結論
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)は、マルエツ、カスミ、いなげや、イオンフードスタイルを抱える首都圏特化の食品スーパーグループだ。筆者の結論は、本質価値は今の時価総額を大きく下回る、つまり割高というものだ。いちばんの理由は、売上が1兆円近いのに営業利益率が0.5%しかなく、稼ぐ力が資本に見合っていないことにある。
売上は伸びた。2026年2月期は営業収益が過去最高の9,638億円になった。だが営業利益は50億円、純損益は赤字だ。インフレで包材や原材料が上がり、値上げを通しきれなかった。会社は2030年度までに約100店を閉め、約50店を新設する。9月末で760店あり、約3割が厳しい状況だという。
再編の効果は見込める。2026年3月にはマックスバリュ関東などがイオンフードスタイルとして一つになり、調達や物流を束ねる。ただ、首都圏にはOKやトライアル(西友を取得)といった安売りの競合が入ってくる。筆者は、10年後の営業利益率を2%と置く中立でも、現在の水準の4倍だと見る。
自己資本は約2,000億円ある。しかし中立の10年後でも ROE は4%台にとどまり、資本コストの7.5%に届かない。ROE が資本コストを下回る会社の価値は、帳簿の自己資本より低くなる。今の時価総額がその自己資本の7割台に乗っていること自体が、すでに回復を前提にした値付けだと筆者は考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず事業の質を見る。食品スーパーは毎日使われる必需の事業で、需要は景気に強い。だが、強い事業とよい投資先は別だ。USMHのように、売上1兆円で営業利益が50億円では、オーナーに回る利益が小さすぎる。
次に、資本の使い方を見る。ここ数年は、いなげやや再編でグループは大きくなったが、利益は増えず、赤字に落ちた。規模を大きくしても、利益率が上がらなければ、株主の取り分は増えない。経営は閉店と再編で立て直そうとしているが、成果の確認はこれからだ。
安全域の目では、払う値段が事業の稼ぐ力に見合うかを問う。中立で10年後の純利益は約100億円、自己資本は2,300億円前後で、ROEは4%台にとどまる。この利益に資本コストに見合う倍率をかけても、今の時価総額に届かない。帳簿の自己資本に頼る見方もあるが、ROEが資本コスト未満の会社の自己資本は、帳簿どおりの値打ちを持たない。
筆者なら、この会社を持ち続けたいとは思わない。再建が成功する可能性はあるが、成功しても今の値段の水準に近づく程度で、失敗した時の下がり幅のほうが大きい。わからない事業ではないが、わかっている範囲では、安全域は取れない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、首都圏の食品スーパーの店頭だ。グループは、マルエツ(東京・埼玉・千葉・神奈川)、カスミ(茨城を中心に北関東)、いなげや(東京西部から神奈川)、イオンフードスタイル(旧マックスバリュ関東など)の4社で成り立つ。9月末の店舗数は760で、生鮮食品と総菜が売上のほぼ半分を占める。
利益の出方は薄い。仕入れた食品に少し乗せて売る商売なので、営業利益率は直近で0.5%、会社の予想でも今期は0.9%程度だ。値上げが少し通らないだけで利益が消える。逆に言えば、1店あたりの売上を数%積み増せれば、利益は何倍にも動く。
2026年3月に大きな再編があった。マックスバリュ関東、ダイエーの首都圏事業、イオンマーケットが一つの会社になり、126店、2030年度に売上2,400億円を目指す。費用削減の目標は年20〜24億円だ。連結の売上は2027年2月期に1兆1,300億円台になる計画で、同じ会社の数字が1年で2割近く膨らむのは、この再編の分が入るからだ。
PB(自社ブランド)の「トップバリュ」は、イオングループの共通の武器だ。会社は約2,900億円まで伸ばす目標を掲げる。PBは粗利が高く、調達も束ねやすい。ただ、売る場所が増えるだけでは利益は増えない。店舗の約3割が不採算に近く、そこを閉めて、新店に付け替える作業が今後の中心になる。
もう一つの特徴は、親会社のイオンが議決権の過半を持つことだ。上場はしているが、経営の方向はイオングループ全体の再編の中で決まる。店舗の多くは賃借で、家賃は売上が落ちても減らない固定の約束になる。
優良さと弱いところ
筆者の見立てでは、この会社の堀は浅い。首都圏には、マルエツやカスミと同じ品ぞろえの店がいくらでもあり、客は近い店、安い店へ動く。食品スーパーの堀は店の立地と生鮮の鮮度、PB の競争力だが、USMHはそのどれでも抜けた強みを示せていない。営業利益率は10年前でも2%前後で、直近は0.5%まで下がった。
資本効率は低い。過去10年のROEの中央値は2%台で、資本コストに届いた年がほぼない。自己資本は約2,000億円と厚く、財務は健全に見える。自己資本比率は5割を超え、純有利子負債は177億円と小さい。ただ、店舗の賃借が多く、家賃は借金と同じ固定の約束だ。借金が小さいからといって、見かけほど安全ではない。
良い点もある。親会社のイオンが共通の調達、物流、システム、PB を提供し、単独では持てない規模の利益を取りに行ける。いなげやの統合や、マックスバリュ関東の再編で、重複する本社機能と物流を整理する余地は大きい。
弱い点は、経営の実行力が試されている点だ。会社は2030年度までに約100店を閉鎖すると言い、新社長のもとで再建を急ぐ。インフレの影響が想定以上だったとの説明は、計画の甘さを自ら認めたようなものだ。バリュー投資家は、利益が出ていない事業に、計画だけでお金を払わない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
首都圏の食品スーパーは、人口が減らない唯一の大市場だ。しかし、競争は年々きびしくなっている。数量は店の数と客数で決まるが、東京圏は店が多く、客数は店の取り合いで決まる。10年で見れば、数量はほぼ横ばいか微減、価格は物価に沿って上がる、と置くのが妥当だ。
競合の顔ぶれが変わった。神奈川を地盤とするOKは、安さと簡素な店づくりで首都圏でも強い。トライアルホールディングスは、2025年7月に西友を約3,800億円で取得し、首都圏の店を手に入れた。ドン・キホーテのような安売り業態も近い領域に出てくる。ライフコーポレーション、ヤオコー、サミットといった同業の優良チェーンも、地域の一等地を押さえている。
その中で、イオングループは「連邦」から地域ごとの統合に舵を切った。USMHを首都圏の核に据え、ダイエーの首都圏事業とマックスバリュ関東を集め、調達と物流を束ねる。費用削減の目標は年20〜24億円と、売上9,600億円の会社にとっては0.2%強にすぎない。再編だけで利益率を2%台に戻すのは難しい。
物価と賃金の上昇も重い。最低賃金は年々上がり、パート・アルバイトの確保は難しい。包材、物流費、電気代も上がる。値上げを客数減なしで通せる店と、通せない店の差が、利益率の差になる。USMHの店の約3割が厳しいという事実は、その差がすでに出ていることを示している。
循環という点では、食品は景気で需要がほとんど揺れない。リーマン級の谷でも既存店売上の落ち込みは1〜2割にとどまる。この点では守りに強い業態だが、薄利なので、守りの強さが利益の安定には直結しない。
資本政策と M&A
資本政策の軸は、再編と店の入れ替えだ。2026年3月にマックスバリュ関東、ダイエーの首都圏事業、イオンマーケットを束ねたイオンフードスタイルが発足し、会社は約100店の閉鎖と約50店の新設を進める。投資は新店と既存店の改装、デジタル、設備の更新に回る。
還元は控えめだ。方針は配当性向30%を基本とする安定配当で、利益が小さい年は配当が利益を上回る。自社株買いの実績は乏しい。自己資本比率は50%以上を保つ方針で、借金で積極的に還元する会社ではない。
支配構造は、買収の見方に効く。イオンが議決権の過半(検索で確認できた数字は約51〜52%)を持つので、第三者の買収提案が成り立つ余地は小さい。一方で、イオン自身が完全子会社化に動く可能性は消えない。ただ、それは少数株主にとっての割安さの根拠にならない。本質価値を超える値段で買ってもらえる保証はないからだ。
新リース会計基準が2028年3月期から入る。賃借店舗が貸借対照表に載り、負債と総資産が膨らんで、自己資本比率は下がる。利益の中身は変わらないが、見かけの財務は弱く出る。
株主優待は、100株以上で半期ごとに100円券30枚〜300枚(長期保有は加算)。年9.7億円と見込む(会社の開示。2026年2月期の連結損益計算書の注記で株主優待引当金繰入額が9.68億円(前期7.56億円)。Y3 の「年3億円」は貸借対照表の残高の読み違い)。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立・やや楽観・楽観1.0、やや悲観0.75、悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
再編と閉店は、時間をかければ利益を押し上げる。いなげやの統合で重複する物流とシステムを整理し、マックスバリュ関東とダイエーの首都圏事業を一つにすれば、費用削減は年20〜24億円で終わらず、調達の共同化で粗利率そのものが改善する。
約3割の厳しい店を閉め、生鮮と総菜に強い約300坪の新店に入れ替えれば、1店あたりの売上と利益は上がる。PBの「トップバリュ」は約2,900億円まで伸ばす計画で、粗利の高いPBの比率が上がれば、薄い利益率を1ポイント動かせる。生鮮・総菜の構成比を46.6%から50%へ上げる目標も、粗利の改善に効く。
再建がうまくいけば、同業の優良スーパー(営業利益率で3%に届く会社もある)に近づく。営業利益率が3%に乗れば、利益は今の10倍近くになる。ここまで来れば、自己資本2,000億円の会社としてもまともなROEだ。
さらに、イオンが首都圏の食品スーパーを一つにまとめた事実は大きい。親会社は、ここで勝つつもりで再編を決めた。日本最大の小売グループが、調達・物流・デジタルを首都圏に集中すれば、安売りの競合にも対抗できる。売上は1兆円を超え、2030年度の1.16兆円の計画も見えてくる。
配当の下限もある。会社は自己資本比率50%以上と安定配当を掲げており、財務の余裕は大きい。再建が軌道に乗れば、時間がたつほど、市場は利益の回復を織り込んでいく。
慎重な見方
利益が出ない構造は、再編では直らない。営業利益率は10年前でも2%前後、リーマン後の好調な年でも2.6%だった。それが直近は0.5%まで下がった。インフレで包材や原材料が上がる中、値上げを通せないのは、客が安い店に動くからだ。
競合の質が変わった。OKは首都圏で出店を続け、トライアルは西友を取得して首都圏の店を持った。ドン・キホーテのような安売り業態も出てくる。USMHの店の約3割が厳しいという事実は、競争の結果であって、一時的な不調ではない。閉店は約100店と言うが、さらに増える余地が大きい。
再編の効果は小さい。費用削減は年20〜24億円で、売上9,600億円の0.2%強にすぎない。2026年2月期の赤字、2027年2月期の第1四半期の赤字は、再編の効果がまだ出ていないことを示す。会社は想定以上のインフレだったと説明したが、毎年そう言い続けることになりかねない。
資本の面でも、見かけほど強くない。借金は小さいが、賃借の家賃は固定で、売上が落ちても減らない。2028年3月期からは、新リース会計基準で負債が見かけ上膨らむ。ROEは10年後でも資本コストに届かず、自己資本2,000億円は帳簿どおりの値打ちを持たない。
親会社が過半を持つ以上、少数株主が経営に口を出す手段はない。イオンの都合で再編や取引が決まれば、少数株主に不利な形になる可能性もある。
どちらに重みを置いたか
筆者は慎重な見方が強いと判断した。強気の見方は再編の筋道が正しいことを突くが、利益率の回復の幅と速さを裏づける実績が足りない。直近の赤字や閉店の積み上げは、慎重な見方の根拠を強める。
ただし、再編で利益率が2%に戻る可能性は十分あり、中立を最も厚く置いた。確率はやや悲観に厚めに寄せ、構造的な負けの悲観にも1割強を残した。楽観は、PBの拡大と調達の統合が重なって利益率が3%に届く場合に限る。
結論として、中立でも10年後の価値が今の時価総額を大きく下回る。割高とはっきり言う。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 694 円1,438 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 167 円345 億円)。 今の値に割り戻すと 453 円938 億円、今との差 −41.1%、 期待の年率 +1.1%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 1,251 円2,593 億円 | 250 円517 億円 | +95.2% | +6.9% | 135 円280 億円 |
| やや楽観 | 22% | 981 円2,033 億円 | 206 円427 億円 | +54.4% | +4.4% | 261 円541 億円 |
| 中立 | 36% | 743 円1,539 億円 | 172 円357 億円 | +19.0% | +1.8% | 330 円683 億円 |
| やや悲観 | 22% | 362 円749 億円 | 132 円273 億円 | −35.8% | −4.3% | 109 円225 億円 |
| 悲観 | 11% | 169 円351 億円 | 72 円149 億円 | −68.7% | −11.0% | 27 円55 億円 |
| 加重平均 | 100% | 694 円1,438 億円 | 167 円345 億円 | +11.9% | +1.1% | 861 円1,784 億円 |
今の株価時価総額 769 円1,593 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 9% 再編が効き、首都圏の優良スーパーに近づく 利益 182 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,251 円2,593 億円
再編が想定以上に効く10年だ。イオンフードスタイルの統合で調達と物流が一本化し、約100店の閉鎖は3割の厳しい店の整理にとどまる。新店は生鮮と総菜に強い約300坪が中心となり、1店あたりの売上は物価を上回って伸びる。PBの比率は上がり、粗利の改善が営業利益率を3%まで押し上げる。
店舗数は740店まで増え、売上は1.5兆円に届く。安売りの競合に対しても、イオンの共通基盤と首都圏の店網の密度で守りきる。利益は今の水準の数倍になり、配当と自己資本の積み上げも進む。
ここまで来ても、自己資本は2,000億円台半ばまで増えるため、ROEは7%台にとどまり、資本コストの7.5%にようやく届く程度だ。親会社が首都圏の食品スーパーを同社に集め続けるなら、規模の経済が効きやすい展開になる。
- 食品スーパー(首都圏):数量 740(店舗数(店))× 価格 20(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 15,142 億円・営業利益 454 億円。営業利益率3.0%
倍率:事業の純利益 182 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 2,426 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:イオンの再編・PB・調達の統合が重なり、利益率が3%に届く必要がある。実現すれば大きいが、直近の赤字からの回復幅が大きく、確度は高くない。
やや楽観 22% 再編の成果が着実に出る 利益 140 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 981 円2,033 億円
再編の効果が着実に出る10年だ。閉店と新設の入れ替えで不採算店が減り、営業利益率は2.5%まで戻る。物価に沿った値上げは通り、1店あたりの売上は物価並みに伸びる。PBと生鮮・総菜の構成比の上昇が粗利を押し上げ、人件費の上昇は省力化の投資で吸収する。
店舗数は720店で、安売りの競合は来るが、地域の優良チェーンとして一定の客を守る。ただ、同業の優良スーパーの3%には届かない。利益は大きく回復するが、ROEは5%台で資本コストを下回り、倍率は低いまま残る。
この筋書きでは、再編を主導するイオンの共通基盤が一定の力を発揮する。ただ、首都圏の客は近さと安さで店を選び続けるため、利益率を会社の望む水準まで押し上げるには時間がかかる。再建の途中経過が見えるたびに、楽観と中立の間で評価が揺れる10年になる。
- 食品スーパー(首都圏):数量 720(店舗数(店))× 価格 20(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 14,306 億円・営業利益 358 億円。営業利益率2.5%
倍率:事業の純利益 140 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 1,866 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再編と閉店の成果が出て利益率が2.5%まで戻る想定。会社の計画の方向に沿うが、直近の赤字と閉店の積み上げから、強い確度は置けない。
中立 36% 中立:再編は進むが競争が利益率を抑える 利益 103 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 743 円1,539 億円
再編の成果は出るが、安売りの競合が利益率の回復を抑える10年だ。店舗数は閉店と新設の差し引きで700店になり、1店あたりの売上は物価の上昇から、客数の減りと値下げ競争の分を引いた水準で伸びる。営業利益率は2%まで戻るが、過去の好調な年の水準を超えない。
調達と物流の統合で費用は減り、PBの比率も上がる。一方、OKやトライアルとの価格競争で、値上げは思うように通らない。賃金と包材の上昇は続く。結果として、利益は今の数倍になるが、自己資本が厚く積み上がるためROEは4%台にとどまり、資本コストに届かない。配当は小さな利益に対して安定配当を維持し、還元は利益の半分ほどにとどまる。 還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年9.7億円×10年×1.0=97億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 食品スーパー(首都圏):数量 700(店舗数(店))× 価格 19(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 13,493 億円・営業利益 270 億円。営業利益率2.0%
倍率:事業の純利益 103 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 1,373 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再編の効果と、安売りの競合・賃金上昇の逆風の落としどころ。営業利益率は過去の好調な年並みの2%に戻る。
やや悲観 22% 安売りの競合に食われ、閉店が続く 利益 50 億円 · PER 10.7 倍 · 株価時価総額 362 円749 億円
再編の効果が競争に食われる10年だ。安売りの競合に客を取られ、閉店は約100店では終わらず、店舗数は660店まで減る。値上げは通りにくく、1店あたりの売上は物価の上昇を下回る。営業利益率は1%台前半にとどまり、少しの賃金上昇でも利益が消える。
再編で見込んだ費用削減は、値引きの原資に消える。閉店に伴う減損も出て、自己資本は伸びない。配当は維持するが、利益を大きく上回る年が続く。ROEは2%台で、資本コストの7.5%には遠い。
店舗網は一定の規模を保つので、事業が崩れるわけではない。ただ、客数の減りが続く中で、新店の投資の回収は遅れる。親会社のイオンは再編を続けるが、少数株主に回る果実は小さい。利益の回復を市場が織り込んだ分だけ、評価が下がる10年になる。
- 食品スーパー(首都圏):数量 660(店舗数(店))× 価格 18(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 12,135 億円・営業利益 146 億円。営業利益率1.2%
倍率:ROE 2.5%(純利益 ÷ 自己資本)が資本コスト 7.5% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER の上限は 1÷k = 13.3 倍。新しく投じるお金の稼ぎは低いので、上限の 8 割の 10.7 倍に置いた。
確率:OKやトライアルなど安売りの競合が強まり、再編の効果が値引きに消える想定。直近の赤字が続いている事実から、無視できない確率を置く。
悲観 11% 構造的に優良さを失う 利益 12 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 169 円351 億円
構造的に優良さを失う10年だ。安売りの競合と物流費・人件費の上昇に挟まれ、店舗数は600店まで縮小する。営業利益率は0.4%まで落ち、赤字の年も混じる。閉店と店舗の減損で自己資本は約1,500億円まで減る。
親会社のイオンが首都圏の食品スーパーの再編を続ける中でも、少数株主の取り分は小さい。配当は大幅に減らされ、稼ぐ力は小さいままだ。店舗の多くは賃借で、固定の家賃だけが残る。資産は残るが、売れる場所と時期が限られ、売却しても帳簿どおりの値にはならない。
この筋書きの構造は、競争で客が離れ、店あたりの売上が物価の上昇に追いつかないことだ。値上げが通らず、人件費や包材の上昇だけが利益を削る。会社は閉店で対応するが、閉店には減損と費用が伴い、立て直しの資金も食う。もう優良な食品スーパーとは呼べず、規模の割に稼げない会社として評価される。
- 食品スーパー(首都圏):数量 600(店舗数(店))× 価格 17(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 9,964 億円・営業利益 40 億円。営業利益率0.4%
倍率:利益はほぼ消え、稼ぐ力(事業の純利益 ÷ k 7.5%)は小さい。店舗は賃借が多く、売れる資産は棚卸資産や敷金、一部の保有不動産に限られ、売却には時間がかかり帳簿どおりにはならない。そこで今の自己資本 2,004 億円に PBR 0.175 倍を掛けて測った。減損で自己資本は 1,500 億円まで減るが、床は今の自己資本に掛けた。
確率:安売りの競合と固定費の上昇で、店舗網が縮み利益が消える複合の筋書き。親会社の再編が少数株主に不利に働く可能性も含める。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食品スーパー(首都圏)
マルエツ・カスミ・いなげや・イオンフードスタイルが運営する首都圏中心の食品スーパー。生鮮と総菜が売上の半分近くを占める。
| 数量店舗数(店) | 価格1店舗当たり年間営業収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 650 | 15 | 9,638 | 50 |
| 10 年後 中立 | 700 | 19 | 13,493 | 270 |
取り方:2026年2月期の営業収益9,638億円を、期首の店舗数約650店(9月末の760店から、2026年3月の再編で加わった分を引いて逆算した推定)で割り、1店当たりの営業収益を出した。10年の中立は、店舗数を閉店約100店・新設約50店・再編で加わる店で700店とし、1店当たり営業収益は物価1.34倍から客数の減りと値下げ競争の分を引いて1.30倍と置いた。
リスクと懸念
利益率が戻らない
営業利益率は直近0.5%で、会社の予想でも今期は1%に届かない。値上げが通らず、包材・物流・人件費が上がる状態が続けば、再編の効果は利益に出ない。計画の達成が毎年ずれ込む可能性が大きい。
安売りの競合の首都圏進出
OKは首都圏で出店を続け、トライアルは西友を取得して首都圏に店を持った。ドン・キホーテのような安売り業態も近い領域に出る。USMHの店の約3割が厳しい状況にある以上、客の流出が続けば閉店は100店では終わらない。
再編の実行リスク
2026年3月に、マックスバリュ関東、ダイエーの首都圏事業、イオンマーケットを一つにした。システム、物流、商品の統合は、移行期に費用と欠品を生みやすい。費用削減は年20〜24億円の目標だが、先行費用が上回る年が出る可能性がある。
親会社と少数株主の利害
イオンが議決権の過半を持つ。取引条件や再編の形はイオンの都合で決まりうる。少数株主が価格や条件に口を出す手段は限られ、再編の果実が少数株主に十分回らない可能性がある。
賃借の固定費と新リース会計
店舗の多くは賃借で、家賃は売上が落ちても減らない。2028年3月期から新リース会計基準で負債と総資産が膨らみ、自己資本比率は下がる。利益の中身は変わらないが、見かけの財務は弱く出る。
閉店と減損
約100店の閉鎖は、減損と閉店費用を伴う。2026年2月期の赤字にも、閉店の積み上げが響いた。閉店が計画より増えれば、自己資本も目減りする。
今後の分かれ目
- 月次の既存店売上で、客数が前年を上回る月が続いたら
- 再編後の店づくりが効いている証拠として、楽観・やや楽観の確率を上げる。利益率2.5%の筋書きが現実味を帯びる。
- 営業利益率が2027年2月期に会社予想の1%を下回ったら
- やや悲観・悲観に重みを移す。再編の効果が競争に食われているとみる。
- 閉鎖店舗が約100店の計画を超えて増えたら
- 減損による自己資本の目減りと、店舗網の縮小を織り込み、悲観の確率を上げる。
- OK・トライアルなど安売り業態が首都圏で大型出店を加速したら
- 値上げの余地が狭まるため、中立の営業利益率を下げ、やや悲観へ寄せる。
- イオンが USMH の完全子会社化に動いたら
- 少数株主への提示価格が本質価値を上回るかを確かめる。提示価格が市場の値付けだけで決まるなら、価値の根拠にはならない。
- PBの比率や生鮮・総菜の構成比が計画(総菜・生鮮50%)に届いたら
- 粗利の改善を確認でき、中立の利益率2%の確度を上げる。
見ておくもの
- 月次の既存店売上高・客数・客単価(マルエツ、カスミ、いなげや、イオンフードスタイル)
- 営業利益率と閉鎖店舗数・減損の進捗(2030年度までに約100店)
- PBの比率と生鮮・総菜の構成比(会社目標は50%)
- OK・トライアルなど安売り業態の首都圏の出店数
- イオンによる再編・出資比率の変更
倍率と資本コストの決め方
店舗数(実質)×1店当たり営業収益(名目)で売上を積んだ。期首の店舗数は約650店と推定(760店から再編で加わった分を引いて逆算)で、確認できた数字ではない。利益率は物価で動かさず、純利益は営業利益に過去の純利益÷営業利益(中央値0.33)に近い比を掛け、金利の上昇による利払いの変化(10年で−4億円)も含めた。自己資本は今の値に純利益の合計を足し、還元を引いて流した。ROEは結果だ。
ROEが資本コスト7.5%に届かない筋書きでは、PERの上限を1÷kとし、その7〜9割に置いた。悲観は今の自己資本に掛ける形で、過去のPBRの底からは置いていない。今の株価・同業の倍率は見ず、最後に比べただけだ。
新リース会計基準(2028年3月期から)で数字の形が変わるが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。再編で株式が発行されたかは確認できておらず、basis は下調べの値のままだ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→13.33 倍・やや楽観 PER 11.7→13.33 倍・中立 PER 11.3→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本7.5%に quality 0%を足した7.5%。必需の食品で循環は−0.5%だが、薄利で値下げ競争にさらされるため値決めは+0.5%。借金は小さく(純有利子負債は時価総額の約1割)0、寿命も普通の0とした。再編の実行や親会社との関係といった個別のリスクは k に足さず、筋書きの利益率と確率で表した。事業は赤字だが店舗網は残り、傾いているとまでは言わないので上乗せは置かない。