結論
コックスは、イオンモールの中に「ikka」などの衣料店を174店持つ専門店で、イオンが議決権の7割強を握る子会社だ。筆者の結論は、今の値段はやや割安だが、その割安さを株主が受け取れる道は細い、というものだ。
事業は12年の長い赤字を抜けた。販管費を削り、値引きを抑え、2024/02期から3期続けて営業利益は12億〜13億円、利益率は8%台に乗った。これは上場以来で最も高い水準だ。
貸借対照表はもっと目を引く。借入はゼロで、現金とイオンへの預け金が59億円ある。さらにグループ企業などの株式を37億円持つ。合わせると、今の時価総額の1.6倍だ。
ただ、その現金は株主の手に届いていない。過去の赤字で利益剰余金がまだマイナスで、配当は出せない。現金はイオンに預けられ、グループの中で回っている。
10年後の中立は、店舗が165に減り、売上は約184億円、営業利益は約13億円。利益率は今の山から7%へ下がると見る。ROEは資本コスト7.75%に届かない。それでも、利益の倍率を控えめにし、余った現金を半分しか数えなくても、確率を重ねた本質価値は今の時価総額を2割弱上回る。いちばんの理由は、今の値段が事業の稼ぎをほとんど数えていないことだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安いが、手に入らない」の典型だ。
事業そのものは平凡だ。モールの中で普段着を売る商売に、他社が越えられない壁は無い。12年続いた赤字の歴史もある。それでも、閉店と経費の削減で、利益は年10億円前後に戻った。立地はグループのおかげで安定し、急に消える事業ではない。
貸借対照表は、払う値段に比べてとても厚い。現金と株式だけで、時価総額を大きく上回る。事業の稼ぎに、ほとんど値段が付いていない計算になる。
ただ、オーナーとしての取り分は弱い。親会社が7割強を持ち、現金は親会社に預けられ、配当は出ていない。少数株主は、会社の資産に口を出せない。安全域は数字の上では厚いが、それが株主の手に戻るには、配当の再開か、親会社による買い取りを待つしかない。
筆者は、事業の価値と現金の半分だけを数えても、今の値段には安全域があると見る。ただし、それを受け取れる時期は読めない。
何で稼ぐ会社か
コックスは、ショッピングセンターの中で衣料と雑貨の店を営む専門店チェーンだ。いまはイオンのグループで、専門店の事業を受け持つ。
店の看板は三つある。家族向けの「ikka」、若い世代向けの「LBC」、大人の女性向けの「notch.」だ。ほとんどの店が、親会社が運営するイオンモールやイオンの大型店の中にある。家賃はモールに払い、モールの集客に乗って売る。自分で客を呼ぶ力より、モールの人の流れが売上を決める。
2026/02期末の店舗数は174店。1年で8店を閉め、7店を開いた。1店あたりの売上は年に約8,600万円で、ECの売上を含む。ECは自社サイトと外部のモールで売り、LBCの売上は1年で2割強伸びた。
商品は自社で企画し、アセアンや中国の工場で作らせる。ドル建ての仕入れが多く、円安は原価を押し上げる。会社は生産地のアセアン比率を上げ、取引先を絞って原価を抑えてきた。
費用の柱は、仕入れの原価、店員の人件費、モールへの家賃だ。家賃は売上が落ちても大きくは減らない固定の約束で、ここが利益の振れを大きくする。
2026/02期の売上は150億円、営業利益は13.2億円、純利益は10.7億円だった。売上は2015/02期の217億円から3割減ったが、閉店と経費の削減で利益は戻った。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは弱い。強みはイオンモールの中の好立地と、グループの後ろ盾だ。
立地はたしかに強い。全国のイオンモールに一斉に出店でき、空き区画の情報も早く届く。親会社が家主なので、条件の交渉でも不利になりにくい。モールに来る家族客に、手ごろな価格の普段着を売る商売は、景気が悪くても大きくは崩れない。
だが、ブランドの力は弱い。同じモールの中に、ユニクロ、しまむら、グローバルワークなど、同じ価格帯の店が並ぶ。客は店の名前でなく、その日の商品と値段で選ぶ。2026/02期は天候の読み違いで、季節の商品の正価販売に苦戦した。
資本効率は、帳簿の上では低く見える。純資産105億円のうち、現金と株式が大半を占めるからだ。現金を除いた事業の資本は小さく、事業そのもののROEは2割を超える。稼ぐ力は悪くない。
弱いのは、資本の使い方だ。現金を積み上げたまま、配当も自社株買いも無い。利益剰余金のマイナスが消えるのは近いが、還元の方針は示されていない。経営の目線は、株主よりもグループの中にある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の衣料市場は、量では細り、値段では二極化が進む成熟市場だ。人口は年に0.5%ほど減り、服を買う量も増えない。そのうえで、ユニクロやしまむらのような大手が安さと品質の両方を握り、中堅の専門店は挟み撃ちにあっている。
ショッピングセンターの中の専門店は、とくに厳しい。モールの来店客は、郊外の大型店で頭打ちになり、地方では閉店も出てきた。モールの中の衣料店は、同じ通路に競合が並び、値段で比べられる。ネットで買う人も増えた。物販のEC化率はまだ1割に届かないが、衣料は返品のしやすさとSNSの宣伝で、ネットに移る速さが早い。
費用の面では、人件費の上昇が重い。コックスも、ベテランの退職で人が足りず、一部の店で売上を取り逃がした。最低賃金は年3%前後で上がり続ける。家賃もモールの改装のたびに見直される。値上げは、ユニクロやしまむらの値段がものさしになるので、思いどおりには通らない。
円安とドル建ての仕入れも逆風だ。アセアンへの生産の移し替えで一部は吸収できるが、原価が物価より早く上がる年は利益率が削られる。
業界全体では、中立の10年は、店の数が少しずつ減り、1店の売上は物価に少し遅れて上がる、と筆者は見る。勝ち残るのは、ECとSNSで客を呼べる店と、モールの好立地を押さえた店だ。コックスはその両方を少しずつ持つが、どちらも決め手にはなっていない。
資本政策と M&A
資本政策は、この会社のいちばんの問題だ。借入は無く、現金とイオンへの預け金が59億円、政策保有の株式が37億円ある。それなのに、配当は2026/02期も2027/02期の予想もゼロだ。
理由は、過去の赤字にある。利益剰余金は2026/02期末でまだ12億円のマイナスで、配当に回せる余力が帳簿上ほとんど無い。今のペースの利益が続けば、1〜2年でマイナスは消える。そのあと配当を始めるかどうかは、親会社の意向しだいだ。
株式は上場株6銘柄で、グループ企業との持ち合いが中心とみられる。配当は年0.8億円ほど入る。売る方針は示されていない。
イオンは上場子会社の整理を進めてきた。コックスも、いずれ完全子会社化の対象になる可能性はある。その時の値段は、市場の株価に上乗せした額で、帳簿の現金の全部ではない。
株主優待は、店とECで使える割引券だ。費用は年1億円に届かないとみて、還元には数えていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方は、市場が事業の稼ぎにほとんど値段を付けていない点を突く。
今の時価総額は、現金とイオンへの預け金の合計59億円とほぼ同じだ。そのうえに上場株が37億円ある。つまり、年10億円を稼ぐ事業が、ほぼただで手に入る計算になる。
事業も立ち直った。2015年から2022年まで赤字と黒字を行き来した会社が、3期続けて営業利益率8%台を出した。販管費を削り、値引きを抑え、アセアンへの生産の移し替えで原価も抑えた。2026/02期は天候と人手不足で売上が落ちたのに、営業利益は増えた。経費の構造が変わった証拠だ。
ECも伸びている。LBCの売上は1年で2割強増え、SNSで客を呼ぶ力がある。モールの外の客に届けば、店舗の数に縛られない。
そして、還元の壁はまもなく消える。利益剰余金のマイナスは12億円で、今の利益なら1〜2年で消える。配当が始まれば、現金は株主に戻り始める。イオンが上場子会社を整理する流れの中で、完全子会社化の可能性もある。その時は、今の株価に上乗せした値段が付く。
慎重な見方
慎重な見方は、安く見えるのは理由があるからだと指摘する。
現金はたしかに多い。だが、少数株主がそれを受け取る道は無い。イオンが7割強を持ち、現金はイオンへの預け金としてグループに回っている。配当は長年ゼロで、利益剰余金のマイナスが消えても、出すかどうかは親会社が決める。少数株主には口を出す力が無い。
事業の8%台の利益率も、山の水準だ。過去12年でいちばん高い。販管費を削り切ったあとで、人件費と家賃は物価で上がり続ける。2026/02期は既存店が97.5%に落ち、ベテランの退職で売り場の力も落ちた。売上は2015/02期の217億円から3割減った。
モールそのものも衰える。地方のモールは閉店が出始め、郊外の来店も頭打ちだ。同じ通路に、ユニクロ、しまむら、グローバルワークが並ぶ。コックスの店を名指しで選ぶ客は少ない。
株式の37億円も、グループとの持ち合いで、売る方針は無い。配当は利益に入るが、資産としては動かせない。数字の上の割安は、いつまでも割安のまま放っておかれるおそれがある。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、値段と資産のずれを正しく突いている。慎重な見方は、そのずれが埋まる道が無いことと、利益率が山にあることを突いており、こちらも強い。
そこで、事業の稼ぎは中立で山より低い7%に置き、余った現金は半分しか数えなかった。確率は中立を最も厚くし、強気と慎重をほぼ同じ厚さにした。それでも本質価値が今の値段を上回るのは、今の値段が事業の稼ぎをほとんど数えていないためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 685 円189 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 69 円19 億円)。 今の値に割り戻すと 372 円103 億円、今との差 +75.4%、 期待の年率 +13.5%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,062 円293 億円 | 113 円31 億円 | +454.0% | +18.7% | 94 円26 億円 |
| やや楽観 | 22% | 931 円257 億円 | 92 円25 億円 | +382.4% | +17.0% | 225 円62 億円 |
| 中立 | 38% | 803 円222 億円 | 77 円21 億円 | +315.0% | +15.3% | 334 円92 億円 |
| やや悲観 | 22% | 370 円102 億円 | 46 円13 億円 | +96.4% | +7.0% | 92 円25 億円 |
| 悲観 | 10% | 87 円24 億円 | 0 円0 億円 | −59.0% | −8.5% | 9 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 685 円189 億円 | 69 円19 億円 | +255.5% | +13.5% | 754 円208 億円 |
今の株価時価総額 212 円59 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% ECとSNSで客を呼び、利益率8%台を保つ。配当も再開 利益 14 億円 · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 1,062 円293 億円
ECとSNSの力で、モールの外からも客を呼べるようになる。LBCのように、インフルエンサーとの企画が当たるブランドが増え、ECの売上は全体の2割を超える。店舗は好立地への移転と新しいモールへの出店で180に増える。
1店の売上は物価並みに上がる。タイアップ商品の正価販売が定着し、値引きが減る。アセアンへの生産の移し替えで原価も抑え、利益率は8.5%を保つ。営業利益は18億円近くになる。
利益剰余金のマイナスが消え、配当が始まる。純利益の3割強を配る方針が定着する。親会社は子会社のままにしておくが、少数株主への還元は少しずつ厚くなる。
- 衣料専門店(ikka・LBC・notch. の店舗とEC):数量 180(店舗数(店。期末))× 価格 11,689(1店あたり売上(万円。ECの売上を含む))→ 売上 211 億円・営業利益 18 億円。店舗180、1店の売上+36%、利益率8.5%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 16.78 倍、時価総額 259 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率8%台は上場以来の山で、それを10年保つには、天候と人手の問題を乗り越える必要がある。ECとLBCの伸びは数字で出ているが、全体を押し上げるには小さい。1割弱に置いた。
やや楽観 22% 今の利益率をほぼ保ち、配当が細く始まる 利益 12 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 931 円257 億円
店舗の数はほぼ今のままで、好立地への移転で1店の売上を伸ばす。ECは毎年少しずつ伸び、モールの来店の細りを埋める。
1店の売上は10年で3割強上がる。物価並みの値上げに近いが、ユニクロやしまむらの値段に引っぱられ、わずかに遅れる。人件費は上がるが、販管費の削減と原価の管理で吸収し、利益率は7.8%にとどまる。営業利益は15億円ほどになる。
利益剰余金のマイナスは2〜3年で消え、配当が細く始まる。それでも現金は積み上がり、資本の効率は上がらない。事業は健全だが、株主の取り分は親会社の方針に縛られたままだ。
- 衣料専門店(ikka・LBC・notch. の店舗とEC):数量 172(店舗数(店。期末))× 価格 11,431(1店あたり売上(万円。ECの売上を含む))→ 売上 197 億円・営業利益 15 億円。店舗172、1店の売上+33%、利益率7.8%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 16.18 倍、時価総額 221 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:3期続けて8%台の利益率を出した実績があり、経費の削減は数字で確かめられる。人件費と天候の逆風を考えても、7%台後半を保つ姿は十分にありうる。2割強に置いた。
中立 38% 店舗は少し減り、利益率は7%へ戻る 利益 11 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 803 円222 億円
モールの来店は郊外で頭打ちになり、コックスは不採算の店を少しずつ閉める。店舗は10年で165に減る。ECが伸びる分で、1店の売上は物価に近い伸びを保ち、10年で3割上がる。
利益率は今の山から下がる。人件費は年3%で上がり、モールの家賃も改装のたびに上がる。値上げはユニクロやしまむらの値段に縛られ、物価にわずかに届かない。利益率は7%で、営業利益は今とほぼ同じ13億円になる。物価を考えると、実質では2割ほど細る。
利益剰余金のマイナスが消えたあと、配当は始まるが、利益の2割ほどにとどまる。現金はイオンへの預け金として積み上がり、帳簿のROEは5%台に下がる。事業は残り、現金も残るが、株主には戻りにくい。
- 衣料専門店(ikka・LBC・notch. の店舗とEC):数量 165(店舗数(店。期末))× 価格 11,173(1店あたり売上(万円。ECの売上を含む))→ 売上 184 億円・営業利益 13 億円。店舗165、1店の売上+30%、利益率7%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 15.42 倍、時価総額 184 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今の8%台は経費を削り切った山の水準で、人件費と家賃の上昇で少しずつ削られる。店舗は不採算を閉め、少しずつ減る。これがいちばん起こりやすい姿で、4割弱に置いた。
やや悲観 22% 人手不足と天候で既存店が細り、利益率4%台 利益 6 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 370 円102 億円
店員が集まらず、売り場の力が落ちる。天候の読み違いで季節の商品が売れ残り、値引きが増える。既存店は年に1〜2%ずつ細り、不採算の店を閉めて、店舗は150に減る。
1店の売上は物価に遅れ、10年で2割強しか上がらない。人件費と家賃は物価で上がり続けるので、利益率は4.5%に下がる。営業利益は7億円ほどで、今の半分近くになる。
配当は細く始まるが、ほとんど出ない。現金は赤字の年に一部を食う。事業は存続するが、稼ぎは資本コストを大きく下回り、株主の取り分は目減りする。現金はイオンへの預け金として残り続けるが、少数株主がそれを受け取る場面は来ない。2015年から2022年の姿に、ゆっくり戻る筋書きだ。
- 衣料専門店(ikka・LBC・notch. の店舗とEC):数量 150(店舗数(店。期末))× 価格 10,486(1店あたり売上(万円。ECの売上を含む))→ 売上 157 億円・営業利益 7 億円。店舗150、1店の売上+22%、利益率4.5%
倍率:事業の純利益は約5.9億円、事業のROEは4%で資本コストの半分に満たない。上限は1÷kの約11.8倍だが、稼ぎが実質で細る局面なので7割弱に置いた。余った現金は谷で一部を食い、30億円の半分を足した。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8 倍・時価総額 69 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:2026/02期の既存店は97.5%で、人手不足と天候の読み違いがすでに数字に出た。2015〜2022年に赤字が続いた会社でもあり、この姿の現実味は高い。2割強に置いた。
悲観 10% モールの衰えとともに縮み、赤字に戻る 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 87 円24 億円
構造的に負ける筋書きだ。地方のモールが相次いで閉じ、残ったモールでも衣料の売り場は大手とECに奪われる。コックスの店は客に選ばれる理由を失い、店舗は110まで減る。
1店の売上は10年で1割しか上がらず、物価に大きく遅れる。人件費と家賃は下がらず、赤字に戻る。閉店の費用と在庫の評価損が重なり、前半の黒字の年に積んだ自己資本の一部が削られる。
会社は現金と株式を持ったまま、細々と続く。配当は出ない。残る価値は、現金と株式などの売れる資産から負債と閉店の費用を引いた額だ。それも親会社が7割を持つ以上、少数株主が受け取れるのは一部にとどまる。
- 衣料専門店(ikka・LBC・notch. の店舗とEC):数量 110(店舗数(店。期末))× 価格 9,455(1店あたり売上(万円。ECの売上を含む))→ 売上 104 億円・営業利益 −1 億円。店舗110、1店の売上+10%、赤字
倍率:事業の稼ぎはほぼゼロ。純現金と売れる資産の税後から負債と閉店の費用を引いた約48億円に、親会社の支配で少数株主に戻る割合0.5を掛けた約24億円を床にした。今の自己資本105億円の0.23倍。
確率:12年続いた赤字の歴史と、地方のモールの閉店の流れを考えると、構造的に負ける姿は無視できない。ただ借入は無く、現金と株式で会社が傾くことはない。1割に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
衣料専門店(ikka・LBC・notch. の店舗とEC)
イオンモールなどのショッピングセンターに、家族向けのikka、若い世代向けのLBCなどの衣料と雑貨の店を出す。自社ECと外部モールのECも持つ。
| 数量店舗数(店。期末) | 価格1店あたり売上(万円。ECの売上を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 174 | 8,595 | 150 | 13 |
| 10 年後 中立 | 165 | 11,173 | 184 | 13 |
取り方:2026/02期の売上149.6億円、期末の店舗数174店(閉店8・出店7)は決算短信の開示。1店あたり売上は売上÷店舗数で約8,600万円。ECの売上は店舗の数字に含めた(比率の開示は無い)。営業利益は全社の13.2億円。
リスクと懸念
親会社の支配と現金の行き先
イオンが議決権の7割強を持つ。現金はイオンへの預け金としてグループで回り、配当は長年ゼロだ。少数株主は現金の使い方に口を出せない。完全子会社化の時も、値段は市場の株価に上乗せした額で決まり、帳簿の現金の全部が届くとは限らない。
利益率が山にある
営業利益率8%台は上場以来の最高で、販管費を削り切ったあとの数字だ。人件費は年3%前後で上がり、モールの家賃も改装のたびに上がる。値上げが追いつかなければ、利益率は数年で6%台に戻る。
人手不足
2026/02期は、ベテランの退職で人が足りず、一部の店で売上を取り逃がした。採用の単価を上げても、モールの中の店員の取り合いは激しい。売り場の力が落ちれば、既存店はさらに細る。
モールの来店の細り
店のほとんどがイオンモールなどの中にあり、モールの集客が売上を決める。地方のモールの閉店や、郊外の来店の頭打ちは、そのままコックスの店の数と売上を削る。
天候と在庫
季節の商品は、寒暖差や長い夏で売り時を外すと値引きで売るしかない。2026/02期は天候の読み違いで正価販売に苦戦し、在庫の評価も見直した。気候の変化が大きくなるほど、読み違いの損は増える。
円安と原価
商品はアセアンや中国の工場で作り、ドルで仕入れる。円安と現地の人件費の上昇は原価を押し上げる。大手の値段がものさしになるので、原価の上昇をそのまま値上げに回すことは難しい。
今後の分かれ目
- 利益剰余金のマイナスが消え、配当の再開と配当性向の方針が発表された
- 現金が株主に戻り始める合図になる。余った現金の戻り方を半分から引き上げ、本質価値は上がる。
- イオンが完全子会社化を発表した
- 事業の価値は変わらないが、少数株主は買付の値段で現金を受け取る。その値段が本質価値に届くかどうかが分かれ目になる。
- 営業利益率が2期続けて7%を割った
- 経費の削減が一巡し、人件費と家賃に負け始めた合図だ。やや慎重な筋書きの確率を上げる。
- ECの売上が全体の2割を超えた
- モールの外から客を呼べる証拠になる。強気の筋書きに近づく。
- 既存店が2年続けて前年を下回り、閉店が出店を大きく上回った
- モールの衰えとブランドの弱さが重なっている。慎重な筋書きの確率を上げる。
- 政策保有株の売却と、その代金の還元が発表された
- 眠っていた資産が動く合図になる。株式の価値を余り資産として足せる。
見ておくもの
- 既存店の売上と客数、ECの売上の伸び
- 営業利益率と販管費、人件費の推移
- 店舗数と、出店・閉店の数
- 利益剰余金のマイナスが消える時期と、配当の方針
- イオンの上場子会社の整理の動き
- 現金とイオンへの預け金、政策保有株の残高
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。現金40億円を除いた事業のROEは中立で6%台にとどまり、資本コスト7.75%に届かないので、PERの上限は約11.8倍。ROEと資本コストの比を見て9.5倍に置いた。余った現金は親会社の支配と無配で戻り方を半分にした。政策保有株は配当を利益に残すので、価値として二重に足していない。今の株価やPER、PBR、同業の値付けは倍率の根拠に使っていない。新リース会計基準は2028/02期からモールの賃借が貸借対照表に載るが、10年後の数字は家賃を費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→16.78 倍・やや楽観 PER 10.5→16.18 倍・中立 PER 9.5→15.42 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +1.0% を足した8.5%。親会社の支配や無配といった株主の取り分の問題は、k でなく余った現金の戻り方で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。