結論
ゲンキーは、福井・石川・岐阜・愛知・滋賀の 5 県で 534 店を持つ、食品に強いドラッグストアだ。筆者の結論はやや割安で、いちばんの理由は、店を増やし続けても稼ぐ力が落ちにくい点にある。
売上の約 7 割は食品だ。薬と化粧品の店というより、毎日の買い物をする安売りの店に近い。標準の店は約 300 坪のロードサイド店で、同じ形を続けて出す。2026 年 6 月期は 57 店を出し、売上は 2,206 億円、営業利益は 110 億円になった。来期は 75 店を出す計画だ。
利益率は 5% 前後と、ドラッグストアでは低めだ。だが毎日安く売る方針で客数が増え、同業のように調剤の報酬改定に利益を握られない。10 年後は店が約 900 店、純利益は 170 億円前後になると見る。資本コストで今に割り戻すと、今の時価総額を 2 割ほど上回る。
気がかりは二つある。出店は借入が支え、店の家賃も固定の約束になる。同業の大手が同じ郊外に出てくれば、安売り競争で利益率が崩れる。安全域は厚くない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、良い会社だが、値段に安全域が厚くない、というのが筆者の見立てだ。
事業の質は悪くない。出店の型は単純で、ローコスト運営が利益率を支えている。食品中心なので、景気の谷でも売上は崩れない。創業者が長く率いて、利益は着実に増えてきた。
気になるのは、再投資の重さだ。年 200 億円前後を店に投じ、純利益の 2〜3 倍の金額になる。利益のほとんどは店に消え、株主が自由に使えるお金はまだ少ない。借入も増えている。出店を止めれば利益は残るが、止める判断は創業者の手にある。
店の家賃も固定の約束だ。額は開示されていないが、筆者の推定では年 40 億円前後で、営業利益の 3 分の 1 にあたる。景気が落ちても下がらない。
10 年後の純利益は、中立で約 170 億円と見る。資本コスト 7% 台で今に割り戻すと、今の時価総額より 2 割ほど高い。ただ、悲観の筋書きでは大きく下がる。割安と言える差はあるが、安全域は厚くない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、R 店と呼ぶ約 300 坪の標準店だ。2026 年 6 月末で 506 店あり、売上の約 9 割を稼ぐ。ほかに旧来型の大型店が 28 店残るが、R 店への切り替えが進み、売上の 1 割にとどまる。店は福井 92、石川 73、岐阜 145、愛知 184、滋賀 40 の 5 県に集まっている。
売上の約 7 割は食品で、青果や精肉などの生鮮も増やしている。医薬品は売上の 1 割にも届かない。調剤の比重が小さく、国の報酬改定に利益を握られにくい。代わりに「毎日安い」価格で客を呼ぶ。2026 年 6 月期の前半は、客数が 4% 台で増え、一点単価も物価高で上がった。
つくりは出店の型にある。同じ広さ・同じ売場の店を、同じ地域に集中して出す。物流センターが近く、運ぶ距離が短い。配送の効率が上がり、生鮮の鮮度も保てる。この密度の高い出店で、地域の客を押さえる。
年間の出店は 50〜75 店と速い。2026 年 6 月期の設備投資は約 208 億円で、大半が店と物流に回った。創業者の藤永賢一氏が社長を務め、一族の資産管理会社が株の約 4 割を持つ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、出店の型とローコスト運営にある。標準店は広さも売場も同じで、設計・出店・物流が流れ作業になっている。同じ地域に何店も出すので、運ぶ距離が短く、広告も効く。食品を安く売る力は、この仕組みから出ている。
利益率は 5% 前後で、ドラッグストアの中では高くない。だが過去 9 年、ROE は 10% 台を保ち、赤字の年はない。直近は、営業利益率が 3% 台から 5% に上がった。店が増えるほど、仕入れと物流の規模が効いてきた証拠だ。
一方で、堀は広くない。食品の安売りは、ツルハ・ウエルシア・スギ・コスモス薬品が同じ土俵で戦える。ロードサイドの 300 坪は、誰でもまねできる形だ。立地を押さえた先行者の利益はあるが、それが 10 年残るとは限らない。
弱点は資金だ。年 200 億円前後の投資が続き、純有利子負債は 300 億円を超えた。利益で返せるうちはよいが、出店を止められない構造でもある。薬剤師と登録販売者の確保も、人件費を押し上げる。経営は創業者が長く率いて、出店の判断は速い。速さが強みでもあり、行き過ぎた時の傷にもなる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界は成熟しながら再編に向かっている。ドラッグストアの売上は 2024 年度に初めて 10 兆円を超えた。伸びを支えたのは食品で、前年より 13% 増えた。店は全国で 2.4 万店近くあり、数の面では飽和に近い。
再編の主役はイオンだ。2026 年 1 月にツルハを連結子会社にし、ウエルシアと合わせて売上 2 兆円規模の連合ができた。調達と物流を束ねて、価格で攻める。ゲンキーの地元でも、愛知・岐阜はツルハ、ウエルシア、スギが強い。北陸にはクスリのアオキもいる。
競争の相手は、同業だけではない。食品が売上の 7 割を占める以上、バローやドミーなどの食品スーパーとも客を取り合う。コスモス薬品は低価格で全国に広げている。参入のしやすさが、この領域の最大の弱みだ。
物価の面では、食品の値上がりが客単価を押し上げている。米の高騰もあった。この追い風は一巡し、数量の伸びは人口減で細る。地方は特に人が減る。それでもドラッグストアは、小売の中では強い。生活必需品が中心で、景気の谷でも売上は 1 割も落ちない。
10 年の負け筋は、食品の安売り競争が利益を削り、店の食い合いが激しくなる形だ。調剤報酬の影響は他社より小さいが、ネット販売の規制緩和や、食品スーパーの値下げは直接の脅威になる。
資本政策と M&A
還元は薄い。配当の総額は年 4 億円ほどで、利益の約 5% だ。利益のほとんどを出店に回している。自社株買いの実績は見当たらない。筆者は、この選択を今は合理的と見る。新店の稼ぎが資本コストを上回るうちは、配当より店に使うほうが株主のためになる。
資金は借入が支える。純有利子負債は約 316 億円で、時価総額の 3 割だ。2026 年 6 月期の設備投資は約 208 億円と、純利益の 2.6 倍に上る。借入金は総資産の約 27% だ。金利は上がる方向なので、10 年後には利払いが年 8 億円ほど増える見込みだ。
M&A の実績はほとんどない。2016 年に持株会社になったとき、業態を超えた M&A も目的に挙げたが、実際の買収は確認できない。成長は自前の出店で通している。創業者の一族の資産管理会社が約 4 割を持つので、敵対的な買収は考えにくい。再編の波の中で売り手にも買い手にもなりうるが、一族が動かなければ起こらない。
点検済み(2026-10-19):中立の営業利益率 5.2% は今と同じ、出店は会社の年 50 店超より低いこと、起点が山でないことを確かめた。金利上昇による利払いの増加(約 8 億)は純利益の約 3% で、差への影響は 1 点未満。穴なし。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
稼ぐ力は、まだ伸びる途中だ。食品を毎日安く売る店は、物価高の中でも客が離れない。2026 年 6 月期は営業利益が 14% 増え、利益率は 5% に乗った。店が増えるほど仕入れと物流の規模が効いている。
店を出す余地は大きい。福井は 8,000 人に 1 店の密度だが、愛知は 4 万人に 1 店だ。福井並みとは言わないまでも、愛知だけで数百店は入る。三重・静岡・関西の隣県はまだ手つかずだ。標準の店は同じ形で、新店の立ち上がりは早い。
調剤の比重が小さいことは強みだ。報酬改定で業界が揺れても、ゲンキーの利益は動かない。イオン連合が調達を束ねても、郊外の 300 坪で地域の客を押さえる仕組みは変わらない。
借入は出店のためで、利益が追いつけば返せる。創業者の一族が株の 4 割を持ち、長期の目で店を出している。10 年で店が倍になり、利益が 3 倍になる道は、実績の延長にある。市場はその伸びを、まだ織り込み切っていない。
慎重な見方
食品の安売りは、誰でもまねできる。ツルハ・ウエルシア・スギ・コスモス薬品が、同じ郊外に同じ形で出てくる。堀と呼べるものは、出店を急ぐ速さだけだ。速さは、行き過ぎれば傷になる。
店が増えるほど、新店は既存店の客を食う。福井・石川・岐阜は密度が高く、これ以上は伸びない。愛知は人が多いが、イオン連合と競う主戦場だ。人件費は毎年上がり、利益率は 5% 台で止まる。薄利なので、少しの粗利の悪化で利益が大きく削られる。
資金の面でも余裕はない。年 200 億円前後を投じ、純有利子負債は 300 億円を超えた。金利は上がり、借り換えのたびに利払いが増える。家賃は固定の約束で、売上が落ちても下がらない。出店を止めると成長が止まり、続けると借入が膨らむ。
株主への還元は利益の 5% だ。自社株買いの実績もない。一族が 4 割を握るので、株主の声は届きにくい。成長は確かだが、株主の取り分が小さいまま、成長のリスクだけを株主が負う形になっている。
どちらに重みを置いたか
利益の伸びは、強気の見方に分がある。実績があり、出店の型が回っている。だが堀が広くない点と、借入に頼る点は、慎重な見方が正しい。
確率は中立を中心に置き、悲観側にもまとまった重みを残した。やや楽観を厚くしたのは、実績が積み上がっているためだ。一方、同業との安売り競争は 10 年のうちに必ず起きるので、やや悲観と悲観を合わせて 3 分の 1 とした。この結果、10 年の本質価値は今の時価総額を 2 割ほど上回り、総合はやや割安になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 10,135 円3,092 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 517 円158 億円)。 今の値に割り戻すと 5,521 円1,684 億円、今との差 +64.1%、 期待の年率 +12.2%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 18,196 円5,551 億円 | 561 円171 億円 | +457.4% | +18.7% | 1,688 円515 億円 |
| やや楽観 | 24% | 14,523 円4,430 億円 | 534 円163 億円 | +347.5% | +16.2% | 3,614 円1,102 億円 |
| 中立 | 34% | 10,768 円3,285 億円 | 488 円149 億円 | +234.5% | +12.8% | 3,827 円1,168 億円 |
| やや悲観 | 23% | 5,376 円1,640 億円 | 554 円169 億円 | +76.2% | +5.8% | 1,364 円416 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,143 円349 億円 | 449 円137 億円 | −52.7% | −7.2% | 159 円49 億円 |
| 加重平均 | 100% | 10,135 円3,092 億円 | 517 円158 億円 | +216.6% | +12.2% | 10,652 円3,250 億円 |
今の株価時価総額 3,365 円1,027 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 9% 東海・関西で安売りの食品ドラッグが定着 利益 284 億円 · PER 19.2 倍 · 株価時価総額 18,196 円5,551 億円
10 年かけて店は約 1,260 店まで増える。愛知で福井並みの密度に近づき、三重・静岡・長野・関西の隣県にも広げる。自前の物流と生鮮の扱いが規模で効き、仕入れ値と運びのコストで同業に差をつける。食品を軸にした安売りは、物価高の中で客を呼び続ける。店あたりの売上は物価並みに伸び、利益率は 6% に乗る。
同業の再編は進むが、イオン連合が都市の店を整理する間に、ゲンキーは郊外の 300 坪の箱を増やして地域の客を取る。借金は増えるが、利益が追いつき、還元は薄いまま自己資本が厚くなる。10 年後は「北陸発の地方チェーン」から、中部・関西の食品ドラッグ最大手の一つに変わっている。
- R 店(約 300 坪の標準店):数量 1,250(R 店の店数(期末・店))× 価格 5.22(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 6,528 億円・営業利益 392 億円。営業利益率6.0%、規模と物流が効く
- 大型店:数量 10.0(大型店の店数(期末・店))× 価格 11(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 112 億円・営業利益 2 億円。大型店は10店まで整理、営業利益率2%
倍率:事業の純利益 284 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.4% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.2 倍。全体の PER 19.22 倍、時価総額 5,458 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店を年 70 店以上のペースで 10 年続け、利益率も上げるという二つが同時にかなう必要がある。起これば強いが、出店の速さと質の両立は難しい。
やや楽観 24% 隣県へ広げて店を倍増、利益率は上振れ 利益 228 億円 · PER 18.8 倍 · 株価時価総額 14,523 円4,430 億円
店は約 1,090 店まで増える。愛知と岐阜の密度が上がり、三重・静岡・関西の一部へ広げる。既存店の売上は物価並みに伸び、客数も安売りで保つ。食品の比率が高いまま、利益率は 5% 台後半に上がる。
新しい店の立ち上がりは今と同じで、1 年目から黒字になる。同業がドミナントで追ってきても、300 坪の標準店とローコスト運営で、利益率は崩れない。借入は出店のために膨らむが、利益で返せる範囲に収まる。
配当は利益の 1 割強で、残りは次の店に回る。物価高で食品の値上がりが続き、店あたりの売上は物価に近い伸びを保つ。人件費の上昇は、物流と仕入れの規模で吸収する 10 年になる。
- R 店(約 300 坪の標準店):数量 1,080(R 店の店数(期末・店))× 価格 5.11(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 5,514 億円・営業利益 314 億円。営業利益率5.7%
- 大型店:数量 12.0(大型店の店数(期末・店))× 価格 11(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 131 億円・営業利益 3 億円。大型店は12店、営業利益率2%
倍率:事業の純利益 228 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.6% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.8 倍。全体の PER 18.84 倍、時価総額 4,296 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今の出店速度と既存店の伸びがおおむね続く、実績に近い筋書き。実績が積み上がっているので、中立より少し重く置いた。
中立 34% 出店は続くが、食い合いで伸びは鈍る 利益 171 億円 · PER 18.2 倍 · 株価時価総額 10,768 円3,285 億円
店は約 915 店まで増える。ただ増える速さは 10 年の後半に落ちる。愛知は人が多く、まだ入る余地がある。一方で福井・石川・岐阜は密度が高く、新店は既存店の客を食う。店あたりの売上の伸びは物価に届かず、10 年で 1.28 倍にとどまる。
ツルハやウエルシア、スギ、コスモス薬品が同じ郊外に出てくる。人件費は上がり続け、利益率は 5% 台前半で横ばいになる。食品で稼ぐ会社なので景気には強いが、成長の速さは今の半分になる。借入は増えても返せ、配当は利益の 1 割台にとどまり、自己資本を厚くしながら次の店に回る。
- R 店(約 300 坪の標準店):数量 900(R 店の店数(期末・店))× 価格 4.99(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 4,490 億円・営業利益 238 億円。営業利益率5.3%
- 大型店:数量 15.0(大型店の店数(期末・店))× 価格 11(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 163 億円・営業利益 3 億円。大型店は15店、営業利益率2%
倍率:事業の純利益 171 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍。全体の PER 18.2 倍、時価総額 3,112 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店の余地は残るが、愛知で福井並みの密度は望めず、10 年後半に新店の稼ぎが落ちる想定。実績と競争の強さの折り合い。
やや悲観 23% 同業との安売り競争で利益率が下がる 利益 108 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 5,376 円1,640 億円
店は約 790 店で止まる。出店のペースが落ち、既存店の売上は物価に届かない。ツルハ・ウエルシアのイオン連合と、コスモス薬品、食品スーパーの値下げに付き合う形で、粗利が削られる。人件費は物価以上に上がり、利益率は 4% 台に下がる。
店を作り過ぎた地域では、新店が既存店の客を食う。店を閉じても、家賃の約束はすぐには消えない。大型店は減らし、R 店に転換するか閉じる。借入が重く、増配や自社株買いはできない。
新店の出店先は、競合の少ない県に限られていく。生鮮の強化も、仕入れの規模で劣る分だけ利益に結びつきにくい。利益は小さく伸びるが、新しい投資の稼ぎが資本コストを超えにくい 10 年になる。
- R 店(約 300 坪の標準店):数量 780(R 店の店数(期末・店))× 価格 4.68(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 3,648 億円・営業利益 153 億円。営業利益率4.2%、値下げ競争で粗利が削られる
- 大型店:数量 10.0(大型店の店数(期末・店))× 価格 10(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 100 億円・営業利益 1 億円。大型店は10店、営業利益率0.5%
倍率:(家賃を営業費用に入れた今と同じ形)ROE 7.8%。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 7% + 残る割合 1/2 ×(7.8 − 7.25)= 7.5%、長期の成長率 g 3.75% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)= 14.3 倍。事業の ROE が資本コスト 7% をわずかに上回るだけで、伸びても価値は増えにくい。上限の 8.5 割の 14.04 倍に置いた。
確率:出店を続けるほど、大手との安売り競争と新店の食い合いで利益率が下がる。食品の安売りは参入が容易で、同業の追撃は現実的なので、悲観側にもまとまった確率を置いた。
悲観 10% 出店し過ぎ・安売り競争で稼ぐ力を失う 利益 27 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 1,143 円349 億円
出店を急いだ代償が出る。愛知・岐阜でツルハ・ウエルシア・スギ・コスモス薬品との値下げ競争が激しくなり、食品の粗利が削られる。新店は既存店の客を食い、店あたりの売上は物価の上がりに届かない。
人件費は毎年上がり、利益率は 1% 台に落ちる。店は約 700 店で止まり、赤字の店を閉じるたびに家賃の残りと違約金、減損が出る。借入の金利は 3% 台に上がり、利払いも重い。配当は据え置くのが精いっぱいで、自社株買いはできない。
優良なドラッグストアではなく、薄利の食品小売りとして評価される 10 年になる。
- R 店(約 300 坪の標準店):数量 700(R 店の店数(期末・店))× 価格 4.09(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 2,864 億円・営業利益 43 億円。営業利益率1.5%、家賃・人件費が固定費として残る
- 大型店:数量 8.0(大型店の店数(期末・店))× 価格 8.78(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 70 億円・営業利益 0 億円。大型店は8店、営業利益率0%
倍率:ROE 3.6% と谷の利益で、稼ぐ力(事業の純利益 27 億円 ÷ k 7%)は約 372 億円と小さい。売れる資産の税後から純負債と家賃の約束を引くと床はそれより低いので、稼ぐ力を床とし、今の自己資本 612 億円に対する PBR 0.57 倍で測った。
確率:食品の安売りは参入が容易で、同業は規模が上、借入で出店を急ぐ会社は負け局面で傷が深い。ただ必需品で、赤字に沈む筋書きは薄いので 1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
R 店(約 300 坪の標準店)
食品を中心に医薬品・化粧品・日用品を毎日安く売るロードサイド店。同じ形を同じ地域に集めて出す。
| 数量R 店の店数(期末・店) | 価格1 店あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 506 | 3.90 | 1,972 | 106 |
| 10 年後 中立 | 900 | 4.99 | 4,490 | 238 |
取り方:2026 年 6 月期末の R 店 506 店で R 店の売上 1,972 億円(有報)を割って 1 店あたり売上 3.9 億円。営業利益は全社 110 億円のうち R 店分を約 106 億円と推定(利益率 5.4%。セグメント別の開示は無いので推定)。店あたり売上は客数(量)と客単価(物価)の積で、物価 3% を含めて中立で 10 年 1.28 倍と、物価の 1.34 倍よりやや低く置いた(新店が既存店の客を食い、食品の安売りで単価が伸びにくいため)。
大型店
旧来の大型店舗。R 店への切り替えと閉鎖が進み縮小中。
| 数量大型店の店数(期末・店) | 価格1 店あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 28.0 | 8.36 | 234 | 4 |
| 10 年後 中立 | 15.0 | 11 | 163 | 3 |
取り方:2026 年 6 月期末の大型店 28 店。大型店の売上は 231 億円(有報)で、端数を合わせて全社 2,206 億円に整えた。1 店あたり 8.4 億円。営業利益は約 4 億円(利益率 1.5%)と推定。価格は物価並みの 1.30 倍に置き、数は R 店への切り替えで減らす。
リスクと懸念
借入に支えられた出店の速さ
年 200 億円前後の設備投資が続き、純有利子負債は約 316 億円、時価総額の 3 割に達した。金利が上がれば、借り換えのたびに利払いが増える。出店を止めれば成長が止まり、続ければ借入が膨らむ。景気や競争が悪化した時に、投資を急に絞れない点が弱みになる。
同業大手との安売り競争
ツルハ・ウエルシア(イオン連合)、スギ、コスモス薬品が、愛知・岐阜の同じ郊外に出てくる。食品の安売りは参入が容易で、堀は広くない。連合が調達を束ねて価格で攻めれば、利益率 5% 前後の薄利は少しの粗利の悪化で大きく削られる。
新店と既存店の食い合い
同じ地域に集中して出すため、新店が既存店の客を食う。福井・石川・岐阜はすでに密度が高い。出店が 900 店を超える頃には、新店の稼ぎが資本コストに届きにくくなる恐れがある。
店の家賃という固定の約束
店は差入保証金を伴う賃借が多く、家賃の額は開示されていない。筆者の推定は年 40 億円前後で、営業利益の 3 分の 1 にあたる。景気が落ちても下がらない固定費だ。新リース会計基準が当たると、リース負債が貸借対照表に載り、自己資本比率は下がって見える。
人手の確保と人件費の上昇
薬剤師・登録販売者の確保は業界共通の課題で、最低賃金の上昇も重なる。年 75 店もの出店には、毎年千人規模の採用が要る。人件費が物価以上に上がれば、薄利の会社は利益率をすぐに失う。
創業者一族の支配と還元の薄さ
創業者一族の資産管理会社が株の約 4 割を持ち、社長は創業者だ。出店と投資の判断は速いが、後継や資本政策が一人の判断に偏る面がある。配当は利益の約 5% で、自社株買いの実績もない。
外部要因:食品の価格とネット販売
食品の値上がりが客単価を押し上げてきた。この追い風が一巡すれば、既存店の伸びが鈍る。医薬品のネット販売の規制緩和や、食品スーパー・ネットスーパーの値下げも、客数を奪う脅威になる。
今後の分かれ目
- 年間の新規出店が計画の 75 店を超えて続き、既存店の売上も 5% 以上伸びたら
- やや楽観・楽観側に重みを移す。新店の稼ぎが資本コストを超えている証拠になる。
- 既存店の客数が連続して前年を割り込んだら
- 食い合いと競争の悪化が表れたとして、やや悲観・悲観側の確率を上げる。
- イオン連合(ツルハ・ウエルシア)が愛知・岐阜で値下げを強め、粗利率が 1 ポイント以上下がったら
- 利益率 5% の前提が崩れるので、やや悲観側に重みを移す。
- 純有利子負債が営業利益の 4 倍を超えたら
- 借入頼みの出店が限界に近い。悲観側の確率を上げ、k の借金の項を見直す。
- 自社株買いや配当性向の引き上げなど、還元を厚くする方針が出たら
- 資本の使い方を評価し、楽観側に重みを少し移す。ただし出店の鈍化が前提なら成長の見立ては下げる。
- 三重・静岡・関西などの新しい県での出店が計画どおり黒字化したら
- 出店の型が県をまたいで通じる証拠になるので、楽観・やや楽観側の確度を上げる。
- 新リース会計基準の適用で、リース負債の額が初めて開示されたら
- 筆者の推定(年 40 億円前後の家賃)と比べる。大きければ悲観側の利益率と床を下げる。形の変化そのものは本質価値を変えない。
見ておくもの
- 既存店売上・客数の月次(毎月 20 日前後の開示)
- 新規出店数と新店の立ち上がり
- 粗利率・営業利益率の四半期推移
- 純有利子負債と金利
- 愛知・岐阜でのツルハ・ウエルシア・スギの出店と価格
- 地代家賃の額と新リース会計基準でのリース負債
倍率と資本コストの決め方
倍率は、数量×価格で積んだ利益とその時の ROE から正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g) を出し、中立・楽観・やや楽観は上限の 8.5〜8.8 割に置いた(ROE が k をわずかに上回る程度の会社なので堀は普通とした)。やや悲観は事業の ROE が k を少し上回るだけなので同じ 8.5 割、悲観は稼ぐ力を床に PBR で測った。今の株価は最後に比べただけ。資本コストは基本 7.5% に quality −0.25% を足した 7.25%。純利益÷営業利益は過去の中央値 0.72 に近い値を使い、金利上昇による利払いの増え(10 年で約 8 億円)は借入が増える分と合わせてこの比に含めた。店の家賃は年 40 億円前後と推定し、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。新リース会計基準(3 月決算でない会社も 2027 年 4 月以後に始まる年度から)が当たると、営業利益は増え、リース負債が載って自己資本比率は下がるが、形の変化なので本質価値は変えない。純現金ではなく純負債の会社なので、余った現金は分けない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality −0.25% を足した 7.25%。必需品の食品で循環を −0.5%、借入が増えて利払いの金利が上がる点を借金 +0.25%、値決めと寿命は普通の 0。黒字が続き存続に疑いはなく、上乗せは置かない。出店の速さや同業との安売り競争は k に足さず、筋書きの利益率と確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.25% → 7.00%。