数量 210(来店客数(万人・年、推定))× 価格 6,400(客単価(円・名目、推定))→ 売上 134 億円・営業利益 6 億円。210 万人 × 客単価(今の 1.28 倍)、利益率 4.5%
- 米国(ロサンゼルスの 3 店):数量 19.4(来店客数(万人・年、推定))× 価格 15,000(客単価(円・名目、推定))→ 売上 29 億円・営業利益 −1 億円。19.4 万人 × 客単価(今の 1.25 倍)、利益率 −3%
倍率:ROE 3.2% が k 8% 以下なので、ためた利益は額面未満で、PER の上限は 1÷k=11.4 倍。利益が細る筋書きで ROE は k を大きく下回るので、1÷k の 7.5 割(上限の 75%=8.57 倍)。
確率:円高や国際情勢で訪日客が減る年は 10 年に一度ではすまない。人件費の上昇は確実に来るので、悲観側に厚めに置く。
悲観 13% 客が離れ、家賃と人の費用だけが残る 利益 −2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 194 円20 億円
不況と訪日客の急減が重なり、高単価の会食から客が離れる。国内の客数は今の 0.8 倍に落ち、客単価も物価に届かない。家賃は約束どおりに残り、人件費も最低賃金で下がらない。国内は営業赤字になり、米国は撤退する。那須の施設と不採算店で減損が出る。自己資本は赤字で削られ、配当は止まる。会社の価値は稼ぐ力でなく、自社で持つ土地と、閉店で戻る保証金に近づく。2000 年代後半から 2010 年代に続いた赤字の時代が、もう一度来る筋書きだ。借入の返済のために土地を手放す話も出て、創業者が会社を手元に戻す選択も現実味を帯びる。少数株主に残るものは少ない。
- 国内の店舗(権八・ラ・ボエムほか、那須を含む):数量 182(来店客数(万人・年、推定))× 価格 6,000(客単価(円・名目、推定))→ 売上 109 億円・営業利益 −1 億円。182 万人 × 客単価(今の 1.20 倍)、利益率 −1%
- 米国(ロサンゼルスの 3 店):数量 8.0(来店客数(万人・年、推定))× 価格 14,400(客単価(円・名目、推定))→ 売上 12 億円・営業利益 −1 億円。8 万人 × 客単価(今の 1.20 倍)、利益率 −8%(撤退の途中)
倍率:赤字の筋書きなので PBR とし、床は土地の売却と純負債(floor_assets)から、今の自己資本 56.1 億円の 0.36 倍にあたる 20 億円に置いた。
確率:過去 20 年で 12 期が赤字で、2020 年には自己資本の 4 割を失った。家賃が固定費として残る大型店の業態では、この筋を軽く見られない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の店舗(権八・ラ・ボエムほか、那須を含む)
和食・イタリアン・アジア料理などの高単価の大型レストランと、那須の宿泊付き複合施設。
| 数量来店客数(万人・年、推定) | 価格客単価(円・名目、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 228 | 5,000 | 114 | 10 |
| 10 年後 中立 | 228 | 6,700 | 153 | 11 |
取り方:2025 年 12 月期の国内売上 111.5 億円に、2026 年の既存店の伸びを足して約 114 億円。客単価を 5 千円と置き、客数を約 228 万人とした推定。利益は会社予想の営業利益 9.5 億円から米国の小さな赤字を除いた 9.6 億円(本社の費用を含む)。
米国(ロサンゼルスの 3 店)
ロサンゼルスのモンスーンカフェ系の店とイタリアンの Settecento。
| 数量来店客数(万人・年、推定) | 価格客単価(円・名目、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 21.5 | 12,000 | 26 | 0 |
| 10 年後 中立 | 24.7 | 16,080 | 40 | 1 |
取り方:2025 年 12 月期の米国売上 25.1 億円に小さな伸びを見て約 26 億円。客単価を 80 ドル(1.2 万円)と置き、客数を約 21.5 万人とした推定。営業損益は 2025 年の −0.6 億円(第三者の集計)から縮み、ほぼ収支均衡の −0.1 億円とした。
リスクと懸念
訪日客と為替
権八を中心に訪日客が売上を押し上げている。円高や国際情勢、感染症で訪日客が減れば、高単価の店から客が消える。2020 年に一度起きたことだ。
家賃という固定の約束
店の多くは借りた建物で、家賃は売上の 1 割前後とみられる。客が減っても家賃は残り、大型店ほど赤字に転じやすい。新リース会計基準で負債の形でも見えるようになる。
人の費用の上昇
最低賃金は毎年上がり、接客の質で売る店ほど人を減らしにくい。配膳ロボットのような省力化は大型の高級店に向かない。
大型投資の回収
那須パラダイスヴィレッジは土地を自社で持つ地方の大型施設で、回収の道筋はまだ見えない。外れれば減損と借入が残る。
米国事業
ロサンゼルスの 3 店は 20 年以上黒字が安定しない。2025 年は赤字が縮んだが、山火事や人件費で再び赤字に戻るおそれがある。
オーナー支配と後継
創業者が 6 割を持ち、投資と還元の判断を握る。後継の体制は示されておらず、業態を作る目が人に宿っている。
今後の分かれ目
- 既存店の売上の伸びが 2 年続けて物価を上回ったら
- 値決めの力が強いとみて、中立の利益率を上げる。
- 米国が 2 年続けて黒字になったら
- 米国の数量と利益率を上に見直し、やや楽観の確率を上げる。
- 配当性向や自社株買いの方針を数字で示したら
- 溜まる現金の戻り方を 0.75 以上に上げる。
- 訪日客が為替や国際情勢で 2 割以上減ったら
- 国内の客数を下に見直し、やや悲観の確率を上げる。
- 那須の施設で減損が出たら
- 大型投資の目利きを疑い、悲観側の確率を上げる。
- 創業者の持株の売却や後継の指名があったら
- 資本の使い方と還元の方針を見直す。
見ておくもの
- 既存店の売上と客数
- 訪日客の数と為替
- 米国の営業損益
- 那須パラダイスヴィレッジの稼働
- 人件費と家賃の比率
- 配当の方針と創業者の持株
倍率と資本コストの決め方
数量は国内と米国の来店客数(推定)で実質に置き、物価は客単価に入れた。今の値は 2026 年 12 月期の会社予想(売上 140 億円・営業利益 9.5 億円)と中間期の実績に合わせた。中立の営業利益率は 6.5% 前後で、過去 12 年の山 7.6% を下回る。倍率は k 8% と g の式から出し、今の PER や PBR は見ていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.43→15.55 倍・やや楽観 PER 9.14→14.26 倍・中立 PER 9.71→13.26 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。