結論
ブロンコビリーは、炭焼きステーキとハンバーグの店を、全店直営で140店あまり構える名古屋発の外食会社だ。値上げをしても客が減らず、利益が急に伸びている。筆者は、事業の質は外食の中で上位にあるが、今の株価はその先まで払いすぎていると見る。結論は割高だ。
強みは三つある。立地を絞った堅い出店、自社工場で仕込む食材、そして自己資本比率が8割に近い財務だ。2025年秋の値上げとサラダバーの刷新が当たり、2026年12月期は営業利益が3割以上伸びる計画になっている。
弱みは天井の低さだ。ステーキは牛丼や回転寿司のように500店規模へは育ちにくい。牛肉の相場は会社が決められず、店は賃借なので家賃は売上が落ちても減らない。
中立の10年後は、ステーキ店が210店、とんかつなどが40店ほどになる。売上は600億円、純利益は44億円だ。これに利益の質に見合う12倍をつけると、時価総額は540億円前後になる。今の時価総額は870億円ほどで、中立でも届かない。
楽観でも1,000億円をわずかに超える程度だ。確率を掛けて今の価値に戻すと、本質価値は今の値段の3分の1ほどだ。値上げが通った今の好調は本物だが、10年先の利益にまで先に値が付いている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、ブロンコビリーは「守りの強いいい会社」だ。10年後も炭焼きステーキの店は残り、ブランドは今より強いかもしれない。借金がなく、立地に厳しい。経営者が無理な拡大をしない点は、長く持つ上で安心材料になる。
問題は、稼ぐ利益のうち、株主の手元に残る分がどれだけかだ。店を1つ出せば1億円台の投資が要り、その稼ぎは立地次第で決まる。利益の多くを新しい店に回しても、10年かけて店数は1.5倍程度にとどまる。出店の天井が低いので、利益の伸びも物価の上昇に少し上乗せした程度だ。
経営の資本の使い方は堅い。ただし、現金が積み上がる一方で、還元の方針は強くない。オーナーとして持ち続けたい会社か、と問われれば、答えは「値段次第」だ。
安全域の面では、悲観の姿が浅いのが救いだ。純現金を持ち、自己資本比率が高いので、構造的に負けても、会社が傾く可能性は低い。だが今の値段は、安全域どころか、中立の筋書きの1.6倍を払うことになる。
筆者が好むのは、いい会社を、適正な値段か、それより安く買うことだ。ブロンコビリーは前者の条件を満たすが、後者は満たさない。本質価値は、10年の筋書きを確率で重ねて測ると、今の時価総額の3分の1ほどだ。割高と判断する。
何で稼ぐ会社か
ブロンコビリーの稼ぎ方は単純だ。炭火で焼くステーキとハンバーグを、サラダバーとかまど炊きのご飯と組み合わせ、郊外のロードサイドで売る。客単価は高めで、家族の祝いの食事に選ばれる。全店が直営で、フランチャイズは使わない。
稼ぎの中心はステーキ・ハンバーグ業態の「ブロンコビリー」だ。2026年6月末で148店ある。東海が地盤で、関東・関西・九州へ広げている。出店は賃貸が基本で、自社物件は原則として持たない。創業期に店を広げすぎて苦しんだ反省から、立地を絞って出すのが社風になっている。
肉やサラダの材料は、子会社の松屋栄食品本舗など自社の工場で一元的に仕込む。2026年4月には、山口県の食肉加工会社、朝日ミートを子会社にした。西日本の店へ肉を供給する拠点を持つためだ。買収額は1億円に満たず、規模は小さい。
もう一つの業態が、とんかつの「かつ雅」「かつひろ」と居酒屋の「信貴や」だ。合わせて16店で、会社全体の売上の1割に届かない。かつ雅は2030年までに30店を目指す。まだ育成の段階で、利益への貢献は小さい。
会社は売上を業態別に開示していない。このため、ここではステーキ業態ととんかつ・居酒屋ほかの2つに分け、店数と1店当たり売上を筆者が見積もって積み上げた。ステーキ業態の営業利益率は、全社の約10%を少し上回ると置いている。
優良さと弱いところ
筆者は、この会社の品質を外食の中で上位と見る。一番の理由は、利益の出る立地にしか出さない規律がある点だ。閉店が少なく、損益分岐点の低い店を選んでいる。コロナ禍で赤字になった年も、損失は小さくて済んだ。
堀、つまり他社がまねできない強みは、ブランドと食材の仕込みにある。炭焼きの焼き方、サラダバーの質、かまど炊きのご飯は、一度来た客の記憶に残る。値上げのあとも客数が減らなかったのは、その証拠だ。ただし堀は広くない。ステーキ専業のいきなり!ステーキ、ステーキガスト、静岡のさわやかなど競合は多く、客を奪い合う。
資本の使い方は堅い。自己資本比率は約8割で、外食では異例の厚さだ。借金に頼らず、出店は営業の現金で賄う。創業家が社員にも自社株を贈り続けている点も、長く続ける姿勢を示している。
弱みは三つある。第一に、牛肉の仕入れ値は相場と為替で決まり、会社は動かせない。第二に、店数の伸びが遅く、成長が緩やかだ。第三に、ステーキは単価の高い外食で、景気が冷えると客の財布が真っ先に締まる。
まとめると、守りは強いが、攻めの天井は低い。バリュー投資の目では、いい会社だが高く買うべき会社ではない。値段が事業の質を超えているかどうかが問題になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食市場は、人口が減る日本で数量の天井がはっきり見えている。国内の店数は飽和に近づき、各社は海外や新しい業態に成長の場を求めている。ブロンコビリーは国内の郊外ロードサイドで、静かに出店を続ける道を選んだ。
ステーキ・ハンバーグの専業は競合が少なく見えるが、規模はどこも小さい。いきなり!ステーキは約170店、ステーキガストは約70店、やっぱりステーキは約75店だ。静岡のさわやかは35店で売上が約100億円ある。500店級に育った牛丼や回転寿司とは、市場の広がりが違う。ブロンコビリーの150店近くは、ステーキ専業としては最大級の部類に入る。
一方で、物価が毎年3%上がる世界では、値上げが通る店が強い。ブロンコビリーは2025年秋の値上げのあとも客数が減らなかった。これは良い兆しだが、値上げの余地は無限ではない。最低賃金の上昇とアルバイト不足で、人件費は毎年3〜5%の勢いで重くなる。
原材料の側では、牛肉の国際相場が高止まりしやすい。円安が続けば仕入れが重くなる。自社工場で仕込む仕組みは、この波を和らげるが、消すことはできない。
景気の谷では、ステーキは外食の中でも客足が落ちやすい。だが、コロナ後に見たとおり、客の戻りも早い。10年を通して筆者が見るのは、人件費の上昇を値上げと自動化で吸収し続けられるか、という一点だ。
資本政策と M&A
資本政策は堅実で、還元は控えめだ。純現金は2020年以降、54億円から88億円まで積み上がった。配当は増えているが、自社株買いの実績は見当たらない。2026年は上方修正と同時に増配し、7月に1株を2株に分けた。
筆頭株主はストロングウィルで、約27%を持つ。創業家の竹市克弘氏は会長で、2025年4月からは阪口信貴氏が社長に就いた。大株主が厚いため、買収や再編で株主が入れ替わる可能性は低いと見る。
M&Aは小さい。かつ雅を運営するレ・ヴァンを子会社に加え、2026年に朝日ミートを加えた。どちらも事業を補う買収で、金額は小さい。数百億円規模の大型買収に動けば評価は変わるが、今の資本の使い方からは考えにくい。
筆者が気にしているのは、現金が積み上がる速さだ。現金が10年で数十億円増えても、使い道が見つからないままなら、株主のものとして働かない。出店と食品事業に使うのか、還元に回すのか。その方針が見えるかどうかが評価の分かれ目になる。
新リース会計基準が2028年12月期から入る。店の家賃が貸借対照表に載り、自己資本比率は下がって見える。実態は変わらないが、見た目の財務の強さは今より弱く映る。
株主優待は年およそ 0.3 億円(推定)で、利益から引かれ済み。還元に足しても 1 億円に届かず、差は 1 ポイント未満のため数字は変えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方は、値上げが通ったことが事業の質の証明だと言う。2025年11月に主力商品を値上げしたのに、客数は減らず、既存店売上は2026年1〜6月で7.7%伸びた。客単価と客数が同時に上がるのは、ブランドが強い証拠だ。
サラダバーを「ブロンコビュッフェ」へ、ドリンクバーを「プレミアムドリンクバー」へ作り変えた。これが来店の動機を強めた。売上総利益率も66.5%から68.2%へ上がり、営業利益率は11.7%に改善した。
この勢いが続けば、10年で店は250店に近づくという。関東・関西・九州の出店は、まだ空白地帯が多い。朝日ミートで西日本の肉の供給網を整えたので、遠い地域でも品質と原価を保てる。とんかつのかつ雅も、2030年に30店を目指す。
財務は鉄壁だ。自己資本比率は約8割、現金は100億円を超える。景気が崩れても、攻めに回れる体力がある。海外への展開が見えてくれば、国内の天井という弱みも崩せる。
こうした条件が揃えば、営業利益率は14%、純利益は70億円近くに伸びる。ROEも高くなり、利益の質に見合う倍率も上がる。強気の見方では、2026年の好調は一時的な上振れではなく、新しい水準の入口だ。
慎重な見方
慎重な見方は、今の好調を値上げの果実と見て、その持続を疑う。2025年の値上げで客単価は上がったが、物価が毎年3%ずつ上がる世界では、一度の値上げは次のコスト増で消える。牛肉と人件費は止まらない。
ステーキは外食の中でも客の財布が先に締まる業態だ。景気が冷えれば、家族の祝いの外食は削られる。2020年の営業利益率は0.9%、2021年は営業赤字だった。景気の谷で利益がほぼ消えた事実は、10年の間に同じことが起こりうると教えている。
店数の天井も低い。ステーキ専業で500店級に育った会社は国内にない。出店先が関東・関西・九州に広がるほど、ブランドの知名度が低く、1店当たり売上が落ちやすい。新店の採算は、地元の東海より悪くなる可能性が高い。
家賃も重い。店は借りているので、売上が2割落ちても家賃はそのままだ。固定費の重さが、悲観の利益率を一気に押し下げる。新リース会計基準で見かけの財務も弱くなる。
今の株価が示す利益は、計画の2026年の水準を何十年も続ける前提に近い。10年後の利益が44億円でも、そこに今の高い倍率が残る保証はない。慎重な見方は、事業の質は認めても、値段に安全域がないと言う。
どちらに重みを置いたか
筆者は慎重な見方のほうが強いと見る。事業の質では強気が正しい。だが値段の議論では、10年後の利益が44億円ほどに伸びても、今の時価総額に届かない。計算が割高を示す以上、その結論を避けない。
確率は、中立に3分の1、楽観側に3割強、悲観側に3分の1を置いた。強気の根拠である値上げの成功は、まだ1年弱の実績だ。これを10年に延ばすのは重すぎる。一方で自己資本の厚さが、悲観の底を浅くしている。そのため悲観の確率は広げすぎず、やや悲観と悲観に分けて置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 2,234 円666 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 308 円92 億円)。 今の値に割り戻すと 1,326 円395 億円、今との差 −54.9%、 期待の年率 −1.5%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,154 円1,238 億円 | 436 円130 億円 | +56.0% | +4.5% | 459 円137 億円 |
| やや楽観 | 24% | 3,262 円972 億円 | 386 円115 億円 | +23.9% | +2.2% | 875 円261 億円 |
| 中立 | 33% | 2,570 円766 億円 | 336 円100 億円 | −1.3% | −0.1% | 959 円286 億円 |
| やや悲観 | 22% | 736 円219 億円 | 235 円70 億円 | −67.0% | −10.5% | 214 円64 億円 |
| 悲観 | 11% | 232 円69 億円 | 84 円25 億円 | −89.3% | −20.0% | 35 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,234 円666 億円 | 308 円92 億円 | −13.6% | −1.5% | 2,542 円757 億円 |
今の株価時価総額 2,943 円877 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 10% 西日本・関東で定着し、値上げ後も客が増え続ける 利益 68 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 4,154 円1,238 億円
ブロンコビリーが関東・関西・九州で東海並みの人気を得る筋書きだ。年10店ペースの出店が10年続き、ステーキ業態は250店に近づく。値上げと客数の増加が同時に進み、1店当たり売上は物価の伸びを上回る。
朝日ミートなどの食肉加工の自社網が、西日本での原価と品質を安定させる。かつ雅は30店を超えて55店ほどになり、とんかつ業態も黒字に育つ。
営業利益率は14%まで上がり、純利益は70億円近くになる。自己資本は厚いまま、配当を少しずつ増やす。ここまでの成功は、出店の失敗が少なく、牛肉相場にも恵まれたときにしか起こらない。
- ステーキ・ハンバーグ(ブロンコビリー):数量 250(店舗数(店))× 価格 2.65(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 662 億円・営業利益 93 億円。営業利益率14%。東海以外でも1店当たり売上が保てる
- とんかつ・居酒屋ほか(かつ雅・かつひろ・信貴や):数量 55.0(店舗数(店))× 価格 2.07(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 114 億円・営業利益 11 億円。55店・営業利益率10%
倍率:事業の純利益 68 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 17.86 倍、時価総額 1,230 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げの成功が1年弱の実績にとどまり、関東・関西・九州の出店が連続して当たるうえ、牛肉相場にも恵まれる必要がある。条件が重なる確率を1割に置いた。
やや楽観 24% 出店が年10店近く続き、利益率が高いまま定着 利益 55 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 3,262 円972 億円
出店が年8店ほど続き、ステーキ業態は230店まで増える。値上げは物価並みに通り、客数も大きく崩れない。営業利益率は13%で、今の計画水準の少し上に落ち着く。
かつ雅などのとんかつ業態は48店になり、食品製造も育って、会社全体で利益を押し上げる。純利益は55億円ほどになる。
強気の筋書きほどの勢いはない。だが、立地を絞る社風が崩れず、牛肉と人件費の上昇も値上げでほぼ吸収できる姿だ。
自己資本比率は高いまま、現金も増える。配当は少しずつ上がり、新店の資金は営業の現金で賄える。現実的な上振れと見る。
朝日ミートの肉の供給が西日本の新店の原価を支え、サラダバーの刷新で来店の動機も保たれる。客の記憶に残る店づくりが、新しい地域でも通用する姿だ。
- ステーキ・ハンバーグ(ブロンコビリー):数量 230(店舗数(店))× 価格 2.57(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 592 億円・営業利益 77 億円。営業利益率13%
- とんかつ・居酒屋ほか(かつ雅・かつひろ・信貴や):数量 48.0(店舗数(店))× 価格 2.01(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 97 億円・営業利益 9 億円。48店・9%
倍率:事業の純利益 55 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 17.2 倍、時価総額 961 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:現在の好調と出店の堅実さが続く現実的な上振れ。景気が崩れない限り十分ありうるので、楽観より厚く置く。
中立 33% 中立:年7店ほどの出店と値上げで、利益は物価に少し上乗せして伸びる 利益 44 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 2,570 円766 億円
出店は年7店ほどのペースを保ち、ステーキ業態は210店、とんかつ業態は40店になる。値上げは物価に沿って通るが、人口の減少と新しい地域の知名度の低さで、1店当たりの客数は少し細る。1店当たり売上は10年で3割増にとどまる。
ステーキ業態の営業利益率は12%、全社では10%台になる。今の計画の11.7%よりわずかに高いのは、規模の効果と工場の稼働率が上がるためだ。人件費と牛肉の上昇は、値上げと自動化でほぼ吸収する。
売上は600億円、営業利益は63億円、純利益は44億円になる。現金は積み上がり、配当はゆっくり増える。事業の質は保たれるが、ステーキの市場が小さいため、伸びは物価の少し上までに収まる。
- ステーキ・ハンバーグ(ブロンコビリー):数量 210(店舗数(店))× 価格 2.50(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 524 億円・営業利益 63 億円。営業利益率12%(規模と工場の稼働で今の計画 11.7% をわずかに上回る程度)
- とんかつ・居酒屋ほか(かつ雅・かつひろ・信貴や):数量 40.0(店舗数(店))× 価格 1.95(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 78 億円・営業利益 6 億円。40店・8%
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 16.65 倍、時価総額 748 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げが物価に沿って通り、出店が年7店ほど続く中心の筋書き。ステーキ業態の天井の低さが成長を縛る点を織り込んだ。
やや悲観 22% 新しい地域の採算が落ち、人件費と牛肉高を吸収しきれない 利益 22 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 736 円219 億円
新しい地域の店で、東海のような客が来ない。知名度が低く、1店当たり売上が低いまま、家賃と人件費だけがかかる。出店は年5店ほどに鈍り、ステーキ業態は175店で止まる。
値上げは通りにくくなる。物価が毎年3%上がる中で、客はステーキを減らす。10年の売上の伸びは物価に届かず、営業利益率は8%に下がる。
とんかつ業態も25店にとどまる。純利益は22億円と、今の水準から横ばいだ。ためた現金で配当は保つが、ROEは資本コストを下回る。ブランドは残るが、もう優良とは呼べない姿だ。
東海の既存店は堅く、会社が傾くことはない。ただ、成長の柱だった新地域の出店が重荷に変わり、経営は守りに回る。
- ステーキ・ハンバーグ(ブロンコビリー):数量 175(店舗数(店))× 価格 2.40(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 420 億円・営業利益 34 億円。営業利益率8%。新店の採算が落ち、既存店も弱る
- とんかつ・居酒屋ほか(かつ雅・かつひろ・信貴や):数量 25.0(店舗数(店))× 価格 1.80(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 45 億円・営業利益 2 億円。25店・4%
倍率:ROE 約6%と資本コスト k 7.25% を下回る。ためた利益は額面に満たない価値のため、PER は 1÷k(12.8倍)より低く置く。RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)から出る倍率の下に8.5倍を置いた。余った現金は谷で食う前提で 0.75 倍とした。
確率:新しい地域の採算悪化と人件費・牛肉の上昇は、外食の構造として起こりやすい。値上げの持続が1年弱の実績しかない点も合わせ、やや厚めに置く。
悲観 11% 値上げが効かなくなり、構造的に稼ぐ力を失う 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 232 円69 億円
値上げが効かなくなり、牛肉と人件費の上昇だけが重くのしかかる。客は安いファミリーレストランや中食へ流れる。新しい地域の店は赤字になり、閉店が相次ぐ。
ステーキ業態は135店まで減り、とんかつ業態は10店に縮む。家賃は固定費として残るので、売上が落ちても利益が戻らない。営業利益は数億円まで細り、純利益はほぼゼロになる。
自己資本比率は高いため、会社は傾かない。だが稼ぐ力はほとんど消え、価値は純現金と店の設備など、売れる資産の水準まで下がる。構造的に負けた姿だ。
創業家は守りを固め、出店を止めて店を絞る。立て直しには数年かかり、その間の配当は最低限に抑えられる。
- ステーキ・ハンバーグ(ブロンコビリー):数量 135(店舗数(店))× 価格 2.21(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 298 億円・営業利益 6 億円。営業利益率2%。家賃・人件費の固定費が残る
- とんかつ・居酒屋ほか(かつ雅・かつひろ・信貴や):数量 10.0(店舗数(店))× 価格 1.73(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 −1 億円。10店に縮小・赤字
倍率:稼ぐ力(事業の純利益 2 億円 ÷ k)はほぼ消える。価値は純現金と売れる資産の税後に近い水準で測り、今の自己資本 216 億円に 0.32 倍を掛けた。店は賃借で、厨房設備や工場の売却益は小さく、床は低めに置いた。
確率:自己資本が厚く、倒産に近い負け方は考えにくい。構造的に稼ぐ力を失う筋書きは、同じ領域の会社と同じ1割前後に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ステーキ・ハンバーグ(ブロンコビリー)
炭焼きステーキとハンバーグ、サラダバーを全店直営で出す主力業態。東海を地盤に関東・関西・九州へ広げる。
| 数量店舗数(店) | 価格1店当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 146 | 1.92 | 280 | 31 |
| 10 年後 中立 | 210 | 2.50 | 524 | 63 |
取り方:会社は業態別の売上を開示しない。2025年末のグループ161店のうちステーキ業態を146店とみて、全社売上302億円からとんかつ・居酒屋ほかの約22億円を引いた約280億円を割った。営業利益率は全社の9.7%より少し高い11%と推定。先の1店当たり売上は、客単価が物価で10年1.34倍になり、客数は人口減と新しい地域の知名度の低さで少し細るとみて、中立は1.30倍とした。
とんかつ・居酒屋ほか(かつ雅・かつひろ・信貴や)
とんかつ業態と居酒屋、食品製造の外販を合わせた育成中の業態。かつ雅は2030年に30店を目指す。
| 数量店舗数(店) | 価格1店当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 15.0 | 1.50 | 23 | 1 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 1.95 | 78 | 6 |
取り方:グループ161店のうちステーキ業態を除く約15店に、1店当たり売上1.5億円を置いた(とんかつ店は小型で、新店が多く、推定)。営業利益率は新店の立ち上がりで4%と推定。価格は物価に沿うが、小型店中心のため中立で10年1.30倍とした。 数量は実物(店数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
リスクと懸念
牛肉の仕入れ値は会社が決められない
ステーキの原価は牛肉の国際相場と為替に左右される。自社工場で仕込む仕組みは波を和らげるが、仕入れ値そのものは変えられない。値上げが通らなくなった年は、原価率の悪化がそのまま営業利益率を削る。
新しい地域で東海のような客が来ない
関東・関西・九州への出店が成長の柱だ。ただし知名度の低い地域では、1店当たり売上が東海より低くなりうる。立地を絞る社風があっても、出店が増えるほど外れも増える。
値上げの持続はまだ1年弱の実績
2025年11月の値上げ後も客数は減らなかったが、実績は1年弱だ。物価が毎年3%上がる世界では、一度の値上げは次のコスト増で消える。値上げを続けるたびに客が離れるかが試される。
家賃が固定費として残る
出店は賃貸が基本だ。売上が落ちても家賃は減らないので、景気の谷では利益が一気に消える。2020〜21年に営業利益がほぼゼロになった事実が示している。新リース会計基準で見かけの財務の強さも下がる。
人件費とアルバイト不足
最低賃金の上昇が続き、全店直営のため人件費の負担が大きい。サラダバーの運営や炭焼きは手間が要り、自動化しにくい。10年で人件費が値上げを上回ると、利益率が構造的に下がる。
現金の使い道が見えない
純現金が積み上がる一方、自社株買いの実績はなく、還元の方針も強くない。現金が使われないまま増え続けると、資本効率が下がり、ROEが低く出る。
社長交代後の体制
2025年4月に阪口信貴氏が社長になり、創業家の竹市克弘氏は会長として残る。役割分担は整ったとみるが、新体制の判断力は、これからの出店と買収で試される。
今後の分かれ目
- 既存店売上が前年比100%を割り、客数が減り始める
- 値上げの効果が尽き、中立から、やや悲観へ筋書きが移る。利益率は11%台から8%台まで下がりうる。
- 関東・関西・九州の新店が、東海の店と同じ1店当たり売上を出す
- 出店が年10店に加速でき、楽観に近づく。ステーキ業態が250店に近づく。
- 牛肉相場が高止まりし、仕入れ原価率が2ポイント以上悪化する
- 営業利益率が10%を割り、中立の利益が1〜2割下がる。値上げの余地が試される。
- 自社株買いや増配を明確に打ち出す
- 余った現金が株主のものとして働き、資本効率が上がる。戻り方の評価が0.5から上に動く。
- 数百億円規模の大型買収に踏み出す
- 筋書きが大きく変わる。買収が成功すれば楽観に、失敗すれば自己資本の厚さが削られ、やや悲観に近づく。
- 景気が冷え込み、外食の客足が2〜3割落ちる
- 家賃が固定費として残り、営業利益がほぼ消える。ただし自己資本が厚いので会社は傾かず、数年で戻る。
見ておくもの
- ステーキ業態の既存店売上高と客数・客単価の月次(前年比100%を保てるか)
- 新規出店数と、新しい地域の店の1店当たり売上(東海との差)
- 売上総利益率(牛肉原価)と人件費率の推移
- 純現金の積み上がりと、配当・自社株買いの方針
- かつ雅などとんかつ業態の店数と採算、朝日ミートの貢献
倍率と資本コストの決め方
ステーキ業態ととんかつ・居酒屋ほかの2つに分け、店数(実質)×1店当たり売上(名目)で積んだ。自己資本は今の値に期間の純利益を足して還元を引いて流し、ROEは結果として出した。倍率は RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)と g 4.0% から出した正当化 PER の約8割に置き、悲観は稼ぐ力と純現金・売れる資産で置いた。今の株価や過去・同業の倍率には寄せていない。新リース会計基準(2028年12月期)では営業利益と負債の形が変わるが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→17.86 倍・やや楽観 PER 13→17.2 倍・中立 PER 12→16.65 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.3% を足して k 7.25%。事業は黒字で傾いておらず、上乗せ(extra)は置かない。創業家の持ち株や承継の問題は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.80% → 7.25%。